JPH0887718A - 軟磁性薄膜素子およびこれを用いた磁気ヘッド - Google Patents

軟磁性薄膜素子およびこれを用いた磁気ヘッド

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JPH0887718A
JPH0887718A JP22072594A JP22072594A JPH0887718A JP H0887718 A JPH0887718 A JP H0887718A JP 22072594 A JP22072594 A JP 22072594A JP 22072594 A JP22072594 A JP 22072594A JP H0887718 A JPH0887718 A JP H0887718A
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film
magnetic
soft magnetic
thickness
soft
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JP22072594A
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Susumu Hashimoto
進 橋本
Hitoshi Iwasaki
仁志 岩崎
Futoshi Nakamura
太 中村
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、高い飽和磁束密度および高い透磁率
を有し、磁気ヘッドに問題なく使用することができる軟
磁性薄膜素子およびこれを用いた磁気ヘッドを提供する
ことを目的とする。 【構成】基板上に第1の非磁性膜、磁性膜、第2の非磁
性膜、および誘電体膜が順次形成されてなる軟磁性膜積
層体を具備する軟磁性薄膜素子であって、前記軟磁性膜
積層体における前記磁性膜の膜厚をt1 とし、前記誘電
体膜の膜厚をt2とし、前記第1の非磁性膜の膜厚をt3
とし、前記第2の非磁性膜の膜厚をt4としたときに、
膜厚比0.005<t3 /t1 <0.14、0.005
<t4 /t1 <0.14、0.01<(t3 +t4 )/
1 <0.34、および(t2 +t3 +t4 )/t1
0.288を満足することを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高い飽和磁束密度およ
び高い透磁率を有する軟磁性薄膜素子およびこれを用い
た磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】現在、VTRやHDD等の磁気記録再生
装置においては、記録信号をより高密度にする技術や再
生信号の検出感度を向上させる技術が開発されている。
この記録信号の高密度化においては、より高い保磁力を
有する材料を用いた磁気記録媒体が開発されている。例
えば、Fe,Co,Ni等の金属あるいは合金からなる
磁性粉を用いたメタルテープや、強磁性金属材料を真空
薄膜形成技術法で直接ベースフィルムに形成してなる蒸
着テープ等が開発され、各分野で実用化されている。
【0003】このような高保磁力を有する磁気記録媒体
の特性を充分に発揮させるためには、記録・再生用磁気
ヘッドのコア材料に種々の特性が要求される。すなわ
ち、記録のためには高い飽和磁束密度を有すること、同
一の磁気ヘッドで再生を行うためには高い透磁率を有す
ることがそれぞれ要求される。また、磁気ヘッドとして
使用するためには、耐食性・耐熱性・耐摩耗性等に優れ
ることも要求される。
【0004】従来、磁気ヘッドのコア材料としては、C
o系非晶質合金やセンダスト合金(Fe−Si−Al)
等が実際に使用されている。しかしながら、センダスト
合金は、成膜した場合、膜中の内部応力が大きく、結晶
粒が成長し易く厚膜化が困難である。また、センダスト
合金は、飽和磁束密度が10kG程度で、現状レベル以
上の高密度記録には不充分である。一方、Co系非晶質
