JPH083136B2 - 塗装焼付硬化性高張力薄鋼板とその製造法 - Google Patents

塗装焼付硬化性高張力薄鋼板とその製造法

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JPH083136B2
JPH083136B2 JP3095529A JP9552991A JPH083136B2 JP H083136 B2 JPH083136 B2 JP H083136B2 JP 3095529 A JP3095529 A JP 3095529A JP 9552991 A JP9552991 A JP 9552991A JP H083136 B2 JPH083136 B2 JP H083136B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高強度でかつプレス成
形にすぐれた高張力薄鋼板、特に引張強さ38kgf/mm2
上、降伏応力 (引張強さ−12kgf/mm2)以下、r値1.5 以
上でかつ塗装焼付硬化性を有する高張力薄鋼板とその製
造法に関する。本発明にかかる高張力薄鋼板は、冷延鋼
板としてまたは溶融亜鉛めっき鋼板として適宜表面処理
やプレス加工をした後、例えば自動車、家電製品、鋼構
造物用に使用されるのであり、特にそれらに要求される
造形性と強度を付与すると同時に、塗装焼付時に更に歪
時効硬化する特性 (焼付硬化性) を付与することが可能
である。その結果、今日特に要求されているそれらの製
品の薄肉化すなわち軽量化を効果的に実現するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】焼付硬化性高張力冷延鋼板、すなわち製
鋼段階で十分に脱炭処理をして極低炭素としてから微量
のTiおよびNbを添加した極低炭素TiあるいはTi−Nb添加
鋼をベースにSi、Mn、CrやPを添加して強度を上げた焼
付硬化性高張力冷延鋼板については幾つかの提案がすで
にある。例えば、特公平2−1217号には、極低炭素Tiお
よびTi−Nb添加鋼に多量のPおよびSiを添加した冷延鋼
板が開示されている。しかし、この場合、Mnは0.50%以
下しか含まれていないこともあり、得られるr値は1.6
〜1.9 が限界になっている。
【0003】また特公平2−4657号には、極低炭素鋼に
微量のNb、Ti、V、Zr、Wと多量のPを単独添加した例
が開示されている。この場合は高いr値が得られるが、
十分に大きな焼付硬化量が得られ難い。特開昭63−2473
38号には、極低炭素Ti添加鋼にPとSiを添加する例が開
示されているが、強度のレベルは必ずしも高くない。
【0004】さらに、特公平2−1217号および特開昭63
−247338号には、焼付硬化性を適正な範囲に制御するた
めに、TiあるいはTiとNbの量をN、C、Sとの関連で制
御することが提案されている。しかし、現実の製鋼工程
において、4〜5種の微量な成分元素を同時に制御する
ことは実質的に不可能に近い。前述の特公平2−4657号
においては、その目的が遅時効性鋼板の製造法を提供す
ることであるため、焼付硬化性の制御法については何一
つ示唆することがない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ここに、本発明の一般
的目的は、引張強さが38kgf/mm2 以上の高張力冷延鋼板
において低い降伏応力と高いr値を有し成形性が軟鋼板
並に良好でかつ焼付硬化性を具備した冷延鋼板およびそ
れを通常の連続焼鈍でかつ低コストの合金添加で製造す
る方法を提供することである。本発明の具体的目的は、
引張強さが38kgf/mm2 以上の高張力冷延鋼板において、
降伏応力が (引張強さ−12kgf/mm2)以下、r値1.8 以上
かつ塗装焼付硬化性を有する高張力薄鋼板およびその製
造法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる目
的達成のため、前述の極低炭素Ti添加鋼に着目して鋭意
研究を続けてきた。ここに、本発明者らは、極低炭素微
量Ti添加鋼をベースに適量のMnとPを共存させると、冷
間圧延、焼鈍後の引張強さが上昇するだけでなく同時に
r値が著しく向上し、さらに塗装焼付硬化性を発現させ
