JPH08337525A - 白内障の予防または治療薬剤 - Google Patents

白内障の予防または治療薬剤

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JPH08337525A
JPH08337525A JP11117696A JP11117696A JPH08337525A JP H08337525 A JPH08337525 A JP H08337525A JP 11117696 A JP11117696 A JP 11117696A JP 11117696 A JP11117696 A JP 11117696A JP H08337525 A JPH08337525 A JP H08337525A
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cataract
furanone
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Application number
JP11117696A
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English (en)
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Jun Yamakoshi
純 山越
Hiroharu Ishikawa
廣晴 石川
Yukihiko Iwai
幸彦 岩井
Mamoru Kikuchi
護 菊地
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Kikkoman Corp
Original Assignee
Kikkoman Corp
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 本発明は、次式: 【化1】 (式中、R1、R2、R3は、同一でも異なっていてもよ
く、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ハロゲン原
子、メルカプト基、カルボキシル基、カルバモイル基、
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ
ル基、アルキニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリ
ールオキシ基、アリール基、アラルキル基、アシルオキ
シ基またはアルコキシカルボニル基を表す。)で示され
るフラノン誘導体を含有してなる白内障の予防または治
療薬剤。 【効果】 本発明の白内障の予防または治療薬剤は、特
に、酸化障害に基づく老人性白内障に対して、点眼また
は服用により予防的または治療的効果を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は白内障の予防または
治療薬剤、詳しくは3(2H)−フラノンを母核とする
フラノン誘導体を含有してなる白内障の予防または治療
剤に関する。
【0002】
【従来の技術】白内障の予防または治療薬剤として、現
在、ピレノキシン点眼薬、還元型グルタチオン点眼薬、
唾液腺ホルモン錠、チオプロニン錠、ビタミン類(例え
ば、ビタミンC、ビタミンEなど)、アルドースレダク
ターゼ(AR)活性阻害剤(例えば、トルレスタット、
エパルレスタットなど)などが実際の臨床で使用されて
いる(熊倉清次:化学経済、1993年、11月号、7
8〜83頁)。しかしながら、これらのものは、十分な
予防または治療効果を有するものではない。そこで、糖
尿病性白内障については、AR活性を阻害する各種薬剤
が提案されている。その中の一つに2(5H)−フラノ
ンを母核するフラノン誘導体を有効成分とするものがあ
る(特開昭59−16884号公報、特開昭60−17
8879号公報、特開昭61−267566号公報)
が、糖尿病性の白内障に対しては、十分な予防または治
療効果を現しても、酸化障害などによっておこる老人性
の白内障に対しては十分な予防または治療効果を発揮で
きないものである。また、経口、静脈、腹腔内の投与に
よりその予防または治療効果を現すが、点眼によっては
殆どそれらを現さない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、酸化
障害などによっておこる老人性白内障に対して、更に点
眼によっても十分な予防または治療効果を有する白内障
の予防または治療薬剤を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を達成すべく鋭意研究した結果、3(2H)−フラノン
を母核とするフラノン誘導体またはその塩は、AR活性
を殆ど阻害しないが、酸化障害などによっておこる白内
障に対して、点眼によって十分な予防または治療効果を
発揮することを知見した。本発明はその知見に基づい
て、完成されたものである。
【0005】すなわち、本発明は、次式:
【化2】 (式中、R1、R2、R3は、同一でも異なっていてもよ
く、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ハロゲン原
子、メルカプト基、カルボキシル基、カルバモイル基、
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ
ル基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリ
ールオキシ基、アリール基、アラルキル基、アラルコキ
シ基、アシルオキシ基またはアルコキシカルボニル基を
示す。)で表されるフラノン誘導体またはその塩を含有
してなる白内障の予防または治療薬剤である。また、式
(1)において、R1、R2、R3が、同一でも異なって
いてもよく、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、
アルケニル基、アリール基、アラルキル基またはアルコ
キシカルボニル基で表されるフラノン誘導体またはその
塩を含有してなる白内障の予防または治療薬剤であり、
また、R1、R2、R3が、同一でも異なっていてもよ
く、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であるフ
ラノン誘導体またはその塩を含有してなる白内障の予防
または治療薬剤である。上記のフラノン誘導体またはそ
