JPH09119033A - 潜在捲縮性生糸およびその製造方法、ならびにその潜在捲縮性生糸から得られる捲縮性絹糸 - Google Patents
潜在捲縮性生糸およびその製造方法、ならびにその潜在捲縮性生糸から得られる捲縮性絹糸Info
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- JPH09119033A JPH09119033A JP7303784A JP30378495A JPH09119033A JP H09119033 A JPH09119033 A JP H09119033A JP 7303784 A JP7303784 A JP 7303784A JP 30378495 A JP30378495 A JP 30378495A JP H09119033 A JPH09119033 A JP H09119033A
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Abstract
なわないようにして、品質的に優れた潜在的捲縮性能を
持たせてなる新規な構造の生糸、およびその生糸を確実
且つ効率的に生産するための新規な製造方法、ならびに
その潜在的捲縮性生糸から得られるところの、絹本来の
秀れた性状を残し、且つ伸縮性がある捲縮性絹糸を提供
する。 【解決手段】 生糸原糸に対し、含有セリシン残存率が
40%以上に維持されるよう規制して柔軟処理を施し、
100℃未満の温水浸漬、または通常の精錬、染色工程
によって捲縮構造が発現されると共に、伸縮性のあるバ
ルキー糸となるまでの気乾状態においては集束性が維持
されようにしたことを特徴とする潜在捲縮性生糸。
Description
方法、ならびにその生糸から得られる新規な絹糸に関す
るものであり、これまで困難とされていた絹本来の性質
を損なわないようにして、品質的に優れた潜在的捲縮性
能を持たせてなる新規な構造の生糸、およびその生糸を
確実且つ効率的に生産するための新規な製造方法、なら
びにその潜在的捲縮性生糸から得られるところの、絹本
来の秀れた性状を残し、且つ伸縮性がある捲縮性絹糸を
提供しようとするものである。
り、それによる布帛は、肌に柔らかい上、優美なドレー
プ性を有している等他繊維には見られない優れた性質を
備えており、古来より貴賓と感性ある衣料を生み出す高
価な繊維、布帛として珍重されてきた。このように秀れ
た素材の絹糸も、ナイロン、ポリエステルのような熱可
塑性合成線状重合物からなる繊維のような可塑性とセッ
ト性とがないため、その加工糸としての利用、特に捲縮
加工糸織編み物の分野に適用することが困難なため、従
前までは強撚糸としての利用を試み、ジョーゼット、デ
シンのようなシボ立ちで差別化するとか、または織り組
織を工夫して風合を改善する等の範囲内での利用に止ま
らざるを得ず、伸縮性のあるバルキー性を活かしてソフ
ト感を演出するファブリックの領域での商品開発を進め
ていく余地が少なかった。
破しようとする幾つかの試みがなされてきている。例え
ば、昭和37年特許公告第16853号公報に開示され
た発明に代表されるような、(1)絹糸に樹脂加工を施
した後、加熱賦型することによって絹糸に捲縮性を付与
しようとする捲縮生糸の製造方法や、その欠点を改善し
ようとして提案された昭和47年特許公告第14043
号公報掲載の発明のような、(2)生糸を精練するに際
し、芒硝を添加してセリシンの練減を緩和して含有セリ
シンの残存率を10%程度とし、その膠着力を利用して
賦型性を残した状態で加熱−セット−解撚を行い、再度
精錬して捲縮糸となす方法等がそれである。
って得られる生糸では、樹脂が生糸を覆ってしまうため