合金は、透磁率も高く、飽和磁束密度も高いが、450
℃程度で結晶化してしまうために、磁気ヘッドを作製す
る際の高温でのガラス接合を行うことができない。この
ため、Co系非晶質合金を用いた膜とヘッド本体との間
の接着強度が充分でないという欠点がある。
【0005】また、磁気ヘッドのコア材料に使用できる
他の軟磁性材料としては、特開平2−275605号公
報において開示されているように、窒素雰囲気中で鉄を
主成分とした合金ターゲットを用いてスパッタリングし
て成膜し、これに熱処理を施すことにより微結晶を析出
させてなる窒化鉄系の微結晶膜(FeMN、M:金属元
素)がある。この窒化鉄系の微結晶膜は良好な磁気特性
を示すが、熱処理の際にFeやMと結合しない余分な窒
素が発泡してしまうことがあり、これにより膜が剥離し
たり、磁気特性が劣化するという欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる点に
鑑みてなされたものであり、高い飽和磁束密度および高
い透磁率を有する軟磁性薄膜素子およびこれを用いた磁
気ヘッドを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段および作用】本発明の第1
の発明は、基板上に第1の非磁性膜、磁性膜、第2の非
磁性膜、および誘電体膜が順次形成されてなる軟磁性膜
積層体を具備する軟磁性薄膜素子であって、前記軟磁性
膜積層体における前記磁性膜の膜厚をt1 とし、前記誘
電体膜の膜厚をt2 とし、前記第1の非磁性膜の膜厚を
3 とし、前記第2の非磁性膜の膜厚をt4 としたとき
に、膜厚比0.005<t3 /t1 <0.14、0.0
05<t4 /t1 <0.14、0.01<(t3 +t
4 )/t1 <0.34、および(t2 +t3 +t4 )/
1 <0.288を満足することを特徴とする軟磁性薄
膜素子を提供する。
【0008】また、本発明の第2の発明は、基板上に第
1の非磁性膜、磁性膜、第2の非磁性膜、および誘電体
膜が順次形成されてなる軟磁性膜積層体を具備する軟磁
性薄膜素子であって、前記第1および第2の非磁性膜を
構成する材料は、その結晶構造が塩化ナトリウム型構造
に属するときに(100)面に、その結晶構造が六方晶
系構造に属するときに(001)面に、その結晶構造が
体心立方晶系に属するときに(110)面にそれぞれ優
先配向していることを特徴とする軟磁性薄膜素子を提供
する。
【0009】また、本発明の第3の発明は、基板上に第
1の非磁性膜、磁性膜、第2の非磁性膜、および誘電体
膜が順次形成されてなる軟磁性膜積層体を具備する軟磁
性薄膜素子であって、前記第1および第2の非磁性膜の
膜厚が500nm未満であることを特徴とする軟磁性薄
膜素子を提供する。
【0010】本発明の第1〜第3の発明において、基板
としては、ガラスや樹脂等からなる非晶質基板や、各種
フェライト等からなる単結晶基板等を用いることができ
る。また、磁性膜の材料としては、例えば微結晶の窒化
鉄系材料、侵入型元素を含有する鉄基合金等を用いるこ
とができる。特に、磁性膜の材料として、一般式Fe
100-x-yxy (式中、AはTi、Zr、Hf、N
b、Ta、Mo、およびWからなる群より選ばれた少な
くとも一つであり、BはC、O、およびNからなる群よ
り選ばれたいずれか一つである)において、0<x<2
0、0<y<22(x,yは原子%を示す)を用いる
と、良好な軟磁気特性を示すので好ましい。
【0011】さらに、第1および第2の非磁性膜の材料
としては、Zr、Ti、Hf、Mo、W、Nb、V、T
a、Cr、およびこれらの窒化物、酸化物、炭化物、リ
ン化物、もしくはホウ化物等を用いることができる。こ
こで、窒化物、酸化物、炭化物、リン化物、もしくはホ
ウ化物とは、非磁性膜を構成する材料にN,O,C,
P,もしくはBの侵入型元素が含まれていることを意味
する。特に、第1および第2の非磁性膜の材料として、
CrNやTiN等の遷移金属の窒化物を用いることによ
り、熱処理中の磁性膜と第1もしくは第2の非磁性膜と
