JPH0867913A - 鉄損の小さい珪素鋼板及びその製造法及び使用法 - Google Patents

鉄損の小さい珪素鋼板及びその製造法及び使用法

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JPH0867913A
JPH0867913A JP23583994A JP23583994A JPH0867913A JP H0867913 A JPH0867913 A JP H0867913A JP 23583994 A JP23583994 A JP 23583994A JP 23583994 A JP23583994 A JP 23583994A JP H0867913 A JPH0867913 A JP H0867913A
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steel sheet
silicon steel
iron loss
energy
strain
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JP23583994A
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Inventor
Hiroaki Masui
浩昭 増井
Masahito Mizogami
雅人 溝上
Takashi Mogi
尚 茂木
Masao Matsuo
征夫 松尾
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 いわゆる磁区制御法と称して製品の表面に人
工的欠陥を付与することで鉄損が低減することが知られ
ている。本発明は磁区制御法の物理的原理を追及しさら
に最適な方法を確立するものである。 【構成】 GOSS粒の磁化容易軸の歪弾性エネルギー
がEx〔100〕≦Ey〔010〕,Ez〔001〕の
ときに人工的欠陥の周辺に90°磁壁及び還流磁区が生
成されることを知見した。Eは外力、被膜張力、溝応力
で計算できるので、これにより最適の磁区制御法が推定
され、ひいては操業にも反映させることも考えられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は鉄損特性に優れた方向性
電磁鋼板(珪素鋼板とも言う)の製造法及び使用法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】近年アモルファスの登場に見られるよう
にエネルギー節減のためトランスのエネルギー変換効率
に影響の大きい電磁鋼板の鉄損低減への要求は大きく、
上記の従来技術の延長ではこの要望に耐えることは困難
となってきた。従来技術においては主として二次再結晶
焼鈍後にいわゆる製品鋼板表面に機械的、化学的あるい
はレーザー等のエネルギー照射的な方法で溝あるいはな
んらかの損傷を意図的に与え、磁区細分化を行い、鉄損
を向上せしめる方法が行われている。又、冷間圧延や一
次再結晶焼鈍後に溝等を付与する方法も行われている。
これらの磁区制御法は方向性珪素鋼板の鉄損を下げトラ
ンスのエネルギーロス低減を図る基本的な技術とされて
おり、鋼板の鉄損を小さくする効果があることが知られ
ている。ところが、この機構と原理が必ずしも明確でな
かったため、工業的にその最適な方策が十分行われてい
るとは言えなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような問
題点を解明し、極めて高磁性の方向性電磁鋼板を得るべ
く新たな製品開発技術を見いだしたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は以下の通
りである。 (1)Siを1〜7重量%含む方向性珪素鋼板におい
て、{110}〈001〉組織における〔100〕方向
(鋼板長手方向)をxとし、直角の〔010〕,〔00
1〕方向をそれぞれy,z方向とするとき、それぞれ各
主軸に生ずる歪弾性エネルギーEx,Ey,EzがEx
≦Ey,Ezを満足するような鋼板面垂直方向成分の残
留応力を有する局部的な欠陥が導入された鉄損の小さい
珪素鋼板。
【0005】(2)8MPa以上の被膜張力を有する
(1)記載の鉄損の小さい珪素鋼板。 (3)局部的欠陥導入部の中心から300μm以内の鋼
板面垂直方向成分の残留応力が6MPa以上である
(1)又は(2)記載の鉄損の小さい珪素鋼板。 (4)局部的欠陥導入部の鋼板長手(圧延)方向での平
均間隔が1〜30mmである(1)ないし(3)いずれ
かに記載の鉄損の小さい珪素鋼板。 (5)歪弾性エネルギーの代わりに、歪弾性エネルギー
に磁気弾性エネルギーを加えたEx′,Ey′,Ez′
がEx′≦Ey′,Ez′を満足することを特徴とする
(1)ないし(4)いずれかに記載の鉄損の小さい珪素
鋼板。 (6)Siを1〜7重量%含む方向性珪素鋼板におい
て、{110}〈001〉組織における〔100〕方向
(鋼板圧延方向)をx方向、それと直角方向〔010〕
方向、〔001〕方向をそれぞれy,z方向とすると
き、それぞれ各主軸に生ずる歪弾性エネルギーEx,E
y,Ezを下記〜の手順で算出する珪素鋼板の製造
方法。 鋼板長手方向X、鋼板幅方向Y、X及びYと直角方向
をZとし、X,Y,Z方向の応力を求める。 試料軸X−Y−Z軸での応力テンソルσX−Y−Zを
結晶軸x−y−z軸での応力テンソルσx−y−zに座
標変換テンソルTを用いて下記の式より変換する。 σx−y−z=T×σX−Y−Z×T 但し×はテ
ンソルのかけ算 弾性歪テンソルξx−y−zを立方晶の弾性歪テンソ
ルSを用いて下記式で求める。 ξx−y−z=S×σx−y−z 弾性歪エネルギーEを下記式により求める。 E=σx−y−z×ξx−y−z
【0006】(7)Siを1〜7重量%含む被膜張力が
8MPa以上の方向性珪素鋼板を所定の大きさに切断し
トランスに組み込む使用方法において、組み込まれた鋼
板の{110}〈001〉組織における〔100〕方向
(鋼板圧延方向)をx方向、それと直角方向〔010〕
方向、〔001〕方向をそれぞれy,z方向とし、それ
ぞれ各主軸に生ずる歪弾性エネルギーEx,Ey,Ez
がEx≦Ey,Ezを満足するような鋼板面垂直方向成
分の残留応力が局部的に存在するように組み込むことを
特徴とする鉄損の小さい珪素鋼板の使用方法。
【0007】(8)機械的方法、エネルギー照射的方
法、電気的方法及び化学的方法のいずれかにより局部的