に、絹本来の性質を変質してしまって商品価値を落とし
てしまうという致命的な欠陥を避けることができなかっ
たし、また、上記(1)に対処すべくして提案されるこ
ととなった(2)の捲縮絹糸の製造方法の場合でも、必
要なセリシン残存率を10%程度に管理すること自体が
極めて困難であるばかりではなく、残存セリシンがそれ
よりも少なくなってしまうと、加撚後において絹繊維の
膨潤および加熱による賦型性に与える影響が極めて少な
くなり、捲縮絹糸としての品質、風合い、弾性等の面で
支障を来し、逆に、この方法でセリシン残存率を高くし
てしまうと、施撚時には膠着セリシンに災いされて剛性
抵抗を大きくし、また、その解撚時にはフィラメントの
分離難を惹起して、捲縮絹糸の製造が難しくなってしま
うという課題を残すものであった。
を正確に認識しながらも、最近の我が国における経済環
境の変化、特に関税障壁が崩されて、安価な絹糸あるい
は絹糸関連商品が安価にして大量に輸入されるという事
態に直面し、品質的に秀れた絹糸および絹糸関連商品を
提供してきた伝統ある我が国絹織物業界も、単に品質の
優位性だけでは最早経済効果を上げていくことが難しい
事態に追い込まれつつある現状から、絹糸の新たな領域
における商品開発を可能とする性状の付与、実現のため
に、従前から困難とされてきた伸縮性のある絹糸を、従
前までに提案されてきた方法とは異なり、絹糸本来の良
さを確実に残し、且つ工業生産性に適うようにした新た
な方法で製造可能とする技術の開発、研究に取り組まざ
るを得ず、幾多の試行錯誤を繰り返す中、遂に、この発
明者等は、それらの課題を見事に解決し得る技術とし
て、糸の前処理として柔軟剤によるソフト性の改善と酵
素によるタンパク質分解作用を併用することに着眼し、
セリシンを積極的に除去することなく充分に残存せしめ
ながら、しかも、セリシンとフィブロインセグメントの
界面の解離抵抗を少なくするという画期的な技術開発に
成功したものであり、以下では、その構成を、実験デー
ターを併用しながら詳細に説明していくこととする。
次に開示するとおりの構成から成り立っている。即ち、
生糸原糸に対し、含有セリシン残存率が40%以上に維
持されるよう規制して柔軟処理を施し、100℃未満の
温水浸漬、または通常の精練、染色工程によって捲縮構
造が発現されようにすると共に、伸縮性のあるバルキー
糸となるまでの気乾状態においては集束性が維持されて
なるようにしたことを特徴とする潜在捲縮性生糸であ
る。このように、この発明の潜在捲縮性生糸は、生糸の
含有するセリシン残存率を40%以上に保持するように
して潜在捲縮性生糸を実現している構成が、極めて新規
且つ重要な構成要件となっている。
生糸を製造する以下のとおりの工程からなる製造方法も
包含されている。即ち、生糸原糸を、蛋白質分解作用の
ある酵素と界面活性剤との混合溶液に浸漬する第1浸漬
工程、浸漬して膨潤化した飽水状態のままの生糸を、平
滑柔軟および固着防止のための処理剤に浸漬させる第2
浸漬工程を経た後、必要に応じて合糸する等して所定の
繊度となしてから、強撚−高温高圧湿熱セット−解撚法
によって実質的に無撚の潜在捲縮性を付与する工程を実
施し、最後に70°C〜80°C前後のアフターセット
工程を経て集束性に秀れた請求項1記載の潜在捲縮性生
糸を製造する方法である。更に、この発明は、以上のと
おりの製造工程で製造される潜在捲縮性生糸(集束され
て1本糸条)と共に、その潜在捲縮性生糸を100℃未
満の温水浸漬、または通常の精錬、染色工程を経ること
によって得られる伸縮性のある捲縮性絹糸(バルキー
糸)も包含している。
ィラメントを密着させて1本の糸条としているセリシン
が、セット−解撚してフィラメントを分離させる上で大
