JPH08309203A - 光触媒組成物 - Google Patents

光触媒組成物

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JPH08309203A
JPH08309203A JP8055145A JP5514596A JPH08309203A JP H08309203 A JPH08309203 A JP H08309203A JP 8055145 A JP8055145 A JP 8055145A JP 5514596 A JP5514596 A JP 5514596A JP H08309203 A JPH08309203 A JP H08309203A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】太陽光や室内照明光の下で、優れた防汚、防
臭、抗菌性等を発現する。 【解決手段】半導体光触媒化合物からなる成分(1)
と、365±45nmの波長域の光の吸収能が高い化合
物からなる成分(2)とを含有する光触媒組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光触媒組成物に関す
る。
【0002】
【従来の技術】半導体微粒子が禁制帯ギャップを越える
エネルギの光を吸収すると、電子−正孔対が励起子を作
る。この励起子がその構造緩和の過程で電荷移動や表面
捕捉反応を起すと、それぞれ還元反応・酸化反応を進行
させ、光エネルギと化学エネルギの変換が行われる。か
かる半導体を用いた光触媒反応は、太陽エネルギから直
接燃料を作る方法として注目されたが、最近は環境浄化
への応用を目指す動き[化学と工業 48,167(1
995)]を強めている。
【0003】光触媒としては、酸化チタンが報告されて
いる[Nature 237,37(1972)]。酸
化チタンの光触媒反応は固体表面で強い酸化力を発現
し、多くの有機物をその最終的状態にまで酸化させるこ
とから、防汚、抗菌、防臭といった環境浄化の目的にも
有効に機能すると考えられ、例えば、特開平6−198
196、特開平6−278241等で提案されている。
【0004】酸化チタン粒子を水中に分散させた系で、
トリクロロエチレンが二酸化炭素や塩素イオン等に分解
されることも報告されている[J.Catal.,8
2,404(1983)]。しかしこのような系では分
散された酸化チタンの分離、回収が困難なため、工業的
利用には進展していない。
【0005】酸化チタンを固定化させる手法も種々提案
されている。例えば水中で解膠させた酸化チタンゾルを
基板上に施し、乾燥後、500℃程度で熱処理して調製
した酸化チタン被膜は、高い触媒活性を持つ粒子と同等
の触媒効果を発現したことが報告されている[Che
m.Lett.,723(1994)、特開平6−27
8241]。しかしこのようにして形成された酸化チタ
ン被膜は、一時的に膜状形態を持つが、脆く、容易に破
壊されて触媒効果を失う欠点があった。
【0006】またシリカゲルに酸化チタン粒子を担持さ
せる試みもなされている[Bull.Chem.So
c.Jpn.,61,359(1988)、J.Cer
am.Soc.Jpn.,102,702(199
4)]が、実質的に触媒濃度を下げてしまい、実用的で
はなかった。
【0007】また、酸化チタン光触媒を用いた抗菌タイ
ルについても提案されている[工業材料 43,96
(1995)]。これは酸化チタン粒子を混合してタイ
ルを焼成したり、あるいは釉薬で酸化チタンを固定する
方法で製造された[国際公開WO94/11092]も
のであり、シリカゲル担持の場合と同様に触媒粒子の表
面を広く遮蔽し、活性が低く、実用的ではなかった。そ
こでこのタイルは、低い活性を補い暗時の抗菌性を高め
るために、銀や銅といった金属のイオンを担持させてい
る。
【0008】また、同様に銀イオンを担持させて抗菌効
果を持たせた衛生陶器も知られている[日経マテリアル
ズ&テクノロジー 144,57(1994)]。これ
らのタイルや衛生陶器は抗菌性は有するが防汚性は充分
ではない。
【0009】一方、ゾル・ゲル法による金属酸化物膜の
形成方法を用い、基板上に酸化チタンの被膜を設ける試
みもなされている。例えば酸化チタンをコートした石英
板や石英管を用いて水中のトリクロロエチレンを分解で
きることが報告されている[特開平7−100378、
水環境学会誌 17,324(1994)]。しかしこ
れらの酸化チタンコート層は、製膜工程を数回〜20回
程繰返して初めて光触媒活性を発現できるもので、工業
的にはほとんど利用されていない。
【0010】その他、微細粒子を重ねた形状で被膜形成
できるCVD膜[J.Chem.Soc.Farada
y Trans.,1,81,3117(1985)]
を用い、粒子同等の高い触媒活性を発現しようとした試
み[J.Photochem.Photobiol.
