JPH08208714A - 熱可塑性樹脂ポリマーの生成方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂ポリマーの生成方法

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JPH08208714A
JPH08208714A JP7286964A JP28696495A JPH08208714A JP H08208714 A JPH08208714 A JP H08208714A JP 7286964 A JP7286964 A JP 7286964A JP 28696495 A JP28696495 A JP 28696495A JP H08208714 A JPH08208714 A JP H08208714A
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Peter M Kazmaier
エム カズマイヤー ピーター
Michael K Georges
ケー ジョージズ マイケル
Richard P N Veregin
ピー エヌ ヴェレジン リチャード
Barkev Keoshkerian
ケオシュケリアン バーケフ
Gordon K Hamer
ケー ハマー ゴードン
A Moffat Karen
エー モファット カレン
Saban Marco
サバン マルコ
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    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
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    • C08F4/00Polymerisation catalysts

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 狭い分子量分布の熱可塑性ポリマー樹脂を安
価で効果的な生成方法を提供する。 【解決手段】 遊離基重合によって熱可塑性樹脂を生成
する。この方法は、反応器に先駆物質を入れ、先駆物質
から安定なニトロキシド(ピリジンー1ーオキシド)遊
離基剤を生成するステップと、前記反応器中に、遊離基
開始剤と、少なくとも一種類の重合可能のモノマー化合
物とを導入するステップと、前記安定なニトロキシド遊
離基剤、遊離基開始剤、少なくとも一種類の重合可能な
モノマー化合物の混合物を、前記反応器内で約100〜
160℃で加熱し、分子量分布範囲が約1.1〜2.0
である熱可塑性樹脂を形成するステップとを含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分子量分布を狭い
範囲に制御した改良したポリマー樹脂と、その生成方法
に関する。特に、重合のプロセスで用いるための、先駆
物質からの安定した遊離基剤の生成と、そのような安定
遊離基剤を用いた、単一の反応器内での安定遊離基重合
とを含むポリマー樹脂生成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】狭い分子量分布(分散性)を有するポリ
マーあるいは共重合体の生成方法として、アニオン重合
が知られている。しかし、アニオン重合は大気中の酸素
や湿気が存在しないところで行う必要があるのと、有害
な開始剤試薬を必要とすることから、実際の産業上の利
用において、分子量分布の狭い樹脂を使用することに限
界がある。アニオン重合プロセスは、バッチ反応器内で
の処理に限定されるからである。また、アニオン重合に
用いるモノマーや溶剤は、純度の高い無水物である必要
があり、このような要件を必要としない他の方法に比べ
て、アニオン重合のコストを高くしている。つまり、ア
ニオン重合処理は条件がきびしく、かつコストがかか
る。そこで、上記のようなアニオン重合の失点を克服
し、狭い分子量分布の樹脂を生成できる遊離基重合方法
が望まれる。
【0003】一方、遊離基重合方法もポリマー樹脂の生
成方法として用いられてきた。この重合方法は、使用す
るモノマーや溶剤中の不順物に対して化学的に反応度が
低く、水に対しては完全に無反応である。したがって、
懸濁液、溶剤、乳濁液を用いて狭い分子量分布の樹脂を
生成することのできる経済的な遊離基重合方法が望まれ
る。
【0004】従来の遊離基重合(いわゆるラジカル重
合)で生成されるほとんどの共重合体は、例えば4以上
の広い範囲の分子量分布(多分散性)を有する。これは
ひとつには、遊離基の開始剤は、数分から数時間という
長い半減期を有し、重合連鎖の開始がすべて同時に起こ
らないからである。結果として、遊離基の開始剤は重合
過程の任意の時間において、異なる長さの成長鎖を生成
することになる。高い多分散性の別の理由として、遊離
基処理で増殖中の鎖は、結合および不均化反応の過程で
お互いに反応しあう。結合も不均化反応も鎖の終端反応
である。こうすることによって、重合反応過程の異なる