きな障害をなしていることが既に知られている。そこ
で、理論上からは、生糸からセリシンを完全に取り除
き、セット−解撚加工処理をすれば確実に生糸に捲縮性
を付与することが可能となるが、所謂従前からの生糸が
そうであったように、煮繭から製糸後、残存セリシンを
できるだけ取り除き、セリシンによる膠着作用をなくし
て製糸工程にできるだけ支障を来すことがないようにす
る必要があったにも拘らず、フィブロフィンを包んでい
るセリシンを除去しすぎてしまうと、絹固有の特徴ある
性状をなくしてしまうことから、通常10〜20%前後
のセリシン残存率に止めたものとしてきた事実からも裏
付けられるとおり、セリシンを完全に除去して生糸に捲
縮性が付与されたとしても、それらは、生糸としての価
値の劣るものに帰してしまう。
いて見てきたとおり、従前までは、捲縮加工処理条問題
となるセリシン残存率は必要最小限に止めて絹の特性を
維持するようにすると共に、絹固有の性状維持の上で除
き切れない残存セリシンによる弊害を他の手段、即ちそ
の膠着性を押さえ込むための疎水性合成樹脂処理によっ
てどうにか捲縮性絹糸を実現してきたが、この発明は、
それら従前までの考え方に真っ向から対峙し、可能な限
り含有セリシン残存率を高め、なお且つ捲縮性が潜在的
に付与されるようにした画期的な潜在捲縮性生糸であ
り、それから得られる捲縮性絹糸である。
実現される画期的な潜在捲縮性生糸は、その新規な製造
方法、特にその前処理工程における柔軟処理の採用が、
極めて新規且つ重要な役割を果たしている。この柔軟処
理工程は、カセ状の生糸原糸に対して第1浸漬工程と第
2浸漬工程とが引き続き実施される工程であって、略4
0%以上(少なくとも、30%以下の残存率では、加撚
−セット−解撚法によっても賦型効果、即ち潜在捲縮性
を付与する効果が充分期待できないことを確認してい
る。)、好ましくは45%以上、更に最適には60〜8
0%前後の含有セリシン残存率に定着せしめ、しかも、
実質的に無撚の潜在捲縮性を付与する強撚−高温高圧湿
熱セット−解撚法による工程において、残存セリシンに
よる膠着で強撚−高温高圧湿熱セット−解撚法が有効に
実施できなくなる弊害を未然に対処してしまうものであ
る。
リシン残存率の上限を規制するものではないが、第1浸
漬工程および第2浸漬工程を経ることにより、自ずと5
〜10%程度のセリシンが除去されてしまうことと、略
90%以上にセリシンが残存していると、それ以下のセ
リシン残存率によるものと比較し、やや捲縮性の付与
(強撚−高温高圧湿熱セット−解撚法によって得られ
る)効果が低下する傾向が見られることとから、含有セ
リシン残存率を90%以上の値に設定することは必ずし
も望ましいことではない。
糸を蛋白質分解作用と膨潤作用のある酵素剤、例えば、
アミラーゼやプロテアーゼ(みどり十字社製、商品名
「パパインC」)等といった天然酵素や、洛東化学社製
「エロチンASL−300」(商品名)、大和化成社製
「プロチン」(商品名)、ナガセ工業社製「ビオラーゼ
APL」(商品名)等の化学酵素の何れかあるいは双方
の組合わせによるものと、ノイゲン(商品名)等の界面
活性剤との混合溶液に浸漬する工程である。そして、続
く対2工程では、第1工程で飽水状態としたままの紐状
の生糸原糸を、平滑柔軟および固着防止のための処理剤
に浸漬する工程である。以下、これらの製造工程がより
明確に把握されるものとするために、この発明が包含す
る製造方法の最も代表的な実施例を示すことにする。
としての「プロテン」(商品名)、ノイゲン(商品名)
等の界面活性剤、ハイドロサルファイト(商品名)等の
漂白剤を、水1リットル当り、天然酵素が約0.2g、
界面活性剤が約0.6g、漂白剤が約0.02g程度の