の塩が2(又は5)−エチル−4−ハイドロキシ−5
(又は2)−メチル−3(2H)−フラノン、4−ハイド
ロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、また
はその塩である上記記載の白内障の予防または治療薬剤
である。また、フラノン誘導体の塩が、アルカリ金属
塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩で
ある上記記載の白内障の予防または治療薬剤である。
【0006】以下、本発明を詳細に説明する。本発明
は、式(1)で表されるフラノン誘導体またはその塩を
含有してなる白内障の予防または治療薬剤で、点眼によ
っても著しい効果を発揮するものである。そして、本発
明においては、該誘導体またはその塩であれば、どのよ
うなものでも白内障の予防または治療効果(以下、抗白
内障効果ともいう)を有するが、その中でもより強く、
その効果を発揮する誘導体は、式(1)において、
1、R2、R3が、同一でも異なっていてもよく、水素
原子またはヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル
基、アリール基、アラルキル基、またはアルコキシカル
ボニル基で表されるフラノン誘導体またはその塩であ
る。更に、その中でも特に強力に効果を発揮するもの
は、式(1)において、R1、R2、R3が、同一でも異
なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜6のアル
キル基で表されるフラノン誘導体またはその塩である。
このような特定の化合物が点眼によって、著しい抗白内
障効果を発揮することを発見したのは本発明者らが初め
てのことである。
【0007】前記式(1)中のおいて、アルキル基と
は、直鎖状、分岐状または環状のいずれの構造でもよ
く、炭素原子数1以上、好ましくは1〜6の基である。
具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イ
ソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−
ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、ter
−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などが
例示される。
【0008】また、アルキル基は、炭素原子に結合する
水素原子の一部が、例えば、ヒドロキシル基、アミノ
基、メルカプト基、ニトロ基、スルホン酸基、ハロゲン
原子、カルボキシル基、カルバモイル基、アリール基、
アラリキル基、アラルコキシ基、アルコキシル基、アシ
ルオキシ基、またはアルコキシカルボニル基などで置換
されていてもよい。
【0009】アルケニル基およびアルキニル基とは、直
鎖状、分岐状、または環状のいずれの構造でもよく、炭
素原子数2以上、好ましくは1〜6の基である。アルケ
ニル基としては、具体的には、ビニル基、アリル基等が
例示される。アルキニル基としては、具体的には、エチ
ニル基、プロピニル基などが例示される。また、前記の
アルキル基の場合と同様に、アルケニル基およびアルキ
ニル基は、それぞれ、炭素原子に結合する水素原子の一
部がアルキル基の場合に例示した置換基と同様の基で置
換されていてもよい。
【0010】アルコキシカルボニル基は、そのアルキル
部分が炭素原子数1以上、好ましくは1〜6の基であ
り、アルキル部分は直鎖状、分岐状、または環状のいず
れの構造でもよい。具体的には、メトキシカルボニル
基、エトキシカルボニル基などが例示される。また、前
記のアルキル基の場合と同様に、アルコキシカルボニル
基のアルキル部分は、炭素原子に結合する水素原子の一
部がアルキル基の場合に例示した置換基と同様の基で置
換されていてもよい。
【0011】アルコキシル基は、そのアルキル部分が炭
素原子数1以上、好ましくは2〜22の基であり、アル
キル部分は直鎖状、分岐状、または環状のいずれの構造
でもよい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−
プロポキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s
ec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペント
キシ基、n−ヘキソキシ基などが例示される。また、前
記のアルキル基の場合と同様に、アルコキシル基のアル
キル部分は、炭素原子に結合する水素原子の一部がアル
キル基の場合に例示した置換基と同様の基で置換されて
いてもよい。
【0012】アルケニルオキシ基およびアルキニルオキ
シ基は、それぞれ、そのアルケニル部分およびアルキニ
ル部分が炭素原子数2以上、好ましくは2〜22の基で
あり、アルケニル部分およびアルキニル部分は、直鎖
状、分岐状、または環状のいずれの構造でもよい。アル
ケニルオキシ基としては、具体的には、ビニルオキシ
基、アリルオキシ基などが挙げられる。アルキニルオキ
シ基としては、具体的には、エチニルオキシ基、プロピ
ニルオキシ基などが例示される。また、前記のアルキル
基の場合と同様に、アルケニルオキシ基およびアルキニ
ルオキシ基のアルキル部分は、炭素原子に結合する水素
原子の一部がアルキル基の場合に例示した置換基と同様
の基で置換されていてもよい。
【0013】アリールオキシ基としては、具体的には、
フェノキシ等が例示される。また、前記のアルキル基の
場合と同様に、アリールオキシ基のアリール部分は、炭
素原子に結合する水素原子の一部がアルキル基の場合に
例示した置換基と同様の基で置換されていてもよい。
【0014】アシルオキシ基の炭化水素部は、飽和若し
くは不飽和脂肪族炭化水素基、またはアリール基であ
る。炭化水素部が飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基
である場合、その炭素原子数は1以上、好ましくは2〜
22であり、直鎖状、分岐状、または環状のいずれの構
造でもよい。アシルオキシ基としては、具体的は、アセ
トキシ基、ピバロイルオキシ基、プロピオニルオキシ
基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリ
ルオキシ基、イソバレリルオキシ基、n−ヘキサノイル
オキシ基、n−ヘプタノイルオキシ基、n−オクタノイ
