JP4214683B2 - 打ち抜き性および磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

打ち抜き性および磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は変圧器やモータ等の鉄心などに用いられる方向性電磁鋼板、特に良好な電磁特性と打ち抜き性を備えた方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
方向性電磁鋼板は変圧器やモータ等の鉄心として広く用いられている。この材料は、結晶方位がGoss方位と呼ばれる{110}〈001〉方位に高度に集積したものであって、その特性は主として透磁率と鉄損等の電磁特性により評価される。
【0003】
一般に、方向性電磁鋼板は、その製造工程中にフォルステライト質被膜と呼ばれる硬質な被膜が形成されており、鋼板に張力を付与するためにその上に硬質のコーティングがさらに施されている。しかし、方向性電磁鋼板を変圧器やモータ等の鉄心に利用する際には、打ち抜きや剪断により所定の形状に加工されなければならない。そのため、方向性電磁鋼板には上記電磁特性とともにこれらの加工性がよいことが要求される。中でも蛍光灯などに用いられるEIコアと呼ばれる小型鉄心は多数の積層板で構成されるため、大量生産を行う場合、電磁鋼板の打ち抜き性はEIコアの生産性を律する重要問題である。上記硬質のフォルステライト質被膜は、打ち抜き金型を早期に磨耗させ、打ち抜き性を劣化させる。
【0004】
したがって、かかる目的のために使用される方向性電磁鋼板には、表面にフォルステライト質の被膜が存在しないことが求められ、多くの提案がなされてきている。たとえば、一旦フォルステライト質被膜を形成した後に、酸洗、化学研磨、電解研磨等によりフォルステライト質被膜を除去する方法が古くから行われてきた。また、最近においては、焼鈍分離剤の成分を調整することによりフォルステライト質被膜を形成することなく、あるいはフォルステライト質被膜の形成後、速やかにこれを分解させて加工性の良い方向性電磁鋼板を製造する試みがなされている。
【0005】
例えば、特開昭60-39123号公報には焼鈍分離剤の主成分としてAl2O3を用い、フォルステライト質被膜の生成を阻止する方法が開示されている。また、特開平6-17137号公報においては焼鈍分離剤の主成分をMgOとしながらもLi、K、Na、Ba、Ca、Mg、Zn、Fe、Zr、Sn、Sr、Al等の塩化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫化物の中から1種もしくは2種以上を添加することにより形成されたフォルステライト被膜を分解する方法が開示されている。さらに特開平7-18333号公報には焼鈍分離剤にBiの塩化物を0.2%〜15%含み、かつ仕上焼鈍雰囲気の窒素分圧を25%以上とすることにより脱炭焼鈍時に形成されたSiO2酸化膜を除去する方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これらの手段によりフォルステライト質被膜の存在しない方向性電磁鋼板を製造することは可能になる。しかし、これらの方法は、一旦フォルステライト質被膜もしくはSiO2を主成分とする酸化膜を生成しその後に分解させるという過程を経ており、また、特殊な分離剤もしくは助剤が必要であるため製造工程が煩雑にならざるを得ず、却ってコストが上昇するという問題がある。
【0007】
さらに方向性電磁鋼板の製造工程においては、ゴス方位結晶粒を選択的に成長させるために、出発素材である鋼スラブに0.002〜0.10%のCとMnS、MnSeあるいはAlNなどのインヒビター元素が含ませている。そのため、いわゆる一次再結晶焼鈍を酸化性雰囲気で行って脱炭すること、さらに仕上焼鈍の際、いわゆる純化焼鈍過程、すなわち純水素気流中での1200〜1300℃の高温焼鈍を必要とし、前記問題とも関連し、低コストで良好な磁気特性を有し、かつ表面にフォルステライト質被膜を有さない方向性電磁鋼板を製造することはできなかった。
