JPH0885838A - Ni基超耐熱合金 - Google Patents
Ni基超耐熱合金Info
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Abstract
熱間押し出し工具、等に要求される熱間摺動性、耐ヒー
トクラック性や耐酸化性等の高温特性と被削性および熱
間加工性に優れたNi基超耐熱合金を提供する。 【構成】 本発明は、時効処理された組織を有し、該組
織を構成する相が原子%から式(1)により計算される
MC型炭化物量で0.02〜1.5%、原子%から式
(2)により計算されるガンマプライム(γ’)量で1
0〜30%、および体積%で表されるα−W量で0.5
〜30%と、残部がNiを主体とするオーステナイト相
からなることを特徴とするNi基超耐熱合金である。 (1)2[C] (2)4(0.026[Cr]+0.13[Mo]+0.13[W]+0.61[Al]+0.68[T
i]+0.5[Nb]+0.5[Ta]-[C])
Description
間、熱間の温度域で使用される温間、熱間鍛造金型や、
CuやAlまたはそれらの合金の熱間押出し工具や部品
等に使用されるNi基超耐熱合金に関するものである。
数低減の流れを受けて、自動車用のクランクシャフトや
コンロッド等自動車部品を成形する温・熱間鍛造金型の
寿命向上が望まれている。しかし、従来のSKD61に
代表される熱間工具鋼では、そのニーズに応えきれてい
ないのが現状である。また、CuやAlまたはそれらの
合金の熱間押し出し工具には、A286のようなFe基
超耐熱合金が用いられたり、インコネル718合金が使
用されたりしているが、この用途においても寿命改善に
よる工数の低減が求められている。これらの他に、継ぎ
目無し鋼管の製造に用いる穿孔プラグやマンドレル等、
1200℃程度の高温域で使用される熱間工具を対象と
して特開平3−61345号、また、1000℃〜11
50℃の高温大気雰囲気中で使用される恒温鍛造金型を
対象として特開平4−41641号等のNi基超耐熱合
金が開示されている。さらに、本発明と目的は異なる
が、Ni−Cr−Wを基本とする超耐熱合金としては、
例えば特公昭54−33212号、特公昭60−587
73号、特公昭58−502号、特公昭562−106
1号に記載の合金等が知られている。
造金型、あるいはCuやAlまたはそれらの合金の押し
出し工具には、熱間加工が可能で、被削性にも優れ、さ
らに常温での高い耐力と靭性、および700℃〜900
℃程度の高温域での優れた熱間摺動性と熱間での耐摩耗
性および耐ヒートクラック性とが要求される。ここで、
熱間摺動性および熱間での耐摩耗性の改善には、酸化皮
膜の密着性と安定性および高温耐力を高めることが要求
される。しかし、従来のSKD61クラスの熱間工具鋼
では、700℃を越えると焼き戻しマルテンサイトの軟
化が生じて高温耐力が低下し、同時に鋼中のCr量が低
いために密着性および安定性に優れた酸化皮膜が形成さ
れず、被加工材と工具が直接接触するため早期に摩耗を
生じ、最後には焼付きを生じてしまう。
膨張係数の低減と高い高温耐力が要求される。しかし、
A286のようなFe基超耐熱合金は、熱膨張係数が高
く、また析出強化相であるガンマプライム相は、Ni3
Tiを主とする組成のために700℃を越える温度域で
安定相であるイータ相に変態してしまい、その結果、高
温強度が低下してしまう問題がある。また、熱間工具は
被削性が優れることが要求されるが、A286のような
超耐熱合金は、一般に被削性がマルテンサイト系の材料
に比べて大幅に悪い欠点がある。ところで、Niをベー
スとする熱間工具用の超耐熱合金もいくつか提案されて
いるが、例えば、特開平3−61345号に開示される
合金は、耐酸化性が十分でなく、熱間での耐摩耗性が不
十分である。また、特開平4−41641号に開示され
る合金は、恒温鍛造型を意図しているために、高い摺動
速度下での熱間摺動性が不十分な問題があった。
超耐熱合金は、いずれも1000℃付近の非常に高い温
度域で、耐熱性と高温での大きいクリープ強度を第一目
的として使用することを前提としている。したがって、
従来のWを多量に添加するNi基超耐熱合金は、いずれ
もWの固溶強化により高温クリープ強度を増加させたも
のであり、本発明の目的とする700〜900℃におけ
る高強度、熱間摺動性の改善に対しては十分ではなく、
本発明が意図する利用分野では特性上使用することは困
難であった。
工具鋼とFe基およびNi基超耐熱合金の問題点を鑑
み、熱間工具鋼の代替を主目的の一つとして熱間加工が
可能で、かつ耐酸化性、高温強度、熱膨張係数、および
被削性の改善が可能な材料の発明に鋭意取り組んだ。そ
の結果、Wを固溶限まで含むNiを主とするオーステナ
イト相を主相とし、時効処理によって析出させるNi3
(Al,Ti)を主とするガンマプライム相、Wの固溶
体(α-W)およびMC型1次炭化物の最適な含有量を
見出すことで、特に熱間工具に適した熱間摺動性、熱間
での耐摩耗性と耐ヒートクラック性および耐酸化性に優
れたNi基超耐熱合金を発明するに至った。さらに、こ
の組織を有する合金で、高温大気中で生成する表面スケ
ールの構造が、表面側から、Crを主とする外部酸化
層、粒状α-W層、およびAl,Tiを主とする内部酸
化層の少なくとも3層以上の構造からなるものは、酸化
皮膜の密着性を改善し、高温耐酸化性と熱間摺動性の改
善に役立つことを新規に見出した。
下記に示される第1発明や第2発明の構成要件から理解
できるように、合金組成のみに存在するのではない。す
なわち、本発明のNi基超耐熱合金と、従来のW含有の