ルオキシ基、パルミトイルオキシ基、n−ヘプタデカノ
イルオキシ基、ステアロイルオキシ基、オレオイルオキ
シ基、リノレオイルオキシ基、リノレンオイルオキシ
基、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエ
ノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などが例示され
る。また、前記のアルキル基の場合と同様に、アシルオ
キシ基の炭化水素部は、炭素原子に結合する水素原子の
一部がアルキル基の場合に例示した置換基と同様の基で
置換されていてもよい。具体的は、β−アミノプロピオ
ニルオキシ基、γ−アミノブチリルオキシ基、β−アミ
ノイソブチリルオキシ基、δ−アミノバレリルオキシ
基、γ−アミノイソバレリルオキシ基、ε−アミノ−n
−ヘキサノイルオキシ基、β−メルカプト−α−アミノ
−プロピオニルオキシ基などが例示される。アシルオキ
シ基の中でも特に好ましいものとしては、アセトキシ基
およびピバロイルオキシ基である。
【0015】アリール基としては、フェニル基などが例
示される。また、前記のアルキル基の場合と同様に、ア
リール基は炭素原子に結合する水素原子の一部がアルキ
ル基の場合に例示した置換基と同様の基で置換されてい
てもよい。
【0016】アラルキル基およびアラルコキシ基は、そ
れぞれ、そのアルキレン部分が炭素原子数が1以上、好
ましくは1〜6の基であり、アルキレン部分は直鎖状、
分岐状、または環状のいずれの構造でもよい。アラルキ
ル基としては、具体的には、3−フェニルプロピル基、
4−(4’−ニトロフェニル)−ブチル基などが例示さ
れる。アラルコキシ基としては、具体的には、2−フェ
ニルエトキシ基、6−(3’,4’−ジクロロフェニ
ル)−ヘキソキシ基などが例示される。また、前記のア
ルキル基の場合と同様に、アラルキル基およびアラルコ
キシ基それぞれのアルキレン部分は、炭素原子に結合す
る水素原子の一部がアルキル基の場合に例示した置換基
と同様の基で置換されていてもよい。更に、アラルキル
基およびアラルコキシ基それぞれのアリール部分も、炭
素原子に結合する水素原子の一部がアルキル基の場合に
例示した置換基と同様の基で置換されていてもよい。
【0017】また、本発明の白内障の予防又は治療薬剤
の有効成分としては、上記式(1)で表される化合物の
中でも、R1、R2、およびR3が、それぞれ水素原子、
ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール
基、アラルキル基、またはアルコキシカルボニル基で表
されるフラノン誘導体が、好ましい。また、それらの化
合物の中でも、特に、水素原子または炭素数1〜6のア
ルキル基で表されるフラノン誘導体が好ましい。
【0018】本発明の白内障の予防又は治療薬剤の有効
成分としては、前記のような一般式(1)で表される4
−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン誘導体であるが、
具体例を以下に示す。
【0019】なお、該誘導体は、3(2H)−フラノン
骨格の2位に水素原子が結合しており、かつ、該骨格の
2位に結合するもう一つの基と該骨格の5位に結合する
基が異なる場合、すなわち、前記式(1)において、R
2、およびR3のいずれか一方が水素原子であり、かつ水
素原子でない方の基とR1とが互に異なる場合、互変異
性を示す。例えば、R2を水素原子とすると、次式
(4)に示すような互変異性体式(2)と(3)のフラ
ノン誘導体が平衡状態で存在する。
【化3】 (式中、R1、R3は前記と同じ意味であるが互に異なっ
ている。)
【0020】該誘導体の具体的例として、2(又は5)
‐エチル‐4‐ヒドロキシ‐5(又は2)‐メチル‐3
(2H)‐フラノン(R1=エチル基、R2=水素原子、
3=メチル基、またはR1=メチル基、R2=水素原
子、R3=エチル基)、4‐ヒドロキシ‐5(又は2)
‐メチル‐2(又は5)‐n‐プロピル‐3(2H)‐
フラノン(R1=メチル基、R2=水素原子、R3=n‐
プロピル基、またはR1=n‐プロピル基、R2=水素原
子、R3=メチル基)、4‐ヒドロキシ‐2(又は5)
‐イソプロピル‐5(又は2)‐メチル‐3(2H)‐
フラノン(R1=メチル基、R2=水素原子、R3=イソ
プロピル基、またはR1=イソプロピル基、R2=水素原
子、R3=メチル基)、2(又は5)‐n-ブチル‐4‐
ヒドロキシ‐5(又は2)‐メチル‐3(2H)‐フラ
ノン(R1=メチル基、R2=水素原子、R3=n-ブチル
基、またはR1=n-ブチル基、R2=水素原子、R3=メ
チル基)、4‐ヒドロキシ‐2(又は5)‐イソブチル
‐5(又は2)‐メチル‐3(2H)‐フラノン(R1
=メチル基、R2=水素原子、R3=イソブチル基、また
はR1=イソブチル基、R2=水素原子、R3=メチル
基)、5(又は2)‐エチル‐4‐ヒドロキシ‐2(又
は5)‐n‐プロピル‐3(2H)‐フラノン(R1
エチル基、R2=水素原子、R3=n‐プロピル基、また
はR1=n‐プロピル基、R2=水素原子、R3=エチル
基)、5(又は2)‐エチル‐4‐ヒドロキシ‐2(又
は5)‐イソブチル‐3(2H)‐フラノン(R1=エ
チル基、R2=水素原子、R3=イソブチル基、またはR
1=イソブチル基、R2=水素原子、R3=エチル基)な
どの互変異性体を挙げることができる。更に、互変異性
体を示さない誘導体として、2,5‐ジメチル‐4‐ヒ
ドロキシ‐3(2H)‐フラノン(R1=メチル基、R2
=水素原子、R3=メチル基)、2,5‐ジエチル‐4
‐ヒドロキシ‐3(2H)‐フラノン、4‐ヒドロキシ
‐2,2,5‐トリメチル‐3(2H)‐フラノン(R
1=エチル基、R2=エチル基、R3=エチル基)、2,
5‐ジエチル‐4‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐3(2
H)‐フラノン(R1=エチル基、R2=メチル基、R3
=エチル基)、2−(2’−ヒドロキシエチル)−2,
5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)フラノン
(R1=メチル基、R2=2’ヒドロキシル基、R3=メ
チル基)、2−(1−ヒドロキシフェニル)−2,5−
ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)フラノン(R1
=メチル基、R2=1−ヒドロキシフェニル基、R3=メ