の間、並びに磁性膜と誘電体膜との間の拡散を防止する
ことができ、さらに基板との間の密着性を向上させるこ
とができる。
【0012】磁性膜の膜厚t1 は、0.2〜5μm、特
に0.5〜3μmであることが好ましい。これは、磁性
膜の膜厚t1 が0.2μm未満であると磁気特性(主に
保磁力)が劣化する恐れがあり、磁性膜の膜厚t1 が5
μmを超えると、磁気ヘッドに使用した際に10MHz
以上の高周波領域で表皮効果に伴う渦電流損失が増加
し、磁気ヘッドの出力を低下させる傾向があるからであ
る。
【0013】本発明の第1〜第3の発明において、誘電
体膜は、軟磁性膜積層体の表面の平坦性を向上させると
共に、このような軟磁性膜積層体が繰り返し積層される
場合に、磁性膜間の電気的な結合を切り、高周波が印加
された際に軟磁性薄膜素子全体の磁気特性を良好にする
ために必要な膜である。誘電体膜の材料としては、Si
2 、Al23 、ZrO、SiN、AlN、TiN、
CrN、ZrN、HfN等を用いることができる。ま
た、誘電体膜の膜厚t2 は、10〜1000nm、特に
50〜300nmであることが好ましい。これは、誘電
体膜の膜厚t2 が10nm未満であると軟磁性膜積層体
の表面の平坦性の向上や軟磁性膜積層体を繰り返し積層
する場合の磁性膜間の電気的な結合の遮断が不充分とな
り、高周波が印加されたときの透磁率が悪くなる恐れが
あり、誘電体膜の膜厚t2 が1000nmを超えると軟
磁性膜積層体全体に占める非磁性膜の割合が大幅に増加
してしまい、軟磁性薄膜素子の磁化が低下する傾向があ
るからである。
【0014】本発明の第1の発明においては、磁性膜の
膜厚をt1 とし、誘電体膜の膜厚をt2 とし、第1の非
磁性膜の膜厚をt3 とし、第2の非磁性膜の膜厚をt4
としたときに、膜厚比0.005<t3 /t1 <0.1
4、0.005<t4 /t1<0.14、0.01<
(t3 +t4 )/t1 <0.34、および(t2 +t3
+t4 )/t1 <0.288を満足するように設定す
る。すなわち、t3 /t1は0.005〜0.14に設
定する。これは、t3 /t1 の値が0.005未満であ
ると第1の非磁性膜の結晶配向性が劣化し、t3 /t1
の値が0.14を超えると軟磁性膜積層体の磁化量が低
下し、再生記録効率が低下するからである。t4 /t1
は0.005〜0.14に設定する。これは、t4 /t
1 の値が0.005未満であると磁性膜中の余分なC,
O,N,P,Bを吸収するゲッター効果が減少し、t4
/t1 の値が0.14を超えると軟磁性膜積層体の磁化
量が減少し、再生記録効率が低下するからである。(t
3 +t4 )/t1 は0.01〜0.34に設定する。こ
れは、(t3 +t4 )/t1 の値が0.01未満である
と磁性膜中の余分なC,O,N,P,Bを吸収するゲッ
ター効果が減少し、(t3 +t4 )/t1 の値が0.3
4を超えると軟磁性膜積層体の磁化量が減少し、再生記
録効率が低下するからである。(t2 +t3 +t4 )/
1 は0.288未満に設定する。これは(t2 +t3
+t4 )/t1 の値が0.288を超えると軟磁性膜積
層体の磁化量が減少し、再生記録効率が低下するからで
ある。
【0015】本発明の第2の発明において、第1および
第2の非磁性膜を構成する材料は、その結晶構造が塩化
ナトリウム型構造に属するときに(100)面に、その
結晶構造が六方晶系構造に属するときに(001)面
に、その結晶構造が体心立方晶系に属するときに(11
0)面にそれぞれ優先配向している。ここで、優先配向
している状態とは、第1および第2の非磁性膜を構成す
る材料の結晶構造が塩化ナトリウム型構造に属する場合
には、X線回折における回折強度比(I(220)/I
(200))が0.5以下であることを意味し、結晶構
造が六方晶系構造に属する場合には、X線回折における
回折強度比(I(100)/I(002))が0.8以
下であることを意味し、結晶構造が体心立方晶系に属す
る場合には、X線回折における回折強度比(I(20