時点で異なる長さの連鎖が終端する。この結果、非常に
短いものから大きな連鎖まで、広範囲にわたる異なる長
さの重合鎖を含む樹脂製品ができることになる。さら
に、反応の初期、すなわち、反応開始から数ミリセコン
ドの内に、デッド(非反応性)ポリマーが形成される。
これは、反応の初期段階のポリマーの分子量と、後期に
形成されたポリマーの分子量とが大きく異なることを意
味する。異なる分子量のポリマーは、反応過程における
処理条件の変化にも起因する。例えば、粘性/モノマー
濃度や反応媒体の熱伝達特性が変化した場合である。こ
れによって、従来の方法によって生成された樹脂の多分
散性はますます広範囲になる。
【0005】分子量分布が狭い樹脂を生成できる遊離基
重合処理が可能になるのであれば、反応中のすべてのポ
リマー鎖がほぼ同時に開始され、結合や不均化による早
まった連鎖終了が回避されるはずである。
【0006】仮に、スチレンの遊離基重合において、重
合過程全般にわたって連続的に連鎖が開始され、かつ結
合による連鎖終了も同時に起こるとすれば、計算によっ
て求められる理論的に可能な最狭の分散性は1.5であ
る。この計算の詳細は、G.G.Odian, Principles of Pol
ymerization, pp. 280-281, 2nd Ed., John Wiley &Son
s, 1981 に示される。理論上は1.5であるが、現実に
は、1.5以上の多分散性を示す。スチレンの遊離基ホ
モポリマー生成による分散性は、通常2.0〜2.4、
共重合体システムの場合は、通常4以上の多分散性を示
す。
【0007】遊離基重合の抑制剤として安定な遊離基を
用いることは、例えばG. Moad et al.のPolymer Bullet
in, vol. 6, pp.589 (1982) に開示される。また、安定
な遊離基を低温、かつ低いモノマー/ポリマー変換率の
遊離基重合に用いる研究についてもレポートされている
(G. Moad et al., Macromol Sci.-Chem., A17(1), 51
(1982) ) 。
【0008】安定な遊離基は、周知の反応メカニズムに
従って、先駆物質から形成される。たとえば、E.G. Roz
antsev and V.D. Sholl のSynthesis, 190-202 (1971)
や、E.J. Rauckman, G.M. Rosen and M.B. Abou-Donia
によるSynthetic Communicat ions, 409-413 (1975)は、
アミン先駆物質からのニトロキシドの合成を開示してい
る。先駆物質からのニトロキシドの合成としては、ヒド
ロキシルアミンの酸化(E.G. Rozantsev, Free Nitroxy
l Radicals, 70-73, Plenum Press, New York)や、ニ
トロンに遊離基を添加する方法(I. Iwamura and N. In
amoto, Bulleti n of the Chemical Society of Japan,
40, 703 (1967)) などがある。
【0009】また、Roland P.T. Chung and David H. S
olomon, "Recent Developments inFree-Radical Polyme
rization - A Mini Review", Progress in Organic Coa
tin gs, vol. 21, pp. 227-254 (1992) は、最近の進展
に焦点をおいた遊離基重合プロセスのあらましを述べて
いる。
【0010】Georges et al.の米国特許第 5,322,912号
は、熱可塑性樹脂を生成する遊離基重合プロセスを示
す。この文献の熱可塑性樹脂は、10,000〜 200,000の分
子量と、1.1〜2.0の分散性(分子量分布)を有す
ると記載されている。ここでは、遊離基開始剤と、安定
な遊離基剤と、少なくとも1種類の重合可能なモノマー
化合物との混合物を加熱し、高いモノマー/ポリマー変
換率で熱可塑性樹脂を形成し、次いでその混合物を冷却
する。この重合プロセスは、加熱温度が60〜160
℃、圧力が約60 psi(約4bars)というかなり低い値
で行われる。任意で、熱可塑性樹脂を分離し、洗浄、乾
燥するステップを含んでもよい。この特許はさらに、遊
離基重合プロセスを用いた、共重合熱可塑性樹脂の混合
物とブロック重合体の生成も開示している。この方法で
生成された樹脂は狭い分子量分布を有し、そのモダリテ
ィ(様相)は遊離基開始剤と安定な遊離基剤の種類を選
択することによって制御される。安定な遊離基剤として
は、PROXYL、TEMPOなどのニトロキシド遊離
基とその誘導体が挙げられている。
【0011】Solomon et al.の米国特許第 4,581,429号
は、遊離基重合プロセスへの安定な遊離基剤の導入を開
示している。重合過程でニトロキシド基を添加して、ポ
リマー鎖の成長を安定させる。ここで得られるポリマー
物質の分子量は、約 2,500〜7,000 、分子量分布は1.
