JPH08334155A - 無段変速機の制御装置 - Google Patents

無段変速機の制御装置

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JPH08334155A
JPH08334155A JP14168195A JP14168195A JPH08334155A JP H08334155 A JPH08334155 A JP H08334155A JP 14168195 A JP14168195 A JP 14168195A JP 14168195 A JP14168195 A JP 14168195A JP H08334155 A JPH08334155 A JP H08334155A
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variable transmission
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Abstract

(57)【要約】 【目的】車両の走行状態や運転者の操作入力状態に応じ
て目標入力回転数、即ちエンジンの回転数や出力を制御
することにより良好な加減速感を達成する。 【構成】例えばスロットル開速度TVO' が大きい場合
には大きな加速力が期待されているとして、スロットル
開度TVOとリニアな第1目標入力回転数Ni1と前回の
第2目標入力回転数Ni2(K-1) との加重平均で後者に係
る重み係数αを大きく設定して、算出される第2目標入
力回転数Ni2の1次遅れ特性の遅れ時間を長くし、或い
は第1目標入力回転数Ni1と第2目標入力回転数Ni2
の加重平均で後者に係る重み係数βを小さく設定して、
目標入力回転数TNi として算出される第3目標入力回
転数Ni3の応答時間を短くすることなどにより、アクセ
ルペダル踏込みからのダウンシフトのタイミングと変速
速度とを制御することにより、加速駆動力に分配される
エンジンの回転数及び出力を調整制御可能とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は無段変速機の制御装置に
関するものであり、特に種々の走行条件下で運転者の意
思を反映した良好な加速感を実現するのに好適なもので
ある。
【0002】
【従来の技術】一般に、ベルト式やトロイダル式の従来
の無段変速機では、車速とスロットル開度とを変数と
し、これらの変数から無段変速機の目標入力回転数を設
定可能な変速相関をマップ化した変速比制御マップを用
いて当該目標入力回転数を設定し、現在の車速,即ち無
段変速機の出力回転数で、この目標入力回転数が達成さ
れる無段変速機の変速比(減速比)となるように制御さ
れる。そして、この目標入力回転数は、スロットル開度
が小さいとき,即ちエンジン負荷が小さいときには小さ
く、スロットル開度が大きいとき,即ちエンジン負荷が
大きいときには大きくなるように設定されている。
【0003】従って、例えば運転者が大きな加速力を要
求してアクセルペダルを大きく且つ速く踏込むと、前記
変速比制御マップから算出設定される目標入力回転数も
急増する。これにより、無段変速機の変速比は急激に大
きくなり、エンジンの回転数も急増することになるが、
このときのエンジンの出力(トルク)の多くが、イナー
シャ(慣性)重量を含むエンジン回転数増加のために消
費され、当該エンジンの回転数が前記所定の目標入力回
転数を満足する回転数まで増加しきるまでは、アクセル
ペダルを踏込んでも所望する駆動力が得られず、車両が
殆ど加速しないという不具合が発生すると共に、一旦大
きくなったストットル開度もアクセルペダルの踏込み量
が安定して一定値となると、今度はエンジン回転数が前
記目標入力回転数を満足する回転数まで増加した後、前
記変速比制御マップの特性から、目標入力回転数、即ち
エンジン回転数がほぼ一定のままで車速が増速するた
め、乗員に違和感を与えてしまう。
【0004】このような問題を解決するために、先に特
開平5−126239号公報に記載される無段変速機の
制御装置が提案されている。この無段変速機の制御装置
によれば、車両加減速の過渡期を判定し、その車両加減
速過渡期の初期には、例えば前記制御マップのみに従っ
て車速やスロットル開度のみを変数として設定される定
常走行時の無段変速機の目標入力回転数に移行するより
も、入力回転数の変化量の小さな過渡目標入力回転数の
初期値が設定され、それ以後、当該定常走行時に設定さ
れる目標入力回転数と前回の過渡目標入力回転数との偏
差を縮小した変化量を当該前回の過渡目標入力回転数に
増減して今回の過渡目標入力回転数が設定される。即
ち、この無段変速機の制御装置によれば、車両の加減速
過渡期には、前記定常走行時に設定される無段変速機の
目標入力回転数と現在の目標入力回転数との偏差にフィ
ルタリングを施して、前記無段変速機で達成すべき過渡
目標入力回転数がゆっくりと定常目標入力回転数に漸近
するように無段変速機の変速速度(アップシフト,ダウ
ンシフトを問わない)を小さくすることで、前記エンジ
ン回転数の急激な増減や、その後のエンジン回転数ほぼ
一定下における車速の増減速という違和感を抑制防止し
ようとするものである。ちなみに、前記定常走行時に設
定される目標入力回転数と前回の過渡目標入力回転数と
の偏差を縮小した変化量は、予め設定された特性曲線マ
ップを検索したり、該当する演算式に従って算出したり
して設定することとされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来の無段変速機の制御装置では、今回の過渡目標入力回
転数を算出設定するために、常に前記定常走行時の目標
入力回転数と前回の過渡目標入力回転数との偏差を算出
設定した上で、当該偏差をパラメータとする入力回転数
の変化量を算出設定し、更にこれを前回の過渡目標入力
回転数に付加するという過程を必要とし、その分だけ演
算負荷等の制御負荷が大きいという問題がある。また、
前記無段変速機で達成される今回の過渡目標入力回転数
は、前記定常走行時の目標入力回転数と前回の過渡目標
入力回転数との偏差のみによって設定されるため、実際
の車両の加減速状態などの走行状態や運転者の加減速の
期待度が反映されず、常に良好な加減速感が得られると
は限らないという問題もある。
【0006】本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発され
たものであり、構成や演算処理を簡潔化してコスト面で
も有利であり、更に種々の走行状態や運転者の操作入力
状態に応じて目標入力回転数、即ちエンジンの回転数を
制御することにより良好な加減速感を達成することので
きる無段変速機の制御装置を提供することを目的とする
ものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】而して、本発明のうち請
求項1に係る無段変速機の制御装置は、図1の基本構成
図に示すように,スロットルバルブの開度を検出するス
ロットル開度検出手段と、車速を検出する車速検出手段
と、無段変速機への目標とする入力回転数を設定し、設
定された目標入力回転数を達成すべく当該無段変速機の
変速比を制御する変速比制御手段とを備えた無段変速機
の制御装置において、前記変速比制御手段は、予めスロ
ットル開度及び車速を変数として車両に搭載された無段
変速機への目標とする入力回転数を設定可能な変速相関
を持ち、少なくとも当該変速相関に基づいて前記スロッ
トル開度検出手段で検出されたスロットル開度検出値及
び前記車速検出手段で検出された車速検出値から、前記
無段変速機への第1目標入力回転数を設定する第1目標
入力回転数設定手段と、前記第1目標入力回転数と過去
の第2目標入力回転数とから現在の第2目標入力回転数
を設定する第2目標回転数設定手段と、前記第1目標入
力回転数と現在の第2目標入力回転数とから、前記無段
変速機で達成すべき目標入力回転数としての第3目標入
力回転数を設定する第3目標入力回転数設定手段とを備
えたことを特徴とするものである。
【0008】また、本発明のうち請求項2に係る無段変
速機の制御装置は、前記第2目標入力回転数設定手段
が、前記第1目標入力回転数と所定時間前の第2目標入
力回転数との加重平均から前記現在の第2目標入力回転
数を設定することを特徴とするものである。また、本発
明のうち請求項3に係る無段変速機の制御装置は、前記
第3目標入力回転数設定手段が、前記第1目標入力回転
数と現在の第2目標入力回転数との加重平均から前記第
3目標入力回転数を設定することを特徴とするものであ
る。
【0009】また、本発明のうち請求項4に係る無段変
速機の制御装置は、前記加重平均の重み係数が可変であ
ることを特徴とするものである。また、本発明のうち請
求項5に係る無段変速機の制御装置は、前記スロットル
開度検出手段で検出されたスロットル開度検出値の変化
率からスロットル開速度を検出するスロットル開速度検
出手段を備え、前記第2又は第3目標入力回転数設定手
段が、前記スロットル開速度検出手段で検出されたスロ
ットル開速度検出値に基づいて、前記加重平均の重み係
数を設定することを特徴とするものである。
【0010】また、本発明のうち請求項6に係る無段変
速機の制御装置は、前記スロットル開速度検出手段で検
出されたスロットル開速度検出値の変化率からスロット
ル開加速度を検出するスロットル開加速度検出手段を備
え、前記第2又は第3目標入力回転数設定手段が、前記
スロットル開速度検出手段で検出されたスロットル開速
度検出値及びスロットル開加速度検出手段で検出された
スロットル開加速度検出値に基づいて、前記加重平均の
重み係数を設定することを特徴とするものである。
【0011】また、本発明のうち請求項7に係る無段変
速機の制御装置は、前記第2又は第3目標入力回転数設
定手段が、前記車速検出手段で検出された車速検出値に
基づいて、前記加重平均の重み係数を設定することを特
徴とするものである。また、本発明のうち請求項8に係
る無段変速機の制御装置は、前記車速検出手段で検出さ
れた車速検出値の変化率から車両加速度を検出する車両
加速度検出手段を備え、前記第2又は第3目標入力回転
数設定手段が、前記車両加速度検出手段で検出された車
両加速度検出値に基づいて、前記加重平均の重み係数を
設定することを特徴とするものである。
【0012】また、本発明のうち請求項9に係る無段変
速機の制御装置は、前記変速比制御手段が、前記無段変
速機で達成すべき目標入力回転数の設定周期を可変とし
たことを特徴とするものである。また、本発明のうち請
求項10に係る無段変速機の制御装置は、前記スロット
ル開度検出手段で検出されたスロットル開度検出値の変
化率からスロットル開速度を検出するスロットル開速度
検出手段を備え、前記変速比制御手段が、前記スロット
ル開速度検出手段で検出されたスロットル開速度検出値
に基づいて、前記無段変速機で達成すべき目標入力回転
数の設定周期を設定することを特徴とするものである。
【0013】また、本発明のうち請求項11に係る無段
変速機の制御装置は、前記スロットル開速度検出手段で
検出されたスロットル開速度検出値の変化率からスロッ
トル開加速度を検出するスロットル開加速度検出手段を
備え、前記変速比制御手段が、前記スロットル開速度検
出手段で検出されたスロットル開速度検出値及びスロッ
トル開加速度検出手段で検出されたスロットル開加速度
検出値に基づいて、前記無段変速機で達成すべき目標入
力回転数の設定周期を設定することを特徴とするもので
ある。
【0014】また、本発明のうち請求項12に係る無段
変速機の制御装置は、前記変速比制御手段が、前記車速
検出手段で検出された車速検出値に基づいて、前記無段
変速機で達成すべき目標入力回転数の設定周期を設定す
ることを特徴とするものである。また、本発明のうち請
求項13に係る無段変速機の制御装置は、前記車速検出
手段で検出された車速検出値の変化率から車両加速度を
検出する車両加速度検出手段を備え、前記変速比制御手
段が、前記車両加速度検出手段で検出された車両加速度
検出値に基づいて、前記無段変速機で達成すべき目標入
力回転数の設定周期を設定することを特徴とするもので
ある。
【0015】
【作用】上記構成を有する本発明のうち請求項1に係る
無段変速機の制御装置では、図1の基本構成図に示すよ
うに、前記スロットル開度及び車速を変数とする変速相
関に基づいて設定される第1目標入力回転数が、前記定
常走行時の目標入力回転数のように凡そスロットル開度
と車速とにリアルタイムに対応する目標入力回転数であ
るとすると、前記現在の第2目標入力回転数は、前記第
1目標入力回転数と過去の第2目標入力回転数との両者
に係る重み係数や時定数等で表される遅れ時間が一定で
あるとすれば、前記従来と同様の遅れ系,即ちフィリタ
リングが施された目標入力回転数となる。しかしながら
本発明の無段変速機の制御装置で設定される前記無段変
速機で達成すべき目標入力回転数としての第3目標入力
回転数は、前記第1目標入力回転数と現在の第2目標入
力回転数との重み,即ち反映比率を適切に設定すること
により、或いは前記第2目標入力回転数を設定する際の
重み係数や時定数等で表される遅れ時間を適切に設定す
ることにより、車両の走行状態や運転者の加減速感の期
待度に応じた無段変速機の目標入力回転数,即ち変速比
を達成することができるから、エンジンの回転数だけが
急激に増減したり、エンジンの回転数がほぼ一定で車速
だけが増減速したりすることなく、良好な車両加減速度
を達成することが可能となる。
【0016】また、本発明のうち請求項2に係る無段変
速機の制御装置では、前記第2目標入力回転数は第1目
標入力回転数に1次遅れの特性を付加したものとなり、
複雑な処理を行うことなく第1目標入力回転数に漸近す
る第2目標入力回転数を得ることができる。また、本発
明のうち請求項3に係る無段変速機の制御装置では、急
加減速などの過渡期にステップ的な変化をする前記第1
目標入力回転数の特性と、前記遅れ特性をもった第2目
標入力回転数の特性とを併せ持った第3目標入力回転数
を設定することができるから、定速又はほぼ定速走行状
態から急加減速への移行時初期に、適切な目標入力回転
数の急増減,即ち適切な急速ダウンシフト或いは急速ア
ップシフトを行い、その後に比較的緩やかな目標入力回
転数の増減,即ち適切な緩ダウンシフト或いは緩アップ
シフトを実現して、良好な車両加減速度を達成すること
ができる。
【0017】また、本発明のうち請求項4に係る無段変
速機の制御装置では、前記第2目標入力回転数の遅れ時
間を可変として当該第2目標入力回転数の1次遅れ特性
を変化させることができ、また同時に前記第3目標入力
回転数の過渡変化時の初期値を可変として当該第3目標
入力回転数,即ち無段変速機で達成すべき目標入力回転
数の応答時間特性を変化させることができる。
【0018】そして、本発明のうち請求項5に係る無段
変速機の制御装置では、前記スロットル開速度が大きい
場合には運転者が大きな加速度を期待しているとして、
アクセルペダル踏込みから加速度変化までの応答時間を
長くして変速比を大きくすることにより当該遅れ後の車
両加速度が大きくなるようにし、或いは前記スロットル
開速度が小さい場合には運転者は大きい必要はないが速
やかで鋭敏な加速度を期待しているとして、前記応答時
間を短縮して車両加速度が速やかに発生するようにする
ことができる。
【0019】また、本発明のうち請求項6に係る無段変
速機の制御装置では、前記スロットル開速度に応じた車
両加減速度の制御に加えて、スロットル開加速度が大き
い場合には例えばアクセルペダルの大きな踏増し始めで
運転者が大きな加速度を期待しているとして、アクセル
ペダル踏込みから加速度変化までの遅れ時間を長くして
