JPH08209140A - 液晶組成物、それを有する液晶素子及びそれらを有する液晶装置 - Google Patents

液晶組成物、それを有する液晶素子及びそれらを有する液晶装置

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JPH08209140A
JPH08209140A JP7032955A JP3295595A JPH08209140A JP H08209140 A JPH08209140 A JP H08209140A JP 7032955 A JP7032955 A JP 7032955A JP 3295595 A JP3295595 A JP 3295595A JP H08209140 A JPH08209140 A JP H08209140A
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修嗣 山田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 低温領域での駆動マージンの減少を抑え、低
温域でも良好な画像を実現でき、駆動時におけるコント
ラストの低下を防止する液晶組成物、これを用いた液晶
素子及び液晶装置を提供する。 【構成】 下記式(A)及び式(B)で示される液晶性
化合物をそれぞれ0.1〜30重量%含有する液晶組成
物、及び該液晶組成物を1対の電極基板間に配置してな
る液晶素子並びにそれらを用いた液晶装置。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶素子、液晶表示装
置や、液晶光シャッター等に用いる液晶組成物、液晶素
子、及び液晶装置、特に強誘電性液晶組成物、強誘電性
液晶素子、及び、強誘電性液晶装置に関し、詳しくは、
液晶組成物中に特定の液晶性化合物を組み合わせて含有
させることによって、層の傾斜角δの大きさが、低温側
で単調増加していかないように調整した場合でも、低温
領域において、マトリクス駆動時にC2配向状態を呈す
る領域が出現せず、低温領域での駆動マージンの減少を
抑制することが可能となり、加えて、非選択時のパルス
による、液晶分子の揺らぎ現象の程度を緩和し、駆動時
におけるコントラストの低下を防止する強誘電性液晶組
成物、及びこれを用いた液晶素子、更にはこの液晶素子
の駆動回路、及び光源を備えた液晶装置に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】強誘電性液晶分子の屈折率異方性を利用
して偏光素子との組み合わせにより透過光線を制御する
型の表示素子がクラーク(Clark)およびラガーウ
ォル(Lagerwall)により提案されている(特
開昭56−107216号公報、米国特許第43679
24号明細書)。この強誘電性液晶は、一般に、特定の
温度域において非らせん構造のカイラルスメクティック
C相(SmC*)またはH相(SmH*)を有し、この
状態において、加えられる電界に応答して第1の光学的
安定状態と第2の光学的安定状態とのいずれかを取り、
かつ電界の印加のないときはその状態を維持する性質、
すなわち双安定性を有し、また電界の変化に対する応答
も速やかであり、高速ならびに記憶型の表示素子用とし
ての広い利用が期待され、特にその機能から大画面で高
精細なディスプレイへの応用が期待されている。
【0003】ところで、このような強誘電性液晶、特に
カイラルスメクティック液晶を大画面・高精細ディスプ
レイに利用した場合において、高いコントラストを有
し、かつ高速表示を可能とした技術が、特開平03−2
52624号公報に開示されている。
【0004】まず、高いコントラストを得る方法につい
て説明する。 一般に、液晶の複屈折を利用した液晶素子の場合、
直交ニコル下での透過率I/I0 は次の式[1]で表さ
れるが、この式より、透過率I/I0 を高めて表示品質
を向上させるためには、見かけのチルト角θa(詳細は
後述)が22.5°であることが望ましいことが分か
る。
【0005】
【数2】 I/I0 =sin4θasin2 (Δnd/λ)π [1] ここで、I0 は入射光強度、Iは 透過光強度、θaは
見かけのチルト角、Δnは屈折率異方性、dは 液晶層
の膜厚、λは 入射光の波長、である。
【0006】なお、前述の非らせん構造における見かけ
のチルト角θaは第1と第2の配向状態でねじれ配列し
た液晶分子の平均分子軸方向の角度として現れることに
なる。
【0007】 しかし、従来のラビング処理したポリ
イミド膜によって配向させて得られた非らせん構造の強
誘電性液晶においては、見かけのチルト角θa(2の安
定状態の分子軸のなす角度の1/2)は、強誘電性液晶
でのコーン角(図3に示す三角錐の頂角の1/2の角度
Θ)と較べて小さくなり、一般に3°〜8°程度で、そ
の時の透過率I/I0 はせいぜい3〜5%程度と低かっ
た。
【0008】 ところで、スメクチック液晶は一般に
層構造をもつが、SmA相からSmC相またはSmC*
相に転移すると層間隔が縮むので図2のように21で表
わされる液晶層が、上下基板の中央で折れ曲がった構造
(シェブロン構造)をとる。折れ曲がる方向は、図に示
すように、高温相からSmC*相に転移した直後に現わ
れる配向状態(C1配向状態)の部分22における場合
と、さらに温度を下げた時にC1配向状態に混在して現
われる配向状態(C2配向状態)の部分23における場
合、の2つがあり得る。また、C1配向内に従来見出さ
れていた液晶のディレクタが上下の基板間でねじれてい
る低コントラストの2つの安定状態(以下、スプレイ状
態と呼ぶ)の他に、コントラストの高い別の2つの状態
(以下、ユニフォーム状態と呼ぶ)が現われることが発
見された。
【0009】そして、これらの状態は電界をかけると互
いに遷移し、弱い正負のパルス電界を印加するとスプレ
イ2状態間の遷移が起こり、強い正負のパルス電界を印
加するとユニフォーム2状態間の遷移が起こるが、ユニ
フォーム2状態を用いると、大きな見かけのチルト角θ
aを生じ、従来より明るく、コントラストの高い表示素
子が実現できることがわかった。
【0010】したがって、表示素子として画面全体をC
1配向状態に統一し、かつC1配向内の高コントラスト
の2状態を白黒表示の2状態として用いれば、従来より
品位の高いディスプレイが実現できると期待される。
【0011】 ここで、C1配向およびC2配向での
基板近くのディレクタは、図3(a)及び(b)に示す
ように、それぞれコーン31上にある。またよく知られ
ているように、基板界面の液晶分子は、ラビングによっ
て基板に対してプレチルトと呼ばれる角度をなし、その
方向はラビング方向(図3(a)(b)ではA方向)に
向かって液晶分子が頭をもたげる(先端が浮いた格好に
なる)方向である。
【0012】上のことにより液晶のコーン角Θ、プレチ
ルト角αおよび層傾斜角(液晶層と基板法線とのなす角