欠陥導入部及びその周辺部に鋼板面垂直方向成分の残留
応力を存在せしめ、その局部的欠陥導入部の中心から3
00μm以内の鋼板面垂直方向成分の残留応力が6MP
a以上であるような(7)記載の鉄損の小さい珪素鋼板
の使用方法。 (9)不均質部の鋼板長手(圧延)方向での平均間隔が
1〜30mmであるような(7)記載の鉄損の小さい珪
素鋼板の使用方法。 (10)歪弾性エネルギーの代わりに、歪弾性エネルギ
ーに磁気弾性エネルギーを加えたものを用いることを特
徴とする(7)記載の鉄損の小さい珪素鋼板の使用方
法。
【0008】
【作用】以下に本発明を詳細に説明する。方向性珪素鋼
板の二次再結晶はGOSS方位と呼ばれる{110}
〈001〉方位の粒を二次再結晶焼鈍(仕上げ焼鈍とも
呼ばれる)ときに十分成長させることが肝要である。こ
れは一次再結晶焼鈍(一次焼鈍又は脱炭焼鈍とも呼ぶ)
の中のある特定方位粒のみを粗大再結晶させるもので、
この時にインヒビター(Inhibitor)と呼ばれ
るAlN等の微細析出物を仕上げ焼鈍前に十分作ってお
くことが技術上必要であることがよく知られている。そ
して、このために必要な窒素その他の元素を鋼溶製時に
添加すること等が行われる。
【0009】鋼溶製時に十分低炭素化した鋼では脱炭機
能よりも一次焼鈍後の表面層の酸化物層を変えて、被膜
反応に有利な形にすることがむしろ重要な役割となる。
仕上げ焼鈍前の鋼板にMgOを主体とする通称MgOパ
ウダーというものをスラリー状に鋼板表面に塗布し、仕
上げ焼鈍工程で被膜生成及び二次再結晶を行わせしめる
のが一つの方法である。通常はこの仕上げ焼鈍中に鋼表
面に生成されるMgSiO(フォルステライト)か
らなる被膜(一次被膜)の上にさらに最終のラインでリ
ン酸、クロム酸等からなる張力があり、かつ絶縁性の被
膜(二次被膜)を塗布することが行われる。
【0010】さらに補足すると以下のようになる。トラ
ンス用等の磁気特性に優れた1〜7%のSiを含んだ珪
素鋼板を製造するに際して、絶縁特性の確保と鋼板表面
に張力を与えトランスの性能向上に必要な磁気特性を向
上させ、かつ鋼板との密着性が良好な一次被膜を形成さ
せることは従来技術においても方向性電磁鋼板の一つの
重要な課題であった。すなわち、通常の技術では脱炭を
伴う一次再結晶焼鈍後に鋼板にマグネシアと呼ばれる酸
化マグネシウム(MgO)の微粉末を水溶させたスラリ
ー状あものを塗り、必要に応じて乾燥させた後、二次再
結晶焼鈍を兼ねる高温仕上げ焼鈍工程で焼成させ、鋼板
中のSiOやSiとの反応でフォルステライト(Mg
SiO)と呼ばれるセラミックス質状の絶縁性の一
次被膜を形成させる。これが鋼板に張力を与え、磁気特
性とりわけ鉄損と呼ばれるトランスの効率を支配する特
性値を向上させるのに有効である。
【0011】しかも、このフォルステライト形成への状
態が、二次再結晶で鋼板の結晶方位を通称GOSS方位
と呼ばれ、透磁率や磁束密度の向上に不可欠な鋼板長手
方向(圧延方向)に対して{110}〈001〉の結晶
方位を有するやや粗大な二次再結晶粒を成長させるのに
も重要な役割を果たしていることもよく知られている。
逆に、二次再結晶焼鈍昇温過程中に十分緻密な被膜が形
成されないまま二次再結晶させようとしても、鋼板内の
インヒビターと呼ばれる微細な窒化物や硫化物等がその
ままの状態で、あるいは分解して早く鋼板外に抜け出て
しまう。このため、昇温中にGOSS方位粒を優先的に
成長させ、他の方位粒の成長を抑制させる役目のインヒ
ビター効果が発揮できず、通称、細粒と呼ばれ、GOS
S方位粒の二次再結晶粒の十分な成長が部分的あるいは
全面的に行われない、極めて磁気特性の劣る鋼板を生み
出すことになる。なお、このMgOの中に酸化チタン
(TiO等)やその他の化合物を添加させ、さらに緻
密な一次被膜を形成させることも行われる。このように
してGOSS方位の揃った母材に十分高い張力と絶縁性
を有する被膜を表面に付与された方向性珪素鋼板が製造
可能である。
【0012】しかしながら最近の省資源化の中ではアモ
ルファストランスに象徴されるように、より鉄損の小さ
い方向性電磁鋼板の開発が必要である。このため近年磁
区制御法と称して鋼板表面に有意の人工的な欠陥を付与
し、これをもって磁区細分化を行う、より鉄損の小さい
方向性電磁鋼板の開発が盛んである。図1は方向性電磁
鋼板の表面の人工欠陥付与による磁区細分化の効果を示
した図である。いわゆる不均質部の人工的欠陥の周りに
90゜磁壁が生じ、このために三角状の還流磁区が生成
され、一方これにより180°磁壁を有するメイン磁区
の細分化が達成され、その結果静磁エネルギーが下が
り、又実用途の鋼板磁界による磁化変化も容易となるの
でエネルギー的にも大変効率的であると言われている。
【0013】この人工的欠陥を作る方法は多くの発明に
見られるが、それらはいずれもある程度の試行錯誤の繰
り返しと少なからず経験に基づくものが多い。従って、
いわゆる最適の人工的欠陥をどのように作るかは、用い
た手段や機械、電気、化学設備等に依存しているため他
に応用できないばかりか、とりわけ自己の設備において
も最適操業条件を見いだすことが困難であった。さらに
これらの珪素鋼板をトランス用コアとして使用する場合
の使用条件下の磁区制御の効果の最適利用についての知
見がほぼ皆無であった。このことは、磁区生成が外的応
力の影響に敏感である点を考慮すると工業的にさらに磁
区制御の効果を磁区制御の観点からより解明すべきこと
であると考えざるを得ない。本発明はこの磁区細分化に
不可欠の不均質部の人工的欠陥が与えられる条件と還流
磁区を形成している90°磁壁の生成との間にある物理
的関係を発見し、ひいてはそれを制御することで、経験
だけでない工学的制御因子の把握により最適の人工的欠
陥の付与条件及び利用条件を見いだすことを狙いとして
いる。
【0014】本発明はまず以下の実験を行った。0.2
3mmの厚みを有し、電流800Aでの磁束密度を表す
が1.93テスラの方向性電磁鋼板の表面に接触幅
が約40μmのボールペンによるケガキ状の人工的欠陥
を鋼板圧延方向にほぼ直角に10mmピッチで入れた。
この際、鋼の被膜張力を2種類にした。一つ(符号:
A)は最終製品と同様、フォルステライトを主とするい
わゆる一次被膜の上にさらに高張力の絶縁被膜(いわゆ
る二次被膜)を塗布しており、他の一つ(符号:B)は
この二次被膜を除去している。
【0015】被膜張力はAが14.7MPa、Bが3.
