JP4011705B2 - 光触媒配合物と光触媒含有物並びに光触媒機能発揮材およびその製造方法 - Google Patents

光触媒配合物と光触媒含有物並びに光触媒機能発揮材およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光の照射を受けると触媒として機能する光触媒が配合された光触媒配合物と、この光触媒配合物を用いた光触媒機能発揮材および光触媒配合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の光触媒は、触媒反応に用いるエネルギが太陽光等の光エネルギで無尽蔵であることからその用途が拡大しつつある。例えば、光触媒の一種である二酸化チタン(TiO2 )、特に結晶型がアナターゼ型の二酸化チタンは、照射された光(紫外線)のエネルギにより励起電子と正孔を生成し、その生成した励起電子と正孔により触媒表面での酸素と水分の存在下でO2-、O- 、・OH(・は不対電子を示しラジカル種であることを意味する)等の活性酸素種を生成する。そして、この活性酸素種の有するラジカルな性質を利用して、大気中の窒素酸化物(NOx)を活性酸素種による酸化反応に供して無害な反応物(硝酸)にするという大気浄化の用途や、有機成分の酸化を通した細菌の分解、いわゆる抗菌の用途などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、窒素酸化物が活性酸素種による酸化反応を受ける過程では、二酸化窒素(NO2 )が中間生成物として生成され、この二窒素酸化物が更に酸化を受け最終的には硝酸とされる。そして、この硝酸の生成をもって大気中の窒素酸化物が削減され大気が浄化される。このため、窒素酸化物の削減効率を高めるには、活性酸素種と窒素酸化物或いは二酸化窒素とが共存することが不可欠である。しかし、二酸化窒素は化学的に比較的安定した化合物(ガス)であるので、生成された二酸化窒素は反応の系外に離脱して活性酸素種による酸化反応の効率が低下し、結果的に削減効率も低下する事態となる。なお、活性炭のような多孔質の吸着剤を用いて二酸化窒素の離脱の抑制を図ることも考えられるが、以下に説明するように必ずしも効果的とはいえない。
【0004】
このような吸着剤では、一旦離脱した二酸化窒素を吸着した場合、この二酸化窒素を吸着剤の細孔内に吸着したままで放出しないことがある。このため、吸着した二酸化窒素が活性酸素種による酸化反応の系外におかれてこの酸化反応を受けず、最終生成物である硝酸となることがないことがある。よって、窒素酸化物が最終的に硝酸にまで変遷せず削減効率が阻害される。もっとも、活性酸素種との共存が可能で反応の系内にある領域、即ち光触媒に近接した領域で吸着剤に吸着された二酸化窒素は酸化されて硝酸となるが、光触媒に近接した領域は吸着剤における物質の吸着領域全体(細孔を含む)に対してはごく限られているため、硝酸にまで酸化されない二酸化窒素の割合は高いといえる。つまり、吸着剤を用いても二窒素酸化物を吸着保持するに止まり、硝酸にまでの変遷を通した窒素酸化物の削減は十分とはいえないと思われる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされ、光触媒が関与する触媒反応のより一層の効率化を図ること、或いはこの触媒反応に供される被反応物の最終生成物への変遷を通した削減効率の向上を図ることを目的とする。また、光触媒が果たす機能を補完することを他の目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
かかる課題を解決するため、本発明の光触媒配合物は、複合材の表面層を形成可能な配合物であって、
該配合物が、
成分(i)光の照射を受けると触媒として機能する光触媒と、
成分( ii )A1 、ZnO、SrO、BaO、MgO、CaO、Rb O、Na O、およびK Oからなる群から選択される少なくとも一の金属酸化物と
成分( iii )SiO 、ZrO 、GeO 、およびThO からなる群から選択される少なくとも一の金属酸化物と
を含んでなるものである。
すなわち、本発明の光触媒配合物は、光の照射を受けると触媒として機能する光触媒と成分( ii )および( iii が配合された光触媒配合物であって、前記成分( ii は、前記光触媒が関与する触媒反応に供される被反応物が該触媒反応を受けて化学変化し該被反応物の構造と前記触媒反応とで規定される最終生成物に変遷する場合、前記光触媒との共存下で、前記被反応物から前記最終生成物への変遷程度を高めるよう機能する化合物であることを特徴とする。
【0007】
上記構成を有する本発明の光触媒配合物によれば、被反応物から最終生成物への変遷程度が高まるので、被反応物の削減効率を高めることができる。
【0008】
上記の構成を有する本発明の光触媒配合物において、以下の態様を採ることができる。
本発明の好ましい態様によれば、前記成分( ii は、前記被反応物或いは前記被反応物が前記触媒反応を受けて前記最終生成物に変遷する以前に生成される中間生成物と化学的に結合する化合物である。
【0009】
の態様では、被反応物或いは中間生成物は、光触媒と共に配合された成分( ii と化学的に結合して保持される。そして、この被反応物或いは中間生成物を保持したこの成分( ii は、多孔質の構造を採るものではないため、光触媒が関与する触媒反応の系外、即ち光触媒から離れた領域にこれら被反応物或いは中間生成物をおくものではなく、共に配合された光触媒との隣接を通して、触媒反応の系内にこれら被反応物或いは中間生成物をおく。しかも、被反応物或いは中間生成物との結合が化学的なものであることから、触媒反応の系内にこれら被反応物或いは中間生成物を確実におくことができる。この結果、この態様の光触媒配合物によれば、被反応物が触媒反応に供される機会や中間生成物が更にこの触媒反応に供される機会を確実に確保でき、触媒反応をより一層効率的に進行させることができる。そして、触媒反応の効率向上を通して被反応物から最終生成物への変遷程度が高まるので、被反応物の削減効率を高めることができる。
【0010】
本発明の好ましい態様によれば、前記光触媒は、照射された光のエネルギにより励起電子と正孔を生成し、触媒表面での酸素と水分の存在下で前記励起電子と正孔により活性酸素種を生成する光触媒である。
【0011】
の態様によれば、光触媒が生成した活性酸素種に基づいた触媒反応の系内に被反応物或いは中間生成物をおいて、これら被反応物が触媒反応に供される機会や中間生成物が更にこの触媒反応に供される機会を確実に確保でき、触媒反応をより一層効率的に進行させることができる。よって、被反応物の削減効率を高めることができる。
【0012】
この場合、光触媒としては、二酸化チタン(T2,)や酸化亜鉛(ZnO)、酸化バナジウム(V25)、酸化タングステン(WO3 )等を例示することができる。これら光触媒はその有する結晶型に捕らわれることはなく、例えば、アナターゼ型、ルチル型或いはブルッカイト型の結晶型を有する二酸化チタンにあっては、いずれの結晶型でもよい。最も、入手の容易さ等からは、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。また、活性酸素種に基づいた触媒反応に供される被反応物とその中間生成物並びに最終生成物としては、窒素酸化物と二酸化窒素と硝酸、硫黄酸化物と二酸化硫黄と硫酸或いは亜硫酸、一酸化炭素と二酸化炭素と炭酸等を例示することができる。また、アンモニアも被反応物として例示することができ、この場合の中間生成物並びに最終生成物は、アンモニアから生成された一酸化窒素、二酸化窒素と硝酸となる。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、前記成分( ii は、前記活性酸素種に基づく前記触媒反応に供される前記被反応物或いは前記中間生成物と化学的に結合する両性金属酸化物、塩基性金属酸化物又は酸性金属酸化物の少なくとも一の金属酸化物である。
【0014】
の態様によれば、光触媒が生成した活性酸素種に基づいた触媒反応の系内に被反応物或いは中間生成物をおくに当たり、被反応物或いは中間生成物が酸性である場合には、いわゆる塩基点を塩基性金属酸化物の原子配列に起因する特定の原子で形成でき、この塩基点で塩基性金属酸化物と被反応物或いは中間生成物を確実に化学的に結合させることができる。また、被反応物或いは中間生成物が塩基性である場合には、いわゆる酸点を酸性金属酸化物の原子配列に起因する特定の原子で形成でき、この酸点で酸性金属酸化物と被反応物或いは中間生成物を確実に化学的に結合させることができる。更には、成分( ii を両性金属酸化物とすれば、この両性金属酸化物の原子配列に起因する特定の原子を被反応物或いは中間生成物の性質に適合した塩基点若しくは酸点とすることができるので、被反応物或いは中間生成物が塩基性と酸性のいずれであっても、この両性金属酸化物と被反応物或いは中間生成物を確実に化学的に結合させることができる。
【0015】
この場合、両性金属酸化物としては、アルミナ(Al23)や酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO、SnO2 )等を例示することができる。また、塩基性金属酸化物としては、酸化ストロンチウム(SrO)や酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ルビジウム(Rb2O )、酸化ナトリウム(Na2O )、酸化カリウム(K2O )等を例示することができる。更に、酸性金属酸化物としては、酸化リン(P25)等を例示することができる。これらの金属酸化物において塩基点或いは酸点を形成するのは、金属酸化物を構成する金属原子と酸素原子の電気陰性度の差および金属酸化物表面における金属原子と酸素原子の原子配列に起因する。そして、活性酸素種に基づいた触媒反応に供される上記の被反応物とその中間生成物に対応させて、上記の塩基性金属酸化物、酸性金属酸化物、両性金属酸化物を適宜選択すればよい。なお、酸化亜鉛は光触媒であると共に両性金属酸化物であるので、光触媒として酸化亜鉛を選択した場合には、両性金属酸化物として酸化亜鉛を選択することはないことは勿論である。
【0016】
ここで、光触媒が二酸化チタン、化合物が両性金属酸化物であるアルミナ、被反応物が窒素酸化物(一酸化窒素)とした場合を例に採り、触媒反応の進行の様子並びにアルミナによる結合の様子について説明する。なお、この場合には、二酸化チタンが生成した活性酸素種により一酸化窒素は酸化され、中間生成物たる二酸化窒素となる。図1に模式的に示すように、光触媒たる二酸化チタンに一酸化窒素が接触若しくは近接すると、この一酸化窒素は、光の照射を受けて二酸化チタンが生成した活性酸素種である・OH(水酸ラジカル)により二酸化窒素(ガス)に酸化される(図1(a))。この二酸化窒素はその分子構造から酸性であり、アルミナは両性金属酸化物であってその有する酸素原子を酸性ガスに対しては塩基点とするので、二酸化窒素は、この酸素原子に引き寄せられ化学的に結合しアルミナに保持される(図1(b))。なお、酸素原子に二酸化窒素を引き寄せる力はクーロン力であり、結合は化学的である。
【0017】
アルミナの酸素原子に結合した二酸化窒素は、光触媒である二酸化チタンに近接して留め置かれるので、水酸ラジカル・OHにより引き起こされる酸化反応(触媒反応)の系内にある(図1(b))。このため、二酸化窒素がこの水酸ラジカル・OHにより酸化される機会が確実に確保され、二酸化窒素の酸化は効率的に進行する。なお、酸化された二酸化窒素は、硝酸イオンとなり、水酸ラジカル・OHにおける水素原子と共に硝酸の形態(最終生成物)で上記の塩基点とされたアルミナの酸素原子に結合・保持されていると考えられる(図1(c))。
【0018】
この場合、当初から二酸化窒素が存在すれば、つまり、二酸化窒素が被反応物であれば、この二酸化窒素は二酸化チタンが生成した活性酸素種により直接酸化されると共に、上記のようにアルミナに化学的に結合した二酸化窒素もこの活性酸素種により酸化されることになる。換言すれば、このような場合には、アルミナが被反応物たる二酸化窒素を化学的に結合することになる。
【0019】
次に、二酸化チタンの生成した活性酸素種により一酸化硫黄(SO)と一酸化炭素(CO)が酸化された場合のアルミナによる結合の様子について説明する。これら酸化物が酸化されると二酸化硫黄、二酸化炭素となり、やはり酸性ガスとなる。このため、図2に模式的に示すように、二酸化硫黄は、両性金属酸化物であるアルミナの有する塩基点であって隣接する酸素原子と化学的に結合し、アルミナに保持される。また、図3に模式的に示すように、二酸化炭素は、炭素原子と酸素原子とは異なる結合次数で結合できることから、上記のように塩基点となる単独の酸素原子と(図3(a))、或いは塩基点となり隣接する酸素原子と(図3(b))化学的に結合し、アルミナに保持される。そして、このように結合・保持された二酸化硫黄は、二酸化チタンが生成した活性酸素種(水酸ラジカル・OH)と更に反応して硫酸や亜硫酸(最終生成物)となり、二酸化炭素は炭酸(最終生成物)になる。なお、二酸化炭素にあっては、活性酸素種たる水酸ラジカル・OHの生成の際に生成されるラジカルな水素原子と活性酸素種とに基づく反応により、メタンやメタノールに変遷するとも考えられ、この場合にはこのメタンやメタノールも最終生成物といえる。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、前記成分( ii は、その重量をa、前記光触媒の重量をbと表した場合、a/(a+b)が約0.0001〜0.8となるように配合されている。
【0021】
の態様のように、a/(a+b)が約0.0001以上であれば、aで表される成分( ii (両性金属酸化物、塩基性金属酸化物、酸性金属酸化物)により、被反応物或いは中間生成物の化学的な結合を確保して触媒反応の効率低下をきたさないので好ましい。また、a/(a+b)が約0.8以下であれば、bで表される光触媒の量が上記の成分( ii に対して少なすぎることがなく、触媒反応の効率低下をきたさないので好ましい。
【0022】
この場合、光触媒の量は、光触媒とそれ以外の配合物である上記の化合物と、その他の配合物がある場合には当該その他の配合物との総量に対して、約20〜95wt%程度であればよい。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、前記光触媒と前記成分( ii とは、約0.005〜0.5μmの粒径範囲で調整されて配合されている。
【0024】
態様のように、光触媒と成分( ii (両性金属酸化物、塩基性金属酸化物、酸性金属酸化物)の粒径が約0.005〜0.5μmの範囲であれば、ボールミル等の既存の粉砕装置又はゾル・ゲル法で容易に粒径調整ができ好ましい。また、この態様によれば、光触媒と成分( ii の粒径に著しい相違が見られないので、光触媒と成分( ii とがほぼ同様の大きさの粒子で近接する。よって、この成分( ii と化学的に結合した被反応物或いは中間生成物を光触媒に近接させることができ、触媒反応の進行機会の十分な確保を通した高効率化を図ることができ好ましい。
【0025】
本発明の好ましい態様によれば、前記光触媒と前記成分( ii に加え、水酸基を化学吸着する性質を有する化合物を成分( iii として配合して備え、前記水酸基を前記光触媒および前記成分( iii としての化合物の表面に化学吸着して保持し、該保持された水酸基により親水性を発揮するものである。
【0026】
の態様では、光触媒の触媒反応を経て生成された水酸基は、光触媒はもとより成分( iii の化合物の表面に化学吸着して保持される。そして、触媒表面における水分(空気中水蒸気や雨水等)がゼロとなる事態は起きないので、光が照射されている間は、水酸基は絶えず生成されているといえる。このため、水酸基は極めて高い密度で保持され、しかもその保持は化学吸着という結合でなされているので、水酸基は強固に保持されているといえる。その一方、光が照射されない間では、光触媒による水酸基生成は起きないが、それまでに生成されていた水酸基が光触媒と成分( iii の化合物の表面に強固に保持されており、不用意に水酸基が取り除かれることはない。しかも、改めて光が照射されれば、それまでに水酸基の密度が低下していても、高密度の保持状態に速やかに復帰する。従って、この態様の光触媒配合物を何らかの基材表面に固定すれば、この基材表面を確実に高い親水性とし、この高親水性を長期に亘り確実に維持することができる。つまり、この態様の光触媒配合物は、基材表面に高い親水性を付与する親水性付与材となる。
【0027】
ここで、親水性のもたらす効果について説明する。親水性は水との接触角に強く関与し、親水性が高いとこの接触角は小さくなる。その一方、接触角が小さいとその表面には水が留まり難くなるので、表面に付着した汚れは、この水と共に流れ落ち表面から除去される。よて、親油性成分を多く含む都市塵埃や粘土鉱物のような無機質塵埃等の接触角を下回る接触角を呈することのできる親水性が得られれば、これら塵埃を親和性を発揮させることなく除去できる。しかも、接触角がゼロ度に近づくほど親水性は高まり、水は基材表面で膜状に拡散し流れやすくなるので、上記の都市塵埃はもとより無機塵埃も容易に基材表面から水と共に流れ落ちる。この場合、汚れ防止効果を高める上では、接触角が約20゜以下でゼロに近い値であることがより好ましい。
【0028】
よって、この態様の光触媒配合物を建築物内外壁表面や自動車、電車等の車両ボディ表面に固定すれば、このように付与された高い親水性をもってして高い汚れ防止効果を奏することができる。この場合、これら表面に時折雨が降り注げば、高い親水性が付与されているためにその降雨の都度に表面の粉塵や汚濁物質は雨水と共に表面から洗い流されるので、これら表面は自己浄化される。つまり、水の流れに沿って筋状に粉塵等が残るいわゆる雨筋汚れが効果的に抑制される。また、この態様の光触媒配合物をガラスやレンズ或いは鏡等の表面に固定すれば、高い親水性をもってして高い防曇効果を奏することができる。
【0029】
