JP3544441B2 - 深絞り性の優れた高強度熱延鋼板及びめっき鋼板とその製造方法 - Google Patents

深絞り性の優れた高強度熱延鋼板及びめっき鋼板とその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は加工性、特に深絞り性の優れた高強度熱延鋼板及びめっき鋼板と、その製造方法に関するものであり、特に、冷延鋼板に代わる薄手熱延鋼板及び上記薄手熱延鋼板を原板とするめっき鋼板と、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
深絞り性の優れた熱延鋼板をフェライト域での仕上熱延により製造しようとする技術は多数開示されている。例えば、特開平4−210427号公報、特開平4−263021号公報及び特開平4−263022号公報がある。いずれも粗バーを接続して一定張力下で仕上圧延を実施することが特徴であり、溶融亜鉛めっき鋼板に深絞り性を付与するものである。
【0003】
これらは、いずれも鋼成分としては極低炭素鋼にTiやNbを添加したものであるが、高強度鋼板についての開示は全くない。また、仕上圧延前の固溶炭素量に対する配慮も全くなされていない。フェライト域での圧延を考慮すれば、圧延中の固溶炭素の有無は非常に重要な因子である。また、巻取温度に対する規定もないため、本発明において開示される技術とは基本的に異なるものである。
【0004】
また上記公知技術は、仕上圧延時に潤滑を施して鋼板表層部の剪断ひずみによる{110}方位の形成を抑制することが特徴であり、集合組織的に最も影響の大きい全厚の1/8部での方位を制御し、この部位の(111)方位の形成を促進することを特徴とする本発明とは全く異なるものである。
【0005】
また、高強度鋼板については特開平4−224635号公報がある。これは炭素量が本発明に比べて多く、深絞り性を向上させることを目的とはしていないため、本発明が意図するものとは根本的に異なるものである。すなわち、単にコイル内における材質均質性を改善することを目的としており、本発明とは本質的に異なるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、極低炭素鋼を用い、冷間圧延を実施することなく、1.5を超えるr値と36%を超える延性を有することを特徴とする、深絞り性の優れた高強度熱延鋼板及びその熱延鋼板を原板とする高強度めっき鋼板とその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の実情に鑑み、極低炭素鋼による高強度熱延鋼板の深絞り性に対する成分、仕上圧延及び巻取条件の影響を詳細に検討した結果、以下のことを知見した。すなわち、
(1)Ar変態点以下の温度域で仕上圧延を行うとともに、低温巻取を実施することで、従来の冷間圧延を実施することなく、それに続く連続焼鈍や溶融亜鉛めっき処理による再結晶焼鈍を行うことにより、熱延まま材で優れた深絞り性を有する高強度鋼板が得られる。また、板厚が薄くなると、従来の方法では特に表層付近は変態点以下の温度域で圧延されることになるため、特性が著しく劣化する。しかし、仕上圧延をAr変態点以下の温度域で実施することによりこの問題が解決され、板厚方向に均一な組織が得られる。
【0008】
(2)上記特性は仕上圧延前に、特定の温度域で保熱を施すことによりさらに向上する。これは仕上圧延前にTi及びNbの炭硫化物の析出が十分になされると同時に粗大化が促進され、その結果、仕上圧延時における固溶炭素量が極めて少なくなり、再結晶焼鈍中の粒成長が助長されるようになるためと推察される。この知見を見いだした実験結果を図1に示す。
【0009】
すなわち、Si:0.21%、Mn:0.35%、P:0.052%いずれも重量%)を含有し、C,S,Ti及びNb量を種々の量含む鋼について、Ar変態点以下の温度域で仕上圧延を実施し、そのまま室温まで冷却した。その後、840℃で再結晶焼鈍を実施した薄鋼板のr値と成分との関係を調査した結果、前述したように、仕上圧延前の固溶炭素量との間に良い相関があることを見いだした。
【0010】
すなわち、仕上圧延前の固溶炭素量、つまり、熱延板でTiあるいはNbの炭化物として析出する炭素量が7ppm 以下となる場合には、熱延後巻取った後に連続焼鈍あるいは溶融亜鉛めっきを施しても1.5を超えるr値が得られることがわかった。なお、仕上圧延前には、TiあるいはNbの炭硫化物として炭素は析出する。
【0011】