【0008】
このように従来の技術は、良好な磁気特性を有する方向性電磁鋼板を低コストで製造するとともに、表面にフォルステライト質被膜を形成させず、打ち抜き性のよい方向性電磁鋼板を経済的に製造するという課題を解決していない。したがって、本発明は、このような従来技術の問題点を解決することを目的とし、製造工程を煩雑化することなく打ち抜き性および磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を得る製造方法を提案するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、{110}〈001〉方位粒が二次再結晶する理由について鋭意研究を重ねた結果、一次再結晶組織における方位差角20〜45°である粒界が重要な役割を果たしていることを発見し、Acta Material 45巻(1997)1285頁に報告している。これによると、二次再結晶の本質的要因は一次再結晶組織中の高エネルギー粒界の分布状態にあり、二次再結晶焼鈍中に高エネルギー粒界上のインヒビターの粗大化が優先的に進行するため、高エネルギー粒界においてインヒビターによるピン止めが優先的に外れ、粒界移動が開始することにある。すなわち、インヒビターの役割は高エネルギー粒界と他の粒界の移動速度差を生じさせることにある。したがって、粒界の移動速度差を生じさせることができれば、インヒビターを用いなくとも、二次再結晶させることが可能となる。
【0010】
ここで、粒界方位差角が20〜45°である高エネルギー粒界に偏析しやすい不純物元素は、高エネルギー粒界と他の粒界の移動速度との差を小さくし、かえって二次再結晶粒の成長を遅らせることになる。逆にみれば、素材を高純度化すれば、高エネルギー粒界の構造に依存する本来的な移動速度差が顕在化して、二次再結晶が可能になることが期待できる。
【0011】
また、従来の技術では、二次再結晶粒の発現のためにインヒビターを鋼中に微細分散させる必要があり、そのため熱間圧延前に鋼スラブを1400℃以上の高温に加熱する必要があるとされていた。この高温加熱での結晶粒の粗大化を防止して組織を均一にするため、従来はCを0.04%〜0.08%含有させていた。しかし、上記のように、素材を高純度化した状態で二次再結晶を可能にするという考え方の下では、インヒビターの鋼中分散は不必要である。したがってCを出発素材に含有させることも不要となり、その場合は、スラブ加熱温度を低温化できるとともに、一次再結晶焼鈍において脱炭を進行させる必要がないため、これを乾燥雰囲気で行うことが可能になり、鋼板表層にSiO2の生成を抑制することができる。その結果、フォルステライト質被膜の形成を抑制できる。
【0012】
さらに、上記のようにインヒビターを用いない成分系においては、最終仕上焼鈍において純化焼鈍を行う必要がなくなり、その結果、最終仕上焼鈍を二次再結晶焼鈍のみとし低温化することができる。
【0013】
本発明者等は、このような前提に基づき多くの実験を重ね、本発明を完成した。したがって、本発明は、電磁鋼板用鋼スラブを熱間圧延し、得られた熱延板に熱延板焼鈍をした後、あるいは施さずに、1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚とし、一次再結晶焼鈍および二次再結晶焼鈍を施す一連の方向性電磁鋼板の製造工程において、前記電磁鋼板用鋼スラブを、質量比で、C:0.006%以下、Si:2.5〜4.5%、Mn:0.50%以下を含有するとともに、Alが0.020%以下、N及びOがそれぞれ50ppm以下に抑制され、残部Fe及び不可避的不純物からなるものとし、前記一次再結晶焼鈍における雰囲気露点を0℃以下とし、かつ前記二次再結晶焼鈍の最高加熱温度を800℃以上1000 ℃以下とするとするとともに該二次再結晶焼鈍における300℃から800℃までの昇温速度を5〜100℃/hとすることし、これにより打ち抜き性および電磁特性に優れた方向性電磁鋼板の製造を可能とするものである。