4〜1.8である。モノマー/ポリマー変換率は概して
低く、反応温度も100℃以下と低く設定し、数段階に
分けて反応を進める。
【0012】この米国特許第 4,581,429号の遊離基重合
プロセスでは、ポリマー鎖の成長を制御して、短鎖また
は低重合のホモポリマーと共重合体(ブロック共重合
体、グラフト共重合体を含む)を生成する。開始剤とし
て、=N−O−X(X:不飽和モノマーを重合できる遊
離基の種)を含む組成式のアルコキシアミン開始剤を用
いる。この特許によれば、アルコキシアミンの遊離基開
始剤は、遊離基重合プロセスでそれを用いる前に、化学
量論的量の炭素中心遊離基(X)の存在下でニトロキシ
ド基を加熱することによって、in situ で生成される。
アルコキシアミン遊離基開始剤の例として、アゾビスイ
ソブチロニトリルのベンゼンの脱気溶液から生成する1
−(1−シアノ−1−メチルエトキシ)2,2,5,5
−テトラメチルピロリジンや、2,2,5,5−テトラ
メチルピロリジン−1−イロキシ(2,2,5,5−テ
トラメチル−1−ピロリジンイロキシと同等の構造の安
定な遊離基剤PROXYL)がある。また、4,4’−
アゾビス(4−シアノ−n−ペンタノール)のエチルア
セトン脱気溶液から生成される1−(1−シアノ−4−
ヒドロキシ−1−メチルブトキシ)2,2,6,6−テ
トラメチルピペリジンや、2,2,6,6−テトラメチ
ルピペリジン−1−イロキシ(2,2,6,6−テトラ
メチル−1−ピペリジンイロキシと同等の構造の安定な
遊離基剤TEMPO)もアルコキシアミン遊離基開始剤
の例とされている。ニトロキシド基(TEMPOやPR
OXYL)の組成に関しては、これらは適当な第2アミ
ンまたはヒドロキシアミンの酸化、適当な窒化物またニ
トロソ基化合物の還元、ニトロンへの遊離基の添加によ
って容易に生成されるとだけ記載されている。ここに
は、遊離基重合プロセスに先立つ安定な遊離基剤のin s
itu 形成については開示されていない。
【0013】kamathの米国特許第 4,777,230号は、ポリ
マーを生成する遊離基重合プロセスを開示する。ここで
は、溶剤、重合開始剤(過酸化開始剤など)、および任
意で連鎖移動剤にモノマーが融合される。重合は90〜
200℃で行われる。こうしてできたポリマーの分子量
分布は、1.5〜2.5、平均分子量は4000以下で
ある。
【0014】安定な遊離基重合プロセスは、ポリマー鎖
の分子量分布を正確に制御できることがわかっている。
たとえば、上述の米国特許第 5,322,912号では、安定な
遊離基を用いて狭い分子量分布の熱可塑性樹脂を生成す
る重合プロセスを開示する。理論にしばられるのは望ま
しくないが、重合反応プロセスが100℃以上で行われ
るとすべてのポリマー鎖の反応が同時に開始されると言
われている。したがって、反応を制御することによっ
て、正確な分子量と狭い分子量分布のポリマー鎖の形成
が可能になる。重合プロセスに安定な遊離基剤を導入す
ることによって、すべてのポリマ−鎖が同時に開始する
最初の反応の後に、新たにポリマー連鎖が開始すること
を防止できる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、アニオ
ン重合ではコストがかかり産業上の適用が限定され、こ
の方法は好ましくなかった。また、安定な遊離基重合方
法は熱可塑性ポリマー樹脂を生成するのに有効ではある
が、安定な遊離基剤を生成するのにコストがかなりかか
り、結果として最終製品である熱可塑性樹脂の値段も高
くなるという問題があった。すなわち、コストを押さ
え、効果的に狭い分子量分布のポリマー樹脂を生成する
方法が必要とされる。処理特性がすぐれ、分子量分布の
狭い熱可塑性樹脂を生成できるという安定な遊離基重合
方法をさらに改善し、コストを低減できれば、この方法
の適用範囲がさらに広がるものと思われる。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、発明者は、単一の反応器内で、安価なアミン先駆物
質から安定な遊離基剤を生成するという行程を、安定遊
離基重合プロセスに組み込んで、狭い分子量分布の熱可
塑性樹脂を形成できることを発見した。すなわち本発明
は、安定な遊離基剤の生成方法と組み合わせたと遊離基
重合方法と、改善された熱可塑性樹脂を提供するもので
ある。
【0017】特に、熱可塑性樹脂を生成するための本発
明の遊離基重合方法は、反応器内の先駆物質から安定な
遊離基剤を生成するステップと、前記反応器内に遊離基
開始剤と少なくとも一種類の重合可能なモノマー化合物
とを導入するステップと、前記反応器内で、安定な遊離
基剤、遊離基開始剤、少なくとも一種類の重合可能なモ
ノマー化合物の混合物を加熱し、熱可塑性樹脂を生成す
るステップとを含む。この方法によれば、分散性が1.