9MPaである。図2はA,Bのケガキ線の周辺の90
°磁壁による還流磁区の生成状態を表している。明かに
Bの還流磁区の方が大きく、それに伴って180°磁壁
を有するメイン磁区の幅も大きく、さらに鉄損もAがW
17/50(50Hzで磁束密度1.7テスラのときの
鉄損)で0.77W/kgに対して、Bは0.88W/
kgと悪い。これはひとつにBのメイン磁区の大きさに
依存しているが、それを決めるのは図1,2で明かのよ
うに還流磁区の大きさ、具体的には還流磁区が三角形を
しているので、おおまかにはケガキ線からの90°磁壁
つまり還流磁区の到達距離が小さいほどメイン磁区の細
分化が行われることを示す。
【0016】本発明ではこの還流磁区のケガキ線からの
距離を90°磁壁の生成条件から以下のように求めたも
のである。本発明はこの90°磁壁の生成はGOSS方
位の鉄の結晶の三つある磁化容易軸(容易磁化軸とも言
う)の中のx方向(〔100〕方向、鋼板長手方向)の
歪弾性エネルギー(弾性歪エネルギー、弾性(歪)エネ
ルギーとも言う)Exと直角方向(y方向=〔01
0〕、z方向:〔001〕)の歪弾性エネルギーEy,
Ezとの比が90°磁壁生成に支配的であることを知見
した。この理由は次のように考えられる。鉄の三つの磁
化容易軸x〔100〕,y〔010〕,z〔001〕は
それぞれ正の磁歪を有している。このことはわかりやす
く言えば正の弾性歪がどれかに加わると、その方向にス
ピンが向き磁区が生成されることと対応している。
【0017】通常は製品状態では鋼板の張力等により、
三つの磁化容易軸の中のx〔100〕方向の歪弾性エネ
ルギーが最も大きいのでx〔100〕磁区、つまり18
0゜磁壁主体のメイン磁区が図1(a)のように形成さ
れているが、なんらかの強制的な応力条件によりy〔0
10〕あるいはz〔001〕の歪弾性エネルギーの方が
大きくなりその方向の磁区が形成されると、このとき図
1(b)のように90°磁壁の生成、つまり還流磁区の
生成が行われることを知見したものである。ここでy
〔010〕とz〔001〕の歪弾性エネルギーEy,E
zはGOSS方位の幾何学的対称性から多少の鋼板内の
方位の回転があっても工業的にはほぼ等しくなると考え
ても実用的には問題ない。図3は鋼板(試料)とGOS
S方位との関係を示した図である。
【0018】すなわち、本発明の知見によれば局部的欠
陥導入部及びその周辺においてEx≦Ey,Ezを満た
すような応力条件のときに90゜磁壁つまり還流磁区が
生成され、それによりメイン磁区の細分化が行われるこ
とが明かとなった。ここでEx,Ey,Ezの求め方を
以下に示す。 鋼板長手方向X、鋼板幅方向Y、X及びYと直角方向
をZとし、X,Y,Z方向の応力を求める。 試料軸X−Y−Z軸での応力テンソルσX−Y−Zを
結晶軸x−y−z軸での応力テンソルσx−y−zに座
標変換テンソルTを用いて下記の式より変換する。 σx−y−z=T×σX−Y−Z×T 但し×はテ
ンソルのかけ算 弾性歪テンソルξx−y−zを立方晶の弾性歪テンソ
ルSを用いて下記式で求める。 ξx−y−z=S×σx−y−z 弾性歪エネルギーEを下記式により求める。 E=σx−y−z×ξx−y−z
【0019】この計算方法により、いかなる外力条件で
も磁化容易軸の歪弾性エネルギーの計算が可能であり、
上記Ex,Ey,Ezが求まる。表1は鋼板への外的圧
縮、引張応力、被膜張力、溝の鋼板面垂直方向(Z方
向)の残留応力等を取り入れてEx,Ey,Ezを計算
した式を示す。さらに表1には磁気弾性エネルギーにつ
いても求めた結果を記載しているが、これについては後
述する。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】さて、実際に本発明の方法でケガキ線から
の還流磁区つまり、90°磁壁の生成範囲を計算してみ
た。図4は上記A,Bの被膜張力のときの外的圧縮、引
張応力及びケガキ溝周辺の鋼板面垂直方向の引張残留応
力の変化による、Ex≦Ey,Ezあるいは略してEx
≦Ey(Ez)、つまり90°磁壁生成条件を表した図
である。これによれば試料Aではたとえば外的付加応力
フリーの条件では溝の残留引張応力が10MPaと20
MPaの間、約15MPa以上で90°磁壁が生ずるこ
とがわかる。一方、試料Bでは5MPaと2.5MPa
との間約4MPa以上の残留引張応力で90゜磁壁が生
ずることがわかる。この差は被膜張力の差によるもので
ある。
【0023】さて、府川(日本金属学会誌第45巻第4
号(1981)384頁)によれば本発明とほぼ同一条
件のボールペンケガキによる方向性電磁鋼板の溝の周辺
付近の鋼板面垂直方向の引張残留応力の分布は求めら
れ、溝から遠ざかるにつれそれは小さくなる傾向があ
る。従って、図4から得られた被膜張力の異なる試料
A,Bの上記に記述した溝周辺に90゜磁壁の出る鋼板
面垂直方向の残留引張応力15MPa,4MPaと府川
の溝周辺の残留引張応力分布を照らし合わせることで9
0°磁壁の生成範囲が読み取れる。図5はこれを示した
もので、これによると試料Aでは溝中心部から約250
μm、Bでは約430μmとなる。
【0024】これは図2の実験結果のAの190μm、
Bの420μmと極めてよく対応している。このことは
外的応力、被膜張力、溝周辺引張残留応力を取り入れ歪
弾性エネルギーEx≦Ey(Ez)の計算から得た図4
の予測が実用に供し得ることを示したものである。この
ことは還流磁区の大きさ、つまり180゜磁壁を有する
メインの磁区細分化の程度がEx≦Ey(Ez)の条件
で算出できることを意味している。これは従来、経験的
に取り扱われていた磁区制御による低鉄損化の最適条件
が図れることを意味し、鋼板の被膜張力がある程度大き
い鋼で、鋼表面にある程度規則的な不均質部(人工的欠
陥)が存在し、かつその人工的欠陥(溝等)周辺の鋼板
面垂直方向応力の存在下で、Ex≦Ey(Ez)を満た
す条件が必要であることを示している。これにより磁区
細分化への外的条件の定量化が行われ、これが本発明の
知見の最大の骨子であり、従来の工業的知見には見られ
ないものである。本発明で重要な点は90°磁壁、つま
り還流磁区の生成範囲である。
【0025】上記の実験で明かなように同じ溝等の人工
的欠陥を鋼板表面に作っても被膜張力の大小でEx≦E
y(Ez)を満たす溝等からの領域は異なってくるの
で、還流磁区の大きさ、つまり、180゜磁壁を有する
メイン磁区の磁区細分化状態は異なってくる。本発明に
よれば、定性的には被膜張力の大きい方が、Ex≦Ey
(Ez)を満たして90°磁壁を生成する臨界の鋼板面
垂直方向の残留引張応力(引張残留応力とも言う)は高
い(例:試料Aの15MPa)が、還流磁区の生成範囲
の溝等からの距離が短く、このことが図1,2から類推
されるように、ひいてはメイン磁区の磁区細分化が十分
行われ、低鉄損化がもたらされることが知見された。
【0026】一方、この考えに従えば、当然、溝等の人
工的欠陥を小さくしたり、浅くしたりして周辺部の引張
残留応力を小さくすれば、被膜張力が小さくて図4から
推定されるように90°磁壁を生成する臨界の鋼板面垂
直方向の残留引張応力が小さくても、還流磁区の生成範
囲の溝等からの距離がやはり小さくなり、ひいてはメイ
ン磁区の磁区細分化が行われることも予測される。但し
本発明によれば、後者の場合、溝等の人工的欠陥を小さ
くしたり、浅くしたりして周辺部の鋼板面垂直方向の引
張残留応力を小さくし、一方被膜張力を小さくして90
°磁壁の生成する鋼板面垂直方向の臨界応力も小さくし
て(例:試料Bの4MPa)、なおかつ安定した値を得
ることは工業的に不安定になりやすい点が認められた。