度)δの間には、
【0013】
【数3】 C1配向のとき Θ+δ>α C2配向のとき Θ−δ>α の関係が成り立っていなければならない。
【0014】したがって、C2配向を生ぜずC1配向を
生じさせるための条件は、
【0015】
【数4】 Θ−δ<α つまり Θ<α+δ (I) となる。
【0016】さらに界面の液晶分子が一方の位置から他
方の位置へ電界によって移るスイッチングの際に受ける
トルクの簡単な考察より、界面分子のスイッチングが起
こりやすい条件として
【0017】
【数5】 α>δ (II) が得られる。
【0018】よって、C1→C2転移が起こりにくく、
C1配向状態をより安定に形成させるには、(I)式の
関係に加えて(II)式の関係を満たすことが効果的で
あることが理解できる。
【0019】この上述した条件(I)及び(II)を満
足する場合には、液晶の見かけのチルト角θaは、上述
した3°〜8°程度から8°〜16°程度にまで増大
し、液晶のコーン角Θと見かけのチルト角θaとの間に
は、
【0020】
【数6】 Θ>θa>Θ/2 (III) なる関係式が成り立つことが経験的に得られた。
【0021】以上のように(I)、(II)及び(II
I)式の条件を満足すれば、高コントラストな画像が表
示されるディスプレイが実現できることが明らかとなっ
た。なお、C1配向状態を安定に形成し、良好な配向性
を得るために、上下基板のラビング方向を0°〜25°
(交差角)の範囲でずらしたクロスラビングも極めて効
果がある。
【0022】次に、高速表示が可能となる技術について
説明する。 カイラルスメクティック液晶素子を用いた表示装置
は、従来のCRTやTN型液晶ディスプレイをはるかに
上回る大画面化および高精細化を可能とする表示装置で
あるが、その大画面化・高精細化に伴い、フレーム周波
数(1画面形成周波数)が低周波となってしまい、この
ため、画面書き換え速度や文字編集やグラフィックス画
面等でのスムーズスクロール、およびカーソル移動等の
動画表示の速度が遅くなるという問題点があった。
【0023】 この問題に対する解決法は、特開昭6
0−31120号公報、特開平1−140198号公報
等で開示されている。すなわち、走査電極と情報電極と
をマトリックス配置した表示パネルと、走査電極を全数
または所定数選択する手段(この手段により選択する場
合を全面書き込みという)と、走査電極を全数または所
定数のうちの一部選択する手段(この手段により選択す
る場合を部分書き込みという)とを有する表示装置を用
いることにより、部分的動画表示を部分書き込みで行う
ことによって高速表示が可能となり、部分書き込みと全
面書き込みの両立が実現できる。
【0024】この強誘電性液晶層を一対の基板間に挟持
した素子で前述した様な単純マトリクス表示装置とした
場合では、例えば特開昭59−193426号公報、特
開昭59−193427号公報、特開昭60−1560
46号公報、特開昭60−156047号公報などに開
示された駆動法を適用することができる。
【0025】図6は、駆動法の波形図の一例である。ま
た、図5は、マトリクス電極を配置した強誘電性液晶パ
ネルの一例の平面図である。図5の液晶パネル51に
は、走査電極群52の走査線と情報電極群53のデータ
線とが互いに交差して配線され、その交差部の走査線と
データ線との間には強誘電性液晶が配置されている。
【0026】図6(A)中のSS は選択された走査線に
印加する選択走査波形を、SN は選択されていない非選
択走査波形を、IS は選択されたデータ線に印加する選
択情報波形(黒)を、IN は選択されていないデータ線
に印加する非選択情報信号(白)を表わしている。ま
た、図中(IS −SS )と(IN −SS )は選択された
走査線上の画素に印加する電圧波形で、電圧(IS −S
S )が印加された画素は黒の表示状態をとり、電圧(I
N −SS )が印加された画素は白の表示状態をとる。
【0027】図6(B)は図6(A)に示す駆動波形
で、図7に示す表示を行ったときの時系列波形である。
図6に示す駆動例では、選択された走査線上の画素に印
加される単一極性電圧の最小印加時間Δtが書込み位相
2 の時間に相当し、1ラインクリヤt1 位相の時間が
2Δtに設定されている。さて、図6に示した駆動波形
の各パラメータVS ,VI ,Δtの値は使用する液晶材
料のスイッチング特性によって決定される。
【0028】図8は後述するバイアス比を一定に保った
まま駆動電圧(VS +VI )を変化させた時の透過率T
の変化、即ちV−T特性を示したものである。ここでは
Δt=50μsec、バイアス比VI /(VI +VS
=1/3に固定されている。図8の正側は図6で示した
(IN −SS )、負側は(IS −SS )で示した波形が
印加される。
【0029】ここで、V1 ,V3 をそれぞれ実駆動閾値
電圧及びクロストーク電圧と呼ぶ。また、V2 <V1
3 の時ΔV=V3 −V1 を電圧マージンと呼び、マト
リクス駆動可能な電圧幅となる。V3 は強誘電性液晶表
示素子駆動上、一般的に存在すると言ってよい。具体的
には、図6(A)(IN −SS )の波形におけるVB
よるスイッチングを起こす電圧値である。勿論、バイア
ス比を大きくすることによりV3 の値を大きくすること
は可能であるが、バイアス比を増すことは情報信号の振
幅を大きくすることを意味し、画質的にはちらつきの増
大、コントラストの低下を招き好ましくない。
【0030】我々の検討ではバイアス比1/3〜1/4
程度が実用的であった。ところで、バイアス比を固定す
れば、電圧マージンΔVは液晶材料のスイッチング特性
に強く依存し、ΔVの大きい液晶材料がマトリクス駆動
上非常に有利であることは言うまでもない。
【0031】この様なある一定温度において、情報信号
の2通りの向きによって選択画素に「黒」及び「白」の
2状態を書き込むことが可能であり、非選択画素はその
「黒」又は「白」の状態を保持することが可能である印
加電圧の上下限の値及びその幅(駆動電圧マージンΔ
V)は、液晶材料間で差があり、特有なものである。ま
た、環境温度の変化によっても駆動マージンはズレてい
くため、実際の表示装置の場合、液晶材料や環境温度に
対して最適駆動電圧にしておく必要がある。
【0032】以上のように、上述した(I)、(II)
及び(III)式の条件を満たす液晶素子を、上述の部
分書き込みを行なえる表示装置で駆動すれば、大画面、
高精細ディスプレイにおいて高コントラストな画像が高
速表示で実現できる。
【0033】
【発明が解決しようとする課題】実用上、ディスプレイ
としての使用温度範囲を5〜35℃程度とした場合、素
子周辺からの熱蓄積により、液晶素子自身の環境温度は
10〜50℃程度になる。通常の強誘電性液晶を用いた
ディスプレイでは、このすべての温度範囲で良好な画質
を保つことは実現されていないのが現状である。特に層
の傾斜角δの大きさを低温側で単調増加していかないよ
