JP3150188B2 - 深絞り成形性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
深絞り成形性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法Info
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Description
に関し、とくに高強度でかつ高r値を有する冷延鋼板を
製造する方法を提案しようとするものである。
強度冷延鋼板が多用されるようになってきた。軽量化効
果は、使用する鋼板が高強度であるほど大きくなるた
め、自動車業界では、例えば内板及び外板用のパネル用
材料として引張強さが500MPa以上の冷延鋼板を使用して
いこうとする動向にある。しかしながら、このような高
強度化鋼板は、通常の軟鋼板に比べて成形性、特に深絞
り成形性は大きく劣化するのが一般的である。したがっ
て自動車の軽量化を進める上での課題として、より高強
度でしかも軟鋼板と変わらない良好な深絞り成形性を兼
備する冷延鋼板の要求が高まっている。
例えば特開昭64-4429 号公報や特開平2-197545 号公報
に開示がある。これらの製造方法に共通する点は、0.5
〜3.0 wt%(以下単に%で示す)のCuを含有させて、こ
のCuを冷間圧延、再結晶焼鈍後にε−Cuとして析出させ
て、この析出強化を利用して高強度を得る点である。
された製造方法は、連続焼鈍工程を経て製造するもので
あるが、この焼鈍工程ではε−Cuの析出が生じない。し
たがって焼鈍後ではまだ軟質のままであるから、強度を
上げるためにはこの連続焼鈍に引き続きε−Cuの析出を
生じさせるための後熱処理が必要である。そのためこの
ような製造方法では従来の冷延鋼板よりも工程数が増加
するという欠点を有している。
れた製造方法は、前者と同様に連続焼鈍後に別工程でε
−Cuの析出させる後熱処理を行う方法の他、連続焼鈍工
程における過時効処理帯にて、ε−Cuの析出を起こさせ
ることにより、後加熱処理なしで強化を図る方法も提案
されている。しかしながらこのような連続焼鈍方法を行
うにしても、実際の製造装置ではこの工程中でのε−Cu
の析出時間に制約があることから、当然にその析出量も
少なくなり、結果としてε−Cuの析出強化が不十分とな
る。したがってこのようなε−Cuの析出強化不足分を補
うために、他の強化成分、例えばMn,P,Ni,Si等の固
溶強化成分を多量に含有させなければならない。
小さいので、引張強さを例えば500MPa 以上とするため
には、かなり多量の含有が必要である。このことは経済
的不利益を増すことの他に、これらの成分のいくつかは
溶融亜鉛めっき等の次工程で表面処理を施す場合の障害
を惹起するという欠点を有している。この点、上掲特開
平2-197545 号公報ではCu以外の強化成分としてMn,N
i,P等を多量に含有させているから、上記した欠点を
呈するうれいが著しい。
みて、強化コストが比較的安価なPによる固溶強化を最
大限に利用する配慮を行っていたが、過剰なP含有は、
やはり溶融亜鉛めっき性への悪影響あるいは二次加工ぜ
い性割れのうれい等の難点が解消されなかった。
にはr値を高める必要があるが、このための手段として
上記の製造方法では、従来の軟鋼板で一般的に行われて
いる方法を採用している。すなわちC量を例えば前者の
製造方法では0.010 %未満、後者の製造方法では0.0005
〜0.0120%のように、できるだけ低い範囲に抑え、しか
もTi,Nbを含有させる等によりIF鋼(Interstitial Fr
ee鋼)化を図るというものである。しかし、このような
極低炭素鋼とすると、Cは強化因子としては何らの役割
も果たさず、そのため引張強さを500 MPa 以上とするた
めには、固溶強化成分を含有させざるを得ず、やはり前
記した問題が残っている。さらに過剰な固溶強化成分の
含有はr値を劣化させるので、高強度化を図るほど得ら
れるr値の水準は低下してしまう等の問題があった。
Cの析出強化を利用する製造方法も知られている。しか
しこのタイプの高張力冷延鋼板では、高強度を得るため
に0.02%以上のC量を必須とするものであり、このよう
な高いC量とした場合には、従来、得られるr値の水準
は低く、具体的にはr値は約1.2 が限界であった。そこ
で高r値を得るためにはどうしても前記したように、0.