チル基)、2−(1’−ヒドロキシ−2’−フェニルエ
チル)−2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2
H)フラノン(R1=メチル基、R2=1’−ヒドロキシ
−2’−フェニルエチル基、R3=メチル基)などを挙
げることができる。
【0021】本発明の式(1)の4‐ヒドロキシ−3
(2H)−フラノン誘導体は、公知の合成法により合成
できる。例えば、一般的な方法としては、次式(5)で
表される化合物を原料とし、オゾン(O3)酸化後、還
元的処理{トリフェニルホスフィン(ΦPh)処理}を
し、シュウ酸{(COOH)2}で環化して、次式
(7)で表される中間体を経て、(1)式1の4‐ヒド
ロキシ−3(2H)−フラノン誘導体を得ることができ
る (特開昭49−82656号公報、アメリカ合衆国
特許3576014号、アメリカ合衆国特許37283
97号)。
【0022】
【化4】 (R1、R2、R3は前記と同じ意味を示す。)
【0023】また、式1において、R2、R3の内、一方
が水素原子で、他の一方が、アルキル基で、かつ、その
基の水素原子のいずれかが、カルボシキル基、アミノ
基、ヒドロキシル基、メルカプト基の付いたアルキル基
で置換されている場合は、例えば、次のようにして合成
される(アメリカ合衆国特許3576014号、アメリ
カ合衆国特許3728397号)。アルキル基がカルボ
キシル基で置換されている場合、次式(8)で表される
プロパギルアルコール誘導体を出発化合物として、次式
(9)で表されるグリニャール試薬と反応させ、次い
で、次式(10)で表される化合物と反応させることに
より次式(11)の中間体を得る。これをオゾン
(O3)酸化後、還元的処理{トリフェニルホスフィン
(ΦPh)処理}をし、シュウ酸{(COOH)2}で
環化することにより、化合物(12)、(13)の混合
物を得る。それらを加水分解して、脱保護反応を行な
い、目的物質(14)、(15)を得ることができる。
【化5】 (式中、R1は前記と同じ意味を示す。)
【化6】 (式中、Etはエチル基、Mgはマグネシウム原子、B
rはブロム原子を示す。)
【化7】 (式中、Etはエチル基、Zはアルキレン基を示す。)
【化8】 (式中、R1、Zは前記と同じ意味を示す。)
【0024】ヒドロキシアルキル基で置換されている場
合、前記式(16)において、式(10)の化合物の代
わりに、式(17)の化合物を用いて、目的物質(1
8)、または(19)を得ることができる。
【化9】 (式中、Zは前記と同じ意味であり、Acはアセチル基
を示す。)
【化10】 (式中、R1、Zは前記と同じ意味を示す。)
【0025】アミノアルキル基で置換されている場合、
前記式(16)において、式(10)の化合物の代わり
に、式(20)の化合物を用いて、目的物質式(2
1)、または(22)を得ることができる。
【化11】 (式中、Zは前記と同じ意味、Bocはtert−ブト
キシカルボニル基を示す。)
【化12】 (式中、R1、Zは前記と同じ意味を示す。)
【0026】メルカプトアルキル基で置換されている場
合:、前記式(16)において、式(10)の化合物の
代わりに、式(23)の化合物を用いて、目的物質(2
4)、または(25)を得ることができる。
【化13】 {式中、Sはイオウ原子を示し、Ac、Zは前記と同じ
意味を示す。)
【化14】 (式中、R1、Zは前記と同じ意味を示す。)
【0027】上記の以外でも本発明の3(2H)−フラ
ノン誘導体を製造できる。例えば、次のような方法を適
宜に応用することにより合成できる: 1)5−メチル−3(2H)−フラノンとシッフ(Sc
hiff)塩基の反応から、2,2−ジメチル−4−エ
トキシカルボニル−3−オキソ−5−(E)−スチリル
−3(2H)−フラノン(Synthesis、No.
1、45〜47頁、1981年)、 2)α,α’−ジブロモ−1,2−ジオンからナトリウ
ムアルコキシド存在下で、ジアルコキシジエポキシアル
カン−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノンの合成
(Synthesis、No.9、709頁、1981
年)、 3)2−ブチン−1,4−ジオール誘導体の位置支配的
な水和反応による4,5−ジヒドロ−3(2H)−フラ
ノンの合成、 4)△2−イソオキサゾリン類の還元反応による3(2
H)−フラノン誘導体の製造(Tetrahedron
Lett.、24巻、2079〜2082頁、198
3年)、 5)1,3−ジチアンを出発原料とするジヒドロ−3
(2H)−フラノンの合成法(Tetrahedron
Lett.、25巻、5567〜5570頁、198
4年)、 6)5−置換3−イソオキサゾールカルボン酸エチルを
出発原料とする3(2H)−フラノン誘導体の合成(T
etrahedron Lett.、25巻、4313
〜4316頁、1984年)、 7)5−アリール−4,5−ジブロモ−2−メチル−
1,2−エポキシペンタン−3−オンの脱臭化水素によ
る3(2H)−フラノン誘導体の合成(Zh.Org.
Khim.、21巻、1330〜1334頁、1985
年)、 8)芳香族アルデヒドと3−ヒドロキシ−3−メチル−
2−ブタノンの縮合と臭素付加、およびアルカリ処理し
ての5−アリール−2,2−ジメチル−3(2H)−フ
ラノン誘導体の合成(J.Heterocycl.Ch
em.、23巻、1199ー1201頁、1986
年)、 9)2−アセチルメチル−5−メチルフランまたは2−
ベンゾイルメチル−5−メチルフランを原料としての2
−アセチルメチル−5−メチル−3(2H)−フラノ
ン、2−アセチルメチル−5−フェニル−3(2H)−
フラノンの合成(Tetrahedron Let
t.、28巻、2297〜2298頁、1987年)、 10)プロパルギルアルコール、CO、およびハロゲン
化フェニルからの3(2H)−フラノン誘導体の合成
(Chem.Lett.、No.1、81〜82頁、1
988年)、 11)5−アリールフラン−2,3−ジオン類とアシル
メチレントリフェニルホスホラン類との反応からの3
(2H)−フラノン誘導体の合成(Pharmazi
e、48巻、99〜106頁、1993年)など。
【0028】上記反応において用いる溶媒は、反応に対
して不活性なものであればどのようなものでもよく、特
に制限がないが、通常は、ベンゼン、トルエン、キシレ
ンのような芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミドの
ようなアミド類;ジメチルスルホキシド;テトラヒドロ
フランなどの有機溶媒が用いられる。
【0029】反応終了後、得られた反応混合物からの目
的の4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン誘導体の分
離、精製は、蒸留、溶媒抽出、分別晶出、カラムクロマ
トグラフィー、液体クロマトグラフィーなど、慣用され
ている方法を用いて行なうことができる。そして、得ら
れた該誘導体の同定は、MSスペクトル、IRスペクト
ル、NMRスペクトルなどによって行なうことができ
る。
【0030】本発明においては、上記のようにして製造
される全てのフラノン誘導体を本発明の白内障の予防ま
たは治療薬剤として用いることができる。また、目的と
必要に応じて、上記のフラノン誘導体を一種または2種
以上を適宜組合せて本発明の白内障の予防または治療剤
とすることもできる。それらの中でも、好ましい誘導体
としては、2(または5)−エチル−4−ハイドロキシ
−5(または2)−メチル−3(2H)−フラノン、4−
ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン
を、特に好ましいものとして、4−ヒドロキシ−2,5
−ジメチル−3(2H)−フラノンを挙げることができ
る。
【0031】また、医薬として許容される、前記フラノ
ン誘導体の塩をも本発明の白内障の予防または治療薬剤
として用いることができる。例えば、それらの塩とし
て、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩(例えばカル
シウム塩)、アンモニウム塩、アミン塩(例えば、エタ
ノールアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシ
ルアミン塩など)などを挙げることができる。
【0032】(作用)前記式で示されるフラノン誘導体
は、極めて強い抗酸化活性を示すことから、白内障発生
過程での水晶体における酸化反応を抑制することによ
り、抗白内障効果を示すものと考えられる。なお、2
(5H)−フラノンを母核とするフラノン誘導体(特開
昭59−16884号公報、特開昭60−178879
号公報、特開昭61−267566号公報、特公報平8
−13739号公報)を有効成分としてなる白内障治療
薬剤が提案されているが、該物質はアルドースレダクタ
ーゼ(aldose reductase)活性を阻害
することにより糖尿病性白内障を治療するものである。
そして、経口、静脈、腹腔内の投与によりその治療効果
を現すが、点眼によっては殆ど現さない。しかるに、本
願のものは、アルドースレダクターゼ活性を阻害しな
い。遺伝性、ナフタレン障害性、老人性の白内障などの
酸化障害に基づく白内障に治療効果をもつものである。
経口、静脈、腹腔内の投与によっては勿論のこと、点眼
によっても著しい治療効果を表すものである。よって、
本願の白内障の予防または治療薬剤は、2(5H)−フ
ラノンを母核とするフラノン誘導体を有効成分とする白
内障の治療薬剤とは、全く異質のものである。
【0033】(投与方法)本発明の白内障の予防または
治療薬剤は、老人性白内障などの酸化障害に基づく白内
障の予防、治療のため、経口的にあるいは非経口的に適
宜に使用される。
【0034】(製剤化)製剤の形態としては例えば錠
剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などの固形剤または点眼
剤、注射剤などの液剤などいずれの形にも公知の方法に
より適宜調製することができる。これらの製剤には通常
用いられる結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促
進剤、矯味剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存
剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調製剤などの賦
形剤を適宜使用してもよい。
【0035】{投与量(本発明では以下用量とい
う。)}本発明の目的における本発明のフラノン誘導体
の用量は、その誘導体の種類、患者の年令、体重、その
剤型や適応症状などによって異なるが、例えば注射剤の
場合成人一日一回0.01〜1000mg、好ましくは
0.1〜100mg程度、内服剤の場合は、成人一日数
回、一回量約0.1〜1000mg、好ましくは1〜1
000mg程度投与するのがよい。点眼剤の場合は、濃
度0.01〜10%、好ましくは0.5〜2%程度のも
のを一日1〜5回、好ましくは2〜5回程度一回につき
1〜2滴点眼するのがよい。本発明においては、本発明
の白内障の予防または治療薬剤および/または別種の薬
効を奏する成分を適宜含有させてもよい。
【0036】(試験例) 試験例1 (調製法)2−エチル−4−ハイドロキシ−5−メチル
−3(2H)−フラノン(以下、EHMFという)は前
記のようにして調製した。すなわち、アセト酢酸t−ブ
チルエステルをナトリウム(ディスパージョン)と反応
させた後、ブロモエチルアセチルブロミドと−40℃〜
−50℃で反応させた。中間体4−t−ブトキシカルボ
ニル−2−エチル−5−メチル−3(H)−フラノンが
生成した。次いで脱保護等によりEHMFを合成した
(Recuil Travaux Chimiques
des Pays−Bas、92巻、731頁、19
73年)。なお、この化合物は東京化成工業(株)より
購入できる。
【00037】試験例2 EHMFのガラクト−ス白内障に対する白内障抑制効果
(抗白内障効果ともいう)(in vitro試験) (試験方法)7週齢、雄、Crj:Wistar系ラッ
トから摘出した水晶体を、30mMガラクト−ス添加T
C199重炭酸塩緩衝培地(日水製薬製)10mlに浸
し、37℃、5%C02存在下で7日間培養した。水晶
体(5個/群)を浸したガラクト−ス添加培地に、EH
MFをおのおの0.5mg、0.25mgおよび0.1
mg添加した。また、白内障治療薬剤の有効成分の還元
型グルタチオンをおのおの10mgと5mg添加した。
対照として、ガラクト−ス添加ないしは無添加培地でお
のおの水晶体を上述同様に培養した。なお、これら検体
を添加ないしは無添加の培地は毎日交換した。各水晶体
を7日間培養後、水晶体白濁の程度を服部らの方法(日
本眼科学会誌、95巻、3号、228〜234頁、19