割合となるように配合し、100℃未満、好ましくは4
0〜70℃に温度調節された溶液に対し、浴比1:6程
度のカセ量にして15〜18時間程度浸漬してセリシン
を膨潤させる。この浸漬工程のドレッレシング条件、特
にその処理時間によって含有セリシン残存率の値が大略
決定されてしまう。処理時間が長くなるに連れ、その値
を低下させ、20時間を越えると、この処理工程だけで
含有セリシン残存率が60%以下となることが確認され
ており、この工程および次の第2浸漬工程で振湯されて
更にセリシンの溶出が進行すること、また、捲縮性を付
与する後述の工程における摩擦擦過現象でもセリシンが
粉末状となって脱落、飛散してしまうこと等を勘案する
と、この浸漬工程における要処理時間は、15〜18時
間程度、最適には15時間程度とされるべきである。
させたカセ状の生糸原糸を、精練乳化均染剤としてのロ
−ト油に、平滑柔軟剤(平安油脂社製、商品名「リスコ
ールA−7」)と固着防止剤(平安油脂社製、商品名
「ルマールUN」)とを加え(平滑柔軟剤が、水に対し
て約12%程度、 固着防止剤が、同じく水に対し
約8%程度の割合とし)、20〜50℃の 範囲内
に温度調整した処理液に対し、浴比1:6程度のカセ量
にして5〜 6時間浸漬する。第1浸漬工程に引き
続いて実施されるこの工程のドレッシングで、振湯した
り、5〜6時間の浸漬後に、当該処理液内に浸漬放置さ
れたままとされてしまうと、セリシンの溶出が進行し
て、この発明の重要な構成要件の一つでもある含有セリ
シン残存率の目標が達成されなくなる虞も出てくること
から、これらの条件を勘案した適格な処理コントロール
がなされなければならない。
工程を終えてから、脱水、乾燥し、 含有セリシン残存
率を40%以上、望ましくは45%以上、更に理想的に
は、 略60%の値に定着させると共に、以降の工程に
支障を来さない性状の生糸原 糸に加工処理した上、合
糸または集束性改善のために、低撚で合撚して所定の
繊度とし、それらを糸繰りしてボビンアップすることに
より、後述する捲縮性 を付与する前処理工程を完了す
る。
漬け)工程を終えた生糸原糸は、次に捲縮性を付与する
工程に回される。先ず、加撚処理;浸漬(下漬け)工程
を終えてボビンアップされた生糸原糸を、撚糸機により
2000〜4000(T/m )の強撚糸とする。 セット処理;強撚糸に加工処理された生糸を真空状態に
保持し、130〜150℃の湿熱高温処理を15〜30
分間実施し、湿熱高温蒸気を完全にフィラメント内へ浸
透させ、生糸に撚糸構造をセットする。 解撚処理 セット処理後、再び5〜10分間真空状態下に保持して
水分を除去してから、前記加撚処理時とは反転方向に2
000〜4000(T/m )で施撚し、仮撚状態、即ち、
生糸フィラメントには撚糸癖が植え付けられたままで実
質的に無撚に近い状態に戻してしまう。
施されて捲縮性を付与する工程を経た生糸に対し、更に
集束性を保持するための手段として、アフターセット
(約70〜80℃15分程度)を行い、製品として所定
の繊度にするため、必要に応じて合撚して仕上げられ、
集束性に秀れた潜在捲縮性生糸が実現されることとな
る。
から、捲縮性絹糸を実現する捲縮発現処理は、100℃
未満の温水浸漬でも可能であるが、通常の絹の精錬条
件、例えば、重炭酸ソーダ0.1〜0.15g/l 、絹練
石鹸0.2〜0.3g/l を溶かした熱水中で1〜2時間
煮沸する手段によっても、セリシンが溶出して捲縮が発
現する。この発明の潜在捲縮性生糸より得られる捲縮性
絹糸は、捲縮発現に伴う収縮率が5%以上となって、従
来の絹糸に見られない優雅で緻密なバルキー性(膨ら
み)を伴っている。
捲縮性生糸および捲縮性絹糸の特性を、具体的な実験結