02%以下の極低炭素とすることが必須の条件となってい
たのである。
点をまとめると次のとおりである。冷延鋼板において高
強度と高r値を達成する手段として、極低炭素IF鋼に
析出強化を利用する方法は有効な手段であるが、連続焼
鈍でこのような鋼を製造する場合、ε−Cuの析出強化量
が不足するので後熱処理を必要とする。これを省略する
ためにはMn,P,Si等の固溶強化成分の多量な含有を必
要とするが、これは経済性、耐二次加工ぜい性等の点で
難点があり、これを回避しようとすれば、達成できる高
強度化に限界が生じる。一方、TiC,NbCの析出強化を
利用する強化方法を採用する場合には高強度が得られ易
いが、強化のためにはC量を高くする必要があり、これ
は高r値を得ることを不可能とする。
消するとともに、従来技術では到達できなかった水準の
高強度−高r値バランスを有する冷延鋼板の製造方法を
提案することを目的とする。
Cuの析出強化と、TiC及び/又はNbCの析出強化とい
う、2種類の析出強化を組み合わせた方式で強化する高
強度冷延鋼板の製造方法である。これらの強化方式の採
用により、前記した経済性、表面処理性、耐二次加工ぜ
い性等の観点から悪影響の多いMn,Si,P等の固溶強化
成分の含有をできるだけ抑制した上で、引張強さ500 MP
a 以上の高強度を達成することを技術思想とする製造方
法である。そしてこの発明はTiCやNbCによる析出強化
を発揮させる上で必須の要件となるC量が0.02%の範囲
において従来不可能とされていたr値1.7 以上という、
軟鋼板並みの高r値を発揮させることを可能とする製造
方法である。このため、この発明では化学成分を最適化
するとともに熱延条件の最適化を図るために規制を行っ
たものである。
n:0.01〜1.5 %、Cu:0.6 〜2.5 %、Al:0.100 %以
下、N:0.0100%以下、S:0.020 %以下及びP:0.02
0 %以下を含み、かつTi:1.0 %以下、Nb:1.0 %以下
の1種又は2種を、(Ti/4+Nb/8)/Cが1以上を
満足する条件で含有する基本成分組成になり、残部はFe
及び不可避的不純物よりなる鋼スラブを、950 〜1250℃
に加熱し、引き続き熱間圧延を、仕上温度が600 ℃以
上、950 ℃以下で行い、次いで700 ℃以下、室温以上の
温度で巻き取った後、冷間圧延を圧下率60〜95%で行
い、その後再結晶焼鈍を750 〜900 ℃で10 s以上施すこ
とを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造
方法(第1発明)。
0 %含有することを特徴とする深絞り性に優れた高強度
冷延鋼板の製造方法(第2発明)。
含有することを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延
鋼板の製造方法(第3発明)。
0 %とNiを0.1 〜2.0 %とを含有することを特徴とする
深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法(第4発
明)。
した理由について説明する。 C:0.02%を超え0.14%以下 C量は、この発明において高強度化する上できわめて重
要な因子である。発明者らは、既に述べたこの発明の技
術思想、すなわちε−Cuの析出強化とTiCないしはNbC
の析出強化という、2種類の析出強化を組み合わせた強
化方式による高強度化と高r値化とを両立させる高強度
冷延鋼板の製造方法を実現するために、次の実験を行っ
た。
N:0.0030%、P:0.010 %、S:0.002 %及びCu:1.