本発明の好ましい態様によれば、前記成分( iii としての化合物は、前記光触媒が有する湿潤熱と同程度以上の湿潤熱を有する化合物である。
【0030】
湿潤熱は、表面に水酸基が存在し得る物質ではその表面の水酸基の保持特性を示す指標として捉えることができ、湿潤熱が高いほど水酸基保持の程度が高く水酸基密度が高い。よって、この態様によれば、光触媒が生成した水酸基を、より効果的かつ高密度で、成分( iii の化合物に化学吸着して保持でき、基材表面に高親水性をより確実かつ長期に亘り付与することができる。この場合、光触媒として特に好ましいチタニアの湿潤熱は、アナターゼ型で320〜512x10-3Jm-2、ルチル型で293〜645x10-3Jm-2であることから、500x10-3Jm-2以上の湿潤熱を有する化合物であることがより好ましい。
【0031】
本発明の配合物において、前記成分(iii)としての化合物は、SiO2 ,ZrO2 ,GeO2,ThO2 ,ZnOから選ばれた少なくとも一の金属酸化物である。
【0032】
これら金属酸化物は、光触媒として特に好ましいチタニアの湿潤熱と同等以上の湿潤熱を有するので、水酸基の保持密度がより高まり好ましい。特に、シリカ(SiO2 )、GeO2 ,ThO2 は、その有する湿潤熱の範囲における上限が1000x10-3Jm-2を越えるためより好ましい。
【0034】
本発明の好ましい態様によれば、前記光触媒と前記成分( ii および前記成分( iii としての化合物に加え、抗菌性を発揮する金属を成分( iv として配合して備え、前記成分( iv としての金属は前記光触媒に担持されている。
【0035】
の態様では、光が照射されている間は光触媒自体が果たすことのできる抗菌機能を、光が照射されていない間にあっては、この抗菌機能を、光触媒に担持した金属により果たすことができる。このため、光触媒が果たす抗菌機能を補完することができ、抗菌性を発揮する金属と光触媒とで、相乗的な抗菌性を発揮できる。
【0036】
本発明の好ましい態様によれば、前記成分( iv としての金属は、前記光触媒が放出する自由電子の有する電位以上の還元電位を有する金属である。
【0037】
の態様では、光触媒への金属の担持を、この金属の有する還元電位によって容易に行うことができる。この場合、Ag、Cu、Pd、Fe、Ni、Cr、Co、Pt、Au、Li、Ca、Mg、Al、Zn、Rh、Ruから選ばれた少なくとも一の金属であれば、上記の還元電位を有するので好ましく、Ag、Cu、Pd、Pt、Auは、還元電位が正の値を有するので、還元担持が起きやすく特に好ましい。そして、成分( iv として選ばれた金属は、その重量をc、光触媒の重量をdと表した場合、c/dが約0.00001〜0.05となるように配合されていることが好ましい。即ち、成分( iv の金属が0.00001(=c/d)以上あれば、当該金属が少なすぎて相乗的な抗菌性を全く発揮できないというような事態が起きず、0.05(=c/d)以下であれば、当該金属が過剰となって光触媒の触媒反応に悪影響を与えるといった事態が起きずに好ましい。
【0038】
本発明の光触媒含有材は、光の照射を受けると触媒として機能する光触媒を有する光触媒含有材であって、上記した本発明の光触媒配合物又はその各態様の光触媒配合物が塗料又は釉薬に混合分散されてなるものである。
【0039】
上記構成を有する本発明の光触媒含有材たる塗料および釉薬では、本発明の光触媒配合物と同様に、被反応物の削減効率を高めたり、触媒反応の系内に被反応物或いは中間生成物を確実におくことができる。よって、この塗料が塗布されたものの表面において、或いは釉薬が施釉されたものの表面において、被反応物を効率よく削減することができる。また、これら表面において、被反応物が触媒反応に供される機会や中間生成物が更にこの触媒反応に供される機会を確実に確保でき、触媒反応をより一層効率的に進行させることができる。
【0040】
この場合、光触媒と化合物の混合分散対象である塗料や釉薬は既存のものでよく、釉薬の場合にあっては、釉薬原料、例えば長石や炭酸カリウム等のフリット等と共に光触媒と化合物が溶液中に分散している。なお、光触媒と化合物の分散混合に際しては、釉薬製造の過程で上記の釉薬原料と共に配合してもよく、完成済みの釉薬にその施釉に先立ち配合してもよい。
【0041】
上記の本発明の光触媒含有材において、前記光触媒は、照射された光のエネルギにより励起電子と正孔を生成し、触媒表面での酸素と水分の存在下で前記励起電子と正孔により活性酸素種を生成する光触媒であり、前記成分( ii は、前記活性酸素種に基づく前記触媒反応に供される前記被反応物或いは前記中間生成物と化学的に結合する両性金属酸化物、塩基性金属酸化物又は酸性金属酸化物の少なくとも一の金属酸化物である、光触媒含有材(塗料又は釉薬)であれば、次のような利点がある。
【0042】
この光触媒含有材によれば、本発明の光触媒配合物の上記した態様と同様に、塩基点や酸点で被反応物或いは中間生成物を確実に結合・保持して、活性酸素種に基づいた触媒反応の系内にこれら被反応物或いは中間生成物をおくことができる。よって、この光触媒含有材たる塗料が塗布されたものの表面において、或いは釉薬が施釉されたものの表面において、触媒反応をより一層効率的に進行させることができ、これを通して被反応物の削減効率を高めることができる。また、成分( iii の化合物を有する光触媒配合物を用いることにより、これら表面において、高い親水性に基づいた高い汚れ防止効果を奏することができ好ましい。更に、本発明の光触媒配合物の好適態様のように成分( iv の金属を有する光触媒配合物を用いた場合にあっては、これら表面において、抗菌性を発揮する金属と光触媒とで、相乗的な抗菌性を発揮でき好ましい。
【0043】
また、この本発明の光触媒含有材、特に塗料にあっては、既存のビル、家屋並びに橋梁等の建築構造物内外壁や道路のガードレール、遮音壁等の既存構造物にこの塗料をもってして光触媒含有材の塗膜を形成できる。従って、既存構造物を被反応物の削減効率が高く、高い汚れ防止効果をも奏することのできるものに、容易に改変することができる。
【0044】
本発明の複合材は、基材と、表面層とを少なくとも有してなる、前記表面層が親水性でかつ自己浄化能を備えてなる、表面に時折雨が降り注ぐ環境において大気中の窒素酸化物、アンモニア、および/または二酸化硫黄を削減するために用いられる複合材であって、
前記表面層が、
成分(i)光の照射を受けると触媒として機能する光触媒と、
成分( ii )A1 、ZnO、SrO、BaO、MgO、CaO、Rb O、Na O、およびK Oからなる群から選択される少なくとも一の金属酸化物と
成分( iii )SiO 、ZrO 、GeO 、およびThO からなる群から選択される少なくとも一の金属酸化物を
を含んでなるものである。
すなわち、本発明の複合材は、基材層とその表面に形成された表面層とを有し、光の照射を受けると光触媒機能を発揮する材料であって、前記表面層として、上記した本発明の光触媒配合物又はその各態様の光触媒配合物からなる表面層、又は上記した本発明の光触媒含有材からなる表面層を有する複合材である。
【0045】
この本発明の複合材は、成分( iii としての化合物、又はこの成分( iii に加え成分( iv としての金属を有する光触媒配合物又は光触媒含有材からなる表面層を有するものにあっては、前記表面層は、下記の条件(1)、(2)のいずれかを満たす表面性状を有する態様とすることができる。
(1)表面層膜厚:約0.01〜約3.0μm
(2)1%の硝酸銀溶液を表面層に付着させた状態で、該表面層上における紫外線強度が1.2mW/cm2 で前記表面層に紫外線を5分間照射した際の紫外線照射前と紫外線照射後の表面層の色差△E:1〜50
【0046】
この態様の複合材では、表面層に成分( iii としての化合物を含有することになるので、この成分( iii の化合物により、本発明の光触媒配合物の好適態様のように、この表面層において、接触角が小さくなって親水性が向上し高い汚れ防止効果を奏することができる。そして、表面層膜厚が約0.01μm以上であれば、膜(表面層)が薄すぎることがないために、表面層自体の接触角をこの材料として呈することが確実にでき好ましい。つまり、基材が大きな接触角をもっていても、この基材に形成した表面層により接触角は小さくなり、高い汚れ防止効果を奏することができる。一方、表面層膜厚が約3.0μm以下であれば、基材への表面層の密着性を維持できるため、表面層剥離(膜剥離)を抑制でき好ましい。成分( iii としての化合物に加え成分( iv としての金属を有するものについても同様である。
【0047】
また、表面層に付着した硝酸銀溶液中の銀イオンは、紫外線が照射され励起状態となった光触媒から励起電子を受け取ることにより還元析出し、呈色する。このため、紫外線照射の前後で色差△Eが観察される。従って、励起電子の生成が多いほどこの色差△Eは大きくなる。励起電子の生成量は光触媒の光活性の大きさを決定する因子であるので、光触媒活性の大きさを色差△Eを用いて評価することができる。光触媒の励起電子は空気中では水酸ラジカル・OH等の活性酸素種を生成するので、光触媒活性が大きいほど、即ち色差△Eが大きいほど水酸ラジカル・OH等の活性酸素種を多く生成する。
【0048】
ところで、表面層に含まれる成分( iii の化合物は、光触媒の励起電子により生成した水酸ラジカル・OHを保持する役割を持ち、生成した水酸ラジカル・OHの量が多いほど、成分( iii の化合物表面の水酸基密度も高まり、水の接触角が小さくなって親水性が高まる。また、水酸ラジカル・OHの量が多いほど、表面層の有機化合物の分解量が増し、親水性に有利となる。よって、色差△Eが1以上を示す表面層であれば、それは高い水酸基密度を形成するに十分な光触媒活性があり、これによる表面層の接触角も、汚れ防止効果を奏することができる程度まで確実に小さくすることができると思われ、好ましい。その一方、表面積単位面積当たりのバインダーに対する光触媒の量が増えれば色差△Eは大きくなるが、この場合は基材への密着性が低下し表面層の剥離が起きやすくなると考えられる。このため、色差△Eが50以下を示す表面層であれば、表面層の剥離を抑制する観点から好ましい。
【0049】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の複合材は、基材層とその表面に形成された表面層とを有し、光の照射を受けると光触媒機能を発揮する材料であって、前記表面層は、上記した本発明の光触媒配合物又はその各態様の光触媒配合物がバインダを介在させて前記基材層表面に形成された表面層である光触媒機能発揮材である。
【0050】
この態様の光触媒機能発揮材において、前記バインダは、基材層の基材の変質温度以下の温度で、重合若しくは溶融して基材層表面に光触媒配合物を接着するバインダとすることや、釉薬或いは塗料とすることが好適である。
【0051】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の複合材は、基材層とその表面に形成された表面層とを有し、光の照射を受けると光触媒機能を発揮する材料であって、前記表面層は、光触媒としてのTiO2 に加え、Al23と、SiO2 と、抗菌性を発揮する金属を含有する光触媒機能発揮材である。
【0052】
上記構成を有する本発明の複合材では、基材層に形成した表面層の表面において、本発明の光触媒配合物と同様に、被反応物の削減効率を高めたり、触媒反応の系内に被反応物或いは中間生成物を確実におくことができる。よって、この光触媒機能発揮材の表面層表面において、被反応物を効率よく削減できると共に、被反応物が触媒反応に供される機会や中間生成物が更にこの触媒反応に供される機会を確実に確保でき、触媒反応をより一層効率的に進行させることができる。また、表面層に抗菌性を発揮する金属を含有するので、この表面層において、抗菌性を発揮する金属と光触媒とで、相乗的な抗菌性を発揮でき好ましい。
【0053】
上記の本発明の複合材において、前記光触媒は、照射された光のエネルギにより励起電子と正孔を生成し、触媒表面での酸素と水分の存在下で前記励起電子と正孔により活性酸素種を生成する光触媒であり、前記成分( ii は、前記活性酸素種に基づく前記触媒反応に供される前記被反応物或いは前記中間生成物と化学的に結合する両性金属酸化物、塩基性金属酸化物又は酸性金属酸化物の少なくとも一の金属酸化物である、光触媒機能発揮材であれば、次のような利点がある。
【0054】
この光触媒機能発揮材によれば、本発明の光触媒配合物の上記した態様と同様に、塩基点や酸点で被反応物或いは中間生成物を確実に結合・保持して、活性酸素種に基づいた触媒反応の系内にこれら被反応物或いは中間生成物をおくことができる。よって、この光触媒機能発揮材の表面層表面において、触媒反応をより一層効率的に進行させることができ、これを通して被反応物の削減効率を高めることができる。また、成分( iii の化合物を有する光触媒配合物或いは光触媒含有材を用いることにより、これら表面において、高い親水性に基づいた高い汚れ防止効果を奏することができ好ましい。更に、本発明の光触媒配合物の好適態様のように成分( iv の金属を有する光触媒配合物或いは光触媒含有材を用いた場合にあっては、これら表面において、抗菌性を発揮する金属と光触媒とで、相乗的な抗菌性を発揮でき好ましい。
【0055】
上記の本発明の複合材において、以下の態様を採ることができる。
本発明の好ましい態様によれば、前記基材層は、セラミック、樹脂、金属、ガラス、陶器、木材、珪カル板、コンクリート板、セメント板、セメント押出整形板、石膏ボード若しくはオートクレープ養生軽量コンクリート板のいずれかの基材からなる。この態様によれば、これら基材が用いられている場所、例えばビル、家屋並びに橋梁等の建築構造物内外壁や道路等において、光触媒機能を発揮して窒素酸化物、硫黄酸化物、炭酸ガス等の環境汚染物質を分解し大気浄化を図ることができる。更には、成分( iii の化合物を有する光触媒配合物を用いた場合にあっては、これら建築構造物内外壁や道路等において、高い親水性に基づいた高い汚れ防止効果を奏することができる。
【0056】
本発明の好ましい態様によれば、前記表面層は、熱処理、例えば焼成して形成されている。この態様によれば、表面層を強固に基材層に形成することができる。
【0057】
本発明の好ましい態様によれば、前記表面層の表面には、抗菌性を発揮する金属又は金属化合物が固着されている。この態様によれば、光が照射されている間は表面層における光触媒が果たすことのできる抗菌機能を、光が照射されていない間にあっては、この抗菌機能を、表面層表面の金属又は金属酸化物により果たすことができる。このため、光触媒が果たす抗菌機能を補完することができる。また、表面層には光触媒に加えて上記の成分( ii も含まれていることから、抗菌機能に加え、上記した光触媒が関与する触媒反応の効率向上を通して環境汚染物質の分解と大気浄化を図ることができる。また、成分( iii の化合物を有する光触媒配合物或いは光触媒含有材を用いることにより、これら表面層において、高い親水性に基づいた高い汚れ防止効果を奏することができ好ましい。なお、本発明の光触媒配合物の好適態様のように成分( iv の金属を担持して有する光触媒配合物或いは光触媒含有材を用いた場合にあっては、この成分( iv の金属によっても相乗的な抗菌性を発揮できることから、表面層の表面に固着させる金属又は金属化合物をごく少量とすることができる。また、成分( iv の金属による相乗的な抗菌性が高ければ、金属又は金属化合物の表面層表面への固着を省略することもできる。
【0058】
本発明の複合材の製造方法は、基材層とその表面に形成された表面層とを有し、光の照射を受けると光触媒機能を発揮する材料の製造方法であって、
上記の本発明の光触媒配合物またはこの配合物を分散してなる分散ゾルを準備する工程と、
前記配合物または分散ゾルを、基材上に適用する工程と、
前記配合物または分散ゾルが適用された基材を乾燥または加熱して、表面層を形成する工程と
を少なくとも含んでなることを特徴とする。
【0059】
この場合、光触媒配合物分散ゾルは、水、アルコール等の溶液に光触媒配合物を分散させることで取得できる。
【0060】
この本発明の製造方法によれば、特殊な工程を必要としないことから、本発明の光触媒配合物で述べたように触媒反応の系内に被反応物或いは中間生成物を確実におくことで表面層において高い効率で触媒反応を起こす新規な光触媒機能発揮材を容易に製造することができる。この際、表面層の形成に当たっては、配設した光触媒配合物又は光触媒配合物分散ゾルに応じて適宜な手法、例えば熱処理や乾燥処理を採ることができる。
【0061】
この本発明の製造方法において、前記配設工程は、前記光触媒配合物又は前記光触媒配合物分散ゾルを前記基材層表面に層状に配設する際に、前記光触媒配合物又は前記光触媒配合物分散ゾルを、前記基材層表面に層状に載置、塗布或いは印刷する工程を有する、光触媒機能発揮材の製造方法とすれば、次のような利点がある。
【0062】
この本発明の製造方法によれば、光触媒配合物からなり厚みがほぼ均一の表面層において高い効率で触媒反応を起こす新規な光触媒機能発揮材を容易に製造することができる。なお、基材層表面への光触媒配合物の層状塗布は、スプレー塗布等の適宜な塗布手法により、層状印刷は、ロール印刷等の適宜な印刷手法により実行することができる。
【0063】
本発明の複合材の別の製造方法は、基材層とその表面に形成された表面層とを有し、光の照射を受けると光触媒機能を発揮する材料の製造方法であって、
上記の本発明の光触媒配合物またはこの配合物を分散してなる分散ゾルを準備する工程と、
前記基材上にバインダ層を形成する工程と、
前記バインダ層上に、前記配合物または分散ゾルを適用する工程と、
前記配合物または分散ゾルが適用された基材を乾燥または加熱して、表面層を形成する工程と
を少なくとも含んでなることを特徴とする。
【0064】
