JPH0829439B2 - プレス機のスライド駆動装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は主歯車の等速回転をウイットウオース早戻り
機構によりクランク軸を不等速に回転してスライドを駆
動するプレス機のスライド駆動機構に関する。

従来の技術 ウイットウオース早戻り機構を用いてクランク軸を回
転させスライドを駆動するプレス機のスライド駆動装置
は、例えば特公昭50−38233号或いは金属プレス1977年
２月号P51〜P53において公知である。

発明が解決しようとする課題 ウイットウオース早戻り機構のリンク部は第19図のよ
うであり、この機構を使ったリンクプレスのスライド運
動曲線は第13図の中に示したようであるが、運動曲線が
限定されていて簡単に変更することができない。また下
死点停留ができないので深絞り加工，決め押し加工等の
種類の加工に対して理想的な運動線図に近いものを得る
ことは不可能である。

本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑み
なされたもので、その目的とするところは、ウイットウ
オース早戻り機構の特徴を有しながら運動曲線を加工に
適合したものに変更するプレス機のスライド駆動装置を
提供しようとするものである。

課題を解決するための手段 上述の目的を達成するために、本発明は主歯車の等速
回転をウイットウオース機構を用いてクランク軸を不等
速に回転してスライドを駆動する装置において、前記主
歯車に半径方向に摺動可能なスライダを設け、該スライ
ダを前記クランク軸に固定の腕端に枢結したリンク端の
軸に設け、該リンク端の軸にカムフオロアを設け、該カ
ムフオロアを案内するカムを有するカム板を前記主歯車
の対向位置の固定部に固定してなり、ウイットウオース
機構の変位にカム形状で起こる変位を相乗した合成運動
をスライドに与えるものである。

そしてスライド駆動装置のカム形状は特に遅降りする
形状或いは下死点で停留する形状をもつものである。ま
たカムの位相がカム取付板の穴に嵌入したカム取付基準
ピンの穴位置を変えることにより調整又はカムの取替可
能に構成されたものである。

作用 主歯車が回転（等速）されるとスライダを介してリン
クが引張られアームを回転させる。このアームの回転で
クランク軸が回転（不等速）される。しかしリンクのス
ライダと反対側のカムフオロアがカムのカム溝によって
制約され、カムのリフト量に合わせてスライダが半径方
向に移動し、この移動によってリンクはウイットウオー
ス機構の動きに対して相乗され、スライドにはウイット
ウオース機構の遅降り早戻りに加えて遅降りがさらに遅
くなりカムによっては下死点で停留する合成された運動
曲線となる。

実施例第１ 以下本発明の実施例をプレス機構に応用した第１図〜
第３図にもとづき説明する。

リンクプレスにおいて、フレーム１に水平にクランク
軸２が軸受スリーブ3,4を介して回転可能に軸承されて
おり、クランク2aにはコネクチングロッド５が回転可能
に取付けられている。そしてフレーム１に左右を案内さ
れて上下方向に摺動可能で下面に金型を取付けるスライ
ド６がコネクチングロッド５とボール継手７によって枢
結されている。

フレーム１の軸受スリーブ３の外側にクランク軸２の
中心01に対してＲ偏心した位置を中心02として玉軸受で
回転可能に主歯車11が軸承されている。この主歯車11は
図示しないモータで回転される駆動ピニオンによって等
速回転される。また主歯車11には半径方向にＴ溝12が形
成されていて、スライダ13が摺動可能に嵌装されてい
る。

クランク軸２の外端にはアーム14がキー着されてお
り、アーム14端のクランク軸２と平行なピン15にリンク
16が枢結されている。このリンク16の端部でピン15と平
行な小軸17の一端にスライダ13が枢支され、また小軸17
の他端にはカムフオロア18が枢支されている。さらにフ
レーム１にフレーム20が取付けられており、この端面に
カム取付板21が主歯車11と同心に着脱可能に位置決め締
着されている。そしてカム取付板21の内側にカム溝22a
を削設したカム22がカム取付板21の穴に嵌入されたカム
取付基準ン23で位置決め調整可能に固定されていて、カ
ム溝22aにカムフオロア18が嵌装され案内されている。
カム22にはカム取付板21に嵌入されたカム取付基準ピン
23と同中心でカム取付基準ピン23が嵌入可能な複数個の
穴が形成されている。