うに調整された液晶組成物を用いた場合、低温度領域に
おける駆動マージンの確保は大きな課題となっている。
【0034】室温付近の温度では、C1ユニフォーム配
向状態の高コントラストの良好な画像を実現できても、
低温域ではマトリクス駆動時にC2配向状態を呈する領
域が出現する場合がある。このため、低温域では駆動マ
ージンの減少が大きく、使用環境温度範囲内で良好な画
像や駆動マージンを実現できているとは言い難かった。
【0035】さらに、上記の液晶表示素子に電圧を印加
して駆動した場合、非選択時のパルスによって液晶分子
の揺らぎ現象が起こり、コントラストが著しく低下し
て、表示品位が悪くなる場合があった。
【0036】すなわち、カイラルスメクチック液晶を用
いた液晶素子をディスプレイパネルとして実際に使用す
る場合には、上下基板に走査電極と情報電極とをマトリ
ックス状に配置し、これらの電極を介して電圧を印加す
るようになっている。
【0037】ここで、図4は印加される電圧波形の一例
を示したものであり、波形41は白表示を行うときの電
圧波形を、また波形42は黒表示を行うときの電圧波形
を示している。これらの波形41、42において、各マ
トリックス(各走査電極と情報電極との交差部)上で白
および黒を表示するために必要な電界は、それぞれ区間
44及び区間45の選択期間のみであり、他の区間(非
選択期間)においては、白黒書き換えにまでには至らな
い弱い電界が正負交互に印加されている。なお、各マト
リックスには選択期間の電界よりも非選択期間の電界が
圧倒的に長い時間印加されている。
【0038】そして、この非選択期間においては、液晶
分子の反転に至らない弱い電界が正負交互に印加される
ことにより、ある一方の安定状態にある液晶分子の自発
分極に対向する電界が印加された瞬間に、液晶分子には
もう一方の安定状態へ反転させようとする力が働き、該
液晶分子は、図3(a)、(b)に示されるコーン31
上を反転方向へわずかに移動することとなる。また、次
の瞬間には、印加される逆極性の電界のために元の安定
状態に戻される。そして、液晶分子は、上記電界の極性
に従って反転を繰り返し、いわゆる“液晶分子の揺ら
ぎ”を生じることとなる。この揺らぎによって、黒表示
を行ったときに光り抜けが生じ、黒が淡くなって表示品
位が低下してしまうと考えられる。
【0039】そこで、本発明は、液晶組成物中にある特
定の化合物を組み合わせて含有させることによって、層
の傾斜角δの大きさを低温側で単調増加していかないよ
うに調整した場合でも、低温領域において、マトリクス
駆動時にC2配向状態を呈する領域が出現せず、低温領
域での駆動マージンの減少を抑制することが可能であ
る、加えて、非選択時のパルスによる液晶分子の揺らぎ
現象の程度を緩和し、駆動時におけるコントラストの低
下を防止する液晶組成物、及びこれを用いた液晶素子、
更にはこの液晶素子の駆動回路、及び光源を備えた液晶
装置を提供することを目的とするものである。
【0040】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明者らは、
上述の問題点を解決すべく、特定の液晶性化合物を組み
合わせ、これを用いた液晶組成物、これを使用した液晶
素子、更にこれを用いた液晶装置について、鋭意検討を
重ねた結果、本発明に至ったものである。
【0041】すなわち、本発明は、下記一般式(A)及
び一般式(B)で示される液晶性化合物をそれぞれ0.
1〜30重量%含有することを特徴とする液晶組成物を
用いることにより達成される。
【0042】
【化17】 (式中、R1は炭素原子数1〜18の直鎖状または分岐
状のアルキル基を示し、X1は単結合、−O−、
【0043】
【化18】 を示し、X2は単結合、−OCH2−、
【0044】
【化19】 を示し、nは3〜16の整数を示す。
【0045】A1
【0046】
【化20】 を示す。)
【0047】一般式(A)で示される液晶性化合物の合
成手段は、例えば特願平5−1974号あるいは特願平
5−312924号に開示された方法によって得ること
ができる。一般式(A)で示される液晶性化合物の好ま
しい具体的な化合物例を下記の表に示す。表中における
アルファベットは下記に示す側鎖基または環状基を示
す。
【0048】
【化21】
【0049】
【化22】
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【化23】 (式中、R2は炭素原子数1〜18の直鎖状または分岐
状のアルキル基を示し、X3、X4は単結合、−O−、
【0054】
【化24】 を示し、mは3〜16の整数を示す。
【0055】A2
【0056】
【化25】 を示す。)
【0057】一般式(B)で示される液晶性化合物の合
成手段は、例えば特願平5−237213号に開示され
た方法によって得ることができる。一般式(B)で示さ
れる液晶性化合物の好ましい具体的な化合物例を下記の
表に示す。表中におけるアルファベットは下記に示す側
鎖基または環状基を示す。
【0058】
【化26】
【0059】
【化27】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】本発明で用いる液晶性化合物(mesom
orphic compound)は、それ自体単独で
液晶としての相転移系列をとるか否かは限定されず、液
晶組成物中で液晶成分としての好適な機能をなすもので
あればよい。
【0063】本発明の液晶組成物は、一般式(A)及び
一般式(B)で示される液晶性化合物をそれぞれ0.1
〜30重量%含有することが望ましく、0.1重量%未
満では効果の出現性が希薄となり、30重量%を越える
と、多の特性とのバランスを大きく崩し、更には一般式
(A)及び一般式(B)で示される液晶性化合物で60
重量%を越えることになり、液晶組成物に用いられる、
その他の液晶性化合物(本発明の一般式(A)、一般式
(B)以外)との量比関係から、相転移温度などの調整
が困難となってしまい、好ましくない。
【0064】また、好ましくはそれぞれ0.1〜20重
量%含有すると、他の特性を大きく損なうことなく、本
発明が目的とする効果を発現させることができる利点が
あり、更に好ましくは、それぞれ0.5〜15重量%含
有すると、更に本発明が目的とする効果を最も確実に発
現させ、更には、液晶組成物に用いられる、その他の液
晶性化合物(本発明の一般式(A)、一般式(B)以
外)との量比関係から、相転移温度などの調整が容易と
なる利点がある。
【0065】また、好ましくは、前記液晶組成物がカイ
ラルスメクティックC相を有し、かつ、0℃〜60℃の
範囲において、カイラルスメクティックC相の層の傾斜
角δの大きさが、3°〜15°、好ましくは3°〜12
°に調整されていることが望ましい。
【0066】更に、本発明は、カイラルスメクティック
液晶と、該液晶を挟持して対向すると共に、その対向面