果による表1で示すことにする。 *条 件* 生糸原糸(21中/2片) を2本引き揃えて合撚し、84
Pd 、120T/m(Z撚)の糸とし、カセ取りを行っ
た。この糸に対し、柔軟処理として、前記実施例で示し
たとおりの第1浸漬工程および第2浸漬工程によるドレ
ッシングを行い、24hr気乾後、ボビンアップした。こ
の試料を加撚(S撚;2200T/m )→ 熱セット(1
47°Cで20分)→ 解撚(Z撚;2200T/m )の
捲縮性を付与する加工工程を行い、更に3ply に合
撚250d とした後、湿熱75°Cで15分間のアフ
ターセットを実施して潜在捲縮性生糸を得た。この際、
第1浸漬工程におけるドレッシング条件と解撚条件(特
に撚糸張力)とによってセリシンの除去率に差を生じる
ことがあったため、含有セリシン残存率の異なる試料毎
に分類して実験を試みた。
第2浸漬工程を全く経ていないもの、および第2浸漬工
程だけを行ったものに、前記実施例で示したとおりの第
1浸漬工程および第2浸漬工程によるドレッシングを行
ったものと、全く何の処理も行わない生糸原糸250d
[(21中/2片) ×2]×3ply をカセ取りした
ものとを、夫々捲縮発現処理して比較試料に加えた。な
お、含有セリシン残存率は、 a;生糸の熱水抽出減量(%) {(a−b)/a}×100(%) b;加工処理後の熱水抽出減量(% )で算出することができる。また、収縮率は、 生糸の ◆長 Lmm(0.1mg/dの加重下) 捲縮発現後の◆長 lmm(0,1mg/dの加重下) とした場合、 収縮率(%)=(L− l/L)×100 で表される。
性率とは、JISL1090に準拠して次ぎに依った。 l1 mm : 初加重 (2 mg/d)をかけた時のカセ長 l2 mm : 垂下加重(0,1 g/d)をかけて30秒経過した時のカセ長 l3 mm : 垂下加重を除去し、2分間放置して再び初加重をかけた時の カ セ長 とした時 捲縮伸長率(%) : ( l2 − l1 / l1 ) ×100 捲縮弾性率(%) : ( l2 − l3 / l2 − l1 )×100 で表される。
対象となった試料3種類が、写真1中に等倍外観図
(イ)、(ロ)、(ハ)として示されている。 (イ) 生糸250d (21中/2片) ×2]×3pl
y を10回巻きし、更に折り 返してカセ状
で懸架したもの(カセ長315mm)。 (ロ) 潜在捲縮性生糸250d (21中/2片) ×
2]×3ply を、(イ)と同 様にしてカ
セとし、懸架したもの(カセ長は同じく315mm、収縮
お よび捲縮なし)。 (ハ) 潜在捲縮性生糸から捲縮性を発現させてなる捲
縮性絹糸250d(21中/2片) ×2]×3ply
を、(イ)と同様にしてカセとし、懸架し た
もの(カセ長大きく変化、収縮および捲縮発現)。
は写真1の(ロ)に、そして写真4は写真1の(ハ)に
夫々対応し、夫々各試料の20倍拡大外観図を示してお
り、また、写真5〜7は、各試料の電子顕微鏡写真であ
って、写真5は写真1の(イ)に対応する標準的生糸
を、写真6は写真1の(ロ)に対応する潜在捲縮性生糸
を、そして写真7は写真1の(ハ)に対応する捲縮性絹
糸を示すものである。そして、写真8は、それら試料に
よる垂下加重実験結果による寸法変化を示す外観図であ
って、同(イ)は写真1の(イ)に、同(ロ)は写真1
の(ロ)に、そして、同(ハ)は写真1の(ハ)に夫々
対応している。次ぎに示す表は、上記各試料において、
含有セリシン残存率を変えてなる試料各種、その他試料
の実験結果を一覧表としたものである。
損なうことなく、本来困難とされてきた品質的に優れた
潜在的捲縮性能を持つ生糸とそれを製造する方法、およ
びそれから得られる伸縮性捲縮絹糸を実現することに成