1〜2.0という狭い分子量分布の熱可塑性樹脂を容易
に生成し、さまざまな共重合体システムにおいても少な
くとも分散性1.5という低い値を達成する。本発明の
方法は、アニオン重合で得られる低分散性に匹敵する分
子量分布を達成すると同時に、アニオン重合に見られた
失点を回避する。
【0018】また、本発明の方法で生成された熱可塑性
ポリマー樹脂は、特に分子量分布の狭さが向上してお
り、現在当業界で使用されているポリマーや共重合体の
代用として有望である。また、本発明の重合方法によれ
ば、ひとつの反応器内で、実際の安定な遊離基重合プロ
セスに、先駆物質からの安定な遊離基剤の生成を組み合
わせることによって、重合にかかる費用を低減する。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の遊離基重合方法は、当業
者にとって周知の任意の安定な遊離基剤を用いて実施す
ることが出来る。さらに、この遊離基重合方法は、先駆
物質から安定な遊離基剤を生成するのに用いるのと同じ
反応器内で行われるという利点がある。実施例では、先
駆物質をまず反応器に入れ、反応によって安定な遊離基
剤を生成し、この遊離基剤を引き続き重合プロセスで用
いる。重合共試薬をこの反応器に添加してもよく、その
場合も、安定な遊離基重合は最後まで完全に実行され
る。本発明の重合方法は、数平均分子量が1,000 〜 1,0
00,000の熱可塑性樹脂(ポリマーやブロック共重合体を
含む)の生成に使用される。
【0020】安定な遊離基剤は、G. Moad et al., Tetr
ahedron Letters, 22, 1165 (1981)などの文献で知られ
る通りである。この文献で安定な遊離基剤は遊離基重合
抑制剤として示されている。しかし、本発明の遊離基重
合条件では、安定な遊離基剤は減速剤として機能し、通
常は高反応で乱雑な中間遊離基種を抑制する。安定な遊
離基剤については、米国特許第 5,322,912号にも示され
ている。本発明の方法で使用するのに好適な遊離基剤
は、ニトロキシド(ピリジン−1−オキシド)遊離基グ
ループに含まれるものである。たとえば、PROXYL
(2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニロキ
シ)とその誘導体、TEMPO(2,2,6,6−テト
ラメチル−1−ピペリジニロキシ)とその誘導体、DO
XYL(4,4−ジメチル−3−オキサゾリニロキシ)
とその誘導体、およびこれらの混合物である。
【0021】安定な遊離基剤は、安定な遊離基重合プロ
セスに直接使用するのに入手は簡単ではあるが、値段が
きわめて高い。しかし発明者は、比較的安価な安定遊離
基先駆物質を酸化反応させることによって、簡単に安定
遊離基剤を生成し、遊離基重合プロセスに容易に組み込
むことが出来ることを発見した。すなわち実施形態で
は、水性溶媒、混合溶媒、あるいは完全な有機溶媒シス
テムで先駆物質を酸化して、安定遊離基剤を生成する。
先駆物質としては、アミンを用いる。これは安定な遊離
基剤そのものを購入するよりもかなり安い。
【0022】たとえばTEMPOを生成するときは、先
駆アミン(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリ
ジン)を酸化するか、先駆物質2,2,6,6−テトラ
メチル−1−ピペリドンを酸化することによって、簡単
に生成できる。同様にして、安定遊離基剤PROXYL
は、先駆アミン(2,2,5,5−テトラメチル−1−
ピロリジン)から生成される。
【0023】反応のメカニズムと安定な遊離基剤を生成
する種々のプロセスのパラメータ(先駆アミンの酸化な
ど)に関しては周知であるので、反応そのものに関して
ここで述べることはひかえる。反応メカニズムの詳細
は、以下の文献を参照されたい。E.G. Rozantsev and
V.D. Sholle, Synthesis, 190-202 (1971); E.J. Rauc
kman, G.M. Rosen and M.B. Abou-Donia, Synthetic Co
mmunications, 409-413(1975); E.G. Rozantsev, Free
Nitroxyl Radicals, Plenum Press (New York) 70-73;
I. Iwamura and N. Inamoto, Bulletin of the Chemi
cal Society of Japan, vol. 40, 703 (1967).先駆物質
から実際に安定な遊離基剤を生成したら、その安定な遊
