JP3127075B2 - 軟磁性合金膜と磁気ヘッドおよび軟磁性合金膜の熱膨張係数の調整方法 - Google Patents

軟磁性合金膜と磁気ヘッドおよび軟磁性合金膜の熱膨張係数の調整方法

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JP3127075B2
JP3127075B2 JP06037378A JP3737894A JP3127075B2 JP 3127075 B2 JP3127075 B2 JP 3127075B2 JP 06037378 A JP06037378 A JP 06037378A JP 3737894 A JP3737894 A JP 3737894A JP 3127075 B2 JP3127075 B2 JP 3127075B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、軟磁気特性に優れ、熱
膨張係数の小さい軟磁性合金膜とその軟磁性合金膜を用
いた磁気ヘッドおよび軟磁性合金膜の熱膨張係数の調整
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録分野においては、記録密
度をより高めるために記録媒体の保磁力を高めるととも
に、この記録媒体に対応できる高性能の磁気ヘッドが開
発されている。磁気記録密度を高めるためには、磁気ヘ
ッドのトラック幅やギャップ長をできるだけ狭くするこ
とと、飽和磁束密度と透磁率を高めつつ保磁力を小さく
することが好ましい。このような観点から、フェライト
等により形成された磁気コアの磁気ギャップ近傍に金属
磁性膜を配したメタルインギャップ型(MIG型)の磁
気ヘッドが実用化されている。
【0003】また、トラック幅を狭くし、比抵抗を高く
して渦電流損失を軽減し、高周波帯域の磁気特性を向上
させるために、積層型磁気ヘッドと呼ばれる磁気ヘッド
が開発されている。積層型磁気ヘッドは、軟磁性合金膜
を基体上にスパッタや蒸着法などの成膜法により形成
し、その軟磁性合金膜上に再び基体を接着して磁気コア
を基体で挟み込むように構成したもので、成膜した軟磁
性合金膜の厚さがそのままトラック幅となる。従って、
狭トラック化が容易であり、記録密度の向上と、隣接す
るトラックとの干渉の防止を図ることができる。また、
磁気回路形成部分が厚さ数μmの軟磁性合金膜となるた
め、渦電流損失を軽減することができ、高周波帯域にお
ける磁気ヘッドの性能を向上させることができる。
【0004】ところで本発明者らは、前記MIG型の磁
気ヘッドあるいは積層型の磁気ヘッドに好適な軟軟磁性
合金膜として、Fe Sia Alb d e fなる組成
の軟磁性合金膜を開発し、先に特許出願を行っている。
なお、前記組成式においてMは、Ti、Zr、Hf、
V、Nb、Ta、Mo、Wのうち1種または2種以上の
元素を示し、Zは、C、Nから選択された1種または2
種の元素を示し、Tは、Cr、Ti、Mo、W、V、R
e、Ru、Rh、Ni、Co、Pd、Pt、Auの1種
または2種以上を示し、組成比a、b、d、e、fは、
8≦a≦15、0.5≦b≦10、1≦d≦10、0.5
≦e≦15、0≦f≦10なる関係を満足する。この組
成系の軟磁性合金膜において、スパッタなどの成膜法に
より形成し、更に熱処理を施して数nm〜数10nmオ
ーダーのFeの微細結晶粒を析出させたものは、高い飽
和磁束密度と優れた透磁率を示し、保磁力も低いので、
優れた軟磁気特性を有し、磁気ヘッド用として極めて優
れている。
【0005】また、最近の本発明者らの研究により、こ
の軟磁性合金膜の組織は、Feの微細結晶粒とこの微細
結晶粒の粒界に析出されたFe以外の元素の炭化物また
は窒化物を主体とする組織であることが判明している。
更に最近の研究により、前記軟磁性合金膜において、軟
磁気特性を向上させるためには、粒界に存在する炭化
物、窒化物などの非磁性粒子を少なくすれば良いことも
判明しており、前記組成の軟磁性合金膜において、元素
M(周期律表第IVA族、VA族、VIA族元素)の炭
化物の濃度を極力少なくした膜、例えばFe-Si-Hf
-C系、Fe-Si-Al-W-C系などの膜において、元
素MやCを約4原子%以下とした膜では、元素MやCを
10原子%以上含む組成系の膜よりも優れた軟磁気特性
が得られることも判明している。
【0006】このように粒界の非磁性粒子が少なくなる
と軟磁気特性が向上する理由は、磁性を担うFeの微細
結晶粒どうしが磁気的に結合する際に、粒界に存在する
非磁性粒子がこの磁気的結合を分断すると思われるの
で、この粒界に存在する非磁性粒子を少なくすることで
Feの微細結晶粒同士の磁気的結合性が向上し、この結
果、軟磁気特性が向上するものと推定している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記の如く
元素MやCなどを少なくした軟磁性合金膜においては、
膜自体の軟磁気特性は優れるものの、平均熱膨張係数
(線膨張係数α)の比較的小さな炭化物(α=60〜7
0×10-7/度)の量が少なくなるために、全体の熱膨
張係数が高くなる問題がある。例えば、元素MおよびC