るに足りる少量の固溶Cが残存していてもr値が高くな
ることを新らたに見い出し、本発明を完成した。
【0007】このような優れた作用効果が発揮される冶
金学的原因は不明ではあるが、Ti、Mn、P、SとCの間
の相互作用に起因するものと考えられ、例えば、MnとP
が共存していない鋼においてはTiCとMnSがそれぞれ安
定な析出物として形成されているため、Ti≧4(C+12/1
4 N) のTiが添加されていれば固溶Cは残存しないが、
Mn:0.50 %超、3.0 %以下、P:0.04 〜0.12%と多量の
MnとPが共存しているとTiCの一部が分解され、鋼中に
はTiC、MnS、FeTiP、TiS、MnPなどの析出物が形成
され、固溶状態のCが存在することになると思われる。
このような状態で再結晶焼鈍させるとこの微量の固溶C
のためr値に好ましい再結晶集合組織が発達し、r値が
著しく向上する上にそのような固溶Cは焼鈍後の鋼板中
にも残存し、焼付硬化性を発揮することも可能となり、
かつ結晶粒界を強化し、2次加工脆性は完全に防止され
る。
【0008】また、Bの添加により熱延板組織が細粒化
し、焼鈍板のr値が向上することをも見い出した。そこ
で、上記の知見をベースに安価な強化元素であるSiを適
量添加したところ上記の効果は失われず容易に高強度が
得られる上、Mn量とP量が上記範囲にある鋼ではSiによ
る酸化の問題が軽減され冷延鋼板や亜鉛めっき鋼板には
有利なことも同時に見い出された。
【0009】ここに、本発明の要旨とするところは、重
量%で、C:0.0010 〜0.0025%、 N:0.001〜0.008
%、sol.Al:0.08 %以下、 S:0.010%以下、Ti:0.0
25%以下、かつ48/14(N−0.0005) ≦Ti≦48/14・N+
0.003 を含み、さらにMn:0.5%超え、3.0 %以下、P:
0.04〜0.15%、かつP≦Mn/10 、および残部Feおよび不
可避不純物より成る鋼組成を有する、成形性の良好な塗
装焼付硬化性高張力薄鋼板である。
【0010】本発明の好適態様によれば、上記鋼組成
は、さらに、B:0.0005 〜0.0015%を含むものであって
もよいさらに別の好適態様によれば、上記鋼組成は、S
i:0.01 〜1.2 %を含むものであってもよい。本発明は
別の面からは、上記鋼組成を有する鋼を熱間圧延し、熱
間圧延後の巻取り温度を常温〜700 ℃とし、次いで冷間
加工そして再結晶焼鈍をすることを特徴とする成形性の
良好な塗装焼付硬化性高張力鋼板の製造法である。
【0011】
【作用】次に、本発明において鋼組成および製造条件を
上述のように限定する理由についてさらに説明する。な
お、本明細書において特にことわりがない限り、「%」
は「重量%」である。
【0012】C:Cは鋼中に必然的に含有される元素で
ある。前述の塗装焼付硬化性を確保するのに必要な量
は、0.0010%であるため、下限を0.0010%にした。しか
し、C量が0.0025%を超えて多くなると塗装焼付硬化量
が大きくなりすぎ、常温でも歪時効が起こり、プレス時
にストレッチャーストレインが発生する。したがって、
本発明にあってC量の上限を0.0025%とした。
【0013】Si:Siは安価に鋼板の強度を上げることが
できる元素であり、Si添加によって強度を上げた分だ
け、脆化を起こし易いPの添加量を低減できる利点があ
る。したがって、本発明においては、所望により、0.01
%以上添加してもよい。一方、本発明のようにMnとPを
多量に含む鋼においてはSiの添加による表面酸化の促進
は軽減され、従来考えているより多量に添加できる。し
かし、1.2 %を超えると酸洗性が悪くなったり、表面酸
化もはなはだしくなるので、Siを添加する場合にあって
も、その量は1.2 %以下とした。
【0014】N:Nは少ない方が望ましい。しかし、そ
の低減にはコストがかかるため、下限を0.001 %とし
た。一方、余り多いと多量のTi添加が必要なことから上
限を0.008%とした。
【0015】sol.Al:Alは脱酸調整用に添加される。添
加しなくてもよいがその時はTiの添加歩留が低下する。
sol.Alが多いとコストアップになるので上限を0.08%と
した。
【0016】S:本発明においてはS含有量は特に低下
するのが望ましい。S量が0.010 %を超えると多量のMn