離基剤溶液を、遊離基重合プロセスにそのまま使用して
もよいし、溶液から安定遊離基剤を分離して、引き続き
重合プロセスに使用してもよい。分離方法としては、た
とえば、合成されたばかりの安定遊離基剤溶液を、シリ
カゲル、アルミナ、イオン交換樹脂、フロリシル(登録
商標:ケイ酸マグネシウム)などの分離物質を詰めたカ
ラム(分離塔)に通す。また、抽出し、非溶剤で沈澱さ
せて分離してもよいし、昇華によって精製してもよい。
安定な遊離基剤などの有機化合物を分離するための類似
の精製方法は、当業者にとって周知の通りである。
【0024】安定な遊離基剤をその生成された溶液から
分離しない場合は、溶液中にまだ存在する過剰な酸化剤
を除去する場合がある。酸化剤がモノマーの重合を妨げ
る可能性があるからである。そのような場合には、安定
遊離基重合プロセスを開始する前に酸化剤を失活させる
のが好ましい。余剰酸化剤を失活させることは、特にモ
ノマーやその他の共試薬が酸化剤と相互作用するシステ
ムにおいて有益である。このように、本発明の方法は、
酸化剤とシステム中のその他の試薬との相互作用が起こ
らないシステムだけに限定されるものではない。すなわ
ち、広い範囲のモノマーの重合に適用可能になる。
【0025】しかし、たいていの場合は酸化剤は無害で
あり、重合プロセスと干渉しない。したがって、本発明
の実施形態では、安定な遊離基剤生成の後に反応器に残
った余剰の酸を特に失活させずともよい。実際に、反応
器に残るそのような余剰酸は、安定な遊離基重合プロセ
スを効果的に活性させる(たとえば重合速度の増加)こ
ともわかっている。実施形態では、安定な遊離基剤生成
ステップで化学量論的な量を越える量の酸を用いたり、
重合ステップの開始前に余分の酸を添加するなどして、
反応器内にいくらか酸が残る状態をつくってやるのが好
ましい。カチオン重合を開始しない触媒量のプロトン酸
を反応混合物に添加するのも一つの方法である。プロト
ン酸は、有機スルホン酸、リン酸、カルボン酸からなる
グループから選択、または3−カルボキシ−PROXY
Lなどの酸生成機能のグループを含むニトロバイドから
選択できるが、カンフルスルホン酸が好ましい。このよ
うな触媒を反応混合物に組み入れる場合の、安定遊離基
剤と触媒酸とのモル比は、約1:1〜11:1である
が、1.5:1〜5:1がより好ましい。上記の量を越
える過度の量の触媒を添加すると、最終的なポリマー樹
脂の分子量分布が広くなり、逆効果である。
【0026】安定な遊離基剤を生成したら、それを用い
た任意の重合プロセスによって、広範囲にわたる熱可塑
性ポリマー樹脂を生成する。たとえば実施形態では、米
国特許第 5,322,912号に開示の安定な遊離基の重合プロ
セスを用いる。
【0027】本発明の方法では、広範囲の種類のモノマ
ーから熱可塑性樹脂を生成できる。すなわち、遊離基重
合を行えるモノマーであれば、任意のものを使用でき
る。たとえば、スチレン、置換スチレンとその誘導体
(メチルスチレンなど)、アクリレート、ブタジエン、
イソプレン、ミルセン、共役ジエンとその誘導体、エチ
レンとその誘導体、これらの混合物などがあるが、これ
らに限定されるものではない。中でも、特定の安定遊離
基の減速された重合反応条件下で十分に反応して、安定
遊離基反応の付加生成物と高分子ポリマー生成物を生成
できるモノマーが特に好ましい。良好な反応条件下であ
まり自動重合しないモノマーも好ましい。
【0028】本発明の方法では、目的に応じた重合開始
剤が使用される。開始剤としては、過酸化物開始剤、ア
ゾ開始剤などの遊離基重合開始剤を用いるが、これに限
定されない。遊離基重合開始剤の例として、ターシャル
−ブチルペルアセタート、ジ−ターシャル−アミル−ペ
ルオキシド、ジ−ターシャル−ブチル−ペルオキシド、
ターシャル−ブチル−ヒドロペルオキシド、ターシャル
−アミル−ペルピバラート、ブチルペル−2−エチルヘ
キサノアート、ターシャル−ブチルペルピバラート、タ
ーシャル−ブチルペルネオデカノアート、ターシャル−
ブチルペルイソノナノアート、ターシャル−アミルペル
ネオデカノアート、ターシャル−ブチルペルベンゾアー
ト、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカルボナー
ト、ジシクロヘキシルペルオキシジカルボナート、クミ
ルペルネオデカノアート、ターシャル−ブチルペルマレ
アート、およびこれらの混合物などがある。過酸化物開
始剤としては、過酸化ベンゾイルなど、アゾ開始剤とし
ては、アゾビスイソブチロニトリルなどがある。2つ以
上の開始剤の混合物を使用してもよい。
【0029】安定遊離基剤と開始剤のモル比は、0.