(3)中心層(center)と全厚の1/8部(1/8t)における面強度比が小さければ小さいほど板厚方向の集合組織は均一となる。これは例えば潤滑を施しながら仕上圧延を行うことが有効であり、この場合、上記特性はさらに向上する。その原因は潤滑により圧延中に導入される板厚方向のひずみが均一となり、板厚方向の組織の均一性がさらに良好となるためと考えられる。この知見を見いだした実験結果を図2に示す。
すなわち、0.0021%C−0.5%Si−0.3%Mn−0.062%P−0.010%S−0.035%Al−0.002%N(いずれも重量%)からなる鋼を種々の圧延条件で1mmの熱延板とし、(222)center/(222)1/8t≦5なる関係が満足されると再結晶処理後のr値は1.5を超え、深絞り性が飛躍的に向上する。
【0012】
以上の知見をもとに深絞り性の優れた高強度熱延鋼板の製造技術を確立し、さらに、上記鋼板を原板とする深絞り性に優れた高強度めっき鋼板の製造技術を確立した。
【0013】
なお、特開平4−210427号公報、特開平4−263021号公報及び特開平4−263022号号公報には、仕上圧延前の固溶炭素量に対する配慮は全くない。仕上圧延前の固溶炭素量に対する配慮は、本発明において非常に重要な因子である。特にフェライト域での圧延を考慮すれば、この点は特に材質への影響が大きいと考えられる。また、巻取温度に対する規定もないため、本発明において開示される技術とは基本的に異なるものである。
【0014】
またこれらの公知技術は、仕上圧延時に潤滑を施して鋼板表層部の剪断ひずみによる{110}方位の形成を抑制することが特徴であるから、集合組織的に最も影響の大きい全厚の1/8部での方位を制御し、この部位の(111)方位の形成を促進することを特徴とする本発明とは全く異なるものである。
【0015】
フェライト域圧延前の固溶炭素量の影響については、特にr値に及ぼす影響として「神戸製鋼技法」 VOL.39 (No.3) (1989), P.73 に示されている。すなわち、圧延前に固溶炭素量を少なくすることにより深絞り性が向上するというものである。しかし、本発明で規定する炭素量から高くはずれた成分での検討であること、また、ここでは加熱温度をフェライト域への再加熱としているため、フェライト域圧延前に制御すべき析出物も本発明とは異なる。
すなわち、本発明においては高温域から析出するTiあるいはNbの炭硫化物により、フェライト域圧延前の固溶炭素量を減ずることを特徴としたものである。
【0016】
本発明は上記知見に基づくものであって、その要旨とするところは次の通りである。
(1) 熱延後、再結晶焼鈍してなる熱延鋼板であって、重量%で、
C :0.003%以下、 Si:0.5%以下、
Mn:0.5%以下、 P :0.04〜0.15%、
S :0.005〜0.015%、 Al:0.005〜0.1%、
N :0.0035%以下を含み、さらに、
Ti及びNbのうち1種以上を合計で0.03〜0.1%含み、
残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつTiあるいはNbの炭化物として析出した炭素量が7ppm 以下であり、さらに中心層(center)と全厚の1/8部(1/8t)における面強度比(222)center/(222)1/8tが5以下であることを特徴とする深絞り性の優れた高強度熱延鋼板。
【0017】
(2)さらに重量%で、B:0.005%以下を含むことを特徴とする前項(1) 記載の深絞り性の優れた高強度熱延鋼板。
(3)さらに重量%で、Cu,Ni,Cr及びSnのうち1種または2種以上を合計で0.5%以下含むことを特徴とする前項 (1)または(2) 記載の深絞り性の優れた高強度熱延鋼板。
【0018】
(5)重量%で、
C :0.003%以下、 Si:0.5%以下、
Mn:0.5%以下、 P :0.04〜0.15%、
S :0.005〜0.015%、 Al:0.005〜0.1%、
N :0.0035%以下を含み、さらに、
Ti及びNbのうち1種以上を合計で0.03〜0.1%を含み、
残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼を連続鋳造にてスラブとした後、再加熱してから、あるいは鋳造後直ちに粗圧延を実施し、先行するシートバーに接続後、仕上圧延を、後の捲取工程以降でTiあるいはNbの炭化物として検出される仕上圧延前の固溶炭素量が7ppm以下の状態で開始して、さらにAr3 点以下、600℃以上の温度域での合計圧下率が70%以上、98%以下になるように実施し、続いて300℃以下の温度域で巻取り、続いて再結晶焼鈍し、中心層(center)と全厚の1/8部(1/8t)における面強度比(222)center/(222)1/8tを5以下とすることを特徴とする深絞り性の優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
