JPH08134660A - 極めて低い鉄損を有する一方向性電磁鋼板 - Google Patents
極めて低い鉄損を有する一方向性電磁鋼板Info
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- JPH08134660A JPH08134660A JP26964094A JP26964094A JPH08134660A JP H08134660 A JPH08134660 A JP H08134660A JP 26964094 A JP26964094 A JP 26964094A JP 26964094 A JP26964094 A JP 26964094A JP H08134660 A JPH08134660 A JP H08134660A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 本発明により、極めて低い鉄損特性を有する
一方向性電磁鋼板を提供することができる。 【構成】 重量でＣ：０．００５％以下、Ｓｉ：２．５
〜７．０％を含み、板厚が０．１５〜０．２８mm、平均
結晶粒径が１〜６mmである鋼板表面にフォルステライト
を主成分とする酸化皮膜を有し、かつその皮膜量が片面
当たり１〜４ｇ／ｍ2 、皮膜中のスピネル量が５％以上
であることを特徴とする、鉄損Ｗ17/50 が０．８５Ｗ／
kg以下の極めて低い鉄損を有する一方向性電磁鋼板。
一方向性電磁鋼板を提供することができる。 【構成】 重量でＣ：０．００５％以下、Ｓｉ：２．５
〜７．０％を含み、板厚が０．１５〜０．２８mm、平均
結晶粒径が１〜６mmである鋼板表面にフォルステライト
を主成分とする酸化皮膜を有し、かつその皮膜量が片面
当たり１〜４ｇ／ｍ2 、皮膜中のスピネル量が５％以上
であることを特徴とする、鉄損Ｗ17/50 が０．８５Ｗ／
kg以下の極めて低い鉄損を有する一方向性電磁鋼板。
Description
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、２．５〜７．０％のＳ
ｉを含み、微細な結晶粒径を有する鋼板において、有効
な皮膜を有することにより、極めて低い鉄損を有する一
方向性電磁鋼板を提供するものである。
ｉを含み、微細な結晶粒径を有する鋼板において、有効
な皮膜を有することにより、極めて低い鉄損を有する一
方向性電磁鋼板を提供するものである。
【０００２】
【従来の技術】一般に、一方向性電磁鋼板の磁気特性は
鉄損特性と励磁特性の両方で評価される。励磁特性を高
めることは設計磁束密度を高める機器の小型化に有効で
ある。一方鉄損特性を少なくすることは、電気機器とし
て使用する際、熱エネルギーとして失われるものを少な
くし、消費電力を節約できる点で有効である。さらに、
製品の結晶粒の〈１００〉軸を圧延方向に揃えること
は、磁化特性を高め、鉄損特性も低くすることができ、
近年特にこの面で多くの研究が重ねられ、様々な製造技
術による一方向性電磁鋼板が開発された。
鉄損特性と励磁特性の両方で評価される。励磁特性を高
めることは設計磁束密度を高める機器の小型化に有効で
ある。一方鉄損特性を少なくすることは、電気機器とし
て使用する際、熱エネルギーとして失われるものを少な
くし、消費電力を節約できる点で有効である。さらに、
製品の結晶粒の〈１００〉軸を圧延方向に揃えること
は、磁化特性を高め、鉄損特性も低くすることができ、
近年特にこの面で多くの研究が重ねられ、様々な製造技
術による一方向性電磁鋼板が開発された。
【０００３】この結果、現在、工業生産されている代表
的な一方向性電磁鋼板は、３つの代表的な技術により製
造されている。第一の技術は、特公昭３０−３６５１号
公報に開示された、ＭｎＳをインヒビターとして機能さ
せる、２回冷却工程により製造する一方向性電磁鋼板が
ある。この一方向性電磁鋼板は、二次再結晶の粒径が小
さいので、比較的鉄損は良好であるが、高い磁束密度が
得られないという問題があった。
的な一方向性電磁鋼板は、３つの代表的な技術により製
造されている。第一の技術は、特公昭３０−３６５１号
公報に開示された、ＭｎＳをインヒビターとして機能さ
せる、２回冷却工程により製造する一方向性電磁鋼板が
ある。この一方向性電磁鋼板は、二次再結晶の粒径が小
さいので、比較的鉄損は良好であるが、高い磁束密度が
得られないという問題があった。
【０００４】これに対して、高い磁束密度を得るため
に、第二の技術として、特公昭４０−１５６４４号公報
が開示された。これはＡｌＮ＋ＭｎＳをインヒビターと
して機能させ、最終冷延工程における圧延率が８０％を
超える強圧下とする製造技術である。この方法により二