さらに被膜張力を小さくすることで、高磁束密度の磁化
下での負の磁歪等の増加もあり、可能であれば被膜張力
を高くし、Ex≦Ey(Ez)を満たして、メインの磁
区の細分化を図る方が工業的には好ましいことが知見さ
れた。
【0027】本発明によれば方向性珪素鋼板の被膜張力
が8MPa以上であれば上記の被膜張力が小さいことに
よる溝等局部的欠陥導入部の周辺の鋼板面垂直方向の引
張残留応力の不安定さや高磁束密度の負の磁歪の発生等
が防止しやすいことが明かとなった。同様に溝等局部的
欠陥導入部の周辺の鋼板面垂直方向の引張残留応力が小
さすぎても本発明の要件を満たすことは工業的に不安定
になりやすく、溝等人工的欠陥の中心部から300μm
以内でのそれが6MPa以上であれば十分安定して磁区
細分化が達成され、鉄損が小さくなることがわかった。
【0028】さらに、不均質部について述べたい。前述
のように周辺部の鋼板面垂直方向の引張残留応力を生じ
るような人工的欠陥であれば、その方法を問わない。こ
の引張残留応力は加工後の製品の使用中の磁区細分化を
考える場合には残留応力だけでなく直後の付加応力が鋼
板面垂直方向に加わる場合も本発明に含まれることは理
論計算上明かである。さらに、これらの周辺部の鋼板面
垂直方向の応力は引張応力に限定されず、圧縮応力でも
有効であることは、表1の式から明かである。
【0029】又、トランス組立や使用等実用途において
鋼板の長手方向、幅方向あるいは鋼板面垂直方向の圧縮
や引張の応力が加わることは多いが、この場合も表1の
式から計算して、本発明の局部的欠陥導入部及び近傍で
Ex≦Ey(Ez)の条件で磁区細分化の最適条件を求
めることが可能である。さて、本発明のこの不均質部は
前述の図5の説明で明かなように溝等の人工的欠陥の周
辺に鋼板面垂直方向の残留応力がすそ野を引いたような
ある分布を有していることと、さらに図1,2から類推
されるように局部的欠陥導入部同士の間に180゜磁壁
を有するメインの磁区が存在することが重要であり、本
発明によれば図5から類推されるように好ましくは、1
mm以上の間隔が必要である。
【0030】被膜張力が高い場合か鋼板面垂直方向残留
応力が高い場合は十分な180°磁壁を有するメインの
磁区が存在し、さらに安定して鉄損を下げるためには2
mm以上必要である。一方、30mm超では広すぎて還
流磁区を形成して磁化変化を容易にする効果が期待でき
なくなる。さてこの人工的欠陥はケガキや突起付きロー
ル圧延に代表される機械的方法、レーザーやプラズマ照
射に代表されるエネルギー照射法、線条加熱、冷却等電
気的方法や局部的水圧法あるいは鋼板への腐食性の強い
液体、ガス、イオン、部分メッキ等による化学法等なん
でもよい。
【0031】前二者は上記実験に示されるように鋼板面
垂直方向の引張残留応力が生じやすいことは容易に想像
できるが、一方、化学的方法で、たとえば鋼板製造の冷
延、一次焼鈍等の途中過程で鋼板に溝等の人工的欠陥を
作る場合もその後の工程、たとえば、二次再結晶焼鈍後
の形状矯正ライン(最終焼鈍ライン)等でのフラットニ
ング時あるいは鋼板の使用時に、溝部等人工的欠陥部の
周辺に鋼板面垂直方向の応力あるいは条件によっては局
所的な鋼板長手方向の圧縮応力も生じ、表1から類推さ
れるように、局所的にEx≦Ey(Ez)の90°磁壁
を生成することが容易に推定される。さらに、上記以外
の方法で人工的欠陥を鋼板の局所的不均質部として形成
し、Ex≦Ey(Ez)等の条件を満たす場合は本発明
の主旨に反するものではないことは明白である。
【0032】なお、本発明で鋼の被膜張力の測定法の一
例を述べる。これは一般的に行われているように、鋼板
の片側面の被膜のみを剥離あるいは溶失させて、その際
の鋼板の反り量から弾性学的計算で被膜張力を推定する
方法である。ここで、被膜張力は通常の方向性珪素鋼板
の製品であれば、フォルステライト等の一次被膜と有機
物、半有機物、無機物、金属間化合物等からなる絶縁性
機能も兼ね備えた二次被膜の双方からくる被膜の張力を
意味するが、その一方のみ、又は、ゾルゲル法等の湿式
法による被膜形成、化学的蒸着法や物理的蒸着法等によ
る被膜形成を施す場合等被膜張力を発揮するならばいか
なる方法も本発明の主旨に反しないことは言うまでもな
い。
【0033】本発明でさらに重要な点は以下の点であ
る。一般的には人工的局部的欠陥は方向性珪素鋼板の最
終製造工程までの製造過程で形成することが多いが、本
発明においては前述の基本原理からも予測されるよう
に、製品の使用過程の条件を利用しても十分適用でき
る。たとえば、通常の通り特に人工的欠陥を施さない鋼
板においてもたとえばトランス用コア組立時やトランス
使用時に機械的、エネルギー照射的、電気的方法等で不
均質部を有意に形成させて前述のEx≦Ey(Ez)を
べースとした局所的な90°磁壁の形成による鋼板の磁
区細分化を実現し、鉄損を小さくすることが可能であ
る。例として挙げれば、トランスコアの積み、あるいは
巻き時にある間隔で鋼板の間にワイヤーや固形物を挿入
し組み立てる方法やあるいはエネルギー照射や局部的加
工歪を加える等の方法である。
【0034】なお、90゜磁壁つまり還流磁区生成に関
してなぜ歪弾性エネルギーがこのように影響が大きいか
に触れる必要がある。一般的に、過去の研究によれば、
90°磁壁の生成を支配する要因は磁気弾性エネルギー
Ea=−(3/2)λ100σγ (ここでγは応
力σの〔100〕(i=1)、〔010〕(i=2)、
〔001〕(i=3)磁化容易軸への方向余弦、λ
100は容易磁化軸〈100〉の磁化による伸び歪を表
す)と純粋に応力による磁化容易軸〈100〉への歪弾
性エネルギーの和(本発明ではCombined En
ergyとする)に支配されると考えられる。なお、本
発明では磁気弾性エネルギーは複数の応力の組み合わせ
を考慮し、表1のような式となる。
【0035】しかしながらいちいちCombined
Energy(Ex′(〔100〕)、Ey′(〔01
0〕)、Ez′(〔001〕))を計算することは工業
的には煩雑である。図6はこれらのエネルギーの関係を
例で示した。図6で明かのように歪弾性エネルギーは相
対的に磁気弾性エネルギーより大きく、歪弾性エネルギ
ーEx,Ey,Ezの関係はCombined Ene
rgy Ex′,Ey′,Ez′の関係と対応してお
り、ExとEy,Ezとの大小関係はCombined
Energy Ex′とEy′,Ez′との大小関係
とほぼ類似している。つまり、90°磁壁の生成しやす
さを本発明の簡便な歪弾性エネルギーで比較することの
工業的意義がここに認められる。
【0036】さて、ここで方向性珪素鋼板の製造方法に
触れる必要がある。前述のように本発明が可能な珪素鋼
板はSiを主として含有する。Siは1%未満では鉄損
が劣化するが、一方、7%超では硬くなりすぎて冷間加
工に耐えられない。一般にAlを含有し、Si
外にAlN、又鋼中のSが多い場合はMnSを主要イン
ヒビターとする鋼がよく使われるが、本発明はSi以外
は鋼成分を特に限定するものではない。もちろんSi,
Al以外に、P,S,Mn,Sn,Cu,Se,Sb,
B,Nb,Ti,V,Cr,Ni,Bi等の他の添加元
素を付加的に添加させ、磁気特性の向上を図ることは本
発明の基本を変えるものではない。
【0037】以下主要元素の適正範囲を述べる。Siは
本発明においては上記のようにフォルステライト形成及
び低鉄損化のために最低1%は必要である。一方、7%
を超えると二次再結晶で十分なGOSS方位の二次再結
晶粒の確保がむずかしくなり、一方Bを高くするため
に好ましくは5%以下がよい。AlはAlNインヒビタ
ー形成に有効であり、鋼溶製時に酸可溶Alで最低0.