【0019】
(6)さらに重量%で、B:0.005%以下を含むことを特徴とする前項 (5) に記載の深絞り性の優れた熱延鋼板の製造方法。
(7)さらに重量%で、Cu,Ni,Cr及びSnのうち1種または2種以上を合計で0.5%以下含むことを特徴とする前項 (5) または (6) に記載の深絞り性の優れた熱延鋼板の製造方法。
)粗圧延を終了し、シートバーを一旦コイルに巻き取ることを特徴とする前項 (5)ないし (7) のいずれか1項に記載の深絞り性の優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
)100mm以下の鋳片に鋳造後、直ちに粗圧延を実施することを特徴とする前項 (5)ないし (8) のいずれか1項に記載の深絞り性の優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
10)仕上圧延を実施する際に、少なくとも1パス以上潤滑を施しながら行うことを特徴とする前項 (5)ないし(9) のいずれか1項に記載の深絞り性の優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
11)前項 (5)ないし(10)のいずれか1項に記載の再結晶処理後の熱延鋼板に、溶融めっきあるいは電気めっきあるいは蒸着めっきを施すことを特徴とする深絞り性の優れた高強度めっき鋼板の製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
まず、この発明における成分組成の限定理由について述べる。
Cは0.003%以下としなくてはならない。これを超えて添加すると固溶炭素量が多くなり、深絞り性が劣化する。また、0.001%より低くなると脱炭コストの大幅な上昇を招くため、好ましくない。
【0021】
Siは、フェライト域熱延の温度域を高温にして、圧延時及び圧延後の再結晶を促進させるのに有効である。また、鋼を固溶強化させる元素であるため、高強度化には有効である。しかし、Siは過度に添加されると鋼を硬質化し、加工性を劣化させるばかりでなく、スケール起因の疵が発生しやすくなることから0.5%を上限とする。
【0022】
Mnは主として鋼を高強度化する場合に添加するが、過剰に添加すると硬質化して加工性が劣化する。本発明においては熱間加工性を確保するため、0.05%以上が必要である。一方、0.5%を超えて添加すると硬質化し、加工性が劣化するため、0.5%を上限とする。
【0023】
Pも主として鋼を高強度化するために添加するが、本発明においては特に重要な元素である。なぜならば、深絞り性を保持しながら強度を上昇させることができるためである。そのため、0.04%以上添加するが、過度の添加は二次加工性を大幅に劣化させるため、0.15%を上限とする。
【0024】
SはMnとの結合によりA系介在物(JIS G 0555 )を形成し、延性を劣化させるばかりでなく、過度に添加すると熱間割れを招くため0.015%を上限とする。また、0.005%より低くするには製鋼でのコストアップになるため好ましくない。
【0025】
Alは、Siと同様に再結晶の促進、鋼の固溶強化による高強度化と脱酸のために添加するが、0.005%未満ではその効果が発揮されない。一方、0.1%を超えるとコストアップになると共に、酸化物として鋼中に残って加工性を劣化させるため、上限を0.1%とする。
NはTiNとして析出するが、多量に析出すると加工性を劣化させるため0.0035%を上限とする。
【0026】
Ti及びNbは炭素及び窒素を固定するために添加する。両者の合計で0.03%未満ではその効果が発揮されず、0.1%を超えて添加すると炭窒化物を多量に鋼中に析出させることになるため、加工性が劣化する。
【0027】
Bは必要に応じて添加するが、その目的はとくにP量が多い場合、二次加工性の劣化が懸念される。それを改善するために添加するが、過剰の添加は鋼を硬質化して加工性を劣化させたり、溶接性を劣化させるため、0.005%を上限とする。
【0028】
Cu,Ni,Cr及びSnはスクラップを原料とした際に不可避的に添加されるものであるが、特に熱間での加工性の観点から合計で0.5%を上限とする。
【0029】
次に、本発明における熱間圧延条件及び巻取条件について説明する。
粗圧延を終了して先行するシートバーに接続後、直ちに仕上圧延を実施する。この時、接続前にシートバーをコイルに巻き取った後、巻き戻しながら先行する圧延材に接続してから仕上圧延を実施しても、本発明における効果を損なうものではない。さらに、巻取った後に保熱あるいは加熱を行ってもかまわない。特に前述のシートバーを巻き取った後で巻き戻すことは、圧延端の局部的な温度低下やスキッドマークによる温度低下を防止し、コイル長手方向の材質の均質化が容易となる。