この本発明の製造方法によれば、バインダ層と表面層との境界ではこの表面層における光触媒配合物をバインダ層に埋まった状態で保持して、表面層をバインダ層表面に形成できる。このため、表面層を強固にバインダ層に固定できると共に、光触媒配合物を有効に外気に接触させることできる。そして、本発明の光触媒配合物で述べたように触媒反応の系内に被反応物或いは中間生成物を確実におくことで表面層において高い効率で触媒反応を起こす新規な光触媒機能発揮材を製造することができる。
【0065】
この場合、前記バインダを釉薬とし、前記表面層を形成するに当たっては、前記釉薬の軟化温度よりも30℃以上300℃以下の範囲で高く、且つ、前記基材層の基材の変質温度よりも低い温度環境下で熱処理するようにすることができる。加熱温度をバインダ(釉薬)の軟化温度より30℃以上高くしたので、加熱による釉薬の軟化に不用意に長時間を要せず好ましい。また、加熱温度を釉薬の軟化温度より300℃を越えて高くしないので、釉薬の急激な溶融を回避して、光触媒配合物の過剰の埋まりや凹凸面の発生或いはピンホールの発生等の不具合を抑制できる。更に、前記表面層を形成するに当たって、約150〜約1300℃の温度環境下で熱処理することが好ましい。このようにすれば、既存の加熱装置を使用して、高い効率で触媒反応を起こす新規な光触媒機能発揮材を製造することができる。そして、熱処理温度を約150℃以上とすれば、既存の釉薬の熱処理温度と合致させ、従来と熱処理条件の変更を要しない。また、熱処理温度を約1300℃以下とすれば、熱処理を要する基材、例えばタイルや陶磁器等の生成時の熱処理温度と合致させ、従来と熱処理条件の変更を要しない。
【0066】
また、前記バインダを塗料とし、前記表面層を形成するに当たっては、前記基材層の基材の変質温度以下の温度環境下で熱処理するようにすることができる。こうすれば、基材を変質させることなく表面層を形成でき好ましい。
【0067】
また、上記の本発明の製造方法において、前記表面層を形成する工程に続いて、前記形成された表面層の表面に抗菌性を発揮する金属又は金属化合物が分散された溶液を塗布する工程と、前記金属又は金属酸化物を前記表面層の表面に固着させる工程を有するものとすることができる。
【0068】
この態様の光触媒機能発揮材の製造方法によれば、表面層において明所下・暗所下に拘わらず抗菌性を発揮できると共に、表面層において高い効率で触媒反応を起こす新規な光触媒機能発揮材を容易に製造することができる。しかも、このように明所下・暗所下に拘わらず抗菌性を発揮できる性質を、表面層形成済みの光触媒機能発揮材に後から付与できる。
【0069】
更に、上記の本発明の製造方法において、前記配設工程は、前記光触媒配合物又は前記光触媒配合物分散ゾルを層状に配設した後に、抗菌性を発揮する金属又は金属酸化物が分散された溶液を塗布する工程を有し、前記表面層を形成する工程は、前記表面層の形成と同時に前記金属又は金属酸化物を前記表面層の表面に固着させる工程を有するものとすることができる。
【0070】
この態様の光触媒機能発揮材の製造方法によれば、明所下・暗所下に拘わらず抗菌性を発揮する性質と高い効率で触媒反応を起こす性質とを当初から兼ね備えた新規な光触媒機能発揮材を容易に製造することができる。
【0071】
更に、上記の本発明の製造方法において、前記表面層を形成する工程に続いて、前記形成された表面層の表面に抗菌性を発揮する金属のイオンを含む金属塩水溶液を塗布する工程と、前記表面層に紫外線を照射して前記金属イオンの光触媒への光還元を利用して前記表面層における光触媒に前記金属を担持・固定する工程を有するものとすることができる。
【0072】
この態様の光触媒機能発揮材の製造方法によれば、表面層において明所下・暗所下に拘わらず抗菌性を発揮できると共に、表面層において高い効率で触媒反応を起こす新規な光触媒機能発揮材を容易に製造することができる。しかも、抗菌性の補完に寄与する金属を光還元を利用して表面層における光触媒に担持・固定しているので、当該金属の脱落が起きにくくなる。よって、抗菌性の補完性能を長期に亘って維持できる。また、このように明所下・暗所下に拘わらず抗菌性を発揮できる性質を、表面層形成済みの光触媒機能発揮材に後から付与できる。なお、本発明の光触媒配合物の好適態様のように成分( iv の金属を担持して有する光触媒配合物を用いた場合にあっては、この成分( iv の金属によっても相乗的な抗菌性を発揮できることから、金属塩水溶液の塗布とその後の紫外線照射を経て表面層表面に担持させる金属をごく少量とすることができる。また、成分( iv の金属による相乗的な抗菌性が高ければ、この金属の表面層表面への担持を省略することもできる。
【0073】
本発明の光触媒配合物の製造方法は、少なくとも成分(i)が分散されてなるゾルを用意し、
該ゾルに前記成分( iv )を混合し、前記光触媒の表面に前記成分( iv )を担持させることを含んでなることを特徴とする。
すなわち、本発明の光触媒配合物の製造方法は、光の照射を受けると触媒として機能する光触媒と前記成分( ii と前記成分( iii としての化合物と前記成分( iv としての金属とが配合された光触媒配合物の製造方法であって、前記光触媒と前記成分( ii と前記成分( iii としての化合物のうち、少なくとも前記光触媒が分散された光触媒分散ゾルを準備する工程と、光の照射を受けると触媒として機能する光触媒が配合された光触媒配合物の製造方法であって、本発明の光触媒配合物が分散された光触媒配合物分散ゾルを準備する工程と、抗菌性を発揮する金属のイオンを含む金属塩水溶液を前記光触媒配合物分散ゾルに混合し、前記金属を成分( iv として前記光触媒に担持する工程とを有することを特徴とする。
【0074】
本発明の好ましい態様によれば、光の照射を受けると触媒として機能する光触媒と前記成分( ii と前記成分( iii としての化合物と前記成分( iv としての金属とが配合された光触媒配合物の製造方法であって、前記光触媒と前記成分( ii と前記成分( iii としての化合物のうち、少なくとも前記光触媒が分散された光触媒分散ゾルを準備する工程と、抗菌性を発揮する金属のイオンを含む金属塩水溶液を前記光触媒分散ゾルに混合した後に前記金属の塩と前記光触媒配合物とを共沈させ、前記金属を成分( iv として前記光触媒に担持する工程とを有することを特徴とする。
【0075】
本発明の好ましい態様によれば、光の照射を受けると触媒として機能する光触媒と前記成分( ii と前記成分( iii としての化合物と前記成分( iv としての金属とが配合された光触媒配合物の製造方法であって、前記光触媒と前記成分( ii と前記成分( iii としての化合物のうち、少なくとも前記光触媒が分散された光触媒分散ゾルを準備する工程と、抗菌性を発揮する金属のイオンを含む金属塩水溶液を前記光触媒分散ゾルに混合した後に紫外線を照射し、前記金属イオンの光還元を利用して前記金属を成分( iv として前記光触媒に担持する工程とを有することを特徴とする。
【0076】
これらの光触媒配合物の製造方法によれば、これら光触媒配合物を用いて形成された表面層において明所下・暗所下に拘わらず抗菌性を発揮させると共に、この表面層において高い効率で触媒反応を起こす新規な光触媒配合物を容易に製造することができる。しかも、本発明の製造方法によれば、抗菌性の補完に寄与する金属を光触媒に予め担持・固定するに当たり、光触媒分散ゾルと金属塩水溶液を混合するだけで足りるので、工程の簡略化を図ることができる。また、本発明の好ましい態様による製造方法は、抗菌性の補完に寄与する金属を光触媒に予め担持・固定するに当たり、共沈或いは光還元を利用するので光触媒からの金属の脱落を起きにくくして、抗菌性の補完性能を長期に亘って維持できる。更に、本発明の第10の製造方法は、金属の担持・固定に際して紫外線を照射するに過ぎず、薬品等を一切必要としないので、工程の簡略化を図ることができる。
【0077】
本発明の好ましい態様によれば、光触媒分散ゾルを、光触媒と成分( ii 成分( iii としての化合物が総て分散済みのゾル、即ち本発明の光触媒配合物が分散されたゾルとすることができる。また、金属担持後の光触媒分散ゾルに成分( ii 成分( iii としての化合物を分散させることもできる。更に、保管等の便宜から粉末状の光触媒配合物としておくには、成分( iv としての金属を担持済みの光触媒と成分( ii 成分( iii としての化合物が分散済みのゾルを乾燥させればよい。
【0078】
【発明の他の態様】
本発明は、以下のような他の態様を採ることも可能であり、第1の他の態様は、光の照射を受けると触媒として機能する光触媒が配合された配合物の製造方法であって、前記光触媒の粒子が分散した第1のゾルを準備する工程(A)と、前記被反応物或いは前記被反応物が前記触媒反応を受けて前記最終生成物に変遷する以前に生成される中間生成物と化学的に結合する前記成分( ii の粒子が分散した第2のゾルを準備する工程(B)と、前記第1のゾルと第2のゾルとを混合する工程(C)とを備えることを特徴とする。
【0079】
この第1の他の態様の製造方法によれば、第1、第2のゾルの混合を経ることで、容易に光触媒と成分( ii とを溶媒に分散させることができる。そして、工程(C)を経た混合ゾルは、光触媒のみが凝集して存在したり、成分( ii のみが凝集して存在することがなく、光触媒配合物をなす光触媒と成分( ii がほぼ均一に混合分散したゾルとなる。よって、この混合ゾルは、光触媒配合物分散ゾルとして用いるのに好適であり、液状のまま使用される材料、例えば塗料や釉薬への光触媒と成分( ii の配合が容易となる。更に、ゾル状であるために第1、第2のゾルの秤量が容易であるので、それぞれのゾルの秤量を通して容易に光触媒と成分( ii の混合割合を調整できる。また、混合ゾルにおける溶媒を乾燥等の手法で除去すれば、光触媒と成分( ii がほぼ均一に混合した固形で粒状の配合物となる。
【0080】
この場合、第1のゾルと第2のゾルの溶媒を同一のものとしたり、いわゆるなじみのよい溶媒を用いると好ましい。
【0081】
上記の第1の他の態様の製造方法において、前記工程(A)は、照射された光のエネルギにより励起電子と正孔を生成し、触媒表面での酸素と水分の存在下で前記励起電子と正孔により活性酸素種を生成する前記光触媒の粒子を調整する工程を有し、前記工程(B)は、前記活性酸素種に基づく前記触媒反応に供される前記被反応物或いは前記中間生成物と化学的に結合する両性金属酸化物、塩基性金属酸化物又は酸性金属酸化物の少なくとも一の金属酸化物を前記成分( ii として準備し、該金属酸化物の粒子を調整する工程を有するものとすることができる。
【0082】
この第2の他の態様によれば、活性酸素種に基づく触媒反応を起こす光触媒と塩基点や酸点で被反応物或いは中間生成物を確実に結合・保持する成分( ii とがほぼ均一に混じり合った光触媒配合物を容易に得ることができる。
【0083】
また、上記の第1の他の態様の製造方法において、前記工程(C)は、前記金属酸化物の重量をa、前記光触媒の重量をbと表した場合、a/(a+b)が約0.0001〜0.8となるように前記第1のゾルと第2のゾルとを調合する工程を有するものとすることができる。
【0084】
この第3の他の態様によれば、金属酸化物(両性金属酸化物、塩基性金属酸化物、酸性金属酸化物)の量が少なすぎることがなく、また、光触媒の量が上記の金属酸化物に対して少なすぎることがなくて触媒反応の効率低下をきたさない光触媒配合物を容易に得ることができる。
【0085】
また、上記の第1の他の態様の製造方法において、前記工程(A)は、前記光触媒を約0.005〜0.5μmの粒径範囲の粒子に調整する工程を有し、前記工程(B)は、前記金属酸化物を約0.005〜0.5μmの粒径範囲の粒子に調整する工程を有するものとすることができる。
【0086】
この第4の他の態様によれば、光触媒と金属酸化物(両性金属酸化物、塩基性金属酸化物、酸性金属酸化物)を、ボールミル等の既存の粉砕装置又はゾル・ゲル法で容易に粒径調整ができ好ましい。また、被反応物或いは中間生成物を光触媒から離すことがなく触媒反応の効率低下をきたさない光触媒配合物を容易に得ることができる。更には、この態様によれば、光触媒と金属化合物とをほぼ同様の大きさの粒子で近接させて被反応物或いは中間生成物を光触媒に近接させることができ、触媒反応の効率が高い光触媒配合物を容易に得ることができる。
【0087】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態をに基づき説明する。
【0088】
まず、参考例で用いる光触媒配合物の調合について説明する。光触媒としてアナターゼ型の二酸化チタンを用い、この光触媒と共に配合する金属酸化物としては、両性金属酸化物であるアルミナと、塩基性金属酸化物である酸化ストロンチウムと酸化バリウムを用いた。そして、光触媒配合物の調合に際しては、以下の工程を採った。
【0089】
1) 光触媒並びに金属酸化物の粒子調達
上記した二酸化チタン、アルミナ、酸化ストロンチウムと酸化バリウムの原材料を調達し、それぞれをボールミル等の粉砕装置にて粉砕し、若しくはゾル・ゲル法により、二酸化チタン、アルミナ、酸化ストロンチウムと酸化バリウムの微小粒子を得る。この際には、それぞれの粒子の粒径が約0.005〜0.5μmの粒径範囲となるように粒度調整を行う。
【0090】
2) ゾルの調合
次に、上記のように調整した各配合材料をそれぞれ水、アルコール等の溶媒に分散させ、各配合材料ごとのゾルを調合する。この場合、各ゾルにおける分散材の分散量(例えば、配合材料の重量/溶媒容量)を規定しておく。
【0091】
3) 光触媒配合物の調整
その後、調合済みの二酸化チタンゾル(光触媒ゾル)に、アルミナゾル、酸化ストロンチウムゾル、酸化バリウムゾルの金属酸化物ゾルを混合し、二酸化チタン/アルミナ混合ゾル(Ti/Alゾル)、二酸化チタン/酸化ストロンチウム混合ゾル(Ti/Srゾル)および二酸化チタン/酸化バリウム混合ゾル(Ti/Baゾル)を得る。この場合、上記の各混合ゾルを調整に当たっては、光触媒ゾルの混合量、金属酸化物ゾルの混合量が秤量され、それぞれの秤量量を変えることで光触媒と金属酸化物の配合割合が種々の値を採る混合ゾルが調整される。つまり、各混合ゾルにおける金属酸化物の重量をa、光触媒の重量をbと表した場合に、a/(a+b)で表される配合割合(以下、このa/(a+b)を配合割合決定比と呼ぶ)が種々調整される。
【0092】
なお、上記の1)〜3)の工程を採るほか、調合済みの光触媒ゾルに粒度調整済みのアルミナ等の粒子を添加して分散させてTi/Alゾル等とすることもできる。また、粒度調整済みの光触媒粒子とアルミナ等の粒子を交互に或いは同時に上記溶媒に分散させて、当初から光触媒粒子とアルミナ等の粒子が分散したTi/Alゾル等とすることもできる。
【0093】
次に、上記のように調整した光触媒配合物(Ti/Alゾル、Ti/Srゾル、Ti/Baゾルの各混合ゾル)を用いて光触媒機能を発揮する光触媒機能発揮材について説明する。本参考例(第1参考例)では、この光触媒機能発揮材をタイルとし、次のようにして製造した。
【0094】
無釉のタイルを基材として用意し、このタイル表面に規定された濃度の上記各混合ゾルをスプレー塗布する。このスプレー塗布に当たっては、焼成後のタイル表面における光触媒混合物の膜厚が約0.85μmとなるように、その塗布量、即ちスプレー時間が調整される。次いで、光触媒の定着のために配合したシリカ等の溶融温度と二酸化チタンおよび上記の各金属酸化物の溶融温度を考慮した温度(本参考例にあっては、約800℃)で、混合ゾルのスプレー塗布後のタイルを約60分に亘って焼成することで、基材(タイル)の表面に上記のゾル中性分(光触媒、アルミナ等)を含有する表面層を有する最終的な光触媒機能発揮材(光触媒機能発揮タイル)とした。ここで、その評価について説明する。評価は、大気中又は室内の有害物質として削減が望まれている窒素酸化物、アンモニア、二酸化硫黄の削減効果の有無で下すこととした。その試験の概要は以下の通りであり、まず、窒素酸化物削減について説明する。なお、混合ゾルのスプレー塗布に替わり、スピンコート、ディップコート等の手法を採ることもできることは勿論である。
【0095】
(1−1)評価試験1:窒素酸化物削減に及ぼすアルミナ等の影響
まず、本発明の参考例品との対比を取るために、アルミナ、酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムを一切含まず二酸化チタンのみが配合された光触媒配合物を用いた光触媒機能発揮タイル(比較例タイル)と参考例の光触媒機能発揮タイル(参考例タイル)を、以下のように用意した。比較例タイルは、二酸化チタンが7.5wt%の割合で占める光触媒ゾルをタイル表面にスプレー塗布し、上記の焼成条件(約800℃X60分)で焼成したタイルである。このスプレー塗布に際しては、焼成後のタイル表面における二酸化チタンの重量が約3.3X10-4g/cm2 (この場合の二酸化チタンの膜厚は約0.85μm)となるように、塗布時間等を定めた。参考例タイルは、次のTi/AlタイルとTi/SrタイルとTi/Baタイルである。
【0096】
Ti/Alタイルは、二酸化チタンが比較例タイルと同様に7.5wt%の割合で占める光触媒ゾルに対して、配合割合決定比a/(a+b)が1/11となるようにアルミナの配合割合が調整されたTi/Alゾル(二酸化チタンに対するアルミナの重量比が0.1としたTi/Alゾル)を上記の比較例タイルと同一条件でスプレー塗布並びに焼成したタイルである。Ti/Srタイルは、二酸化チタンおよび酸化ストロンチウムがTi/Alタイルと同一の配合割合で配合されたTi/Srゾルを上記の比較例タイルと同一条件でスプレー塗布並びに焼成したタイルである。Ti/Baタイルも同様である。つまり、比較例タイルは、タイル表面の二酸化チタンのみが有し比較対照の上で基準となる触媒機能を発揮するので、この比較例タイルと上記の各参考例タイルを比較することで、それぞれの金属酸化物を配合したことで得られる触媒機能の向上の有無やその程度が判明する。そして、比較例タイルは、タイル表面に二酸化チタンのみからなる表面層を有し、参考例タイルは、二酸化チタンとアルミナ又は酸化ストロンチウム若しくは酸化バリウムとが配合された配合物からなる表面層を有することになる。