Ni基超耐熱合金の決定的な相違点は、本発明ではガン
マプライム相に特徴づけられる時効処理された組織を有
することである。時効処理は600〜850℃で行なう
ので、従来のNi基超耐熱合金のように1000℃付近
以上で使用する用途では、せっかく析出した時効硬化相
が固溶するから事前の時効処理自体が無意味であり、認
識されていなかったのである。本発明では、従来の類似
の組成のNi基超耐熱合金では、採用できなかった時効
析出相を積極的に利用する。したがって、本発明のNi
基超耐熱合金の組織は、10〜30%の多量のガンマプ
ライム相が存在することが特徴となっている。
理された組織を有し、該組織を構成する相が原子%から
式(1)により計算されるMC型炭化物量で0.02〜
1.5%、原子%から式(2)により計算されるガンマ
プライム量で10〜30%、および体積%で表されるα
−W量で0.5〜30%と、残部がNiを主体とするオ
ーステナイト相からなることを特徴とするNi基超耐熱
合金である。 (1)2[C] (2)4(0.026[Cr]+0.13[Mo]+0.13[W]+0.61[Al]+0.68[T
i]+0.5[Nb]+0.5[Ta]-[C]) (但し、上記式のうち、無添加の元素は0として計算す
る)
る用途での焼付きと耐酸化性の問題を解決するものであ
る。すなわち、本発明者は時効処理を施した第1発明に
代表されるNi基超耐熱合金を含め、各種の合金につい
て、高温大気中で表面スケールを生成せしめた。その結
果、時効処理でガンマプライム相を析出させ、かつWを
含有する合金として、Crを主体とする外部酸化層とA
l,Tiを主とする内部酸化層とで、粒状のα−W層を
はさみ込むように形成した表面スケール層が最も強固な
スケールとなり、高温で摺動する用途での耐焼付性も大
きいことが確認できた。すなわち、本発明の第2発明
は、基地がNiを主体とするオーステナイト相からなる
時効処理された組織を有し、さらに高温大気中で生成す
る表面スケールの構造が、表面側から、Crを主とする
外部酸化層、粒状α-W層、およびAl,Tiを主とす
る内部酸化層の少なくとも3層以上の構造からなること
を特徴とするNi基超耐熱合金である。
適なNi基超耐熱合金の化学組成は、重量%で、C0.
002〜0.15%、Si2%以下、Mn3%以下、C
r10%を越え25%以下、W10〜30%、Fe15
%以下、Al0.4〜2.5%、Ti0.4〜3.5%
を含み、残部が不可避の不純物とNiからなる。上記の
本発明の望ましい合金の組成は、さらにNiの一部を置
換して、重量%で、3.0%以下のNbと3.0%以下
のTaの1種または2種を添加できる。またさらに上記
の組成に加えてNiの一部を置換して、重量%で、10
%以下のMoを、W+2Mo≦30の範囲で添加するこ
と、さらに重量%で、0.2%以下のZrと0.02%
以下のBの1種または2種を添加すること、重量%で、
0.02%以下のMgと0.02%以下のCaの1種ま
たは2種を添加することもできる。以上の合金元素のう
ち、Nb以下に記述されるものは、いずれも可能なすべ
ての組合せで選択的に添加できるものである。また、選
択的に添加された元素は、前述のガンマプライム量の推
定式を満足する必要がある。
用について述べる。MC型の一次炭化物は、本発明のN
i基超耐熱合金中において最も硬質の相であり、本合金
製造の熱間加工中にオーステナイト結晶粒の粗大化を抑
制する作用と、使用中の熱間摺動性を高める作用を持
つ。MC炭化物量は、添加したCの全量がTi,Nbお
よびTaと結びついて存在しているものと考えると、原
子%で表されるC量の2倍がMC型炭化物の含有量とみ
なすことができる。したがって、前述のMC型炭化物量
は(1)式の2[C]で計算される値とする。このMC
型炭化物の効果を発揮するために、MC量は原子%で最
低0.02%を越える添加が必要であるが、1.5%を
越える過度の添加は、MC型炭化物の連鎖状組織を形成
し、その部分がヒートクラック発生の起点となり、工具
寿命を低下させる。よって原子%から計算されるMC型
炭化物量は、0.02〜1.5%の添加とする。好適な
MC炭化物の量は0.1〜1.0%である。
るガンマプライム(γ’)相の析出が最も効果を及ぼ
す。ガンマプライム相の基本組成は、Ni3Alで表わ
されるが、多元系の合金においては、実際には、種々の
添加元素がガンマプライム相のAlサイトに固溶する。
このガンマプライム相の析出量を実測するのは、大変困
難であるため、本発明においては、文献値(原田広史、
山崎道夫:「Ti,Ta,Wを含むγ’析出強化型Ni
基耐熱鋳造合金の合金設計」,鉄と鋼,vol.65,
(1979),p1059)を用いて、後述の実施例1
の本発明合金No.5のγ相とγ’相の組成および両相
の割合を求め、原子%から各元素がγ’相のAlサイト
に入る係数を求めた。ここで、本発明合金の成分範囲か
ら、Ni3AlのAlサイトに固溶する元素として、C
r,Mo,W,Ti,Nb,Taを考えた。ただし、実
施例1のNo.5は、MoとTaを含まない成分系であ
るため、MoとTaの係数は計算できない。そこでMo
とTaのγ’相のAlサイトを占める係数は、それぞれ
同族のWとNbの係数を用いることにした。
aは、添加したCの全量とMC型炭化物を形成した残部
がγ−γ’相の平衡に関与するものとした。この計算結
果から、添加元素のうち、γ’相のAlサイトに入る総
量を求め、さらにこの4倍を計算γ’量とした。即ち、
本発明におけるガンマプライム量は、次式で計算される
ものとし、前述の(2)式に相当する。 計算γ’=4(0.026[Cr]+0.13[Mo]+0.13[W]+0.61[Al]+0.