91年)によりスコア表示した。すなわち、スコア0は
まったく混濁を認めないものとし、スコア1は皮質に軽
度の混濁を認めるもの、スコア3は皮質全体にわたる混
濁およびそれ以上の混濁を認めるものとし、その中間の
ものはスコア2とした。また、7日間培養後の水晶体の
湿重量を測定し、水晶体膨化の程度を比較検討した。
【0038】(試験結果)試験結果を表1に示す。
【表1】 ガラクト−ス無添加培地で培養した水晶体は透明性を維
持し(スコア0)、また、膨化は認められなかったが、
ガラクト−ス添加培地で培養した水晶体は、著しい白濁
を認める(スコア2.3)と共に膨化(水晶体湿重量の
増加)が認められた。一方、ガラクト−ス添加培地に更
にEHMFを0.5mg/10ml添加し培養した水晶
体は、ガラクト−ス無添加培地で培養した水晶体と同様
の透明性(スコア0)と大きさを維持し、用量依存性を
もって水晶体白濁抑制効果が認められた。なお、還元型
グルタチオンは、10mg/10ml添加量でわずかな
白内障抑制効果(スコア1)が認められるにすぎなかっ
た。
【0039】試験例3 EHMFの自然発症白内障ラット(ICR/fラット)
に対する白内障抑制効果(in vivo試験) (試験方法)8週齢、雄、ICR/fラット(7匹/
群)を用い1日3回(朝・昼・夕方)、4週間(日曜日
は除く)EHMFを点眼した。EHMF点眼液は、EH
MFを生理食塩水に1%の割合で溶解後、dipalm
itoylphosphatidylcholine
(DPPC;日本油脂社製)を更に0.5%の割合で添
加し、リポソーム体としHEMF含有リポソーム溶液と
して調製した。また、白内障治療剤のカタリン(千寿製
薬製)を上述同様に点眼した。対照として生理食塩水の
みを上述同様に点眼した。試験期間中、1週間毎にミド
リンP(参天製薬社製)で散瞳後、接写レンズ{med
ical−nikkor(商品名)、ニコン社製}付き
カメラで水晶体を写真撮影し、前述(試験例1)同様、
服部らの方法を用い水晶体の白濁の程度をスコア表示す
ると共に、白濁直径を計測した。
【0040】(試験結果)試験結果を図1と図2に示
す。生理食塩水のみを点眼した対照群は点眼1週目以
降、顕著な水晶体の白濁を認め、点眼4週目には全例に
著しい白内障を認めた。一方、EHMF点眼群は、点眼
1週目以降わずかな水晶体の白濁を認めたにすぎず、ま
た、点眼4週目には、有意な白内障進行抑制効果を示
し、発症した白内障も軽度であった。なお、カタリン点
眼群は、点眼2週目でわずかな白内障進行抑制傾向を示
したが、点眼4週目では、対照群と同様、全例に著しい
白内障を認めた(図1)。水晶体白濁直径値(図2)に
おいても、水晶体白濁スコア(図1)と同様の傾向が認
められた。
【0041】試験例4 単回投与毒性試験 (試験方法)5週齢、雌、Crj:ICRマウス(体重
29〜32g)を用い(5匹/群)、EHMFを生理食
塩水に62.5mg/50mlの割合で溶解し、500
mg/kg、250mg/kgおよび100mg/kg
をおのおの腹腔内投与し7日間観察した。
【0042】(試験結果)EHMFは500mg/kg
の腹腔内投与においてさえ死亡動物はなく、投与7日目
の剖検および全身各臓器の病理組織検査でなんら異常を
認めず、極めて毒性が低いことが判明した。
【0043】試験例5 4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン
(以下、HDMFという)のガラクト−ス白内障に対す
る抗白内障効果(in vitro試験) (試験方法)7週齢、雄、Crj:Wister系ラットから摘出
した水晶体を、30mMガラクト−ス添加TC199重炭酸塩
緩衝培地(日水製薬製)10mlに浸し、37℃、5%
CO2存在下で7日間培養した。水晶体(5個/群)を浸し
たガラクト−ス添加培地に、HDMF{東京化成工業
(株)より購入)を0.5mg、0.1mgおよび
0.01mg添加した。また、白内障治療剤の有効成分
の還元型グルタチオンをおのおの10mgと5mg添加
した。対照として、ガラクト−ス添加ないしは無添加培
地でおのおの水晶体を上述同様に培養した。なお、これ
ら検体を添加ないしは無添加の培地は毎日交換した。各
水晶体を7日間培養後、水晶体白濁の程度を試験例1と
同様な方法によりスコア表示した。また、7日間培養後
の水晶体の湿重量を測定し、水晶体膨化の程度を比較検
討した。
【0044】(試験結果)試験結果を表2に示す。
【表2】
【0045】ガラクト−ス無添加培地で培養した水晶体
は透明性を維持し(スコア0)、また、膨化は認められ
なかったが、ガラクト−ス添加培地で培養した水晶体
は、著しい白濁を認める(スコア2.6)と共に膨化
(水晶体湿重量の増加)が認められた。一方、ガラクト
−ス添加培地に更にHDMFを0.5mg/10ml添
加し培養した水晶体は、ガラクト−ス無添加培地で培養
した水晶体と同様の透明性(スコア0)と大きさを維持
し、用量依存性をもって水晶体白濁抑制効果が認められ
た。なお、還元型グルタチオンは、10mg/10ml
添加量でわずかな白内障抑制効果(スコア1)が認めら
れるにすぎなかった。
【0046】試験例6 HDMFの自然発症白内障ラット(ICR/fラット)に対
する抗白内障効果(invivo点眼試験) (試験方法)8週齢、雄、ICR/fラット(7〜8匹/
群、平均体重190g)を用い1日3回(朝・昼・夕
方)、3週間HDMFを点眼した。HDMF点眼液は、
生理食塩水に1%の割合でHDMF溶解後、dipalmitoy
lphosphatidylcholine(DPPC;日本油脂社製)を更に
0.5%の割合で添加し、リポソーム体としHDMF含
有リポソームとして調製した。また、白内障治療剤のカ
タリン(千寿製薬製)を上述同様に一日3回、3週間点
眼した。対照として生理食塩水のみを上述同様に点眼し
た。試験期間中、1週間毎にミドリンP(参天製薬社
製)で散瞳後、Nikonズームスリットランプマイク
ロスコープFS−3(ニコン社製)で水晶体のスリット
像と前眼部全体像撮影を行い、西田らの方法(あたらし
い眼科、2巻、9号、1307〜1312頁、198
5)に従い0〜5の6段階にステ−ジ分類した。なお、
試験に用いたICR/fラットは試験開始時にすでにステ−
ジ3(肉眼的には水晶体の白濁は認められないが、スリ
ット像で後嚢下皮質にわずかな混濁が認められる)であ
り、試験期間中、肉眼的に水晶体の白濁が認められるス
テ−ジ4に水晶体混濁が進行した時点をもって白内障発