変速比を大きくすることにより当該遅れ後の車両加速度
が大きくなるようにし、或いは前記スロットル開加速度
が小さい場合には例えばアクセルペダルの小さな踏増し
始めで運転者は大きい必要はないが速やかで鋭敏な加速
度を期待しているとして、前記応答時間を短縮して車両
加速度が速やかに発生するようにすることができる。
【0020】また、本発明のうち請求項7に係る無段変
速機の制御装置では、車速が或る程度以上大きい場合に
は例えば前記第1目標入力回転数に相当して一般に設定
可能な変速比の変化代が小さく、凡そエンジンも十分な
回転数で回転しているから、例えばアクセルペダルの踏
増しから車両加速度変化までの遅れ時間を長くして変速
比を大きくすることにより遅れ後に大きな加速度を得る
必要がなく、従って前記アクセルペダル踏込みから加速
度変化までの応答時間を短縮して応答性を向上すること
ができる。
【0021】また、本発明のうち請求項8に係る無段変
速機の制御装置では、前記車速の時間変化率から得られ
る車両加減速度が減速方向に大きい場合には例えば車両
が登坂路を走行しているものとして、スロットル開度変
化に対する目標入力回転数変化の遅れ時間を短くし、運
転者がアクセルペダルを踏込んで加速力を期待したとき
に無段変速機で達成すべき目標入力回転数が速やかに増
加してダウンシフトが実行され、要求される大きな加速
力を達成する駆動力が速やかに得られるようにすること
ができ、或いは車両加減速度が増速方向に大きい場合に
は例えば車両が降坂路を走行しているものとして、スロ
ットル開度変化に対する目標入力回転数変化の遅れ時間
を長くし、運転者がアクセルペダルを踏戻して減速力を
期待したときに、無段変速機で達成すべき目標入力回転
数の減少を遅らせてアップシフトのタイミングを遅ら
せ、エンジンブレーキ力による効果的な減速力が得られ
るようにすることができる。
【0022】一方、本発明のうち請求項9に係る無段変
速機の制御装置では、例えば前記第2目標入力回転数の
遅れ時間を可変として当該第2目標入力回転数の1次遅
れ特性を変化させることにより、制御量の設定周期を変
更設定することにより遅れ系の時定数を変化させて、前
記第3目標入力回転数,即ち無段変速機で達成すべき目
標入力回転数の応答特性を変化させることができる。
【0023】そして、本発明のうち請求項10に係る無
段変速機の制御装置では、前記スロットル開速度が大き
い場合には運転者が大きな加速度を期待しているとし
て、制御量の設定周期を長くする,即ち遅れ系の時定数
を大きくして、加速度変化までの遅れ時間を長くして変
速比を大きくすることにより当該遅れ後の車両加速度が
大きくなるようにし、或いは前記スロットル開速度が小
さい場合には運転者は大きい必要はないが速やかで鋭敏
な加速度を期待しているとして、制御量の設定周期を短
くする,即ち遅れ系の時定数を小さくして、前記遅れ時
間を短縮して応答性のよい車両加速度が発生するように
することができる。
【0024】また、本発明のうち請求項11に係る無段
変速機の制御装置では、前記スロットル開速度に応じた
車両加減速度の制御に加えて、スロットル開加速度が大
きい場合には例えばアクセルペダルの大きな踏増し始め
で運転者が大きな加速度を期待しているとして、制御量
の設定周期を長くする,即ち遅れ系の時定数を大きくし
て、加速度変化までの遅れ時間を長くして変速比を大き
くすることにより当該遅れ後の車両加速度が大きくなる
ようにし、或いは前記スロットル開加速度が小さい場合
には例えばアクセルペダルの小さな踏増し始めで運転者
は大きい必要はないが速やかで鋭敏な加速度を期待して
いるとして、制御量の設定周期を短くする,即ち遅れ系
の時定数を小さくして、前記遅れ時間を短縮して応答性
のよい車両加速度が発生するようにすることができる。
【0025】また、本発明のうち請求項12に係る無段
変速機の制御装置では、車速が或る程度以上大きい場合
には例えば前記第1目標入力回転数に相当して一般に設
定可能な変速比の変化代が小さく、凡そエンジンも十分
な回転数で回転しているから、例えばアクセルペダルの
踏増しから車両加速度変化までの遅れ時間を長くして変
速比を大きくすることにより遅れ後に大きな加速度を得
る必要がなく、従って制御量の設定周期を短くする,即
ち時定数を小さくして、前記加速度変化までの遅れ時間
を短縮して応答性を向上することができる。
【0026】また、本発明のうち請求項13に係る無段
変速機の制御装置では、前記車速の時間変化率から得ら
れる車両加減速度が減速方向に大きい場合には例えば車
両が登坂路を走行しているものとして、制御量の設定周
期を短くする,即ち時定数を小さくしてスロットル開度
変化に対する目標入力回転数変化の遅れ時間を短くし、
例えば運転者がアクセルペダルを踏込んで加速力を期待
したときに無段変速機で達成すべき目標入力回転数が速
やかに増加してダウンシフトが実行され、要求される大
きな加速力を達成する駆動力が速やかに得られるように
することができ、或いは車両加減速度が増速方向に大き
い場合には例えば車両が降坂路を走行しているものとし
て、制御量の設定周期を長くする,即ち時定数を大きく
して遅れ時間を長くし、例えば運転者がアクセルペダル
を踏戻して減速力を期待したときに、無段変速機で達成
すべき目標入力回転数の減少を遅らせてアップシフトの
タイミングを遅らせ、エンジンブレーキ力による効果的
な減速力が得られるようにすることができる。
【0027】
【実施例】以下、本発明の無段変速機の制御装置を実際
の車両に適用した第1実施例を図面に基づいて説明す
る。図2は、本発明の一実施例に相当する無段変速機の
動力伝達機構を示すスケルトン図である。この実施例の
無段変速機は、機関(すなわち、エンジン)の回転駆動
力によって回転駆動される駆動輪が前左右輪である、所
謂FF(フロントエンジンフロントドライブ)車両に適
用されたものである。
【0028】ちなみに、本実施例の車両に搭載される無
段変速機は、通常、前進走行用の変速シフトポジション
として、通常走行レンジと通常走行変速比制御領域より
も最小変速比の大きいエンジンブレーキレンジとを備え
ており、変速シフトポジションに通常走行レンジ(一般
にいうDレンジである)が選択されているときには、後
述するように通常走行に好適な通常走行変速比制御領域
(Dレンジ変速比領域)内で、エンジンブレーキレンジ
(一般にいう2レンジまたはDsレンジ及びLレンジま
たは1レンジである)が選択されているときにはエンジ
ンブレーキレンジ制御領域(2レンジ変速比領域または
Lレンジ変速比領域)内で、それぞれ車速およびスロッ
トル開度に応じて無段変速機の変速比を制御するが、こ
こでは特にDレンジを選択しているときの制御態様につ
いてのみ詳述する。
【0029】この無段変速機の動力伝達機構は、図2に
明示するように,フルードカップリング12、前後進切
換機構15、トロイダル式無段変速機構40、歯車減速
機構20、差動装置22等を有しており、エンジン10
の出力軸10aの回転を、所定の変速比および回転方向
で左右のドライブシャフト66,68に伝達することが
できる。そして、前記エンジン10の出力軸10aに接
続されたフルードカップリング12の出力側は、前後進
切換機構15の回転軸13と連結されており、前後進切
換機構15は、遊星歯車機構17、前進用クラッチ1
8、および後進用ブレーキ19を有している。そして、
前進用クラッチ18や後進用ブレーキ19の締結状態を
図示されない流体圧制御装置によって変化させること
で、駆動軸14の回転方向を前進用の正方向又は後進用
の逆方向に変化させることができる。なお、前記フルー
ドカップリングには,所謂,通常のトルクコンバータを
採用することも可能である。
【0030】前記トロイダル式無段変速機40は、図2
に示すように、ハウジング41に同軸的に回転自在に保
持され且つ対抗面が協働して軸方向断面で見て円形とな
るようにトロイダル面に形成された入力ディスク42及
び出力ディスク43と、これらディスク42,43のト
ロイダル面で形成されるトロイダル空間内に量トロイダ
ル面に接触して配設された上下一対の伝動ローラ44
A,44Bと、これら伝動ローラ44A,44Bをトロ
イダル面に沿って転動するように保持し、且つ軸方向に
移動可能なトラニオン45A,45Bと、これらトラニ
オン45A,45Bを軸方向に移動させて変速動作を行
わせる流体圧シリンダ46a〜46dと、これら流体圧
シリンダ46a〜46dに対する供給流体圧を制御する
電磁方向切換弁47とを備えて構成されており、このう
ち前記入力ディスク42が前記駆動軸14に接続され、
前記出力ディスク43が従動軸28に接続されている。
従って、このトロイダル式無段変速機40により所定の
変速比で減速されたエンジン10の回転駆動力は、従動
軸28から歯車減速機構20による減速によって更に増
幅され、更に差動装置22のピニオンギヤからサイドギ
ヤを介して夫々出力軸66及び68に出力されている。
【0031】前記電磁方向切換弁47は、4ポート3位
置に構成され、ポンプポートPが流体圧ポンプ48の吐
出側に接続され、タンクポートTがリザーバ49に接続
されていると共に、一方の制御ポートAが前記流体圧シ
リンダ46a,46cに接続され、他方の制御ポートB
が前記流体圧シリンダ46b,46dに接続されてお
り、ノーマル位置でポンプポートP,タンクポートTと
制御ポートA,Bとの間が遮断され、左方電磁ソレノイ
ドSLが励磁された左側オフセット位置でポンプポート
Pが制御ポートAに、タンクポートTが制御ポートBに
接続され、右方電磁ソレノイドSRが励磁された右側オ
フセット位置でポンプポートPが制御ポートBに、タン
クポートTが制御ポートAに接続される。
【0032】そして、電磁方向切換弁47が後述するコ
ントロールユニットCUによって駆動制御されることに
より無段変速機40の変速比が制御される。一方、車両
には、ロータリ式ポテンショメータ等から構成されてエ
ンジン10のスロットル開度TVOを検出するスロット
ル開度センサ51、前記トロイダル式無段変速機40の
出力ディスク43に接続された出力軸28の回転速度か
ら車速VSPを検出する車速センサ52、無段変速機40
の変速比を示す前記トラニオン45Aの傾転角φD を検
出する例えばスリット円板53aとこれに対抗するフォ
トインタプラタ53bで構成される傾転角センサ53、
前記トラニオン45Aの軸方向変位量を当該トラニオン
45Aと一体に移動する作動子54aの変位量LD で検
出する変位量センサ54、及び前記前後進切換機構15
の入力側に接続されている回転軸13の回転速度から無
段変速機40への入力回転数Ni を検出する入力回転数
センサ55が設けられている。
【0033】このうち、前記スロットル開度センサ51
は、エンジンのスロットル開度を電圧信号として検出す
るものであって、アクセルペダルの踏込み量を8段階に
分割し、このアクセルペダルの踏込み量が“0”であ
る、即ち、それと等価なスロットル開度が全閉状態であ
る場合を(1/8)とし、アクセルペダルの踏込み量が
最大である、即ち、それと等価なスロットル開度が全開
状態である場合を(8/8)として、当該スロットル開
度に応じたアナログ信号が出力されるようにしてある。
【0034】そして、前記コントロールユニットCU
は、図2に示すように、後述する変速比制御及びその他
の変速機能制御のための演算処理を司るマイクロコンピ
ュータ60と、前記電磁方向切換弁47を切換え駆動す
るための駆動回路61L,61Rとを備えている。前記
マイクロコンピュータ60は、前記各センサからの信号
を読込むためのA/D変換機能等を有する入力インタフ
ェース回路60aと、マイクロプロセサユニットMPU
等から構成される演算処理装置60bと、ROM,RA
M等を備えた記憶装置60cと、D/A変換機能等を有
する出力インタフェース開度60dとを備え、夫々通信
バスを通じて接続されている。そして、このマイクロコ
ンピュータ60では、例えば後述する図3の変速比制御
のための演算処理に従って、前記スロットル開度センサ
51からのスロットル開度TVO及び車速センサ52か
らの車速VSPに基づいて第1目標入力回転数Ni1を算出
設定し、この第1目標入力回転数Ni1を用いて第2目標
入力回転数Ni2を算出設定し、更にこの第2目標入力回
転数Ni2及び前記第1目標入力回転数Ni1を用いて第3
目標入力回転数Ni3を算出設定し、この第3目標入力回
転数Ni3を無段変速機で達成すべき目標入力回転数TN
i とし、これに基づいて前記トロイダル式無段変速機4
0で達成すべき変速比Cを算出設定し、当該変速比Cを
達成するために必要な制御信号CSUS,CSDSを出力す
る。
【0035】また、前記各駆動回路61L,61Rは、
前記マイクロコンピュータ60から出力されるアップシ
フト制御信号CSUS及びダウンシフト制御信号CS
DSを、夫々前記電磁方向切換弁47のソレノイドSL,
SRへの駆動信号に変換して出力する。次に前記マイク
ロコンピュータ60の演算処理装置60bで実行される
変速比制御のための主要たる演算処理について図3のフ
ローチャートを用いながら説明する。この演算処理は、
例えば10msec程度の所定サンプリング時間ΔT毎のタ
イマ割込によって実行される。なお、このフローチャー
トでは、特に通信のためのステップを設けていないが、
演算処理に必要なマップやプログラム,或いは所定の演
算式等は前記記憶装置60cのROMから随時読込ま
れ、また演算により得られた算出値や各情報値は随時記
憶装置60cのRAMに記憶されるものとする。
【0036】この演算処理では、まずステップS1で前
記スロットル開度センサ51からのスロットル開度TV
O及び車速センサ52からの車速VSPを読込む。次いで
ステップS2に移行して、後述する図4のマイナプログ
ラムに従って目標入力回転数TNi を算出設定する。次
いでステップS3に移行して、前記ステップS1で読込
まれた前記出力軸28の回転速度を変換してなる車速V
SPを、当該出力軸28から出力側の減速比で除して当該
出力軸28の回転速度を出力回転数No として算出す
る。
【0037】次いでステップS4に移行して、前記ステ
ップS2で設定された目標入力回転数TNi を前記ステ
ップS3で算出された出力回転数No で除して、前記無
段変速機40で達成すべき変速比Cを算出する。次いで
ステップS5に移行して、前記ステップS4で算出され
た変速比Cに応じた前記トラニオン45A及び45Bの
目標傾転角φT を算出する。
【0038】次いでステップS6に移行して、前記傾転
角センサ53で検出された前記トラニオン45A及び4
5Bの実際の現在傾転角φD を読込む。次いでステップ
S7に移行して、前記目標傾転角φT と現在傾転角φD
との傾転角偏差Δφ(=φT −φD )からトラニオン4
5A及び45Bの軸方向の目標変位量LT を算出する。
【0039】次いでステップS8に移行して、前記変位
量センサ54で検出されたトラニオン45A及び45B
の軸方向への現在変位量LD を読込む。次いでステップ
S9に移行して、前記目標変位量LT と現在変位量LD
との変位量偏差ε(=LT −LD )を算出する。次いで
ステップS10に移行して、前記ステップS9で算出さ
れた変位量偏差εが正値なのか,“0”なのか,負値な
のかを判定し、当該変位量偏差εが正値である場合には
ステップS11に移行し、変位量偏差εが“0”である
場合にはステップS12に移行し、変位量偏差εが負値
である場合にはステップS13に移行する。
【0040】前記ステップS11では、アップシフト制
御信号CSUSを論理値“1”にセットし、ダウンシフト
制御信号CSDSを論理値“0”にセットしてからステッ
プS14に移行する。また、前記ステップS12では、
アップシフト制御信号CSUS及びダウンシフト制御信号
CSDSを共に論理値“0”にセットしてから前記ステッ