【0097】
この比較例タイルと各参考例タイルについて次のように試験した。試験には、比較例タイルと各参考例タイルの10cm四方のサンプル片を用い、図4に示す試験装置で窒素酸化物の削減効果を測定した。この試験装置は、サンプル片が載置される密閉状のガラスセル10の上流に、定濃度の一酸化窒素ガスを封入したボンベ12を備え、このボンベからのNOガスに、エアーポンプ14で吸引され湿度調整器15で湿度調整された大気を流量調整バルブ16にて混合し、この流量調整バルブ16からガラスセル10に所定濃度(約0.95ppm)で定量(1リットル/min)のNOガス(試験ガス)を流し込む。また、ガラスセル10の下流には、当該セルを通過した気体中の窒素酸化物濃度を測定する濃度側定器(NOxセンサ)18を有する。このNOxセンサ18は、気体中のNO濃度と二酸化窒素濃度(NO2 濃度)を随時測定し、測定したNO濃度とNO2 濃度に加え、この両者の濃度の和を窒素酸化物濃度(NOx濃度)として出力するよう構成されている。また、試験装置は、ガラスセル10の内部に紫外線(波長300〜400nm)を照射するランプ20を有する。この場合、ランプ20は、サンプル片上における紫外線強度が1.2mW/cm2 となるように点灯制御される。そして、この試験装置のガラスセル10にサンプル片を載置して紫外線の照射を受ける環境下に置き、比較例タイルと各参考例タイルについて、試験ガスの流し込みを開始してからの経過時間ごとのNO2 濃度とNOx濃度をプロットした。その結果を図5に示す。なお、ランプ20は試験ガスの流し込みを開始してから出口側のNOx濃度(NO濃度)が安定した後に点灯した。
【0098】
この評価試験1において、一酸化窒素を酸化させる反応が起きなければ、例えばガラスセル10を暗室下に起き表面層における二酸化チタンによる活性酸素種の生成が無く触媒反応が起きなければ、試験ガスは何の反応をきたすことなくNOxセンサ18に流れる。よって、この際のNOxセンサ18の出力は、NO濃度(CNO/out)については試験ガス濃度(CNO/in)と同一であり、NO2 濃度(CNO2 /out)はゼロ、NOx濃度(CNOx/out)はCNO/out即ちCNO/inと同一である。しかし、表面層における二酸化チタンの生成した活性酸素種に基づく触媒反応によりNOが酸化されれば、その酸化を受けた分だけNO濃度はCNO/inから減少する。また、NO酸化により生成されたNO2 がタイル表面から離脱すれば、その離脱したNO2 の分だけNO2 濃度は増加することになる。そして、NO酸化によるNO濃度減少と、生成したNO2 のタイル表面からの離脱によるNO2 濃度増加との関係から、NOxの削減程度が定まる。
【0099】
さて、図5に示すように、比較例タイルでは、試験開始と共に急激にNOx濃度が低下し、試験開始から約5分経過するとそれ以降にNOx濃度は増加に転じ、試験ガス濃度に近づいていく。また、この比較例タイルでは、試験開始後徐々にNO2 濃度が上昇し、30分経過後には約0.18ppmとなった。このNOx濃度の増加の傾向とNO2 濃度の上昇の傾向はほぼ同じような傾向を取っている。これらのことから、比較例タイルでは、その表面層における二酸化チタンによる光触媒反応が進行してNOが酸化されNO濃度は減少するが、NO2 濃度の上昇に伴い、全体的なNOxの削減は進まないことになる。従って、比較例タイルでは、NO2 がタイル表面から離脱するために、NO2 のタイル表面での更なる酸化がそれほど起きていないといえる。30分経過後のNOx濃度が約0.66ppmであることから、この比較例タイルにおけるNOxの削減効率は、約30.5%((0.95−0.66)/0.95)であった。
【0100】
これに対して、Ti/Alタイル、Ti/Srタイル、Ti/Baタイルのそれぞれの参考例タイルとも、比較例タイルと同様に、NOx濃度は、試験開始と共に急激に低下し、その低下した最低濃度より僅かに増加した濃度で推移した。また、それぞれの参考例タイルでは、試験開始からのNO2 濃度は、その上昇程度は低く30分経過後にも僅か約0.05ppmにしか達しなかった。これらのことから、それぞれの参考例タイルでは、まず第1に、その表面層における二酸化チタンによる光触媒反応が進行してNOが酸化されてNO濃度は減少しているといえる。また、NO2 がアルミナ、酸化ストロンチウム、酸化バリウムに結合されてタイル表面から比較的離脱せず、二酸化チタンによるこのNO2 の更なる酸化が活発に進行して、NO2 濃度が上昇しないといえる。このため、それぞれの参考例タイルによれば、極めて高い効率でNOxを削減できるといえる。そして、30分経過後のNOx濃度が約0.45ppmであることから、各参考例タイルにおけるNOxの削減効率は、約52.6%((0.95−0.45)/0.95)であり、比較例タイルのほぼ2倍であった。なお、これら参考例タイルについて上記の試験を継続したところ、NOxの削減効率は高い値のまま維持されていることが判明した。また、12時間経過後に試験を終了して参考例タイル表面を水洗洗浄し、その洗浄水に含まれる物質を分析したところ、硝酸の存在が確認された。
【0101】
また、各参考例タイルとも、その表面状態は凹凸の程度などに異常は観察されず優れていた。しかも、JIS−A6808に則りプラスチック消しゴムを用いた摺動磨耗試験を試みたところ、各参考例タイルとも、40回程度の往復摺動を終えても表面層に劣化や剥がれは見られず、耐磨耗性に優れていることも判明した。このことは、上記したゾルの混合という手法で製造した光触媒配合物は、焼成塗料や釉薬は勿論のこと焼成、印刷、バインダ等に適用できることを意味する。また、上記のように光触媒機能により高い窒素酸化物の削減効率を得ることができる光触媒配合物や光触媒機能発揮材を、上記したゾルの混合という手法により容易に製造できるといえる。
【0102】
(1−2)評価試験1:アンモニア削減に及ぼすアルミナ等の影響
アンモニアについても、上記した窒素酸化物と同様の装置並びに手法にて比較例タイル、Ti/AlタイルおよびTi/Srタイルによる削減の様子を調べた。この場合、ガラスセル10に流し込む試験ガスは、約4ppmのアンモニアガスであり、当該セルを通過した気体中のアンモニア濃度をセル下流の濃度側定器(ガス検知管)にて測定した。そして、比較例タイルと参考例タイル(Ti/Alタイル、Ti/Srタイル)について、試験ガスの流し込みを開始してからの経過時間ごとのアンモニア濃度をプロットした。その結果を図6に示す。
【0103】
図6に示すように、比較例タイル、参考例タイルとも、試験開始と共にアンモニア濃度が低下した。そして、測定期間に亘って参考例タイルの方が低い濃度となり、試験開始から約10分経過すると、各タイルでほぼ一定の濃度となり、比較例タイルでは約3.5ppm、Ti/Alタイルでは約2.5ppm、Ti/Srタイルでは約2.6ppmであった。よって、アンモニアの削減効率は、比較例タイルでは約12.5%((4−3.5)/4)、Ti/Alタイルでは約37.5%((4−2.5)/4)、Ti/Srタイルでは約35%((4−2.6)/4)であった。このことから、比較例タイルでは、その表面層における二酸化チタンによる光触媒反応が進行してアンモニアがNO、NO2 等に化学変化してアンモニアはある程度削減されるが、Ti/Alタイル、Ti/Srタイルのいずれの参考例タイルにあっては、比較例タイルより優れたアンモニアの削減効率を発揮できた。この理由は、次のように推察される。
【0104】
アンモニアを他の物質に変遷させる反応(化学変化)が起きなければ、試験ガスは何の反応をきたすことなくガス検知管に流れ、測定したアンモニア濃度は、試験ガスと同一である。しかし、表面層における二酸化チタンの生成した活性酸素種に基づく触媒反応を受けてアンモニアが他の物質に変遷すれば、変遷した分だけアンモニア濃度は試験ガスにおける濃度から減少する。よって、比較例タイル、参考例タイルとも試験開始直後からアンモニア濃度が低下した。この場合、アンモニアが活性酸素種に基づく触媒反応を受けることから、アンモニアを構成する窒素が酸化され、NOやNO2 が中間生成物として生成される。そして、このNOは上記したように活性酸素種によりNO2 に酸化され、このNO2 が活性酸素種により更に酸化されて硝酸に化学変化すれば、アンモニアが活性酸素種に基づく触媒反応を受けてNOやNO2 に化学変化する程度が高くなり、アンモニアの削減効率が高まると推察される。
【0105】
参考例タイルは、既述したようにNO2 と結合しタイル表面からNO2 を離脱させないようにするアルミナ、酸化ストロンチウムを配合した点で比較例タイルと異なる。よって、比較例タイルでは、アンモニアから生成されたNO2 のタイル表面からの離脱が起きるために、NO2 が活性酸素種により更に酸化されて硝酸に化学変化する反応があまり進行しない。これに対して、参考例タイルでは、アンモニアから生成されたNO2 をタイル表面から離脱させず、このNO2 を活性酸素種により更に硝酸にまで酸化させる反応が促進される。このため、参考例タイルでは上記したようにアンモニアの削減効率が高まり、アンモニアの削減効率に優劣が生じたと考えられる。
【0106】
(1−3)評価試験1:二酸化硫黄削減に及ぼすアルミナ等の影響
二酸化硫黄についても、上記した窒素酸化物と同様の装置並びに手法にて比較例タイル、Ti/Alタイルによる削減の様子を調べた。この場合、ガラスセル10に流し込む試験ガスは、約10ppmの二酸化硫黄ガスであり、当該セルを通過した気体中の二酸化硫黄濃度をセル下流の濃度側定器(ガス検知管)にて測定した。そして、比較例タイルと参考例タイル(Ti/Alタイル)について、試験ガスの流し込みを開始してからの経過時間ごとの二酸化硫黄濃度をプロットした。その結果を図7に示す。
【0107】
図7に示すように、比較例タイル、参考例タイルとも、試験開始と共に二酸化硫黄濃度が低下した。そして、測定期間に亘って参考例タイルの方が低い濃度となり、試験開始から約30分経過すると、比較例タイルでは約7.7ppm、Ti/Alタイルでは約2.7ppmであった。よって、二酸化硫黄の削減効率は、比較例タイルでは約23%((10−7.7)/10)、Ti/Alタイルでは約73%((10−2.7)/10)であった。このことから、比較例タイルでは、その表面層における二酸化チタンによる光触媒反応が進行して二酸化硫黄が硫酸或いは亜硫酸等に化学変化して二酸化硫黄はある程度削減されるが、Ti/Alタイル(参考例タイル)にあっては、比較例タイルより優れたアンモニアの削減効率を発揮できた。この理由は、次のように推察される。
【0108】
比較例タイル、参考例タイルとも二酸化硫黄濃度が低下するのは、一酸化窒素、アンモニアの場合と同様、表面層における二酸化チタンの生成した活性酸素種に基づく触媒反応を受けて二酸化硫黄が硫酸や亜硫酸に変遷し、その変遷した分だけアンモニア濃度は試験ガスにおける濃度から減少するからである。この評価試験における被反応物でる二酸化硫黄は、酸性ガスである都合上、図2をもって説明したように、塩基性金属酸化物であるアルミナに化学的に結合し吸着される。このため、このアルミナを有しない比較例タイルでは、二酸化硫黄はタイル表面に吸着されないまま、活性酸素種により酸化されて硫酸や亜硫酸に化学変化するので、この反応は比較的緩やかにしか進行しない。これに対して、参考例タイルでは、二酸化硫黄をタイル表面に吸着した状態で活性酸素種により硫酸や亜硫酸にまで酸化させるので、この反応が促進される。このため、参考例タイルでは上記したように二酸化硫黄の削減効率が高まり、二酸化硫黄の削減効率に優劣が生じたと考えられる。
【0109】
次に、光触媒と共に配合したアルミナ等の配合の程度と窒素酸化物の削減効果との関係についての評価を以下の二つの手法を採って行った。なお、この評価については、アルミナを例に採り行った。
【0110】
(2)評価試験2:窒素酸化物削減に及ぼすアルミナ配合程度の影響−その1
まず、本発明の参考例品との対比を取るために、上記した評価試験1と同様の比較例タイルと参考例の光触媒機能発揮タイル(参考例タイル)を、以下のように用意した。比較例タイルは、二酸化チタンが7.5wt%の割合で占める光触媒ゾルをタイル表面にスプレー塗布し、上記の焼成条件(約800℃X60分)で焼成したタイルである。このスプレー塗布に際しては、焼成後のタイル表面における二酸化チタンの重量が約3.3X10-4g/cm2 (二酸化チタンの膜厚は約0.85μm)となるように、塗布時間等を定めた。参考例タイルは、次のTi/Alタイルである。
【0111】
Ti/Alタイルは、二酸化チタンが比較例タイルと同様に7.5wt%の割合で占める光触媒ゾルに対して、配合割合決定比a/(a+b)が0.0001〜0.8の範囲となるようにアルミナの配合割合が調整されたTi/Alゾルを上記の比較例タイルと同一条件でスプレー塗布並びに焼成したタイルである。つまり、焼成後のタイル表面における二酸化チタンの重量は比較例タイルと同一の約3.3X10-4g/cm2 のままであるが、焼成後のタイル表面におけるアルミナの重量が異なるTi/Alタイルを種々焼成し、それぞれのTi/Alタイルをこの評価試験2における参考例タイルとした。配合割合決定比a/(a+b)が0.01である場合には、a=b/99であることから、焼成後のタイル表面におけるアルミナの重量は、約3.3X10-6g/cm2 であり、配合割合決定比a/(a+b)が0.5である場合には、a=bであることから、約3.3X10-4g/cm2 となる。この評価試験2にあっても、比較例タイルは基準となる触媒機能を発揮するので、この比較例タイルとアルミナ配合量が異なる各Ti/Alタイを比較することで、定量の光触媒を配合した場合の触媒機能の向上に及ぼすアルミナ配合量の影響が判明する。
【0112】
この評価試験2では、評価試験1と同一の試験装置を用い、所定濃度(約0.95ppm)での定量の試験ガスの流し込みとランプ20の点灯とを開始した試験開始時点から30分経過後のNO2 濃度とNOx濃度を、比較例タイルと各参考例タイルについて測定した。そして、各タイルについて、試験ガスのNO濃度から測定NOx濃度を減算したNOx除去量と、測定したNO2 濃度とをプロットした。その結果を図8に示す。なお、比較例タイルは、アルミナが一切配合されていないので、配合割合決定比a/(a+b)がゼロである。
【0113】
この図8において、比較例タイル(a/(a+b)=0)は、グラフのY軸上にプロットされており、NO2 濃度は約0.17ppm、NOx除去量は約0.3ppmであった。このようにNOx濃度は試験ガスより低下するものの試験ガスには含まれていなかったNO2 の濃度が計測されるのは、既述したように表面層における二酸化チタンによる光触媒反応進行とタイル表面からのNO2 の離脱が起きるためである。
【0114】
これに対して、配合割合決定比a/(a+b)がグラフのX軸座標で表されたTi/Alタイルでは、アルミナ配合量が少なく配合割合決定比a/(a+b)が0.01のものでNO2 濃度は約0.15ppm、NOx除去量は約0.4ppmであった。また、アルミナ配合量が二酸化チタンと同一で配合割合決定比a/(a+b)が0.5のTi/Alタイルでは、NO2 濃度は約0.14ppm、NOx除去量は約0.43ppmであった。そして、配合割合決定比a/(a+b)が0.05〜0.2の範囲のTi/Alタイルでは、NO2 濃度が約0.06〜0.13ppmで、NOx除去量が約0.44〜0.46ppmであり、比較例タイルに比べて顕著にNO2 濃度が低くNOx除去量が多かった。なお、配合割合決定比a/(a+b)が0.0001のTi/Alタイルでも、配合割合決定比a/(a+b)が0.01のものと近似した結果が得られたが(NO2濃度=約0.155ppm、NOx除去量=約0.36ppm)、このTi/AlタイルをプロットするX軸座標はゼロに近いために図示は省略されている。
【0115】
これらのことから明らかなように、配合割合決定比a/(a+b)が0.0001〜0.5の範囲であれば、アルミナを配合したことでNO2 の離脱抑制を図ることができ、比較例タイルよりも高いNO2 削減効果延いてはNOx削減効果を得ることができる。特に、配合割合決定比a/(a+b)が0.05〜0.2の範囲であれば、比較例タイルよりも極めて高いNOx削減効果を得ることができ好ましい。そして、配合割合決定比a/(a+b)が0.0001というように、ごく僅かにアルミナを配合するだけでも高いNOx削減効果を得ることができた。
【0116】
また、配合割合決定比a/(a+b)を種々の値とした各Ti/Alタイルとも、やはりその表面状態は良好であり、耐磨耗性にも優れていた。
【0117】
(3)評価試験3:窒素酸化物削減に及ぼすアルミナ配合程度の影響−その2
この評価試験3では、光触媒たる二酸化チタンとアルミナとの総量(両者の配合和)を一定とし、その中で二酸化チタンとアルミナの各配合量を種々のものとした場合の窒素酸化物削減効果を調べることとした。
【0118】
まず、本発明の参考例品との対比を取るために、上記した評価試験1と同様の比較例タイルと参考例の光触媒機能発揮タイル(参考例タイル)を、以下のように用意した。比較例タイルは、上記の評価試験2と同一のタイルであり、焼成後のタイル表面における二酸化チタンの重量は約3.3X10-4g/cm2 である。また、光触媒を一切含ずアルミナのみが配合された配合物を用いた単純なタイル(光触媒を発揮しないタイル)についても、タイル表面におけるアルミナの重量が約3.3X10-4g/cm2 としたものを用意した。参考例タイルは、次のTi/Alタイルである。
【0119】