功したものであり、その結果、絹製品として待望視され
てきた新素材が、極めて効率的且つ安価に提供可能とな
って絹製品の開発領域を大いに広げ、新規需要を喚起し
て絹織物業界は固のこと、ニット業界やファッション業
界等といった他の業界にまでも多大の影響を及ぼして、
その発展に寄与していくものと予想される。
機能が潜在していて、気乾状態ではフィラメントの集束
性と直線性とを維持し続けるという性状が備わってい
る。しかも、生糸原糸に比して平滑、柔軟であるため、
製織ならびに製編、更にはその準備工程における障害が
極めて少なくなるという秀れた特徴をも兼ね備えてい
る。したがって、ノンサイズで製織可能になることにも
当然繋がるという利点も有している。繊維としてのこれ
らの特徴、利点は、自由な織り物、編み物の設計の可能
性を生み出し、前記のとおりの新商品開発の領域を広げ
る上で大きな要因となり、その実現に大いに貢献するも
のといえる。
潜在捲縮性生糸で製織あるいは製編された織り物、編み
物生地は、その後、特殊な処理工程を必要とすることな
く、通常の精錬、染色工程だけで潜在化していた捲縮性
能が発現し、それまでの製織あるいは製編工程に都合の
良い集束性と直線性とを維持し続けてきたフィラメント
部分が、いとも簡単、確実に捲縮して1本1本の繊維が
捲縮性絹糸となって、高密度でソフトな膨らみのある外
観の衣料素材に変身し、他の原料素材では到底実現不可
能な絹固有の独特の風合いを有する秀れた生地が実現さ
れてしまうという特筆すべき特徴を発揮するものであ
る。加えて、ナイロン、ポリエステル等といった化学繊
維や、その他の加工糸を含めた他繊維との複合糸開発に
よって独特の新素材を生み出す可能性を秘めていること
も、この捲縮性絹糸の価値を更に一層高めるものとなっ
ている。なお、この捲縮性絹糸は、150℃近い高温の
熱履歴をもっていることから、通常の生糸の先染めのよ
うな加熱条件が加わったとしても何等捲縮性能に支障を
来す虞もない。
され続けてきたこの発明のこれらの潜在捲縮性生糸およ
び捲縮性絹糸は、この発明が包含する極めて新規な製造
手段、即ち、従前までには予想もされていなかった含有
セリシン残存率40%以上、望ましくは45%以上、更
に理想的には略60〜80%程度という高残存率下に維
持し、蛋白質分解、平滑柔軟処理を前処理に採用して残
存セリシンによる弊害を無くし、その後の捲縮性能の付
与工程を可能にするという画期的な製造方法の確立によ
ってもたらされるものであって、その結果、確実且つ安
価な潜在捲縮性生糸および捲縮性絹糸の提供が保証され
るものであることから、この秀れた製造方法は高い評価
がなされなければならない。
画期的な製造方法によって、これまでその実現化が願い
続けられていた潜在捲縮性生糸および捲縮性絹糸を、安
定的に、しかもより絹本来の性状を生かした秀れた繊維
として実現し得たものであることから、その経済性と相
俟って、絹繊維の付加価値が高められる効果により、こ
のところ輸入物に席巻され続けてきた我が国の絹業界の
今後の展望に明るい陽射しをもたらすものとなって、絹
業界はもとよりのこと、絹関連業界からも高い評価がな
されるものと予想される。
収縮性、弾性的性能等の測定試験のために試料としたも
のの等倍外観を写した写真であり、 (イ) 生 糸 250デニールの等倍外観写真。 (ロ) 潜在捲縮生糸250デニールの等倍外観写真。 (ハ) 捲縮絹糸 250デニールの等倍外観写真。
微鏡写真。
微鏡写真。
微鏡写真。
×2×3ply を10回巻きし、更に折 り
返してカセ状とした上、所定時間、所定重量で垂架後、
開放したも のの外観写真(カセ長315◆で
前後のカセ長に変化無し)。 (ロ) この発明の潜在捲縮性生糸250d (21中/