68[Ti]+0.5[Nb]+0.5[Ta]-[C]) ([ ]内の元素は原子%を表わし、無添加の元素は0と
して計算する)
相を析出させるための熱処理が施されているものであ
る。この熱処理は、まず熱間加工後の組織を均一にし、
析出物を一旦固溶させるための、固溶化処理を行なう。
この固溶強化の温度は、900〜1200℃の範囲が望
ましい。900℃以下では析出物の固溶が不十分で、1
200℃以上では結晶粒が粗大化し、強度、耐ヒートク
ラック性に不利である。但し、常温の強度を重視する場
合には、鍛造の歪を残す目的で固溶化処理をより低温で
行なうか、あるいは省略することもできる。
理は、本発明合金のNi基超耐熱合金では、γ’相を析
出させ、高温強度を増加させるために不可欠である。時
効処理は、600〜850℃の温度が望ましい。600
℃未満では、γ’相の析出に多大な時間を要し、850
℃を越えると析出するγ’相が粗大になるか、または
γ’相が固溶したままで析出せず、十分な高温強度が得
られない。この時効処理は、1回または2回以上の処理
を行なうことができるが、処理時間は合計で少なくとも
3Hr以上が必要である。時効処理により析出した上記
計算γ’量が10%を下回ると、高温強度が低下し、そ
れに伴い、熱間摩耗や、熱間摺動に対する抵抗が低下し
て工具寿命の低下を引き起こす。逆に、計算γ’量が3
0%を越えると、高温変形抵抗が増加し、熱間鍛造が困
難となる。よって上記式による計算γ’量は、10〜3
0%の範囲とする。好適には、13〜25%の範囲であ
る。
特公昭60−58773号、特公昭58−502号、特
公昭56−21061号に記載の合金は、W添加による
固溶強化を目的としており、ガンマプライム形成元素を
ほとんど含んでいない。あるいは少量含む場合でも時効
処理を行なわないので、ガンマプライム相による強化は
図られていない。なぜなら、使用温度が1000℃付近
であるのでγ’相は、使用中に固溶してしまうからであ
り、この場合のγ’形成元素であるAl,Ti,Nb等
の作用は、例えばAlは耐酸化性の向上、Ti,Nbは
炭化物形成による強度向上の作用等で、本発明のように
積極的にγ’相による強化を狙ったものではなく目的が
全く異なる。さらに、上記の各合金は1000℃付近の
高温クリープ強度を重視するため、1200℃以上の温
度で固溶化処理を行なったままか、あるいは固溶化処理
後、1080℃以上再加熱を行なった状態で使用するの
で、結晶粒が粗大化しており、本発明の目的とする70
0〜900℃における強度、耐ヒートクラック性を必要
とする用途には不利である。
造を有するWの固溶体)は、本発明合金に必須の重要な
合金相である。α-W相は、合金の熱膨張係数の低下に
寄与するとともに、熱間摺動時の焼付きを防止する。さ
らに、α-Wは、以下でも述べるが、酸化皮膜の密着性
を改善する効果をももたらす。このα-Wの効果は、画
像解析などの実側による体積%にして、0.5%以上か
ら発揮されるが、30%を越えると、耐酸化性と、熱間
加工性の低下を招くので、α-Wの含有量は体積%にし
て、0.5〜30%の範囲とする。好適には、3〜20
%の範囲である。本発明のNi基超耐熱合金の特徴は、
γ’相とα−W相が同時に存在することであり、これは
従来の超耐熱合金には見られなかったことである。すな
わち、通常のγ’析出強化型超耐熱合金には当然γ’相
が存在するが、α−W相は存在しない。
る合金はα−W相が存在する可能性があるが、それはせ
いぜい結晶粒界や粒内に少量析出させてクリープ強度を
高める効果を図ったもので、本発明における作用効果と
は全く異なる。また、従来のこれらの合金には、前述の
ようにγ’相は存在しない点で決定的な相違がある。本
発明合金においては、γ’相とα−W相が同時に存在す
ることで、初めて700〜900℃における強度、熱間
摺動、熱間摩耗、耐ヒートクラック、耐酸化性等の要求
特性を同時に満足することが可能となったのである。さ
らに、本発明のNi基超耐熱合金は、例えば実施例1に
おける図1に示すように高温大気中で生成する表面スケ
ールの構造が、表面側から、Crを主とする外部酸化
層、粒状α-W層、およびAl,Tiを主とする内部酸
化層の少なくとも3層以上の構造をとることを特徴とす