4:1〜2.5:1、好ましくは0.9:1〜1.6:
1の範囲である。本発明の実施形態では、モル比が1.
3:1のときがもっとも良好な重合反応が起こると思わ
れる。モル比が高すぎると、130℃以下の温度で反応
速度が著しく阻害される。140〜150℃以上では、
モル比が増大しても反応速度にさほど影響はない。逆
に、遊離基剤と開始剤のモル比が低くなりすぎると、反
応生成物の分子量分布が広くなり、好ましくない。
【0030】重合プロセスで用いる安定遊離基剤と開始
剤の量は、重合されるモノマーの量と直接関係する。実
施例では、モノマー量:遊離基剤:開始剤のモル比は、
100:0.2:1〜10,000:2.5:1、好ま
しくは、300:1.3:1〜7,000:1.3:1
である。上記のモル比は、安定な遊離基重合プロセス開
始時の反応器内に存在する安定遊離基剤の量に対応する
ものである。すなわち、安定遊離基剤生成のステップは
100%の収率では進行しないという事実から、安定遊
離基剤に対する特定のモル比は、必要な先駆物質のモル
比とは正確に対応しない。安定遊離基剤生成のステップ
の収率が100%より低いとしたら、所望の安定遊離基
剤を生成するための先駆物質の量を増やしてやる必要が
ある。
【0031】実施例において、モノマーの重合速度は、
触媒を添加することによって加速することができ、反応
時間を低減できる。たとえばカチオン重合を開始しない
プロトン酸を、触媒量だけ反応混合物に添加する。プロ
トン酸は、有機スルホン酸、リン酸、カルボン酸のグル
ープから選択するか、カンフルスルホン酸が好ましい。
触媒を反応混合物に添加するときの、安定遊離基剤:触
媒酸のモル比は、0.1:1〜11:1、好ましくは
1.5:1〜5:1である。上記比率を越える過度の触
媒を添加すると、生成されるポリマー樹脂の分子量分布
が広くなる。
【0032】本発明の目的を妨たげない限りは、任意で
周知の添加剤を重合反応に用いてもよい。そのような添
加剤を添加することで、最終的なポリマー樹脂をさらに
強化することも可能になる。添加剤の例として、染料、
潤滑剤、終結(転移)剤、界面活性剤、安定剤、消泡
剤、それらの混合物などがある。
【0033】本発明の熱可塑性樹脂ポリマーは、不活性
雰囲気、すなわち実質的に酸素を排除した雰囲気で重合
して得るのが好ましい。したがって、実施形態では、安
定遊離基重合プロセスを、アルゴンガスや窒素などの不
活性雰囲気下で行う。
【0034】その他の反応条件および反応物(適切なモ
ノマー、遊離基開始剤、安定な遊離基剤、触媒などの)
に関しては、米国特許第 5,322,912号を参照されたい。
【0035】重合反応が完了したら、あるいは完了以前
に所望のパーセンテージの変換が達成されたら、反応温
度を下げて反応を抑える又は終了させる。処理温度を約
100℃未満に、好ましくは40℃未満に下げると重合
反応は終了するが、この温度は反応物の種類によって多
少異なる。
【0036】反応を終えたら、反応混合物からできあが
ったポリマーを分離し、洗浄、乾燥してもよい。この熱
可塑性ポリマー樹脂の処理を引き続き行ってもよい。
【0037】本発明の方法で生成されたポリマー生成物
の分散性は約1.1〜2.0、モノマー/コモノマーシ
ステムによっては、遊離基剤と遊離基開始剤とのモル濃
度比を変えることによって1.1〜1.5というさらに
良好な結果を得られる。実施形態では、分散性が1.1
5〜1.25のポリスチレンが得られた。本発明の重合
を、安定な遊離基剤を用いずに行った場合は、生成され
るポリマー樹脂の分子量分布が広範囲になる。
【0038】本発明の、安定な遊離基剤による減速重合
反応は、懸濁液、乳濁液、水溶液、非水溶液など、種々
の媒体で行われる。溶剤液を用いる場合は、トルエンや
キシレンといった沸点の高い溶剤を用いるのが好まし
い。
【0039】安定な遊離基剤生成ステップでは、用いる
先駆物質と酸化反応剤、生成する安定遊離基剤の種類に