次再結晶粒の（１１０）〔００１〕方位の集積度が高
く、Ｂ8 が１．８７０Ｔ以上の高磁束密度を有する方向
性電磁鋼板が得られる。さらに第三の技術として、特公
昭５１−１３４６９号公報に開示された、ＭｎＳまたは
ＭｎＳｅ＋Ｓｂをインヒビターとして機能させる、２回
冷延工程による製造技術が開発された。
に、第二の技術として、特公昭４０−１５６４４号公報
が開示された。これはＡｌＮ＋ＭｎＳをインヒビターと
して機能させ、最終冷延工程における圧延率が８０％を
超える強圧下とする製造技術である。この方法により二
次再結晶粒の（１１０）〔００１〕方位の集積度が高
く、Ｂ8 が１．８７０Ｔ以上の高磁束密度を有する方向
性電磁鋼板が得られる。さらに第三の技術として、特公
昭５１−１３４６９号公報に開示された、ＭｎＳまたは
ＭｎＳｅ＋Ｓｂをインヒビターとして機能させる、２回
冷延工程による製造技術が開発された。
【０００５】さて、一般に鉄損は大きく分けて履歴損と
渦電流損の２つからなる。履歴損に影響を与える物理的
な要因として、上述の結晶方位の他に材料の純度や内部
歪みがある。また、渦電流損に影響を与える物理的な要
因として、鋼板の電気抵抗（Ｓｉなどの成分量）、板
厚、磁区の大きさ（結晶粒度）や鋼板に及ぼす張力など
がある。通常の方向性電磁鋼板では渦電流損が全鉄損の
３／４以上を占めるため履歴損より渦電流損を下げる方
が全鉄損を下げる上でより効果的である。
渦電流損の２つからなる。履歴損に影響を与える物理的
な要因として、上述の結晶方位の他に材料の純度や内部
歪みがある。また、渦電流損に影響を与える物理的な要
因として、鋼板の電気抵抗（Ｓｉなどの成分量）、板
厚、磁区の大きさ（結晶粒度）や鋼板に及ぼす張力など
がある。通常の方向性電磁鋼板では渦電流損が全鉄損の
３／４以上を占めるため履歴損より渦電流損を下げる方
が全鉄損を下げる上でより効果的である。
【０００６】このため、上記第二の技術による製造方法
では、二次結晶粒の（１１０）〔００１〕方位の集積度
が高く、Ｂ8 が１．８７０Ｔ以上の高磁束密度を有する
方向性電磁鋼板が得られたとしても、二次再結晶粒径が
１０mmオーダと大きくなるため、渦電流損に影響する磁
区幅が大きかった。これを改善するために、特公昭５７
−２２５２号公報に開示されている鋼板にレーザー処理
を施す方法、さらに特公昭５８−２５６９号公報に開示
されている鋼板に機械的な歪みを加える方法など、磁区
を細分化する様々な方法が開示されている。しかし、こ
れらの方法では工程を増やす必要がある。
では、二次結晶粒の（１１０）〔００１〕方位の集積度
が高く、Ｂ8 が１．８７０Ｔ以上の高磁束密度を有する
方向性電磁鋼板が得られたとしても、二次再結晶粒径が
１０mmオーダと大きくなるため、渦電流損に影響する磁
区幅が大きかった。これを改善するために、特公昭５７
−２２５２号公報に開示されている鋼板にレーザー処理
を施す方法、さらに特公昭５８−２５６９号公報に開示
されている鋼板に機械的な歪みを加える方法など、磁区
を細分化する様々な方法が開示されている。しかし、こ
れらの方法では工程を増やす必要がある。
【０００７】そこで、これらの増工程を必要とする技術
に代わって、微細な二次再結晶粒径をもつことにより渦
電流損を低減し、従来よりも低い鉄損を有する一方向性
電磁鋼板を提供する製造方法が開示されている。たとえ
ば、特公昭５９−２０７４５号公報では、Ｓｉ：２〜４
％を含有し、かつフォルステライト皮膜を備える一方向
性電磁鋼板であって、該鋼板の板厚は０．１５〜０．２
５mm、フォルステライト皮膜の目付け量が片面当たり１
〜４ｇ／ｍ2 であり、しかも鋼板の平均結晶粒径が１〜
６mmであることにより、鉄損Ｗ17 /50 ，０．９０Ｗ／kg
以下の鉄損を有する一方向性電磁鋼板が得られると開示
されている。
に代わって、微細な二次再結晶粒径をもつことにより渦
電流損を低減し、従来よりも低い鉄損を有する一方向性
電磁鋼板を提供する製造方法が開示されている。たとえ
ば、特公昭５９−２０７４５号公報では、Ｓｉ：２〜４
％を含有し、かつフォルステライト皮膜を備える一方向
性電磁鋼板であって、該鋼板の板厚は０．１５〜０．２
５mm、フォルステライト皮膜の目付け量が片面当たり１
〜４ｇ／ｍ2 であり、しかも鋼板の平均結晶粒径が１〜
６mmであることにより、鉄損Ｗ17 /50 ，０．９０Ｗ／kg
以下の鉄損を有する一方向性電磁鋼板が得られると開示
されている。
【０００８】しかし、この製品では、フォルステライト
皮膜量など上記３条件が満足されていたとしても、鋼板
に及ぼす張力において十分なものが得られず、特にＡｌ
Ｎをインヒビター成分としたものでは、Ｗ17/50 が０．