Sが形成され、これが加工性を劣化させる上に前述のMn
Pが形成されにくくなる。
【0017】Ti:Ti%は
【0018】
【数1】
【0019】で決められる。
【0020】これは、本発明の主旨に従えばNをTiNと
して固着するに足りる必要かつ十分なTi量を添加すべき
であるが、多少のNが残ること、あるいは多少のTiが残
ることも許容することを示している。またTiは0.025 %
超添加するとコストアップをもたらすばかりか、前述の
固溶Cが残りにくくなるため0.025 %以下に限定した。
【0021】Mn: Mnは、MnS、MnPを形成させるために必要であ
る。0.5%以下ではその形成が不十分で高いr値が得
られない。一方、3.0%を超えるとMnPが形成され
過ぎ、却ってr値が低下する。したがって、0.5
超、3.0%以下に限定した。好ましくは、0.90〜
3.0%、より好ましくは1.2〜2.0%である。
【0022】P:PもMnP、TiPを形成させるために必
要である。特にTiCよりTiをTiP として捕捉してしま
い、Cを固溶させる作用がある。0.04%未満ではそのよ
うな効果が不足で高いr値が達成できない。一方、0.15
%を超えると鋼中でのP偏析が多くなり、スラブの割れ
などが生じやすくなる。したがって、0.04〜0.15%、好
ましくは0.04〜0.12%に限定した。さらに、PはMn/10
以下に制限する。Mn/10 超ではMn量が少なすぎ、P偏析
が顕著になる。
【0023】B:Bは粒界に偏析し粒界を強化する作用
を有し、熱間圧延時にオーステナイトからフェライトへ
の変態を抑制し、結果として熱延板結晶粒径を細かくす
る。これは深絞り性 (r値) に好ましい再結晶集合組織
の発達を促進する。また少量のBの複合添加は、それに
よる粒界強化作用とCが粒界に偏析し粒界を強化する作
用とが相乗的に作用してより効果的に2次加工脆性が防
止できる。
【0024】なお、上述の塗装焼付硬化性高張力薄鋼板
は従来の製造方法によって製造してもよいが、より好ま
しくは、熱間圧延後の巻取り温度を常温〜700 ℃とし、
次いで冷間加工そして再結晶焼鈍することによってさら
に成形性を改善できる。次に、本発明によるかかる好適
製造法における条件限定の理由について述べる。
【0025】熱間圧延、冷間圧延、焼鈍: これまで熱間圧延終了後の巻取温度は通常550〜70
0℃であり、コイル位置による変動を入れて500〜7
50℃である。本発明においてはこのような通常の巻取
条件においても高r値となり効果を発揮できるが、本発
明にあってはさらに巻取温度を低温にするとr値が一層
向上する。すなわち、巻取温度を常温〜700℃、好ま
しくは常温〜650℃の範囲の温度とすることにより、
r値の改善は一層顕著となる。これは、低温巻取により
上述のMnP析出物がr値を上げるのに望ましい大きさ
になるためと推測される。しかし、700℃超ではその
効果が小さく通常の巻取条件の場合と変わりない。45
0℃以下ではr値の向上が一層顕著となる。一方、常温
未満では巻取ることができないので、下限を常温とし
た。
【0026】ここに、「常温」とは一般には室温を云
い、25℃程度であるが、本発明の場合はそれにのみ限定
されず、特別の冷却手段を用いない周囲温度のことであ
る。
【0027】熱間圧延後、冷間圧延および焼鈍が行われ
るが、この場合にあっても通常の冷延鋼板や表面処理鋼
板の製造法が適用される。本発明にあってそれらも特定
のものに制限されず、慣用の条件を利用できる。なお、
焼鈍は連続焼鈍が望ましい。その場合の焼鈍温度は700
〜920 ℃が好ましい。連続溶融亜鉛めっきラインで連続
焼鈍する場合も同様である。バッチ焼鈍の場合は700 〜
750 ℃で行うのが好ましい。この後適当量の調質圧延を
行って製造される。
【0028】かくして、本発明によれば、引張強さが38
kgf/mm2以上、降伏応力は (引張強さ−12kgf/mm2)以
下、r値1.5 以上でかつ焼付硬化性を有する高張力薄鋼
板が容易に製造される。次に、実施例によって本発明を
詳述する。
【0029】実施例 表1に示す成分組成の鋼を溶製し、スラブとなした後、
1100℃にて1時間加熱してから直ちに熱間圧延を開始
し、仕上温度880 ℃にて3.2 mm厚の熱延鋼板に仕上げ
た。巻取温度は、650 ℃であった。酸洗後、これらを0.