Ti/Alタイルは、二酸化チタンとアルミナの総量が比較例タイルと同様に7.5wt%の割合で占める光触媒ゾルに対して、配合割合決定比a/(a+b)が0.05〜0.95の範囲となるようにアルミナの配合割合が調整されたTi/Alゾルを上記の比較例タイルと同一条件でスプレー塗布並びに焼成したタイルである。つまり、焼成後のタイル表面における二酸化チタンの重量はアルミナの重量の増加に伴って約3.3X10-4g/cm2 から減少したTi/Alタイルを種々焼成し、それぞれのTi/Alタイルをこの評価試験3における参考例タイルとした。配合割合決定比a/(a+b)が0.05である場合には、a+bが上記の3.3X10-4g/cm2 に相当することから、焼成後のタイル表面におけるアルミナの重量aは約1.65X10-5g/cm2 で二酸化チタンの重量bは約3.135X10-4g/cm2 である。また、配合割合決定比a/(a+b)が0.95である場合には、その反対に、アルミナの重量aは約3.135X10-4g/cm2 で二酸化チタンの重量bは約1.65X10-5g/cm2 である。この評価試験3にあっても、比較例タイルは基準となる触媒機能を発揮するので、この比較例タイルと二酸化チタン、アルミナの配合量が異なる各Ti/Alタイを比較することで、触媒機能の向上に及ぼす二酸化チタンとアルミナの配合量の影響が判明する。
【0120】
この評価試験3では、評価試験1と同一の試験装置を用い、評価試験2と同様にNO2 濃度とNOxの除去量とをプロットした。その結果を図9に示す。なお、比較例タイルは、アルミナが一切配合されていないので、配合割合決定比a/(a+b)がゼロであり、光触媒を発揮しない上記のタイルは、二酸化チタンが一切配合されていないので、配合割合決定比a/(a+b)が1である。
【0121】
この図9において、比較例タイル(a/(a+b)=0)は、グラフのY軸上にプロットされており、NO2 濃度は約0.17ppm、NOx除去量は約0.3ppmであった。このようにNOx濃度は試験ガスより低下するものの試験ガスには含まれていなかったNO2 の濃度が計測されるのは、評価試験2について既述したとおりである。また、光触媒を発揮しない上記の単なるタイルは、グラフのX軸上にプロットされており、NO2 濃度、NOx除去量とも当然にゼロであった。
【0122】
これに対して、配合割合決定比a/(a+b)がグラフのX軸座標で表されたTi/Alタイルでは、アルミナ配合量が少なく配合割合決定比a/(a+b)が0.05のものでNO2 濃度は約0.07ppm、NOx除去量は約0.46ppmであった。また、アルミナ配合量が二酸化チタン配合量に勝り配合割合決定比a/(a+b)が0.8のTi/Alタイルでは、NO2 濃度は約0.13ppm、NOx除去量は約0.32ppmであった。そして、配合割合決定比a/(a+b)が0.05〜0.65の範囲のTi/Alタイルでは、NO2 濃度が約0.07〜0.09ppmで、NOx除去量が約0.43〜0.52ppmであり、比較例タイルに比べて顕著にNO2 濃度が低くNOx除去量が多かった。また、アルミナ配合量が二酸化チタン配合量に大きく勝り配合割合決定比a/(a+b)が0.9以上のTi/Alタイルでは、比較例タイルと同等以下のNO2 濃度並びにNOx除去量であった。
【0123】
これらのことから明らかなように、二酸化チタンとアルミナの総量が一定でこれらの配合割合決定比a/(a+b)が0.0001〜0.8の範囲であれば、アルミナを配合したことでNO2 の離脱抑制を図ることができ、比較例タイルよりも高いNO2 削減効果延いてはNOx削減効果を得ることができる。特に、配合割合決定比a/(a+b)が0.05〜0.6の範囲であれば、比較例タイルよりも極めて高いNOx削減効果を得ることができ好ましい。なお、配合割合決定比a/(a+b)が0.0001を下回る場合や0.8を上回る場合には、比較例タイルと同程度のNOx削減効果は得ることができるが、特に配合割合決定比a/(a+b)が0.9以上の場合には、光触媒たる二酸化チタンが少なすぎてその粒子が隙間なくアルミナ粒子に取り囲まれて光が届かず、光触媒機能が低下することが予想される。
【0124】
また、配合割合決定比a/(a+b)を種々の値とした各Ti/Alタイルとも、やはりその表面状態は良好であり、耐磨耗性にも優れていた。
【0125】
上記の第1参考例では、光触媒としてアナターゼ型の二酸化チタンを用い、この光触媒と共に配合する金属酸化物としては、両性金属酸化物であるアルミナと、塩基性金属酸化物である酸化ストロンチウムと酸化バリウムを用いたが、既述したNOx削減効果は、その他の光触媒と金属酸化物の組み合わせでも得られることは勿論である。例えば、光触媒としての二酸化チタンであっても、結晶型がルチル或いはブルッカイトの二酸化チタンとすることもできる。また、ZnO、V25、WO3 、SnO2 、SrTiO3 、Bi23、Fe23等の光触媒を用いても、NOx削減効果を奏することができる。更には、アルミナ、酸化ストロンチウム、酸化バリウムに替わる金属酸化物として、酸化亜鉛、酸化スズ(以上、両性金属酸化物)、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ルビジウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム(以上、塩基性金属酸化物)を用いても、NOx削減効果を奏することができる。なお、塩基性ガスを削減対象とする場合には、上記の両性金属酸化物の他、酸化リン(酸性金属酸化物)を用いることができる。
【0126】
次に、第2参考例について説明する。この第2参考例では、タイル表面に二酸化チタン等の光触媒とアルミナ等の特定の金属酸化物とを有する光触媒配合物からなる表面層の形成手順が相違する。この第2参考例の参考例では、まず、表面層を形成する基材を用意する。この基材としては、セラミック、樹脂、金属、ガラス、陶器木材、珪カル板、コンクリート板、セメント板、セメント押出整形板、石膏ボード若しくはオートクレープ養生軽量コンクリート板等でよく、ビルや家屋並びに橋梁、道路遮音壁等の建築構造物に使用される基材であれば、窒素酸化物等の環境汚染物質をこれら建築構造物表面にて削減して大気を浄化できるので好ましい。
【0127】
次いで、この用意した基材表面にバインダ層を形成する。このバインダ層は、その軟化温度が基材の変質温度よりも低い等のバインダ材料を選定し、バインダの性質に適合した適宜な手法でこのバインダ材料を用いて形成される。例えば、基材がタイル、ホーロー又は陶磁器である場合には、表面に彩色等を行うための釉薬層や印刷層をバインダ層としてそのまま利用することができる。バインダ層形成後には、そのバインダ層の表面に、上記した第1参考例におけるTi/Alゾル等のゾルを塗布或いは印刷したり、このゾルから溶媒を除去して得られた二酸化チタン粒子とアルミナ粒子との混合粒子を散布したりして、後に表面層となる光触媒配合物層を形成する。又は、単独で別途制作したバインダ層に光触媒配合物層を形成し、このバインダ層を基材表面に載置しても良い。これらの場合、光触媒配合物層は、後の焼成の際にバインダ層から離脱しないようバインダ層に形成されていればよい。
【0128】
その後、バインダ層を釉薬からなる釉薬層とした場合には、バインダ材料(釉薬)の軟化温度よりも30℃以上300℃以下の範囲で高く、且つ、基材の変質温度よりも低い温度環境下で加熱処理する。この加熱処理を経ることで、バインダ材料(釉薬)は溶融固化してタイル表面にはバインダ層が強固に固定されると共に、光触媒配合物層から表面層が形成される。この際、バインダ層との境界では、表面層における光触媒配合物の粒子(二酸化チタン粒子、アルミナ粒子)がバインダ材料の溶融の過程でバインダ層に沈降し、この粒子はバインダ層に埋まった状態で保持されバインダ層に強固に固定される。また、光触媒配合物層において隣接する粒子同士が粒子相互間の分子間力や焼成による焼結によって結合することで表面層は形成され、この表面層では、その表面において二酸化チタンとアルミナのそれぞれの粒子を露出させる。このため、表面層を強固にバインダ層に固定できると共に、二酸化チタンとアルミナのそれぞれの粒子を有効に外気に接触させることできる。従って、上記の第2参考施例における製造方法によれば、高い効率で光触媒反応を起こし得る表面層を有する建築構造物材料等を容易に製造することができる。
【0129】
この場合、加熱温度をバインダ材料の軟化温度より30℃以上高くしたので、加熱によるバインダ材料の軟化に不用意に長時間を要せず好ましく、二酸化チタンやアルミナの粒子の沈降・保持に支障をきたさないので好ましい。また、加熱温度をバインダの変質温度より300℃を越えて高くしないので、バインダ材料の急激な溶融を回避して、二酸化チタンやアルミナの粒子の過剰の沈降や凹凸面の発生或いはピンホールの発生等の不具合を抑制でき好ましい。なお、加熱温度は、バインダ材料の軟化温度よりも50℃以上150℃以下の範囲で高い温度であることが好ましい。
【0130】
上記の第2参考例であっても、光触媒として、結晶型がルチル或いはブルッカイトの二酸化チタンや、ZnO、V25、WO3 、SnO2 、SrTiO3 、Bi23、Fe23等を用いてもよい。またく、アルミナに替わる金属酸化物としては、削減対象がNOx等の酸性ガスであれば、酸化亜鉛、酸化スズ(以上、両性金属酸化物)、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ルビジウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム(以上、塩基性金属酸化物)を用いてもよく、塩基性ガスを削減対象とする場合には、上記の両性金属酸化物の他、酸化リン(酸性金属酸化物)を用いてもよい。
【0131】
次に、他の参考例について説明する。上記した第1、第2参考例は、光触媒と既述した特定の化合物とで被反応物(例えば、NO)或いは中間生成物(例えば、NO2 )を触媒反応系内に保持して、被反応物が触媒反応に供される機会や中間生成物が更にこの触媒反応に供される機会を確実に確保し、NOx等の有害物質の削減効果を得るためのものであるが、以下に説明する参考例は、この既述した特定の化合物以外の物質をも加えることで、NOx削減効果の更なる向上を図ったり、或いは新たな効果を奏するものである。
【0132】
まず、第3参考例について説明する。この第3参考例は、上記したような触媒反応の効率化に加え、光触媒が活性酸素種を生成することで呈する抗菌機能をも併せ持つ光触媒機能発揮材についてのものである。その製造に当たっては、触媒反応の効率化を達成できる上記の配合割合決定比でアルミナが二酸化チタンと共に配合されているTi/Alゾルと、銅(Cu)やその酸化物或いは銀(Ag)やその酸化物等の粒子を分散させた第3のゾルとを用意する。次いで、Ti/Alゾルをタイル表面に塗布して焼成し、このTi/Alの層を形成する。その後、タイル表面の当該Ti/Al層の表面に第3のゾルを塗布し、光還元等の方法で第3のゾル成分を表面に固定化する。このタイルがこの第3参考例のタイルであり、この第3参考例タイルは、その表面に光触媒たる二酸化チタンがアルミナと共に定着された表面層を有し、更にその上面にCu等の粒子が固着されたタイルとなる。なお、第3のゾルの塗布に際しては、光触媒に十分光が照射されるようその塗布量が調整される。例えば、Cuの重量が焼成後において約0.8〜2.0μg/cm2 の程度で十分である。この第3参考例タイルと、上記の評価試験で用いた比較例タイルとについて、以下の抗菌性の評価を行った。その評価は、大腸菌(Escherichia coil w3110 株)に対する殺菌効果の有無で下すことにした。
【0133】
まず、第3参考例の参考例タイルと比較例タイルとを共にその表面を70%エタノールで殺菌し、その後、タイル表面に大腸菌菌液0.15ミリリットル(1〜5X104 CFU)を滴下した。このタイル表面にガラス板を載せて大腸菌をタイル表面に密着させてこれを試料とし、この試料をそれぞれのタイルについて一対用意した。次いで、第3参考例の参考例タイルと比較例タイルの一方の試料にはガラス板を通して蛍光灯を照射し、他方の試料は遮光環境下に置いた。そして、照射時間の経過と共に、蛍光灯照射下(明所下)の試料と遮光下(暗所下)の試料における大腸菌の生存率を測定し、この生存率から換算した抗菌率(大腸菌が死滅若しくは増殖を停止した割合)を経過時間に対してプロットした。その結果を、図10に示す。なお、測定に際しては、各試料の菌液を滅菌ガーゼで拭いて生理食塩水10ミリリットルに回収し、この生理食塩水中の大腸菌の生存率を測定し、これを試料における生存率とした。
【0134】
図10から明らかなように、蛍光灯照射下では、第3参考例の参考例タイルと比較例タイルとも高い抗菌効果を得られた。これは、蛍光灯照射下では表面層における二酸化チタンが活性酸素種を活発に生成し、この活性酸素種により大腸菌はその有する有機成分の分解を受け死滅若しくは増殖を停止したからだと考えられる。しかし、遮光下では、比較例タイルが活性酸素種の生成がないために抗菌効果をほとんど得られないのに対し、第3参考例の参考例タイルでは、遮光下でも比較的高い抗菌効果を得られた。表面に固着させたCu等の粒子が遮光下でも抗菌機能を発揮したためである。よって、この第3参考例の参考例タイルによれば、遮光下であるために光触媒たる二酸化チタンが発揮することもできない抗菌機能を遮光下ではCu等の粒子により果たすことができ、光触媒が果たす抗菌機能を補完することができる。
【0135】
上記の第3参考例であっても、光触媒として、結晶型がルチル或いはブルッカイトの二酸化チタンや、ZnO、V25、WO3 、SnO2 、SrTiO3 、Bi23、Fe23等を用いてもよく、アルミナに替わる金属酸化物として、酸化亜鉛、酸化スズ(以上、両性金属酸化物)、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ルビジウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム(以上、塩基性金属酸化物)、酸化リン(酸性金属酸化物)を用いてもよい。また、Cuに替え、その酸化物、或いは銀(Ag)又はその酸化物等や、Pd、Ni、Co、Pt、Au、Al、Fe、Zn、Cr、Rh、Ru等の金属のように、金属自体で若干でも抗菌作用を有するものを用いることが好ましい。
【0136】
次に、第4、第5実施例について説明する。この第4実施例は、第1、第2参考例と同様に光触媒とアルミナ等の上記の金属酸化物(両性金属酸化物、塩基性金属酸化物、酸性金属酸化物)を用い、これらに、これ以外の化合物と上記の第3参考例のようにCuやAg等の金属を併用した4成分系のものである。第5実施例は、光触媒とアルミナ等の上記の金属酸化物(両性金属酸化物、塩基性金属酸化物、酸性金属酸化物)に、これ以外の化合物を併用した3成分系のものである。
【0137】
第4実施例で併用する金属は、光触媒である二酸化チタンが出す自由電子の有する電位(−3.2V)以上の還元電位を有する金属であれば、還元電位による二酸化チタンへの担持(還元担持)ができ好ましい。具体的には、Ag、Cu、Pd、Fe、Ni、Cr、Co、Pt、Au、Li、Ca、Mg、Al、Zn、Rh、Ru等の遷移金属であり、このうち、Ag、Cu、Pd、Pt、Auは、還元電位が正の値を有するので、還元担持が起きやすく特に好ましい。これら金属を併用する上で当該金属を光触媒に担持する手法について説明する。光触媒への金属の担持手法としては、以下の手法が挙げられる。
【0138】
1) 単純混合法:目的の金属種を含む金属塩水溶液を光触媒ゾルに添加して両者を混合し、金属イオンの光触媒粒子表面への吸着により担持を行う手法。
2) 共沈法:目的の金属種を含む金属塩水溶液を光触媒ゾルに添加した後、沈殿剤の添加或いは加熱により、金属塩と光触媒を同時に沈殿させて共沈を図り、金属イオンを光触媒粒子表面に担持する手法。
3)光還元前担持法:目的の金属種を含む金属塩水溶液を光触媒ゾルに添加した後、紫外線エネルギーを照射して金属イオンの光触媒粒子表面への光還元を利用して担持を行う手法。
4) 光還元後担持法:光触媒膜上に目的の金属種を含む金属塩水溶液を塗布した後、紫外線エネルギーを照射して金属イオンの光触媒膜表面への光還元を利用して担持を行う手法。
5) 蒸着法:金属粒子もしくは金属化合物を化学的または物理的蒸着法にて担持する手法。
6) その他:ゾル・ゲル法を用いて光触媒粒子を造粒する前に目的の金属種のイオンを添加し、その後の共沈法等により光触媒/金属イオンの粒子化を図る手法。
【0139】
また、光触媒とアルミナ等の上記の金属酸化物と併用する化合物は、二酸化珪素(シリカ:SiO2 )とした。なお、シリカに替え、ZrO2 ,GeO2 ,ThO2 ,ZnO等の酸化物を用いることもできる。
【0140】
この第4実施例では、上記の単純混合法、光還元前担持法或いは共沈法を採用し、この手法で金属を担持した光触媒を用いた。
【0141】
第4実施例の光触媒機能発揮タイル(実施例タイル)は、単純混合法、光還元前担持法或いは共沈法でAg、Cuを担持済みの光触媒(二酸化チタン)が分散した光触媒ゾルを用い、上記した第1参考例の評価試験1で述べた工程を踏襲して、この金属担持済み光触媒ゾル(光触媒/金属)に他の二つの成分(アルミナ、シリカ)のゾルを混合・撹拌し、この混合ゾルのスプレー塗布・焼成を経て製造した。こうして製造された光触媒/金属(Ag又はCu)/アルミナ/シリカの4成分系のタイルが第4実施例の実施例タイルである。この際、新たに配合する金属、シリカの影響を把握するため、光触媒/金属(Ag又はCu)の2成分系についてもタイル(参考タイル)を製造した。また、第5実施例の実施例タイルは、第1参考例同様の光触媒(二酸化チタン)のみの光触媒ゾルを用い、上記した第1参考例の評価試験1で述べた工程を踏襲して、この光触媒ゾルに他の二つの成分(アルミナ、シリカ)のゾルを混合・撹拌し、この混合ゾルのスプレー塗布・焼成を経て製造した。こうして製造された光触媒/アルミナ/シリカの3成分系のタイルが第5実施例の実施例タイルである。そして、この第4、第5実施例の実施例タイル、参考タイル、第1参考例の参考例タイル、比較例タイルについて、NOx削減効率を調べた。なお、第1参考例の参考例タイル、比較例タイルは、第1参考例の評価試験1で述べた通りのものであり、第1参考例の参考例タイルの配合割合決定比a/(a+b)は1/11である。また、第4実施例の実施例タイルの配合割合決定比(SIO2 /(TiO2 +Al23+SiO2))は1/11であり、第5実施例の実施例タイルの配合割合決定比(Al23/(TiO2 +Al23+SiO2 ))は1/11である。2成分系の参考タイルでは、金属とTiO2 の重量比が、Ag配合の2成分系の参考タイルで0.001(Ag/TiO2 )、Cu配合の2成分系の参考タイルで0.01(Cu/TiO2 )である。