る。この酸化皮膜形成のメカニズムは明らかではない
が、酸化皮膜構造がこの少なくとも3層以上の構造を取
らない場合には、酸化皮膜の密着性と耐酸化性の低下が
生じるようになる。
ても5μmを越えるα-W粒子が表面に出ているとその
部分はWO3の酸化皮膜が生成し、その部分は、十分な
密着性を持たないが、全体としてα-Wの総量が30%
以下に抑えられているので、工具自身の寿命を大きく低
下させるほどの要因とはならない。なお、スケール中の
粒状α-W層は析出相のα−W相から変化させ、粒子径
は1μm以下のものが多くするのが望ましい。よって本
発明合金を大気中で加熱した場合の表面スケールの構造
は、表面側から、Crを主とする外部酸化層、粒状α-
W層、およびAl,Tiを主とする内部酸化層の少なく
とも3層以上の構造をとることが望ましい。
相およびα-W相と不可避の不純物を除き、残部は、N
iを主体とするオーステナイト相である。この母相は、
Wの固溶度が大きく高温強度が高い。さらに上記範囲の
γ’相の固溶と析出が可能である。そのために、Niを
主体とするNi基合金にする必要がある。
のNi基超耐熱合金の各元素の作用を以下に述べる。C
は、脱酸元素としての作用の他に、Ti,NbおよびT
aと結び付いて、安定なMC型の一次炭化物を形成し、
熱間加工中にオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する
作用と、熱間摺動性を高める作用を持つために添加す
る。Cの効果は、0.002%の添加から発揮される
が、0.15%を越える過度の添加は、MC型炭化物の
連鎖状組織を形成し、その部分がヒートクラック発生の
起点となり、工具寿命を低下させる。よってCは、重量
%で0.002〜0.15%の添加とする。好適には
0.01〜0.07%である。
密着性改善にも効果がある。しかし、2%を越える過度
の添加は、熱間加工性の低下と常温の延性の低下を招
く。よってSiは、重量%で2%以下とする。好適に
は、0.7%以下である。Mnは、脱酸剤として添加さ
れるが、3%を越える過度の添加は、高温強度の低下を
招くため、重量%で3%以下の添加とする。好適には、
1%以下である。Crは、高温加熱中に合金の表面に密
着性の高い酸化皮膜を形成し、耐酸化性を高めるととも
に熱間摺動性も高めることができる。この効果のため
に、最低10%を越える添加を必要とするが、25%を
越える過度の添加は、σ相の析出とそれに伴う延性の低
下を招くので、Crは、重量%で10%を越え、25%
以下の範囲とする。好適には、13〜20%の範囲であ
る。
ステナイト相を得るために、必須の添加元素である。こ
れらの効果を得るために、Wは、重量%で最低10%の
添加を必要とするが、30%を越える過度の添加は、α
-Wの過度の析出と耐酸化性、酸化皮膜の密着性の低下
を招くので、Wは、10〜30%の範囲とする。好適に
は、12〜22%の範囲である。Moは、Wと同族の元
素であり、Wの一部をMoに置換して、Wと同様の作用
をもたらすことができる。しかし、その効果は、Wには
及ばないので、Moは、重量%で10%以下の範囲で、
かつW+2Mo≦30の範囲とする。Feは、本合金に
おいて、必ずしも添加する必要はないが、Niを主とす
るオーステナイト相に固溶して熱間加工性を改善し、ま
た省資源化と低価格化にも役立つため、必要に応じて添
加することができる。しかし、過度の添加は、オーステ
ナイト相を軟化させ、γ’相の析出量を減らし、高温強
度の低下を招くので、Feは重量%で15%以下の添加
とする。好適には、2〜10%の範囲である。
するのに必須の添加元素であり、重量%で最低0.4%
以上の添加を必要する。しかし、2.5%を越える過度
の添加は、γ’相の増量を招き、熱間加工性を低下させ
るので、Alは、0.4〜2.5%の範囲とする。好適
には、0.7〜1.5%の範囲である。Tiの一部は、
Cと結び付いて安定なMC型の一次炭化物を形成し、熱
間加工中にオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する作
用と、熱間摺動性を高める。また、残部のTiはγ’相
に固溶し、γ’相を固溶強化して高温強度向上に役立
つ。そのために、Tiは、重量%で最低0.4%以上の