010%は必要である。しかし本発明では酸可溶Al量
で0.05%を超えると適量のAlNが生成されないば
かりかAl生成量も多くなり鋼の清浄度を損な
い、かつ磁気特性に悪影響をもたらす。
【0038】NはSi及びAlNのインヒビター
を形成するのに不可欠であり、本発明においては、鋼溶
製時に最低0.0030%は必要である。一方、0.0
300%を超えるとAlやSiを食いすぎて二次再結晶
に好ましくない。Sはこれを積極的に利用する場合は鋼
溶製時に最低0.008%はMnSをインヒビターとし
て有効に使うのに必要である。一方、0.06%超では
MnSが凝集して好ましくない。二次再結晶前になんら
かの方法で侵硫する方法でも同様の効果が期待できる。
Mnも、インヒビターにMnSを利用する場合は、Mn
S生成に必要で鋼溶製時に最低0.03%は確保すべき
である。しかし0.20%を超えるとかえってMnSは
できにくい。しかしながら、Mnの電気抵抗率の高いこ
とを利用する場合は4%までは問題ない。Cは熱延での
γ量確保及び適度の熱間変形抵抗を得るために必要で鋼
溶製時に最低0.001%は本発明の磁気特性確保に必
要である。0.12%を超えると、一次再結晶焼鈍時に
好ましい集合組織が得にくい。二次再結晶の安定化のた
めには好ましくは0.02〜0.10%がよい。
【0039】Pも0.15%以下であれば磁束密度向上
に好ましい働きがある。Sn,Sb,Se,Pb及びC
uは本発明でも鉄損低減に極めて有効である。その一種
以上の合計が0.02%未満ではその結果は認められ
ず、一方0.50%超では一次被膜が十分できず、好ま
しくはない。Bi,Hf等も0.015%以下であれば
磁束密度向上に有効である。
【0040】次に化学成分以外の本発明の製造方法につ
いて述べる。鋼を転炉又は電気炉等で出鋼し、必要応じ
て精錬工程を加えて成分調整を行った溶鋼を連続鋳造
法、造塊分塊圧延法あるいは熱延工程省略のための薄ス
ラブ連続鋳造法等により、厚さ30〜400mm(薄ス
ラブ連続鋳造法では50mm以下)のスラブとする。こ
こで、30mmは生産性の下限であり、400mmは中
心偏析でAl等の分布が異常になることを防ぐた
めの上限である。又50mmは冷速が小さくなって粗大
粒が出てくることを抑制するための上限である。
【0041】該スラブをガス加熱、電気利用加熱等によ
り1000℃以上で再加熱を行い、引き続き熱間圧延を
行って厚さ10mm以下のホットコイルとする。ここで
1000℃はAlN溶解の下限である。MnSを利用す
るときは1250℃以上が好ましい。1400℃超では
表面肌あれが出やすい。又10mmは適正な析出物を生
成する冷速を得る上限である。なお、薄スラブ連続鋳造
法では直接コイル状にすることも可能であり、そのため
には10mm以下が好ましい。このように作ったホット
コイルを再び800〜1250℃で焼鈍し、しかる後に
水冷、空冷、その他、あるいはそれらの組み合わせで適
宜磁性向上を図ることもしばしば行われる。ここで80
0℃はAlN再溶解の下限であり、1250℃はAlN
粗粒化防止の上限である。
【0042】熱間圧延の途中に保熱したり、コイル通し
をつなげたりして連続熱延をすることは本発明でも有効
である。かかる処理工程の後、ホットコイルを直接又は
バッチ的に酸洗後冷間圧延を行う。冷間圧延は圧下率6
0〜95%で行うが、60%は本発明で再結晶可能な限
界であり、好ましくは70%以上が一次焼鈍で{11
1]〔112〕方位粒を多くして、二次再結晶焼鈍時の
GOSS方位粒の生成を促進させる下限であり、一方9
5%超では二次再結晶焼鈍で首振りGOSS粒と称する
GOSS方位粒が板面内回転した磁気特性に好ましくな
い結晶粒が生成される。以上はいわゆる一回冷延法で製
造する場合だが、なお、二回冷延法と称して冷延−焼鈍
−冷延を行う場合は、一回目の圧下率は10〜80%、
二回目の圧下率は50〜95%となる。ここで10%は
再結晶に必要な最低圧下率、80%と95%はそれぞれ
二次再結晶時に適正なGOSS方位粒を生成させるため
の上限圧下率、又50%は二回冷延法においては一次焼
鈍時の{111}〔112〕方位粒を適正に残す下限圧
下率である。
【0043】なお、通称パス間エージングと称し、冷間
圧延の途中で鋼板を適当な方法で100〜400℃の範
囲で加熱することも磁気特性の向上に有効である。10
0℃未満ではエージングの効果がなく、一方、400℃
超では転位が回復してしまう。一回冷延法でも二回冷延
法でも一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍とも言う)を行うわけ
であるが、この焼鈍で脱炭を行うことは有効である。前
述のようにCは二次再結晶粒の成長に好ましくないばか
りか、不純物として残ると鉄損の劣化を招く。なお、鋼
の溶製時にCを下げておくと脱炭工程が短縮化されるば
かりか{111}〔112〕方位粒も増やすので好まし
い。なお、この脱炭焼鈍を兼ねる一次再結晶焼鈍工程で
適正な露点を設定することで後の一次被膜生成に必要な
酸化層の確保が行われる。
【0044】一次再結晶焼鈍温度は700〜950℃が
好ましい。ここで700℃は再結晶可能な下限温度であ
り、950℃は一次再結晶の粗大粒の発生を抑制する上
限温度である。さらに本発明で重要な点は脱炭を兼ねる
一次再結晶焼鈍での酸化量が酸素量(〔O〕量)で25
〜1200ppmでかつFeO/SiOが0.70以
下が好ましい。〔O〕が25ppm未満では一次被膜生
成に必要な最低の酸素量が確保できず、一方〔O〕が1
200ppm超では必然的に酸化膜中のSiO量、F
eO量が多くなり、酸化膜の厚みも増すため、高温仕上
げ焼鈍中でのグラス被膜分解反応を行うに際し、不利と
なる。好ましくは〔O〕量で400〜1000ppmで
ある。一方FeO/SiOは0.70以下が好ましい
が、これは0.70超では高温仕上げ焼鈍前半のグラス
被膜形成反応性が極端に増し、前半でのフォルステライ
ト形成量が増大するため、後のフォルステライトの分解
反応工程で十分に反応が進行しない。さらに一次焼鈍後
にアンモニアガス等を使って、鋼板に窒化することも必
要により行われる。これでAlNを鋼中に富化させ、後
の二次再結晶でより方位集積度の高い鋼板が製造可能と
なり、磁性にも好ましいからである。一次再結晶焼鈍
後、酸化マグネシウム(MgOを主成分とする。以下M
gOと呼ぶ)パウダーを水又は水を主成分とする水溶液
に溶かしスラリー状にして鋼板に塗布する。この際、後
の二次再結晶焼鈍時にMgOパウダーの溶融を容易にさ
せ、フォルステライト生成反応を促進させる目的で、適
当な化合物を微量添加することも行われる。TiO
添加する場合は1〜15%が好ましいが、ここで1%は
フォルステライト反応促進効果を発揮する下限であり、
15%超ではMgOが少なくなってかえってフォルステ
ライト反応が進まない。
【0045】Sb(SO等のアンチモン系の化
合物はMgOを比較的低温で溶融させるのに効果があ