5 %を含み、かつC量を0.0030〜0.16%の範囲で種々に
変化させ、さらにそれぞれのC量においてTi/Cの値が
原子比で1.0 〜1.1 となる量のTiを添加した鋼を溶製
し、鋼片とした後、加熱温度1100℃、仕上圧延温度800
℃、巻取温度400 ℃の条件で熱間圧延を施した。ついで
圧下率80%の条件で冷間圧延を行って板厚0.7 mmの鋼板
とした後、850 ℃で40 sの焼鈍を行い、続いて550 ℃ま
では冷却速度5℃/sで冷却した後、20℃/sの冷却速度で
室温まで冷却した。かくして得られた鋼板について、C
量が引張強度及びr値に及ぼす影響につき調べた結果を
図1にグラフで示す。
下の領域ではC量の増加に伴う引張強さの上昇は小さ
く、引張強さ:500 MPa 以上の高強度が得られないのに
対して、C量が0.02%を超える領域では引張強さに対す
るC量の影響が大きくなり、C量の増加に伴って引張強
さが上昇し、500 MPa 以上の高強度が得られるようにな
る。そして、r値はC量が異なっても大きな変化はな
く、0.02%を超える領域においても極低炭素領域の鋼と
ほとんど同等の良好な値を示す。同図から、この発明に
したがう範囲のC量、Ti量とした場合、r値を劣化させ
ることなく高強度化できることが認められる。また、発
明者らは、上記の実験におけるTiに代えてこの発明の範
囲のNb添加、あるいはTiとNbの複合添加の場合にも同様
の結果が得られることを確認した。
値を示すのは、そのCがTiあるいはNbによって完全に固
定されIF化していること、そして高強度化はIF化に
際し生じたTiCやNbCが析出強化となって発現したため
と考えられる。すなわち、この発明は従来技術では考え
られなかった高いC量の範囲に定めた状態でIF化する
ことにより、高強度化と高r値化を両立させる新規な技
術である。C量は、以上の知見に従い、0.02%を超える
範囲としなければこの発明の目的とする高強度化と高r
値化とが発揮されない。しかし、C量が0.14%を超える
とr値が劣化するとともに、あまりにも高強度化して伸
び特性等の点で深絞り成形用途に適しなくなること及び
溶接性等に悪影響が現れるので上限を0.14%とした。
は強化のために必ずしも含有させることはないが、含有
させることによって強度−伸びバランスが改善する。こ
の効果を利用するには1.5 %以下の範囲とする。という
のは、1.5 %を超えて含有させると、表面性状が劣化す
るので好ましくないためである。なお上記の効果を利用
するためには、下限は0.1 %以上とすることが望まし
い。
01%が必要であるので、下限を0.01%とした。一方、Mn
量を増加させてゆくと、固溶強化により鋼の強度が上昇
するものの、この含有量が多すぎるとr値が劣化したり
溶融亜鉛めっき性を阻害したりする等の悪影響が現れて
くるので、この問題を回避できる範囲としてその上限を
1.5 %とした。
利用するCuの強化機構はこの成分の固溶強化機能ではな
く、ε−Cuの析出強化機能である。このε−Cuの析出強
化機能を発揮させるためには、0.6 %以上の含有が必要
である。しかし、Cu含有量が多い鋼を1200℃以上の酸化
雰囲気中で長時間加熱すると、鋼の表皮化の結晶粒界に
Cuが濃化し、これが熱間ぜい性を惹起する等の問題を起
こす。これを回避するためにこの発明ではCuの上限を2.
5 %とした。
が、この効果は0.100 %以上では飽和するのでその上限
を0.100 %とした。 N:0.0100%以下 Nは、r値を高める上で悪影響を及ぼす成分であるの
で、0.010 %以下に抑える必要があり、上限を0.010 %
とした。 S:0.020 %以下 Sは、熱間ぜい性や非金属介在物による加工性劣化を招
くので少ない方が望ましく、この観点から0.02%を上限
とした。 P:0.020 %以下 Pは、固溶強化能が大きく、強度上昇に有効であるが、
一方において結晶粒界に偏析し結晶粒界強度を弱めて二
次加工ぜい性割れを起こし易くすること、及び溶融亜鉛
めっき等の表面処理性を悪化させる等の悪影響がある。
したがってこの問題を回避するためにその上限を0.020
%とした。
は2種 Ti及びNbは、この発明ではr値を高めつつ強度上昇を図
る上で極めて重要な成分である。この目的を達成するた
めには(Ti/4+Nb/8)/Cが1以上を満足する条件
で含有しなければならない。この条件を満足しない場合
には、強度上昇とr値の改善を両立できない。しかしTi
量またはNb量の含有効果はそれぞれ1.0 %を超える範囲
では飽和するとともに、経済的に不利益を来すので、上
限をそれぞれ1.0 %とした。なお(Ti/4+Nb/8)/
Cの最適範囲は約1.02〜1.3 であり、この範囲を超えて
も効果には大きな差はないのでこの範囲とすることが経
済的にも有利である。
を含有させる。Bは、深絞り成形を行う用途の材料で問
題となる二次加工ぜい性割れを阻止する上で有効な成分
である。したがってこの効果を発揮させるためには少な
くとも0.0002%が必要である。しかし0.010 %を超える
範囲で使用してもその効果は飽和するばかりでなく、r
値を劣化させる作用を行うので上限を0.010 %とした。
を含有させる。Niは、上述したCuのもつ熱間ぜい性に対
する悪影響を防止する作用を有する成分である。したが
って熱間ぜい性が生じ易い加熱温度1150℃以上の条件、
あるいはCu量が1.5 %を超えて含有する場合などには0.