上記発明においては、前記電磁鋼板用鋼スラブは、さらに、 Ni 0.01 1.50 %、 Sn 0.01 1.50 %、 Sb 0.005 0.50 %、 Cu:0.01 1.50 %、 Mo 0.005 0.50 %、 Cr 0.01 1.50 %のいずれか1以上を含有するものとすることができる。
【0014】
また、熱間圧延前のスラブ加熱温度は、1300℃以下であることを好適とする。また、上記発明において得られた方向性電磁鋼板に対してさらに絶縁コーティングを塗布・焼き付けることを好適とし、これによりさらに磁気特性および打ち抜き性に優れた方向性電磁鋼板の提供を可能とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、このように、インヒビターを含まない成分系を用い、これを低温スラブ加熱、脱炭焼鈍の省略、さらには最終仕上焼鈍における純化焼鈍の省略等大きなコストダウンを行いながら、表層にフォルステライト質被膜の生成していない打ち抜き性に優れた方向性電磁鋼板を得るものである。以下、本発明の実施形態を本発明に至る実験結果を含めて詳細に説明する。
【0016】
本発明の実施に用いる出発素材は、以下の組成を有する方向性電磁鋼板用スラブである。
【0017】
C:0.006%以下
Cを0.006%よりも多く含有すると、中間焼鈍もしくは一次再結晶焼鈍時に脱炭が必要となり、それに伴って鋼板表層にSiO2膜が形成される。このSiO2膜は、製品の打ち抜き性を劣化させるだけでなく、二次再結晶焼鈍の際に焼鈍分離剤と反応し硬質被膜を形成する可能性がある。そのため、C量は0.006%以下とする。
【0018】
Si:2.5〜4.5%
Siは電気抵抗を高め、鉄損を改善する必須元素であるが、2.5%未満では効果が乏しいばかりでなく、高温でγ変態が生ずる範囲に入るため熱延組織が大きく変化するほか、最終仕上焼鈍においてもγ変態の原因になり、良好な磁気特性を得ることができなくなる。一方、4.5%を超えると鋼板の加工性が増し、かつ飽和磁束密度も低下する。そのためSiは2.5〜4.5%とする。
【0019】
Mn:0.50%以下
Mnは熱間圧延時の加工性を向上させるのに有効な元素である。しかし、0.50%を超えると磁気特性が劣化し、かつ合金コスト高となる。そのためMnは0.50%以下とする。
【0020】
Al:0.02%以下、かつNおよびO:各々50ppm以下
本発明に係る高純度の方向性電磁鋼板用素材にあっては、これらの元素はいずれも二次再結晶粒の発現を阻害する有害元素である。かつ、これら元素は地鉄中に残存して磁気特性を劣化させる。したがって、Alは0.02%以下、望ましくは0.01%以下とする。また、NおよびOは、いずれも50ppm以下、望ましくは30ppm以下とする。これにより、インヒビターを用いなくとも良好な二次再結晶を発現させることが可能となり、さらにはC:0.006%以下としても良好な磁気特性を得ることができる。
【0021】
Ni:0.01〜1.50%、Sn:0.01〜1.50%、Sb:0.005〜0.50%、Cu:0.01〜1.50%、Mo:0.005〜0.50%、Cr:0.01〜1.50%
鉄損を向上するためには、Ni:0.01〜1.50%、Sn:0.01〜1.50%、Sb:0.005〜0.50%、Cu:0.01〜1.50%、Mo:0.005〜0.50%、Cr:0.01〜1.50%を添加することができる。これらの元素はいずれも、上記の範囲より添加量が少ない場合には鉄損改善効果がなく、一方添加量が多い場合には鉄損の劣化を招く。
