JPH085788B2 - 5α−リダクターゼ阻害剤 - Google Patents

5α−リダクターゼ阻害剤

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JPH085788B2 JP25425087A JP25425087A JPH085788B2 JP H085788 B2 JPH085788 B2 JP H085788B2 JP 25425087 A JP25425087 A JP 25425087A JP 25425087 A JP25425087 A JP 25425087A JP H085788 B2 JPH085788 B2 JP H085788B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は男性ホルモンが関与する種々の疾患の予防ま
たは治療に有用な5α−リダクターゼ阻害剤に関する。
〔従来の技術〕
ヒトあるいはさまざまな哺乳類の雄性個体は、その男
性生殖器に付随する器官(おもに睾丸)から男性ホルモ
ンであるテストステロンを分泌する。そして分泌された
テストステロンは、血流により体内諸器官に運ばれ、テ
ストステロンの標的器官に選択的に取り込まれることに
より、個体における雄性機能発現等をおこなつている。
しかしテストステロンは、これら本来の雄性機能発現
以外に、男性型脱毛症あるいは多毛症などの毛髪の疾
患;皮脂分泌機能の亢進が原因とされる痙瘡や脂漏など
の皮膚疾患;アポクリン腺の機能傷害が原因の一つに考
えられる化膿性汗腺炎;前立腺肥大症および前立腺ガン
等の疾患の発症原因あるいは増悪因子になると考えられ
ている。
一方、テストステロンは標的器官に取り込まれた後、
細胞内の受容体に結合することにより、その作用を発現
する。このとき、テストステロンは直接受容体に結合す
る場合もあるが、より活性の高いジヒドロキシテストス
テロンに転換し、このジヒドロキシテストステロンが受
容体に結合することにより、作用を発現することも明ら
かにされている。この転換の際に作用する酵素が5α−
リダクターゼである。
このような事実からテストステロンが関与する種々の
治療には、5α−リダクターゼ阻害作用又はテストステ
ロンもしくはジヒドロキシテストステロンが受容体と結
合することを阻害する作用を有する抗男性ホルモン剤が
使用されている。そのような抗男性ホルモン剤として
は、オキセンドロン、酢酸クロルヤジノン、11α−ヒド
ロキシプロゲステロン、4−アンドロステン−3−オン
−11β−カルボン酸、シプロテロンアセテートなどがあ
る。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、これらの抗男性ホルモン剤はいずれも
ステロイドホルモンの誘導体であり、生体に投与された
とき、それ自体もしくはその代謝産物がホルモン作用を
示すことから、長期に使用した場合重篤な副作用を示す
ことが多く、安全性の面から問題があつた。
従つて、安全性に問題のない新しい抗男性ホルモン剤
の開発が望まれていた。
〔問題点を解決するための手段〕
かかる実状において本発明者らは、ステロイド骨格を
有せず、安全性の高い抗男性ホルモン剤を開発すべく種
々検討してきたところ、フラボノイド類の中に優れた5
α−リダクターゼ阻害作用を有する物質が存在するこ
と、そして当該物質が優れた皮脂腺活性抑制作用、養毛
育毛作用を有することを見い出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は次の一般式(I)もしくは(II) 〔式中、R1は水素原子、水酸基もしくはグルクロン酸残
基を示し、R2、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ水素
原子もしくは水酸基を示し、R3は水素原子、水酸基もし
くは糖残基を示す〕 で表わされるフラボノイド類を有効成分とする5α−リ
ダクターゼ阻害剤を提供するものである。
また、本発明は上記一般式(I)又は(II)で表わさ
れるフラボノイド類を有効成分とする皮脂腺活性抑制剤
を提供するものである。
さらに本発明は、上記一般式(I)又は(II)で表わ
されるフラボノイド類を有効成分とする養毛育毛剤を提
供するものである。
一般式(I)中、R3で示される糖残基としては、グル
コース、フラクトース、ラムノースなどの五炭糖もしく
は六炭糖類が、一個もしくは二個以上結合したものが含
まれる。
本発明の5α−リダクターゼ阻害剤、皮脂腺活性抑制
剤及び養毛育毛剤の有効成分である上記一般式(I)も
しくは(II)で表わされるフラボノイドの特に好ましい
例としてはケンフエロール、クエルセチン、ルチン、バ
イカリン、バイカレイン、ダイゼイン等が挙げられる。
斯かるフラボノイドは、広く植物に含まれる主に黄色
から褐色を呈する物質であり、一般にビタミンP様作用
と称される血管浸透性に対する作用を示すことが知られ
ている。また近年このビタミンP様作用以外にも様々な
生理作用、例えばビタミンCの作用を増強すること等が
報告されているが、5α−リダクターゼ阻害作用に関し
ては全く知られていない。
本発明に用いられる一般式(I)もしくは(II)の化
合物は、優れた5α−リダクターゼ阻害作用を有する。