８５Ｗ／kg以下の鉄損特性が得られないという問題点が
あった。また、さらに良好な鉄損であるＷ17/50 が０．
８０Ｗ／kg以下を有する一方向性電磁鋼板が得られてい
ない。
皮膜量など上記３条件が満足されていたとしても、鋼板
に及ぼす張力において十分なものが得られず、特にＡｌ
Ｎをインヒビター成分としたものでは、Ｗ17/50 が０．
８５Ｗ／kg以下の鉄損特性が得られないという問題点が
あった。また、さらに良好な鉄損であるＷ17/50 が０．
８０Ｗ／kg以下を有する一方向性電磁鋼板が得られてい
ない。
【０００９】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、微細な結晶
粒径を有する（１１０）〔００１〕二次再結晶方位粒を
有するＡｌＮをインヒビター成分として製造した一方向
性電磁鋼板において、有効な皮膜を適量得ることにより
Ｗ17/50 が０．８５Ｗ／kg以下の鉄損を有する一方向性
電磁鋼板、さらに、極めて良好な鉄損Ｗ17/50 が０．８
０Ｗ／kg以下を有する一方向性電磁鋼板を提供すること
にある。
粒径を有する（１１０）〔００１〕二次再結晶方位粒を
有するＡｌＮをインヒビター成分として製造した一方向
性電磁鋼板において、有効な皮膜を適量得ることにより
Ｗ17/50 が０．８５Ｗ／kg以下の鉄損を有する一方向性
電磁鋼板、さらに、極めて良好な鉄損Ｗ17/50 が０．８
０Ｗ／kg以下を有する一方向性電磁鋼板を提供すること
にある。
【００１０】
【課題を解決するための手段】本発明では、上記課題を
解決すべく検討を重ねた結果、重量でＣ：０．００５％
以下、Ｓｉ：２．５〜７．０％を含み、板厚が０．１５
〜０．２８mm、平均結晶粒径が１〜６mmである鋼板表面
にフォルステライトを主成分とする酸化皮膜を有し、か
つその皮膜量が片面当たり１〜４ｇ／ｍ2 、皮膜中のス
ピネル量が５％以上であることを特徴とすることによ
り、鉄損Ｗ17/50 が０．８５Ｗ／kg以下の鉄損を有する
一方向性電磁鋼板が得られることを見いだした。
解決すべく検討を重ねた結果、重量でＣ：０．００５％
以下、Ｓｉ：２．５〜７．０％を含み、板厚が０．１５
〜０．２８mm、平均結晶粒径が１〜６mmである鋼板表面
にフォルステライトを主成分とする酸化皮膜を有し、か
つその皮膜量が片面当たり１〜４ｇ／ｍ2 、皮膜中のス
ピネル量が５％以上であることを特徴とすることによ
り、鉄損Ｗ17/50 が０．８５Ｗ／kg以下の鉄損を有する
一方向性電磁鋼板が得られることを見いだした。
【００１１】さらに、上記条件の中で、板厚が０．１５
〜０．２５mmであり、かつ皮膜中のスピネル量が１０〜
６０％であることにより、鉄損Ｗ17/50 が０．８０Ｗ／
kg以下の鉄損を有する一方向性電磁鋼板が得られること
も見いだした。
〜０．２５mmであり、かつ皮膜中のスピネル量が１０〜
６０％であることにより、鉄損Ｗ17/50 が０．８０Ｗ／
kg以下の鉄損を有する一方向性電磁鋼板が得られること
も見いだした。
【００１２】以下に本発明を詳細に説明する。これま
で、鋼板表面に形成されるフォルステライト皮膜の量と
鉄損の関係では、板厚に応じて適当量に制御する必要は
あった。しかし、適正なフォルステライト皮膜の量が確
保されていたとしても、微細な二次再結晶粒をもつ鋼板
表面に皮膜を付与した際の鉄損値の向上率が余り大きく
ならない場合が多くあることがあった。この現象は、特
にＡｌＮをインヒビター成分として製造した一方向性電
磁鋼板において顕著にみられた。
で、鋼板表面に形成されるフォルステライト皮膜の量と
鉄損の関係では、板厚に応じて適当量に制御する必要は
あった。しかし、適正なフォルステライト皮膜の量が確
保されていたとしても、微細な二次再結晶粒をもつ鋼板
表面に皮膜を付与した際の鉄損値の向上率が余り大きく
ならない場合が多くあることがあった。この現象は、特
にＡｌＮをインヒビター成分として製造した一方向性電
磁鋼板において顕著にみられた。
【００１３】そこで本発明者らは、さらに鉄損特性を向
上させるため、フォルステライト（２ＭｇＯ・Ｓｉ
Ｏ2 ）を主成分とする酸化皮膜の中でスピネル（ＭｇＡ
ｌ2 Ｏ4）量に着眼した。
上させるため、フォルステライト（２ＭｇＯ・Ｓｉ
Ｏ2 ）を主成分とする酸化皮膜の中でスピネル（ＭｇＡ
ｌ2 Ｏ4）量に着眼した。
【００１４】図１にフォルステライトを主成分とする酸
化皮膜のスピネル量の比率と鉄損特性を示す。板厚は
０．２２mmで、二次再結晶粒径は３．５mm，６．０mm，
１１．５mmの場合を示す。
化皮膜のスピネル量の比率と鉄損特性を示す。板厚は
０．２２mmで、二次再結晶粒径は３．５mm，６．０mm，
１１．５mmの場合を示す。