0)/I(110))が0.4以下であることを意味す
る。
【0016】このように、第1および第2の非磁性膜を
構成する材料が特定の面について優先配向した状態であ
ると、磁性膜を構成する材料の結晶配向を(100)面
に優先配向させることができ、また、磁性膜中のFeの
格子歪みを低減することができる。その結果、軟磁性薄
膜素子の磁気特性が向上する。
【0017】本発明の第3の発明においては、第1およ
び第2の非磁性膜の膜厚が500nm未満に設定され
る。さらに、ここで、第1および第2の非磁性膜の膜厚
3 ,t4 は、30nm以上500nm未満であること
が好ましい。これは、非磁性膜の膜厚t3 ,t4 が30
nm未満であると、非磁性膜の結晶配向の効果が少な
く、磁気特性が向上せず、非磁性膜の膜厚t3 ,t4
500nmを超えると、非磁性膜の結晶配向が特定の結
晶面で優先配向した状態とならず、磁性膜の結晶配向が
(100)面に優先配向する可能性が低くなり、その結
果、磁性膜の磁歪が大きくなり、磁気特性が劣化するか
らである。また、非磁性膜の膜厚t3 ,t4が500n
mを超えると、膜表面の平坦性が悪くなり、そのために
軟磁性膜積層体の表面性が乱れて磁気特性が劣化する。
【0018】このように、所定の膜厚および材料の第1
および第2の非磁性膜を用いることにより、熱処理中に
磁性膜中の余分な窒素等の元素を吸収させることがで
き、これにより磁性膜中の浮遊窒素が減少し、磁性膜の
磁歪が小さくなる。したがって、軟磁性薄膜素子におい
て、透磁率を増加させることができ、保磁力を低下させ
ることができる。
【0019】上記構成を有する軟磁性膜積層体は、真空
蒸着法、スパッタリング法、MBE法等の公知の成膜方
法を用いることにより形成することができる。このよう
な軟磁性薄膜素子は、磁気記録用の記録・再生磁気ヘッ
ド等のデバイスに適用することができる。
【0020】
【実施例】次に、本発明の実施例について図面を参照し
て具体的に説明する。 (実施例1)図1は本発明の軟磁性薄膜素子の一実施例
を示す断面図である。図中1は結晶化ガラス基板を示
す。結晶化ガラス基板1上には、第1の非磁性膜として
膜厚50nmのTi膜2を介して磁性膜である膜厚2μ
mのFeZrN膜3が形成されている。さらに、FeZ
rN膜3上には、第2の非磁性膜として膜厚50nmの
Ti膜4を介して誘電体膜である膜厚100nmのSi
2 膜5が形成されている。上記構成を有する軟磁性膜
積層体は、結晶化ガラス基板1にスパッタリング法によ
りTi膜2を形成し、次いで、87at%Fe−13a
t%Zrの組成を有するターゲットを用い、窒素雰囲気
中(分圧比で5%の窒素を含む)でRFマグネトロンス
パッタリングを行ってTi膜2上にFeZrN膜3を形
成し、次いでFeZrN膜3上に、スパッタリング法に
よりTi膜4およびSiO2 膜5を順次形成することに
より作製した。この軟磁性膜積層体は、アモルファス状
態であることが確認された。その後、この軟磁性膜積層
体に550℃で1時間の熱処理を施した。
【0021】このようにして得られた軟磁性膜積層体に
ついて、結晶配向性をX線回折法により調べた。その結
果のX線回折パターンを図2に示す。図2から分かるよ
うに、第1および第2の非磁性膜であるTi膜2,4
は、(001)面に優先配向しており、磁性膜であるF
eZrN膜3は、(110)面に優先配向している。ま
た、FeZrN膜3の結晶粒径が10nm以下であるこ
とが確認された。
【0022】また、上記軟磁性膜積層体について、曲げ
法で磁歪を測定することにより磁気特性を評価した。そ
の結果、磁歪が0.5×10-6と低く、飽和磁束密度が
1.7T以上であり、保磁力が16A/m以下であっ
た。さらに、透磁率についても周波数1MHzにおいて
6000を超える高い値を示した。このように本発明の
軟磁性薄膜素子は良好な軟磁気特性を示すことが分かっ
た。
【0023】また、この軟磁性膜積層体について、第2
の非磁性膜であるTi膜4と磁性膜であるFeZrN膜