【0030】
仕上圧延における圧延条件は本発明において最も重要な因子である。
まず、仕上圧延を実施する温度域についてはAr3 変態点以下とする必要がある。この温度より高いと圧延後の冷却中にγからαに変態することになり、深絞り性を向上させる集合組織が形成されないためである。また、600℃よりも低温域では圧延材の変形抵抗が大きく、圧延時の負荷が高くなりすぎるため、これを下限とする。なお、800℃以上になると圧延中に部分的に再結晶が生じ、圧延集合組織の形成が不十分となるため、好ましくはこの温度よりも低温度域で圧延を実施するのが良い。
【0031】
一方、仕上圧延での圧下率が低いと、その後の再結晶処理後に得られる結晶粒径が不均一になるばかりでなく、深絞り性を向上させる(222)面の集積度が高くならない。そのため、70%以上必要である。しかし、98%を超えると圧延機への負荷が高くなりすぎるため、これを上限とする。
【0032】
仕上圧延で潤滑を施す場合、潤滑油の種類及びエマルジョンの濃度は特に限定されるものではない。潤滑圧延を実施する目的はロールと圧延材との摩擦係数を低下させ、圧延荷重の低下を図ると共に板厚方向のひずみを均一に分布させることにある。特に前述したような中心層と1/8t面における(222)面強度の関係が前述の式を満足するには、仕上圧延における潤滑圧延が有利となる。
【0033】
巻取では内巻き及び外巻きの材質劣化を防止するため、なるべく速やかにかつ、低温で巻取る必要がある。これは、仕上圧延時に形成された加工組織を、連続焼鈍あるいは溶融亜鉛めっき処理前には極力維持し、再結晶により深絞り性に有利な集合組織を形成させるためである。
【0034】
そのためには巻取温度を低くする必要があり、冷却の均一性及び酸洗性を考慮し、300℃以下で巻取ることが必要である。この温度を超える巻取りでは、膜沸騰による冷却むらが生じるとともに、スケール厚も増加するため、酸洗性の劣化が懸念されるばかりでなく、コイル端部の温度低下に起因した材質劣化を招くことになる。また、巻取時に再結晶が生じるような高温域になると、後に続く再結晶焼鈍においてさらに粒成長が進み、肌荒れの原因にもなるため好ましくない。
【0035】
再結晶焼鈍については、箱型焼鈍炉、連続焼鈍炉、連続溶融亜鉛めっきラインにおいて実施することができ、連続溶融めっきラインにおいて(750℃以上の温度で)再結晶処理を施し、そのまま溶融亜鉛めっきを施せば、深絞り性の優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。また、再結晶焼鈍後の熱延鋼板に電気めっき、蒸着めっきを施せば、深絞り性の優れた高強度電気、蒸着めっき鋼板が得られる。また、これらめっき処理後合金化処理を実施することは本発明の効果を損なうものではない。
【0036】
前述した鋼の溶製は転炉を用いるのが一般的であるが、電気炉でスクラップを溶解してもかまわない。さらに、鋳造は連続鋳造にて実施されるが、100mm以下の薄スラブに鋳造されても本発明における効果を何等損なうものではない。
【0037】
また、用いる熱延設備は通常の熱延ストリップミルで良いが、薄スラブを用いて粗圧延を簡省略するものでもかまわない。さらに、仕上圧延前のシートバーの接続方法は特に規定するものではないが、レーザー溶接、アーク溶接及び圧接等で実施するのが好ましい。一方、接続前に巻き取る場合、その方法についても特に規定するものではない。その際、巻き取ったコイルを保熱あるいは加熱することも本発明における効果を損なうものではない。
【0038】
【実施例】
(実施例1)
C:0.0018%、Si:0.15%、Mn:0.25%、P:0.062%、S:0.007%、Al:0.035%、Ti:0.047%、N:0.0018%を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼を転炉で出鋼し、連続鋳造にてスラブとした。熱延は1100℃で加熱してから25mmまで粗圧延を実施し、先行するシートバーに接続後、表1に示すような種々の仕上温度及び巻取温度で熱間圧延を実施した。なお、Ar3 点は916−50〔C(%)〕+27〔Si(%)〕−64〔Mn(%)〕より概算すると904℃であり、仕上圧延前の880℃における固溶炭素量は0.0004%である。
【0039】