り、添加を行う場合は0.05〜5%が好ましい。ここ
で、0.05%は上記低温溶融を起こす下限であり、一
方、5%を超える場合は多すぎてMgOのフォルステラ
イトの本来の反応を不活性化する。Na等の
ボロン系の化合物及びそれと同様の作用を持つストロン
チウム・バリウム系、炭・窒化物系の化合物はアンチモ
ン系よりは比較的高温でMgOを溶融させるのに効果が
あり、添加する場合は0.05〜5%が好ましい。ここ
で、0.05%は上記の効果を発揮する下限であり、一
方5%超ではやはりMgOのフォルステライトの本来の
反応を不活性化するので好ましくない。
【0046】なおこれらの化合物は互いに複合して添加
することも可能である。但し、アンチモン系の低温溶融
型とボロン系の高温溶融型の化合物を混ぜて使用すると
きは、その効果は高温溶融型に近いことになるが、本発
明の主旨と矛盾するものではなく、その場合は本発明の
高温溶融型の昇温速度をとることが好ましい。なお、こ
こで添加する化合物の%はMgOの重量を100%とし
たときの重量比を%で示してある。又MgOの水和水分
も重要であり、本発明では0.5〜5%に制約される。
0.5%未満ではマグネシアの反応性が劣化し、一方、
5%超では鋼板間の露点が高くなって昇温時前段で追加
酸化を生じ表面に酸化膜のむらを生じて均一な一次被膜
を得ることができない。
【0047】フォルステライトの生成はMgOと鋼板中
の表面濃化したSiが反応し、 2MgO+SiO→MgSiO の反応を起こしたものと一般的に考えられている。さら
に一次被膜の形成過程と珪素鋼板の諸性質との因果関係
が明確になれば当然被膜張力の改善のため工業的にそれ
を製造に反映させることができることになる。
【0048】Sb系の化合物をMgOに微量添加した場
合、MgOの溶融は比較的低温で行われるので、たとえ
ば二次再結晶焼鈍の昇温速度を比較的小さくした方がよ
り早くフォルステライトの生成を促進させ、優れた一次
被膜を生成させやすいことになる。なおアンチモン(S
b)系の化合物とは当実験で用いたSb(SO
のみならずSbを含む他の化合物を含む。一方、同じ低
融点化合物でもボロン(B)系の化合物をMgOに微量
添加した場合はMgOの溶融はSb系の化合物よりも比
較的高温で行われるので、たとえば二次再結晶焼鈍の昇
温速度を比較的大きくした方がより早くフォルステライ
トの生成を促進させる。なおボロン(B)系はNa系の
みならずNaの代わりにCa,Mg等を含む化合物やほ
う酸(HBO)やほう酸ソーダも含まれる。
【0049】さらに、アンチモン系よりも高融点系とい
う点でストロンチウム・バリウム系、炭・窒化物系、硫
化物系、塩化物系もボロン系と同等の作用が認められ
る。この中でもMgClは被膜形成促進に有効であ
る。これらの化合物を総称して非アンチモン系と呼ぶこ
とにする。このように二次再結晶焼鈍の昇温速度はとり
わけ本発明では重要である。すなわち、MgO中に添加
する化合物の種類によって昇温速度を変化させることが
必要である。アンチモン系の化合物をMgOに添加する
場合は800℃〜最高到達温度の平均昇温速度は毎時
0.1〜80℃の比較的小さいことが必要である。ここ
で、0.1℃/時は工業的昇温速度の下限であり、一方
前述のようにMgOがアンチモン系の化合物の添加では
低温で溶融するためより早く確実にフォルステライトの
生成を行っておく必要があり、それには昇温速度は80
℃/時以下にしておく必要がある。
【0050】一方、ボロン系、ストロンチウム・バリウ
ム系、炭・窒化物系、硫化物系及び塩化物系では上記平
均昇温速度は毎時5〜400℃が好ましい。すなわち、
高温溶融型の化合物の添加ではMgOの溶融を比較的高
温で起こすため早く高温に到達するため5℃/時以上の
昇温速度が必要であり、一方、400℃/時超では二次
再結晶そのものがインヒビターとの関係で十分行われな
い。
【0051】なお、TiO等の酸化物を添加させ高温
反応を容易にすることが行われるが、本発明の上記の添
加物の効果はその酸化物の添加量に関係なく発揮される
ので本発明においてはMgOにTiO等の酸化物が添
加されても、これをプレインと称してベース材の一部と
みなしている。なお、近年アモルファス並みの低鉄損の
材料が珪素鋼板でも要求される場合があるが、この場合
やあるいは特別の用途、たとえば硬い被膜を有するがた
めの珪素鋼板切断時の工具寿命の低減を要求される場合
に、鋼板のいわゆる一次被膜と呼ばれるフォルステライ
トの量を極力少なくするかあるいはなくす方法がとられ
ることがある。このような鋼板には従来法では通常、二
次被膜と呼ばれる張力性の絶縁コーティングやさらに高
張力のコーティングであるゾルゲル法やイオンプレーテ
ィング、化学蒸着法、物理的蒸着法等が施される場合が
多いが、このような場合にも本発明の方法は極めて有効
である。
【0052】このように方向性珪素鋼板の特性にとりわ
け本発明で重要な支配要因となる一次被膜は本発明によ
り、その組成分布の解明及びそれと相関を有する製造方
法との組み合わせにより、ある程度自由にコントロール
することが可能となった。二次再結晶を兼ねる仕上げ焼
鈍は最高到達温度を1100〜1300℃で行うのが好
ましい。1100℃は二次再結晶が行われる下限の温度
であり、一方1300℃超は結晶粒が粗大化しすぎて鉄
損の劣化を招く。この二次再結晶焼鈍で重要な点は以下
の通りである。
【0053】本発明ではMgOパウダーへ特殊添加物の
効果でフォルステライトを主成分とする一次被膜が極端
に少なくなるか、なくなるので、焼鈍中に二次再結晶に
必要な窒素系のインヒビター(AlN,Si等)
も仕上げ焼鈍中に逃げやすい傾向にあるが、一方、Mn
Sをインヒビターとして積極的に使用する場合はMnS
のインヒビターの機能も重要であり、このときは仕上げ
焼鈍の雰囲気ガス中の窒素分圧(PN2)を40%以下
とすることで鋼中へのNの侵入を防ぐことが必要で、こ
れにより安定した二次再結晶を得ることが可能である。
もし800℃〜最高到達温度の温度範囲でNが多く侵入
するとAlNが多すぎ、MnSのような適度の強さのイ
ンヒビターと異なり二次再結晶焼鈍での健全なGOSS
方位の結晶粒の成長が期待できない。しかしながらMn
Sを積極的に使用せず、AlNにインヒビター機能を依
存する場合はむしろ、仕上げ焼鈍中の800〜1050
℃のN分圧を上げた方が好ましいことが多く、20%
以上にする。なお、700℃未満ではNの侵入は行われ
ず、最高到達温度超では二次再結晶等が完了してしま
う。さらに好ましくは水素雰囲気でこの焼鈍を行えば極
めて優れたGOSS方位の二次再結晶が得られる、こと
も本発明の成果である。
【0054】さて、本発明では前述のように二次再結晶
を終了した後、ヒートフラットニング焼鈍や絶縁被膜を
塗布する前後のいわゆる製品板に、あるいは途中の冷間
圧延や一次焼鈍等の中間工程の間で鋼板表面に人工的欠
陥を機械的、化学的、光学的、熱的、電気的その他のエ