よって、反応時間は約48時間までの間で変化するが、
安定遊離基剤を生成するための好ましい反応時間は24
時間以内である。最適な反応時間は反応温度、反応の量
と率、選択された反応物の量によっても変わる。一般
に、先駆物質からの安定な遊離基剤の生成は、溶媒シス
テムによって−40〜125℃の間で行われ得るが、良
好な実施例では20〜40℃で生成する。
【0040】実施形態では、安定遊離基剤の生成反応の
前、反応中、反応後のいずれにおいても、反応器に重合
反応物を直接導入することができ、これによって、生成
した安定遊離基剤を重合プロセスで直接用いることがで
きる。ポリマーを生成するためのモノマー(あるいは混
合モノマー)の重合反応において、反応時間の範囲は7
0時間までであるが、好ましくは10時間以内、更に好
ましくは7時間以内、最適な重合反応時間は3〜7時間
の間である。最適な重合反応時間は、重合プロセスにお
ける反応温度、反応の量と反応率、用いる重合開始剤と
遊離基剤の量と種類、余剰酸(あるいは酸化試薬)の効
果などによって異なる。
【0041】重合反応温度は、外部の加熱源を調節する
ことによって、重合反応プロセスを通じて一定に維持す
る。反応器の温度は60〜160℃、好ましくは100
〜150℃であるが、実施形態で最適な温度として12
0〜140℃に維持した。スチレンなどのモノマーにと
っては、160℃以上で重合反応を行うと最終生成物で
あるポリマー樹脂の分散性が広がる。
【0042】反応器の体積は、反応物の添加、混合、反
応、樹脂生成物の分離を経済的で適切に行えるサイズで
あれば、任意のサイズでよい。
【0043】本発明の熱可塑性ポリマー樹脂から、注
入、ブロー成形などの周知の方法で種々の熱可塑性製品
を形成することができる。そのような熱可塑性製品の例
として、静電複写トナーや現像剤合成物があり、狭い分
布範囲の多分散性ポリマーの応用例としては、接着調合
物、界面活性剤、粘性条件剤などがあるが、これらに限
定されない。
【0044】
【実施例】以下は特定の例を示す。当業者であれば、適
切な反応パラメータ、反応物と化合物の比率を必要に応
じて変えることによって、所望の安定遊離基剤やポリマ
ー生成物を作ることができる。割合やパーセンテージ
は、特に示さない限り重量パーセンテージである。
【0045】例1 2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンのキシ
レン溶液(5mlのキシレンに0.5g)に、アミン1
モルにつき2モルの過酸のモル比でm−クロロ過安息香
酸を添加した。温度を25℃に維持し、安定遊離基剤の
生成反応を5時間行った。溶液が安定遊離基剤TEMP
O溶液の存在を示すオレンジレッドに変わったことによ
って、TEMPOの生成が確認できた。
【0046】スチレン溶液(15g、0.144mol
e)、過酸化ベンゾイル(0.385g、0.0016
mole)、および上記のTEMPO(0.292g、
0.0019mole)を、アルゴン雰囲気下で95℃
で3.5時間加熱した。過酸化ベンゾイルの半減期と、
TEMPOは過酸化ベンゾイルの解離の助触媒として作
用することから、上記時間(3.5時間)の後には反応
混合物に過酸化ベンゾイルはまったく残存しないと考え
てよい。この反応混合物を123℃の油浴で45分間加
熱し、この温度を維持したまま反応を69時間進めた。
反応の経過とともにサンプル(ポリスチレン生成物)を
反応混合物から取り出した。ポリスチレン生成物のモル
量と変換率を表1に示す。
【0047】この例は、溶媒がなくとも、全体の量で反
応が達成されることを示す。サンプルのモル量が経過と
ともに増加していることから、疑似存続メカニズムによ
って反応が進行しているように見える。TEMPOと過
酸化ベンゾイルのモル比は、1.3:1である。最初の
95℃での加熱期間は、ゲル浸透クロマトグラフィー
で、まったく重合物質はみられなかった。この混合物を