A,50,283(1989)]や、たばこのヤニを光
分解するとした酸化チタンコートガラスなども提案され
ている[日刊工業新聞1995年1月5日]が、エネル
ギの高い紫外光の照射を必要とし、一般の住環境下での
効果は不充分であった。
【0011】このように酸化チタン等の多くの半導体光
触媒化合物は、無尽蔵な太陽光を利用して環境浄化の機
能を発揮しうる材料として着目されたが、従来その効果
を損なうことなく、実用的使用形態に加工する技術がな
かったため、活性化のためには通常得られる太陽光より
も短波長側の光を必要としたり、短期のきわめて限られ
た用途にしか使用できなかったりと、従来は半導体光触
媒化合物の機能を充分に発現させえなかった。
【0012】酸化チタンは通常、アナターゼ型とルチル
型の2つの結晶相に大別され、両相ともに光触媒活性を
示すことが知られている。一般にはアナターゼ型の方が
高い効果を持つと考えられているが、活性化の因子は結
晶相以外にも多く、一概には決められない。
【0013】ガラス等の基板上にゾル・ゲル法やスパッ
タリング等で酸化チタン膜を設けると、通常アナターゼ
型相が得られる。こうしたアナターゼ型のUVスペクト
ルを観察すると、400nm近傍の光とはほとんど相互
作用を持たないことが報告されている[J.Mate
r.Sci.,23,2259(1988)、Bul
l.Chem.Soc.Jpn.,67,843(19
94)]。したがって太陽光からは励起に必要なエネル
ギは得られず、触媒効果はほとんど見られなかった。
【0014】ゾル・ゲル法で得られたアナターゼ型を1
000℃で焼成すると、ルチル型相に転位する[J.M
ater.Sci.,28,2353(1993)]。
また、チタンアルコキシドとジエタノールアミンのアル
コール溶液から調製されたゾルを用い、650℃で焼成
してもルチル型相が得られる[溶融塩 31,158
(1988)]。
【0015】これらのルチル型は白濁状を呈するもの
の、400nm近傍の光と強い相互作用を持つことから
太陽光下でも強い活性を発現するものと期待されたが、
実際はこれらの膜もほとんど触媒効果を発現しなかっ
た。これは、ルチル型膜が触媒活性の小さい(110)
面に配向するためと考えられている[ 化学工業 19
88,482、Chem.Lett.,1994,85
5]。
【0016】このように、アナターゼ型では太陽エネル
ギを吸収せず、ルチル型では活性を持たないうえに白濁
してしまうといった課題があったため、従来は酸化チタ
ン膜を太陽光下で有効に利用できなかった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、太陽光や室
内照明光の下で、優れた防汚、防臭、抗菌性を発現する
光触媒組成物の提供を目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明は、半導体光触媒
化合物からなる成分(1)と、365±45nmの波長
域の光の吸収能が高い化合物からなる成分(2)とを含
有する光触媒組成物を提供する。
【0019】本発明の光触媒組成物における成分(1)
は光触媒活性が高く、成分(2)は太陽光中でも高エネ
ルギ域の光を効率良く吸収する。成分(1)と成分
(2)は相互に補完しあって、高い触媒活性を発現す
る。すなわち、従来は機能を充分に発現できなかった半
導体光触媒化合物を効率よく利用できる。
【0020】本発明で用いる成分(1)の半導体光触媒
化合物としては、光照射によって電子と空孔を形成し電
荷分離する全ての半導体化合物を使用できる。
【0021】しかし、本発明の成分(1)は、加工、成
形(例えばコーティングなど)されて、本発明の光触媒
組成物に特定の連続した形状を付与する機能と、成分
(2)のマトリクスまたはバインダとしての機能とを担
う。したがって本発明における成分(1)は、成形加工