【００１５】このときの酸化皮膜は片面当たり２．８ｇ
／ｍ2 であった。成品の結晶粒径が小さいとき、スピネ
ル量の比率が５％以上でＷ17/50 が０．８５Ｗ／kg以下
の鉄損が得られていることがわかる。さらに、スピネル
量の比率が１０〜６０％で、Ｗ17/50 が０．８０Ｗ／kg
以下の従来になくよい鉄損が得られている。
／ｍ2 であった。成品の結晶粒径が小さいとき、スピネ
ル量の比率が５％以上でＷ17/50 が０．８５Ｗ／kg以下
の鉄損が得られていることがわかる。さらに、スピネル
量の比率が１０〜６０％で、Ｗ17/50 が０．８０Ｗ／kg
以下の従来になくよい鉄損が得られている。
【００１６】このフォルステライト（２ＭｇＯ・ＳｉＯ
2 ）を主成分とする酸化皮膜中でスピネル量の比率が最
適になることにより良好な鉄損が得られる理由として、
スピネルの存在により、地鉄と皮膜に存在する張力で満
足するものが得られ、十分な鉄損特性が得られるものと
思われる。しかし、スピネルが多量に存在すると、かえ
ってフォルステライトの形成を不安定なものとする。ち
なみに、鋼板表面に有するフォルステライトを主成分と
する酸化皮膜量が片面当たり２．５ｇ／ｍ2 のとき、張
力はスピネル量の比率が８％のとき１２３ｇ／mm2 、４
６％のとき５１２ｇ／mm2 であった。
2 ）を主成分とする酸化皮膜中でスピネル量の比率が最
適になることにより良好な鉄損が得られる理由として、
スピネルの存在により、地鉄と皮膜に存在する張力で満
足するものが得られ、十分な鉄損特性が得られるものと
思われる。しかし、スピネルが多量に存在すると、かえ
ってフォルステライトの形成を不安定なものとする。ち
なみに、鋼板表面に有するフォルステライトを主成分と
する酸化皮膜量が片面当たり２．５ｇ／ｍ2 のとき、張
力はスピネル量の比率が８％のとき１２３ｇ／mm2 、４
６％のとき５１２ｇ／mm2 であった。
【００１７】なお、スピネル（ＭｇＡｌ2 Ｏ4 ）以外に
若干のコージライト（Ｍｇ2 Ａｌ4Ｓｉ5 Ｏ18）、サフ
ァーリン（Ｍｇ4 Ａｌ10Ｓｉ2 Ｏ23）などが存在してい
ても構わない。特にこのように微細な粒径をもつ二次再
結晶で従来よりも高い皮膜張力を必要とする理由とし
て、微細な粒径をもつ二次再結晶では皮膜張力を付与す
る前は、既にある程度磁区幅が細分化されており、この
幅をさらに小さくするためには従来よりも高い皮膜張力
が必要だからである。これに対し、従来の大きさ粒径の
二次再結晶では、皮膜張力を付与する前には磁区幅が大
きく、低張力でも容易に磁区幅の細分化がなされている
と考える。
若干のコージライト（Ｍｇ2 Ａｌ4Ｓｉ5 Ｏ18）、サフ
ァーリン（Ｍｇ4 Ａｌ10Ｓｉ2 Ｏ23）などが存在してい
ても構わない。特にこのように微細な粒径をもつ二次再
結晶で従来よりも高い皮膜張力を必要とする理由とし
て、微細な粒径をもつ二次再結晶では皮膜張力を付与す
る前は、既にある程度磁区幅が細分化されており、この
幅をさらに小さくするためには従来よりも高い皮膜張力
が必要だからである。これに対し、従来の大きさ粒径の
二次再結晶では、皮膜張力を付与する前には磁区幅が大
きく、低張力でも容易に磁区幅の細分化がなされている
と考える。
【００１８】以上、本発明者らは、微細な結晶粒径の
（１１０）〔００１〕二次再結晶粒径を有する鋼板にお
いて、フォルステライトを主成分とする酸化皮膜中のス
ピネルの比率を組み合わせることが非常に重要であるこ
とを見いだした。
（１１０）〔００１〕二次再結晶粒径を有する鋼板にお
いて、フォルステライトを主成分とする酸化皮膜中のス
ピネルの比率を組み合わせることが非常に重要であるこ
とを見いだした。
【００１９】
【作用】次に本発明において、鋼組成および鋼板条件を
前記のように限定した理由を、詳細に説明する。この鋼
成分の限定理由は下記のとおりである。Ｃについての上
限０．００５％は、これ以上多くなると製品での磁気特
性を劣化させるので限定した。Ｓｉは鉄損を良くするた
めに下限を２．５％とするが、多すぎるとトランスを製
作する際に割れ易く加工が困難となるので上限を７．０
％とする。
前記のように限定した理由を、詳細に説明する。この鋼
成分の限定理由は下記のとおりである。Ｃについての上
限０．００５％は、これ以上多くなると製品での磁気特
性を劣化させるので限定した。Ｓｉは鉄損を良くするた
めに下限を２．５％とするが、多すぎるとトランスを製
作する際に割れ易く加工が困難となるので上限を７．０
％とする。
【００２０】以上の一方向性電磁鋼板に加え、鉄損Ｗ
17/50 が０．８５Ｗ／kg以下を有する一方向性電磁鋼板
を得るためには、結晶粒径が１〜６mm、板厚が０．１５
〜０．２８mmである鋼板表面にフォルステライトを主成