ネルギー付加的な方法で間隔を開けてある程度規則的な
配列で付与せしめることが重要である。この溝等人工的
欠陥の付与の仕方は溝付きロール、溝付き又は歯型プレ
ス等の機械的方法、レーザー、プラズマ等のエネルギー
照射方法、水、油等を高圧で吹き付ける方法、電気的加
熱、冷却法や酸等による化学的腐食、電気的腐食による
方法、あるいはそれらを組み合わせた方法等、基本的に
手段はどれでもよく、又前述のように鋼板製造途中の工
程でもよい。
【0055】人工的欠陥の形成方法は前述の通りどれで
もよいが、たとえば機械的方法や化学的方法で溝を作る
場合には、その最大部の平均の深さが50μ超では深す
ぎて磁束の円滑な流れを妨げてかえって鉄損も悪くな
る。好ましくは30μ以下がよい。溝は必ずしも規則的
に配列されている必要はないが、工業的にはその方が作
りやすい。これは、90°磁壁生成による磁区細分化が
規則的に行われるからである。この場合さらに鋼板幅方
向等に人工的欠陥の連鎖又は連続したその方向は通常鋼
板長手方向に対し45°から直角までの角度を有し、か
つ長手方向にほぼ一定のピッチで刻まれることが好まし
い。45°未満では応力分布が不均一になりやすく18
0゜磁壁を有するメイン磁区の磁区細分化の効果が十分
好ましくならないからである。又、溝のピッチは鋼板長
手方向において平均1〜30mmが好ましいがその理由
は前述の通りである。
【0056】以上が本発明の珪素鋼板の製造方法での重
要な部分であるが、前述のように工業的にはさらに絶縁
特性や磁気特性を向上させる目的で二次再結晶後の鋼板
に有機質や無機質による絶縁被膜を有する高張力被膜
(コーターロール法やゾルゲル法)を熱処理等と組み合
わせて塗布したり、ゾルゲル法、化学的,物理的蒸着法
等で塗布することがとりわけ重要である。とりわけフォ
ルステライト等の高張力特性を有する一次被膜が極端に
少ないか、ない場合はそれを補完するべく高張力特性を
有する絶縁被膜を塗布することが効果的である。
【0057】
【実施例】表2及び表3の化学成分を有する鋼を表2及
び表3の製造方法で方向性電磁鋼板を製造した。なお、
ここで脱炭(一次)焼鈍のFeO/SiOは0.10
〜0.50にあり、又酸素量は400〜1000ppm
の範囲にあった。脱炭焼鈍の昇温速度はB−2,B−
3,E−3は200℃/秒であるが、他は全て10〜4
0℃/秒で行った。一方、D−1,D−2,E−1〜E
−5以外は冷間圧延中に250℃のパス間エージングを
施した。一次焼鈍後の鋼板に焼鈍分離材のパウダーを塗
布したが、パウダーは水に溶解させスラリー状にして塗
布後、350℃で乾燥させた。MgOの水和水分は1〜
3%とした。この表で、%はMgOの重量を100%と
したときの重量比率である。しかる後に、800℃〜最
高到達温度の平均昇温速度をE−3,E−4は100℃
/時、A−1,A−2は3℃/時だが他は全て10〜3
0℃/時で二次再結晶焼鈍を行い、さらにフラットニン
グ焼鈍(最終焼鈍)処理を施した。又、鋼板製品の
、鉄損の測定はエプスタイン法を使用した。
【0058】表3の実験はP−4,P−5を除き方向性
電磁鋼板の製品段階では不均質部の人工的欠陥を作らず
に、トランスコアを加工する段階で人工的欠陥を作っ
た。P−4,P−5は鋼板製品の段階でもレーザー照射
を施した。表3では組み立て後のトランスコアの鉄損を
測定した。Bは800A/mの磁束密度(テスラ)を
表し、W17/50は50Hzで1.7テスラのときの
鉄損(W/kg)を表す。不均質部の人工的欠陥の中心
から300μmでの鋼板面垂直方向の応力は負の符号の
付いたもの(圧縮(残留)応力)以外は引張(残留)応
力を表す。なお、鋼板の被膜でグラスレスとあるのは僅
かにフォルステライト被膜等が残り、鋼の結晶粒界がは
っきり肉眼で見える程度の一次被膜が殆どないか極めて
少ない状態を表し、一方、鏡面とはフォルステライトが
ないばかりか、表面の鉄面が光沢をもって露出した鏡面
状の状態を表す。
【0059】又、人工的欠陥の周辺の磁化容易軸のエネ
ルギーEx(〔100〕),Ey(〔010〕)及びE
z(〔001〕)は前述の方法(表1参照)で求めたも
のである。なお、E−3〜E−5については鋼板長手方
向に圧縮応力を2MPa、S−6,S−7についてはそ
の上さらに鋼板幅方向に1MPaの引張応力をかけなが
ら、一方B−3〜B−6,S−9〜S−11は鋼板面垂
直方向に圧縮応力を0.5MPaをそれぞれかけなが
ら、磁性測定、歪弾性エネルギー計算を行った。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
【表7】
【0065】
【表8】
【0066】
【表9】
【0067】
【表10】
【0068】
【表11】
【0069】
【表12】
【0070】
【表13】
【0071】
【表14】
【0072】
【表15】
【0073】
【表16】
【0074】
【表17】
【0075】
【表18】
【0076】
【表19】
【0077】
【表20】
【0078】
【表21】
【0079】
【表22】
【0080】
【表23】
【0081】さて、表2,表3で明かなように、不均質
部周辺の磁化容易軸の歪弾性エネルギーがEx(〔10
0〕)≦Ey(〔010〕),Ez(〔001〕)を満
たし、かつ被膜張力、不均質部の人工的欠陥の中心から
300μmでの鋼板面垂直方向の応力及び不均質部の鋼
板長手方向での平均間隔が本発明の適正範囲に入ってい
るものは鋼板の鉄損(表2)あるいはトランス組み立て
後の鉄損(表3)が著しくよいことが明らかである。
又、本発明の成分(Si)範囲から外れた鋼F,Gは鉄
損が劣化している。
【0082】
【発明の効果】本発明はSiを1〜7重量%含む方向性
珪素鋼板において、{110}〈001〉組織における
〔100〕方向(鋼板長手方向)をxとし、直角の〔0
10〕,〔001〕方向をそれぞれy,z方向とすると
き、それぞれ各主軸に生ずる歪弾性エネルギーEx,E
y,EzがEx≦Ey,Ezを満足するような鋼板面垂
直方向成分の残留応力が存在するので局部的な欠陥が導
入された鉄損の小さい珪素鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】180゜磁壁を有する方向性電磁鋼板のメイン
磁区の細分化に及ぼす不均質部(人工的欠陥)の効果の
写真。(a)は不均質部なし、(b)は不均質部あり。
【図2】被膜張力の異なる方向性電磁鋼板のケガキ(不
均質部)の周辺の90゜磁壁を有する還流磁区の生成の
写真。(a)は試料A(被膜張力14.7MPa)、
(b)は試料B(被膜張力3.9MPa)。
【図3】結晶粒の模式図。
【図4】付加応力と歪弾性エネルギー差の図表。
【図5】ケガキ周辺の鋼板面垂直方向の残留引張応力分
布の図表。
【図6】圧縮力一部張力の弾性歪、磁気弾性エネルギー
の図表。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年12月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正内容】