性(例えば成膜性)に優れるものが好ましい。特に、適
当な加熱処理等によって半導体光触媒化合物に変換で
き、しかも易成形加工性(例えば易成膜性)を有するそ
の前駆体化合物を経て形成されるものが好ましい。
【0022】また、バンドギャップ、相当するエネルギ
を持つ光の波長、安定性、安全性等の観点から判断する
と、本発明における成分(1)としては酸化チタンが最
適である。なかでも形状や環境にほとんど依存すること
なく高い触媒活性を発現することから、アナターゼ型が
好ましい。
【0023】本発明における酸化チタンを形成するため
の前駆体化合物としては、最終的に酸化チタンとなる化
合物の全てを使用でき、チタンのアルコキシド、アセチ
ルアセトネート、カルボキシレート、キレート、および
ペルオキソチタン酸またはこれらの部分縮合体等が、取
扱の容易な点で特に好ましい。
【0024】成分(2)は、成分(1)の中に散在し、
365±45nmの波長域の光の吸収能を有する。成分
(2)は、(a)この波長域の光を吸収して電荷分離を
起こしたり、または、(b)接する成分(1)に作用し
て電荷分離を引き起こす。(a)と(b)の作用を同時
に奏することもある。
【0025】電荷分離とは、1)電子−正孔対が励起子
を形成した状態、2)独立した電子および独立した正孔
に分離した状態、3)電子−正孔対の励起子、独立した
電子、独立した正孔が、それぞれ電荷移動と、表面およ
び/または界面での捕捉反応を経て、酸化・還元反応を
起こし消滅するまでの、1)から3)に至るすべての状
態を指す。
【0026】本発明で用いる成分(2)は、前記の
(a)または(b)の作用が高い化合物であれば特に限
定されないが、成分(1)と安定した複合体を形成でき
ることから、金属酸化物が好ましく、例えば、酸化亜
鉛、酸化アルミニウム、酸化銀、酸化ケイ素、酸化ス
ズ、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化チタン、酸
化鉄、酸化銅、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリ
ウムなどが挙げられる。酸化チタンにあっては、365
±45nmの波長域の光との相互作用が高いルチル型を
用いるのが好ましい。
【0027】また本発明の光触媒組成物を構成する成分
(2)には、金属酸化物の微粒子を用いるのも好適であ
る。その理由としては、1)触媒活性等の相互作用が、
表面および/または界面での反応であるため微粒子状で
あることが有効であること、2)微粒子粒径を変えるこ
とにより、強い相互作用を持つ波長域を制御できるこ
と、などが挙げられる。
【0028】例えば酸化チタンの場合では、1〜100
nmの粒径の微粒子が好適である。1nm未満では相互
作用を持つ光の波長域が小さくなり、太陽光エネルギで
は活性を示さなくなる。100nm超では強靭な薄膜が
得にくくなる。
【0029】前記微粒子は、結晶性であることが高い光
触媒効果を発現できることから望ましい。この場合、ル
チル型、アナターゼ型ともに用いうる。さらにルチル型
とアナターゼ型をともに含有する微粒子も使用できる。
この場合には、アナターゼ型を50〜90%含有するも
のが最も効果的と考えられる。
【0030】さらに成分(2)には、光触媒用として市
販されている酸化チタン粒子を使用できる。かかる粒子
は前述のように合理的な固定化方法がなく、工業的利用
は進んでいなかった。本発明においては、成分(1)
が、成分(2)である光触媒用酸化チタン粒子を分散・
固化させるマトリクスおよび/またはバインダとして機
能する。加えて励起された成分(2)から強力な作用を
受け、成分(1)自体も、単独であるよりさらに活性化
され、特に高効率の光触媒組成物が製造できる。
【0031】本発明の光触媒組成物には、その他にも種
々の化合物を配合できる。特に成分(1)の担う形態保