を各々約4原子%以下に抑えた膜では、α≧140×1
-7を示す。このように軟磁性合金膜の熱膨張係数が高
くなると、積層型の磁気ヘッドやMIG型の磁気ヘッド
の場合、基体となるフェライト製やセラミックス製の磁
気コアとの熱膨張差が大きくなり、成膜処理時あるいは
熱処理時に熱応力がかかり易く、この熱応力により軟磁
性合金膜の軟磁気特性が劣化してしまう問題がある。
【0008】ところで、コンピュータのハードディスク
用の磁気ヘッド、オーディオ用磁気ヘッド、あるいは、
ビデオカメラ用の磁気ヘッドを製造するには、通常、ブ
ロック状の基体に軟磁性合金膜と非磁性層と溶着用ガラ
ス層を成膜し、他の基体と貼り合わせ、加熱圧着して両
者をガラス溶着し、接合した一対の基体を接合面と直角
方向に切り出し、研磨加工を施すことにより一対の基体
から多数の磁気ヘッドを製造することが行われている。
なお、このような製造方法を実施する場合、目的とする
磁気ヘッドの構造に合わせ、基体として、フェライト基
体などの磁性体の基体を用いる場合もあればセラミック
製の非磁性の基体を用いることもあり、また、軟磁性合
金膜の構造に合わせて、複数種類の軟磁性合金膜、中間
層、絶縁層などを必要に応じて積層する場合がある。
【0009】従ってこの種の磁気ヘッドを製造する場合
は、ガラス溶着工程において必ず高温(例えば600〜
700℃程度)に加熱され、その後室温まで冷却される
処理がなされることになる。この場合、磁気ヘッドの基
体には、Mn-Znフェライト、MnO-NiO系セラミ
ックス、TiO2-CaO系セラミックスなどが用いら
れ、軟磁性合金膜にはセンダストやアモルファス合金ま
たは微細結晶合金などが多用されているが、これら基体
と軟磁性合金膜の材料の熱膨張係数が前述のように異な
ることから、冷却時に熱応力がかかり易く、歪が生じや
すい。概して、基体の材料の方が軟磁性合金膜を構成す
る材料よりも熱膨張係数が小さいことが多く、基体より
も軟磁性合金膜が大きく収縮し、軟磁性合金膜に歪が生
じることになる。
【0010】こうした歪が生じると、磁気コアの透磁率
の低下と保磁力の増加が起こりやすくなり、磁気ヘッド
としては甚だ不都合であった。また、このような特性の
劣化は、MIG型の磁気ヘッドのように軟磁性合金膜を
基体で挾持しない場合でもセラミックなどの基体上に軟
磁性合金膜を成膜している限り当然発生する傾向にあ
る。しかも、この歪による影響は、ガラス接合界面のみ
ならず、軟磁性合金膜が成膜されている基体との界面に
も生ずる。このため、この熱歪の問題は、積層型磁気ヘ
ッドに限らずMIG型の磁気ヘッドや薄膜磁気ヘッド等
においても重要な問題となっている。
【0011】本発明は前記課題を解決するためになされ
たもので、基体上に形成されて磁気ヘッド用などとして
使用される軟磁性合金膜において、基体との熱膨張係数
差を少なくして熱歪が付加されることを防止し、高い飽
和磁束密度と透磁率を有し、保磁力の低い優れた軟磁性
特性を示す軟磁性合金膜を提供すること、および、その
を用いた磁気ヘッドを提供すること、更には、軟磁性合
金膜の熱膨張係数を調整して優れた軟磁気特性の軟磁性
合金膜を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は前
記課題を解決するために、Feを主成分とする体心立方
構造であって、平均結晶粒径が40nm以下の微細結晶
と、前記微細結晶の粒界に析出されたTi、Zr、H
f、V、Nb、Ta、Mo、Wのうち1種または2種以
上の元素の炭化物または窒化物とを具備してなり、更に
Siを必須として含有し、前記体心立方構造の微細結晶
に、少なくとも、SiとAlのうち1種または2種と、
Ruを固溶してなるものである。
【0013】請求項2記載の発明は前記課題を解決する
ために、請求項1において下記の組成式からなるもので
ある。 Fe100-a-b-c-d-e Sia Alb Rucde 但し、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、M
o、Wから選択された1種または2種以上の元素、Zは
C、Nから選択された1種または2種の元素を表し、組
成比a、b、c、d、eは原子%で、8≦a≦15、0
≦b≦10、0.5≦c≦15、1≦d≦10、1≦e
≦10なる関係を満足する。
【0014】請求項3記載の発明は前記課題を解決する
ために、請求項1または2記載のFeを主成分とする微
細結晶が、非晶質相を熱処理して生成された非平衡状態
のものであり、平衡状態におけるFeの結晶に対するR
uの固溶限界量よりも多くのRuをFeの微細結晶内に
固溶してなるものである。
【0015】請求項4記載の発明は前記課題を解決する
ために、請求項1、2または3において、室温から70
0℃までの線膨張係数を110〜140×10-7/度と
したものである。
【0016】請求項5記載の発明は前記課題を解決する
ために、請求項1、2または3において、室温から70
0℃までの線膨張係数を110〜130×10-7/度と
したものである。
【0017】請求項6記載の発明は前記課題を解決する
ために、請求項1、2、3、4または5記載の軟磁性合