分とする酸化皮膜を有し、かつその皮膜量が片面当たり
１〜４ｇ／ｍ2 、皮膜中のスピネル量が５％以上である
ことが必要である。結晶粒径は鉄損の渦電流損を低減さ
せるため上限を６mm以下に限定した。下限１mmはこれ以
下では二次再結晶が困難なので限定した。板厚の下限
０．１５mmは、これ以下では二次再結晶が非常に不安定
になるので限定した。上限０．２８mmは、これ以上で
は、板厚効果による渦電流損を増加させ、低鉄損が得ら
れないので限定した。
17/50 が０．８５Ｗ／kg以下を有する一方向性電磁鋼板
を得るためには、結晶粒径が１〜６mm、板厚が０．１５
〜０．２８mmである鋼板表面にフォルステライトを主成
分とする酸化皮膜を有し、かつその皮膜量が片面当たり
１〜４ｇ／ｍ2 、皮膜中のスピネル量が５％以上である
ことが必要である。結晶粒径は鉄損の渦電流損を低減さ
せるため上限を６mm以下に限定した。下限１mmはこれ以
下では二次再結晶が困難なので限定した。板厚の下限
０．１５mmは、これ以下では二次再結晶が非常に不安定
になるので限定した。上限０．２８mmは、これ以上で
は、板厚効果による渦電流損を増加させ、低鉄損が得ら
れないので限定した。
【００２１】また、酸化皮膜量の片面当たりの下限１ｇ
／ｍ2 は、これ以下では、鋼板に必要な張力、表面の絶
縁性を得るため限定した。上限４ｇ／ｍ2 は、これ以上
では、皮膜表面の平滑性を維持することが困難なため限
定した。フォルステライトを主成分とするのは、酸化皮
膜の密着性、外観を良好にするためである。
／ｍ2 は、これ以下では、鋼板に必要な張力、表面の絶
縁性を得るため限定した。上限４ｇ／ｍ2 は、これ以上
では、皮膜表面の平滑性を維持することが困難なため限
定した。フォルステライトを主成分とするのは、酸化皮
膜の密着性、外観を良好にするためである。
【００２２】皮膜中のスピネル量の比率の下限５％は、
これ以下では、スピネルの存在により地鉄と皮膜に存在
する張力で満足するものが得られないので限定した。な
お、ここでいう皮膜量は仕上焼鈍後鋼板表面の酸化層を
選択剥離して、Ｍｇ量、Ａｌ量、Ｓｉ量を化学分析し、
フォルステライト、スピネルに換算した値である。な
お、酸化層のＸ線回折によりフォルステライトとスピネ
ルが主に同定されているので、酸化皮膜のＭｇ，Ａｌ，
Ｓｉはフォルステライト、スピネルに相当すると考えて
よい。
これ以下では、スピネルの存在により地鉄と皮膜に存在
する張力で満足するものが得られないので限定した。な
お、ここでいう皮膜量は仕上焼鈍後鋼板表面の酸化層を
選択剥離して、Ｍｇ量、Ａｌ量、Ｓｉ量を化学分析し、
フォルステライト、スピネルに換算した値である。な
お、酸化層のＸ線回折によりフォルステライトとスピネ
ルが主に同定されているので、酸化皮膜のＭｇ，Ａｌ，
Ｓｉはフォルステライト、スピネルに相当すると考えて
よい。
【００２３】特に、鉄損Ｗ17/50 が０．８０Ｗ／kg以下
を有する一方向性電磁鋼板を得るためには、板厚が０．
１５〜０．２５mmにおいて、皮膜中のスピネル量の比率
が１０〜６０％であることが必要である。板厚の下限
０．１５mmは、これ以下では二次再結晶が非常に不安定
になるので限定した。上限０．２５mmは、これ以上で
は、板厚効果による渦電流損を増加させ、低鉄損が得ら
れないので限定した。
を有する一方向性電磁鋼板を得るためには、板厚が０．
１５〜０．２５mmにおいて、皮膜中のスピネル量の比率
が１０〜６０％であることが必要である。板厚の下限
０．１５mmは、これ以下では二次再結晶が非常に不安定
になるので限定した。上限０．２５mmは、これ以上で
は、板厚効果による渦電流損を増加させ、低鉄損が得ら
れないので限定した。
【００２４】皮膜中のスピネル量の比率の１０％は、こ
れ以下では、スピネルの存在により、地鉄と皮膜に存在
する張力で十分に満足するものが得られないので限定し
た。上限６０％は、これ以上ではスピネルが過多とな
り、適正なフォルステライト量が確保できないので限定
した。これにより、皮膜によって地鉄に存在する張力は
最低限３００ｇ／mm2 以上が確保できる。
れ以下では、スピネルの存在により、地鉄と皮膜に存在
する張力で十分に満足するものが得られないので限定し
た。上限６０％は、これ以上ではスピネルが過多とな
り、適正なフォルステライト量が確保できないので限定
した。これにより、皮膜によって地鉄に存在する張力は
最低限３００ｇ／mm2 以上が確保できる。
【００２５】製品表面のフォルステライトを主成分とす
る皮膜中のスピネ量の比率を制御する方法としては、溶
鋼のＡｌ成分、脱炭焼鈍前の鋼板表面状態、脱炭焼鈍時
の雰囲気、分離材として塗布されるＭｇＯの量と性質な