プS14に移行する。
【0041】また、前記ステップS13では、アップシ
フト制御信号CSUSを論理値“0”にセットし、ダウン
シフト制御信号CSDSを論理値“1”にセットしてから
前記ステップS14に移行する。前記ステップS14で
は、セットされたアップシフト制御信号CSUSを前記駆
動回路61Lに、ダウンシフト制御信号CSDSを前記駆
動回路61Rに夫々出力してからタイマ割込処理を終了
して所定のメインプログラムに復帰する。
【0042】次に前記図3の演算処理のステップS2で
実行されるマイナプログラムについて図4のフローチャ
ートを用いながら説明する。このマイナプログラムで
は、まずステップS20で、前記図3の演算処理のステ
ップS1で読込まれた車速VSPを変数とし且つスロット
ル開度TVOをパラメータ(媒介変数)として用いて、
後段に詳述する図5の制御マップから第1目標入力回転
数の今回値Ni1(K) を検索設定する。
【0043】次いでステップS30に移行して、前記ス
テップS20で設定された第1目標入力回転数の今回値
i1(K) 及び前記記憶装置60cに更新記憶されている
第2目標入力回転数の前回値Ni2(K-1) を用いて、下記
1式に従って第2目標入力回転数の今回値Ni2(K) を算
出設定する。 Ni2(K) =(1−α)・Ni1(K) +α・Ni2(K-1) ……… (1) 但し、式中、αは第2目標入力回転数の前回値N
i2(K-1) を第2目標入力回転数の今回値Ni2(K) に如何
程反映するかという重み係数であり、より具体的には前
記スロットル開度TVO及び車速VSPに応じてリアルタ
イムに設定される第1目標入力回転数の今回値Ni1(K)
に対し、1次遅れ特性をもって設定される第2目標入力
回転数の今回値Ni2(K) の遅れ時間を制御するためのも
のである。従って、重み係数αはエンジンや変速機等の
車両特性を考慮に入れて設定すべき値であり、その設定
範囲は勿論0<α<1であって、より具体的には例えば
0.97である。
【0044】次いでステップS40に移行して、前記ス
テップS20で設定された第1目標入力回転数の今回値
i1(K) 及び前記ステップS30で設定された第2目標
入力回転数の今回値Ni2(K) を用いて、下記2式に従っ
て第3目標入力回転数の今回値Ni3(K) を算出設定す
る。 Ni3(K) =(1−β)・Ni1(K) +β・Ni2(K) ……… (2) 但し、式中、βは第2目標入力回転数の今回値Ni2(K)
を第3目標入力回転数の今回値Ni3(K) に如何程反映す
るかという重み係数であり、より具体的には前記スロッ
トル開度TVO及び車速VSPに応じてリアルタイムに設
定される第1目標入力回転数の今回値Ni1(K) と、1次
遅れ特性をもって設定される前記第2目標入力回転数の
今回値Ni2(K) との割合、即ち過渡変化期における第3
目標入力回転数の初期値を制御するためのものである。
従って、ここでも重み係数βはエンジンや変速機等の車
両特性を考慮に入れて設定すべき値であり、その設定範
囲は勿論0<α<1であって、より具体的には例えば
0.5である。
【0045】次いでステップS50に移行して、前記ス
テップS40で設定された第3目標入力回転数の今回値
i3(K) を前記無段変速機40で達成すべき目標入力回
転数TNi に設定してから前記図3の演算処理のステッ
プS3に移行する。次に前記ステップS20で検索され
る図5の制御マップについて説明する。ここで、車速V
SP及びスロットル開度TVOを夫々変数及びパラメータ
とし、前記第1目標入力回転数Ni1を設定するためにス
テップS20で検索される制御マップは、車速VSPを横
軸、第1目標入力回転数Ni1を縦軸、スロットル開度T
VOをパラメータとする通常の変速パターンの総合制御
マップと同等であり、原点を通る傾き一定の直線は変速
比が一定であると考えればよい。そして、例えば変速パ
ターンの全領域において最も傾きの大きい直線は、車両
全体の減速比が最も大きい即ち最大変速比CHiを表し、
逆に最も傾きの小さい直線は、車両全体の減速比が最も
小さい即ち最小変速比CLOを表している。これに対し
て、同等の車速V SPであっても、アクセルペダルの踏込
み量が大きく、その結果,スロットル開度TVOが大き
いことは、例えば加速力を必要とするとか、登坂路や向
い風抵抗等の走行負荷によってエンジンに要求される負
荷が大きい状態であるから、当該エンジンの回転数を増
加させてその出力(トルク)を大きくする必要があり、
そのために前記スロットル開度センサ51で検出された
(1/8)〜(8/8)のディジタル値からなるスロッ
トル開度TVOをパラメータとし、当該スロットル開度
TVO1〜TVO8の数値が大きくなるほど、第1目標
入力回転数の今回値N i1(K) が大きく設定されるように
してある。
【0046】なお、車速VSPが或る変速比制御開始閾値
よりも小さい領域では、各シフトポジションのレンジに
関係なく、変速比(即ち変速パターン)は前記最大変速
比C Hiに固定される。つまり、この変速比制御開始閾値
は、自動変速機搭載車両で発生するクリープ状態の制御
上限値であると考えればよい。また、ここでは詳述しな
いが、前記所謂Lレンジを選択したときの変速パターン
は、例えば車速VSP及びスロットル開度TVOに関わら
ず前記最大変速比CHiに固定され、前記所謂2レンジを
選択したときの変速パターンは、前記最大変速比CHi
前記最小変速比CLOよりも大きい2レンジ最小変速比と
の間の領域で車速VSP及びスロットル開度TVOに応じ
て設定される変速比の経時的軌跡からなる制御曲線とな
る。
【0047】次に、本実施例で実行される前記図3及び
図4の変速比制御のための演算処理の作用について説明
する。今、車両が平坦で良好な直線走行路(傾斜角θ≒
0)を、アクセルペダルを緩やかに且つ或る程度踏込ん
でスロットル開度TVOが前記ディジタル値(2/8)
以上の状態で、前記変速比制御開始閾値以上の次第に車
速VSPを緩やかに増速しながら走行しているものとする
と、図4の演算処理のステップS20では現在の車速V
SPとスロットル開度TVOとに応じた第1目標入力回転
数の今回値Ni1 (K) が検索設定され、次いで同ステップ
S30でこの第1目標入力回転数の今回値Ni1(K) と第
2目標入力回転数の前回値Ni2(K-1) とから前記1式に
従って第2目標入力回転数の今回値Ni2(K) が算出設定
される。ここでは、前述のように前記第1目標入力回転
数の今回値Ni1(K) と第2目標入力回転数の前回値N
i2(K -1) との偏差補正に傾きを与えてフィルタリングを
かけるための重み係数αが適切に設定され、且つ前記ス
ロットル開度TVO及び車速VSPの増加が緩やかである
ために両者から設定される第1目標入力回転数の今回値
i1(K) の増加傾きが当該第2目標入力回転数の今回値
i2(K) のフィルタリング作用による増加制限傾き以下
であったために、当該1式で算出され且つ更新記憶され
る第2目標入力回転数の前回値Ni2(K-1) は前記第1目
標入力回転数の今回値Ni1(K) に一致又はほぼ一致し、
従って算出される第2目標入力回転数の今回値Ni2(K)
も当該第1目標入力回転数の今回値Ni1(K) に一致又は
ほぼ一致したものとする。また、このように第2目標入
力回転数の今回値Ni2(K) が第1目標入力回転数の今回
値Ni1(K) に一致又はほぼ一致することから、前述のよ
うに前記フィルタリングが施されるはずの第2目標入力
回転数の今回値Ni2(K) の反映比率から変速比の過渡変
化期における第3目標入力回転数の今回値Ni3(K) の初
期値を決定する作用を有する重み係数βが如何様な数値
(但し、0<β<1)に設定されていようとも、前記図
4の演算処理のステップS40で前記2式に従って算出
される当該第3目標入力回転数の今回値Ni3(K) は前記
第1目標入力回転数の今回値Ni1(K)に一致又はほぼ一
致し、最終的に同ステップS50では前記第1目標入力
回転数の今回値Ni1(K) が無段変速機40で達成すべき
目標入力回転数TNi に設定されたものとする。
【0048】このとき、例えばスロットル開度TVOに
変化がなく、車速VSPだけがリニアに増速しているもの
とすると、前記第1目標入力回転数Ni1に設定される目
標入力回転数TNi は、図5に示すように次第にその増
加率が小さくなり、一方で図3の演算処理のステップS
3で、車速VSPから算出される出力回転数No はリニア
に増加するから、同ステップS4で算出される目標変速
比Cは次第に小さくなり、この変速比Cに基づいて、同
ステップS5で算出されるトラニオン45A及び45B
の目標傾転角φT 及び同ステップS7で算出される目標
変位量LT が達成される。しかしながら、スロットル開
度TVO一定でエンジンの出力(トルク)が一定である
場合には、その車両駆動力は、車速VSPの増加に伴って
増加する空気抵抗等の走行負荷で消費されるため、やが
てスロットル開度TVOを一定とした定速走行状態とな
る。
【0049】このような定速走行状態になると、前記図
3の演算処理のステップS3で、車速VSPから算出され
る出力回転数No は一定値となり、また、車速VSPやス
ロットル開度TVOが変化しない限り、前記第1目標入
力回転数の今回値Ni1(K) に設定された目標入力回転数
TNi も一定値となるから、同ステップS4で算出され
る目標変速比Cも変化せず、目標傾転角φT と現在傾転
角φD が一致することになるので、同ステップS7で算
出される傾転角偏差Δφも“0”となり、これに応じて
目標変位量LT も“0”となり、トロイダル式無段変速
機40が変速動作をしていないので、変位量センサ54
で検出される変位量検出値LD が“0”となって同ステ
ップS9で算出される変位量偏差εも“0”となり、従
って同ステップS10からステップS12に移行してア
ップシフト制御信号CSUS及びダウンシフト制御信号C
DSが共に論理値“0”に設定され、これがステップS
14で駆動回路61L,61Rに出力される。この結
果、電磁方向切換弁47の電磁ソレノイドSL及びSR
の励磁電流が遮断状態を維持することにより、この電磁
方向切換弁47はノーマル位置を維持し、トラニオン4
5A及び45Bが軸方向の中立位置に保持されて、変速
動作を行うことなく現在の変速比を維持して定速走行状
態を継続する。
【0050】しかしながら、この平坦で良好な走行路
で、前記定速走行状態からアクセルペダルの踏込み量を
緩やかに増加させて加速状態に移行すると、これに応じ
てスロットル開度TVOが増加することにより、前記図
4の演算処理のステップS20で前記図5の制御マップ
を参照して検索設定される第1目標入力回転数の今回値
i1(K) が増加方向に変化し、一方、前述と同様に第2
目標入力回転数の今回値Ni2(K) 及び第3目標入力回転
数の今回値Ni3(K) が当該第1目標入力回転数の今回値
i1(K) に一致又はほぼ一致して設定されるとすると、
最終的にはステップS50で当該第1目標入力回転数の
今回値Ni1(K) が無段変速機40で達成すべき目標入力
回転数TNi に設定される。しかし、未だ車速VSPが十
分に増速する以前に前記図3の演算処理のステップS3
で算出される出力回転数No は小さいままであるから、
同ステップS4で算出される目標変速比Cは大きくな
り、これに伴って同ステップS5で算出されるトラニオ
ン45A及び45Bの目標傾転角φT がダウンシフト方
向に減少することになり、同ステップS7では、これと
現在傾転角φD との偏差Δφが負値の領域で減少し、こ
れに応じて目標変位量L T が負値の領域で減少し、その
ときの現在変位量LD が“0”であるので、同ステップ
S9で算出される変位量偏差εが負値となり、同ステッ
プS10からステップS13に移行して、ダウンシフト
制御信号CSDSが論理値“1”に設定され、アップシフ
ト制御信号CSUSが論理値“0”に維持される。このた
め、駆動回路61Rから所定値の励磁電流が前記電磁方
向切換弁47の右方電磁ソレノイドSRに出力され、こ
れによって当該電磁方向切換弁47が右オフセット位置
に切換えられる。これに応じて、流体圧ポンプ48から
出力される作動流体圧が流体圧シリンダ46b及び46
dに供給されることにより、トラニオン45A及び45
Bと入出力ディスク42及び43の回転力とによって当
該トラニオン45A及び45Bが減速側に傾転して、変
速比が目標変速比Cに合致するようにダウンシフト変速
制御される。
【0051】そして、前記傾転角センサ53で検出され
る現在傾転角φD が目標傾転角φTに一致すると、その
偏差Δφが“0”となることにより、目標変位量LT
“0”となり、これによって前記図3の演算処理ではス
テップS10からステップS12に移行して、アップシ
フト制御信号CSUS及びダウンシフト制御信号CSDS
共に論理値“0”に設定し、これに応じて駆動回路61
L及び61Rから励磁電流の出力が停止されることによ
り、前記電磁方向切換弁47がノーマル位置に復帰し、
前記流体圧シリンダ46b及び46dへの作動流体圧の
供給が停止される。しかしながら、この状態では、流体
圧シリンダ46b及び46dの内圧が高い状態に維持さ
れているため、トラニオン45A及び45Bは中立位置
から変位した状態を維持するので、当該トラニオン45
A及び45Bは更に減速側に傾転することになる。
【0052】この状態となると、目標傾転角φT に対し
て現在傾転角φD が大きな値となって、その偏差Δφが
正値となり、これに応じて目標変位量LT が正値とな
り、これによって前記図3の演算処理ではステップS1
0からステップS11に移行して、アップシフト制御信
号CSUSが論理値“1”に設定され、ダウンシフト制御
信号CSDSは論理値“0”に維持される。このため、電
磁方向切換弁47の左方電磁ソレノイドSLが励磁状態
となって、当該電磁方向切換弁47は左オフセット位置
に切換えられ、これによって流体圧シリンダ46b及び
46dの内圧が低下され、これらに代えて他の流体圧シ
リンダ46a及び46cの内圧が上昇し、これによって
トラニオン45A及び45Bが直ちに中立位置に移動
し、変位量偏差εに応じた分だけ僅かに増速側に変位
し、これによって当該トラニオン45A及び45Bが増
速側に僅かに傾転し、結局、現在傾転角φD と目標傾転
角φT とは一致したときにトラニオン45A及び45B
が中立位置に復帰されて、変速動作を終了する。
【0053】逆に、同じ平坦で良好な走行路において、
前記定速走行状態からブレーキペダルを踏込む等のため
にアクセルペダルを緩やかに踏戻して解放すると、これ
に応じてスロットル開度TVOが緩やかに減少し、最小
で前記ディジタル値(1/8)となることにより、前記
図4の演算処理のステップS20で前記図5の制御マッ
プを参照して検索設定される第1目標入力回転数の今回
値Ni1(K) が、最小で前記最小変速比CLOを満足する値
まで減少し、一方、前述と同様に第2目標入力回転数の
今回値Ni2(K) 及び第3目標入力回転数の今回値N
i3(K) が当該第1目標入力回転数の今回値Ni1(K) に一
致又はほぼ一致して設定されるとすると、最終的にはス
テップS50で当該第1目標入力回転数の今回値N
i1(K) が無段変速機40で達成すべき目標入力回転数T
i に設定される。しかし、未だ車速VSPが十分に減速
する以前に前記図3の演算処理のステップS3で算出さ
れる出力回転数No は大きいから、同ステップS4で算
出される目標変速比Cは小さくなり、これに伴って同ス
テップS5で算出されるトラニオン45A及び45Bの
目標傾転角φT がアップシフト方向に増加することにな
り、同ステップS7では、これと現在傾転角φD との偏
差Δφが正値の領域で増加し、これに応じて目標変位量