金膜を磁気コアの一部ないしは全部に用いたものであ
る。
【0018】請求項7記載の発明は前記課題を解決する
ために、Ruを少なくとも固溶してなるFe微細結晶を
主体とし、その粒界にTi、Zr、Hf、V、Nb、T
a、Mo、Wのうち1種または2種以上の元素の炭化物
または窒化物を析出させてなり、更にSiを必須として
含有する軟磁性合金膜の熱膨張係数の調整方法であっ
て、成膜された非晶質相を熱処理することによって非平
衡状態のFeの微細結晶を析出させ、この際に、平衡状
態でFeの結晶に固溶し得るRu量よりも多くのRuを
固溶させて熱膨張係数を調整するものである。
【0019】請求項8記載の発明は前記課題を解決する
ために、請求項7に記載のFeの微細結晶にSiとAl
を更に固溶させてなるものである。
【0020】請求項9記載の発明は前記課題を解決する
ために、請求項7または8に記載の軟磁性合金膜として
下記の組成式からなるものを用いるものである。 Fe100-a-b-c-d-e Sia Alb Rucde 但し、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、
Wから選択された少なくとも1種以上の元素、ZはC、
Nから選択された少なくとも1種以上の元素を表し、組
成比a、b、c、d、eは原子%で、8≦a≦15、0
≦b≦10、0.5≦c≦15、1≦d≦10、1≦e
≦10なる関係を満足する。
【0021】
【作用】本発明者等は、先に開発したFe Sia Al
b d e fなる組成の軟磁性合金膜について研究を
続けた結果、この軟磁性合金膜の微細組織がFeを主成
分とする体心立方(bcc)構造の微細結晶と、その粒
界に分散した元素Mの炭化物または窒化物などの非磁性
粒子を主体としてなり、前記Feの微細結晶には、平衡
状態で許容される量よりも多くの元素が固溶しているこ
とを知見した。また、この組成系において、元素Mの炭
化物の熱膨張係数と体積分率は決まっいて、いずれも小
さいので、Feの微細結晶に固溶する元素であって、な
おかつ単体での熱膨張係数が小さい元素の添加が有効で
あると考え、種々の添加元素の添加を検討したところ、
Ruの添加が極めて有効であることを知見した。
【0022】この組成系において平衡状態でRuは数原
子%程度しかFeの結晶に固溶できないが、非晶質相か
ら結晶化することにより生成されたFeの微細結晶は、
非平衡状態にあり、平衡状態のFeの結晶よりも多くの
Ruを固溶できる。これにより軟磁性合金膜に大量のR
uを含有させることが可能になり、その熱膨張係数の調
整が可能になり、熱膨張係数を小さくすることで磁気ヘ
ッド用とする際の基体との熱膨張係数差が小さくなり、
熱処理時やガラス溶着時の加熱処理に伴う熱応力の影響
が小さくなり、磁気ヘッドに用いた場合の軟磁気特性が
向上する。
【0023】軟磁性合金膜の熱膨張係数は基体との差異
を少なくして軟磁気特性の劣化を防止する必要から、1
10〜140×10-7/度の範囲が好ましく、110〜
130×10-7/度の範囲がより好ましい。また、本発
明の軟磁性合金膜は、従来使用していた軟磁性合金膜を
用いた磁気ヘッドよりも高温での熱処理に耐え得る。よ
って、より高温のガラス溶着工程に耐えるので、溶着ガ
ラスの選択幅が拡がり、容易に溶着できるようになる。
【0024】前記組成の軟磁性合金膜を用いて磁気ヘッ
ドを形成するならば、飽和磁束密度が高く、高い透磁率
を示し、保磁力の低い優れた軟磁気特性の磁気ヘッドが
得られる。また、前記構造あるいは前記組成の軟磁性合
金膜を備えた磁気ヘッドを製造する際に、ガラス溶着工
程や熱処理工程を行って高温に加熱しても軟磁性合金膜
の軟磁気特性が劣化するおそれはない。
【0025】以下に本発明について更に詳細に説明す
る。図1は本発明に係る軟磁性合金膜を用いて構成され
たハードディスク装置用磁気ヘッドの一例を示す。図1
に示す磁気ヘッド10は、浮上レール16、16の形成
されたスライダ14と、一方の浮上レール16の端部に
形成されたコア部18と、磁気コア20とで概略構成さ
れるもので、スライダ14とコア部18を基体とする
と、これらの基体中に磁気コア20が挟み込まれて配置
されている。
【0026】図1のA部分の拡大を図2に示す。スライ
ダ14の一部分でもある基体14'と基体14''の間に
軟磁性合金膜20'が挟み込まれ、同様にコア部18の
一部分でもある基体18'と基体18''との間に軟磁性
合金膜20''が挟み込まれ、軟磁性合金膜20'と軟磁
性合金膜20”で磁気コア20が構成されている。更
に、スライダ14とコア部18の間には非磁性層が介在
され、これが磁気ギャップ22を構成している。更にま
た、磁気コア20の一方の面と基体14''、18''との
間には、磁気コア20と基体14''、18''を接合する
ラミネートガラス24が介在されている。更にまた、図
示していないが、コア部18にはコイルが巻回されて磁
気ヘッドが構成される。
【0027】前記磁気ヘッド10において、軟磁性合金
膜20'、20''は、Feを主成分とする体心立方構造
であって、平均結晶粒径が40nm以下の微細結晶と、
前記微細結晶の粒界に析出されたTi、Zr、Hf、