添加を必要とするが、3.5%を越える過度の添加は、
熱間加工性を低下させるのと同時にγ’相を不安定化し
て、高温長時間使用後の強度の低下を招くので、Tiは
0.4〜3.5%の範囲とする。好適には、0.7〜
2.5%の範囲である。また、Al,Tiは耐酸化性に
対しても重要な作用を有する。すなわち、Al,Ti
は、表面スケール形成において、前述の粒状α−W層の
内部に酸化層を形成することで、粒状α−W層の効果と
相まって酸化皮膜の密着性を改善し、高温耐酸化性と熱
間摺動性を改善する。
び付いて安定なMC型の一次炭化物を形成し、熱間加工
中にオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する作用と、
熱間摺動性を高める。また、残部のNbとTaはγ’相
に固溶し、γ’相を固溶強化して高温強度向上に役立つ
ので、必要に応じて添加できる。しかし、両者とも重量
%で3%を越える過度の添加は、熱間加工性を低下させ
るので、NbとTaの添加範囲は、それぞれ3%以下と
する。ZrとBは、本発明において粒界強化作用により
高温の強度と延性を高めるのに有効であり、本発明合金
に1種または2種を適量添加できる。その効果は少量の
添加量から始まるが、ZrおよびBがそれぞれ重量%で
0.2%および0.02%を越えると加熱時の初期溶融
温度が低下して熱間加工性が劣化するので、Zrおよび
Bの上限は、それぞれ0.2%および0.02%とす
る。
て合金の清浄度を高めるとともに、高温引張やクリープ
変形時さらに熱間加工時の延性改善に役立つため、1種
または2種を適量添加できる。その効果は少量の添加量
から始まるが、Mg,Caがそれぞれ重量%で0.02
%を越えると加熱時の初期溶融温度が低下して熱間加工
性が劣化するので、MgおよびCaの上限は、それぞれ
0.02%とする。Niは、安定なオーステナイト相を
形成し、ガンマプライム相の固溶および析出の基地とな
る。また、Niは、多量のWを固溶できるため、高温強
度の高いオーステナイト基地が得られるため、残部とす
る。
を本発明合金に添加してもよい。Coは、基地のオース
テナイト中に固溶し、若干の固溶強化作用を有するとと
もに、酸化皮膜の密着性を改善させる効果も有する。C
oは、Ni基地中に固溶するのでγ’相の析出にはほと
んど効果を及ぼさないので好都合である。しかしなが
ら、Coは効果的な元素であるので多量の添加は好まし
くない。
の範囲であれば本発明合金に含まれてもよい。 P≦0.02%,S≦0.02%,O≦0.03%,N
≦0.03% 望ましい範囲は次の通りである。 P≦0.01%,S≦0.01%,O≦0.01%,N
≦0.01% 一方、Y,REM,Hf等の元素は熱間加工性を低下さ
せるので本発明合金に特に添加しなくてもよいが、酸化
皮膜の密着性と耐酸化性を改善させる効果をもつので、
以下の範囲で添加してもよい。 Y≦0.2,REM≦0.2,Hf≦0.2
発明合金の添加元素に劣り、またReは高温強度向上に
寄与するが合金価格が高いことにより、本発明合金に特
に添加しなくてもよいが、以下の範囲ならば添加しても
よい。 V≦1%,Re≦1% 以上述べた本発明のNi基超耐熱合金は、単一の真空溶
解、または真空溶解後のエレクトロスラグ再溶解や真空
アーク再溶解等の精練工程を経て得られたインゴットを
熱間鍛造や熱間圧延等の加工工程を通して1次製品に仕
上げられる。これらの素材は前述のようにγ’相を析出
させるため、900〜1150℃の固溶化処理と600
〜850℃の時効処理を実施したのち実用に供される。
No.1〜28、比較合金No.41、42および従来合金No.51〜5
4について真空誘導溶解によって15kgのインゴットを溶
製した後、熱間加工によって30mm角の棒材を作成した。
本発明合金No.1〜No.28と比較合金No.41、42および従
来合金No.51については、原子%で表されるC量の2倍
の値である計算MC型炭化物量と画像解析により実測し
たα-W量を、本発明合金No.1〜No.28と比較合金No.4
1、42については、次式で表される計算γ'量を表1に併
せ示す。 計算γ’=4(0.026[Cr]+0.13[Mo]+0.13[W]+0.61[Al]+0.