T が正値の領域で増加し、そのときの現在変位量LD
が“0”であるので、同ステップS9で算出される変位
量偏差εが正値となり、同ステップS10からステップ
S11に移行して、アップシフト制御信号CSUSが論理
値“1”に設定され、ダウンシフト制御信号CSDSが論
理値“0”に維持される。このため、駆動回路61Lか
ら所定値の励磁電流が前記電磁方向切換弁47の左方電
磁ソレノイドSLに出力され、これによって当該電磁方
向切換弁47が左オフセット位置に切換えられる。これ
に応じて、流体圧ポンプ48から出力される作動流体圧
が流体圧シリンダ46a及び46cに供給されることに
より、トラニオン45A及び45Bと入出力ディスク4
2及び43の回転力とによって当該トラニオン45A及
び45Bが増速側に傾転して、変速比が目標変速比Cに
合致するようにアップシフト変速制御される。
【0054】そして、ブレーキペダルを踏込む等の明確
な減速操作がない限り、アクセルペダルの解放に伴っ
て、やがて無段変速機40の変速比Cは前記最小変速比
LO一定となり、このときエンジン10の回転数は当該
車速VSPで可能な最小回転数まで減少し、同時にその出
力(トルク)も低下するから、強大な制動力を得ること
はできないが、適切なエンジンブレーキ力を伴いなが
ら、円滑で良好なコースト走行,所謂惰性走行が実現さ
れる。また、このときブレーキペダルを踏込むなどして
明確な減速操作を行うと、一旦、無段変速機40の変速
比Cは前記最小変速比CLO一定となるが、車速VSPが或
る車速以下まで減速すると、図5の制御マップに最小ス
ロットル開度TVO1曲線で示すように、目標入力回転
数TNi は一定であっても前記変速比制御開始閾値に向
けて変速比Cが次第に大きくなるため、一定のエンジン
10の出力(トルク)は、路面が駆動輪を回転しようと
するトルクに対して、バックトルクとして有効に作用
し、これによりこのような低速走行時の減速効果を高め
ることができる。
【0055】次に、例えば大きな加速力を得るためにア
クセルペダルを大きく且つ速く踏込んだ場合の前記図3
及び図4の演算処理の作用について、前記図4の演算処
理のステップS30で前記1式に従って算出される第2
目標入力回転数の今回値Ni2 (K) 及びその算出に用いら
れる重み係数α並びにステップS40で前記2式に従っ
て算出される第3目標入力回転数の今回値Ni3(K) 及び
その算出に用いられる重み係数βの作用及びその設定原
理などと合わせて説明する。そして、前記図4で設定さ
れる無段変速機で達成すべき目標入力回転数TNi に対
する図3の演算処理の作用は前述と同様であるため、こ
こでは当該図3の演算処理及びその出力による無段変速
機40の詳細な作用は省略し、設定される第1〜第3目
標入力回転数及び変速比及び車両加速度などについての
み詳述する。
【0056】まず、このような状況でアクセルペダルが
大きく且つ速く踏込まれると、それに応じてスロットル
開度TVOも大きく且つ速く増加する。従って、前記図
4の演算処理のステップS20で前記図5の制御マップ
に従って当該スロットル開度TVOとリニアに設定され
る第1目標入力回転数の今回値Ni1(K) は、図6aに二
点鎖線で示すようにステップ的に増加する。このステッ
プ的に増加する第1目標入力回転数の今回値Ni1(K)
そのまま無段変速機で達成すべき目標入力回転数TNi
に設定すると、前記従来のようにまずエンジンの回転数
だけがその慣性増速のためだけに消費されるように増加
して変速比が急速に大きくなり、然る後、エンジンの回
転数がさほど変化しないで車速だけが増加することにな
るのである。
【0057】これに対して、このような変速比の急速な
変化の過渡期では、前記第2目標入力回転数の前回値N
i2(K-1) を用いた加重平均で設定される第2目標入力回
転数の今回値Ni2(K) は、前記第1目標入力回転数の今
回値Ni1(K) に対して1次遅れをもったものとなる。こ
こで、当該第2目標入力回転数の前回値Ni2(K-1) の配
分比率(反映比率)である重み係数αは、当該1次遅れ
系の時定数と等価であると考えられるから、当該重み係
数αを小さく設定したときの第2目標入力回転数の今回
値Ni2(K) は図6aに実線で示すように、また重み係数
αを大きく設定したときの第2目標入力回転数の今回値
i2(K) は図6aに破線で示すように表れる。換言すれ
ば、この重み係数αは、エンジンの出力トルクを当該エ
ンジンの慣性加速と変速機への入力トルクとに如何様に
振り分けるかを制御する係数であると言える。従って、
この第2目標入力回転数の今回値Ni2(K) をそのまま無
段変速機で達成すべき目標入力回転数TNi に設定する
と、少なくとも前記第1目標入力回転数の今回値N
i1(K) をそのまま無段変速機で達成すべき目標入力回転
数TNi に設定した場合と異なり、何れにしても目標入
力回転数TNi の変化率が小さくなるからスロットル開
度TVOの増加に伴って増加しているエンジンの出力
(トルク)は、比較的短時間前記エンジン慣性加速のた
めに消費される可能性はあるものの、ダウンシフト方向
への変速比の変化量,即ち変速速度は小さく抑制されて
いるから、その後、比較的速やかに変速機への入力トル
クとなって車両加速度が増加し、その後もエンジン回転
数が比較的緩やかに増加しながら車速が増速するという
傾向が維持される。このとき、前述のように前記重み係
数αを小さく設定した場合には目標入力回転数TNi
速やかに増加することから、変速比は比較的速やかにダ
ウンシフトしてエンジンの回転数が増加するために、例
えば図6bに実線で示すように同時期に増加し始める車
両加速度の増加傾きも比較的小さなものとなるのに対
し、前記重み係数αを大きく設定した場合には目標入力
回転数TNi が緩やかに増加することから、変速比は比
較的緩やかにダウンシフトしてエンジンの出力は駆動力
として作用するために、例えば図6bに破線で示すよう
に前記と同時期に増加し始める車両加速度の増加傾きも
比較的大きなものとなるが、当該重み係数αの設定範囲
が或る程度限定される場合には、エンジンの出力(トル
ク)が慣性回転加速に消費される割合も限定され、結果
的に同様のタイミングで車両加速度が大きくなり、その
最大値(極大値)もさほど変化がない。これが、単純に
遅れ系の目標入力回転数を用いたときの車両加速度の凡
庸さとして指摘されるのである。
【0058】一方、このようにアクセルペダルが大きく
且つ速く踏込まれたときに、或る程度までは速くダウン
シフトして変速比で駆動力を稼げる状態にしないと、加
速不良となる可能性がある。そこで、前記スロットル開
度TVOとリニアな第1目標入力回転数の今回値N
i1(K) の応答性と、遅れをもった第2目標入力回転数の
今回値Ni2(K) の加速力との反映比率を前記2式中の重
み係数βで調整する。図7aは前記と同様にステップ的
に増加するスロットル開度TVOであり、図7bには、
前記2式で重み係数βを“0”として第1目標入力回転
数の今回値Ni1(K)からなる無段変速機で達成すべき目
標入力回転数TNi を実線で、また前記重み係数αが十
分に大きく且つ前記2式で重み係数βを“1”として第
2目標入力回転数の今回値Ni2(K) からなる目標入力回
転数TNi を一点鎖線で、そしてこれらの第1及び第2
目標入力回転数の今回値Ni1(K) ,Ni2(K) に対して前
記2式で重み係数βを凡そ“0.5”程度とした場合の
第3目標入力回転数の今回値N i3(K) からなる目標入力
回転数TNi を破線で示す。これらの目標入力回転数T
i に対して達成される実際の無段変速機の入力回転数
(実入力回転数)を図7bに、実際の変速比を図7cに
夫々対応する線種で示すが、前記エンジンの出力トルク
の慣性加速と変速機への入力トルクとの振り分け原理に
従って、前記第1目標入力回転数の今回値Ni1(K) が目
標入力回転数TNi に設定された場合には、図7dに実
線で示すように変速比が急速に増大すると共に実入力回
転数も急速に増加する。そして、この変速比及び実入力
回転数の急速な増加中は、図7eに実線で示すように車
両加速度は一旦僅かに増加するものの、その後ほぼ一定
値となるから車両はさほど加速されず、前記実入力回転
数が目標入力回転数に一致又はほぼ一致してから車両加
速度が急速に増加して車両を一気に増速させ、これによ
りスロットル開度TVO一定の下で車速VSPが次第に大
きくなると、図7dに示すように変速比は次第に小さく
なり、これと共に車両加速度も比較的急速に小さくな
る。このときの車両加速度の最大値(極大値)は極めて
大きい。一方、第2目標入力回転数の今回値Ni2(K)
目標入力回転数TNi に設定された場合には、図7dに
一点鎖線で示すように変速比は緩やかに増加して実入力
回転数も緩やかにしか増加しないから、その分だけ駆動
力が発揮されて図7eに一点鎖線で示すように車両加速
度は一旦立ち上がるものの、その後は緩やかに増加して
車両を緩やかに増速させ、更に時間の経過に伴って図7
dに示すように変速比及び実入力回転数の増加は更に緩
やかになり、これに伴って図7eに示すように車両加速
度は更に増加するが、このとき達成される車両加速度の
最大値(極大値)はさほど大きくはならず、車両を一気
に増速させるには至らない。
【0059】これに対して前記第3目標入力回転数の今
回値Ni3(K) が目標入力回転数TN i に設定された場合
には、前記両者の中間のような挙動を示し、まず無段変
速機の変速比は図7dに破線で示すように、スロットル
開度TVOの増加直後から、前記第1目標入力回転数の
今回値Ni1(K) が目標入力回転数TNi に設定された場
合と同様に急速に増加し、これに伴って図7cに破線で
示すように実入力回転数も同様に急速に増加するため、
この間、図7eに破線で示すように車両加速度は増加し
ないが、速やかなダウンシフトにより駆動力を稼げる状
態になっている。しかし、その後、目標入力回転数TN
i の増加傾きが小さくなるために、図7c,dに示すよ
うに変速比及び実入力回転数の増加が緩やかになり、図
7eに示すように前記第1目標入力回転数の今回値N
i1(K) が目標入力回転数TNi に設定された場合よりも
短い応答時間で車両加速度が増加し始める。このときの
車両加速度の増加傾きは、前記重み係数αが十分に大き
いときの第2目標入力回転数の今回値Ni2(K) が目標入
力回転数TNi に設定された場合の車両加速度の増加傾
きよりも大きく、最大では、前記第1目標入力回転数の
今回値Ni1(K) が目標入力回転数TNi に設定された場
合の車両加速度の増加傾き程度まで大きくなり、車両加
速度の最大値(極大値)も、前記第1目標入力回転数の
今回値Ni1(K)が目標入力回転数TNi に設定された場
合のそれよりは小さいものの、相応に大きな車両加速度
で車速を大きく増速させることができる。また、この設
定では、前述のように車両加速度が一気に増加した後
も、当該車両加速度はほぼ一定に維持される時間があ
り、運転者には所謂良好な車速の伸び感が与えられる。
【0060】次に、前記二つの重み係数α,βを同時に
変化させた場合の目標入力回転数,実入力回転数,車両
加速度の経時変化を図8に示す。前述のように重み係数
αは1次遅れ成分である第2目標入力回転数の今回値N
i2(K) の遅れ時間の長さを、重み係数βは無段変速機で
達成すべき目標入力回転数TNi となる第3目標入力回
転数の今回値Ni3(K) の初期立上りまでの応答時間の短
さを支配する係数であるから、同図の各分図に破線で示
すように重み係数αを大きく且つ重み係数βを小さく設
定した場合には、実入力回転数を速やかに立上げてダウ
ンシフトを優先させ、然る後、エンジン回転数が十分に
上昇してから大きな車両加速度で車速を一気に増速させ
ることができる。一方、同図に実線で示すように重み係
数αを小さく且つ重み係数βを大きく設定した場合に
は、実入力回転数の立上りを遅らせてエンジンの出力ト
ルクを駆動力に分配して車両加速度の立上りを早め、急
激ではないが速やかに車速を増速することができる。
【0061】従って、前者のような重み係数α,βの設
定は、エンジンの回転慣性が小さく、或いはエンジンの
出力トルクが小さいといった所謂ライトウエイトスポー
ツタイプの車両で、エンジンの高回転化と鋭敏で大きな
加速力とを両立させたい場合などに向いており、後者の
ような重み係数α,βの設定は、エンジンの回転慣性が
大きく、或いはエンジンの出力トルクが大きいといった
所謂エグゼクティブサルーンタイプの車両で、エンジン
の回転数を抑制した静粛性と小さ過ぎはしないが速やか
で落ち着きのある加速感とを両立させたい場合等に向い
ていることから、これらの係数を適切に設定することに
よりエンジンや車両特性に応じたエンジン回転の変化の
させ方や踏込み加速時に実現する加速度の変化のさせ
方,所謂味付けの仕方を変えることができる。
【0062】以上より、本実施例は本発明のうち請求項
1乃至3に係る無段変速機の制御装置を実施化したもの
であり、前記スロットル開度センサ51及び図3の演算
処理のステップS1が本発明の無段変速機の制御装置の
スロットル開度検出手段を構成し、以下同様に、前記車
速センサ52及び図3の演算処理のステップS1が車速
検出手段を構成し、前記図4の演算処理のステップS2
0が第1目標入力回転数設定手段を構成し、前記図4の
演算処理のステップS30が第2目標入力回転数設定手
段を構成し、前記図4の演算処理のステップS40及び
ステップS50が第3目標入力回転数設定手段を構成
し、前記図4の演算処理を含む図3の演算処理及び図2
に示すコントロールユニットCUが変速比制御手段を構
成する。
【0063】次に、本発明の無段変速機の制御装置の第
2実施例を説明する。本実施例の基本的な車両構成は前
記図2に示す第1実施例のものと同様又はほぼ同様であ
るから、その詳細な説明を省略する。また、車両及び無
段変速機に設けられた各センサの構成及びその作用につ
いても前記第1実施例のそれと同様又はほぼ同様である
ために、その詳細な説明を省略する。また、無段変速機
の変速比制御を司るコントロールユニットの構成も、後
述する演算処理の一部を除いて、前記第1実施例のそれ
と同様又はほぼ同様であるために、その詳細な説明を省
略する。また、前記コントロールユニット内のマイクロ
コンピュータの演算処理装置で実行される変速比制御の
ための主要たる演算処理についても、前記図3のフロー
チャートに示す第1実施例のものと同様又はほぼ同様で
あるために、その詳細な説明を省略する。
【0064】次に前記図3の演算処理のステップS2で
実行される本実施例のマイナプログラムについて図9の
フローチャートを用いながら説明する。但し、このマイ
ナプログラムでは、前記第1実施例の図4のマイナプロ
グラムにおけるステップS20とステップS30との間
に、新たにステップS21a,S22a,S23aが挿
入された他は、当該第1実施例の図4のマイナプログラ
ムの各ステップと全く同様であるから、ここでは新たに
付加されたステップについてのみ説明する。
【0065】このマイナプログラムでは、前記ステップ
S20からステップS21aに移行して、例えばスロッ
トル開度の今回値TVO(K) と前回値TVO(K-1) との
差分値を前記所定サンプリング時間ΔTで除すなどし
て、スロットル開度TVOの変化率(ここでは時間微分
値)からなるスロットル開速度TVO' を算出する。次
いで、ステップS22aに移行して、前記ステップS2
1aで算出設定されたスロットル開速度TVO' を変数
として、後述する図10aの制御マップに従って前記1
次遅れ系の遅れ時間を制御する重み係数(ここでは遅れ
長さ重み係数とも記す)αを算出設定する。
【0066】次いで、ステップS23aに移行して、前
記ステップS21aで算出設定されたスロットル開速度