以下にこれらの化合物のうち代表的な化合物の5α−リ
ダクターゼ阻害活性について試験した結果を示す。
<試験方法> 頚椎脱臼により屠殺したWister系ラツトの前立腺腹葉
を摘出し、0.32Mのシユークロース、0.1mMのジチオスレ
イトールを含む20mMリン酸バツフアで細断したホモジネ
ート後、14000gで1時間遠心し、沈澱を採取した。沈澱
に2倍量の5mg/mlジギトニン、2MNaCl、40%グリセロー
ル、1mMジチオスレイトール、1mM EDTAを含む10mMリン
酸バツフアーを加え、充分撹拌し、15000gで1時間遠心
して得られる上清を酵素液とした。この溶液100μlを
とり、トリチウムで標識したテストステロン(3H−テス
トステロン)を含む溶液(25pg/μl)100μlと試料溶
液(500ng/μl)100μlを加え、37℃で45分間加温し
た後、酢酸エチル1mlを加えて反応を停止するととも
に、未反応3H−テストステロンおよび酵素により転換さ
れた3H−ジヒドロテストステロンを酢酸エチル相に回収
する。これを窒素雰囲気下に溶媒留去し、メタノールに
溶解し、高速液体クロマトグラフイーの手法によりテス
トステロンとジヒドロキシテストステロンを分離し、各
々の量を測定することにより試料の酵素阻害活性を測定
した。
<結果> 結果を表1に示す。なお、表1中の阻害率(%)は次
式により求めた。
一般式(I)もしくは(II)で表わされるフラボノイ
ドは、前記の如く広く植物一般、例えば人や動物が常食
とする植物にも含まれており、またそのビタミンP様活
性やビタミンCの作用増強のために医薬品としても長年
利用されていることから、安全性が高いものである。例
えば、ルチンのマウス(静注)におけるLD50は950mg/Kg
であり、クエルセチンのマウス(経口)におけるLD50
161mg/Kgである。
上記の如く一般式(I)もしくは(II)フラボノイド
は優れた5α−リダクターゼ阻害活性を有し、かつ安全
性が高いことから、これを有効成分とする本発明5α−
リダクターゼ阻害剤は、男性ホルモンの作用がその発症
原因あるいは増悪因子となつている種々の疾患、例えば
皮脂分泌機能の亢進に伴なう脂漏や瘡、化膿性汗腺
炎、腋臭、多毛症、前立腺肥大、前立腺ガン、男性型脱
毛症等の治療薬として使用することができる。本発明5
α−リダクターゼ阻害剤は、このような疾患の治療を目
的として使用する場合、全身的又は局所的に経口又は非
経口で投与される。投与量は年令、体重、性別、症状、
治療効果、投与方法、処理時間等によりことなるが、前
立腺肥大症、脱毛症、瘡等の治療及び/又は予防の場
合は通常成人一人当たり20〜200mg、好ましくは25〜100
mg/日の範囲で1日1回から数回経口投与される。もち
ろん前記したように投与量は種々の条件で変動するので
上記投与範囲より少ない量で十分な場合もあるし、また
範囲を越えて投与する必要がある場合もある。
本発明の5α−リダクターゼ阻害剤を経口薬として用
いる場合は、一般式(I)又は(II)のフラボノイドを
そのまま投与しても良いが、更に錠剤、散剤、顆粒剤、
カプセル剤、液剤等の剤型を工夫することによつて更に
効果を高めることが出来る。例えば固形製剤では、乳
糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセル
ロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロ
リドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の不活性
な希釈剤;ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;
繊維素グルコン酸カルシウムのような崩壊剤等を含有し
てもよい。錠剤または丸剤は必要により白糖、ゼラチ
ン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピ
ルメチルセルロース、フタレートなどの胃溶性あるいは
腸溶性物質のフイルムで被膜してもよいし、また2以上
の層で被膜してもよい。
経口投与のための液状製剤としては、乳濁剤、溶液
剤、懸濁剤、シロツプ剤、エリキシル剤等が挙げられ
る。このような液状製剤には、有効成分および不活性な
希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、
風味剤、芳香剤、防腐剤等を含有してもよい。
経口投与のための他の製剤としては、スプレー剤等が
挙げられる。
本発明による非経口投与のための代表的な製剤として
は、注射剤が挙げられる。本発明の有効成分を注射剤と
するには、これを注射用蒸留水、生理食塩水等の水性媒
体;プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、
オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコ
ール類、ポリソルベート80等の非水性媒体に溶解、懸濁
又は乳濁させれば良い。注射剤には、さらに防腐剤、湿
潤剤、乳化剤、分散剤のような補助剤を含んでもよい。
注射剤に要求される無菌化手段としては、バクテリア保