68[Ti]+0.5[Nb]+0.5[Ta]-[C]) ([ ]内の元素は原子%)
理後の試料断面を鏡面研摩後、王水にて腐食した試料を
用いた。直径5μm以上の粒子径のものは、光学顕微鏡
により観察し、8000mm2の面積について画像解析を行な
って、面積率を求め、また、直径5μm未満の粒子径の
ものは、走査型電子顕微鏡により観察し、8000μm2の面
積について画像解析を行なって面積率を求め、それぞれ
算出した両者の面積率の和をα-W量とした。ここで、
比較合金No.41は本発明合金に比べてC量が高く、比較
合金No.42は計算γ'量とCr量が本発明合金より低い組
成である。従来合金No.51は特開平3-61345号に記載のN
i−W合金、従来合金No.52はFe基超耐熱合金 A286、
従来合金No.53は析出硬化型熱間工具鋼、従来合金No.54
はJIS SKD61である。
o.1〜28と比較合金No.41、42については、1050℃×30
分保持後油冷の固溶化処理と720℃×8時間保持後徐冷
した後620℃×8時間保持後空冷の時効処理を行った。
また、従来合金No.51は950℃×30分保持後空冷の固溶化
処理を行った。従来合金No.52は980℃×30分保持後空冷
の固溶化処理と730℃×16時間保持後空冷の時効処理を
行った。従来合金No.53は1000℃×30分保持後徐冷の焼
入れ後、硬さ382HVとなるごとく焼もどしを行った。従
来合金No.54は1020℃×30分保持後空冷の焼入れ後、硬
さが446HVとなるごとく焼もどしを行った。
ける硬さ測定、室温および700℃における引張試験、室
温から700℃までの熱膨張係数測定を行った。硬さ試験
は、ビッカース硬度計を用い荷重98Nにて測定を行
い、引張試験についてはASTM法に基づき平行部直径
6.35mm、標点間距離25.4mmに加工した試験片を用いて実
施した。熱間での摺動性を評価するために、熱間摺動試
験を行った。この試験は、直径5mm×長さ20mmの丸棒試
験片を作成し、それをボール盤のチャックに固定する。
試験片端面を600℃に加熱したJIS SNCM439製のブロック
に1540rpmの回転速度で30秒間押しつける。押しつけ荷
重を大きくし試験片がブロックに焼付いた荷重をもって
焼付き発生荷重とした。この焼付き発生荷重が大きいほ
ど、高負荷における熱間摺動性がよいと評価できる。
に、熱間摩耗試験を行った。この試験は熱間鍛造型の摩
耗をシミュレートする簡便な試験法である。より具体的
には、本願出願人の発明として特開平5-260556号に記載
されている。この試験は直径16mmの丸棒試験片の端面に
加熱冷却の熱サイクルを与えることと約800℃に加熱さ
れたJIS S45C製ピンを摩擦摺動させることを繰返して、
試験片端面にヒートクラックを伴った摩耗を起こさせ
る。試験片の加熱温度は600℃とし、ピンとの摺動は面
圧14N/mm2を400rpmの回転速度で5秒間、冷却は32℃の
水で3.5秒間行った。加熱、摩擦摺動、冷却を1サイク
ルとして2000サイクル繰返した後、試験片端面の摩耗深
さを表面粗さ計にて測定して摩耗量とし、また試験片摩
耗部の断面ミクロ組織を観察して発生したヒートクラッ
クの本数および最大長を測定した。
に示す合金より、直径8mm×長さ15mmの丸棒試験片を作
成し、大気中にて900℃×16時間保持後室温まで空冷の
処理を5回繰返した後の酸化重量変化を測定した。上記
の各種試験結果を表2にそれぞれ示す。本発明合金は70
0℃の硬さ、700℃の引張強さが比較合金や従来合金より
高く高温域での機械的性質に優れることが確認された。
熱膨張係数は従来合金No.54に代表される熱間工具鋼と
近い値を示した。従来合金No.52は従来合金No.54に代表
される熱間工具鋼に比べて熱膨張係数が高いことがわか
る。大気中にて900℃×16時間保持を5回繰返した後の
酸化重量変化は、従来合金No.53,54を除き、他はいずれ
も増量値を示し、酸化皮膜の密着性は良好である。
低いと増量値が大きくなり、従来合金No.51のようにC
rがさらに低くなると本発明合金に比べて明らかに増量
値が大きくなり、耐酸化性の向上には、本発明合金並み
のCr量が必要であることがわかる。一方、従来合金N
o.53,54のような熱間工具鋼では減量値を示した。これ
は酸化試験中に酸化皮膜が剥離し、酸化重量はこの剥離
した酸化皮膜を除外して計算したためで、酸化皮膜の密
着性が本発明合金に比べて劣ることがわかる。
後の断面表層部の走査型電子顕微鏡によるミクロ組織な
らびにミクロ組織を解説するために、観察に基づく構成
相の模式図を示す。酸化皮膜を構成する相の同定は、微
小部X線回折ならびにエネルギー分散型X線分析により
実施した。本発明合金は、いずれも700℃〜1000℃の高
温酸化雰囲気では、このような表面側からCrを主とす
る表面酸化層、粒状α-W層およびAl,Tiを主とす
る内部酸化層の3層構造をとる。すなわち、粒状のα−
W層がCrを主とする表面酸化層とAl,Tiを主とす
る内部酸化層にはさまれた形になっており、このような
酸化皮膜構造が、本発明合金の高い耐酸化性と酸化皮膜
密着性およびそれらに付随する高い熱間摺動性と熱間で
の耐摩耗性を有する理由である。
o.54に代表される熱間工具鋼に比べて焼付き発生荷重が
高いことが確認された。熱間摺動性は密着性および安定
性に優れた酸化皮膜の生成と高温耐力が要求されるが、
本発明合金はこれを満たし、熱間摺動性に優れることが
確認された。熱間摩耗試験では、本発明合金は摩耗量が
従来合金No.54に代表される熱間工具鋼に比べて非常に
少ない結果となった。Wを多量に含有する従来合金No.5
1は熱間摺動試験の焼付き発生荷重は高いが、α-W量が
体積%で30%を越えており、またCr量も低いので、生
成される酸化皮膜が長時間における密着性および安定性
に欠けるため本発明合金に比べて耐摩耗性に劣る。従来