TVO' を変数として、後述する図10bの制御マップ
に従って前記目標入力回転数の遅れ成分の配分比率を制
御する重み係数(ここでは遅れ影響重み係数とも記す)
βを算出設定してから、前記ステップS40に移行す
る。
【0067】次に、前記図9のステップS22aで検索
される図10aの制御マップ並びに同ステップS23a
で検索される図10bの制御マップについて説明する。
まず、図10aの制御マップでは、横軸に設定されたス
ロットル開速度TVO' を変数として遅れ長さ重み係数
αを検索できるようにしてあり、スロットル開速度TV
O' が“0”以下の領域では重み係数αが“0”に設定
され、一方、スロットル開速度TVO' が比較的小さな
正値の所定値TVO'0以上の領域では重み係数αは
“1”に近い比較的大きな所定値α0 に設定され、スロ
ットル開速度TVO' が“0”から正値の所定値TV
O'0までは前記“0”から所定値α0 までリニアに増加
するように設定されている。また、図10bの制御マッ
プでは、横軸に設定されたスロットル開速度TVO' を
変数として遅れ影響重み係数βを検索できるようにして
あり、スロットル開速度TVO' が“0”以下の領域で
は重み係数βが“0.5”に近い中間値的な所定値β0
に設定され、一方、スロットル開速度TVO' が比較的
大きな所定値TVO'1以上の領域では重み係数βが比較
的小さな所定値β1 に設定され、スロットル開速度TV
O' が“0”から正値の所定値TVO'1までは前記所定
値β0 から所定値β1 までリニアに減少するように設定
されている。
【0068】次に、本実施例で実行される前記図3及び
図9の変速比制御のための演算処理の作用について説明
する。ここで、車両が平坦な良路(傾斜角θ≒0)を緩
やかに走行しているときは、前記第1実施例と全く同様
の処理がなされるために、その詳細な説明を省略して、
異なる状況下での作用についてのみ詳述する。
【0069】本実施例では、前述のようにスロットル開
速度TVO' に応じて前記両重み係数α,βを変更設定
するために、例えば高速走行中の追い越しなどで大きな
加速力を期待して運転者がアクセルペダルを大きく且つ
速く踏込むと、図9の演算処理のステップS20では前
記と同様に大きなスロットル開度TVOに応じた比較的
大きな第1目標入力回転数の今回値Ni1(K) が設定され
るが、同ステップS21aで算出設定されるスロットル
開速度TVO' も大きな正値となる。従って、同ステッ
プS22aで前記図10aの制御マップで検索設定され
る遅れ長さ重み係数αは比較的大きな値となり、同ステ
ップS23aで前記図10bの制御マップで検索設定さ
れる遅れ影響重み係数βは比較的小さな値となる。この
ときには両制御マップの設定から遅れ長さ重み係数αの
変化量の方が、遅れ影響重み係数βの変化量よりも大き
くなる。従って、これらの重み係数α,βを用いて図9
の演算処理のステップS30〜ステップS50で設定さ
れる無段変速機で達成すべき目標入力回転数TNi は、
前記図8aに破線で示すように、立上り時の増加傾きが
大きく、その後は比較的長時間に渡って増加傾きの小さ
い状態が継続するように変化する。そして、このときの
車両加速度は、前記図8cに破線で示すように応答時間
は比較的長いものの、この間の十分なダウンシフトによ
って駆動力が一気に大きくなり、従ってこの車両加速度
は大きな増加傾きで大きな最大値(極大値)を迎え、運
転者の意思通りに車両を一気に加速することができる。
【0070】一方、少し混んだ市街地での前走車追従等
のために大きい必要はないが素早く鋭敏な加速力を期待
して運転者がアクセルペダルを小さく且つ緩やかに踏込
むと、図9の演算処理のステップS20では前記と同様
に小さなスロットル開度TVOに応じた比較的小さな第
1目標入力回転数の今回値Ni1(K) が設定されるが、同
ステップS21aで算出設定されるスロットル開速度T
VO' は小さな正値となる。従って、同ステップS22
aで前記図10aの制御マップで検索設定される遅れ長
さ重み係数αは比較的小さな値となり、同ステップS2
3aで前記図10bの制御マップで検索設定される遅れ
影響重み係数βは比較的大きな値となる。従って、これ
らの重み係数α,βを用いて図9の演算処理のステップ
S30〜ステップS50で設定される無段変速機で達成
すべき目標入力回転数TNi は、前記図8aに実線で示
すように、立上りは小さいもののその後は比較的増加傾
きの大きい状態が短時間継続される。そして、このとき
の車両加速度は、前記図8cに実線で示すように応答時
間が比較的短く、最大値(極大値)こそ小さいが比較的
大きな増加傾きで増加し、運転者の意思通りに車両を小
さく鋭敏に加速することができる。
【0071】また、運転者が速やかにアクセルペダルを
踏戻すと、図9の演算処理のステップS21aで算出設
定されるスロットル開速度TVO' は負値となって、同
ステップS22aで設定される遅れ長さ重み係数αは
“0”となり、同ステップS23a設定される遅れ影響
重み係数βは前記比較的大きな所定値β0 となる。この
とき、無段変速機で達成すべき目標入力回転数TN
i は、前記通常の変速比制御マップに従った第1目標入
力回転数の今回値Ni1(K) となるから、通常のコースト
走行,惰性走行を行うことができる。
【0072】以上より、本実施例は本発明のうち請求項
1乃至5に係る無段変速機の制御装置を実施化したもの
であり、前記スロットル開度センサ51及び図3の演算
処理のステップS1が本発明の無段変速機の制御装置の
スロットル開度検出手段を構成し、以下同様に、前記車
速センサ52及び図3の演算処理のステップS1が車速
検出手段を構成し、図9の演算処理のステップS21a
がスロットル開速度検出手段を構成し、前記図9の演算
処理のステップS20が第1目標入力回転数設定手段を
構成し、前記図9の演算処理のステップS22a及びス
テップS30が第2目標入力回転数設定手段を構成し、
前記図9の演算処理のステップS23a及びステップS
40及びステップS50が第3目標入力回転数設定手段
を構成し、前記図9の演算処理を含む図3の演算処理及
び図2に示すコントロールユニットCUが変速比制御手
段を構成する。
【0073】次に、本発明の無段変速機の制御装置の第
3実施例を説明する。本実施例の無段変速機の制御装置
は、前記図3の演算処理のステップS2で実行されるマ
イナプログラムが、前記第2実施例の図9のフローチャ
ートに示すものから図11のフローチャートに示すもの
に変更されている点を除いて、その他の車両及び無段変
速機の制御装置の構成は当該第2実施例と同様又はほぼ
同様であるために、この図11の演算処理についてのみ
説明する。また、このマイナプログラムでは、前記第2
実施例の図9のマイナプログラムにおけるステップS2
1a,S22a,S23aが、図11のマイナプログラ
ムでは夫々ステップS21b,S22b,S23bに変
更された他は、当該第2実施例の図9のマイナプログラ
ムの各ステップと全く同様であるから、ここでは変更さ
れたステップについてのみ説明する。
【0074】このマイナプログラムでは、前記ステップ
S20からステップS21bに移行して、前記第2実施
例と同様にしてスロットル開速度TVO' を算出すると
共に、例えばこのスロットル開速度の今回値TVO'
(K) と前回値TVO' (K-1) との差分値を前記所定サン
プリング時間ΔTで除すなどして、スロットル開速度T
VO' の変化率(ここでは時間微分値)からなるスロッ
トル開加速度TVO" を算出する。
【0075】次いで、ステップS22bに移行して、前
記ステップS21bで算出設定されたスロットル開速度
TVO' 及びスロットル開加速度TVO" を夫々変数及
びパラメータとして、後述する図12aの制御マップに
従って前記1次遅れ系の遅れ時間を制御する遅れ長さ重
み係数αを算出設定する。次いで、ステップS23bに
移行して、前記ステップS21bで算出設定されたスロ
ットル開速度TVO' 及びスロットル開加速度TVO"
を夫々変数及びパラメータとして、後述する図12bの
制御マップに従って前記目標入力回転数の遅れ成分の配
分比率を制御する遅れ影響重み係数βを算出設定してか
ら、前記ステップS40に移行する。
【0076】次に、前記図9のステップS22bで検索
される図12aの制御マップ並びに同ステップS23b
で検索される図12bの制御マップについて説明する。
これらの制御マップの基本的な設定は、横軸に設定され
たスロットル開速度TVO' を変数として各重み係数
α,βを検索設定する前記図10a,10bのものと同
様又はほぼ同様であるが、図12aの制御マップでは前
記スロットル開加速度TVO" をパラメータとして遅れ
長さ重み係数αが前記所定値α0 となるスロットル開速
度の所定値TVO'0と、前記“0”から当該所定値α0
に至る遅れ長さ重み係数αの増加傾きとが変更されるよ
うにしてあり、より具体的にはスロットル開加速度TV
O" が大きいと前記スロットル開速度の所定値TVO'0
は小さく且つ遅れ長さ重み係数αの増加傾きは大きくな
るようにしてある。従って、この遅れ長さ重み係数αの
変更設定範囲では、同等のスロットル開速度TVO'で
もスロットル開加速度TVO" が大きいほど遅れ長さ重
み係数αは大きく設定される。また、図12aの制御マ
ップでは前記スロットル開加速度TVO" をパラメータ
として遅れ影響重み係数βが前記所定値β1 となるスロ
ットル開速度の所定値TVO'1と、前記所定値β0 から
当該所定値β1 に至る遅れ影響重み係数βの減少傾きと
が変更されるようにしてあり、より具体的にはスロット
ル開加速度TVO" が大きいと前記スロットル開速度の
所定値TVO'1は大きく且つ遅れ影響重み係数βの減少
傾きは小さくなるようにしてある。従って、この遅れ影
響重み係数βの変更設定範囲では、同等のスロットル開
速度TVO' でもスロットル開加速度TVO" が大きい
ほど遅れ影響重み係数βは小さく設定される。
【0077】従って、本実施例で実行される前記図3及
び図11の変速比制御のための演算処理によれば、前記
第2実施例におけるスロットル開速度TVO' に応じた
無段変速機への入力回転数制御,即ち当該無段変速機の
変速比制御に加えて、前述のようにスロットル開加速度
TVO" に応じても前記両重み係数α,βを変更設定す
るために、例えば高速走行中の追い越しなどで大きな加
速力を期待して運転者がアクセルペダルを大きく且つ速
く踏込むと、その踏込み開始直後から図11の演算処理
のステップS21bで算出設定されるスロットル開加速
度TVO" も大きな正値となる。既知のように時間微分
の階数が大きいほど位相は早くなるから、前記第2実施
例におけるスロットル開速度TVO' よりも速やかに、
同ステップS22bで前記図12aの制御マップから検
索設定される遅れ長さ重み係数αは比較的大きな値とな
り、同ステップS23bで前記図12bの制御マップで
検索設定される遅れ影響重み係数βは比較的小さな値と
なる。従って、これらの重み係数α,βを用いて図11
の演算処理のステップS30〜ステップS50で設定さ
れる無段変速機で達成すべき目標入力回転数TNi は、
前記図8aに破線で示すように変化し、このときの車両
加速度は、急速なアクセルペダルの踏込み開始を検出し
て、前記図8cに破線で示すように応答時間は比較的長
いものの、この間の十分なダウンシフトによって駆動力
が一気に大きくなり、従ってこの車両加速度は大きな増
加傾きで大きな最大値(極大値)を迎え、運転者の意思
通りに車両を一気に加速することができる。
【0078】一方、少し混んだ市街地での前走車追従等
のために大きい必要はないが素早く鋭敏な加速力を期待
して運転者がアクセルペダルを小さく且つ緩やかに踏込
むと、その踏込み開始直後から図11の演算処理のステ
ップS21bで算出設定されるスロットル開加速度TV
O" は小さな正値となる。従って、前記第2実施例より
も速やかに同ステップS22bで前記図12aの制御マ
ップで検索設定される遅れ長さ重み係数αは比較的小さ
な値となり、同ステップS23bで前記図12bの制御
マップで検索設定される遅れ影響重み係数βは比較的大
きな値となる。従って、これらの重み係数α,βを用い
て図9の演算処理のステップS30〜ステップS50で
設定される無段変速機で達成すべき目標入力回転数TN
i は、より速やかに前記図8aに実線で示すように変化
し、このときの車両加速度は、緩やかなアクセルペダル
の踏込み開始を検出して、前記図8cに実線で示すよう
に応答時間が比較的短く、最大値(極大値)こそ小さい
が比較的大きな増加傾きで増加し、運転者の意思通りに
車両を小さく鋭敏に加速することができる。
【0079】以上より、本実施例は本発明のうち請求項
1乃至4及び6に係る無段変速機の制御装置を実施化し
たものであり、前記スロットル開度センサ51及び図3
の演算処理のステップS1が本発明の無段変速機の制御
装置のスロットル開度検出手段を構成し、以下同様に、
前記車速センサ52及び図3の演算処理のステップS1
が車速検出手段を構成し、図11の演算処理のステップ
S21bがスロットル開速度検出手段及びスロットル開
加速度検出手段を構成し、前記図11の演算処理のステ
ップS20が第1目標入力回転数設定手段を構成し、前
記図11の演算処理のステップS22b及びステップS
30が第2目標入力回転数設定手段を構成し、前記図1
1の演算処理のステップS23b及びステップS40及
びステップS50が第3目標入力回転数設定手段を構成
し、前記図11の演算処理を含む図3の演算処理及び図
2に示すコントロールユニットCUが変速比制御手段を
構成する。
【0080】次に、本発明の無段変速機の制御装置の第
4実施例を説明する。本実施例の無段変速機の制御装置
は、前記図3の演算処理のステップS2で実行されるマ
イナプログラムが、前記第3実施例の図11のフローチ
ャートに示すものから図13のフローチャートに示すも
のに変更されている点を除いて、その他の車両及び無段
変速機の制御装置の構成は当該第3実施例と同様又はほ
ぼ同様であるために、この図13の演算処理についての
み説明する。また、このマイナプログラムでは、前記第
3実施例の図11のマイナプログラムにおけるステップ
S22bが削除され、同ステップS22b,S23b
が、図13のマイナプログラムでは夫々ステップS22
c,S23cに変更された他は、当該第3実施例の図1
1のマイナプログラムの各ステップと全く同様であるか
ら、ここでは変更されたステップについてのみ説明す
る。
【0081】このマイナプログラムでは、前記ステップ
S20からステップS22cに移行して、前記図3の演
算処理のステップS1で読込まれた車速VSPを変数とし
て、後述する図14aの制御マップに従って前記1次遅
れ系の遅れ時間を制御する遅れ長さ重み係数αを算出設
定する。次いで、ステップS23cに移行して、同じく
謝すVSPを変数として、後述する図14bの制御マップ
に従って前記目標入力回転数の遅れ成分の配分比率を制
御する遅れ影響重み係数βを算出設定してから、前記ス
テップS40に移行する。
【0082】次に、前記図13のステップS22cで検
索される図14aの制御マップ並びに同ステップS23
cで検索される図14bの制御マップについて説明す
る。まず、図14aの制御マップでは、横軸に設定され
た車速VSPを変数として遅れ長さ重み係数αを検索でき
るようにしてあり、正値のみを対象とする車速VSPが中
速程度の所定値VSP0 以下の領域では重み係数αが比較
的大きな所定値α1に設定され、一方、車速VSPが高速
程度の所定値VSP1 以上の領域では重み係数αは“0”
に設定され、車速VSPが前記所定値VSP0 から所定値V
SP1 までは前記所定値α1 から“0”までリニアに減少