今主歯車11が駆動ピニオンによって等速度で回転され
る場合、カム22にカム曲線C1を用いた場合の主歯車11の
回転角θａに対するクランク軸２の回転角θｂを示す第
５図〜第12図において、第４図のアーム14の位置をＸ軸
に平行、カムフオロア18の中心位置の角度50°位置を基
準とする。

このように主歯車11の等速回転に対してクランク軸２
は不等速回転となり、主歯車11の回転角に対するスライ
ド６のストローク及び速度は第13図の曲線となる。この
図においてカム曲線C1の曲線の他に示したカム曲線C2の
曲線は第17図のカム曲線C2を取付けたものであり、ウイ
ットウオース曲線の速度に対してカム曲線C1,C2とも遅
降りとなっている。特にカム曲線C1では下死点において
停留して決め押しに有利な曲線である。またカム曲線C2
は成形時の速度が更に遅くなり、深絞り，しごき絞りに
有利な曲線である。

勿論カムを作用させなければウイットウオースの運動
曲線となる。

このようにウイットウオース運動曲線に合成させるカ
ムのカム曲線は以下に示す運動解析にもとづいて製作さ
れる。

第14図において、 主歯車11の回転に伴って動く小軸17の周速VPは主歯車11
中心Ｇと小軸17との距離CDの関数である。

この距離CDはカム22のカム溝形状によって決定され、
主歯車11の回転に伴ってある範囲では一定値を保ち、あ
る範囲では変化する。一方、アーム14及びリンク16の長
さＲ及びＬは一定である。

主歯車11の駆動回転角（THX）に対するアーム14の被
動回転角（THR）は、各節点で構成される三角形を幾何
学的に解いて求めることができる。

そしてリンク16の外端Ｐ点の速度（VPX）は小軸17の
周速VPに対してカム22の圧力角（THPS）だけ方向が傾
く。即ちカム溝の軌跡の接線方向となる。又その大きさ
は距離CDの半径方向の速度と周速VPとの合成値である。

また第15図において、 アーム14,リンク16及びCoPをそれぞれ大きさと方向を
持つベクトルと見ると、Ｒ（Ｃ・Ｑ）,L（Ｐ）及び
ＣＰの三辺によって変位ベクトル三角形が形成され
る。この３個のベクトルはそれぞれが速度を持ち、速度
は大きさと方向を持つベクトルである。

変位ベクトル三角形が成立すると各々の速度ベクトル
も三角形を構成する。即ちＣP,L及びＲの速度ベクト
ルVPX,,VRによって速度ベクトル三角形が形成され
る。

そして既知緒元VPX（大きさと方向），及びVRの方
向（角度）から未知数VRを求めることができる。なおVR
はアームＲの端点Ｑの周速である。

さらに第16図において、 Coを中心とするクランク軸２を駆動するアーム14の駆
動条件即ち回転角（THR）とその時の速度が求められる
とクランク機構として構成されたスライドのその時点に
おける変位及び速度を求めることができる。

そして駆動回転角（THX）の変化に対応してクランク
のスライドの変位及び速度は変化する。そこで各部の条
件を例えばコンピュータに入力して計算処理を行うとス
ライドの連続的な変位及び速度を求めることができる。
このような考えにもとづいてカムのカム曲線を形成する
カム溝は適宜製作されたものである。