【0022】
その他の元素
上記の含有元素を除く残部はFeおよび不可避的不純物である。本発明では、通常方向性電磁鋼板の素材にインヒビターとして含有されるS、Se等は不純物として扱われ、極力低くされる。
【0023】
上記の組成を有する鋼スラブは、加熱され、熱間圧延に供される。一般の方向性電磁鋼板の製造過程においては、熱間圧延前の加熱温度は1300〜1450℃が採用されるが、本発明にあっては、インヒビターの固溶を図る必要がないので、スラブ加熱温度はより低温でよく、たとえば1200〜1300℃で十分である。なお、熱間圧延は常法にしたがって行えば足りる。
【0024】
熱延工程によって得られた熱延板は、次いで冷間圧延(冷延)に供される。それに先立って、いわゆる熱延板焼鈍を施すこともできる。また、冷延を1回の工程で行って最終板厚とすること、あるいは中間焼鈍を挟んで2回以上の冷延を行って最終板厚とすることは自由である。
【0025】
最終板厚にされた冷延板は、次いで一次再結晶焼鈍に付される。焼鈍の雰囲気として、水素雰囲気、窒素雰囲気あるいはアルゴン雰囲気等の単一ガスの不活性雰囲気か、もしくはこれらの混合雰囲気とすることができる。本発明ではこの一次再結晶焼鈍に当たり雰囲気露点を0℃以下の乾燥雰囲気として鋼板表面にSiO2などの酸化物が形成されるのを防止する。これにより、最終仕上げ焼鈍後において電磁鋼板表面に硬質の被膜が生成することが阻止され、打ち抜き性が格段に改善される。そのことは、後に示す実施例1のデータから明かである。
【0026】
上記により一次再結晶焼鈍を受けた冷延板は、次いで二次再結晶粒を発現させ、これを成長させるための二次再結晶焼鈍に付される。この際、本発明では、(1)300℃から800℃までの昇温速度を5〜100℃/hとすること、及び(2)最高加熱温度を800℃以上1000 ℃以下とすることが採用される。これらの技術的条件の意義については以下の実験等から明らかにされる。
【0027】
C:25ppm、Si:3.25%、Mn:0.16%、Al:0.005%、N:0.0009%、O:0.0013%を含み、残部は実質的にFeである鋼スラブを連続鋳造した。これを1100℃で20分間加熱後熱間圧延により板厚2.8mmの熱延板に仕上げた。続いて熱延板焼鈍と冷延を施して0.35mmの最終板厚に仕上げ、窒素雰囲気(露点‐20℃)で一次再結晶焼鈍を施し、さらに、窒素雰囲気中で900℃で二次再結晶焼鈍を行った。
【0028】
上記二次再結晶焼鈍の際、300℃から800℃まで昇温するときの昇温速度を種々に変化させ、得られた鋼板の磁気特性をエプスタイン法により測定して鉄損と昇温速度の関係を明かにした。結果を図1に示す。同図により、昇温速度が5〜100℃/hの場合に磁気特性が良好であることが明かである。
【0029】
確認のため、前記実験で得られた鋼板を酸洗し、マクロ観察を行った。この結果、磁気特性の良好であった昇温速度5〜100℃/hの場合は、良好に二次再結晶粒が発現・成長しているが、昇温速度が5℃/hに満たない場合は、二次再結晶粒が一部に観察されるが二次再結晶粒が発現・成長しない部分が多くみられた。また、昇温速度が100℃/hを超える場合は、二次再結晶していない細粒のみが観察された。この二次再結晶挙動の違いは前記磁気特性の変化と符合している。
【0030】
このように二次再結晶焼鈍の昇温速度により二次再結晶挙動が異なる理由は明確ではないではないが、昇温速度が5℃/h未満と遅い場合は微量に含まれた不純物元素が粒成長前に濃化・析出して部分的に粒成長を抑制させ、昇温速度が100℃/h超と速い場合は高エネルギー粒界が移動する温度と低エネルギー粒界が移動する温度の時間差がほとんどなく、どの粒界もほぼ同時に動くため正常粒成長的挙動を示したためと推定される。
【0031】