するように設定されている。また、図14bの制御マッ
プでは、横軸に設定された車速VSPを変数として遅れ影
響重み係数βを検索できるようにしてあり、正値のみを
対象とする車速VSPが中速程度の所定値VSP2 以下の領
域では重み係数βが“0.5”に近い中間値的な所定値
β2 に設定され、一方、車速VSPが高速程度の所定値V
SP3 以上の領域では重み係数βが比較的小さな所定値β
3 に設定され、車速VSPが前記所定値VSP2 から所定値
SP3 までは前記所定値β2 から所定値β3 までリニア
に減少するように設定されている。
【0083】従って、本実施例で実行される前記図3及
び図13の変速比制御のための演算処理によれば、例え
ば高速走行中の追い越しなどで大きな加速力を期待して
運転者がアクセルペダルを大きく且つ速く踏込むと、前
記図3の演算処理のステップS1で読込まれる車速VSP
は十分に大きいから、その踏込み開始前から図13の演
算処理のステップS22cで前記図14aの制御マップ
から検索設定される遅れ長さ重み係数αは極めて小さな
値か若しくは“0”となり、同ステップS23cで前記
図14bの制御マップで検索設定される遅れ影響重み係
数βは比較的小さな値となる。ここで、このような高速
走行中であれば、図15に示すようにスロットル開度T
VOの全変化量は、低速或いは中速走行中と同等であっ
ても、目標入力回転数の全変化量は小さくなる。従っ
て、こうした高速走行中にアクセルペダルを大きく且つ
速く踏込んだからといって、目標入力回転数の全変化代
が小さく、しかもエンジンは既に十分高速回転している
から、前述のように目標入力回転数の立上りを遅らせた
り、その増加傾きを制限したりすること自体が意味をも
たず、むしろそうすることによって高速走行に伴う大き
な走行負荷に抗して車両を十分に加速できなくなる可能
性がある。従って、これらの重み係数α,βを用いて図
13の演算処理のステップS30〜ステップS50で設
定される無段変速機で達成すべき目標入力回転数TNi
は、前記遅れ長さ重み係数αが小さいことから遅れ時間
が短く且つ遅れ影響重み係数βが小さいことから応答時
間も短くなって、比較的短時間に速やかに大きく立上
り、その結果、車両は必要にして十分な駆動力を得て加
速することができる。
【0084】一方、低・中速走行中に大きな加速力を期
待して運転者がアクセルペダルを大きく且つ速く踏込む
と、図13の演算処理のステップS22cで前記図14
aの制御マップから検索設定される遅れ長さ重み係数α
は比較的大きな値となり、同ステップS23cで前記図
14bの制御マップで検索設定される遅れ影響重み係数
βは比較的大きな値となる。従って、これらの重み係数
α,βを用いて図13の演算処理のステップS30〜ス
テップS50で設定される無段変速機で達成すべき目標
入力回転数TNi は、遅れ時間も応答時間も比較的長く
なるため、この比較的長い応答時間中にダウンシフトに
よって稼がれた駆動力は、その後の長い遅れ時間によっ
て確実に車両を加速することができる。
【0085】以上より、本実施例は本発明のうち請求項
1乃至4及び7に係る無段変速機の制御装置を実施化し
たものであり、前記スロットル開度センサ51及び図3
の演算処理のステップS1が本発明の無段変速機の制御
装置のスロットル開度検出手段を構成し、以下同様に、
前記車速センサ52及び図3の演算処理のステップS1
が車速検出手段を構成し、前記図13の演算処理のステ
ップS20が第1目標入力回転数設定手段を構成し、前
記図13の演算処理のステップS22c及びステップS
30が第2目標入力回転数設定手段を構成し、前記図1
3の演算処理のステップS23c及びステップS40及
びステップS50が第3目標入力回転数設定手段を構成
し、前記図13の演算処理を含む図3の演算処理及び図
2に示すコントロールユニットCUが変速比制御手段を
構成する。
【0086】次に、本発明の無段変速機の制御装置の第
5実施例を説明する。本実施例の無段変速機の制御装置
は、前記図3の演算処理のステップS2で実行されるマ
イナプログラムが、前記第3実施例の図11のフローチ
ャートに示すものから図16のフローチャートに示すも
のに変更されている点を除いて、その他の車両及び無段
変速機の制御装置の構成は当該第3実施例と同様又はほ
ぼ同様であるために、この図16の演算処理についての
み説明する。また、このマイナプログラムでは、前記第
3実施例の図11のマイナプログラムにおけるステップ
S21b,S22b,S23bが、図16のマイナプロ
グラムでは夫々ステップS21d,S22d,S23d
に変更された他は、当該第2実施例の図9のマイナプロ
グラムの各ステップと全く同様であるから、ここでは変
更されたステップについてのみ説明する。
【0087】このマイナプログラムでは、前記ステップ
S20からステップS21dに移行して、例えば車速の
今回値VSP(K) と前回値VSP(K-1) との差分値を前記所
定サンプリング時間ΔTで除すなどして、車速VSPの変
化率(ここでは時間微分値)からなる車両加減速度V'
SPを算出する。次いで、ステップS22dに移行して、
前記ステップS21dで算出設定された車両加減速度
V' SPを変数として、後述する図17aの制御マップに
従って前記1次遅れ系の遅れ時間を制御する遅れ長さ重
み係数αを算出設定する。
【0088】次いで、ステップS23dに移行して、前
記ステップS21dで算出設定された車両加減速度V'
SPを変数として、後述する図17bの制御マップに従っ
て前記目標入力回転数の遅れ成分の配分比率を制御する
遅れ影響重み係数βを算出設定してから、前記ステップ
S40に移行する。次に、前記図16のステップS22
dで検索される図17aの制御マップ並びに同ステップ
S23dで検索される図17bの制御マップについて説
明する。
【0089】まず、図17aの制御マップでは、横軸に
設定された車両加減速度V' SPを変数として遅れ長さ重
み係数αを検索できるようにしてあり、車両加減速度
V' SPが負値の所定値V' SP0 以下の領域では重み係数
αが“0”に設定され、一方、車両加減速度V' SPが正
値の所定値V' SP1 以上の領域では重み係数αは“1”
に近い比較的大きな所定値α2 に設定され、車両加減速
度V' SPが前記負値の所定値V' SP0 から正値の所定値
V' SP1 までは前記“0”から所定値α2 までリニアに
増加するように設定されている。また、図17bの制御
マップでは、横軸に設定された車両加減速度V' SPを変
数として遅れ影響重み係数βを検索できるようにしてあ
り、車両加減速度V' SPが負値の所定値V' SP2 以下の
領域では重み係数βは比較的小さな所定値β4 に設定さ
れ、一方、車両加減速度V' SPが“0”以上の領域では
重み係数βが“0.5”に近い中間値的な所定値β5
設定され、車両加減速度V' SPが前記負値の所定値V'
SP2 から“0”までは前記所定値β4 から所定値β5
でリニアに減少するように設定されている。
【0090】従って、本実施例で実行される前記図3及
び図16の変速比制御のための演算処理によれば、例え
ば登坂路走行中に大きな加速力を期待して運転者がアク
セルペダルを大きく且つ速く踏込むと、その踏込み開始
以前に図16の演算処理のステップS21dで算出設定
される車両加減速度V' SPは負値となるから、同ステッ
プS22dで前記図17aの制御マップから検索設定さ
れる遅れ長さ重み係数αは比較的小さな値或いは“0”
となり、同ステップS23dで前記図17bの制御マッ
プで検索設定される遅れ影響重み係数βは比較的小さな
値となる。従って、これらの重み係数α,βを用いて図
11の演算処理のステップS30〜ステップS50で設
定される無段変速機で達成すべき目標入力回転数TNi
は、前記遅れ長さ重い係数αが小さいことから遅れ時間
が短く且つ遅れ影響重み係数βが小さいことから応答時
間も短くなって、比較的短時間に速やかに大きく立上っ
て速やかにダウンシフトし、その結果、車両は必要にし
て十分な駆動力を得て加速することができる。
【0091】一方、例えば降坂路走行中にエンジンブレ
ーキ力による減速力を期待して運転者がアクセルペダル
を踏戻すと、その踏戻し開始以前から図17の演算処理
のステップS21dで算出設定される車両加速度V' SP
は正値となるから、同ステップS22dで前記図17a
の制御マップで検索設定される遅れ長さ重み係数αは比
較的大きな値となり、同ステップS23dで前記図17
bの制御マップで検索設定される遅れ影響重み係数βは
比較的大きな値となる。従って、これらの重み係数α,
βを用いて図9の演算処理のステップS30〜ステップ
S50で設定される無段変速機で達成すべき目標入力回
転数TNi は、応答時間が長く且つ遅れ時間も長くなる
ように緩やかに減少することになるから、アップシフト
のタイミングとその変速速度を遅らせて、エンジンブレ
ーキ力による減速力で車両を確実に減速させることがで
きる。
【0092】以上より、本実施例は本発明のうち請求項
1乃至4及び8に係る無段変速機の制御装置を実施化し
たものであり、前記スロットル開度センサ51及び図3
の演算処理のステップS1が本発明の無段変速機の制御
装置のスロットル開度検出手段を構成し、以下同様に、
前記車速センサ52及び図3の演算処理のステップS1
が車速検出手段を構成し、図16の演算処理のステップ
S21dが車両加減速度検出手段を構成し、前記図16
の演算処理のステップS20が第1目標入力回転数設定
手段を構成し、前記図16の演算処理のステップS22
d及びステップS30が第2目標入力回転数設定手段を
構成し、前記図16の演算処理のステップS23d及び
ステップS40及びステップS50が第3目標入力回転
数設定手段を構成し、前記図16の演算処理を含む図3
の演算処理及び図2に示すコントロールユニットCUが
変速比制御手段を構成する。
【0093】次に、本発明の無段変速機の制御装置の第
6実施例を説明する。本実施例の基本的な車両構成は前
記図2に示す第1実施例のものと同様又はほぼ同様であ
るから、その詳細な説明を省略する。また、車両及び無
段変速機に設けられた各センサの構成及びその作用につ
いても前記第1実施例のそれと同様又はほぼ同様である
ために、その詳細な説明を省略する。また、無段変速機
の変速比制御を司るコントロールユニットの構成も、後
述する演算処理の一部を除いて、前記第1実施例のそれ
と同様又はほぼ同様であるために、その詳細な説明を省
略する。また、前記コントロールユニット内のマイクロ
コンピュータの演算処理装置で実行される変速比制御の
ための主要たる演算処理についても、前記図3のフロー
チャートに示す第1実施例のものと同様又はほぼ同様で
あるために、その詳細な説明を省略する。
【0094】次に前記図3の演算処理のステップS2で
実行される本実施例のマイナプログラムについて図18
のフローチャートを用いながら説明する。但し、このマ
イナプログラムのうち、前記第2実施例と同等のステッ
プには同等の符号を附してその詳細な説明を省略する。
このマイナプログラムでは、まずステップS20で前記
第2実施例と同様に第1目標入力回転数の今回値N
i1(K) を算出設定する。
【0095】次いでステップS24に移行して、カウン
タCNTをインクリメントする。次いでステップS25
に移行して、前記カウンタCNTが所定のカウントアッ
プ値CNT0 以上であるか否かを判定し、当該カウンタ
CNTがカウントアップ値CNT0 以上である場合には
ステップS26に移行し、そうでない場合にはステップ
S51に移行する。
【0096】前記ステップS26では、カウンタをクリ
アしてからステップS27eに移行する。前記ステップ
S27eでは、前記第2実施例と同様にスロットル開速
度TVO' を算出設定してからステップS28eに移行
する。前記ステップS28eでは、前記ステップS27
eで算出設定されたスロットル開速度TVO' を変数と
して、後述する図19の制御マップに従って制御周期T
を算出設定してからステップS29に移行する。
【0097】前記ステップS29では、下記3式に従っ
てカウントアップ値CNT0 を算出設定してからステッ
プS30に移行する。 CNT0 =INT(T/ΔT) ……… (3) 但し、INTは小数点以下の四捨五入処理を示す。前記
ステップS30では、前記2実施例と同様に前記1式に
従って第2目標入力回転数の今回値Ni2(K) を算出設定
し、次いでステップS40に移行して、前記第2実施例
と同様に前記2式に従って第3目標入力回転数の今回値
i3(K) を算出設定し、次いでステップS50に移行し
て、この第3目標入力回転数の今回値Ni3(K) を無段変
速機で達成すべき目標入力回転数の今回値TNi(K)に設
定してから、前記図3の演算処理のステップS3に移行
する。但し、本実施例の前記1式の重み係数α及び2式
の重み係数βは、前記第1実施例のような固定値であ
る。
【0098】一方、前記ステップS51では、前記記憶
装置60cに更新記憶されている目標入力回転数の前回
値TNi(K-1)を無段変速機で達成すべき目標入力回転数
の今回値TNi(K)に設定してから、前記と同様に図3の
演算処理のステップS3に移行する。次に、前記図18
の演算処理のステップS28eで検索される図19の制
御マップについて説明する。
【0099】この制御マップでは、横軸に設定されたス
ロットル開速度TVO' を変数として制御周期(ここで
は制御量の設定周期を表す)Tを検索できるようにして
あり、スロットル開速度TVO' が“0”以下の領域で
は制御周期Tが、前記所定サンプリング時間ΔT程度の
小さな所定値T01に設定され、一方、スロットル開速度
TVO' が比較的小さな正値の所定値TVO'0以上の領
域では制御周期Tは比較的大きな所定値T0 に設定さ
れ、スロットル開速度TVO' が“0”から正値の所定
値TVO'0までは前記所定値T01から所定値T0 までリ
ニアに増加するように設定されている。
【0100】ここで、前記制御周期(制御量の設定周
期)Tについて説明する。まず、連続時間系での1次遅
れは図20aに示すように表される。但し、同図のtは
各遅れ要素の時定数を示している。そして、既知のよう
にこのときの伝達関数G(S) は下記4式で表される。 G(S) =1/(1+ts) ……… (4) これをサンプル周期τで離散化すると図20bのように
表される。なお、図中のZ-1は1サンプル周期のディレ
イを示す。更に、これを変形して図20cの1次遅れ系
を得る。このとき、出力y(K) は入力u(K) に対して下
記5式で与えられる。
【0101】 つまり、前記5式は入力u(K) と出力の前回値y(K-1)
との加重平均であり、夫々の係数が重み係数に相当する
ことから、時定数t及びサンプル周期τによって重み係
数を設定することができる。
【0102】ここで、この制御周期Tを用いて出力の前
回値y(K-1) に係る係数αを下記7式で表すと、入力u
(K) に係る係数は下記8式で表され、前記5式は下記9
式に変換される。 (K) =(1−α)u(K) +αy(K-1) ……… (9) 次に、t,τを単に時定数を決めるためのパラメータと
考え、前記9式を演算する周期、つまり制御周期をTと
すると、入力u(K) に対する出力y(K) の時定数T0
下記10式で表される。
【0103】 従って、前記制御周期Tを大きくすることは、前記10
式より、パラメータt或いはτの増減により重み係数α
を大きくすることと等価であり、制御周期Tを小さくす
ることは当該重み係数αを小さくすることと等価とな
る。
【0104】次に、本実施例で実行される前記図3及び
図18の変速比制御のための演算処理の作用について説
明する。本実施例では、前述のようにスロットル開速度
TVO' に応じて前記制御周期Tを変更設定するため