3との界面における拡散状態をオージェ分析で調べた。
その結果を図3に示す。図3から分かるように、Ti膜
4とFeZrN膜3との界面における拡散は少なく、窒
素がTi膜4に多く見られる。このことからTi膜4は
窒素のゲッター効果(元素を吸収する効果)を示すこと
が分かる。
【0024】比較例として、Ti膜2,4の膜厚を50
0nm以上にした場合の試料も作製して、上記と同様の
特性評価を行なったところ、良好な磁気特性が得られ
ず、Ti膜2,4の結晶配向性も低下していた。
【0025】本実施例では、第1および第2の非磁性膜
としてTi膜2,4を用い、磁性膜としてFeZrN膜
3を用いた場合について説明しているが、第1および第
2の非磁性膜としてZr、Hf、Mo、W、Nb、V、
Ta、Cr、これらの窒化物、酸化物、炭化物、リン化
物、もしくはホウ化物からなる膜を用い、磁性膜として
他の組成の材料からなる膜を用いた場合も本実施例と同
様に良好な磁気特性が得られた。 (実施例2)図4は本発明の軟磁性薄膜素子の他の実施
例を示す断面図である。結晶化ガラス基板1上には、第
1の非磁性膜として膜厚50nmのCrN膜6を介して
磁性膜である膜厚2μmのFeZrN膜3が形成されて
いる。上記構成を有する軟磁性膜積層体は実施例1に記
載した方法により作製した。その後、この軟磁性膜積層
体に550℃で1時間の熱処理を施した。
【0026】この軟磁性膜積層体について、実施例1と
同様にして結晶配向性および磁気特性を調べた。その結
果、第1の非磁性膜であるCrN膜6は、(100)面
に優先配向しており、磁歪が0.6×10-6と低く、飽
和磁束密度が1.7T以上であり、保磁力が16A/m
以下であった。さらに、透磁率についても周波数1MH
zにおいて5000を超える高い値を示した。このよう
に本発明の軟磁性薄膜素子は良好な軟磁気特性を示すこ
とが分かった。
【0027】比較例として、第1の非磁性膜として膜厚
100nmのCr膜を用いた軟磁性膜積層体と、第1の
非磁性膜を形成しない軟磁性膜積層体(結晶化ガラス基
板上に直接FeZrN膜を形成した軟磁性膜積層体)を
作製し、上記と同様に特性評価を行なった。第1の非磁
性膜としてCr膜を用いたものについてオージェ分析を
行った。その結果を図5に示す。図5から分かるよう
に、熱処理により磁性膜を構成する材料の主成分である
FeとCrが、Cr膜とFeZrN膜との界面において
相互に拡散している。さらに、この第1の非磁性膜とし
てCr膜を用いた軟磁性膜積層体について上記と同様の
特性評価を行なったところ、磁歪が2.6×10-6と大
きく、飽和磁束密度が1.3T以下と小さく、保磁力が
160A/m以上と大きく、磁気特性は非常に悪かっ
た。一方、第1の非磁性膜を有しない軟磁性膜積層体
は、熱処理後に基板から剥離した。
【0028】さらに比較例として、CrN膜6の膜厚を
500nm以上にした場合の試料も作製して、上記と同
様の特性評価を行なったところ、良好な磁気特性が得ら
れず、CrN膜6の結晶配向性も低下していた。
【0029】本実施例では、第1の非磁性膜としてCr
N膜6を用い、磁性膜としてFeZrN膜3を用いた場
合について説明しているが、第1の非磁性膜としてTi
N等の窒化物、Zr、Hf、Mo、W、Nb、V、T
a、Cr、これらの酸化物、炭化物、リン化物、もしく
はホウ化物からなる膜を用い、磁性膜として他の組成の
材料からなる膜を用いた場合も本実施例と同様に良好な
磁気特性が得られた。 (実施例3)結晶化ガラス基板上に第1の非磁性膜とし
て膜厚50nmのTiN膜を形成し、その上に87at
%Fe−13at%Taの組成を有するターゲットを用
いてRFマグネトロンスパッタリングを行って膜厚3μ
mのFeTa膜を形成し、さらにその上に第2の非磁性
膜として膜厚40nmのTi膜および誘電体膜として膜
厚150nmのSiO2 膜を形成した。基板上のここま
での構成を1ユニットとし、これを5ユニット積層して
軟磁性膜積層体を作製した。その後、この軟磁性膜積層