8 mm厚まで冷間圧延し、次いで、昇温速度80℃/sec、均
熱820 ℃×60秒、冷却速度40℃/secの連続焼鈍により再
結晶焼鈍を行った。その後、伸び率0.8 %の調質圧延を
行い、それよりJIS 5 号引張試験片を採取し引張試験を
行った。また、焼付硬化試験を行いそのときの硬化量を
求めた。結果は表2にまとめて示す。
【0030】ここに、「焼付硬化量」は2%の予歪を加
えた後、170℃、20minの時効処理をし、次いで
再度引張を行いこの時の降伏応力の上昇量から求めた。
鋼板中に固溶炭素量が多いとこの焼付硬化量が高い値を
示すことが分かっている。本発明にかかる鋼板は、いず
れも引張強さが40kgf/mm以上でかつ降伏応力
が(引張強さ−12kgf/mm)以下であり、また
強度の割に伸びがよく、r値も1.5以上で非常に高い
ことが分かる。
【0031】一方、表2からも分かるように、CとTiの
関係において、鋼No.1はCが少なすぎ、また鋼No.12 は
Tiが多すぎて、焼付硬化量が小さい。一方、鋼No.3はC
が多すぎ、また鋼No.10 はTiが少な過ぎて、焼付硬化量
が大き過ぎる。そのためこれらの鋼は、本発明の目的で
ある常温で実質的に非時効性の焼付硬化性鋼板として不
向きである。また、Mn、Pに関しては、鋼No.6のように
Mnが多すぎるとr値が低くなり、鋼No.7のようにPが少
なすぎるとr値が低くなり、鋼No.9のようにPが多すぎ
ると伸びが小さくなり、絞り加工に向かない。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】このように、本発明によれば、成形性に
すぐれた高張力鋼が低コストの製造法によって得られる
のであり、コストの低減そして製造ラインの簡素化が強
く求められている今日的状況からはその効果は著しいも
のと云わざるを得ない。特に、本発明による鋼板は自動
車のフレーム、その他、主要構造部材類に使用した場
合、車体重量の軽減に大きく寄与するものであり、その
産業上の意義、利益は大きい。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.0010 〜0.0025%、 N:
    0.001〜0.008 %、sol.Al:0.08 %以下、 S:0.010
    %以下、Ti:0.025%以下、かつ48/14(N−0.0005) ≦Ti
    ≦48/14・N+0.003 を含み、さらにMn:0.5%超え、3.0
    %以下、P:0.04 〜0.15%、かつP≦Mn/10 、および
    残部Feおよび不可避不純物より成る鋼組成を有する、成
    形性の良好な塗装焼付硬化性高張力薄鋼板。
  2. 【請求項2】 さらに、B:0.0005 〜0.0015%を含む請
    求項1記載の鋼板。
  3. 【請求項3】 さらに、Si:0.01 〜1.2 %を含む請求項
    1または2記載の鋼板。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載の鋼
    組成を有する鋼を熱間圧延し、熱間圧延後の巻取り温度
    を常温〜700 ℃とし、次いで冷間加工そして再結晶焼鈍
    をすることを特徴とする成形性の良好な塗装焼付硬化性
    高張力鋼板の製造法。
JP3095529A 1991-04-25 1991-04-25 塗装焼付硬化性高張力薄鋼板とその製造法 Expired - Lifetime JPH083136B2 (ja)

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JP2530338B2 (ja) * 1987-08-31 1996-09-04 住友金属工業株式会社 成形性の良好な高張力冷延鋼板とその製造法

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