1 %以上を含有させることが有効である。しかし高価な
成分であるので経済的観点から上限を2.0 %に定めた。
する鋼を熱間圧延、冷間圧延及び再結晶焼鈍を施すこと
によって得られる。次に最適な機械的性質を得るための
熱間圧延、冷間圧延及び再結晶焼鈍条件について述べ
る。熱間圧延に際する加熱温度の条件は、高いr値を得
るために、またCuの持つ熱間ぜい性を防止する上で重要
である。すなわち加熱温度が1250℃を超えると、Cuによ
る熱間ぜい性が非常に生じ易くなるので避けるべきであ
る。また加熱温度が高くなるに従って、強度上昇には有
利になるものの、r値が急激に低下する。したがってこ
の観点からも加熱温度の上限は1250℃に抑えることが望
ましい。一方加熱温度を低下してゆくと、高いr値が得
られ易くなる。これは熱延板での結晶粒径が微細になる
ことによる効果である。また、この熱延板の結晶粒微細
化効果は、冷延再結晶後の結晶粒にも継承されるので、
結晶粒微細化による最終製品での強度上昇効果も生まれ
る。しかし加熱温度が950 ℃に未満になると、加熱時点
でのTiCないしはNbCの溶体化が不十分となって、これ
らが熱延巻取後、あるいは冷延再結晶焼鈍時に析出する
ことによる析出強化による強度上昇効果が発揮されなく
なる。したがって加熱温度の下限は950 ℃とすることが
必要である。なお高強度化と高r値化とを両立させ、し
かもCuのもつ熱間ぜい性をも防止するという観点からみ
た場合の最も最適な加熱条件は、1000〜1150℃の範囲で
ある。
度を600 ℃〜950 ℃の範囲に規制する。この理由を以下
に詳述する。従来の軟鋼板においては、熱延後の鋼板に
おける結晶粒界を細かくする程r値を高める作用がある
ことが知られている。とは言うものの、この従来の、例
えば極低炭素IF鋼のように、この発明の鋼よりもC及
びTiないしはNb量が低い鋼では、熱間圧延における結晶
粒の微細化が進まず、したがって上記の効果を有効に利
用することが難しかった。また仕上圧延温度をAr3 変態
点よりも低くした場合には、熱延後の鋼板の結晶粒径が
以上に大きくなる現象が生じて、r値が著しく劣化す
る。したがって、その悪影響を避けるために従来鋼の仕
上圧延は通常、Ar 3 変態点以上とするため、約850 ℃以
上の温度領域で行われるのが一般的である。
ば、この発明に従い、C量及びTi量ないしはNb量を高め
た鋼を加熱温度を好ましくは1150℃以下という、低い加
熱条件で熱間圧延した場合、次の理由により結晶粒の微
細化が著しく進展することが分かった。第一は、加熱時
の初期オーステナイト粒径が非常に小さくなることの効
果である。この効果は、特に仕上圧延段階でのオーステ
ナイト粒の動的再結晶微細化を惹起させ、結晶粒の微細
化を進展させる。この微細化効果は、仕上圧延温度を例
えばこの発明の範囲の高い側を選択した場合に有効に作
用する。しかし仕上圧延温度が950 ℃を超える条件とし
た場合、この効果が小さくなって、r値改善効果が消失
するからこの発明では仕上圧延温度の上限は950 ℃とし
た。第二は、C量が多いこととCuを含有することのため
に従来の軟鋼板に比べてAr3 変態点が低下し、オーステ
ナイト範囲がより低温まで存在するので、制御圧延効果
による結晶粒微細化が進展する。この効果は特に仕上圧
延温度をこの発明の範囲の低い側を選択した場合に有効
となる。この発明の鋼スラブの成分組成範囲を選べば、
上記の効果は、例えば仕上圧延温度がAr3 変態点以下と
なるような条件としても有効となる。しかしながら仕上
圧延温度が600 ℃に満たないような条件では、熱間圧延
が非常に困難となるので、この発明では下限を600 ℃と
した。
は、上記の仕上圧延過程及び巻取段階でTiCないしはNb
Cの析出が生じるわけであるが、巻取温度が700 ℃を超
える条件とすると、これらの析出物が粗大化して、最終
製品での強度上昇に寄与しなくなるからである。一方、