V、Nb、Ta、Mo、Wのうち1種または2種以上の
元素の炭化物または窒化物とを具備してなり、前記微細
結晶に、少なくともSiとAlのうち1種または2種
と、Ruを固溶してなる軟磁性合金膜から形成されてい
る。
【0028】前記軟磁性合金膜として下記の組成式から
なるものを用いることが好ましい。 Fe100-a-b-c-d-e Sia Alb Rucde 但し、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、
Wから選択された少なくとも1種以上の元素、ZはC、
Nから選択された少なくとも1種以上の元素を表し、組
成比a、b、c、d、eは原子%で、8≦a≦15、0
≦b≦10、0.5≦c≦15、1≦d≦10、1≦e
≦10なる関係を満足する。更に、前記Feの微細結晶
が、成膜のままでは非晶質相であるものを熱処理して生
成されたものであり、平衡状態におけるRuのFeに対
する固溶限界量よりも多くのRuを固溶してなるものを
用いることが好ましい。
【0029】前記組成の軟磁性合金膜において、Feは
主成分であり、磁性を担う元素である。前記元素Mの炭
化物または窒化物からなる非磁性粒子は、Feを主成分
とする結晶の成長、粗大化を抑制し、軟磁気特性の耐熱
性を向上させる効果がある。また、スパッタなどの成膜
の際に非晶質化し易くする作用がある。これらの効果を
得るために、添加量は1原子%以上あることが望ましい
が、10原子%を超えると飽和磁束密度Bsが低下する
ので好ましくない。
【0030】CまたはNは前記元素Mと結合して、炭化
物または窒化物を生成するものである。また同様に、ス
パッタの際に非晶質化し易くする作用がある。スパッタ
後に軟磁性合金膜が非晶質であると、後の熱処理時に均
質な微細結晶を得られ易いので好ましい。これらの効果
を得るために添加量は1原子%以上あることが好ましい
が、10原子%を超えると飽和磁束密度Bsが低下する
ので好ましくない。
【0031】Alの添加は、Al :耐環境性を向上させる効果がある。Al :Feの結晶に固溶し、比抵抗を増加させる効果が
ある。Al :結晶粒の成長を遅くするとともに、結晶磁気異方
性エネルギを低下させて優れた軟磁気特性を高温まで維
持し、耐熱温度を上げる作用がある。このAlの添加量
は、Alの効果を発揮させるために、0.5原子%以上
あることが好ましい。しかしながら、25原子%よりも
多くなると、磁歪λsが大きくなり過ぎ、また飽和磁束
密度Bsも低下するので好ましくない。
【0032】Siは、Si :Alの添加により増加する磁歪λsを低減する作
用がある。Si :スパッタの際に軟磁性合金膜を非晶質化し易くす
る作用がある。したがって、軟磁性合金膜を非晶質化し
易くするために、従来、炭化物または窒化物を多量に含
有させていたが、炭化物または窒化物の含有量を低減す
ることができ、炭化物または窒化物による飽和磁束密度
の低下を抑制することができる。Si :SiはFeの結晶に固溶し、比抵抗を増加させる
効果がある。Si :結晶粒の成長を遅くするとともに、結晶磁気異方
性エネルギを低下させて軟磁気特性の耐熱温度を上げる
作用がある。
【0033】このSiの添加量は、前記SiSiの効
果を発揮させるためにも、0.5原子%以上あることが
好ましい。しかしながら、25原子%よりも多くなる
と、飽和磁束密度Bsが低下するので好ましくない。ま
た、SiとAlは、同時に複合添加すると磁歪λsを0
〜+3.0×10-6と抑えると同時に耐環境性を向上さ
せることができるため、本発明の効果を得るのに更に有
効である。Siの効果をより有効に発揮させるために、
Siは8原子%以上含有することがより好ましい。通常
は25原子%までは許容できるが、Siの効果が過剰に
なり、負の磁歪(Alの添加分は正磁歪)が大きくなる
場合があるので、より好ましくはSiは15原子%以下
とすることがより好ましい。
【0034】Ruは、非晶質相から熱処理により生成さ
せた非平衡状態のFeの微細結晶に平衡状態のFeの結
晶よりも多量に固溶する。しかも、Ru単体の線膨張係
数が96×10-7/度と低いので、軟磁性合金膜の熱膨
張係数を小さくするために好適である。Ruの含有量を
多くすると、軟磁性合金膜に付加される応力の値は減少
する。保磁力においては、Ru含有量15原子%までは
少ないが15原子%を超えると急激に増加するので、R
u含有量の上限は15原子%が好ましい。なお、飽和磁
束密度に関し、Ruの添加量が増加してもほとんど低下
しない。以上のことから本発明において、Ruの含有量
を0.5〜15原子%とすることが好ましい。
【0035】その他、H,O,S等の不可避的不純物に
ついては、所望の特性が劣化しない程度に含有していて
も本発明の軟磁性合金の組成と同一とみなすことができ
るのは勿論である。
【0036】また、軟磁性合金膜の室温から700℃ま
での線膨張係数(熱膨張係数)が110〜140×10
-7/度であることが好ましく、室温から700℃までの
線膨張係数が110〜130×10-7/度であることが
より好ましい。更に、軟磁性合金膜の平均結晶粒径は4
0nm以下であることが好ましい。前記の熱膨張係数の