【0142】
これらタイルについて、図4に示した試験装置を用い、第1参考例の評価試験1で述べたように、CNO/out、CNO2 /outを測定した。そして、この測定したCNO/out、CNO2 /outと既知の試験ガス濃度(CNO/in)とから、光照射後30分経過した時点での(CNO/in−CNO/out)、CNO2 /outおよびNOx削減効率を求めた。その結果を表1に示す。
【0143】
【表1】
Figure 0004011705
【0144】
(CNO/in−CNO/out)は、NOがNO2 又はNO3 -に酸化された量(NO減少量)であり、NOの酸化力の指標となる値である。また、CNO2/outは、NO2 の系外への副生成量であり、このCNO2 /outの値が小さいほど、NO2 を系外へ離脱させないこと、即ちNO2 の吸着力が強いことを表す。このため、表1から明らかなように、第4実施例の実施例タイルによれば、第1参考例と同等以上のNO酸化力を発揮でき、高いNOx削減効率を得ることができた。特に、Agを配合した第4実施例の実施例タイルでは、大きな(CNO/in−CNO/out)によりNO酸化力が高く、小さなCNO2 /outにより強力なNO2 吸着力となることから、酸化力と吸着力の両立を図ることができた。
【0145】
また、参考タイルの結果から、光還元前担持法を採れば、二酸化チタンと金属の2成分系であっても、第1参考例と同等程度のNO酸化力とNOx削減効率を得ることができた。更に、第5実施例の実施例タイルの結果から、シリカを配合しても、第1参考例と同等程度のNO酸化力とNOx削減効率を得ることができたことから、NOx削減に関しては、シリカ配合による不具合はないことが判った。
【0146】
上記の第4、第5実施例であっても、光触媒として、結晶型がルチル或いはブルッカイトの二酸化チタンや、ZnO、V25、WO3 、SnO2 、SrTiO3 、Bi23、Fe23等を用いてもよい。また、アルミナに替わる金属酸化物として、削減対象がNOx等の酸性ガスであれば、酸化亜鉛、酸化スズ(以上、両性金属酸化物)、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ルビジウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム(以上、塩基性金属酸化物)を用いてもよく、塩基性ガスを削減対象とする場合には、上記の両性金属酸化物の他、酸化リン(酸性金属酸化物)を用いてもよい。更に、AgやCuに替えて、上記の各金属を用いたり、シリカに替えて、上記の各酸化物を用いることもできる。
【0147】
次に、第6、第7実施例について説明する。この第6実施例は、上記の第4実施例と同様、二酸化チタンで代表される光触媒と、アルミナで代表される両性或いは塩基性若しくは酸性金属酸化物と、CuやAg、Pd、Fe、Ni、Cr、Co、Pt、Au、Rh、Ru等の第4実施例で述べた金属と、シリカ等の第4実施例で述べたその他の化合物(酸化物)とを併用した4成分系のものである。第7実施例は、光触媒と、アルミナで代表される両性或いは塩基性若しくは酸性金属酸化物と、シリカ等の第4実施例で述べたその他の化合物(酸化物)とを併用した3成分系のものである。そして、この第6、第7実施例では、NOx等の環境汚濁物質の分解能力を含んだ分解力の向上と汚濁防止を図った。
【0148】
第6実施例でも、第4実施例と同様、上記の単純混合法或いは光還元前担持法にて、Ag、Cuを担持済みの光触媒(二酸化チタン)が分散した光触媒ゾルを用いた。そして、第6実施例の実施例タイルにあっても、第4実施例のように、第1参考例の評価試験1で述べた工程を踏襲して製造した。第7実施例の実施例タイルは、第5実施例と同様、光触媒ゾルに他の成分(アルミナ、シリカ)のゾルを混合・撹拌し、この混合ゾルのスプレー塗布・焼成を経て製造した。また、新たに配合する金属、シリカの影響を把握するため、光触媒/金属(Ag又はCu)の2成分系、光触媒/シリカの2成分系、光触媒/金属(Ag又はCu)/シリカの3成分系についてもタイル(参考タイル)を製造した。この場合、光触媒ゾルの基材(タイル)への塗布に際して、スプレー塗布に替わり、スピンコート、ディップコート等の手法を採ることもできる。また、光触媒ゾルの基材表面への固着は、第1参考例の評価試験1で述べた工程のように焼成によって行ったり(焼き付けタイプ)、シリコーン樹脂を光触媒ゾルに混合し、比較的低温においてこのシリコーン樹脂を硬化させる手法(塗料タイプ)を採った。そして、この第6、第7実施例の実施例タイル、参考タイル、比較例タイルについて、評価した。なお、比較例タイルは、第1参考例の評価試験1で述べた通りのものである。
【0149】
第6実施例の実施例タイルの配合割合決定比(SIO2 /(TiO2 +Al23+SiO2 ))は1/10であり、第7実施例の実施例タイルの配合割合決定比(Al23/(TiO2 +Al23+SiO2 ))は1/10である。光触媒/シリカの2成分系の参考タイルの配合割合決定比(SIO2 /(TiO2 +SiO2 ))は1/5である。光触媒/金属の2成分系の参考タイルでは、金属とTiO2 の重量比が、Ag配合の2成分系の参考タイルで0.001(Ag/TiO2 )、Cu配合の2成分系の参考タイルで0.01(Cu/TiO2 )である。光触媒/金属/シリカの3成分系の参考タイルでは、金属とTiO2 の重量比は上記の参考タイルと同じ(0.001(Ag/TiO2 )、0.01(Cu/TiO2 ))であり、その配合割合決定比(SIO2 /(TiO2 +SiO2 ))は1/5である。
【0150】
まず、新たに配合する金属の影響を把握するため、光触媒/金属(Ag又はCu)の2成分系の参考タイルについて説明する。この2成分系の参考タイルは、焼き付けタイプでは、酸化チタンゾル(石原産業STS−11)に各種金属塩(和光純薬 試薬特級)を、酸化チタンゾル中の酸化チタン固形分に対して0.001〜10%となるように配合した。そして、単純混合法もしくは光還元前担持法にて、或いは共沈法にてAg又はCuを予め光触媒に担持した。光還元前担持法では、Ag又はCuの金属塩水溶液を酸化チタンゾルに混合した後に、1mW/cm2 の強度で紫外線を2時間照射し、金属が担持された光触媒のゾルとした。共沈法では、TiOSO4 溶液を出発原料として、この溶液に金属塩水溶液を加えて加水分解し、金属が担持された光触媒のゾルとした。その後、これら光触媒ゾルをタイル表面に焼成後の膜厚が約0.8μmとなるようにスプレー塗布し、600〜900℃(この参考タイルでは、約800℃)で焼成を行い、2成分系の参考タイル(焼き付けタイプ)を得た。
【0151】
塗料タイプでは、酸化チタンゾル(日産化学TA−15)に各種金属塩(和光純薬 試薬特級)を、酸化チタンゾル中の酸化チタン固形分に対して0.001〜1%となるように配合した。そして、単純混合法もしくは光還元前担持法にてAg又はCuを担持済みの光触媒ゾルと、バインダーとしてのシリコーン樹脂を、酸化チタンとシリコーン樹脂の固形分比が7:3となるように混合し、タイル表面にスピンコートし、150℃の加熱により、2成分系の参考タイル(塗料タイプ)を得た。
【0152】
この2成分系の参考タイル(焼き付けタイプ&塗料タイプ)について、化学物質の分解力の評価に対して以下の評価試験を行った。分解力は、抗菌力、油分解率によって直接的に評価できる。ここで、抗菌力は、上記した第3参考例で説明した大腸菌(Escherichia coil w3110 株)に対する抗菌率を用いることとし、光触媒(二酸化チタン)単体からなる光触媒層を有するタイルが発揮する抗菌力を1として評価した。油分解率は、以下のように定めた。試験体に1mg/100cm2 だけサラダ油を塗布し、1mW/cm2 の紫外線を7日間照射した。そして、油塗布前、油塗布直後、照射終了時点の光沢を測定し、以下の数式1から得られる値を油分解率とした。
【0153】
【数1】
Figure 0004011705
【0154】
また、光触媒による化学物質の分解は、主に光励起した光触媒から放出される活性酸素種による物質への酸化作用によるものであるので、光触媒による化学物質の分解能力の一つの指標として、光触媒の酸化力を用いることが可能である。ここではモデル反応として一酸化窒素(NO)から二酸化窒素(NO2 )への酸化による転化量により、種々の光触媒薄膜のNO酸化力の評価も行った。このNO酸化力は、図4に示した試験装置を用い、第1参考例の評価試験1で述べたように、CNO/outを測定した。そして、この測定したCNO/outと既知の試験ガス濃度(CNO/in)とから、光照射後の経過時間ごとの(CNO/in−CNO/out)を求め、光照射開始から1時間経過するまでに酸化された全NOのモル数を、上記の(CNO/in−CNO/out)から算出し、これをNO酸化力とした。ただし、その際の条件は、NOガス(試験ガス)の流し込みは、2リットル/minで行い、サンプル片は5cmx50cmの大きさとした。
【0155】
そして、上記の2成分系の参考タイル(焼き付けタイプ&塗料タイプ)についての抗菌力、油分解率、NO酸化力を、表2に示す。なお、この表2の抗菌力、油分解率、NO酸化力は、上記の説明からも明らかなように、タイルが明所下にある場合のものである。
【0156】
【表2】
Figure 0004011705
【0157】
この表2から、焼き付けタイプの参考タイルにおいては、Cu添加系では、光還元前担持法によって調整されたCuをTiO2 に対して1%担持したものが抗菌力、油分解率、NO酸化力とも最も優れている。Ag添加系ではやはり光還元前担持法が単純混合法よりも抗菌力、油分解率、NO酸化力とも最も優れている。表中のいずれの金属の添加によっても抗菌力、油分解率、NO酸化力とも無添加のものと比較して向上していることから、TiO2 に担持されたCu、Ag、Pd、Fe等の金属はTiO2 の分解力向上に寄与することが判った。焼き付けタイプにおいてはCu添加系では、光還元前担持法によって調整されたCuをTiO2 に対して0.1〜1%担持したものが最も高い抗菌力を示す。また、Ag添加系はCu添加系よりも高い抗菌力を示すことが判った。
【0158】
上記の結果より焼き付けタイプおよび塗料タイプの参考タイルにおいて、Cu、Ag、Pd、Fe等の金属をTiO2 に担持することにより分解力が向上することが判る。つまり、上記の金属はTiO2 の分解力を向上させる機能を持っていると結論できる。また、分解力に対しては金属種の担持方法として光還元前担持法は単純混合法よりも優れていることが判る。更には、上記の金属の担持量を調整することで、TiO2 の分解力を変更することができるといえる。
【0159】
また、この焼き付けタイプの2成分系の参考タイルを暗所下に置いた場合の抗菌力について調べたところ、単純混合法でCuをTiO2 に対して0.1%担持した参考タイルでは、抗菌力は約0.3であった。また、単純混合法でCuをTiO2 に対して1%担持した参考タイルでも、抗菌力は約0.3であった。更には、単純混合法でAgをTiO2 に対して0.1%担持した参考タイルでも、抗菌力は約0.3であった。このように暗所下では、光触媒は活性せずその抗菌力は、担持した金属自体が発揮するものにほかならない。そして、金属無添加のタイル、即ち光触媒のみのものでは、暗所下の抗菌力はほぼゼロであることを勘案すると、これら参考タイルでは、金属自体が発揮する抗菌力並びに光触媒のみのタイルが発揮する抗菌力(表2より1)を越える抗菌力を明所下において発揮できる。例えば、単純混合法でCuをTiO2 に対して0.1%担持した参考タイルの明所下の抗菌力は、表2より1.5であるが、この値は、Cu自体が発揮する抗菌力(0.3)と光触媒のみのタイル抗菌力(1)の和を上回る。このため、CuをTiO2 に対し担持することで、CuとTiO2 を単に組み合わせたものよりも大きな効果を得ることができるといえる。
【0160】
ここで、上記した参考タイルでの効果を踏まえ、第6、第7実施例の実施例タイルについて説明する。この第6、第7実施例では、新たな評価項目である親水性に関しても評価した。まず、親水性の試験等に先立ち、親水性と表面汚濁の関係について説明する。
【0161】
近年になって、表面を親水性とすることでその表面の汚れを防止できることが知見されるに到った(高分子、第44巻、1995年5月号、p.307)。親水性は水との接触角で換算でき、この接触角が小さいほど水に対する濡れ性が向上し、親水性表面に接触した水はその接触表面に止まりにくくなる。そして、このように水が止まりにくくなれば、雨水等に含まれた都市塵埃等の汚れ成分は水と共に親水性表面から流れ落ち、汚れ防止効果が高まる。
【0162】
このため、親水性が付与されたグラフトポリマーを建築物外壁等に塗布し、このグラフトポリマーの塗膜にて汚れ防止を図ることが提案されているが、水との接触角で換算される親水性が約30〜約40゜であるために表面に水が比較的止まりやすく、汚れ防止効果や防曇効果が必ずしも十分ではない。また、粘土鉱物で代表される無機質塵埃は、水との接触角が約20〜約50゜であるために、上記接触角を有するグラフトポリマーとの親和性を呈し、グラフトポリマー表面に付着しやすい。このことと相俟って、グラフトポリマーの塗膜やフィルムは、特に無機質塵埃に対する高い汚れ防止効果を奏することは困難であった。
【0163】
そして、接触角を、親油性成分を多く含む都市塵埃や粘土鉱物のような無機質塵埃等の接触角よりも小さくすれば、基材表面にはこれら塵埃が親和性を発揮することはなく、汚れ防止効果をより一層高めることができる。しかも、接触角がゼロ度に近づくほど親水性は高まり、水は基材表面で膜状に拡散し流れやすくなるので、上記の都市塵埃はもとより無機塵埃も容易に基材表面から水と共に流れ落ちる。この場合、汚れ防止効果を高める上では、接触角が約20゜以下でゼロに近い値であることがより好ましい。
【0164】
光触媒を用いた本発明の実施例(第6、第7実施例)をこのような問題を踏まえて検討したところ、光触媒の呈する触媒反応により水酸ラジカル・OHが生成されることから、上記したように親水性の指標となる水との接触角を調べた。その試験の概要は以下の通りである。
【0165】
既述した第6、第7実施例の実施例タイル、2成分系・3成分系の参考タイルおよび比較例タイルについて、それぞれ焼き付けタイプのものを用意し、適宜な大きさのサンプル片を準備した。そして、このサンプル片に滴下した水滴の接触角を、タイル製造後に紫外線を照射するランプ(波長が320〜380nmにおいてサンプル片の受光量が約1mW/cm2 )で約24時間に亘って紫外線を照射した後(明所下)と、この光触媒による活性がほぼ完全に停止するに十分な時間に亘って暗所に放置した後(暗所下)について測定した。その測定結果を表3に示す。
【0166】
【表3】
Figure 0004011705
【0167】
この表3の結果から、金属配合の影響を調べた2成分系の参考タイルと同様、4成分系の実施例タイル(第6実施例)にあっても、Cu、Ag等の表中の金属を配合することで、抗菌力、油分解力、NO酸化力とも向上し分解力を高めることができた。しかも、Cu、Ag等の表中の金属自体が発揮する抗菌力と光触媒のみの比較例タイル或いは3成分系の実施例タイルの抗菌力の和を上回る抗菌力を得ることができた。しかも、表面層のモース硬度は、表面層を有しない単なるタイルが有するモース硬度と同等であり、タイルとしての実用性を備えていた。
【0168】
また、第6、第7実施例の接触角は、比較例タイルより明時/暗時を問わず小さくなっていることから、表面層にTiO2 と共に配合されたSiO2 は、或いはAl23又はこの両者は、既述したように水酸基の吸着を通してタイル表面の親水性向上に寄与することが明らかになった。しかも、Cu、Ag等の表中の金属を配合したことで、接触角の増大、即ち親水性の低下は起きないことが判った。これらのことから、分解力と親水性を両立する機能性薄膜或いはこのような薄膜を有する機能材は、分解力向上に寄与するCu、Ag、Pd、Fe、Ni、Cr、Co、Pt、Au、Rh、Ru等の金属のTiO2 への担持と、親水性の向上に寄与するSiO2 又はAl23或いはこの両者のTiO2 への配合を経て製造することができる。
【0169】
また、この第6、第7実施例の実施例タイルは、その表面層にTiO2 に加えてAl23を含んでいることから、第1、第2参考例で説明したように窒素酸化物等の有害物質の削減効果を有することは勿論である。なお、上記の金属を含まない3成分系の第7実施例の実施例タイルのNO酸化力が比較例タイルと同等であるが、第6、第7実施例の実施例タイルにあっては、第1、第2参考例で説明したように中間生成物(NO2 )を硝酸にまで化学変化させることでこのNO2までも削減する。よって、第6、第7実施例の実施例タイルによれば、NOおよびNO2 を含んだ有害物質全体の削減効果を発揮できることに矛盾はない。
【0170】
上記した分解力の向上効果が塗料タイプの第6、第7実施例の実施例タイルについても得られるかについて調べたところ、表4のような結果となった。よって、塗料タイプであっても、第6、第7実施例の実施例タイルによれば、表中金属の配合を通して、抗菌力、油分解力、NO酸化力とも向上させ分解力を高めることができことが実証された。なお、この塗料タイプの第6、第7実施例の実施例タイルであっても、上記の焼き付けタイプの実施例タイルと同様、TiO2 と共に配合したSiO2 による水酸基吸着を通してタイル表面の親水性向上に寄与することができることは勿論である。また、この塗料タイプのものであっても、表面層は4Hの鉛筆硬度を有することから、タイルとしての実用性を備えていた。
【0171】
【表4】
Figure 0004011705
【0172】