症とし、白内障発症率(%)を白内障発症眼数/総眼数
×100で算出した。
【0047】(試験結果)試験結果を図3に示す。生理
食塩水のみを点眼した対照群は点眼1週目以降、顕著な
水晶体の白濁を認め、点眼3週目での白内障発症率は6
4%であった。一方、HDMF点眼群は、点眼2週目以
降わずかな水晶体の白濁を認めたにすぎず、点眼3週目
のHDMF点眼群の白内障発症率は31%であった。な
お、カタリン点眼群は、点眼2週目でわずかな白内障進
行抑制傾向を示したが、点眼3週目では、対照群と同
様、白内障発症率は64%であった(図3)。
【0048】試験例7 HDMFの自然発症白内障ラット(ICR/fラット)に対
する抗白内障効果(invivo経口投与試験) (試験方法)8週齢、雄、ICR/fラット(7〜8匹/
群、平均体重190g)を用い、HDMFをMF粉末飼料
(オリエンタル酵母工業社製)に0.1%の割合で添加
し3週間ラットに自由摂取させたHDMF0.1%混餌
群とMF粉末飼料のみを同様に自由摂取させた対照群を設
けた。試験例2に記載の方法と同様に3週間の試験期間
中、1週間毎に写真撮影を行い白内障発症率を算出し
た。
【0049】(試験結果)試験結果を図4に示す。対照
群は試験開始1週間以降、顕著な水晶体の白濁を認め、
3週目での白内障発症率は64%であった。一方、HD
MF0.1%混餌群は試験期間を通じて水晶体の白濁を
認めず、3週目での白内障発症率は0%であった(図
4)。なお、HDMF0.1%混餌群のラットのHDM
F摂取量は、平均77mg/Kg/日であった。
【0050】試験例8 3−(4−ヒドロキシ−5−オキソ−3−フェニル−
2,5−ジヒドロ−2−フリル)プロピオン酸エチルの
ガラクトース白内障に対する抗白内障効果(invit
ro試験) 従来技術の2(5H)−フラノンを母核とするフラノン
誘導体、すなわち3−(4−ヒドロキシ−5−オキソ−
3−フェニル−2,5−ジヒドロ−2−フリル)プロピ
オン酸エチル(特開昭59−16884号公報、特開昭
60−178879号公報、特開昭61−267566
号公報)を合成し、それについて、ガラクトース白内障
に対する抗白内症効果を試験し、本発明のものと比べて
みた。
【0051】3−(4−ヒドロキシ−5−オキソ−3−
フェニル−2,5−ジヒドロ−2−フリル)プロピオン
酸エチルの合成:フェニルピルビン酸メチル(4.34
g)および3−フォルミルプロピオン酸エチル(6.3
g)をN,N−ジメチルホルムアミド(92ml)に溶
解し、0℃で攪拌しながら、1,8−ジアザビシクロ
[4.3.0]ウンデセン−(4.1ml)を滴下し
た。混合物を0℃で2時間攪拌した後、溶媒を減圧留去
した。残渣を希塩酸(1N)20mlに注いで、酢酸エ
チル60mlで3回抽出した。有機層を希塩酸、水、飽
和食塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後濃縮
し、シリカゲルカラムクロマトグラフフィーにによって
精製して3.60g(53.5%)の3−(4−ヒドロ
キシ−5−オキソ−3−フェニル−2,5−ジヒドロ−
2−フリル)プロピオン酸エチルを得た。 IR νmax cm-1:1750,1710,146
0,1460(s),1380,1270,1150;
NMR δ(60MHz, CDCl3):1.27(t,J=7.1H
z,3H),1.68〜1.87(m,1H),2.39〜2.
68(m,3H),4.16(q,J=7.1Hz,2H),5.5
1(dd,J1=1.6Hz,J2=8.9Hz),7.36〜7.79
(m,5H)
【0052】試験例5と同様にして、3−(4−ヒドロ
キシ−5−オキソ−3−フェニル−2,5−ジヒドロ−
2−フリル)プロピオン酸エチルを使用してガラクトー
ス白内障に対する抗白内障効果を試験した。その結果を
表3に示した。表3から、2(5H)−フラノンを母核
とするフラノン誘導体である3−(4−ヒドロキシ−5
−オキソ−3−フェニル−2,5−ジヒドロ−2−フリ
ル)プロピオン酸エチルは、検体0.10mgのレベル
で、本願発明のHDMFの約1/ の効果の効果しかな
いことが分った(表2参照)。
【表3】
【0053】試験例9 HDMFと3−(4−ヒドロキシ−5−オキソ−3−フ
ェニル−2,5−ジヒドロ−2−フリル)プロピオン酸
の自然発症白内障(ICR/fラット)に対する抗白内障効
果(in vivo点眼試験)の比較 試験例8と同様な目的で、従来技術の2(5H)−フラ
ノンを母核とするフラノン誘導体である3−(4−ヒド
ロキシ−5−オキソ−3−フェニル−2,5−ジヒドロ
−2−フリル)プロピオン酸(特開昭59−16884
号公報、特開昭60−178879号公報、特開昭61
−267566号公報)を合成して、それについて、i
n vivo点眼による抗白内障効果を試験した。
【0054】3−(4−ヒドロキシ−5−オキソ−3−
フェニル−2,5−ジヒドロ−2−フリル)プロピオン
酸の合成:3−(4−ヒドロキシ−5−オキソ−3−フ
ェニル−2,5−ジヒドロ−2−フリル)プロピオン酸
エチル(2.0g)をテトラヒドロフランとメタノール
の混合液(2:1)64mlに溶解し0℃で攪拌した。
これに1N水酸化ナトリウム水溶液21mlを滴下し、
室温にもどして20時間攪拌した。減圧濃縮後、希塩酸
溶液(1N、20ml)に注いで、酢酸エチル40ml
で3回抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナ
トリウムで乾燥後、濃縮した。更に、シリカゲルカラム
クロマトグラフフィーにによって精製して0.81g
(45.2%)の3−(4−ヒドロキシ−5−オキソ−
3−フェニル−2,5−ジヒドロ−2−フリル)プロピ
オン酸を得た。 IR νmax cm-1:3170,1750(s),
1700,1460(s),1380,1320,12
50,1210,1170;NMR δ(60MHz, CDC
l3):1.63〜1.80(m,1H),2.34〜2.5
6(m,3H),5.51(dd,J1=2.1Hz,J2=8.4Hz),
7.40〜7.80(m,5H)
【0055】試験例6と同様にして、3−(4−ヒドロ
キシ−5−オキソ−3−フェニル−2,5−ジヒドロ−
2−フリル)プロピオン酸を使用して点眼による抗白内
障効果を試験した。その結果を図5に示した。図5か
ら、2(5H)−フラノンを母核とするフラノン誘導体
である3−(4−ヒドロキシ−5−オキソ−3−フェニ
ル−2,5−ジヒドロ−2−フリル)プロピオン酸は、