合金No.53を除いて、ヒートクラックが発生した。従来
合金No.53はAC1点が低いため摩擦摺動によって試験片
端面の温度は容易にこの温度を越えオーステナイト化
し、それに伴い摩擦摺動部の強度が極端に低下し、ヒー
トクラックが発生してもすぐ摩耗してしまい試験後には
観察されない。
ートクラックが発生しやすく、従ってヒートクラックが
摩擦摺動面の摩擦係数を増加し摩耗が本発明合金より多
くなった。C量の高い比較合金No.41はMC型炭化物の
連鎖状組織を形成しており、その部分がヒートクラック
の起点となっており、ヒートクラックが多く発生し、そ
れに伴い摩耗も多い。比較合金No.42はγ'量が原子%で
10%より低いため700℃の引張強さが本発明合金より低
く摩耗が多い。本発明合金はこの試験によりヒートクラ
ックを伴った熱間での耐摩耗性に優れることが確認され
た。
従来合金No.52,53について実施例1と同じ熱処理を行
い、ボールエンドミルを用いた被削性試験を行った。マ
シニングセンターを用い、セラミックコーティング超硬
製ボールエンドミルにより、水溶性切削油を使用し、刃
先摩耗量の測定により、被削性を調査した。試験条件
は、切削速度50m/min、送り0.05mm/刃、切り込み量は、
軸方向2mm、外周刃方向1mm、切削長25mの条件で実施
し、エンドミルの切刃逃げ面摩耗幅を測定した。試験結
果を表3に示す。本発明合金は、Ni基超耐熱合金の範
疇に属するにもかかわらず、被削性が従来のFe基超耐
熱合金No.52はいうまでもなく、従来の熱間工具鋼No.53
に比べても優れた被削性を示した。この良好な被削性は
微細α-W相の分散によってもたらされる。このように
本発明合金は、時効処理後でも十分な被削性を有するの
で、金型加工後の熱処理が不要なプリハードン工具とし
ても使用できる。
金型に実施した例を示す。表1に示す、本発明合金No.1
0、No.14の類似成分で溶製し直したもの、および従来合
金No.54の組成のものの素材を準備し、これから熱間鍛
造金型を製作し、実用テストを行った結果を表4に示
す。金型は自動車部品のギヤシャフトを製作する型であ
り、寸法は直径80mm×長さ160mmである。このギヤシャ
フトを製作する金型は粗地成形用の粗地型と仕上成形用
の仕上型よりなるが、摩耗の激しい粗地型にてテストを
行った。ワーク材はS35Cであり、高周波加熱装置によ
り1200℃に加熱する。鍛造成形は最大能力1600tのクラ
ンクプレスを使用し、各型打ち後に白色系潤滑剤を型表
面に噴霧した。従来合金No.54はJIS SKD61である。熱処
理は、熱間鍛造金型に荒加工した後、1020℃に加熱し、
200℃の油に浸漬する油焼入れを行い、硬さが446HVとな
るごとく焼もどしを行った。その後仕上加工を行い、実
用テストに供した。
の寿命を示す。この熱間鍛造作業により金型は高温のワ
ークとの接触およびワークとの摺動により金型表層部は
熱影響を大きく受けるが、本金型は従来、黒鉛系潤滑剤
による作業が、白色系潤滑剤に変更になったことに伴
い、特にワークとの摺動発熱作用が大きくなったため、
従来合金No.54は熱影響により焼もどしマルテンサイト
の軟化およびAC1変態点を越えることによりオーステナ
イト変態を起こし、表層部の強度が低下し摩耗が起こり
やすく早期に寿命となった。また白色系潤滑剤が各型打
ち後に型表面に噴霧されるため、型表面には加熱冷却の
熱サイクルが負荷され、型表面にヒートクラックが発生
する。金型表面に発生したヒートクラックはワークとの
摩擦係数を増加するため、ワークとの摺動発熱が大きく
なり型表層部の熱影響を増加させ、また金型表層部に発
生する剪断応力が大きくなり型表層部の塑性流動が増加
するため、摩耗を促進させる。従来合金No.54はヒート
クラック発生により熱影響が大きくなり、発生する剪断
応力が型表層部強度を越えて摩耗が起こりやすく早期に
寿命となった。
化被膜特性によりワークとの摺動発熱を抑制するととも
に、熱影響を受けた場合でも高温の強度が鍛造作業によ
り発生する剪断応力より勝っているので、表層部の塑性
流動は起こらず、摩耗が起こりにくく、寿命が延びた。
本発明合金No.10、No.14にもヒートクラックは発生し
た。ヒートクラックはNo.14の方が多く発生しており、
寿命も短い。No.14はα-W量の多い合金であるが、実用
テスト後の金型の摩耗部のミクロ組織を観察した結果、
ヒートクラックはα-Wに沿って発生しており、α-W量
の多い点でヒートクラックが発生しやすく摩耗が多くな
った。本実用テストではヒートクラックの発生が摩耗と
関係深いが、潤滑の不十分な金型での適用においてはα
-Wの熱間摺動時の耐焼付き性の効果が表われた。
勝るが、室温の硬さでは従来合金に劣る場合がある。そ
の場合、厚みのある金型では鍛造作業時にプレスの負荷
を受けて金型が変形する場合があるが、型彫り部に本発
明合金を、土台部分を従来合金No.54やJIS SKT4等を組
み合わせた金型にすることにより、本発明合金の耐摩耗
性向上の効果が表われた。以上より、本発明合金は主に
700〜900℃程度の温度域で作業することの多い熱
間鍛造型として優れた性能を有することが明らかとなっ
た。
押出し工具に実施した例を示す。表1に示す、本発明合
金No.10の類似成分で溶製し直したもの、および従来合
金No.52の組成のものの素材を準備し、これから熱間押
出し工具を製作し、実用テストを行った結果を表5に示
す。表1に示す従来合金No.52はJIS SUH660でありA286
の名で知られている。この合金はCuまたはCu合金の
熱間押出し工具として知られている。
ものを用い、外筒にJIS SKT4を用い、内筒を本発明合金
No.10製と従来合金No.52製のものを製作し比較した。外
筒は外径200mm、内筒は外径100mm、内径60mmとし、長さ
はともに200mmの小型の二重構造の工具を本発明合金No.