範囲を満たしていれば、基体には各種の磁気ヘッドにお
いて通常用いられるMnO-NiO系セラミックス、T
iO2-CaO系セラミックスなどを用いることができ
る。これらの基体は、室温〜700℃の間における平均
線熱膨張係数が115×10-7〜145×10-7/度で
ある。
【0037】図1に示す構造の磁気ヘッドを製造するに
は、図3に示すように、まず、ブロック状の基体26の
一方の側面に軟磁性合金膜20を成膜する。次に、その
軟磁性合金膜20上にラミネートガラス24を成膜し、
もう一方の基体26'と貼り合わせ、加熱、圧着して溶
着する。この際、必要に応じて基体26'の接合面にも
ラミネートガラス24を成膜しておく。そして、室温に
まで冷却してラミネートガラス24が固化した後、この
ブロックを切断し、切削や研磨等の諸加工を経て、所定
形状の複数のスライダとコア部をそれぞれ形成する。ま
た、前記ガラス溶着工程の熱を利用して軟磁性合金膜に
熱処理を施し、成膜したままの非晶質相を熱処理により
結晶質相に変えて目的の軟磁気特性を示す軟磁性合金膜
とする。なお、非晶質相を結晶質相に変えるには、ガラ
ス溶着時の熱を利用しなくとも良く、別途に専用の熱処
理工程を実施しても良い。
【0038】次に、別々に形成されたスライダとコア部
を、それぞれに挟み込まれている軟磁性合金膜が連続す
るように位置を合わせて、非磁性の溶着ガラス21を巻
線穴の上部に充填して磁気ギャップ部を接合する。こう
して図1に示す磁気ヘッド10を製造する。また、基体
上に軟磁性合金膜を成膜する際に、複数の軟磁性合金膜
とSiO2などの絶縁層を交互に積層することで、図4
に示すような、一対の基体28、28間に挟まれた、複
数の軟磁性合金膜32、32と絶縁層34、34からな
る磁気コア33を形成することもできる。なお、図4に
おいては、符号24が磁気コア33と基体28を接着す
るラミネートガラスであり、符号30は磁気ギャップで
ある。
【0039】図5は、本発明に係る軟磁性合金膜を備え
た他の例の磁気ヘッド36を示すものである。この例の
磁気ヘッド36は、Mn-Znフェライト基体に軟磁性
合金膜44を形成した一対の半コア38、38を磁気ギ
ャップ42を形成するように接合した構成のMIG型の
磁気ヘッドである。巻線孔52にはコイル46を巻回
し、軟磁性合金膜の成膜された磁気コア半体38、38
は、トラック幅規制溝48に充填されたるガラスで溶着
されている。
【0040】
【実施例】本発明に係る軟磁性合金膜は、熱処理を施す
ことで元素Mの炭化物または窒化物が均一に分散した状
態になるものである。Fe71.2Si11.1Al2.3Ru7.5
Hf3.34.6なる組成の合金膜を例にして、熱処理前と
熱処理後のX線回折パターンを測定した。熱処理は、6
80℃で20分間保持し、その後室温まで冷却するもの
とした。また、X線回折パターンはCo-Kα線源を用
いて測定した。熱処理前のX線回折パターンを図7に、
熱処理後のX線回折パターンを図6に示した。図7か
ら、成膜したままの軟磁性合金膜は、ブロードなハロー
パターンが示されており、熱処理前は非晶質であること
がわかる。
【0041】次に図6から、熱処理後では、α-Fe
(体心立方構造のFeを主成分とする結晶)とHfC
(Hfの炭化物の結晶)の存在が確認できる。しかも、
α-Feの回折ピークの位置から、α-Feの結晶にはS
iとAlが固溶していることがわかる。また、α-Fe
とHfCの各X線回折ピークの半値幅から、α-Feの
結晶粒径は15nm、HfCの結晶粒径は約2〜3nm
であることがわかる。
【0042】本発明で軟磁性合金膜に適用できる軟磁性
合金を図3に示すように、平板上の基体26の上に成膜
し、もう一方の基体26'とラミネートガラス24で接
着した試料の透磁率と保磁力を測定し、耐食性を試験し
た。試験に供した基体26,26'は厚さを1mmとし、
軟磁性合金膜20の膜厚は5μmとし、ラミネートガラ
ス24の膜厚は0.5μmとした。接合は700℃で20
分間の加熱圧着を行なった。また、軟磁性合金膜の成膜
は、高周波2極スパッタ法を利用したもので、基板は水
冷し、スパッタターゲットにはFe又はFeの合金ター
ゲットにグラファイト及び種々の元素のペレットを配置
した複合ターゲットを使用したものである。
【0043】尚、スパッタ条件は次の通りである。到達
真空度:5×10-7Torr以下、入力高周波電力密度:
2.4×104W/m2、Ar圧:5mTorr。また、軟磁性
合金の線熱膨張係数(αf)は、予め、物性値の判明し
ている基板上に成膜したものでの湾曲率の温度依存性を
光センサによって測定し算出したものである。基体の線
熱膨張係数(αs)は熱機械分析装置(TMA)により
測定したものである。飽和磁歪定数λsは、軟磁性合金
膜を基体間に挾持する前に、光テコ法によって評価した
ものである。初透磁率μの測定は8の字コイル法で測定
したものである。保磁力HcはDC B−Hループトレ
ーサにより測定したものである。
【0044】Fe69.5Si12.0Al1.1Ru10.8Hf2.7
3.9なる組成の軟磁性合金膜をTiO2-Ca系の材料
からなる基体に成膜して得た試料を用いて測定したαf