本願発明のHDMFの約1/1.6の効果の効果しかな
いことが分った(図3参照)。
【0056】
【実施例】
実施例1 点眼剤 EHMF 1.0g ホウ酸 0.7g 塩化ナトリウム 0.6g p-オキシ安息香酸メチル 0.02g クロロブタノール 0.3g を滅菌精製水に溶かし全量100mlとした(なお、pHは
6.0に水酸化ナトリウムを用いて調製した)。
【0057】実施例2 内服剤 EHMF 100mg 乳糖 80mg デンプン 17mg ステアリン酸マグネシウム 3mg 以上を1錠分として錠剤化した。
【0058】実施例3 注射剤 EHMF 1.5g 塩化ナロリウム 0.6g 注射用蒸留水 100ml 以上を混和し0.45μmのMINI CAPSULE
フイルター(Gelman Science社製)を
用いて無菌濾過した。濾液を無菌的に2mlずつガラス
アンプルに充填し、溶閉して注射剤とした。
【0059】実施例4 点眼剤 HDMF 1.0g ホウ酸 0.7g 塩化ナトリウム 0.6g p−オキシ安息香酸メチル 0.02g クロロブタノール 0.3g を滅菌精製水に溶かし全量100mlとした(なお、p
Hは6.0に水酸化ナトリウムを用いて調製した)。
【0060】実施例5 内服剤 HDMF 100mg 乳糖 80mg デンプン 17mg ステアリン酸マグネシウム 3mg 以上を1錠分として錠剤化した。
【0061】実施例6 注射剤 HDMF 1.5g 塩化ナトリウム 0.6g 注射用蒸留水 100ml 以上を混和し0.45μmのMINI CAPSULE
フィルタ−(Gelman Science社製)を用
いて無菌濾過した。濾液を無菌的に2mlずつガラスア
ンプルに充填し、溶閉して注射剤とした。
【0062】
【発明の効果】本発明の白内障の予防または治療薬剤
は、前記試験例から分るように、毒性が極めて少ない上
に、老人性白内障の予防または治療に有利に使用するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】EHMFの自然発症白内障ラットに対する白内
障抑制効果。横軸は薬物投与開始後の実験期間(週)を
示し、縦軸はスコアを示す。
【図2】EHMFの自然発症白内障ラットに対する白内
障抑制効果。横軸は薬物投与開始後の実験期間(週)を
示し、縦軸は水晶体白濁直径値を示す。
【図3】HDMFの点眼の自然発症白内障ラットに対す
る白内障抑制効果。横軸は薬物点眼開始後の実験期間
(週)を示し、縦軸は白内障発症率(%)を示す。
【図4】HDMFの経口投与の自然発症白内障ラットに
対する白内障抑制効果。横軸は薬物経口投与開始後の実
験期間(週)を示し、縦軸は白内障発症率(%)を示
す。
【図5】3−(4−ヒドロキシ−5−オキソ−3−フェ
ニル−2,5−ジヒドロ−2−フリル)プロピオン酸の
点眼の自然発症白内障ラットに対する白内障抑制効果。
横軸は薬物点眼開始後の実験期間(週)を示し、縦軸は
白内障発症率(%)を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 菊地 護 千葉県野田市野田339番地 キッコーマン 株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次式: 【化1】 (式中、R1、R2、R3は、同一でも異なっていてもよ
    く、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ハロゲン原
    子、メルカプト基、カルボキシル基、カルバモイル基、
    アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ
    ル基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリ
    ールオキシ基、アリール基、アラルキル基、アシルオキ
    シ基またはアルコキシカルボニル基を示す。)で表され
    るフラノン誘導体またはその塩を含有してなる白内障の
    予防または治療薬剤。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の式において、R1、R2
    3が同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヒドロ
    キシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ア
    ラルキル基、またはアルコキシカルボニル基で表される
    フラノン誘導体またはその塩を含有してなる請求項1記
    載の白内障の予防または治療薬剤。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の式において、R1、R2
    3が同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭
    素数1〜6のアルキル基であるフラノン誘導体またはそ
    の塩を含有してなる請求項1記載の白内障の予防または
    治療薬剤。
  4. 【請求項4】 請求項1記載のフラノン誘導体またはそ
    の塩が2(又は5)−エチル−4−ハイドロキシ−5
    (又は2)−メチル−3(2H)−フラノン、4−ハイド
    ロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンまたは
    その塩である請求項1記載の白内障の予防または治療薬
    剤。
  5. 【請求項5】 請求項1、2、3または4記載のフラノ
    ン誘導体の塩が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属
    塩、アンモニウム塩、アミン塩である請求項1、2、3
    または4記載の白内障の予防または治療薬剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2000000190A1 (fr) * 1998-06-26 2000-01-06 Takara Shuzo Co., Ltd. Agents therapeutiques
WO2016068278A1 (ja) * 2014-10-31 2016-05-06 学校法人慶應義塾 水晶体硬化抑制剤

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