123℃の油浴で反応させると、反応時間の最後でも
1.26という非常に狭い分散性のポリマー生成物を得
ることができた。この値は、スチレンの通常の安定遊離
基重合プロセスの理論計算値1.5より低く、変換率か
らみても、これ以上の分散値にはならない。この表か
ら、本発明の方法が、ポリマー樹脂生成物の狭い分子量
分布を維持しつつ高い変換率を達成することを示してい
る。
【0048】
【表1】 例2 水とエチレングリコールの溶液を1:3の体積比で混合
した溶液をつくった。この溶液に、2,2,6,6−テ
トラメチル−1−ピペリジンの溶液(5mlの溶媒に
0.83g)と、重炭酸ナトリウム(2,2,6,6−
テトラメチル−1−ピペリジン1gにつき0.4g)
と、50%の過酸化水素水(1.3ml)と、タングス
テン酸ナトリウム(0.056g)を加えた。24時間
反応させた。この反応時間中に、オレンジレッドに変色
したことでTEMPOの生成が確認された。溶液からT
EMPOを分離せずに、安定遊離基剤TEMPOを含む
溶液を直接重合プロセスに使用した。
【0049】反応混合物にスルホン酸スチレンナトリウ
ム(10g)と、重亜硝酸ナトリウム(0.33g)
と、過硫酸アンモニウムを添加し、74℃で1時間加熱
した。次いで、還流で5時間加熱した。この安定遊離基
重合プロセスによって、狭い分子量分布のポリマー樹脂
を生成することができた。
【0050】
【発明の効果】本発明の方法によれば、ポリマー製品の
安定な遊離基重合が、先駆物質からの安定な遊離基剤の
生成にともなって、同じ反応器内でインシトゥー(in s
itu )で行われる。すなわち、この方法によると、安定
な遊離基剤の生成と、これを用いたポリマー生成物の重
合プロセスの双方を、単一のステップで単一の反応器内
で行うことができる。これをいわゆるEin Topf
反応と言い、この方法によって、狭い分散性(分子量分
布)のポリマー生成物を、従来の処理方法よりずっと効
果的かつ経済的に生成することができ、かつ、広範囲の
熱可塑性素材に使用される熱可塑性ポリマー樹脂の生成
に特に有効である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 リチャード ピー エヌ ヴェレジン カナダ オンタリオ州 ミッシッサウガ チェリングトン クレセント 3515 (72)発明者 バーケフ ケオシュケリアン カナダ オンタリオ州 ソーンヒル マウ ントフィールド シーアール 40 (72)発明者 ゴードン ケー ハマー カナダ オンタリオ州 ミッシッサウガ サウス ミルウェイ 1−2280 (72)発明者 カレン エー モファット カナダ オンタリオ州 ブラントフォード マジェステック コート 7 (72)発明者 マルコ サバン カナダ オンタリオ州 エトビコーク チ ャレレストン ロード 65

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 遊離基重合によって熱可塑性樹脂を生成
    するための方法であって、(a)反応器中の先駆物質か
    ら安定なニトロキシド遊離基剤を生成するステップと、
    (b)前記反応器中に、遊離基開始剤と、少なくとも一
    種類の重合可能のモノマー化合物とを導入するステップ
    と、(c)前記安定なニトロキシド遊離基剤、遊離基開
    始剤、少なくとも一種類の重合可能なモノマー化合物の
    混合物を、前記反応器内で約100〜160℃で加熱
    し、分子量分布範囲が約1.1〜2.0である熱可塑性
    樹脂を形成するステップと、 を含む熱可塑性樹脂の生成方法。
JP7286964A 1994-11-18 1995-11-06 熱可塑性樹脂ポリマーの生成方法 Withdrawn JPH08208714A (ja)

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