にそれぞれ、上記液晶に電圧を印加する電極が形成さ
れ、かつ、液晶を配向させるための一軸性配向軸が平行
あるいは互いに所定の角度で交差した配向処理が施され
た一対の基板とを備えた液晶素子において、該液晶が、
前記一般式(A)及び前記一般式(B)で示される液晶
性化合物を各々0.1〜30重量%を含有する液晶組成
物であることを特徴とする液晶素子を用いることにより
達成される。
【0067】好ましくは、前記液晶素子に使用される前
記液晶組成物が、カイラルスメクティックC相を有し、
0℃〜60℃の範囲において、カイラルスメクティック
C相の層の傾斜角δの大きさが、3°〜15°に調整さ
れている液晶組成物であることが望ましい。
【0068】更に好ましくは、前記液晶素子において、
カイラルスメクティック液晶、及びその液晶素子の室温
近傍におけるプレチルト角をα、コーン角Θ、液晶の層
の傾斜角をδとすれば、カイラルスメクティック液晶
が、下記(I)式、及び、(II)式で表される配向状
態を有し、かつ、この配向状態において、少なくとも2
つの安定状態を示し、それらの光学軸のなす角度の1/
2である、見かけのチルト角θaとコーン角Θとが、下
記(III)式の関係を有し、該液晶が、前記一般式
(A)及び一般式(B)で示される液晶性化合物を各々
0.1〜30重量%を含有する液晶組成物であることが
望ましい。
【0069】
【数7】 Θ<α+δ (I) δ<α (II) Θ>θa>Θ/2 (III)
【0070】更に好ましくは、前記液晶素子の一軸性配
向軸の交差角が0°〜25°であることが望ましい。よ
り好ましくは、前記液晶素子のプレチルト角αの大きさ
が、5°以上であることが望ましい。更に、本発明は、
前記液晶組成物を使用した前記液晶素子の駆動回路と、
光源を具備する液晶装置により達成される。
【0071】更に好ましくは、本発明において、液晶組
成物を構成するその他の好ましい液晶性化合物として
は、下記一般式(1)〜(5)の構造を有する液晶性化
合物などをあげることができ、これらを主な構成成分と
し、適時、各液晶性化合物の配合比を変え、液晶組成物
とすることが望ましい。
【0072】
【化28】
【0073】(式中、R21、R22は炭素原子数1〜
18の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、該アル
キル基中の1つもしくは2つ以上のメチレン基は、ヘテ
ロ原子が隣接しない条件で−O−、−S−、−CO−、
−CHW−、−CH=CH−、−C≡C−によって置き
換えられていてもよく、Wはハロゲン、CN、CF
示す。また、R21、R22は光学活性であっても良
い。Y は水素原子またはフッ素原子を表す。p,q
は、0、1、2であって、p+qは1または2であ
る。)
【0074】
【化29】 (式中、Bは、
【0075】
【化30】 を表し、Yは水素原子またはフッ素原子を表す。
【0076】R23は炭素原子数1〜18の直鎖状また
は分岐状のアルキル基であり、R24は水素原子、ハロ
ゲン、CN基または炭素原子数1〜18の直鎖状または
分岐状のアルキル基であり、R23、R24の示す該ア
ルキル基中の1つもしくは2つ以上のメチレン基は、ヘ
テロ原子が隣接しない条件で−O−、−S−、−CO
−、−CHW−、−CH=CH−、−C≡C−によって
置き換えられていてもよく、Wはハロゲン、CNまたは
CFを示す。また、R23、R24は光学活性であっ
ても良い。)
【0077】
【化31】 (式中、Bは、
【0078】
【化32】 を表す。
【0079】R25、R26は、炭素原子数1〜18の
直鎖状または分岐状のアルキル基であり、該アルキル基
中の1つもしくは2つ以上のメチレン基は、ヘテロ原子
が隣接しない条件で−O−、−S−、−CO−、−CH
W−、−CH=CH−、−C≡C−によって置き換えら
れていてもよく、Wはハロゲン、CNまたはCFを示
す。また、R25、R26は光学活性であっても良
い。)
【0080】
【化33】 (式中、Bは、
【0081】
【化34】 を表し、Zは−O−または−S−を表す。
【0082】R27、R28は炭素原子数1〜18の直
鎖状または分岐状のアルキル基であり、該アルキル基中
の1つもしくは2つ以上のメチレン基は、ヘテロ原子が
隣接しない条件で−O−、−S−、−CO−、−CHW
−、−CH=CH−、−C≡C−によって置き換えられ
ていてもよく、Wはハロゲン、CNまたはCF を示
す。また、R27、R28は光学活性であっても良
い。)
【0083】
【化35】
【0084】(式中、R29、R30は炭素原子数1〜
18の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、該アル
キル基中の1つもしくは2つ以上のメチレン基は、ヘテ
ロ原子が隣接しない条件で−O−、−S−、−CO−、
−CHW−、−CH=CH−、−C≡C−によって置き
換えられていてもよく、Wはハロゲン、CNまたはCF
を示す。また、R29、R30は光学活性であって
も良い。)
【0085】一般式(1)〜(4)の化合物のより好ま
しい化合物例を下記に示す。 一般式(1)の化合物のより好ましい化合物例
【0086】
【化36】
【0087】一般式(2)の化合物のより好ましい化合
物例
【0088】
【化37】
【0089】一般式(3)の化合物のより好ましい化合
物例
【0090】
【化38】
【0091】一般式(4)の化合物のより好ましい化合
物例
【0092】
【化39】
【0093】上記の式中、Rは、水素原子、ハロゲン、
CN基または炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐状また
は環状のアルキル基であり、該アルキル基中の1つ、も
しくは2つ以上のメチレン基は、ヘテロ原子が隣接しな
い条件で−O−、−S−、−CO−、−CHW−、−C
H=CH−、−C≡C−によって置き換えられていても
よく、Wはハロゲン、CNまたはCF を示す。ま
た、Rは光学活性であっても良い。Y は、水素また
は、フッ素を表す。
【0094】本発明の構成をより詳細に、図に基づいて
以下に説明する。図1は強誘電性液晶素子の構成を説明
するために、液晶素子の一例を示す断面概略図である。
図1において、符号15は液晶層、11a,11bはガ
ラス基板、12a,12bは透明電極、13a,13
b,14a,14bは絶縁性配向制御層、16はスペー
サー、17a,17bは偏光板を示している。
【0095】2枚のガラス基板11a,11bには、そ
れぞれIn 、SnOあるいはITO(In
dium Tin Oxide)などの薄膜からなる透
明電極12a,12bが被覆されている。その上に、液
晶を特定の方法に並べる絶縁性配向制御層が形成されて
いる。絶縁性配向制御層は、単層であっても、複数の材
料で構成された、複数の層であってもよい。
【0096】図1においては、絶縁性配向制御層が、無