どがある。たとえば、スピネルを形成させるためには溶
鋼のＡｌを０．０１〜０．０４％ほど添加することが望
ましい。脱炭焼鈍前の鋼板表面状態では、冷間圧延後に
脱脂、酸洗する際に、後の粗度をできるだけ小さくし、
残留塩素イオンなどもできるだけ抑える必要がある。
る皮膜中のスピネ量の比率を制御する方法としては、溶
鋼のＡｌ成分、脱炭焼鈍前の鋼板表面状態、脱炭焼鈍時
の雰囲気、分離材として塗布されるＭｇＯの量と性質な
どがある。たとえば、スピネルを形成させるためには溶
鋼のＡｌを０．０１〜０．０４％ほど添加することが望
ましい。脱炭焼鈍前の鋼板表面状態では、冷間圧延後に
脱脂、酸洗する際に、後の粗度をできるだけ小さくし、
残留塩素イオンなどもできるだけ抑える必要がある。
【００２６】脱炭焼鈍時の雰囲気は、通常水素と窒素の
混合ガス中で行われるが、この時の混合比および雰囲気
露点によりＰ H2 O ／Ｐ H2 を０．１以下に制御するこ
とにより、内部酸化層のファイアライト（２ＦｅＯ・Ｓ
ｉＯ2 ）とシリカ（ＳｉＯ2）の組成比を適正にする必
要がある。特に、本雰囲気制御は脱炭焼鈍昇温過程にお
いて重要である。なお得られた製品に、さらに鉄損を良
好にするため、上記一方向性電磁鋼板に、磁区を細分化
するための処理を施すことも可能である。
混合ガス中で行われるが、この時の混合比および雰囲気
露点によりＰ H2 O ／Ｐ H2 を０．１以下に制御するこ
とにより、内部酸化層のファイアライト（２ＦｅＯ・Ｓ
ｉＯ2 ）とシリカ（ＳｉＯ2）の組成比を適正にする必
要がある。特に、本雰囲気制御は脱炭焼鈍昇温過程にお
いて重要である。なお得られた製品に、さらに鉄損を良
好にするため、上記一方向性電磁鋼板に、磁区を細分化
するための処理を施すことも可能である。
【００２７】
【実施例】表１に示す成分組成を含む溶鋼に鋳造し、ス
ラブ加熱後、熱間圧延を行い、２．３mmの熱延鋼板を得
た。次に１１００℃で５分間焼鈍を行い、さらに酸洗し
たのち、冷間圧延により０．１４〜０．３０mm厚にし
た。圧延された鋼板を１組の加熱電極を有する直接通電
加熱装置により種々の条件で８５０℃まで加熱した。条
件は、加熱速度２０〜５５０℃/s、冷却速度２０〜３５
０℃/s、焼鈍雰囲気（湿潤水素中）Ｐ H2 O ／Ｐ H
2 ０．００２〜０．５を組み合わせて変更した。
ラブ加熱後、熱間圧延を行い、２．３mmの熱延鋼板を得
た。次に１１００℃で５分間焼鈍を行い、さらに酸洗し
たのち、冷間圧延により０．１４〜０．３０mm厚にし
た。圧延された鋼板を１組の加熱電極を有する直接通電
加熱装置により種々の条件で８５０℃まで加熱した。条
件は、加熱速度２０〜５５０℃/s、冷却速度２０〜３５
０℃/s、焼鈍雰囲気（湿潤水素中）Ｐ H2 O ／Ｐ H
2 ０．００２〜０．５を組み合わせて変更した。
【表１】
【００２８】次に、硫化軽酸洗によりスケールを除去し
た後、湿潤水素中で脱炭焼鈍し、ＭｇＯ粉を塗布した
後、１２００℃に１０時間、水素ガス雰囲気中で高温焼
鈍を行った。
た後、湿潤水素中で脱炭焼鈍し、ＭｇＯ粉を塗布した
後、１２００℃に１０時間、水素ガス雰囲気中で高温焼
鈍を行った。
【００２９】表２に上記の方法において得られた製品の
板厚、磁束密度Ｂ8 、鉄損Ｗ17/50、平均二次再結晶粒
径、皮膜中のスピネル量の比率を示す。酸化皮膜の目付
け量は、いずれの製品も２．８〜３．３ｇ／ｍ2 であっ
た。また酸化皮膜の主成分はフォルステライトであっ
た。また本発明の一方向性電磁鋼板は、結晶方位が（１
１０）〔００１〕の理想方位に対して、平均値で圧延方
向に８°以下の方位のズレを有していた。
板厚、磁束密度Ｂ8 、鉄損Ｗ17/50、平均二次再結晶粒
径、皮膜中のスピネル量の比率を示す。酸化皮膜の目付
け量は、いずれの製品も２．８〜３．３ｇ／ｍ2 であっ
た。また酸化皮膜の主成分はフォルステライトであっ
た。また本発明の一方向性電磁鋼板は、結晶方位が（１
１０）〔００１〕の理想方位に対して、平均値で圧延方
向に８°以下の方位のズレを有していた。
【００３０】
【表２】
【００３１】本発明の一方向性電磁鋼板は、板厚０．１
５〜０．２８mm、結晶粒径が１〜６mmであり、かつ皮膜
中のスピネル量の比率が５％以上であることにより、鉄
損Ｗ17/50 が０．８５Ｗ／kg以下の特性が得られてい
る。また、板厚０．１５〜０．２５mmであり、皮膜中の
スピネル量の比率が１０〜６０％で、鉄損Ｗ17/50 が
０．８０Ｗ／kg以下の特性が得られている。
５〜０．２８mm、結晶粒径が１〜６mmであり、かつ皮膜
中のスピネル量の比率が５％以上であることにより、鉄
損Ｗ17/50 が０．８５Ｗ／kg以下の特性が得られてい