体に550℃で1時間の熱処理を施した。
【0030】この軟磁性膜積層体について、透磁率の周
波数依存性を調べた。その結果を図6に示す。なお、透
磁率はμリング法により測定した。また、比較例とし
て、結晶化ガラス基板/600nmTiN膜/3μmF
eTaN膜/40nmTi膜/150nmSiO2 膜の
構成を1ユニットとし、これを5ユニット積層して軟磁
性膜積層体を作製し、その透磁率の周波数依存性を上記
と同様にして調べた。その結果を図6に併記する。図6
から分かるように、本発明の軟磁性薄膜素子の方が透磁
率の周波数依存性について優れている。
【0031】また、第1および第2の非磁性膜、誘電体
膜、および磁性膜の材料組成や膜厚を本発明の範囲内で
種々組み合わせた軟磁性膜積層体を作製し、上記と同様
の特性評価を行ったところ、本実施例と同様に良好な磁
気特性が得られた。 (実施例4)結晶化ガラス基板上に第1の非磁性膜とし
てTi膜を形成し、その上に90at%Fe−10at
%Zrの組成を有するターゲットを用い、窒素雰囲気中
(分圧比で5%の窒素を含む)でRFマグネトロンスパ
ッタリングを行って膜厚2μmのFeZrN膜を形成し
て軟磁性膜積層体を作製した。このとき、第1の非磁性
膜の膜厚を0〜600nmの間のいくつかの厚さとし
た。その後、この軟磁性膜積層体に550℃で1時間の
熱処理を施した。
【0032】これらの軟磁性膜積層体について保磁力を
測定し、第1の非磁性膜の膜厚と保磁力との関係を調べ
た。その結果を図7に示す。なお、保磁力はB−Hルー
プトレサーにより測定した。図7から分かるように、第
1の非磁性膜の膜厚が30nm〜500nmの範囲で保
磁力は16A/m以下となり、良好な軟磁気特性を示し
た。これに対して第1の非磁性膜の膜厚が30nm未満
や500nmを超える場合には、保磁力は80A/m以
上となり、良好な軟磁気特性を示さない。
【0033】また、第1の非磁性膜および磁性膜の材料
組成や膜厚を本発明の範囲内で種々組み合わせた軟磁性
膜積層体を作製し、上記と同様の特性評価を行ったとこ
ろ、本実施例と同様に良好な磁気特性が得られた。 (実施例5,6)図8に示すように、結晶化ガラス基板
上に誘電体膜として膜厚100nmのSiO2 膜5を形
成し、その上に第1の非磁性膜として膜厚50nmのT
i膜2を形成し、その上に87at%Fe−13at%
Zrの組成(実施例5)および88.5at%Fe−1
1.5at%Taの組成(実施例6)を有するターゲッ
トを用いてRFマグネトロンスパッタリングを行って膜
厚3μmのFe(Zr,Ta)N膜7を形成し、さらに
その上に第2の非磁性膜として膜厚50nmのTi膜4
を形成した。ここまでの構成を1ユニットとし、これを
6ユニット積層して軟磁性膜積層体を作製した。
【0034】次いで、図9に示すように、これらの軟磁
性薄膜素子11を厚さ0.58mmの非磁性基板12(日
立金属社製、AX007)上に接合用ガラス13を用い
て550℃、1時間でガラス接合した。また、ギャップ
接合として350℃、1時間の熱処理でガラス接合を行
った。これにより軟磁性薄膜素子には熱処理が施され
た。このようにして得られた磁気ヘッド本体にコイル1
4を巻回して、トラック幅(Tw)が約13μm、記録
・再生ギャップが0.3μmであるラミネート型磁気ヘ
ッドを作製した。
【0035】得られた磁気ヘッドについて、透磁率の周
波数特性を調べた。その結果を図10に示す。また、比
較例として実施例5において第1および第2のの非磁性
膜を形成していない軟磁性薄膜素子を用いた磁気ヘッド
(比較例)の透磁率も図10に併記する。図10から分
かるように、本発明の軟磁性薄膜素子を用いた磁気ヘッ
ドの透磁率は周波数1MHzで2500と非常に大き
い。これに対して、比較例の軟磁性薄膜素子を用いた磁
気ヘッドは透磁率が1MHzで200程度と非常に小さ
かった。このように、本発明の軟磁性薄膜素子を用いた
磁気ヘッドは、透磁率が大きく磁気ヘッドとしての再生
出力特性が良好であることが分かる。
【0036】