機物質で絶縁膜13a,13bを形成し、その上に有機
物質で配向制御膜14a,14bを形成する、2層構成
の絶縁性配向制御層である場合を例示している。
【0097】無機物質としては、例えばシリコン窒化
物、水素を含有するシリコン炭化物、シリコン酸化物、
ホウ素窒化物、水素を含有するホウ素窒化物、セリウム
酸化物、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、チ
タン酸化物、タンタル酸化物やフッ化マグネシウムなど
を用いることができ、具体的には、SiO 膜、Ti
膜、Ta 膜などを挙げることができ
る。
【0098】有機物質としては、ポリビニルアルコー
ル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミ
ド、ポリパラキシレン、ポリエステル、ポリカーボネー
ト、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸
ビニル、ポリアミド、ポリスチレン、セルロース樹脂、
メラミン樹脂、ユリヤ樹脂、アクリル樹脂やフォトレジ
スト樹脂などを用いることができ、具体的には、下記構
造式で示されるポリイミドなどを挙げることができる。
【0099】更に、また無機物質絶縁性配向制御層の単
層、あるいは有機物質絶縁性配向制御層の単層で絶縁性
配向制御層が形成されていてもよい。
【0100】
【化40】
【0101】配向制御膜14aと14bは、配向方向が
下配向膜14bを基準として、上配向膜14aが、上配
向膜14aの方から見て、左回り(または右回り)に0
〜25°の交差角を持って一軸配向処理を行い、かつ、
同一方向(図1で言えば矢印A方向)になる様にラビン
グ処理してある。以下においては、上記の様に交差角を
定義する。この絶縁性配向制御層が無機系ならば、蒸着
法等で形成できる。
【0102】又、有機系ならば有機絶縁物質を溶解させ
た溶液又はその前駆体溶液(溶剤に0.1〜20wt
%、好ましくは0.2〜20wt%を配合)を用いて、
スピンナー塗布法、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、ス
プレイ塗布法、ロール塗布法等で塗布し、所定の硬化条
件下(例えば加熱下)で硬化させることができる。
【0103】絶縁性配向制御層13a,13b,14
a,14bの層厚は、各々、通常3〜1000nm、好
ましくは3〜300nm、更に好ましくは5〜200n
mが適している。
【0104】この2枚のガラス基板11a,11bはス
ペーサー16によって任意の間隔に保たれている。例え
ば所定の直径を持つシリカビーズ、アルミナビーズをス
ペーサーとしてガラス基板2枚で挟持し、周囲をシール
剤、例えばエポキシ系接着剤を用いて接着する方法があ
る。その他スペーサーとして高分子フィルムやガラスフ
ァイバーを使用してもよい。
【0105】この2枚のガラス基板の間に強誘電性液晶
が封入されている。
【0106】強誘電性液晶が封入される液晶層15は、
一般的には0.5〜20μm、好ましくは、0.8〜5
μmである。また素子とした場合に、良好な配向性を示
すモノドメイン状態を得るには、その強誘電性液晶が、
等方相からカイラルネマティック相(コレステリック
相)、スメクティックA相、カイラルスメクティックC
相と変化する相転移系列を有していることが望ましい。
【0107】また、ガラス基板11a,11bの外側に
は偏光板17a,17bが貼り合わせてある。図1は透
過型なので、光源を備えている。
【0108】この強誘電性液晶層を一対の基板間に挟持
した素子で、単純マトリクス表示装置とした場合では、
例えば、特開昭59−193426号公報、特開昭59
−193427号公報、特開昭60−156046号公
報、特開昭60−156047号公報などに開示された
駆動法を適用することができる。
【0109】図4は、駆動法の波形図の一例である。図
5は、本発明で用いたマトリクス電極を配置した強誘電
液晶パネルの平面図である。図5の液晶パネル51に
は、走査電極群52の走査線と情報電極群53のデータ
線とが互いに交差して配線され、その交差分の走査線と
データ線との間には強誘電性液晶が配置されている。
【0110】本発明の液晶素子は、種々の液晶装置を構
成するが、特に表示素子として液晶表示装置を構成する
ものが好ましい。本発明による液晶素子を表示パネル部
に使用し、図9及び図10に示した走査線アドレス情報
を持つ画像情報なるデータフォーマット及びSYNC信
号による通信同期手段をとることにより、液晶表示装置
を実現する。
【0111】画像情報の発生は、本体装置側のグラフィ
ックスコントローラ102にて行われ、図9及び図10
に示した信号転送手段に従って表示パネル103に転送
される。
【0112】グラフィックスコントローラ102は、C
PU(中央演算処理装置、以下GCPU112と略す)
及びVRAM(画像情報格納用メモリ)114を核に、
ホストCPU113と液晶表示装置101間の画像情報
の管理や通信をつかさどっており、本発明による液晶素
子を用いた液晶表示装置の制御方法は主にこのグラフィ
ックスコントローラ102上で実現されるものである。
【0113】本発明に係る液晶素子におけるコーン角
Θ、見かけのチルト角θa、液晶層の傾斜角δ、プレチ
ルト角α、及び自発分極Psは、以下の様にして測定す
ることができる。
【0114】<コーン角Θの測定>±30V〜±50
V、1〜100HzのAC(交流)を液晶素子の上下基
板間に電極を介して印加しながら、直交クロスニコル
下、その間に配置された液晶素子を偏光板と平行に回転
させると同時に、フォトマル(浜松フォトニクス(株)
製)で光学応答を検知しながら、第1の消光位(透過率
が最も低くなる位置)及び第2の消光位を求める。そし
て、この時の第1の消光位から第2の消光位までの角度
の1/2をコーン角Θとする。
【0115】<見かけのチルト角θaの測定>液晶の閾
値の単発パルスを印加した後、無電界下、かつ直交クロ
スニコル下において、その間に配置された液晶素子を偏
光板と平行に回転させ、第1の消光位を求める。次に、
上記の単発パルスと逆極性のパルスを印加した後、無電
界下、第2の消光位を求める。この時の第1の消光位か
ら第2の消光位までの角度の1/2を見かけのチルト角
θaとする。
【0116】<液晶層の傾斜角δの測定>基本的には、
クラークやラガーウォルによって行われた方法(Jap
an Display‘86,Sep.30〜Oct.
2,1986,456〜458)、あるいは、大内らの
方法(J.J.A.P.27(5)(1988)725
〜728)と同様の方法により測定した。測定装置は、
回転陰極方式X線回折装置(MACサイエンス製)を用
い、液晶セルのガラス基板へのX線の吸収を低減させる
ため、基板にはコーニング社製のマイクロシート(80
μm)を用いた。
【0117】<プレチルト角αの測定>J.J.A.