留フイルターを通すろ過、殺菌剤の配合、照射等が挙げ
られる。これらは又無菌の個体組成物としておき、使用
前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用するこ
ともできる。
非経口投与のためのその他の製剤としては、外用溶
液;軟骨、ローシヨン、トニツク、スプレー、懸濁剤、
乳剤のような塗布剤;直腸内投与のための坐剤;膣内投
与のためのペツサリー等が挙げられる。特に脱毛症又は
アクネの治療・予防用の製剤としてはローシヨン、トニ
ツク、スプレー、溶液剤、軟骨が好ましい。これらの製
剤には、有効成分以外に、蒸留水;エタノールのような
低級アルコール;セタノールのような高級アルコール;
ポリエチレングリコール、プロピレングリコールのよう
な多価アルコール;ヒドロキシプロピルセルロースのよ
うなセルロース類;動物性、植物性及び合成油脂性成
分;ワセリン;ロウ;シリコン;界面活性剤;酸化亜鉛
等の希釈剤、さらには湿潤剤、懸濁剤、芳香剤、防腐剤
のような補助剤を配合することができる。
〔作用及び発明の効果〕
一般式(I)又は(II)で表わされるフラボノイド
は、優れた5α−リダクターゼ阻害作用を有し、かつ安
全性が高いものであり、更に公知の5α−リダクターゼ
阻害物質の場合と同様に男性ホルモンの受容体への結合
を阻害する作用も併せもつことが確認された。従つて当
該フラボノイドを有効成分とする本発明の5α−リダク
ター阻害剤は、養毛育毛剤、皮脂腺活性抑制剤として、
また男性型脱毛症、多毛症、化膿性汗腺炎、前立腺肥
大、前立腺ガン等の男性ホルモンが関与する疾病の治療
及び予防に有用なものである。
〔実施例〕
次に実施例を挙げて本発明を説明する。
実施例1 皮脂分泌抑制効果試験: 健常人の前額部の左又は右側の一方に本発明5α−リ
ダクターゼ阻害剤、他方に対照液を1日2回、2週間連
日塗布した。2週間後、前額処理部をアセトン/エーテ
ル=1:1の混液を含ませた脱脂綿にて清拭し、3時間後
の処理部における回復皮脂量をグリーン(Green)らの
方法〔J.Invest.Dermatol.,54(1970)〕に従い測定し
た。なお、本発明5α−リダクターゼ阻害剤としては、
表2の成分を2%エタノール溶液としたものを用い、対
照液としてはエタノールのみを用いた。
結果を表2に示す。
実施例2 マウスによる育毛効果試験: 7週令に達したC3H雄性マウスの背部体毛を刈り取
り、50%エタノール/水溶液中に表3の成分が1重量%
含まれるように調整した試験溶液を連日塗布し、除毛し
た背部に新たに100%発毛するのに要した日数を測定し
た。これらの試験は小川らの方法 〔Normal and Abnormal Epidermal Differentiation p
p.159〜170,Tokyo Univ.Press.(1983)〕に従つて行な
つた。その結果、表3に示す如く本発明の5α−リダク
ターゼ阻害剤は、明らかに発毛に要した日数の短縮が認
められた。
実施例3 人における養毛育毛効果試験: 男性型脱毛症および頭部脂漏性皮膚炎の症状を有する
25才〜36才までの男性10人に3重量%のバイカレインを
含む15%エタノール水溶液を通常使用しているヘア・ト
ニツクに換えて二カ月間自由に使用させた。
使用開始前と使用期間終了時における脱毛量を測定し
た。測定にあたつて前日同一条件で洗髪を行ない、翌日
実体顕微鏡下で500本の頭髪に対して約30gの力を一本ず
つ加え抜けてきたものを脱毛本数として計測した。
その結果、表4に示す如く本発明の5α−リダクター
ゼ阻害剤は明らかな脱毛量の減少効果を示した。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の一般式(I)もしくは(II) 〔式中、R1は水素原子、水酸基もしくはグルクロン酸残
    基を示し、R2、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ水素
    原子もしくは水酸基を示し、R3は水素原子、水酸基もし
    くは糖残基を示す〕 で表わされるフラボノイド類を有効成分とする5α−リ
    ダクターゼ阻害剤。
  2. 【請求項2】次の一般式(I)もしくは(II) 〔式中、R1は水素原子、水酸基もしくはグルクロン酸残
    基を示し、R2、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ水素
    原子もしくは水酸基を示し、R3は水素原子、水酸基もし
    くは糖残基を示す〕 で表わされるフラボノイド類を有効成分とする皮脂腺活
    性抑制剤。
  3. 【請求項3】次の一般式(I)もしくは(II) 〔式中、R1は水素原子、水酸基もしくはグルクロン酸残
    基を示し、R2、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ水素
    原子もしくは水酸基を示し、R3は水素原子、水酸基もし
    くは糖残基を示す〕 で表わされるフラボノイド類を有効成分とする養毛育毛
    剤。
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