このように二次再結晶焼鈍の昇温速度を制御することによって、インヒビターを実質的に含有しない組成を有する鋼の二次再結晶を正常に行うことができる。これに加えて本発明では、上記二次再結晶焼鈍の最高加熱温度を800℃以上1000 ℃以下とする。本発明では、出発素材にAl、S、Se、Nなどのインヒビターを実質的に含んでいないので、従来法のように1200℃以上の高温の純化焼鈍を行う必要がない。しかし、800℃未満では二次再結晶が良好に発現しない。したがって二次再結晶焼鈍は800℃以上で行う必要がある。しかしながら、1000℃を超えると焼鈍コストが飛躍的に増大するので、二次再結晶焼鈍の最高加熱温度は1000℃以下とする。
【0032】
このようにして二次再結晶粒が正常に成長し、かつ表面にフォルステライト質被膜などの硬質の被膜の生成していない方向性電磁鋼板を製造することができるが、電動機やトランスに組み立てるには上記により得た方向性電磁鋼板に適当な絶縁被膜を施すのがよい。かかる絶縁被膜については、特に制限はないが、本発明の目的に照らせば、潤滑性がよく打ち抜き性を向上させる有機系あるいは半有機系の被膜とするのがよい。このような被膜としては、有機系としては、たとえば、アクリル系、エポキシ系、ビニール系、フェノール系、スチレン系、メラミン系の各樹脂被膜が、半有機系としては上記の有機系樹脂に無機コロイド、りん酸系化合物、クロム酸系化合物等を含有させたものが挙げられる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明の実施形態を実施例により具体的にする。
(実施例1)
表1記載の成分を含み、残部は実質的にFeからなる鋼スラブ(A〜D)を連続鋳造したのち、1200℃で20分加熱後、熱間圧延により板厚2.6mmの熱延板に仕上げた。得られた熱延板を焼鈍し、さらに冷間圧延を施して0.35mmの最終板厚に仕上げた。
【0034】
表1記載の鋼のうちA〜Dは水素雰囲気(露点−20℃以下)中で一次再結晶焼鈍を施し、その後、焼鈍分離剤を塗布することなく焼鈍温度920℃、窒素雰囲気で二次再結晶焼鈍を行った。得られた鋼板の打ち抜き性を評価するためにダイス径5mmのスチールダイスにより繰り返し打ち抜き作業を行い、反り高さが50μmに達するまで打ち抜き回数で打ち抜き性を評価した。その結果を表1に併記する。
【0035】
【表1】
Figure 0004214683
【0036】
表1から分かるように、雰囲気露点0℃以下、−20℃未満の窒素雰囲気中で一次再結晶焼鈍を行った場合には、打ち抜き回数が6万回以上に達した。これに対して従来の組成を有し、従来から通常採用されている手法により脱炭を兼ねる一次再結晶焼鈍を露点60℃で行い、さらに1200℃以上の高温仕上焼鈍(純化焼鈍含む)を行った場合(鋼記号Z)は、抜き打ち回数が数千回であった。なお、上記実験材A〜Dは、すべて二次再結晶粒が正常に成長していた。
【0037】
(実施例2)
表2記載の成分を含む鋼スラブを連続鋳造したのち、1200℃で20分加熱し、熱間圧延により板厚2.6mmの熱延板に仕上げた。続いて熱延板焼鈍及び冷間圧延を施して、0.35mmの最終板厚に仕上げ、露点−20℃の水素雰囲気により一次再結晶焼鈍を施した。
【0038】
得られた一次再結晶板にSiO2を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、焼鈍温度900℃、窒素雰囲気、300℃から800℃までの昇温速度25℃/hで二次再結晶焼鈍を行ない方向性電磁鋼板を得た。続いてアクリル系樹脂酢酸ビニールを主成分とする有機コーティングを塗布し、焼付け乾燥し製品とした。得られた製品の磁気特性及び打ち抜き性を表2に併記する。なお、打ち抜き性テストは、実施例1と同様の方法で行った。同表より、本発明範囲内の成分を有する場合において磁気特性および打ち抜き性ともに良好となることがわかる。
【0039】
【表2】
Figure 0004214683