巻取温度は仕上圧延温度を最適化すれば室温まで低くし
ても高いr値及び高強度化をともに達成することが可能
である。すなわちこの発明は、上記したように熱延母板
での結晶粒の微細化を進展させることを一方の骨子とす
る高r値化冷延鋼板の製造方法であるが、もう一方の高
r値化手段として、従来の知見のように熱延終了段階に
おいて固溶CをTiCないしはNbCとして固定し、IF鋼
とすることを利用するものである。そのためには熱延後
の状態でTiCないしはNbCの析出を十分に進展させるこ
とが重要であるが、仕上圧延温度を例えば800 〜700 ℃
といったこの発明の範囲の低い側に選択した場合には、
歪誘起析出によって仕上圧延直後にTiCないしはNbCの
析出が速やかに完了するので、巻取温度を例えば500 〜
室温のような低い条件としても固溶Cの固定が不足する
ことはなく、したがってr値の劣化は起こらない。しか
し、仕上圧延温度を例えば850 〜950 ℃といった高い条
件を選択した場合には上記のような歪誘起析出作用が起
こり難くなるので、その場合には巻取後にTiCないしは
NbCの析出を進行させるために巻取温度は700 〜550 ℃
の範囲を選択するのがよい。
は少なくとも60%が必要であり、これを満足しない場合
には再結晶後にr値を高めるのに有効な集合組織の発達
が不足するので、良好な深絞り成形性を得ることができ
ない。この発明では冷間圧下率を95%までの範囲で高く
するほどr値が改善されるが、95%を超えるとその効果
が飽和するばかりでなく、冷間圧延が困難となるので上
限を95%とした。
で10 s以上保持する条件で行わなければならない。これ
は再結晶を十分に起こさせ、かつ再結晶後にr値を高め
るための集合組織の発達を行わせる上で必要な要件であ
る。焼鈍温度が750 ℃未満の条件では 再結晶が不十分
となり、また900 ℃を超えるとオーステナイト領域とな
るのでいずれもr値を向上させる集合組織の形成が阻害
されるのでこのような焼鈍条件は避けなければならな
い。またこれらの焼鈍温度での保持時間が10 s未満であ
る場合にも再結晶が十分に進行しないので好ましくな
い。なお焼鈍方法は上記の要件を満たすならば連続焼
鈍、箱焼鈍のいずれでもよい。Cuは上記の焼鈍加熱時に
いったん素地に固溶し、焼鈍後の冷却過程においてε−
Cuとして再析出する。このε−Cuの析出を起こさせるた
めには、焼鈍後の冷却過程の650 〜500℃の温度範囲に
おける冷却速度を20℃/s以下にすることが望ましい。
た。
で熱間圧延を施し、巻取り、板厚4.6 mmの熱延鋼板を得
た。得られた鋼板を酸洗により脱スケールした後、冷間
圧延を施して厚み0.7 mmにした後、同表に示す条件で連
続焼鈍を行った。
5号引張試験片を作製して引張試験を行い、引張特性と
r値を調べた。またこの鋼板より採取したブランク板を
用いて直径33mmの平底ポンチによる絞り比2.0 の円筒深
絞りを行い、得られた成形品に対して種々の温度で落重
テストを実施して何℃でぜい性破壊を起こすかを測定す
ることによって、二次加工ぜい性割れ感受性を調査し
た。以上の測定結果を表3にまとめて示す。
51kgf/mm2 (500 MPa)を超える引張強さと、1.7 を超え
る極めて高いr値を有し、しかも耐二次加工ぜい性に優
れた高強度深絞り用冷延鋼板としての特性を持つことが
わかる。これに対し、この発明の成分組成範囲を外れた
比較例J〜Nは、高強度が得られていてもr値が低かっ
たり、またはr値が良好であっても高強度化が不十分で
あったり、あるいは高強度、高r値が得られたとしても
耐二次加工ぜい性が劣るなど、この適合例と匹敵する高
強度深絞り用冷延鋼板としての総合特性が得られないこ
とがわかる。
らの鋼スラブを表4に示す製造条件で熱間圧延を施し、
巻取り、板厚4.6mm の熱延鋼板を得た。得られた鋼板を
酸洗により脱スケールした後、冷間圧延を施して厚み0.