P.19(1980)No.10,Short Not
es 2013に記載されている方法(クリスタルロー
テイション法)に従って求めた。つまり、ラビングした
基板を平行、かつ反対方向にはり合わせて、厚さ20μ
mのセルを作成し、チッソ(株)製の強誘電性液晶CS
−1014に、下記の構造式で示される化合物を重量比
で20%混合したものを標準液晶として注入し、測定を
行った。
【0118】
【化41】 なお、この混合した液晶組成物は、10〜55℃でSm
A相を示す。
【0119】測定方法は、液晶セルを上下基板に垂直、
かつ配向処理軸を含む面で回転させながら、回転軸と4
5°の角度をなす偏光面を持つヘリウム・ネオンレーザ
光を回転軸に垂直な方向から照射して、その反対側で入
射偏光面と平行な透過軸を持つ偏光版を通して、フォト
ダイオードで透過光強度を測定した。
【0120】そして、干渉によってできた透過光強度の
スペクトルに対して、理論曲線と下記に示す式とフィッ
ティングを行うシミュレーションにより、プレチルト角
αを求めた。
【0121】
【数8】
【0122】<自発分極の測定方法>自発分極は、K.
ミヤサト他[三角波による強誘電性液晶の自発分極の直
接測定方法](日本応用物理学会誌22、10号、L
(661)1983、(“Direct Method
with Triangular Waves fo
r Measuring Spontaneous P
olarizationin Ferroelectr
ic Liquid Crystal”,asdesc
ribed by K.Miyasato et a
l.(Jap.J.Appl.Phys.22.No1
0.L661(1983)))によって測定した。
【0123】
【実施例】以下、実施例により、本発明について、更に
詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定され
るものではない。
【0124】実施例1 下記構造の化合物を、下記に示す配合比にて配合して、
液晶組成物1を作成した。
【0125】
【化42】
【0126】この液晶組成物に対して、下記に示す本発
明の例示液晶性化合物を下記の配合比にて配合し、液晶
組成物1S、1A、1Bを作成した。なお、液晶組成物
1A、1Bはそれぞれ、比較例1、2のために作成し
た。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】なお、本実施例1、及び、比較例1、2の
ために作成した液晶の相転移温度、及び、30℃におけ
る自発分極の大きさ(Ps)、コーン角Θ、ならびに、
層の傾斜角δの値を表6に示す。
【0131】本実施例において、ガラス基板11a,1
1bの厚さを1.1mmとし、透明電極12a,12b
としては、サイドメタル(モリブデン)付きのITO膜
を用いた。さらに、該透明電極12a,12bの上に
は、透明誘電体膜としての酸化タンタルを、スパッタ法
により150nm厚に成膜した。また、配向制御膜14
a,14bとしては、30nm厚のポリイミド膜を用い
ており、その形成は、ポリイミド前駆体溶液であるLQ
1802(日立化成(株)製)のNMP溶液を用いてス
ピンナー塗布法により行った。配向制御膜14a,14
bには、アセテート植毛布によるラビング処理を施して
いる。
【0132】またさらに、スペーサ16としては平均粒
径1.2μmのシリカマイクロビーズを用いており、ノ
ードソン静電散布方式で分布密度300個/mmにな
るように散布した。さらに、シール材としては液状接着
剤(商品名:ストラクトボンド;三井東圧社製)を用い
ており、6μmの膜厚になるように印刷塗布している。
【0133】次いで、2枚のガラス基板11a,11b
を左回りに4〜12°の交差角でかつ同方向に貼り合わ
せ、70℃の温度下で2.8Kg/cmの圧力を5分
間印加することによって圧着し、さらに150℃の温度
下で0.63Kg/cmの圧力を加えながら、4時間
かけて2種の接着剤を硬化し、セルを作製した。
【0134】その後の液晶セル内を約10Paまで減圧
し、前記の液晶組成物1、1S、1A、1Bを等方性液
体相、または、コレステリック相で注入し、その後、コ
レステリック相とスメクチックA相を通してカイラルス
メクチックC相を生じる30℃に冷却した。
【0135】この液晶素子を用いて、30℃及び5℃に
おける配向性を観察すると共に、図4に示す駆動波形
(1/3.3バイアス比)で駆動マージンΔV(V
)を測定し駆動性を観察した(但し、ΔTはV
15.0Vになるように設定した。)。
【0136】また、30℃における駆動時のコントラス
トの測定も同時に行った。本実験において、コントラス
ト(C/R)の測定は、光源の光量を一定にし、直交ク
ロスニコル間で、上記の液晶素子を無電界時の一方の消
光位(透過率が最も低くなる位置)に配置し、フォトマ
ルチメーター(浜松フォトニクス(株)製)で透過光量
を検知して測定した。色および黒の表示は、同様に図4
に示す駆動波形を用いて走査側±11.2V(一部±
4.8V)、情報側±4.8V、すなわち図4中のVo
p=16.0Vで行った(ΔTは同様にV=15.0
Vになるように設定した)。
【0137】本実施例における測定結果を表7に示す
が、ここにおける配向性とは、未駆動時の配向性を示
す。また、駆動電圧マージンのパラメータMは、
【0138】
【数9】M=(V−V)/(V+V) で定義し、この値が大きい方が、駆動電圧の変動に対す
る画像表示能力の余裕度が大きい事を示している。(こ
の値が、0.1以上であれば実用上表示装置に用いるこ
とが可能であるといえる)
【0139】配向性、および駆動性のランクは次のよう
にした。 配向性 C1U : 全領域C1ユニフォーム配向 C1T : C1スプレイ配向の出現 C2 : C2配向の出現
【0140】駆動性 C1U : C1ユニフォーム配向間のみのスイッチン
グ C1T : C1スプレイ配向の出現 C2 : C2配向の出現
【0141】実施例2 下記に示す液晶性化合物を各々下記に示すwt%にて配
合し、液晶組成物2を作成した。
【0142】
【化43】
【0143】
【化44】
【0144】この液晶組成物に対して、下記に示す本発
明の例示液晶性化合物を下記の配合比にて配合し、液晶
組成物2S、2A、2Bを作成し、実施例1、及び、比
較例1、2で用いた液晶組成物に替えて、これらの液晶
組成物を使用した以外は同様に液晶素子を作成し、実施
例1、及び比較例1、2と同様の評価を行った。結果を
表7に示す。
【0145】なお、液晶組成物2A、2Bはそれぞれ、
比較例3、4のために作成した。
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】なお、本実施例2及び比較例3、4のため
に作成した液晶の相転移温度、及び30℃における自発
分極の大きさ(Ps)、コーン角Θ、ならびに層の傾斜
角δの値を表6に示す。
【0150】実施例3 下記に示す液晶性化合物を各々下記に示すwt%にて配
合し、液晶組成物3を作成した。
【0151】
【化45】
【0152】
【化46】
【0153】この液晶組成物に対して、下記に示す本発
明の例示液晶性化合物を下記の配合比にて配合し、液晶
組成物3S、3A、3Bを作成し、実施例1及び比較例
1、2で用いた液晶組成物に替えて、これらの液晶組成