再結晶焼鈍は連続焼鈍炉あるいは連続溶融亜鉛めっきラインにて実施し、その際の焼鈍温度は800℃である。再結晶焼鈍を連続溶融亜鉛めっきラインで施したものは、そのまま溶融亜鉛めっきを施して溶融亜鉛めっき鋼板を得た。再結晶焼鈍後の熱延鋼板及び溶融亜鉛めっき鋼板の材質評価は、JIS Z 2201 記載の5号試験片に加工し、JIS Z 2241 記載の試験方法にしたがって引張試験を行った。結果を同表に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0003544441
【0041】
本発明法にしたがったNo.1,2,3,5,6,8,9及び10では、高い強度に加え、高い伸びとr値を示す。
一方、面強度比が本発明の範囲から高くはずれたNo.7,11及び12では板厚方向の異方性が大きいため、伸びとr値が低い。また、No.10及び11では仕上温度が本発明の範囲から低くはずれたため、巻取での粒成長性が不十分となり、伸びとr値が低い。とくに、No.12では仕上温度がAr点以上であるため、仕上圧延後変態してからの巻取となる。そのため、仕上熱延で形成された集合組織が変態によりその集積度が低下するため、r値が低いと思われる。さらに、巻取温度が高くはずれたNo.4では、再結晶焼鈍時に粒成長性が過度に進行したため、r値が低い。
【0042】
(実施例2)
表2に示す種々の組成(残部はFe及び不可避的不純物)の鋼を転炉あるいは電炉出鋼し、連続鋳造でスラブとした。熱延は1000〜1200℃で加熱してから種々の板厚に粗圧延を行い、先行するシートバーに接続して仕上圧延を行った。この時、B,C,D,F,H,I,J,L,M及びN鋼のようにシートバーの接続前に巻取った。一部のものについては同表に示した条件で巻き取り、10分以内の保熱を行ってから巻きほぐすか、あるいは保熱することなく直ちに巻きほぐして先行するシートバーに接続した。
【0043】
【表2】
Figure 0003544441
【0044】
その後、Ar点以下の温度域で6パスの仕上圧延を行い、700〜750℃で仕上圧延を終了した。その際にエマルジョンを供給するが、その供給スタンド(前段からNo.1〜6スタンド)を表3に示す。仕上圧延後は直ちに冷却を開始し、300℃以下の温度域で巻取った。続いて再結晶焼鈍は、連続焼鈍にて同表中に示す温度で実施した。さらに、1%の調質圧延を施してから、実施例1と同じ方法で材質評価を行った。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
Figure 0003544441
【0046】
本発明法にしたがったA,B,C,D,E,F,G及びH鋼のNo.1〜9及びNo.11〜18では350MPa以上の高い強度と1.5を超えるr値を示す。しかし、本発明鋼でも仕上圧延での圧下率が本発明の範囲から低くはずれたNo.10では板厚方向の組織が不均一となるため、r値が低い。
【0047】
一方、C及びN量が本発明の範囲から高くはずれたJ鋼では、仕上圧延前の880℃における固溶炭素量が7ppm を超えるため、高いr値が得られない。また、この鋼には時効性の劣化が懸念される。また、Si量が高くはずれたK鋼では、スケール起因の疵の発生が懸念される。Mn及びP量が高くはずれたL鋼は、強度が上がりすぎたため、伸びとr値が低い。
【0048】
M鋼はTi量が低くなりすぎたため、仕上圧延前にTiの炭硫化物の形成が少なく、880℃での固溶炭素量が7ppm を超えるためr値が低い。また、微細な析出物が多く形成されるため硬質化して延性が低い。さらにN鋼では、S量が高くはずれたため、熱間圧延時の割れの発生が懸念されるとともに、硬質化して伸びとr値が低い。一方、I鋼は成分的には本発明の範囲内であるが、巻取温度が本発明の範囲から高くはずれたため、後に続く連続焼鈍での粒成長が著しく、引張試験を実施した後に肌荒れが発生する。
【0049】
(実施例3)
表4に示す組成(残部はFe及び不可避的不純物)の鋼を転炉あるいは電炉出鋼し、連続鋳造で75mmの薄スラブに鋳造後、再加熱することなく粗圧延にて30mmとした。その後直ちに先行するシートバーに接続してから6パスで仕上圧延を実施し、同表に示す温度域で仕上圧延を終了し、1mmの板厚とした。なお、この際には仕上圧延機の全スタンドにおいてエマルジョンの供給を実施した。仕上圧延後は300℃以下の温度域で巻取った。続いて再結晶焼鈍は連続焼鈍にて実施し、その際の焼鈍温度を830℃とした。さらに、1%の調質圧延を行ってから、材質評価は実施例1及び2と同様の方法で行った。
いずれの鋼も340MPa以上の高い強度を有しながら、1.5を超えるr値と36%を超える延性が得られている。
【0050】
【表4】
Figure 0003544441
【0051】
【発明の効果】