7mm にした後、同表に示す条件で連続焼鈍を行った。
5号引張試験片を作製して引張試験を行い、引張特性と
r値を調べた。またこの鋼板より採取したブランク板を
用いて直径33mmの平底ポンチによる絞り比2.0 の円筒深
絞りを行い、得られた成形品に対して種々の温度で落重
テストを実施して何℃でぜい性破壊を起こすかを測定す
ることによって、二次加工ぜい性割れ感受性を調査し
た。以上の測定結果を表5にまとめて示す。
囲の製造条件で熱延した場合の熱延仕上温度の条件を本
発明範囲で変化させた場合の製造例であり、同じく比較
例eは熱延仕上温度が本発明範囲の上限を超えた場合の
製造例である。また、f〜gは熱延加熱温度を変化させ
た場合の製造例で、このうちgおよびhは本発明に従う
適合例、fは熱延加熱温度が本発明範囲の下限を、同じ
くiは上限をそれぞれ逸脱した場合の製造例である。
適合例a〜dおよびg,hは51kgf/mm2 (500MPa)を超え
る引張強さと、1.7 を超える極めて高いr値を有し、し
かも耐2次加工ぜい性に優れた高強度深絞り用冷延鋼板
としての特性を持つことがわかる。これに対し、この発
明の熱延仕上温度範囲を外れた比較例eではr値が低
く、また熱延加熱温範囲の下限を外れた比較例fでは引
張強さが低く、同じく上限を外れた比較例iではr値が
劣るなどこの適合例と匹敵する高強度深絞り用冷延鋼板
としての総合特性が得られないことがわかる。
ば、従来達成できなかった水準の高強度特性と高r値特
性とを兼備し、しかも耐二次加工ぜい性でも優れる高強
度深絞り用冷延鋼板が低コストで製造でき、特にこの発
明に従い製造した鋼板を自動車のパネル類及びメンバー
類に使用した場合には、車体の軽量化に大きくするもの
であり、その産業上の意義、利益は著しく大きい。
につき調べた結果を示すグラフフである。
Claims (4)
- 【請求項1】 C:0.02wt%を超え0.14wt%以下、 Si:1.5 wt%以下、 Mn:0.01〜1.5 wt%、 Cu:0.6 〜2.5 wt%、 Al:0.100 wt%以下、 N:0.0100wt%以下、 S:0.020 wt%以下及び P:0.020 wt%以下 を含み、かつ Ti:1.0 wt%以下、 Nb:1.0 wt%以下 の1種又は2種を、(Ti/4+Nb/8)/Cが1以上を
満足する条件で含有する基本成分組成になり、残部はFe
及び不可避的不純物よりなる鋼スラブを、 950 〜1250℃に加熱し、 引き続き熱間圧延を、仕上温度が600 ℃以上、950 ℃以
下で行い、 次いで700 ℃以下、室温以上の温度で巻き取った後、 冷間圧延を圧下率60〜95%で行い、 その後再結晶焼鈍を750 〜900 ℃で10 s以上施すことを
特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方
法。 - 【請求項2】 基本成分組成に加えて B:0.0002〜0.010 wt% を含有する請求項1記載の深絞り性に優れた高強度冷延
鋼板の製造方法。 - 【請求項3】 基本成分組成に加えて Ni:0.1 〜2.0 wt% を含有する請求項1記載の深絞り性に優れた高強度冷延
鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 基本成分組成に加えて B:0.0002〜0.010 wt%及び Ni:0.1 〜2.0 wt% を含有する請求項1記載の深絞り性に優れた高強度冷延
鋼板の製造方法。
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1992
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