の値は117×10-7/度であった。更に、この試料に
おいては、基体のαsは125×10-7/度、膜のλs
は+0.7×10-6、1MHzのμは2300、保磁力
は30A/mであった。また、Fe66.7Si12.4Al
0.8Ru11.3Hf3.85.0なる組成の軟磁性合金膜をM
nO-NiO系の材料からなる基体に成膜して得た試料
を用いて測定したαfの値は116×10-7/度であっ
た。更に、この試料においては、基体のαsは135×
10-7/度、膜のλsは+1.1×10-6、1MHzの
μは3600、保磁力は25A/mであった。
【0045】次に、前記と同等の方法で作成したFe
80-xSi12RuxHf34なる組成の合金膜試料におい
て、Ru濃度xを変えて作成した種々の組成の軟磁性合
金膜試料の線膨張係数の測定を行った。線膨張係数の測
定は、先の試験と同等の方法で行い、100〜700℃
の平均を求めた。その結果を図8に示す。図8に示す結
果から明らかなように、Ruの添加量が増加するに従い
線膨張係数は徐々に低下することが明らかである。この
結果から見れば、線膨張係数を小さくするには、Ru含
有量を多くすれば良いことが明らかである。
【0046】Fe80-xSi12RuxHf34なる組成の
軟磁性合金膜試料とFe75-xSi11RuxAl3Hf56
る組成の軟磁性合金膜試料において、Ru濃度xを変え
て作成した種々の組成の軟磁性合金膜試料の膜応力の測
定を行った。膜応力を測定するには、Mn-Znフェラ
イト基体(線膨張係数α≒117×10-7/度)に成膜
したものに対し、680℃で20分間加熱し常温まで冷
却する熱処理を施した後の反りを測定し計算した。その
結果を図9に示す。図9において、応力値の符号が正の
ものは、膜に引張応力が作用しているものを示し、応力
値が負のものは膜に圧縮応力が作用していることを示し
ている。図9に示す結果から、Ru濃度が高いほど膜応
力は少なくなり、Ru濃度10〜15重量%の範囲内に
おいて膜応力が0に近い値になっている。図9に示す結
果から、膜応力に関しRuの濃度が15原子%以下の範
囲においてでるだけ高い方が膜応力が少なく、磁気ヘッ
ド用として好適であることが明らかになった。
【0047】Fe80-xSi12RuxHf34なる組成の
軟磁性合金膜試料とFe75-xSi11RuxAl3Hf56
なる組成の軟磁性合金膜試料において、Ru濃度xを変
えて作成した種々の組成の軟磁性合金膜試料の飽和磁束
密度の測定を行った。その結果を図10に示す。図10
に示す結果から明らかなように、Ruの添加量が増加す
るに従い飽和磁束密度は若干低下することが明らかであ
るが、その低下割合は少なく、15原子%のRu含有量
であっても磁気ヘッド用として十分に高い飽和磁束密度
を有していることが明らかになった。
【0048】Fe80-xSi12RuxHf34なる組成の
軟磁性合金膜試料とFe75-xSi11RuxAl3Hf56
なる組成の軟磁性合金膜試料において、Ru濃度xを変
えて作成した種々の組成の軟磁性合金膜試料の保磁力の
測定を行った。その結果を図11に示す。図11に示す
結果から明らかなように、Ru含有量が15原子%以下
の範囲では十分に低い保磁力を示すが、Ru含有量が1
5原子%を超えると保磁力が急激に上昇することが明ら
かになった。これは以下に説明する理由によるものと思
われる。
【0049】図12は、Fe60.1Si11.8Ru17.1Hf
4.05.0なる組成の軟磁性合金膜試料の680℃熱処理
後のX線回折パターンを示すものであるが、この結果か
ら明らかなように、Ru含有量が15原子%を超える
と、Ruを高濃度で含む化合物結晶の析出が見られてい
る。平衡状態においてFe-Si結晶中へのRuの固溶
量は10原子%以下であるが、この発明に係る合金系に
おいては、先に図6を基に説明したように10原子%を
超える試料においてもRuがFeの微細結晶に固溶して
いることが判明している。ところが、図12に示す結果
から明らかなように、15原子%を超えるRu含有量で
はRuを高濃度で含む化合物結晶が析出し、これが影響
して保磁力が増大することが明らかになった。この結果
から、本発明に係る軟磁性合金膜においてはRu含有量
の上限を15原子%とすることが好ましいことが判明し
た。
【0050】図1で示したハードディスク用磁気ヘッド
において、本実施例に相当する磁性膜と基体で構成した
磁気ヘッドと、これに該当しない磁気ヘッドでの孤立波
再生出力を測定した。尚、試験に供した磁気ヘッドは、
基体構成材料としてTiO-CaO系セラミックスを用
い、トラック幅を5.5μm、ギャップ深さを2μmと
し、測定に供したハードディスクの保磁力Hcを160
0 Oe、周速を8.84m/s、磁気ヘッドの浮上量を
80nmにして測定した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】表1に示す結果から明らかなように、本発
明に係る軟磁性合金膜を用いた磁気ヘッドは、比較例の
軟磁性合金薄膜を用いた磁気ヘッドに比べ、膜の熱膨張
係数が基体の熱膨張係数に近く、これにより膜に加わる
応力が小さくなり、結果的にヘッド出力が2.1dB向
上した。