【発明の効果】以上説明した如く本発明の軟磁性薄膜素
子は、高い飽和磁束密度および高い透磁率を有し、磁気
ヘッドに問題なく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の軟磁性薄膜素子の一実施例を示す断面
図。
【図2】図1に示す軟磁性膜積層体のX線回折パターン
を示す図。
【図3】図1に示す軟磁性膜積層体のオージェ分析結果
を示す図。
【図4】本発明の軟磁性薄膜素子の他の実施例を示す断
面図。
【図5】比較例の軟磁性膜積層体のオージェ分析結果を
示す図。
【図6】軟磁性膜積層体の透磁率の周波数依存性を示す
グラフ。
【図7】第1の非磁性膜の膜厚と保磁力との関係を示す
グラフ。
【図8】本発明の軟磁性薄膜素子の他の実施例を示す断
面図。
【図9】本発明の軟磁性薄膜素子を用いた磁気ヘッドの
一例を示す斜視図。
【図10】軟磁性薄膜素子の透磁率の周波数依存性を示
すグラフ。
【符号の説明】
1…結晶化ガラス基板、2,4…Ti膜、3…FeZr
N膜、5…SiO2 膜、6…CrN膜、7…FeZrN
膜、11…軟磁性薄膜、12…非磁性基板、13…接合
用ガラス、14…コイル。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に第1の非磁性膜、磁性膜、第2
    の非磁性膜、および誘電体膜が順次形成されてなる軟磁
    性膜積層体を具備する軟磁性薄膜素子であって、前記軟
    磁性膜積層体における前記磁性膜の膜厚をt1 とし、前
    記誘電体膜の膜厚をt2 とし、前記第1の非磁性膜の膜
    厚をt3 とし、前記第2の非磁性膜の膜厚をt4 とした
    ときに、膜厚比0.005<t3 /t1 <0.14、
    0.005<t4 /t1 <0.14、0.01<(t3
    +t4 )/t1 <0.34、および(t2 +t3 +t
    4 )/t1 <0.288を満足することを特徴とする軟
    磁性薄膜素子。
  2. 【請求項2】 基板上に第1の非磁性膜、磁性膜、第2
    の非磁性膜、および誘電体膜が順次形成されてなる軟磁
    性膜積層体を具備する軟磁性薄膜素子であって、前記第
    1および第2の非磁性膜を構成する材料は、その結晶構
    造が塩化ナトリウム型構造に属するときに(100)面
    に、その結晶構造が六方晶系構造に属するときに(00
    1)面に、その結晶構造が体心立方晶系に属するときに
    (110)面にそれぞれ優先配向していることを特徴と
    する軟磁性薄膜素子。
  3. 【請求項3】 基板上に第1の非磁性膜、磁性膜、第2
    の非磁性膜、および誘電体膜が順次形成されてなる軟磁
    性膜積層体を具備する軟磁性薄膜素子であって、前記第
    1および第2の非磁性膜の膜厚が500nm未満である
    ことを特徴とする軟磁性薄膜素子。
  4. 【請求項4】 前記磁性膜は、一般式Fe100-x-yx
    y (式中、AはTi、Zr、Hf、Nb、Ta、M
    o、およびWからなる群より選ばれた少なくとも一つで
    あり、BはC、O、N、P、およびBからなる群より選
    ばれたいずれか一つである)で表したとき、0<x<2
    0、0<y<22(x,yは原子%を示す)なる組成を
    有する請求項1〜3のいずれか1項記載の軟磁性薄膜。
  5. 【請求項5】 非磁性基板上に、請求項1〜4のいずれ
    か1項記載の軟磁性薄膜素子で磁気回路の少なくとも一
    部が構成されるとともに、所定の磁気的ギャップが設け
    られてなる磁気コアと、前記磁気コアに巻回されたコイ
    ルとを具備することを特徴とする磁気ヘッド。
JP22072594A 1994-09-16 1994-09-16 軟磁性薄膜素子およびこれを用いた磁気ヘッド Pending JPH0887718A (ja)

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