【0012】しかしながら最近の省資源化の中ではアモ
ルファストランスに象徴されるように、より鉄損の小さ
い方向性電磁鋼板の開発が必要である。このため近年磁
区制御法と称して鋼板表面に有意の人工的な欠陥を付与
し、これをもって磁区細分化を行う、より鉄損の小さい
方向性電磁鋼板の開発が盛んである。図1はSEM顕微
鏡写真による方向性電磁鋼板の表面の人工欠陥付与によ
る磁区細分化の効果を示した図である。いわゆる不均質
部の人工的欠陥の周りに90°磁壁が生じ、このために
三角状の還流磁区が生成され、一方これにより180°
磁壁を有するメイン磁区の細分化が達成され、その結果
静磁エネルギーが下がり、又実用途の鋼板磁界による磁
化変化も容易となるのでエネルギー的にも大変効率的で
あると言われている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正内容】
【0015】被膜張力はAが14.7MPa 、Bが3.9
MPa である。図2はSEM顕微鏡写真によるA,Bのケ
ガキ線の周辺の90°磁壁による還流磁区の生成状態を
表している。明かにBの還流磁区の方が大きく、それに
伴って180°磁壁を有するメイン磁区の幅も大きく、
さらに鉄損もAがW17/50 (50Hzで磁束密度1.7テ
スラのときの鉄損)で0.77W/kgに対して、Bは
0.88W/kgと悪い。これはひとつにBのメイン磁区
の大きさに依存しているが、それを決めるのは図1,2
で明かのように還流磁区の大きさ、具体的には還流磁区
が三角形をしているので、おおまかにはケガキ線からの
90°磁壁つまり還流磁区の到達距離が小さいほどメイ
ン磁区の細分化が行われることを示す。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】180°磁壁を有する方向性電磁鋼板のメイン
磁区の細分化に及ぼす不均質部(人工的欠陥)の効果の
SEM顕微鏡写真。(a)は不均質部なし、(b)は不
均質部あり。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】被膜張力の異なる方向性電磁鋼板のケガキ(不
均質部)の周辺の90°磁壁を有する還流磁区の生成の
SEM顕微鏡写真。(a)は試料A(被膜張力14.7
MPa )、(b)は試料B(被膜張力3.9MPa )。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松尾 征夫 北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製鐵 株式会社八幡製鐵所内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Siを1〜7重量%含む方向性珪素鋼板
    において、{110}〈001〉組織における〔10
    0〕方向(鋼板長手方向)をxとし、直角の〔01
    0〕,〔001〕方向をそれぞれy,z方向とすると
    き、それぞれ各主軸に生ずる歪弾性エネルギーEx,E
    y,EzがEx≦Ey,Ezを満足するような鋼板面垂
    直方向成分の残留応力を有する局部的な欠陥が導入され
    た鉄損の小さい珪素鋼板。
  2. 【請求項2】 8MPa以上の被膜張力を有する請求項
    1記載の鉄損の小さい珪素鋼板。
  3. 【請求項3】 局部的欠陥導入部の中心から300μm
    以内の鋼板面垂直方向成分の残留応力が6MPa以上で
    ある請求項1又は2記載の鉄損の小さい珪素鋼板。
  4. 【請求項4】 局部的欠陥導入部の鋼板長手(圧延)方
    向での平均間隔が1〜30mmである請求項1ないし3
    いずれかに記載の鉄損の小さい珪素鋼板。
  5. 【請求項5】 歪弾性エネルギーの代わりに、歪弾性エ
    ネルギーに磁気弾性エネルギーを加えたEx′,E
    y′,Ez′がEx′≦Ey′,Ez′を満足すること
    を特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載の鉄損の
    小さい珪素鋼板。
  6. 【請求項6】 Siを1〜7重量%含む方向性珪素鋼板
    において、{110}〈001〉組織における〔10
    0〕方向(鋼板圧延方向)をx方向、それと直角方向
    〔010〕方向、〔001〕方向をそれぞれy,z方向
    とするとき、それぞれ各主軸に生ずる歪弾性エネルギー
    Ex,Ey,Ezを下記〜の手順で算出する珪素鋼
    板の製造方法。 鋼板長手方向X、鋼板幅方向Y、X及びYと直角方向
    をZとし、X,Y,Z方向の応力を求める。 試料軸X−Y−Z軸での応力テンソルσX−Y−Zを
    結晶軸x−y−z軸での応力テンソルσx−y−zに座
    標変換テンソルTを用いて下記の式より変換する。 σx−y−z=TσX−Y−Z×T 但し×はテン
    ソルのかけ算 弾性歪テンソルξx−y−zを立方晶の弾性歪テンソ
    ルSを用いて下記式で求める。 ξx−y−z=S×σx−y−z 弾性歪エネルギーEを下記式により求める。 E=σx−y−z×ξx−y−z
  7. 【請求項7】 Siを1〜7重量%含む被膜張力が8M
    Pa以上の方向性珪素鋼板を所定の大きさに切断しトラ
    ンスに組み込む使用方法において、組み込まれた鋼板の
    {110}〈001〉組織における〔100〕方向(鋼
    板圧延方向)をx方向、それと直角方向〔010〕方
    向、〔001〕方向をそれぞれy,z方向とし、それぞ
    れ各主軸に生ずる歪弾性エネルギーEx,Ey,Ezが
    Ex≦Ey,Ezを満足するような鋼板面垂直方向成分
    の残留応力が局部的に存在するように組み込むことを特
    徴とする鉄損の小さい珪素鋼板の使用方法。
  8. 【請求項8】 機械的方法、エネルギー照射的方法、電
    気的方法及び化学的方法のいずれかにより局部的欠陥導
    入部及びその周辺部に鋼板面垂直方向成分の残留応力を
    存在せしめ、その局部的欠陥導入部の中心から300μ
    m以内の鋼板面垂直方向成分の残留応力が6MPa以上
    であるような請求項7記載の鉄損の小さい珪素鋼板の使
    用方法。
  9. 【請求項9】 不均質部の鋼板長手(圧延)方向での平
    均間隔が1〜30mmであるような請求項7記載の鉄損
    の小さい珪素鋼板の使用方法。
  10. 【請求項10】 歪弾性エネルギーの代わりに、歪弾性
    エネルギーに磁気弾性エネルギーを加えたものを用いる
    ことを特徴とする請求項7記載の鉄損の小さい珪素鋼板
    の使用方法。
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