10製と従来合金No.52製について製作した。これらの工
具を用いて100tプレスにより、950℃の純銅ビレットの
押出し実験を行った。内筒は800℃程度の高温と500N/mm
2前後の高圧にさらされ、熱応力により亀甲状のヒート
クラックが生じ、表面剥離を起こして寿命となる。従来
合金No.52の場合、約10000ケ成形時に、既に内径面にヒ
ートクラックの発生が認められたが、本発明合金No.10
の場合は、約30000ケ成形後に僅かにヒートクラックが
認められる程度であった。本発明合金No.10は従来合金N
o.52に比べて、高温域での引張強さが大きい上、熱膨張
係数が小さいのでヒートクラックが発生しにくく、この
ことが押出し工具の寿命を飛躍的に向上させた。この結
果より、本発明合金は熱間押出し工具として優れた性能
を有することが明らかとなった。
摩耗性、耐ヒートクラック性や耐酸化性等の高温特性と
被削性および熱間加工性に優れた合金であり、自動車用
のクランクシャフトやコンロッド等自動車部品を成形す
る温・熱間鍛造金型や、CuやAlまたはそれらの合金
の熱間押し出し工具等に適用すれば、従来材に比較して
工具の寿命を飛躍的に向上させることができる。
時間保持後、室温まで空冷処理を5回繰り返した後の断
面表層部の走査型電子顕微鏡による金属ミクロ組織写真
ならびに構成相の模式図を示す図である。
を本発明合金に添加してもよい。Coは、基地のオース
テナイト中に固溶し、若干の固溶強化作用を有するとと
もに、酸化皮膜の密着性を改善させる効果も有する。C
oは、Ni基地中に固溶するのでγ’相の析出にはほと
んど効果を及ぼさないので好都合である。しかしなが
ら、Coは高価な元素であるので多量の添加は好ましく
ない。
Claims (7)
- 【請求項1】 時効処理された組織を有し、該組織を構
成する相が原子%から式(1)により計算されるMC型
炭化物量で0.02〜1.5%、原子%から式(2)に
より計算されるガンマプライム(γ')量で10〜30
%、および体積%で表されるα−W量で0.5〜30%
と、残部がNiを主体とするオーステナイト相からなる
ことを特徴とするNi基超耐熱合金。 (1)2[C] (2)4(0.026[Cr]+0.13[Mo]+0.13[W]+0.61[Al]+0.68[T
i]+0.5[Nb]+0.5[Ta]-[C]) (但し、上記式のうち、無添加の元素は0として計算す
る) - 【請求項2】 基地がNiを主体とするオーステナイト
相からなる時効処理された組織を有し、さらに高温大気
中で生成する表面スケールの構造が、表面側から、Cr
を主とする外部酸化層、粒状α-W層、およびAl,T
iを主とする内部酸化層の少なくとも3層以上の構造か
らなることを特徴とするNi基超耐熱合金。 - 【請求項3】 Ni基超耐熱合金の組成が、重量%で、
C0.002〜0.15%、Si2%以下、Mn3%以
下、Cr10%を越え25%以下、W10〜30%、F
e15%以下、Al0.4〜2.5%、Ti0.4〜
3.5%を含み、残部が不可避の不純物とNiからなる
ことを特徴とする請求項1または2に記載のNi基超耐
熱合金。 - 【請求項4】 Niの一部を重量%で、3.0%以下の
Nbと3.0%以下のTaの1種または2種で置換した
請求項3に記載のNi基超耐熱合金。 - 【請求項5】 重量%で、10%以下のMoを、W+2
Mo≦30の範囲でNiの一部と置換した請求項3また
は4に記載のNi基超耐熱合金。 - 【請求項6】 Niの一部を重量%で、0.2%以下の
Zrと0.02%以下のBの1種または2種で置換した
請求項3〜5のいずれかに記載のNi基超耐熱合金。 - 【請求項7】 Niの一部を重量%で、0.02%以下
のMgと0.02%以下のCaの1種または2種で置換
した請求項3〜6のいずれかに記載のNi基超耐熱合
金。
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