【0053】本発明に係る軟磁性合金膜を用いて、図5
に示したVTR用の映像磁気ヘッド(磁気コアのギャッ
プ近傍部分(一部分)のみに軟磁性合金膜を配置し、磁
気コアの他の部分はMn-Znフェライト(α≒117
×10-7/度)で構成したもの)を製造し、自己録再出
力の周波数特性を測定した。ここでの自己録再出力は、
インダクタンスで規格化した相対値である。試験に供し
た磁気ヘッドの磁性膜と基体を表2に示す。尚、磁気ヘ
ッドのトラック幅は23μm、ギャップ深さは20μm
とし、試験に用いた磁気テープは保磁力が1500 O
eのものとし、磁気ヘッドと磁気テープの相対速度は
3.8m/sとした。その結果を図13に示す。
【0054】
【表2】
【0055】図13に示す結果から明らかなように比較
例の磁気ヘッドに比べて本発明の磁気ヘッドは、いずれ
の周波数域においても出力が2〜3dB高いという結果
が得られた。
【0056】図14は、本発明に係るFe71.2Si11.1
Al2.3Ru7.5Hf3.34.6なる組成の軟磁性合金膜の
680℃熱処理後の顕微鏡組織写真(倍率100万倍)
の模式図である。この模式図から明らかなように、粒径
15nm程のFeを主成分とする微細結晶の粒界に、約
2〜3mmの炭化物粒子(非磁性粒子)が黒点のように
分散している状態を確認できた。
【0057】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、Feを主
成分とする微結晶と、Ti、Zr、Hf、V、Nb、T
a、Mo、Wなどの元素の炭化物または窒化物と、Si
を必須として含有し、Feを主成分とする微細結晶にR
uを固溶させているので、熱膨張係数の小さなRuを含
有させることで全体の熱膨張係数を小さくすることがで
き、これにより基体との熱膨張係数差を小さくして熱処
理時やガラス溶着時の熱応力による歪を小さくすること
ができ、軟磁気特性の優れたものを得ることができる。
本発明に係る組成系において平衡状態でRuは数原子%
程度しかFeの結晶に固溶できないが、非晶質相から結
晶化することにより生成されたFeの微細結晶は、非平
衡状態にあり、平衡状態のFeの結晶よりも多くのRu
を固溶できる。これにより軟磁性合金膜に大量のRuを
含有させることが可能になり、その熱膨張係数の調整が
可能になる。更に、Siを必須として含有させることで
成膜時の非晶質化を容易とすることができる。
【0058】本発明に係る軟磁性合金の組成において、
SiとAlの添加量を特別の範囲とすることで、飽和磁
束密度が高く、成膜時に非晶質となりやすい軟磁性合金
膜を得ることができ、この非晶質から熱処理することに
よりFeの微細結晶を得ることができ、この微細結晶に
は平衡状態のFeの結晶よりも多くのRuを固溶でき
る。よって、熱膨張係数の調整が可能になる。Ti、Z
r、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wのうち1種以上を
特別の量添加することで、Feの微細結晶の粒界に非磁
性の炭化物粒子あるいは窒化物粒子を析出させることが
でき、この非磁性粒子の存在によりFeを主成分とする
微細結晶相の結晶粒の粗大化を抑制できる。よって優れ
た軟磁性特性を発揮し得る。また、本発明の軟磁性合金
膜は、前記非磁性粒子によりFeを主成分とする結晶の
粗大化が抑制されるので、従来使用していた軟磁性合金
膜を用いた磁気ヘッドよりも高温での熱処理に耐え得
る。よって、より高温のガラス溶着工程に耐えるので、
溶着ガラスの選択幅が拡がり、容易に溶着できるように
なる。
【0059】軟磁性合金膜の熱膨張係数は基体との差異
を少なくして軟磁気特性の劣化を防止する必要から、1
10〜140×10-7/度の範囲が好ましく、110〜
130×10-7/度の範囲がより好ましい。
【0060】前記組成の軟磁性合金膜を用いて磁気ヘッ
ドを形成するならば、飽和磁束密度が高く、高い透磁率
と、低い保磁力の優れた合金膜の軟磁気特性が発揮され
た高性能の磁気ヘッドが得られる。また、前記構造ある
いは前記組成の軟磁性合金膜を備えた磁気ヘッドを製造
する際に、ガラス溶着工程や熱処理工程を行って高温に
加熱しても軟磁性合金膜の軟磁気特性が劣化するおそれ
はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハードディスク装置用磁気ヘッドの斜視図であ
る。
【図2】図1に示す磁気ヘッドのA部分の拡大図であ
る。
【図3】磁気ヘッドの製造過程を示す工程図で、図3
(a)はブロック状基体を接合する前の状態を示し、図
3(b)は接合後の状態を示すものである。
【図4】他の例の磁気ヘッドの磁気ギャップ部分の拡大
図である。
【図5】VTR用の映像磁気ヘッドの斜視図である。
【図6】実施例の軟磁性合金の熱処理後のX線回折パタ
ーンである。
【図7】実施例の軟磁性合金の熱処理前のX線回折パタ
ーンである。
【図8】本発明に係る軟磁性合金膜のRu含有量と線膨
張係数の関係を示す図である。
【図9】本発明に係る軟磁性合金膜のRu含有量と膜応
力の関係を示す図である。
【図10】本発明に係る軟磁性合金膜のRu含有量と飽