【0040】
(実施例3)
C:11ppm、Si:2.98%、Mn:0.12%、Al:0.012%、S:0.0023%、N:0.0014%、O:0.0010%を含み、残部は実質的にFeである鋼スラブを連続鋳造した。これを1200℃で20分加熱後、熱間圧延により板厚2.6mmの熱延板に仕上げた。これに熱延板焼鈍及び冷間圧延を施して0.35mm最終板厚に仕上げ、露点−20℃の窒素雰囲気中で一次再結晶焼鈍を施した。得られた一次再結晶板にSiO2を主成分とした焼鈍分離剤を塗布し、窒素雰囲気のもとで300℃から800℃までの25℃/hで昇温し、表3記載の温度に保持する二次再結晶焼鈍を行った。
【0041】
得られた方向性電磁鋼板にアクリル系樹脂とエポキシ樹脂を主成分とする有機コーティングを塗布・焼付けした。得られた鋼板の磁気特性及び打ち抜き性を表3に併記する。同表より、本発明範囲内の二次再結晶焼鈍を施した場合は磁気特性および打ち抜き性ともに良好であった。
【0042】
【表3】
Figure 0004214683
【0043】
(実施例4)
C:28ppm、Si:3.44%、Mn:0.08%、Al:0.004%、S:0.0013%、N:0.0022%、O:0.0008%を含み、残部は実質的にFeである鋼スラブを連続鋳造した。これを1200℃で20分加熱後、熱間圧延により板厚2.8mmの熱延板に仕上げた。続いて熱延板焼鈍及び冷間圧延を施して0.30mmの最終板厚に仕上げ、表4記載の露点雰囲気により一次再結晶焼鈍を施した。得られた一次再結晶板にSiO2を主成分とした焼鈍分離剤を塗布し、昇温温度1000℃、窒素雰囲気300℃から800℃までの昇温速度50℃/hで二次再結晶焼鈍を行った。
【0044】
続いてアクリル樹脂と酢酸ビニールを主成分とする有機コーティングを塗布・焼付けして製品とした。得られた製品の磁気特性及び打ち抜き性を表4に併記する。同表より、本発明にかかる製品は磁気特性および打ち抜き性ともに良好となっていることが分かる。
【0045】
【表4】
Figure 0004214683
【0046】
(実施例5)
C:32ppm、Si:3.41%、Mn:0.07%、Al:0.006%、S:0.0046%、N:0.0011%、O:0.0012%、Sb:0.047%を含み、残部は実質的にFeである鋼スラブを連続鋳造した。これを1100℃で20分加熱後、熱間圧延により板厚2.8mmの熱延板に仕上げた。続いて熱延板焼鈍及び冷間圧延を施して0.35mmの最終板厚に仕上げ、露点−20℃の窒素80%、水素20%の混合雰囲気中で一次再結晶焼鈍を施し、焼鈍分離剤を塗布することなく窒素雰囲気で焼鈍温度900℃の二次再結晶焼鈍を行った。この二次再結晶焼鈍の際の300℃から800℃までの昇温速度は表5に記載のとおりであった。
【0047】
続いて半有機コーティング(アクリル系樹脂、酢酸ビニール、無機コロイド(アルミナ、シリカ)を主成分とするもの)を塗布・焼付けして製品とした。その磁気特性及び打ち抜き性を表5に併記する。同表から本発明の条件を満足する場合は磁気特性および打ち抜き性ともに良好となることがわかる。
【0048】
【表5】
Figure 0004214683
【0049】
(実施例6)
表6に記載の成分を有する鋼スラブを連続鋳造し、1200℃で20分加熱後、熱間圧延により板厚2.6mmの熱延板に仕上げた。これに熱延板焼鈍及び冷間圧延を施して0.50mmの最終板厚に仕上げ、表7に記載のように露点を変化させて一次再結晶焼鈍を施し、さらに焼鈍分離剤を塗布することなく焼鈍温度900℃で二次再結晶焼鈍を行った。この二次再結晶焼鈍の際、300℃から800℃までの昇温速度を表7に記載のごとく変化させた。
【0050】
さらにアクリル樹脂および酢酸ビニールを主成分とする有機コーティングを塗布・焼付けし、得られた製品の磁気特性及び打ち抜き性を測定した。結果を表7に併記する。同表より、本発明に従う場合は磁気特性および打ち抜き性ともに良好となることが分かる。