物を使用した以外は同様に液晶素子を作成し、実施例1
及び比較例1、2と同様の評価を行った。結果を表7に
示す。なお、液晶組成物3A、3Bはそれぞれ、比較例
5、6のために作成した。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】なお、本実施例3及び比較例5、6のため
に作成した液晶の相転移温度、及び30℃における自発
分極の大きさ(Ps)、コーン角Θならびに層の傾斜角
δの値を表6に示す。
【0158】実施例4 実施例3で使用した、本発明の例示液晶性化合物に替え
て、下記に示す本発明の例示液晶性化合物を下記の配合
比にて配合し、液晶組成物4Sを作成した以外は実施例
1と同様に液晶素子を作成し、同様の評価を行った。結
果を表7に示す。
【0159】
【0160】なお、本実施例4に使用した液晶の相転移
温度、及び30℃における自発分極の大きさ(Ps)、
コーン角Θ、ならびに層の傾斜角δの値は表6に示す。
【0161】実施例5 実施例3で使用した、本発明の例示液晶性化合物に替え
て、下記に示す本発明の例示液晶性化合物を下記の配合
比にて配合し、液晶組成物5Sを作成した以外は実施例
1と同様に液晶素子を作成し、同様の評価を行った。結
果を表7に示す。
【0162】
【0163】なお、本実施例5に使用した液晶の相転移
温度、及び30℃における自発分極の大きさ(Ps)、
コーン角Θ、ならびに層の傾斜角δの値は表6に示す。
【0164】実施例6 実施例3で使用した、本発明の例示液晶性化合物に替え
て、下記に示す本発明の例示液晶性化合物を下記の配合
比にて配合し、液晶組成物6Sを作成した以外は実施例
1と同様に液晶素子を作成し、同様の評価を行った。結
果を表7に示す。
【0165】
【0166】なお、本実施例6に使用した液晶の相転移
温度、及び30℃における自発分極の大きさ(Ps)、
コーン角Θ、ならびに層の傾斜角δの値は表6に示す。
【0167】表7より明らかなように、ベースとなる液
晶組成物1と比較して、液晶性化合物A及びBを同時に
含有させた本発明による液晶組成物1Sが、表示コント
ラスト、低温での駆動性が共に優れ、総合的に実用的で
あることがわかる。
【0168】一方、液晶性化合物Aを加えた1Aは表示
コントラストは向上しているが、低温での駆動性では劣
る。また、液晶性化合物Bを加えた1Bは逆に低温での
駆動性は向上しているが、表示コントラストは優れてい
るとは言えない。
【0169】このように低温駆動特性、表示コントラス
トの両方の特性を向上させる為には液晶化合物A、Bを
共に含有させることが重要であり、更には、液晶化合物
A、Bを各々単独で導入した場合よりも格段に効果があ
ることがわかる。
【0170】また、実施例2においても、液晶性化合物
A、Bを同時に含有させた液晶組成物2Sは、ベースと
なる液晶組成物2、及び液晶性化合物A、Bを各々単独
で導入した2A、2Bと比較して、表示コントラスト、
低温駆動特性の両方の特性が向上している。
【0171】更に、実施例3においても、液晶性化合物
A、Bを同時に含有させた液晶組成物3Sは、ベースと
なる液晶組成物3、及び液晶性化合物A、Bを各々単独
で導入した3A、3Bと比較して、表示コントラスト、
低温駆動特性の両方の特性が向上している。
【0172】同様に液晶性化合物A、Bを同時に含有さ
せて調製した液晶組成物4S、5S、6Sも表示コント
ラスト、低温駆動特性の両方の特性を満足させている。
【0173】
【表6】
【0174】 ここで、Cry ;結晶相または高次のスメクチック相 SmC*;カイラルスメクチックC相 SmA ;スメクチックA相 Ch ;コレステリック相 Iso ;等方性液体相 を各々示す。
【0175】
【表7】
【0176】表7中コントラスト測定の欄(C/R)に
おいて、“−”表示されているのは、コントラストが測
定不能であったことを意味する。
【0177】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明によれば、液
晶組成物中に一般式(A)及び(B)で示される液晶性
化合物を組み合わせて含有させることによって、層の傾
斜角δの大きさが、低温側で単調増加していかないよう
に調整した場合でも、低温領域において、マトリクス駆
動時にC2配向状態を呈する領域が出現せず、低温領域
での駆動マージンの減少を抑制することが可能となり、
加えて、非選択時のパルスによる、液晶分子の揺らぎ現
象の程度を緩和し、駆動時におけるコントラストの低下
を防止する液晶組成物、及びこれを用いた液晶素子、更
にはこの液晶素子の駆動回路、及び光源を備えた液晶装
置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶素子の構成の一例を示す模式的断
面図である。
【図2】シェブロン構造におけるC1配向及びC2配向
状態を示す模式図である。
【図3】C1配向及びC2配向でのコーン角Θ、プレチ
ルト角α及び層の傾斜角δの関係を示す模式図である。
【図4】図1の液晶素子に印加した電界の波形、及びフ
ォトマルによって測定された光学応答波形と駆動波形と
の関係を示すためのタイミングチャート図である。
【図5】マトリクス電極を配置した液晶パネルの平面図
である。
【図6】従来技術の説明で述べた駆動法の波形図であ
る。
【図7】図6(B)に示す時系列駆動波形で実際の駆動
を行った時の表示パターンの模式図である。
【図8】駆動電圧を変化させた時の透過率の変化を表わ
すV−T特性図である。
【図9】本発明に係る液晶表示装置とグラフィックコン
トローラとの接続状態を示すブロック図である。
【図10】本発明に係る液晶表示装置とグラフィックコ
ントローラとの間の画像情報通信状態を示すタイミング
チャート図である。
【符号の説明】
11a,11b 基板(ガラス基板) 12a,12b 電極(透明電極) 13a,13b 絶縁膜(絶縁性配向制御層) 14a,14b 配向制御膜(絶縁性配向制御層) 15 液晶層 16 スペーサー 17a,17b 偏光版 41 白表示を行う時の電圧波形の一例 42 黒表示を行う時の電圧波形の一例 43 42の駆動波形を印加した時の光学応答波形 44 白書き込み波形選択期間 45 黒書き込み波形選択期間 51 液晶パネル 52 走査電極群 53 情報電極群 101 液晶表示装置 102 グラフィックスコントローラ 103 表示パネル 104 走査線駆動回路 105 情報線駆動回路 106 デコーダ 107 走査信号発生回路 108 シフトレジスタ 109 ラインメモリ 110 情報信号発生回路 111 駆動制御回路 112 GCPU 113 ホストCPU 114 VRAM
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G02F 1/13 500 (72)発明者 山田 修嗣 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 片桐 一春 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 野口 幸治 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(A)及び一般式(B)で示
    される液晶性化合物をそれぞれ0.1〜30重量%含有