ここで、上記したCu、Ag等の配合量について、光触媒/金属/アルミナ/シリカの4成分系の第6実施例の実施例タイルを例に採り説明する。第6実施例の実施例タイルは、配合割合決定比(SIO2 /(TiO2 +Al23+SiO2 ))を1/10と一定とし、金属の重量をc、TiO2 の重量をdと表した場合、c/d(金属配合比)が種々の値となるように配合したものを準備した。そして、各実施例タイルについて、この金属配合比と抗菌力との関係を調べた。その結果を、焼き付けタイプと塗料タイプの別に図11、図12に示す。なお、この場合の抗菌力は、光触媒/アルミナ/シリカの3成分系の第7実施例の実施例タイルが発揮する抗菌力を1として表した。
【0173】
この図11、図12から判るように、焼き付けタイプ、塗料タイプとも、Ag、Pd、Pt、Cu、Crのいずれの金属であっても金属配合比が約0.00001以上であれば、「値1」以上の抗菌力を得ることができた。また、Ag、Pd、Ptでは金属配合比が約0.001で抗菌力のピークとなり、Cu、Crでは約0.01でピークとなり、その後、抗菌力は減少する傾向となった。従って、Ag、Pd、Pt、Cu、Cr等の金属は、その金属配合比が約0.00001〜0.05の値となるように配合すればよいことが判った。つまり、これら金属が0.00001以上の金属配合比で配合されていれば、金属が少なすぎて抗菌力の向上に全く寄与しないというようなことは起きず、0.05以下であれば、光触媒(TiO2 )に対して金属が過剰となって光触媒の触媒反応に悪影響を与えるといったことが起きずに好ましい。また、Ag、Pd、Ptを第4の成分として含有する表面層の実施例タイルは、Cu、Crを第4の成分として含有する表面層の実施例タイルより抗菌力が勝ることが判った。
【0174】
ここで、上記した光触媒ゾルを用いてタイル表面に形成された表面層の表面性状について、光触媒/金属/アルミナ/シリカの4成分系の第6実施例の実施例タイルと光触媒/アルミナ/シリカの3成分系の第7実施例の実施例タイルを例に採り説明する。この場合、第6、第7実施例の実施例タイルは、配合割合決定比(SIO2 /(TiO2 +Al23+SiO2 ))を1/10と一定とし、表面性状の一つである膜厚が種々の値となるようにした表面層を有するものを準備した。そして、各実施例タイルについて、この表面層膜厚と、接触角、抗菌力、油分解力或いはNO酸化力との関係を調べた。その結果を図13〜図17に示す。
【0175】
図13〜図16は、4成分系の第6実施例の実施例タイル(焼き付けタイプ)についてのものである。そして、図13は表面層膜厚と明時接触角との関係を表すグラフであり、図14は表面層膜厚と抗菌力との関係を表すグラフであり、図15は表面層膜厚と油分解力との関係を表すグラフであり、図16は表面層膜厚とNO酸化力との関係を表すグラフである。なお、この場合の抗菌力は、光触媒/アルミナ/シリカを含有した表面層を有するタイルが発揮する抗菌力を1として表した。図17は、3成分系の第7実施例の実施例タイル(焼き付けタイプ)における表面層膜厚と明時接触角との関係を表すグラフである。なお、4成分系の実施例タイルは、表面層にAg、Pd、Pt、Cu、Crをそれぞれ含有するものとし、膜厚は、0.005〜3μmのものについて調べた。
【0176】
3成分系、4成分系の実施例タイルでは、その表面層に、既述したように水酸基の吸着を通して親水性の向上に寄与するSiO2 を含有させたことから、SiO2 を含有させたことで得られる機能(親水性の向上)が求められる。この場合の親水性の向上は既述したように低い接触角の有無で確かめられ、接触角が20゜以下であることが好ましい。この観点から図13、図17を考察すると、焼き付けタイプの3成分系、4成分系の実施例タイルでは、表面層の膜厚が約0.01μm以上であれば、20゜以下の小さな接触角が得られ、親水性の向上を通した汚れ防止効果が得られ好ましい。表面層膜厚が約0.01μm以上であると20゜以下の接触角が得られるのは、膜(表面層)が薄すぎることがないために、基材が大きな接触角をもっていても、この基材(タイル)に形成した表面層自体の接触角を呈することができるからだと考えられる。
【0177】
この図13、図17に示すように、表面層膜厚が約0.5μm以上であれば接触角は小さな値のままとなる。その一方、表面層膜厚が厚くなればなるほど表面層の密着面積当たり重量が増加するので、表面層膜厚が厚すぎると、基材と表面層との密着性の低下を来し表面層が剥離することがある。よって、表面層膜厚は、基材と表面層との密着性の維持の観点から、約3μm以下であることが好ましい。また、表面層膜厚が厚すぎると、表面層の下層には紫外線が全く浸透しなくなり光触媒としての機能を表面層全体で発揮できないことから、表面層膜厚は約3μm以下であることが好ましいともいえる。
【0178】
そして、図14〜図16に示すように、上記のように定めた表面層膜厚範囲(約0.01〜約3μm)であれば、抗菌力、油分解力およびNO酸化力を確実に向上させることができ、好ましい。
【0179】
上記の表面層膜厚の他に、次の表面性状についても調べた。
【0180】
紫外線が照射されると光触媒により励起電子が水酸ラジカルと共に生成される。よって、この励起電子により表面層で起きる現象を特定し、その様子を観察すれば、この励起電子の生成状態、即ち水酸ラジカル・OHの生成状態が判明する。第6、第7実施例の実施例タイルは、その表面層に、水酸基を吸着・保持するSiO2 を含有することから、光触媒により生成された水酸ラジカル・OHはこのSiO2 に保持される。従って、光触媒による励起電子の生成が多いほど生成した水酸ラジカル・OHの量が多くなり、結果としてSiO2 の表面おける水酸基密度が高まり、水の接触角が小さくなって親水性が高まると考えられる。このため、表面層に硝酸銀溶液を付着させた状態で紫外線照射を行えば、表面層に付着した硝酸銀溶液における銀イオンの電荷はこの励起電気により変化し、呈色反応が起き、紫外線照射の前後で色差△Eが観察される。この色差△Eは、反応に関与する励起電子が多いほど大きくなるので、親水性の程度を示す指標となる。よって、以下のようにして色差△Eを観察することとした。
【0181】
この色差△Eの測定には、呈色反応を呈する試薬として一般的な1%の硝酸銀溶液を用いた。この溶液に含まれる銀イオンは、光触媒により生成された励起電子(e- )と反応し銀として析出される。反応式は、以下の通りである。このように銀が析出することで、硝酸銀溶液の付着表面では、茶色或いは黒色に変色し、色差△Eが明確に得られる。
【0182】
Ag+ +e- →Ag↓
【0183】
よって、1%の硝酸銀溶液を塗料タイプの第6実施例(4成分)と第7実施例(3成分)の実施例タイルの表面層に付着させ、この状態で紫外線照射を行い、各タイルについて色差△Eを測定するととした。紫外線は、表面層上において1.2mW/cm2 の強度となるように照射し、照射時間は5分間とした。そして、測定した色差△Eと、接触角、抗菌力、油分解力或いはNO酸化力との関係を調べた。その結果を図18〜図22に示す。なお、色差△Eの測定に際しては、タイル表面の残留水溶液をキムタオルで拭き取り、この状態でのタイル表面の銀呈色量と試験前(紫外線照射前)の銀呈色量との差を求めた。そして、銀呈色量の測定には、日本変色工業社の色差計ND300Aを用い、JIS Z 8729(1980)およびJIS Z 8730(1980)に準拠した。
【0184】
図18〜図21は、4成分系の第6実施例の実施例タイル(塗料タイプ)についてのものである。そして、図18は色差△Eと明時接触角との関係を表すグラフであり、図19は色差△Eと抗菌力との関係を表すグラフであり、図20は表面層膜厚と油分解力との関係を表すグラフであり、図21は色差△EとNO酸化力との関係を表すグラフである。なお、この場合の抗菌力も、光触媒/アルミナ/シリカを含有した表面層を有するタイルが発揮する抗菌力を1として表した。図22は、3成分系の第7実施例の実施例タイル(塗料タイプ)における色差△Eと明時接触角との関係を表すグラフである。なお、4成分系の実施例タイルは、表面層にAgを含有するものとし、色差△Eが0〜60となるものについてまで調べた。この場合、色差△Eがゼロのタイルは、励起電子を生成することのない単なるタイル(塗料のみからなる表面層を有するに過ぎないタイル)である。
【0185】
図18、図22から、色差△Eが1以上あれば、20゜以下の小さな接触角が得られ、親水性の向上を通した汚れ防止効果が得られ好ましい。そして、色差△Eが約10以上であれば接触角は小さな値のままとなる。その一方、光触媒の量が増えれば励起電子の生成は活発となるので、色差△Eは大きくなるが、光触媒以外の成分(Al23、SiO2 若しくはこれらと上記の金属)の総量に対する光触媒の量が多くなり、光触媒量が増えるほど基材への密着性が低下し表面層の剥離が起きやすくなると考えられる。このため、色差△Eが50以下であれば、光触媒以外の成分の総量に対する光触媒の量が多すぎることがなく、表面層剥離を抑制する観点から好ましい。
【0186】
そして、図19〜図21に示すように、上記のように定めた色差△Eの範囲(約1〜約50)であれば、抗菌力、油分解力およびNO酸化力を確実に向上させることができ、好ましい。
【0187】
次に、TiO2 の親水性の向上に寄与するSiO2 又はAl23等の他成分(金属酸化物)の添加による超親水性機能の向上について説明する。まず、焼き付けタイプの実施例(第8実施例)から説明する。
【0188】
1) 光触媒ならびに金属酸化物のゾルの調達;
光触媒性物質/
TiO2 ゾル:平均粒子径約0.02μm(石原産業STS−11)又は平均粒子径約0.01μm(多木化学A−6L)
SnO2 ゾル:平均粒子径約0.002μm(多木化学)
【0189】
本第8実施例では、無害且つ化学的に安定で、かつ安価なアナターゼ型TiO2 の他、SnO2 ゾルを使用したが、他の光触媒性物質である結晶性TiO2 、SrTiO3 、ZnO、SiC、GaP、CdS、CdSe、MoS3 、V25、WO3 、SnO2 、Bi25、Fe23を代替物質として用いる事ができる。
【0190】
金属酸化物/
SiO2 ゾル:平均粒子径約0.007〜約0.009μm(日産化学スノーテックスS)
Al23ゾル:平均粒子径約0.01μm×約0.1μm(日産化学アルミナゾル200・無定形)又は平均粒子径約0.01〜約0.02μm(日産化学アルミナゾル520・ベーマイト)
SiO2 +K2Oゾル:(日産化学スノーテックスK・SiO2/K2Oモル比3.3〜4.0)
SiO2 +LiO2 ゾル:(日産化学リチウムシリケート35・SiO2/LiO2モル比3.5)
ZrO2 ゾル:平均粒子径約0.07μm(日産化学NZS−30B)
【0191】
上記のゾルはすべて市販品を用いたが、出発原料として金属のアルコキシドに塩酸またはエチルアミンのような加水分解抑制剤を添加し、エタノールやプロパノールのようなアルコールで希釈した後、部分的に加水分解を進行、又は完全に加水分解を進行させた液を用いても良い。たとえばチタンのアルコキシドであればテトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタンなどを挙げる事ができる。またその他の有機金属化合物(キレート、アセテート)、TiCl4 、Ti(SO42のような無機金属化合物を出発原料とする事も可能である。
【0192】
2) 親水性付与材の調整;
前記光触媒性物質と金属酸化物のゾルの混合は固形分の濃度が0.4重量%の濃度となるようにあらかじめ希釈し、後述の表5に示す比率で各ゾルを混合し、充分に撹拌した。混合後の固形分重量比は使用した各ゾルの液重量比となる。
【0193】
3) 親水性発揮タイルの作製;
施釉タイル(TOTO製 AB06E11)を基材として用意し、このタイルの表面に所定量の上記混合ゾルをその膜厚が約0.5μmとなるようにスプレー塗布した。これをRHK(ローラーハースキルン)で最高温度約700℃〜900℃、焼成時間60分で焼成し、第8実施例タイルを製造した。この第8実施例タイルでは、スプレー塗布を行ったが、コーティング方法としてフローコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、刷毛塗り、その他のコーティング方法が使用可能である。また、この第8実施例では基材としてタイルを用いたが、その他に金属、セラミックス、陶磁器、ガラス、プラスチックス、木、石、セメント、コンクリートまたはそれらの組み合わせ、それらの積層体を使用する事が可能である。なお、この第8実施例は、使用するゾルが上記のゾルの調達で述べたものであることから、光触媒と、アルミナで代表される両性或いは塩基性若しくは酸性金属酸化物と、シリカ等の第4実施例で述べたその他の化合物(酸化物)とを、組み合わせた2成分系、3成分系のものである。もっとも、後述の表5に示すように、1成分で複数種の化合物(金属酸化物)を用いる場合もある。
【0194】
4) 評価;
親水性の評価は水の静止接触角で評価した。まず、試験タイル(第8実施例タイルおよび比較例タイル)を紫外線強度約1.5mW/cm2 のBLB蛍光灯(三共電気製 ブラックライトランプ、FL20BLB)で24時間照射した後、水との接触角を測定した。その後、72時間遮光保存(暗所保存)し、再度、水との接触角を測定した。結果を前記表に示す。また、膜強度をモース硬度を用いて評価した。結果を表5に示す。
【0195】
【表5】
Figure 0004011705
【0196】
この表5のNo.2〜No.14から、紫外線照射による親水化ではTiO2/(TiO2 +SiO2 +Al23)≧0.4の範囲では水との接触角が10度以下となり充分な親水化がなされている事が判る。また、暗所保存後はTiO2の量が同量ならAl23の添加量が多いほど親水性が高い状態で維持されている事が判る。また、SiO2 を添加する事により、またその添加量を多くする事により硬度が上昇する事が判る。これらのことから、光触媒(TiO2 )にSiO2 およびAl23を添加する事で、光触媒単体よりも光照射下での親水性が向上し、また暗所下での親水性の維持力も向上し、さらに膜硬度と緻密性の向上も確認された。この効果のうち、この実施例で示したゾルを用いた場合には、親水性の向上は主としてAl23の添加によってもたらされ、膜硬度の向上はSiO2の添加によってもたらされると考えられる。なお、表4のNo.1は、上記の施釉タイルについての結果であり、No.2は、光触媒のみのタイル(比較例タイル)についての結果である。
【0197】
表5のNo.15〜No.18は同様の試験を行ったものだが、SiO2 の一部をK2O に置き換えたものである。この結果も同様にSiO2 、K2O 、Al23の添加により親水性機能の向上と膜硬度の上昇が焼成温度が約700度〜約800度の範囲で達成されている。またNo.19はSiO2 の一部をLiO2で置き換えた試験であるがこれも同様に親水性機能と膜硬度の向上が達成されている。
【0198】
No.17とNo.18はアルミナゾルの原料形状について検討を行ったものであるが、無定形で羽毛状組織であるアルミナゾルを使用する事で更に親水性機能の向上が確認された。これは親水性機能を向上させるためには、粒子状であるよりも親水基の多い組織であるほうが特に効果が高いと考えられる。
【0199】
No.20はTiO2 にZrO2 を添加した場合の結果である。これからZrO2 でも親水性向上に効果がある事がわかった。
【0200】
No.21とNo.22は光触媒としてSnO2 を使用した試験の結果である。SnO2 単体でも親水化効果が見られ、さらにAl23を添加する事で親水性の向上が確認できた。この時膜硬度の低下はなく、SnO2 がそれ自身バインダーとしての機能も持つ事が確認された。
【0201】
また、No.3〜No.14から、Al23添加量が増すほど、接触角が小さくなり、親水性が向上する。よって、Al23添加量を調整することで、親水性の程度を変更することができる。そして、表2の結果から、Cu、Ag、Pd、Fe等の金属の光触媒への担持量を調整することで、TiO2 の分解力を変更することができることを勘案すると、Al23添加量調整と上記の金属の担持量調整を行うことで、親水性性能と分解力(分解性能)のバランスを調整できる。この結果、強力な分解力を必要とする場合には、親水性を光触媒で発揮できる程度と同程度以上に維持しつつ、この必要とされる強力な分解力を発揮することができるといえる。
【0202】
このように親水性性能と分解性能を兼備させると、次のような利点がある。親水性に基づく汚れ除去と、分解性能に基づく汚れ除去という2段階のプロセスにより、付着汚れの除去効率の格段の向上と、除去スピードの向上を図ることができる。この場合、汚れの種類によっては、親水性に基づく汚れ除去後に残された僅かな汚れの付着強度が高いこともあり得るが、上記の金属の担持量調整を経た分解力向上により、このような付着強度が高い僅かな汚れも除去できる。更には、このように汚れが除去されることから光触媒への光を遮蔽することがなくなって、光触媒に照射される光量を増すことができる。よって、親水性に基づく汚れ除去と分解性能に基づく汚れ除去とを極めて効率よく持続することができる。
【0203】
以上総括すると、光触媒にSiO2 、Al23、ZrO2 を添加することで、光照射下接触角と暗所保持後の親水性維持力が向上する事がわかった。この効果は、これらの物質の親水性によりもたらされるものと考えられるが、物質の親水性を示す指標として湿潤熱が挙げられ、光触媒として好ましいTiO2 の湿潤熱はアナターゼ型で320〜512×10-3Jm-2、ルチル型で293〜645×10-3Jm-2である。このことから、500×10-3Jm-2以上の湿潤熱をもつ化合物であることが好ましく、上記3種類の金属酸化物のほかにGeO2 、ThO2 、ZnOが挙げられる。これらの金属酸化物は結晶構造を持つものばかりでなく、無定形のものでもよくその粒子径の範囲は0.1μm以下である事が分かった。また、SiO2 を添加する事で膜硬度が向上する事がわかった。SiO2の添加量の一部をK2O あるいはLiO2 にする事で焼成温度が低くても膜硬度を向上させる事ができた。特に上記の効果が期待できる範囲として、TiO2 /(親水性付与調整剤の全固形分量)≧0.5、SiO2 /(親水性付与調整剤の全固形分量)≦0.5の条件を満たす場合である。