持、マトリクス、バインダ等の機能を補完、補強する目
的、および成形加工性(例えば成膜性)を高める目的等
から、他の金属酸化物を加えることは好ましい。なかで
も酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム等
は、一般に成形加工性(例えば成膜性)を高め、強靭性
を付与できる点から好ましく用いられる。
【0032】さらに成分(2)には、金属イオンも使用
でき、例えば、V(IV)、Mn(III )、Fe(III
)、Ni(II)、Mo(V)、Ru(III )、Rh(I
II )、Re(V)、Os(III )などの金属イオンが
挙げられる。これら金属イオンは、金属塩などの形で導
入される。
【0033】本発明の光触媒組成物は、さまざまな形態
で利用できる。光触媒の作用部位は前述のように表面で
あることから、粒子状形態が最も効果的であるが、反応
の場のみならず反応後の取扱いも含め、粒子の取扱いは
困難である。一方、バルクなブロック形態のものでは利
用効率が低い。
【0034】成形加工性、取扱い、利用効率等の点か
ら、薄膜の形態が最も有効である。本発明の光触媒組成
物は薄膜成形が容易であり、薄膜での触媒活性も高い。
薄膜形態の場合、その膜厚は薄いほど利用効率は高い
が、成形性の観点から、10nm以上であることが好ま
しい。また厚くしても利用効率を上げることは少なくな
ることから、100μm以下であることが好ましい。
【0035】本発明の光触媒組成物は、透明膜または半
透明膜に容易に成形できるため、光エネルギを有効に取
込みうる。しかも透明基材にも適用でき、基材の外観、
表情を損なうことなく、新たな機能を付与できる。
【0036】本発明の光触媒組成物は、多くの有機物を
その最終段階にまで酸化し、防汚、防臭、抗菌する。膜
状に成形された本発明の光触媒組成物は、種々の形状の
成形加工体に適用できるので、種々の製品に防汚、防
臭、抗菌性能を付与できる。
【0037】本発明の光触媒組成物を表面に施したガラ
ス、セラミックス、タイル、セメント、コンクリート等
は、窓、鏡、壁、屋根、床、天井、内装材等に、有効に
用いられる。さらにソーラー電池、ソーラー温水器等の
受光面に用いるのも、汚れの付着や藻の発生を防止でき
るので効果的である。
【0038】本発明における成分(1)および成分
(2)には、市販材料をそのまま、または、一般的な処
理や反応を施して使用できる。
【0039】成分(2)の添加量は、成分(1)および
成分(2)の総量に対して0.01〜68重量%である
ことが好ましい。0.01重量%以上で限られた光エネ
ルギを有効に取込むことができ、68重量%以下で高い
光活性と耐久性が得られる。一方、68重量%超では膜
は脆くなったり、安定性を失ったりし、高い光活性を発
現、維持するのが困難となる。
【0040】成分(1)と成分(2)の一体化も、一般
的に行われている化学的手法、物理的手法、およびそれ
らを組合わせた手法等を用い、容易に行える。例えば、
成分(1)の前駆体であるチタンアルコキシドのアルコ
ール溶液に、成分(2)の前駆体である金属のアルコキ
シドや塩化合物、酸触媒等を加え、ゾル・ゲル法の手法
で被膜を設けて400〜500℃で焼成すると、成分
(2)を構成する金属酸化物を含有する、酸化チタンの
アナターゼ型相が得られる。
【0041】チタンアルコキシドからなるゾル液を用い
る場合、ゾル液組成や焼成条件等により、アナターゼ型
とルチル型を混在させて成形できる。この方法によれ
ば、一つの前駆体から、本発明の成分(1)と成分
(2)が一体化された光触媒組成物を、一度に調製でき
る。
【0042】また、チタンアルコキシド等の溶液に市販
の金属酸化物微粒子を加えて混合したゾル液を用いる
と、アナターゼ型中に金属酸化物微粒子を分散して複合
化させた、本発明の光触媒組成物が調製できる。かかる
複合体を用いた被膜においても、その金属酸化物の屈折