    することを特徴とする液晶組成物。 【化1】 (式中、R1は炭素原子数1〜18の直鎖状または分岐
    状のアルキル基を示し、 X1は単結合、−O−、 【化2】 を示し、X2は単結合、−OCH2−、 【化3】 を示し、nは3〜16の整数を示す。A1は 【化4】 を示す。) 【化4】 (式中、R2は炭素原子数1〜18の直鎖状または分岐
    状のアルキル基を示し、 X3、X4は単結合、−O−、 【化5】 を示し、mは3〜16の整数を示す。A2は 【化6】 を示す。)
  2. 【請求項2】 請求項1記載の液晶組成物がカイラルス
    メクティックC相を有し、かつ0℃〜60℃の範囲にお
    いて、カイラルスメクティックC相の層の傾斜角δの大
    きさが、3°〜15°に調整されていることを特徴とす
    る請求項1記載の液晶組成物。
  3. 【請求項3】 前記液晶組成物が更に下記一般式(1)
    で示される液晶性化合物を25〜75wt%、一般式
    (2)で示される液晶性化合物を5〜25wt%、一般
    式(3)で示される液晶性化合物を5〜30wt%、一
    般式(4)で示される液晶性化合物を0.1〜30wt
    %、一般式(5)で示される液晶性化合物を1〜25w
    t%含有してなることを特徴とする請求項1記載の液晶
    組成物。 【化7】 (式中、R21、R22は炭素原子数1〜18の直鎖状また
    は分岐状のアルキル基であり、該アルキル基中の1つも
    しくは2つ以上のメチレン基は、ヘテロ原子が隣接しな
    い条件で−O−、−S−、−CO−、−CHW−、−C
    H=CH−、−C≡C−によって置き換えられていても
    よく、Wはハロゲン、CN、CF3 を示す。また、
    21、R22は光学活性であっても良い。Y1 は水素原子
    またはフッ素原子を表す。p,qは、0、1、2であっ
    て、p+qは1または2である。) 【化8】 (式中、B1 は、 【化9】 を表し、Y1 は水素原子またはフッ素原子を表す。R23
    は炭素原子数1〜18の直鎖状または分岐状のアルキル
    基であり、 R24は水素原子、ハロゲン、CN基または炭素原子数1
    〜18の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、
    23、R24の示す該アルキル基中の1つもしくは2つ以
    上のメチレン基は、ヘテロ原子が隣接しない条件で−O
    −、−S−、−CO−、−CHW−、−CH=CH−、
    −C≡C−によって置き換えられていてもよく、 Wはハロゲン、CNまたはCF3 を示す。また、R23
    24は光学活性であっても良い。) 【化10】 (式中、B2 は、 【化11】 を表す。R25、R26は、炭素原子数1〜18の直鎖状ま
    たは分岐状のアルキル基であり、該アルキル基中の1つ
    もしくは2つ以上のメチレン基は、ヘテロ原子が隣接し
    ない条件で−O−、−S−、−CO−、−CHW−、−
    CH=CH−、−C≡C−によって置き換えられていて
    もよく、Wはハロゲン、CNまたはCF3 を示す。ま
    た、R25、R26は光学活性であっても良い。) 【化12】 (式中、B は、 【化13】 を表し、Zは−O−または−S−を表す。R27、R
    28は炭素原子数1〜18の直鎖状または分岐状のアル
    キル基であり、該アルキル基中の1つもしくは2つ以上
    のメチレン基は、ヘテロ原子が隣接しない条件で−O
    −、−S−、−CO−、−CHW−、−CH=CH−、
    −C≡C−によって置き換えられていてもよく、Wはハ
    ロゲン、CNまたはCF を示す。また、R27、R
    28は光学活性であっても良い。) 【化14】 (式中、R29、R30は炭素原子数1〜18の直鎖状また
    は分岐状のアルキル基であり、該アルキル基中の1つも
    しくは2つ以上のメチレン基は、ヘテロ原子が隣接しな
    い条件で−O−、−S−、−CO−、−CHW−、−C
    H=CH−、−C≡C−によって置き換えられていても
    よく、Wはハロゲン、CNまたはCF3 を示す。また、
    29、R30は光学活性であっても良い。)
  4. 【請求項4】 前記一般式(1)で示される液晶性化合
    物が下記一般式(1−1)〜(1−7)で示される液晶
    性化合物であり、一般式(2)で示される液晶性化合物
    が下記一般式(2−1)〜(2−5)で示される液晶性
    化合物であり、一般式(3)で示される液晶性化合物が
    下記一般式(3−1)〜(3−9)で示される液晶性化
    合物であり、一般式(4)で示される液晶性化合物が下
    記一般式(4−1)〜(4−6)で示される液晶性化合
    物であることを特徴とする請求項3記載の液晶組成物。 【化15】 【化16】 (式中、Rは、水素原子、ハロゲン、CN基または炭素
    原子数1〜18の直鎖状、分岐状または環状のアルキル
    基であり、該アルキル基中の1つもしくは2つ以上のメ
    チレン基は、ヘテロ原子が隣接しない条件で−O−、−
    S−、−CO−、−CHW−、−CH=CH−、−C≡
    C−によって置き換えられていてもよく、Wはハロゲ
    ン、CNまたはCF3 を示す。また、Rは光学活性であ
    っても良い。Y1 は水素原子またはフッ素原子を表
    す。)
  5. 【請求項5】 カイラルスメクティック液晶と、該液晶
    を挟持して対向すると共に、その対向面にそれぞれ上記
    液晶に電圧を印加する電極が形成され、かつ、液晶を配
    向させるための一軸性配向軸が平行あるいは互いに所定
    の角度で交差した配向処理が施された一対の基板とを備
    えた液晶素子において、該カイラルスメクティック液晶
    が請求項1乃至4のいずれかの項に記載の液晶組成物で
    あることを特徴とする液晶素子。
  6. 【請求項6】 カイラルスメクティック液晶、及びその
    液晶素子の室温近傍におけるプレチルト角をα、コーン
    角Θ、液晶の層の傾斜角をδとすれば、カイラルスメク
    ティック液晶が、下記(I)式及び(II)式で表され
    る配向状態を有し、かつこの配向状態において、少なく
    とも2つの安定状態を示し、それらの光学軸のなす角度
    の1/2である、見かけのチルト角θaとコーン角Θと
    が、下記(III)式の関係を有する請求項5記載の液
    晶素子。 【数1】 Θ<α+δ (I) δ<α (II) Θ>θa>Θ/2 (III)
  7. 【請求項7】 前記一軸性配向軸の交差角が0°〜25
    °である請求項5または6に記載の液晶素子。
  8. 【請求項8】 前記プレチルト角αの大きさが5°以上
    である請求項5乃至7のいずれかに記載の液晶素子。
  9. 【請求項9】 請求項5乃至8のいずれかに記載の液晶
    素子を具備した液晶装置。
  10. 【請求項10】 該液晶素子の駆動回路を具備した請求
    項9記載の液晶装置。
  11. 【請求項11】 更に光源を具備する請求項10記載の
    液晶装置。
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