る。また、板厚０．１５〜０．２５mmであり、皮膜中の
スピネル量の比率が１０〜６０％で、鉄損Ｗ17/50 が
０．８０Ｗ／kg以下の特性が得られている。
【００３２】
【発明の効果】本発明によれば、微細な結晶粒径を有す
る鋼板において、有効な皮膜を有することにより、極め
て低い鉄損をもつ一方向性電磁鋼板を提供することがで
きるので、産業上の貢献するところ極めて大である。
る鋼板において、有効な皮膜を有することにより、極め
て低い鉄損をもつ一方向性電磁鋼板を提供することがで
きるので、産業上の貢献するところ極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図１】フォルステライトを主成分とする酸化皮膜中の
スピネルの比率と鉄損特性を示す図表。図中の数字は平
均結晶粒径である。板厚は０．２２mmである。
スピネルの比率と鉄損特性を示す図表。図中の数字は平
均結晶粒径である。板厚は０．２２mmである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 // Ｃ２２Ｃ 38/00 ３０３ Ｕ 38/02
Claims (2)
- 【請求項１】 重量でＣ：０．００５％以下、Ｓｉ：
２．５〜７．０％を含み、板厚が０．１５〜０．２８m
m、平均結晶粒径が１〜６mmである鋼板表面にフォルス
テライトを主成分とする酸化皮膜を有し、かつその皮膜
量が片面当たり１〜４ｇ／ｍ2 、皮膜中のスピネル量が
５％以上であることを特徴とする鉄損Ｗ17 /50 が０．８
５Ｗ／kg以下の極めて低い鉄損を有する一方向性電磁鋼
板。 - 【請求項２】 板厚が０．１５〜０．２５mmであり、か
つ皮膜中のスピネル量が１０〜６０％である鉄損Ｗ
17/50 が０．８０Ｗ／kg以下の極めて低い鉄損を有する
請求項１記載の一方向性電磁鋼板。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP06269640A JP3081118B2 (ja) | 1994-11-02 | 1994-11-02 | 極めて低い鉄損を有する一方向性電磁鋼板 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP06269640A JP3081118B2 (ja) | 1994-11-02 | 1994-11-02 | 極めて低い鉄損を有する一方向性電磁鋼板 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH08134660A true JPH08134660A (ja) | 1996-05-28 |
| JP3081118B2 JP3081118B2 (ja) | 2000-08-28 |
Family
ID=17475168
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP06269640A Expired - Lifetime JP3081118B2 (ja) | 1994-11-02 | 1994-11-02 | 極めて低い鉄損を有する一方向性電磁鋼板 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3081118B2 (ja) |
Cited By (6)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| WO1999046416A1 (fr) * | 1998-03-11 | 1999-09-16 | Nippon Steel Corporation | Feuille d'acier magnetique unidirectionnel et procede de fabrication associe |
| JP2016196669A (ja) * | 2015-04-02 | 2016-11-24 | 新日鐵住金株式会社 | 一方向性電磁鋼板と一方向性電磁鋼板用脱炭板及びそれらの製造方法 |
| WO2020149328A1 (ja) * | 2019-01-16 | 2020-07-23 | 日本製鉄株式会社 | 一方向性電磁鋼板およびその製造方法 |
| WO2021054409A1 (ja) | 2019-09-18 | 2021-03-25 | 日本製鉄株式会社 | 方向性電磁鋼板 |
| WO2022092114A1 (ja) | 2020-10-26 | 2022-05-05 | 日本製鉄株式会社 | 巻鉄心 |
| WO2022092120A1 (ja) | 2020-10-26 | 2022-05-05 | 日本製鉄株式会社 | 巻鉄心 |
-