本発明により、仕上圧延前の固溶炭素量を制御し、Ar点以下の温度域で仕上圧延を実施するとともに、板厚方向の集合組織の均一化を図ることにより、加工性に優れた熱延鋼板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】仕上圧延前の固溶炭素量とr値との関係を示す図である。
【図2】板厚方向の集合組織とr値との関係を示す図である。

Claims (11)

  1. 熱延後、再結晶焼鈍してなる熱延鋼板であって、重量%で、
    C :0.003%以下、
    Si:0.5%以下、
    Mn:0.5%以下、
    P :0.04〜0.15%、
    S :0.005〜0.015%、
    Al:0.005〜0.1%、
    N :0.0035%以下を含み、さらに、
    Ti及びNbのうち1種以上を合計で0.03〜0.1%含み、
    残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつTiあるいはNbの炭化物として析出した炭素量が7ppm 以下であり、さらに中心層(center)と全厚の1/8部(1/8t)における面強度比(222)center/(222)1/8tが5以下であることを特徴とする深絞り性の優れた高強度熱延鋼板。
  2. さらに重量%で、B:0.005%以下を含むことを特徴とする請求項1記載の深絞り性の優れた高強度熱延鋼板。
  3. さらに重量%で、Cu,Ni,Cr及びSnのうち1種または2種以上を合計で0.5%以下含むことを特徴とする請求項1または2記載の深絞り性の優れた高強度熱延鋼板。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱延鋼板の表面にめっき層を有することを特徴とする深絞り性の優れた高強度めっき鋼板。
  5. 重量%で、
    C :0.003%以下、
    Si:0.5%以下、
    Mn:0.5%以下、
    P :0.04〜0.15%、
    S :0.005〜0.015%、
    Al:0.005〜0.1%、
    N :0.0035%以下を含み、さらに、
    Ti及びNbのうち1種以上を合計で0.03〜0.1%を含み、
    残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼を連続鋳造にてスラブとした後、再加熱してから、あるいは鋳造後直ちに粗圧延を実施し、先行するシートバーに接続後、仕上圧延を、後の捲取工程以降でTiあるいはNbの炭化物として検出される仕上圧延前の固溶炭素量が7ppm以下の状態で開始して、さらにAr3 点以下、600℃以上の温度域での合計圧下率が70%以上、98%以下になるように実施し、続いて300℃以下の温度域で巻取り、続いて再結晶焼鈍し、中心層(center)と全厚の1/8部(1/8t)における面強度比(222)center/(222)1/8tを5以下とすることを特徴とする深絞り性の優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
  6. さらに重量%で、B:0.005%以下を含むことを特徴とする請求項5記載の深絞り性の優れた熱延鋼板の製造方法。
  7. さらに重量%で、Cu,Ni,Cr及びSnのうち1種または2種以上を合計で0.5%以下含むことを特徴とする請求項5または6記載の深絞り性の優れた熱延鋼板の製造方法。
  8. 粗圧延を終了し、シートバーを一旦コイルに巻き取ることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の深絞り性の優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
  9. 100mm以下の鋳片に鋳造後、直ちに粗圧延を実施することを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1項に記載の深絞り性の優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
  10. 仕上圧延を実施する際に、少なくとも1パス以上潤滑を施しながら行うことを特徴とする請求項5ないしのいずれか1項に記載の深絞り性の優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
  11. 請求項5ないし10のいずれか1項に記載の再結晶処理後の熱延鋼板に、溶融めっきあるいは電気めっきあるいは蒸着めっきを施すことを特徴とする深絞り性の優れた高強度めっき鋼板の製造方法。
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