に、例えば高速走行中の追い越しなどで大きな加速力を
期待して運転者がアクセルペダルを大きく且つ速く踏込
むと、図18の演算処理のステップS20では前記と同
様に大きなスロットル開度TVOに応じた比較的大きな
第1目標入力回転数の今回値Ni1(K) が設定されるが、
同ステップS27eで算出設定されるスロットル開速度
TVO' も大きな正値となる。従って、同ステップS2
8eで前記図19の制御マップで検索設定される制御周
期Tは比較的大きな値となり、同ステップS29では、
この制御周期Tを前記所定サンプリング時間ΔTで除し
たカウントアップ値CNT0 が算出設定され、次いで同
ステップS30〜ステップS50では前述と同様に、固
定値である重み係数α,βを用いた第3目標入力回転数
の今回値Ni3(K) が無段変速機で達成すべき目標入力回
転数の今回値TNi(K)に設定されるが、前記ステップS
29で算出設定されたカウントアップ値CNT0 が比較
的大きな正値となるので、前記ステップS24でインク
リメントされるカウンタCNTが同ステップS25でカ
ウントアップするまでの比較的長時間、同ステップS5
1でこのときの目標入力回転数(の前回値)TNi(K-1)
が目標入力回転数の今回値TNi(K)に維持される。これ
は前述した離散系の制御周期を前記ステップS28eで
設定された制御周期Tまで長くしたことと同じであり、
従って、その後、図18の演算処理で設定される無段変
速機で達成すべき目標入力回転数(の今回値)TNi(K)
は、前記図6aに破線で示すように、立上り時の増加傾
きが大きく、その後は比較的長時間に渡って増加傾きの
小さい状態が継続するように変化する。そして、このと
きの車両加速度は、前記図6bに破線で示すように応答
時間は比較的長いものの、この間の十分なダウンシフト
によって駆動力が一気に大きくなり、従ってこの車両加
速度は大きな増加傾きで大きな最大値(極大値)を迎
え、運転者の意思通りに車両を一気に加速することがで
きる。
【0105】一方、少し混んだ市街地での前走車追従等
のために大きい必要はないが素早く鋭敏な加速力を期待
して運転者がアクセルペダルを小さく且つ緩やかに踏込
むと、図18の演算処理のステップS27eで算出設定
されるスロットル開速度TVO' は小さな正値となり、
同ステップS28eで前記図19の制御マップで検索設
定される制御周期Tは比較的小さな値となるため、同ス
テップS29で算出設定されるカウントアップ値CNT
0 も小さくなり、前記ステップS24でインクリメント
されるカウンタCNTは同ステップS25で比較的短時
間でカウントアップするから、これは前述した離散系の
制御周期を前記ステップS28eで設定された制御周期
Tまで短くしたことと同じであり、従って、その後、図
18の演算処理で設定される無段変速機で達成すべき目
標入力回転数(の今回値)TNi( K)は、前記図6aに実
線で示すように、急速な立上りは小さいもののその後も
比較的増加傾きの大きい状態が短時間継続される。そし
て、このときの車両加速度は、前記図6bに実線で示す
ように応答時間が比較的短く、最大値(極大値)こそ小
さいが比較的大きな増加傾きで増加し、運転者の意思通
りに車両を小さく鋭敏に加速することができる。
【0106】以上より、本実施例は本発明のうち請求項
1乃び9及び10に係る無段変速機の制御装置を実施化
したものであり、前記スロットル開度センサ51及び図
3の演算処理のステップS1が本発明の無段変速機の制
御装置のスロットル開度検出手段を構成し、以下同様
に、前記車速センサ52及び図3の演算処理のステップ
S1が車速検出手段を構成し、図18の演算処理のステ
ップS27eがスロットル開速度検出手段を構成し、前
記図18の演算処理のステップS20が第1目標入力回
転数設定手段を構成し、前記図18の演算処理のステッ
プS30が第2目標入力回転数設定手段を構成し、前記
図18の演算処理のステップS40及びステップS50
が第3目標入力回転数設定手段を構成し、前記図18の
演算処理を含む図3の演算処理及び図2に示すコントロ
ールユニットCUが変速比制御手段を構成する。
【0107】次に、本発明の無段変速機の制御装置の第
7実施例を説明する。本実施例の無段変速機の制御装置
は、前記図3の演算処理のステップS2で実行されるマ
イナプログラムが、前記第3実施例の図11のフローチ
ャートに示すものから図21のフローチャートに示すも
のに変更されている点を除いて、その他の車両及び無段
変速機の制御装置の構成は当該第2実施例と同様又はほ
ぼ同様であるために、この図21の演算処理についての
み説明する。また、このマイナプログラムでは、前記第
6実施例の図18のマイナプログラムにおけるステップ
S27e,S28eが、図21のマイナプログラムでは
夫々ステップS27f,S28fに変更された他は、当
該第6実施例の図18のマイナプログラムの各ステップ
と全く同様であるから、ここでは変更されたステップに
ついてのみ説明する。
【0108】このマイナプログラムでは、前記ステップ
S26からステップS27fに移行して、前記第3実施
例と同様にスロットル開速度TVO' 及びスロットル開
加速度TVO" を算出する。次いで、ステップS28f
に移行して、前記ステップS21bで算出設定されたス
ロットル開速度TVO' 及びスロットル開加速度TV
O" を夫々変数及びパラメータとして、後述する図22
の制御マップに従って制御周期Tを算出設定してから前
記ステップS29に移行する。次に、前記図21のステ
ップS28fで検索される図22の制御マップについて
説明する。
【0109】この制御マップの基本的な設定は、横軸に
設定されたスロットル開速度TVO' を変数として制御
週Tを検索設定する前記図19のものと同様又はほぼ同
様であるが、図22aの制御マップでは前記スロットル
開加速度TVO" をパラメータとして制御周期Tが前記
所定値T0 となるスロットル開速度の所定値TVO'
0と、前記所定値T01から当該所定値T0 に至る制御周
期Tの増加傾きとが変更されるようにしてあり、より具
体的にはスロットル開加速度TVO" が大きいと前記ス
ロットル開速度の所定値TVO'0は小さく且つ制御周期
Tの増加傾きは大きくなるようにしてある。従って、前
述のように前記第3実施例の遅れ長さ重み係数αの変更
設定と制御周期Tの変更設定とは実質的に等価であり、
且つこの制御マップで設定される制御周期Tが前記第3
実施例の図12aの制御マップで設定される重み係数α
と同様に変更設定されることから、本実施例で実行され
る前記図3及び図21の変速比制御のための演算処理に
よれば、前記第6実施例におけるスロットル開速度TV
O' に応じた無段変速機への入力回転数制御,即ち当該
無段変速機の変速比制御に加えて、例えば高速走行中の
追い越しなどで大きな加速力を期待して運転者がアクセ
ルペダルを大きく且つ速く踏込むと、その踏込み開始直
後から、図21の演算処理のステップS27fで算出設
定される位相の早いスロットル開加速度TVO" に応じ
て、同ステップS28fで設定される制御周期Tが大き
くなり、従って無段変速機で達成すべき目標入力回転数
TNi は、前記図6aに破線で示すように変化し、この
ときの車両加速度は、急速なアクセルペダルの踏込み開
始を検出して、前記図6bに破線で示すように応答時間
は比較的長いものの、この間の十分なダウンシフトによ
って駆動力が一気に大きくなり、従って大きな増加傾き
で大きな最大値(極大値)を迎え、運転者の意思通りに
車両を一気に加速することができる。
【0110】一方、少し混んだ市街地での前走車追従等
のために大きい必要はないが素早く鋭敏な加速力を期待
して運転者がアクセルペダルを小さく且つ緩やかに踏込
むと、その踏込み開始直後から図21の演算処理のステ
ップS27fで算出設定されるスロットル開加速度TV
O" は小さな正値となり、同ステップS28fで前記図
22bの制御マップで検索設定される制御周期Tが小さ
くなり、従って無段変速機で達成すべき目標入力回転数
TNi は、より速やかに前記図6aに実線で示すように
変化し、このときの車両加速度は、緩やかなアクセルペ
ダルの踏込み開始を検出して、前記図6bに実線で示す
ように応答時間が比較的短く、最大値(極大値)こそ小
さいが比較的大きな増加傾きで増加し、運転者の意思通
りに車両を小さく鋭敏に加速することができる。
【0111】以上より、本実施例は本発明のうち請求項
1及び9及び11に係る無段変速機の制御装置を実施化
したものであり、前記スロットル開度センサ51及び図
3の演算処理のステップS1が本発明の無段変速機の制
御装置のスロットル開度検出手段を構成し、以下同様
に、前記車速センサ52及び図3の演算処理のステップ
S1が車速検出手段を構成し、図21の演算処理のステ
ップS27fがスロットル開速度検出手段及びスロット
ル開加速度検出手段を構成し、前記図21の演算処理の
ステップS20が第1目標入力回転数設定手段を構成
し、前記図21の演算処理のステップS30が第2目標
入力回転数設定手段を構成し、前記図21の演算処理の
ステップS40及びステップS50が第3目標入力回転
数設定手段を構成し、前記図21の演算処理を含む図3
の演算処理及び図2に示すコントロールユニットCUが
変速比制御手段を構成する。
【0112】次に、本発明の無段変速機の制御装置の第
8実施例を説明する。本実施例の無段変速機の制御装置
は、前記図3の演算処理のステップS2で実行されるマ
イナプログラムが、前記第4実施例の図13のフローチ
ャートに示すものから図23のフローチャートに示すも
のに変更されている点を除いて、その他の車両及び無段
変速機の制御装置の構成は当該第3実施例と同様又はほ
ぼ同様であるために、この図23の演算処理についての
み説明する。また、このマイナプログラムでは、前記第
7実施例の図21のマイナプログラムにおけるステップ
S27fが削除され、同ステップS28fが図23のマ
イナプログラムではステップS28gに変更された他
は、当該第7実施例の図21のマイナプログラムの各ス
テップと全く同様であるから、ここでは変更されたステ
ップについてのみ説明する。
【0113】このマイナプログラムでは、前記ステップ
S26からステップS28gに移行して、前記図3の演
算処理のステップS1で読込まれた車速VSPを変数とし
て、後述する図24の制御マップに従って制御周期Tを
算出設定してから、前記ステップS29に移行する。次
に、前記図23のステップS28gで検索される図24
の制御マップについて説明する。この制御マップでは、
横軸に設定された車速VSPを変数として制御周期Tを検
索できるようにしてあり、正値のみを対象とする車速V
SPが中速程度の所定値VSP0 以下の領域では制御周期T
が比較的大きな所定値T1 に設定され、一方、車速VSP
が高速程度の所定値VSP1 以上の領域では制御周期Tは
前記所定サンプリング時間ΔT程度の所定値T01に設定
され、車速VSPが前記所定値V SP0 から所定値VSP1
では前記所定値T1 から所定値T01までリニアに減少す
るように設定されている。従って、前述のように前記第
4実施例の遅れ長さ重み係数αの変更設定と制御周期T
の変更設定とは実質的に等価であり、且つこの制御マッ
プで設定される制御周期Tが前記第4実施例の図14a
の制御マップで設定される重み係数αと同様に変更設定
されることから、本実施例で実行される前記図3及び図
23の変速比制御のための演算処理によれば、例えば高
速走行中の追い越しなどで大きな加速力を期待して運転
者がアクセルペダルを大きく且つ速く踏込むと、前記図
3の演算処理のステップS1で読込まれる車速VSPは十
分に大きいから、その踏込み開始前から図23の演算処
理のステップS28gで前記図24の制御マップから検
索設定される制御周期Tは極めて小さな値か若しくは前
記所定値T01となり、無段変速機で達成すべき目標入力
回転数TNi は比較的短時間に速やかに大きく立上り、
その結果、車両は必要にして十分な駆動力を得て加速す
ることができる。
【0114】一方、低・中速走行中に大きな加速力を期
待して運転者がアクセルペダルを大きく且つ速く踏込む
と、図23の演算処理のステップS28gで前記図24
の制御マップから検索設定される制御周期Tは比較的大
きな値となり、無段変速機で達成すべき目標入力回転数
TNi は、遅れ時間も応答時間も比較的長くなるため、
この比較的長い応答時間中にダウンシフトによって稼が
れた駆動力は、その後の長い遅れ時間によって確実に車
両を加速することができる。
【0115】以上より、本実施例は本発明のうち請求項
1及び9及び12に係る無段変速機の制御装置を実施化
したものであり、前記スロットル開度センサ51及び図
3の演算処理のステップS1が本発明の無段変速機の制
御装置のスロットル開度検出手段を構成し、以下同様
に、前記車速センサ52及び図3の演算処理のステップ
S1が車速検出手段を構成し、前記図23の演算処理の
ステップS20が第1目標入力回転数設定手段を構成
し、前記図23の演算処理のステップS30が第2目標
入力回転数設定手段を構成し、前記図23の演算処理の
ステップS40及びステップS50が第3目標入力回転
数設定手段を構成し、前記図23の演算処理を含む図3
の演算処理及び図2に示すコントロールユニットCUが
変速比制御手段を構成する。
【0116】次に、本発明の無段変速機の制御装置の第
9実施例を説明する。本実施例の無段変速機の制御装置
は、前記図3の演算処理のステップS2で実行されるマ
イナプログラムが、前記第5実施例の図16のフローチ
ャートに示すものから図25のフローチャートに示すも
のに変更されている点を除いて、その他の車両及び無段
変速機の制御装置の構成は当該第5実施例と同様又はほ
ぼ同様であるために、この図25の演算処理についての
み説明する。また、このマイナプログラムでは、前記第
7実施例の図21のマイナプログラムにおけるステップ
S27f,S28fが、図25のマイナプログラムでは
夫々ステップS27h,S28hに変更された他は、当
該第7実施例の図21のマイナプログラムの各ステップ
と全く同様であるから、ここでは変更されたステップに
ついてのみ説明する。
【0117】このマイナプログラムでは、前記ステップ
S26からステップS27hに移行して、前記第5実施
例と同様に車両加減速度V' SPを算出する。次いで、ス
テップS28hに移行して、前記ステップS27hで算
出設定された車両加減速度V' SPを変数として、後述す
る図26の制御マップに従って制御周期Tを算出設定し
てから、前記ステップS29に移行する。
【0118】次に、前記図25のステップS28hで検
索される図26の制御マップについて説明する。この制
御マップでは、横軸に設定された車両加減速度V' SP
変数として制御周期Tを検索できるようにしてあり、車
両加減速度V' SPが負値の所定値V' SP0 以下の領域で
は制御手記Tが前記所定サンプリング周期ΔT程度の所
定値T01に設定され、一方、車両加減速度V' SPが正値
の所定値V' SP1 以上の領域では制御周期Tは比較的大
きな所定値T2 に設定され、車両加減速度V' SPが前記
負値の所定値V' SP0 から正値の所定値V' SP1 までは
前記所定値T01から所定値T2 までリニアに増加するよ
うに設定されている。従って、前述のように前記第5実
施例の遅れ長さ重み係数αの変更設定と制御周期Tの変
更設定とは実質的に等価であり、且つこの制御マップで
設定される制御周期Tが前記第5実施例の図17aの制
御マップで設定される重み係数αと同様に変更設定され
ることから、本実施例で実行される前記図3及び図25
の変速比制御のための演算処理によれば、例えば登坂路
走行中に大きな加速力を期待して運転者がアクセルペダ