率や粒子径の選択により、透明膜ともなしうる。
【0043】ただし、成分(2)に酸化チタンの微粒子
を用いる場合は、成分(1)である酸化チタンの前駆体
溶液および/または分散液と微粒子分散液との間に、ゲ
ル化や凝集といった好ましくない現象を起こすことが多
いので、特に注意を要する。このような現象を避ける方
法としては、例えば酸化チタン微粒子にポリメチルシロ
キサン、脂肪酸、高級アルコールなどを修飾[Chro
matographia 24,30(1987)、色
材 65,264(1992)]した後、エタノール、
キシレンなどの有機溶液に分散させた有機系酸化チタン
分散液を、酸化チタン前駆体の有機溶液などと混合する
方法が例示できる。
【0044】かかる有機系の酸化チタン分散液と有機系
の前駆体溶液の混合は、一方を撹拌しながら他方を添加
する方法によっても、あるいは両方を混合した後、1〜
2分撹拌する方法によっても容易に調製できる。
【0045】他の方法としては、水で解膠させた水系酸
化チタンゾルをペルオキソチタン酸等の水溶液および/
または水分散液と混合する方法等がある。かかる水系の
ゾルと水系の前駆体溶液および/または分散液の混合
も、pH調整等により容易に行える。
【0046】アナターゼ型酸化チタンへの金属イオンド
ーピングも、チタンアルコキシド等の溶液にドープ金属
の塩化合物等を加えたゾル液を用い、上記のようなゾル
・ゲル法を用いて行える。
【0047】本発明の光触媒組成物からなる膜を成形体
等に施す方法は、触媒組成、成形体形状等をも加味して
決められるが、光触媒組成物を形成する原料をスプレー
コート、ディップコート、スピンコート、スパッタリン
グ等の方法を用いて行える。
【0048】上記のようにして調合され、特定の形状を
付与された光触媒組成物の原料成分は、乾燥され、焼成
されて、本発明の光触媒組成物となる。乾燥は、溶媒や
分散媒にも依存するが、通常は室温〜200℃の範囲で
行われる。室温より低い温度では長時間を要したり、乾
燥不良を起こしがちで好ましくない。一方、200℃を
超える温度では、本来光触媒組成物の形成に寄与すべき
前駆体成分の一部までも揮散させるので好ましくない。
【0049】焼成は、前駆体化合物の特性にも依存する
が、100〜1000℃の範囲で行うのが一般的であ
る。例えば前駆体化合物にペルオキソチタン酸類を用い
ると、100℃程度でも強力な連続体に焼成できる。し
かしこれより低い温度では脆くなり、好ましくない。一
方、1000℃超では、アナターゼ型を残したまま焼成
するのが困難となるので好ましくない。焼成方法は、瞬
間的に焼成温度に至らせる方法や、数時間かけて焼成す
る方法など種々採用できる。
【0050】例えば所定温度に加熱された基板に本発明
の光触媒組成物を形成する原料を施し、一時に乾燥、焼
成および成形加工を行う方法をも採用できる。かかる方
法では、乾燥温度が200℃以上である場合が多いが、
揮散してしまう前駆体化合物を加味して原料成分を調合
し対処することにより、所定温度に加熱された基板上に
も成形加工でき、連続生産に適する方法となりうる。
【0051】
【作用】本発明の光触媒組成物は、太陽光等の一般住環
境下で得られる光エネルギによって励起され、高い触媒
活性を示す。本発明の光触媒組成物は、光エネルギ源と
して太陽光が好適であるが、一般の室内照明灯である蛍
光灯の発する光においても有効である。さらにブラック
ライト、フィラメントランプ、水銀灯からの光等に対し
ても有効である。
【0052】本発明の光触媒組成物は、光エネルギの取
込みと触媒活性作用を機能的に結び付け、高効率の光触
媒機能を発現している。
【0053】触媒がその機能を発現するためには、a)
光エネルギを吸収する、b)吸収したエネルギで励起子
を形成する、c)励起子は反応の場に移動してその機能
を発現する、といった経路を経る。例えば酸化チタンは