和磁束密度との関係を示す図である。
【図11】本発明に係る軟磁性合金膜のRu含有量と保
磁力の関係を示す図である。
【図12】Ru含有量が15原子%を超えた試料のX線
回折図を示すものである。
【図13】本発明に係る軟磁性合金膜を用いた磁気ヘッ
ドの自己再生出力と周波数の関係を示す図である。
【図14】本発明に係る組成の軟磁性合金膜の結晶組織
を示す模式図である。
【符号の説明】
10 磁気ヘッド 18 コア部 20 磁気コア 20' 軟磁性合金膜 20'' 軟磁性合金膜 21 溶着ガラス 22 磁気ギャップ 24 ラミネートガラス 26、28 基体 30 磁気ギャップ 32 軟磁性合金膜 36 磁気ヘッド 44 軟磁性合金膜 42 磁気ギャップ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H01F 41/22 H01F 41/22 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 10/14 C23C 14/06 G11B 5/127 G11B 5/23 H01F 41/22

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Feを主成分とする体心立方構造であっ
    て平均結晶粒径が40nm以下の微細結晶と、前記微細
    結晶の粒界に析出されたTi、Zr、Hf、V、Nb、
    Ta、Mo、Wのうち1種または2種以上の元素の炭化
    物または窒化物とを具備してなり、Siを必須とし、
    記体心立方構造の微細結晶に、少なくともSiとAlの
    うち1種または2種と、Ruとを固溶してなることを特
    徴とする軟磁性合金膜。
  2. 【請求項2】 下記の組成式からなることを特徴とする
    請求項1記載の軟磁性合金膜。 Fe100-a-b-c-d-e Sia Alb Rucde 但し、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、M
    o、Wから選択された1種または2種以上の元素、Zは
    C、Nから選択された1種または2種の元素を表し、組
    成比a、b、c、d、eは原子%で、 8≦a≦15 0≦b≦10 0.5≦c≦15 1≦d≦10 1≦e≦10 なる関係を満足する。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載のFeを主成分と
    する微細結晶が、非晶質相を熱処理して生成された非平
    衡状態のものであり、平衡状態におけるFeの結晶に対
    するRuの固溶限界量よりも多くのRuをFeの微細結
    晶内に固溶してなることを特徴とする軟磁性合金膜。
  4. 【請求項4】 室温から700℃までの線膨張係数が、
    110〜140×10-7/度であることを特徴とする請
    求項1、2または3記載の軟磁性合金膜。
  5. 【請求項5】 室温から700℃までの線膨張係数が、
    110〜130×10-7/度であることを特徴とする請
    求項1、2または3記載の軟磁性合金膜。
  6. 【請求項6】 請求項1、2、3、4または5記載の軟
    磁性合金膜を磁気コアの一部ないしは全部に用いてなる
    ことを特徴とする磁気ヘッド。
  7. 【請求項7】 少なくともRuを固溶してなるFeの微
    細結晶を主体とし、Feの微細結晶の粒界にTi、Z
    r、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wのうち1種または
    2種以上の元素の炭化物または窒化物を析出させてな
    、更にSiを必須とする軟磁性合金膜の熱膨張係数の
    調整方法であって、成膜された非晶質相を熱処理するこ
    とによって非平衡状態のFeの微細結晶を析出させ、こ
    の際に、平衡状態でFeの微細結晶に固溶し得るRu量
    よりも多くのRuを固溶させて熱膨張係数を調整するこ
    とを特徴とする軟磁性合金膜の熱膨張係数の調整方法。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載のFeの微細結晶にSi
    とAlを固溶させてなることを特徴とする軟磁性合金膜
    の熱膨張係数の調整方法。
  9. 【請求項9】 請求項7または8に記載の軟磁性合金膜
    として下記の組成式からなるものを用いることを特徴と
    する軟磁性合金膜の熱膨張係数の調整方法。 Fe100-a-b-c-d-e Sia Alb Rucde 但し、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、
    Wから選択された少なくとも1種以上の元素、ZはC、
    Nから選択された少なくとも1種以上の元素を表し、組
    成比a、b、c、d、eは原子%で、 8≦a≦15 0≦b≦10 0.5≦c≦15 1≦d≦10 1≦e≦10 なる関係を満足する。
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