【0204】
次に、TiO2 の親水性の向上に寄与するSiO2 又はAl23等の他成分(金属酸化物)の添加による超親水性機能の向上並びに他の機能の向上(膜硬度向上)の有無を、塗料タイプの実施例(第9実施例)について説明する。
【0205】
1) 光触媒ならびに金属酸化物のゾルの調達;
光触媒性物質/
TiO2 ゾル:(日産化学TA−15)
なお、この第9実施例でも、無害且つ化学的に安定で、かつ安価なアナターゼ型TiO2 の他、SnO2 ゾルを使用したが、他の光触媒性物質である結晶性TiO2 、SrTiO3 、ZnO、SiC、GaP、CdS、CdSe、MoS3、V25、WO3 、SnO2 、Bi25、Fe23を代替物質として用いる事ができる。
【0206】
金属酸化物/
SiO2 ゾル:(日本合成ゴム製グラスカT2202)
Al23ゾル:平均粒子径約0.01〜約0.02μm(日産化学アルミナゾル520・ベーマイト)
【0207】
SiO2 は市販品を用いたが、シリコーン(オルガノポリシロキサン)またはシリコーンの前駆体からなる塗膜形成要素を用いる事が可能である。また、TiO2 およびAl23ゾルについても、市販品を用いたが、上記した第8実施例と同様、出発原料として金属のアルコキシドに塩酸またはエチルアミンのような加水分解抑制剤を添加する等の既述した工程を経て、これらゾルを用意する事も可能である。
【0208】
2) 親水性付与材の調整;
上記原料を一定比で混合した後、エタノールで3倍に希釈し、コーティング液とした。作製したコーティング液の成分比は、次の表6に示す。
【0209】
【表6】
Figure 0004011705
【0210】
3) 親水性発揮タイルの作製;
上記の第8実施例と同様、施釉タイルを基材として用意し、スピンコーティング法でコーティングし、150度で30分加熱し、塗膜を硬化した。この第9実施例では、スピンコーティングを行ったが、コーティング方法としてフローコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、刷毛塗り、その他のコーティング方法が使用可能である。また、この第9実施例でも、タイルのほか、金属、セラミックス、陶磁器、ガラス、プラスチックス、木、石、セメント、コンクリートまたはそれらの組み合わせ、それらの積層体を基材として使用する事が可能である。なお、この第9実施例も、使用するゾルが上記のゾルの調達で述べたものであること、および表5に示す成分がTiO2、SiO2 又はAl23であることから、光触媒と、アルミナで代表される両性或いは塩基性若しくは酸性金属酸化物と、シリカ等の第4実施例で述べたその他の化合物(酸化物)とを、組み合わせた2成分系、3成分系のものである。
【0211】
4) 評価;
膜硬度については、鉛筆硬度試験(JIS K5400塗料一般試験)を試験タイル(第9実施例タイルおよび比較例タイル)に実施した。その結果を表7に示す。また、親水性については、上記の第8実施例と同様、水の静止接触角を、試験タイル(第9実施例タイルおよび比較例タイル)について測定した。その結果を表8に示す。この場合の紫外線強度は約1.2mW/cm2 、照射時間は12時間とした。
【0212】
【表7】
Figure 0004011705
【0213】
【表8】
Figure 0004011705
【0214】
この表7から、SiO2 /TiO2 が0.1以下のものは、バインダ(SiO2 ゾル)不足で、膜強度の低下を来すことが判明した。また、表8から、SiO2 /TiO2 が1/5〜2の範囲において、Al23/TiO2 が1/12〜2であれば、アルミナ添加による親水速度向上の効果が発現することが判明した。この効果も、第8実施例で述べたように、Al23の親水性によりもたらされるものと考えられるが、物質の親水性を示す指標として湿潤熱が挙げられ、光触媒として好ましいTiO2 の湿潤熱はアナターゼ型で320〜512×10-3Jm-2、ルチル型で293〜645×10-3Jm-2である。このことから、500×10-3Jm-2以上の湿潤熱をもつ化合物であることが好ましく、この実施例であっても、ZrO2 、GeO2 、ThO2 、ZnOが挙げられる。これらの金属酸化物は結晶構造を持つものばかりでなく、無定形のものでもよい。
【0215】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記の実施例や実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0216】
例えば、銅やその酸化物等の粒子を固着して抗菌機能の補充が可能なタイルを製造するに当たっては、Ti/Alゾルのタイル表面への塗布並びに焼成を経て予め光触媒配合物からなる表面層を有するタイルを製造し、そのタイルの表面層に改めて第3のゾルを塗布して焼成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 光触媒である二酸化チタンで窒素酸化物を酸化する際に、この二酸化チタンと共にアルミナを配合した場合における触媒反応の進行の様子と、触媒反応の中間生成物のアルミナによる結合の様子を模式的に示す説明図。
【図2】 光触媒である二酸化チタンで硫黄酸化物を酸化する際に、この二酸化チタンと共にアルミナを配合した場合における触媒反応の中間生成物のアルミナによる結合の様子を模式的に示す説明図。
【図3】 光触媒である二酸化チタンで一酸化炭素を酸化する際に、この二酸化チタンと共にアルミナを配合した場合における触媒反応の中間生成物のアルミナによる結合の様子を模式的に示す説明図。
【図4】 本発明の第1参考例における参考例タイルによる窒素酸化物の削減効果の測定に用いた試験装置の概略構成図。
【図5】 第1参考例における参考例タイルによる窒素酸化物の削減効果の結果を示すグラフ。
【図6】 第1参考例における参考例タイルによるアンモニアの削減効果を説明するためグラフ
【図7】 第1参考例における参考例タイルによる二酸化硫黄の削減効果を説明するためグラフ。
【図8】 第1参考例における参考例タイルによる窒素酸化物の削減効果の結果を示すグラフ。
【図9】 第1参考例における参考例タイルによる窒素酸化物の削減効果の結果を示すグラフ。
【図10】 本発明の第3参考例における参考例タイルが果たす抗菌効果の結果を示すグラフ。
【図11】 4成分系の第6実施例の実施例タイル(焼き付けタイプ)において担持した金属の重量をc、TiO2 の重量をdと表した場合のc/d(金属配合比)と抗菌力との関係を示すグラフ。
【図12】 4成分系の第6実施例の実施例タイル(塗料タイプ)において担持した金属の重量をc、TiO2 の重量をdと表した場合のc/d(金属配合比)と抗菌力との関係を示すグラフ。
【図13】 4成分系の第6実施例の実施例タイル(焼き付けタイプ)における表面層膜厚と明時接触角との関係を表すグラフ。
【図14】 4成分系の第6実施例の実施例タイル(焼き付けタイプ)における表面層膜厚と抗菌力との関係を表すグラフ。
【図15】 4成分系の第6実施例の実施例タイル(焼き付けタイプ)における表面層膜厚と油分解力との関係を表すグラフ。
【図16】 4成分系の第6実施例の実施例タイル(焼き付けタイプ)における表面層膜厚とNO酸化力との関係を表すグラフ。
【図17】 3成分系の第7実施例の実施例タイル(焼き付けタイプ)における表面層膜厚と明時接触角との関係を表すグラフ。
【図18】 4成分系の第6実施例の実施例タイル(塗料タイプ)における色差△Eと明時接触角との関係を表すグラフ。
【図19】 4成分系の第6実施例の実施例タイル(塗料タイプ)における色差△Eと抗菌力との関係を表すグラフ。
【図20】 4成分系の第6実施例の実施例タイル(塗料タイプ)における色差△Eと油分解力との関係を表すグラフ。
【図21】 4成分系の第6実施例の実施例タイル(塗料タイプ)における色差△EとNO酸化力との関係を表すグラフ。
【図22】 3成分系の第7実施例の実施例タイル(塗料タイプ)における色差△Eと明時接触角との関係を表すグラフ。
【符号の説明】
10 ガラスセル
12 ボンベ
14 エアーポンプ
15 湿度調整器
16 流量調整バルブ
18 NOxセンサ
20 ランプ

Claims (26)

  1. 基材と、表面層とを少なくとも有してなる、前記表面層が親水性でかつ自己浄化能を備えてなる、表面に時折雨が降り注ぐ環境において大気中の窒素酸化物、アンモニア、および/または二酸化硫黄を削減するために用いられる複合材であって、
    前記表面層が、
    成分(i)光の照射を受けると触媒として機能する光触媒と、
    成分(ii)A1、ZnO、SrO、BaO、MgO、CaO、RbO、NaO、およびKOからなる群から選択される少なくとも一の金属酸化物と
    成分(iii)SiO、ZrO、GeO、およびThOからなる群から選択される少なくとも一の金属酸化物と、
    成分(ivgおよびCuからなる群から選択される少なくとも一の抗菌性を発揮する金属と
    を含んでなり、
    前記成分(iv)が前記(i)の光触媒に担持されてなり、前記成分(iv)の重量をc、前記(i)の光触媒の重量をbと表したとき、c/bが0.00001〜0.05である、複合材。
  2. 基材と、表面層とを少なくとも有してなる、前記表面層が親水性でかつ自己浄化能を備えてなる、表面に時折雨が降り注ぐ環境において大気中の窒素酸化物、アンモニア、および/または二酸化硫黄を削減するために用いられる複合材であって、
    前記表面層が、
    成分(i)光の照射を受けると触媒として機能する光触媒と、
    成分(ii)A1、ZnO、SrO、BaO、MgO、CaO、RbO、NaO、およびKOからなる群から選択される少なくとも一の金属酸化物と
    成分(iii)SiO、ZrO、GeO、およびThOからなる群から選択される少なくとも一の金属酸化物を
    成分(iv)Ag、Cu、Pd、Fe、Ni、Cr、Co、Pt、Au、Rh、およびRuからなる群から選択される少なくとも一の金属と
    を含んでなり、前記成分(iv)の重量をc、前記(i)の光触媒の重量をbと表したとき、c/bが0.00001〜0.05である、複合材。
  3. 前記(ii)の金属酸化物重量をa、前記(i)の光触媒の重量をbと表したとき、a/(a+b)が0.0001〜0.8を満足する、請求項1または2に記載の複合材。
  4. 前記(i)の光触媒および前記(ii)の金属酸化物が0.005〜0.5μmの粒径の粒子として含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合材。
  5. 前記表面層が、下記の(1)または(2)のいずれかの条件を満たす表面性状を有するものである、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材:
    (1)表面層膜厚が0.01〜3.0μmである。
    (2)1%の硝酸銀溶液を表面層に付着させた状態で、該表面層上における紫外線強度が1.2mW/cmで前記表面層に紫外線を5分間照射した際の紫外線照射前と紫外線照射後の表面層の色差△Eが1〜50である。
  6. 前記基材層と、前記表面層との間にバインダが介在されてなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材。
  7. 前記バインダが、前記基材の変形温度以下の温度において、重合または溶融して前記基材上に前記表面層を固着可能なものである、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材。
  8. 前記バインダが釉薬または塗料である、請求項に記載の複合材。
  9. 前記基材がタイルである、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材。
  10. 前記基材が、陶器、木材、珪カル、コンクリート、セメント板、セメント押し出し成形板、石膏ボード、またはオートクレーブ養生軽量コンクリート板である、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材。
  11. 前記表面層の表面に、抗菌性を発揮する金属または金属化合物が固着されてなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合材。
  12. 請求項1および311のいずれか一項に記載の複合材の表面層を形成可能な配合物であって、
    該配合物が、
    成分(i)光の照射を受けると触媒として機能する光触媒と、
    成分(ii)A1、ZnO、SrO、BaO、MgO、CaO、RbO、NaO、およびKOからなる群から選択される少なくとも一の金属酸化物と
    成分(iii)SiO、ZrO、GeO、およびThOからなる群から選択される少なくとも一の金属酸化物と
    成分(ivgおよびCuからなる群から選択される少なくとも一の抗菌性を発揮する金属と
    を含んでなり、
    前記成分(iv)が前記(i)の光触媒に担持されてなり、前記成分(iv)の重量をc、前記(i)の光触媒の重量をbと表したとき、c/bが0.00001〜0.05である、配合物。
  13. 請求項11のいずれか一項に記載の複合材の表面層を形成可能な配合物であって、
    該配合物が、
    成分(i)光の照射を受けると触媒として機能する光触媒と、
    成分(ii)A1、ZnO、SrO、BaO、MgO、CaO、RbO、NaO、およびKOからなる群から選択される少なくとも一の金属酸化物と
    成分(iii)SiO、ZrO、GeO、およびThOからなる群から選択される少なくとも一の金属酸化物と
    成分(iv)として、Ag、Cu、Pd、Fe、Ni、Cr、Co、Pt、Au、Rh、およびRuからなる群から選択される少なくとも一の金属と
    を含んでなり、前記成分(iv)の重量をc、前記(i)の光触媒の重量をbと表したとき、c/bが0.00001〜0.05である、配合物。
  14. 前記(ii)の金属酸化物重量をa、前記(i)の光触媒の重量をbと表したとき、a/(a+b)が0.0001〜0.8となるように配合されてなる、請求項12または13に記載の配合物。
  15. 前記(i)の光触媒および前記(ii)の金属酸化物が0.005〜0.5μmの粒径の粒子として配合されてなる、請求項1214のいずれか一項に記載の配合物。
  16. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の複合材の製造法であって、
    請求項1215のいずれか一項に記載の配合物またはこの配合物を分散してなる分散ゾルを準備する工程と、
    前記配合物または分散ゾルを、基材上に適用する工程と、
    前記配合物または分散ゾルが適用された基材を乾燥または加熱して、表面層を形成する工程と
    を少なくとも含んでなる、方法。
  17. 前記配合物または分散ゾルの基材への適用を、載置、塗布、または印刷によって行う、請求項16に記載の方法。
  18. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の複合材の製造法であって、
    請求項1215のいずれか一項に記載の配合物またはこの配合物を分散してなる分散ゾルを準備する工程と、
    前記基材上にバインダ層を形成する工程と、
    前記バインダ層上に、前記配合物または分散ゾルを適用する工程と、
    前記配合物または分散ゾルが適用された基材を乾燥または加熱して、表面層を形成する工程と
    を少なくとも含んでなる、方法。
  19. 前記バインダ層が釉薬からなり、
    前記配合物または分散ゾルが適用された基材を、前記釉薬の軟化温度よりも30℃以上300℃以下の範囲で高い温度で、かつ前記基材の変形温度よりも低い温度で加熱して、表面層を形成する、請求項18に記載の方法。
  20. 前記釉薬の軟化温度よりも30℃以上300℃以下の範囲で高い温度で、かつ前記基材の変形温度よりも低い温度が、150℃〜1300℃である、請求項19に記載の方法。
  21. 前記表面層を形成する工程に続いて、前記形成された表面層の表面に抗菌性を発揮する金属または金属酸化物が分散された溶液を塗布する工程と、前記金属または金属酸化物を前記表面層の表面に固着させる工程をさらに含んでなる、請求項1620のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記配合物または分散ゾルを適用した後、抗菌性を発揮する金属または金属化合物が分散された溶液を塗布する工程をさらに含んでなる、請求項1620のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記表面層を形成する工程に続いて、前記形成された表面層の表面に抗菌性を発揮する金属のイオンを含んでなる水溶液を塗布する工程と、前記表面層に紫外線を照射して前記金属イオンを、光還元を利用して前記表面層における光触媒に担持または固着させる工程をさらに含んでなる、請求項1620のいずれか一項に記載の方法。
  24. 請求項1215のいずれか一項に記載の配合物の製造法であって、
    少なくとも成分(i)が分散されてなるゾルを用意し、
    該ゾルに前記成分(iv)を混合し、前記光触媒の表面に前記成分(iv)を担持させることを含んでなる、方法。
  25. 前記光触媒の表面への前記成分(iv)の担持を、前記成分(iv)の塩と、前記光触媒とを共沈させることにより行う、請求項24に記載の方法。
  26. 前記光触媒の表面への前記成分(iv)の担持を、前記ゾルと前記成分(iv)との混合物に紫外線を照射し、前記光触媒の光還元により前記光触媒の表面に前記成分(iv)を担持させることにより行う、請求項24に記載の方法。
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