現在最も優れた光触媒であると考えられている。しかも
酸化チタンのバンドギャップに相当するエネルギを持つ
光の波長が400nm前後であることから、太陽光から
も充分な励起エネルギを得ることができるものと期待さ
れた。
【0054】しかし、本発明の光触媒組成物を構成する
成分(1)でもある酸化チタンのアナターゼ型薄膜単体
に、300nm近傍の紫外線を照射すると膜表面で強力
な酸化力が発現されるのに対し、太陽光を照射してもほ
とんど触媒効果は観察されない。すなわちアナターゼ型
薄膜は、励起に必要なエネルギを吸収しさえすれば上記
のb)とc)を支障なく進められるが、太陽光からのエ
ネルギは吸収できないため、太陽光下では触媒活性をほ
とんど示さなかったものと判断された。
【0055】そこで上記a)の役割を担うものとして、
本発明では新たに成分(2)を導入している。すなわち
成分(2)は、365±45nm波長域の光を吸収し、
成分(2)に吸収された光エネルギは直接的および/ま
たは間接的に成分(1)に作用し、成分(1)に励起子
を形成させ、触媒活性を発現させている。
【0056】成分(2)自体が触媒効果を持つ場合は、
本発明の光触媒組成物の触媒効果がさらに高まる。ま
た、成分(2)に金属イオンを含有する場合は、金属イ
オンが光吸収能が高いことに加えて、優れた励起子トラ
ップ作用を有する。そしてトラップされた励起子は反応
の場に効率良く運ばれ触媒作用をさらに高める。
【0057】
【実施例】
[例1]5gのアセチルアセトン、55gのイソプロパ
ノール、20gのエチレングリコール、20gのテトラ
ヒドロフランを混合した溶液に、100mmolのテト
ラブトキシチタンを加えて溶解させた。この溶液に、1
mmolの硝酸と200mmolの水を加えて1時間撹
拌混合し、ゾル液Aを得た。このゾル液Aを市販のフロ
ートガラスにスピンコートして120℃にて乾燥後、8
00℃にて20分間焼成して、光触媒コートガラスを得
た。
【0058】この光触媒コートガラスについて、X線回
折分析したところ、アナターゼ型とルチル型の両方の生
成が確認され、成分(2)のルチル型の含有割合は、X
線回折パターンのピーク面積から20重量%であると推
定された。
【0059】[例2]ゾル液Aの100gに、酸化亜鉛
のトルエン分散液(粒径が10〜25nmである市販の
酸化亜鉛を2g含有)6.67gを加えて撹拌混合し、
ゾル液Bを得た。このゾル液Bを市販のフロートガラス
にスピンコートして120℃にて乾燥後、500℃にて
10分間焼成して、光触媒コートガラスを得た。
【0060】[例3]テトラブトキシチタン100mm
olの代りにテトライソプロポキシチタン100mmo
lを用いた他は、例1と同様にしてゾル液Cを調製し
た。このゾル液Cの100gに、酸化チタンのトルエン
分散液(粒径が15〜30μmである市販のアナターゼ
型酸化チタンに1,3,5,7−テトラメチルシクロテ
トラシロキサンを8重量%グラフトさせた後、トルエン
に分散させた分散液であって、酸化チタンを1.5g含
有)7.5gを加えて撹拌混合し、ゾル液Dを得た。こ
のゾル液Dを市販のフロートガラスにディップコートし
て120℃にて乾燥後、500℃にて10分間焼成し
て、光触媒コートガラスを得た。
【0061】[例4]例3で用いたアナターゼ型酸化チ
タンのトルエン分散液7.5gの代りにルチル型酸化チ
タンのトルエン分散液(粒径が10〜30μmである市
販のルチル型酸化チタンに1,3,5,7−テトラメチ
ルシクロテトラシロキサンを8重量%グラフトさせた
後、トルエンに分散させた分散液であって、酸化チタン
を1.5g含有)7.5gを用いた他は、例3と同様に
して、ゾル液Eを得た。このゾル液Eを市販のフロート
ガラスにディップコートして120℃にて乾燥後、50
0℃にて10分間焼成して、光触媒コートガラスを得
た。
【0062】[例5]5gのアセチルアセトン、55g