実施例第２ 第18図に示された２ポイントプレスは実施例第１の機
構を２個並置し、アームを左右対称に位置させ同歯数の
主歯車11を噛合わせて互いに反対回転するように連結し
たものであり、モータ31によってベルトを介して回転さ
れる歯車32より歯車33を経て主歯車11が回転される。歯
車32の軸にはクラッチブレーキが付属されている他は実
施例第１と同機構で同様な運動曲線が得られる。

効果 上述のように構成したので、本発明は以下の効果を奏
する。

本発明のスライド駆動機構は、ウイットウオース機構
で限定された運動に対して更に遅降り、或いは下死点停
留運動を付与することができ、ウイットウオース機構の
運動曲線と異なる運動曲線の自由度が与えられるもので
あって、成形速度が遅い深絞り，しごき絞り加工を行う
に有利で、工具寿命が増大するとともに回転数を上げる
ことがでるので生産性を増大させ、そして特殊運動曲線
を得ることのできる公知の他のリンクプレスのスライド
駆動装置よりも構造が簡単で保守が容易である。

また、下死点で停留するので決め押しが必要な製品製
造に有利であって製品精度が向上できるとともに、カム
の位相調整によりスライドストロークの合成曲線の形状
を変えて製品に適応した最善の曲線とすることができ
る。

さらに、カムの取替えによって合成曲線が変更され広
い製品製造に対応できるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明のウイットウオース機構にカム機構を付
加し一部断面とした正面図、第２図は第１図の機構を有
するプレスの主要部の縦断面図、第３図は主歯車，スラ
イダ，リンク，カムフオロア，カムの関係を示す図、第
４図は主歯車即ちアーム及びリンクが基準位置にある
図、第５図は主歯車が基準位置より40°回転した図、第
６図は同80°回転の図、第７図は120°回転の図、第８
図は160°回転の図、第９図は208.76°回転の図、第10
図は225.95°回転の図、第11図は270°回転の図、第12
図は315°回転の図、第13図は主歯車の回転角度とスラ
イドストローク及びスライドスピードとの関係を示す
図、第14図は本発明の機構の運動解析のための構成図、
第15図は同ベクトル三角形の図、第16図は同クランク機
構図、第17図はカム曲線C2を使用する正面図、第18図は
実施例第２の２ポイントプレスの正面図、第19図はウイ
ットウオースの早戻り機構を使用したリンクプレスのリ
ンク部の構造を示す図である。 １……フレーム、２……クランク軸 ６……スライド、11……主歯車 12……スライド溝、13……スライダ 14……アーム、16……リンク 17……小軸、18……カムフオロア 21……カム取付板、22……カム 22a……カム溝

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】主歯車の等速回転をウイットウオース機構
   を用いてクランク軸を不等速に回転してスライドを駆動
   するプレス機のスライド駆動装置において、前記主歯車
   に半径方向に摺動可能なスライダを設け、該スライダを
   前記クランク軸に固定の腕端に枢結したリンク端の軸に
   設け、該リンク端の軸にカムフオロアを設け、該カムフ
   オロアを案内するカムを有するカム板を前記主歯車の対
   向位置の固定部に固定してなり、ウイットウオース機構
   の変位にカム形状で起こる変位を相乗した合成運動をス
   ライドに与えることを特徴とするプレス機のスライド駆
   動装置。
2. 【請求項２】スライドのストロークの下半分がウイット
   ウオース機構による遅降りより更に遅くなるようにカム
   のカム溝を形成した請求項１に記載のプレス機のスライ
   ド駆動装置。
3. 【請求項３】スライドの下死点が停留するようにカムの
   カム溝を形成した請求項１または請求項２に記載のプレ
   ス機のスライド駆動装置。
4. 【請求項４】カムがカム取付板の穴に嵌入したカム取付
   基準ピンの穴位置を変えることにより位相調整可能であ
   る請求項1,請求項２または請求項３に記載のプレス機の
   スライド駆動装置。
5. 【請求項５】カムが取替可能である請求項1,請求項2,請
   求項３または請求項４に記載のプレス機のスライド駆動
   装置。