ルを大きく且つ速く踏込むと、その踏込み開始以前に図
25の演算処理のステップS27hで算出設定される車
両加減速度V' SPは負値となるから、同ステップS28
hで前記図26の制御マップから検索設定される制御周
期Tは比較的小さな値或いは前記所定値T01となり、無
段変速機で達成すべき目標入力回転数TNi は比較的短
時間に速やかに大きく立上って速やかにダウンシフト
し、その結果、車両は必要にして十分な駆動力を得て加
速することができる。
【0119】一方、例えば降坂路走行中にエンジンブレ
ーキ力による減速力を期待して運転者がアクセルペダル
を踏戻すと、その踏戻し開始以前から図25の演算処理
のステップS27hで算出設定される車両加速度V' SP
は正値となるから、同ステップS28hで前記図26の
制御マップで検索設定される制御周期Tは比較的大きな
値となり、無段変速機で達成すべき目標入力回転数TN
i は、応答時間が長く且つ遅れ時間も長くなるように緩
やかに減少することになるから、アップシフトのタイミ
ングとその変速速度を遅らせて、エンジンブレーキ力に
よる減速力で車両を確実に減速させることができる。
【0120】以上より、本実施例は本発明のうち請求項
1及び9及び13に係る無段変速機の制御装置を実施化
したものであり、前記スロットル開度センサ51及び図
3の演算処理のステップS1が本発明の無段変速機の制
御装置のスロットル開度検出手段を構成し、以下同様
に、前記車速センサ52及び図3の演算処理のステップ
S1が車速検出手段を構成し、図25の演算処理のステ
ップS21dが車両加減速度検出手段を構成し、前記図
25の演算処理のステップS20が第1目標入力回転数
設定手段を構成し、前記図25の演算処理のステップS
30が第2目標入力回転数設定手段を構成し、前記図2
5の演算処理のステップS40及びステップS50が第
3目標入力回転数設定手段を構成し、前記図25の演算
処理を含む図3の演算処理及び図2に示すコントロール
ユニットCUが変速比制御手段を構成する。
【0121】なお、上記各実施例はトロイダル式無段変
速機を基体としたものであるが、本発明はこれ以外のベ
ルト式無段変速機などにも広く展開可能であることは言
うまでもない。また、前記各実施例では、変速比制御コ
ントローラをマイクロコンピュータで構築したものにつ
いてのみ詳述したが、これに限定されるものではなく、
演算回路等の電子回路を組み合わせて構成してもよいこ
とは言うまでもない。
【0122】
【発明の効果】以上説明したように本発明の無段変速機
の制御装置によれば、無段変速機で達成すべき目標入力
回転数としての第3目標入力回転数は、スロットル開度
変化にリニアな第1目標入力回転数と遅れ系の現在の第
2目標入力回転数との反映比率,即ち応答時間を適切に
設定することにより、或いは前記第2目標入力回転数を
設定する際の重み係数や時定数等で表される遅れ時間を
適切に設定することにより、車両の走行状態や運転者の
加減速感の期待度に応じた無段変速機の目標入力回転
数,即ち変速比を達成することができるから、エンジン
の回転数だけが急激に増減したり、エンジンの回転数が
ほぼ一定で車速だけが増減速したりすることなく、良好
な車両加減速度を達成することが可能となる。
【0123】また、加重平均によって得られる第2目標
入力回転数は、複雑な処理を行うことなく、第1目標入
力回転数に漸近する1次遅れの特性を得ることができ
る。また、スロットル開度にリニアな第1目標入力回転
数の応答特性と、第2目標入力回転数の遅れ特性とを併
せ持った第3目標入力回転数を無段変速機で達成すべき
目標入力回転数として設定することができるから、定速
又はほぼ定速走行状態から急加減速への移行時初期に
は、変速速度を大きくして駆動力を得られる状態とし、
その後に変速速度を小さくして良好な車両加減速度を達
成することができる。
【0124】また、前記第2目標入力回転数の遅れ時間
を可変として当該第2目標入力回転数の1次遅れ特性を
変化させることができ、またこれに合わせて前記第3目
標入力回転数の過渡変化時の初期値を可変として当該第
3目標入力回転数,即ち無段変速機で達成すべき目標入
力回転数の応答特性を変化させることができる。そし
て、前記スロットル開速度やスロットル開加速度が大き
い場合には運転者が大きな加速度を期待しているとし
て、加速度変化までの遅れ時間を長くして変速比を大き
くすることにより当該遅れ後の車両加速度が大きくなる
ようにすることができ、或いは前記スロットル開速度や
スロットル開加速度が小さい場合には運転者は大きい必
要はないが速やかで鋭敏な加速度を期待しているとし
て、前記遅れ時間を短縮して応答性のよい車両加速度が
発生するようにすることができる。
【0125】また、車速が或る程度以上大きい場合に
は、アクセルペダルの踏増しから車両加速度変化までの
遅れ時間を長くして変速比を大きくすることにより遅れ
後に大きな加速度を得る必要がないから、前記加速度変
化までの遅れ時間を短縮して応答性を向上することがで
きる。また、車両加減速度が減速方向に大きい場合には
車両が登坂路を走行しているとして、スロットル開度変
化に対する目標入力回転数変化の遅れ時間を短くし、運
転者がアクセルペダルを踏込んで加速力を期待したとき
に無段変速機で達成すべき目標入力回転数が速やかに増
加してダウンシフトが実行され、要求される大きな加速
力を達成する駆動力が速やかに得られるようにすること
ができ、或いは車両加減速度が増速方向に大きい場合に
は車両が降坂路を走行しているとして、スロットル開度
変化に対する目標入力回転数変化の遅れ時間を長くし、
運転者がアクセルペダルを踏戻して減速力を期待したと
きに、無段変速機で達成すべき目標入力回転数の減少を
遅らせてアップシフトのタイミングを遅らせ、エンジン
ブレーキ力による効果的な減速力が得られるようにする
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無段変速機の制御装置の基本構成図で
ある。
【図2】無段変速機の一例を示す構成図である。
【図3】図2のコントロールユニットで実行される無段
変速機の変速比制御の演算処理の一例を示すフローチャ
ートである。
【図4】図3の演算処理で目標入力回転数を得るために
実行されるマイナプログラムの第1実施例を示すフロー
チャートである。
【図5】図4の演算処理で検索される変速比制御マップ
の一例を示す説明図である。
【図6】目標入力回転数に対する車両加速度の一例を示
す説明図である。
【図7】目標入力回転数に対する車両加速度の他例を示
す説明図である。
【図8】目標入力回転数に対する車両加速度のその他の
例を示す説明図である。
【図9】図3の演算処理で目標入力回転数を得るために
実行されるマイナプログラムの第2実施例を示すフロー
チャートである。
【図10】図9の演算処理で検索される制御マップの説
明図である。
【図11】図3の演算処理で目標入力回転数を得るため
に実行されるマイナプログラムの第3実施例を示すフロ
ーチャートである。
【図12】図11の演算処理で検索される制御マップの
説明図である。
【図13】図3の演算処理で目標入力回転数を得るため
に実行されるマイナプログラムの第4実施例を示すフロ
ーチャートである。
【図14】図13の演算処理で検索される制御マップの
説明図である。
【図15】図14の制御マップを構成する原理説明図で
ある。
【図16】図3の演算処理で目標入力回転数を得るため
に実行されるマイナプログラムの第5実施例を示すフロ
ーチャートである。
【図17】図16の演算処理で検索される制御マップの
説明図である。
【図18】図3の演算処理で目標入力回転数を得るため
に実行されるマイナプログラムの第6実施例を示すフロ
ーチャートである。
【図19】図18の演算処理で検索される制御マップの
説明図である。
【図20】図19の制御マップを構成する原理説明図で
ある。
【図21】図3の演算処理で目標入力回転数を得るため
に実行されるマイナプログラムの第7実施例を示すフロ
ーチャートである。
【図22】図21の演算処理で検索される制御マップの
説明図である。
【図23】図3の演算処理で目標入力回転数を得るため
に実行されるマイナプログラムの第8実施例を示すフロ
ーチャートである。
【図24】図23の演算処理で検索される制御マップの
説明図である。
【図25】図3の演算処理で目標入力回転数を得るため
に実行されるマイナプログラムの第9実施例を示すフロ
ーチャートである。
【図26】図25の演算処理で検索される制御マップの
説明図である。
【符号の説明】
10はエンジン 12はフルードカップリング 13は回転軸 14は駆動軸 15は前後進切換機構 20は歯車減速機構 22は差動装置 42は入力ディスク 43は出力ディスク 44A,44Bは伝動ローラ 45A,45Bはトラニオン 46a〜46dは流体圧シリンダ 47は電磁方向切換弁 51はスロットル開度センサ 52は車速センサ 53は傾転角センサ 54は変位量センサ 55は入力回転数センサ 60はマイクロコンピュータ 61L,61Rは駆動回路 CUはコントロールユニット

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スロットルバルブの開度を検出するスロ
    ットル開度検出手段と、車速を検出する車速検出手段
    と、無段変速機への目標とする入力回転数を設定し、設
    定された目標入力回転数を達成すべく当該無段変速機の
    変速比を制御する変速比制御手段とを備えた無段変速機
    の制御装置において、前記変速比制御手段は、予めスロ
    ットル開度及び車速を変数として車両に搭載された無段
    変速機への目標とする入力回転数を設定可能な変速相関
    を持ち、少なくとも当該変速相関に基づいて前記スロッ
    トル開度検出手段で検出されたスロットル開度検出値及
    び前記車速検出手段で検出された車速検出値から、前記
    無段変速機への第1目標入力回転数を設定する第1目標
    入力回転数設定手段と、前記第1目標入力回転数と過去
    の第2目標入力回転数とから現在の第2目標入力回転数
    を設定する第2目標回転数設定手段と、前記第1目標入
    力回転数と現在の第2目標入力回転数とから、前記無段
    変速機で達成すべき目標入力回転数としての第3目標入
    力回転数を設定する第3目標入力回転数設定手段とを備
    えたことを特徴とする無段変速機の制御装置。
  2. 【請求項2】 前記第2目標入力回転数設定手段は、前
    記第1目標入力回転数と所定時間前の第2目標入力回転
    数との加重平均から前記現在の第2目標入力回転数を設
    定することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の
    制御装置。
  3. 【請求項3】 前記第3目標入力回転数設定手段は、前
    記第1目標入力回転数と現在の第2目標入力回転数との
    加重平均から前記第3目標入力回転数を設定することを
    特徴とする請求項1又は2に記載の無段変速機の制御装
    置。
  4. 【請求項4】 前記加重平均の重み係数が可変であるこ
    とを特徴とする請求項2又は3に記載の無段変速機の制
    御装置。
  5. 【請求項5】 前記スロットル開度検出手段で検出され
    たスロットル開度検出値の変化率からスロットル開速度
    を検出するスロットル開速度検出手段を備え、前記第2
    又は第3目標入力回転数設定手段は、前記スロットル開
    速度検出手段で検出されたスロットル開速度検出値に基
    づいて、前記加重平均の重み係数を設定することを特徴
    とする請求項4に記載の無段変速機の制御装置。
  6. 【請求項6】 前記スロットル開速度検出手段で検出さ
    れたスロットル開速度検出値の変化率からスロットル開
    加速度を検出するスロットル開加速度検出手段を備え、
    前記第2又は第3目標入力回転数設定手段は、前記スロ
    ットル開速度検出手段で検出されたスロットル開速度検
    出値及びスロットル開加速度検出手段で検出されたスロ
    ットル開加速度検出値に基づいて、前記加重平均の重み
    係数を設定することを特徴とする請求項5に記載の無段
    変速機の制御装置。
  7. 【請求項7】 前記第2又は第3目標入力回転数設定手
    段は、前記車速検出手段で検出された車速検出値に基づ
    いて、前記加重平均の重み係数を設定することを特徴と
    する請求項4乃至6の何れかに記載の無段変速機の制御
    装置。
  8. 【請求項8】 前記車速検出手段で検出された車速検出
    値の変化率から車両加速度を検出する車両加速度検出手
    段を備え、前記第2又は第3目標入力回転数設定手段
    は、前記車両加速度検出手段で検出された車両加速度検
    出値に基づいて、前記加重平均の重み係数を設定するこ
    とを特徴とする請求項4乃至7の何れかに記載の無段変
    速機の制御装置。
  9. 【請求項9】 前記変速比制御手段は、前記無段変速機
    で達成すべき目標入力回転数の設定周期を可変としたこ
    とを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の制御装
    置。
  10. 【請求項10】 前記スロットル開度検出手段で検出さ
    れたスロットル開度検出値の変化率からスロットル開速
    度を検出するスロットル開速度検出手段を備え、前記変
    速比制御手段は、前記スロットル開速度検出手段で検出
    されたスロットル開速度検出値に基づいて、前記無段変
    速機で達成すべき目標入力回転数の設定周期を設定する
    ことを特徴とする請求項9に記載の無段変速機の制御装
    置。
  11. 【請求項11】 前記スロットル開速度検出手段で検出
    されたスロットル開速度検出値の変化率からスロットル
    開加速度を検出するスロットル開加速度検出手段を備
    え、前記変速比制御手段は、前記スロットル開速度検出
    手段で検出されたスロットル開速度検出値及びスロット
    ル開加速度検出手段で検出されたスロットル開加速度検
    出値に基づいて、前記無段変速機で達成すべき目標入力
    回転数の設定周期を設定することを特徴とする請求項1
    0に記載の無段変速機の制御装置。
  12. 【請求項12】 前記変速比制御手段は、前記車速検出
    手段で検出された車速検出値に基づいて、前記無段変速
    機で達成すべき目標入力回転数の設定周期を設定するこ
    とを特徴とする請求項9乃至11の何れかに記載の無段
    変速機の制御装置。
  13. 【請求項13】 前記車速検出手段で検出された車速検
    出値の変化率から車両加速度を検出する車両加速度検出
    手段を備え、前記変速比制御手段は、前記車両加速度検
    出手段で検出された車両加速度検出値に基づいて、前記
    無段変速機で達成すべき目標入力回転数の設定周期を設
    定することを特徴とする請求項9乃至12の何れかに記
    載の無段変速機の制御装置。
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Cited By (2)

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KR100345113B1 (ko) * 1999-12-28 2002-07-24 현대자동차주식회사 차량용 벨트식 무단 변속기의 변속 제어 방법
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