のイソプロパノール、20gのエチレングリコール、2
0gのテトラヒドロフランを混合した溶液に、80mm
olのテトライソプロポキシチタンと14mmolの塩
化スズを加えて溶解させた。この溶液に1mmolの硝
酸と188mmolの水を加えて1時間撹拌混合し、ゾ
ル液Fを得た。このゾル液Fを市販のフロートガラスに
ディップコートして120℃にて乾燥後、500℃にて
10分間焼成して、光触媒コートガラスを得た。
【0063】[例6]5gのアセチルアセトン、55g
のイソプロパノール、20gのエチレングリコール、2
0gのテトラヒドロフランを混合した溶液に、100m
molのテトライソプロポキシチタンと0.1mmol
の五塩化モリブデンを加えて溶解させた。この溶液に1
mmolの硝酸と200mmolの水を加えて1時間撹
拌混合し、ゾル液Gを得た。このゾル液Gを市販のフロ
ートガラスにディップコートして120℃にて乾燥後、
500℃にて10分間焼成して、光触媒コートガラスを
得た。
【0064】[例7〜8(比較例)]ブランクテストと
して、市販のフロートガラスのみを用いた場合(例7)
と、焼成温度を800℃の代りに500℃とした他は例
1と同様にして得た光触媒コートガラスの場合(例8)
についても試験した。例8の光触媒コートについて、X
線回折分析したところ、成分(1)であるアナターゼ型
のみが確認され、ルチル型は確認されなかった。
【0065】[評価]以上の例1〜8の光触媒コートガ
ラス(ただし例7は市販のフロートガラス)について、
汚染物除去率を測定した結果を表1に示す。なお、汚染
物除去率は、市販水溶性染料の5%エタノール溶液でマ
ーク後、10時〜16時の間太陽光下に暴露し、次式で
求めた。
【0066】汚染物除去率(%)=100(△E1 −△
2 )/△E1 ここで、△E1 は光触媒コートガラスに対する汚染物マ
ークガラスの色差、△E2 は汚染物マークガラスを6時
間太陽光下に暴露した後の光触媒コートガラスに対する
色差を示す。
【0067】表1より明らかなように、本発明の光触媒
組成物を用いた光触媒コートガラスは汚染物除去率が高
い。成分(2)として、酸化チタン粒子を用いた場合に
は、特に良好な結果が得られる。
【0068】また、以上の評価とは別に、基材への密着
性、強度、耐久性についても評価した結果、例1〜6は
いずれの性能も実用上問題ない充分な性能を有すること
が確認された。
【0069】
【表1】
【0070】
【発明の効果】本発明の光触媒組成物は、太陽光や室内
照明光の下で、優れた防汚、防臭、抗菌性等を発現す
る。また本発明の光触媒組成物は、製造容易であり、種
々の形状に加工できる。さらに基材への密着性も高く、
強度、耐久性等にも優れる。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】半導体光触媒化合物からなる成分(1)
    と、365±45nmの波長域の光の吸収能が高い化合
    物からなる成分(2)とを含有する光触媒組成物。
  2. 【請求項2】前記成分(1)は、アナターゼ型相の酸化
    チタンである請求項1の光触媒組成物。
  3. 【請求項3】前記成分(2)は金属酸化物である請求項
    1または2の光触媒組成物。
  4. 【請求項4】前記金属酸化物は微粒子の金属酸化物であ
    る請求項3の光触媒組成物。
  5. 【請求項5】前記微粒子の金属酸化物が酸化チタンであ
    り、平均粒径が1〜100nmである請求項3または4
    の光触媒組成物。
  6. 【請求項6】前記成分(2)は金属イオンである請求項
    1または2の光触媒組成物。
  7. 【請求項7】前記光触媒組成物の形態は膜状の形態であ
    る請求項1〜6いずれか1項の光触媒組成物。
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