2片) ×2×3ply を、上 記(イ)同様
にして試験し、開放したものの外観写真(カセ長315
◆で前後のカセ長に変化無し、収縮および捲
縮無し)。 (ハ) この発明の潜在捲縮性生糸250d (21中/
2片) ×2×3ply を捲縮 発現させた捲
縮性絹糸を、上記(イ)同様にして試験し、開放したも
のの外観写真(カセ長大きく変化、収縮およ
び捲縮発現)。
いて見てきたとおり、従前までは、捲縮加工処理上で問
題となるセリシン残存率は必要最小限に止めて絹の特性
を維持するようにすると共に、絹固有の性状維持の上で
除き切れない残存セリシンによる弊害を他の手段、即ち
その膠着性を押さえ込むための疎水性合成樹脂処理によ
ってどうにか捲縮性絹糸を実現してきたが、この発明
は、それら従前までの考え方に真っ向から対峙し、可能
な限り含有セリシン残存率を高め、なお且つ捲縮性が潜
在的に付与されるようにした画期的な潜在捲縮性生糸で
あり、それから得られる捲縮性絹糸である。
糸を蛋白質分解作用と膨潤作用のある酵素剤、例えば、
アミラーゼやプロテアーゼ(みどり十字社製、商品名
「パパインC」)等といった天然酵素や、洛東化学社製
「エロチンASL−300」(商品名)、大和化成社製
「プロチン」(商品名)、ナガセ工業社製「ビオラーゼ
APL」(商品名)等の化学酵素の何れかあるいは双方
の組合わせによるものと、ノイゲン(商品名)等の界面
活性剤との混合溶液に浸漬する工程である。そして、続
く対2工程では、第1工程で飽水状態としたままのカセ
状の生糸原糸を、平滑柔軟および固着防止のための処理
剤に浸漬する工程である。以下、これらの製造工程がよ
り明確に把握されるものとするために、この発明が包含
する製造方法の最も代表的な実施例を示すことにする。
第2浸漬工程を全く経ていないもの、および第2浸漬工
程だけを行ったものに、前記実施例で示したとおりの第
1浸漬工程および第2浸漬工程によるドレッシングを行
ったものと、全く何の処理も行わない生糸原糸250d
[(21中/2片)×2]×3plyをカセ取りした
ものとを、夫々捲縮発現処理して比較試料に加えた。な
お、含有セリシン残存率は、 a;原料生糸の熱水抽出減量(%) {b/a}×100(%) b;潜在捲縮生糸の熱水抽出減量(%) で算出することができる。また、収縮率は、 生 糸 の 長 Lmm(0.1mg/dの加重下) 捲縮発現後の 長 lmm(0,1mg/dの加重下) とした場合、 収縮率(%)=(L−l/L)×100 で表される。
Claims (3)
- 【請求項1】 生糸原糸に対し、含有セリシン残存率が
40%以上に維持されるよう規制して柔軟処理を施し、
100℃未満の温水浸漬、または通常の精錬、染色工程
によって捲縮構造が発現されると共に、伸縮性のあるバ
ルキー糸となるまでの気乾状態においては集束性が維持
されようにしたことを特徴とする潜在捲縮性生糸。 - 【請求項2】 生糸原糸を、蛋白質分解作用のある酵素
と界面活性剤との混合溶液に浸漬する第1浸漬工程、浸
漬して膨潤化した飽水状態のままの生糸を、平滑柔軟お
よび固着防止のための処理剤に浸漬させる第2浸漬工程
を経た後、必要に応じて合糸する等して所定の繊度とな
してから、強撚−高温高圧湿熱セット−解撚法によって
実質的に無撚の潜在捲縮性を付与する工程を実施し、最
後に70°C〜80°C前後のアフターセット工程を経
て集束性に秀れた請求項1記載の潜在捲縮性生糸を製造
する方法。 - 【請求項3】 請求項1記載の潜在捲縮性生糸が、10
0℃未満の温水浸漬、または通常の精練、染色工程を経
て実現される伸縮性のある捲縮性絹糸。
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