【0051】
【表6】
Figure 0004214683
【0052】
【表7】
Figure 0004214683
【0053】
(実施例7)
表6に記載の成分を含む鋼スラブを連続鋳造し、得られたスラブを1150℃で30分加熱後、熱間圧延により板厚2.6mmの熱延板に仕上げた。続いて熱延板焼鈍後、0.80mmの中間板厚に冷延し、950℃で中間焼鈍を行った後、さらに冷間圧延を行って0.10mmの最終板厚に仕上げた。次いで、表8に記載のように露点を変化させて一次再結晶焼鈍を施し、さらに焼鈍分離剤を塗布することなく窒素雰囲気下、焼鈍温度900℃で二次再結晶焼鈍を行った。二次再結晶焼鈍の際、300℃から800℃までの昇温速度を表8に記載のごとく変化させた。次いでアクリル樹脂およびクロム酸系無機物を主成分とするアクリル系樹脂およびクロム酸系無機物を主成分とする半有機コーティングを塗布・焼付けして製品とした。得られた鋼板の磁気特性及び打ち抜き性を測定した。結果は表8に併記する。同表より、本発明に従う条件で製造された製品は磁気特性および打ち抜き性ともに良好となっていることがわかる。
【0054】
【表8】
Figure 0004214683
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、表面にフォルステライト質被膜など硬質の被膜を有さず優れた方向性電磁鋼板を極めて経済的に製造することができる。この方向性電磁鋼板は打ち抜き性に優れるので、たとえばEIコアを製造する工程を大幅に省力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 二次再結晶焼鈍における300℃から800℃までの昇温速度と二次再結晶焼鈍後の鋼板の鉄損との関係図である。

Claims (4)

  1. 電磁鋼板用鋼スラブを熱間圧延し、得られた熱延板に熱延板焼鈍をした後、あるいは施さずに、1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚とし、一次再結晶焼鈍および二次再結晶焼鈍を施す一連の方向性電磁鋼板の製造工程において、
    前記電磁鋼板用鋼スラブを、質量比で、C:0.006%以下、Si:2.5〜4.5%、Mn:0.50%以下を含有するとともに、Alが0.020%以下、N及びOがそれぞれ50ppm以下に抑制され、残部Fe及び不可避的不純物からなるものとし、
    前記一次再結晶焼鈍における雰囲気露点を0℃以下とし、
    かつ前記二次再結晶焼鈍の最高加熱温度を800℃以上1000 ℃以下とするとするとともに該二次再結晶焼鈍における300℃から800℃までの昇温速度を5〜100℃/hとすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記電磁鋼板用鋼スラブは、さらに、質量比で、 Ni 0.01 1.50 %、 Sn 0.01 1.50 %、 Sb 0.005 0.50 %、 Cu:0.01 1.50 %、 Mo 0.005 0.50 %、 Cr 0.01 1.50 %のいずれか1以上を含有することを特徴とする請求項1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 熱間圧延前のスラブ加熱温度は、 1300 ℃以下であることを特徴とする請求項1又2は記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 二次再結晶焼鈍後に絶縁コーティングを塗布・焼き付けることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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