1994
- 1994-11-02 JP JP06269640A patent/JP3081118B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (18)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| WO1999046416A1 (fr) * | 1998-03-11 | 1999-09-16 | Nippon Steel Corporation | Feuille d'acier magnetique unidirectionnel et procede de fabrication associe |
| EP1006207A1 (en) * | 1998-03-11 | 2000-06-07 | Nippon Steel Corporation | Unidirectional magnetic steel sheet and method of its manufacture |
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| EP1728885A1 (en) * | 1998-03-11 | 2006-12-06 | Nippon Steel Corporation | A grain-oriented electrical steel sheet and method for producing the same |
| JP2016196669A (ja) * | 2015-04-02 | 2016-11-24 | 新日鐵住金株式会社 | 一方向性電磁鋼板と一方向性電磁鋼板用脱炭板及びそれらの製造方法 |
| CN113302324A (zh) * | 2019-01-16 | 2021-08-24 | 日本制铁株式会社 | 单方向性电磁钢板及其制造方法 |
| WO2020149328A1 (ja) * | 2019-01-16 | 2020-07-23 | 日本製鉄株式会社 | 一方向性電磁鋼板およびその製造方法 |
| JPWO2020149328A1 (ja) * | 2019-01-16 | 2021-11-25 | 日本製鉄株式会社 | 一方向性電磁鋼板およびその製造方法 |
| RU2771282C1 (ru) * | 2019-01-16 | 2022-04-29 | Ниппон Стил Корпорейшн | Лист электротехнической стали с ориентированной зеренной структурой и способ его изготовления |
| CN113302324B (zh) * | 2019-01-16 | 2023-06-02 | 日本制铁株式会社 | 单方向性电磁钢板及其制造方法 |
| WO2021054409A1 (ja) | 2019-09-18 | 2021-03-25 | 日本製鉄株式会社 | 方向性電磁鋼板 |
| KR20220044350A (ko) | 2019-09-18 | 2022-04-07 | 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 | 방향성 전자 강판 |
| US12065713B2 (en) | 2019-09-18 | 2024-08-20 | Nippon Steel Corporation | Grain-oriented electrical steel sheet |
| WO2022092114A1 (ja) | 2020-10-26 | 2022-05-05 | 日本製鉄株式会社 | 巻鉄心 |
| WO2022092120A1 (ja) | 2020-10-26 | 2022-05-05 | 日本製鉄株式会社 | 巻鉄心 |
| KR20230069990A (ko) | 2020-10-26 | 2023-05-19 | 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 | 권철심 |
| KR20230070021A (ko) | 2020-10-26 | 2023-05-19 | 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 | 권철심 |
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| JP3081118B2 (ja) | 2000-08-28 |
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