JPH08205859A - 血清非依存性ヒトセルライン - Google Patents

血清非依存性ヒトセルライン

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JPH08205859A
JPH08205859A JP7324299A JP32429995A JPH08205859A JP H08205859 A JPH08205859 A JP H08205859A JP 7324299 A JP7324299 A JP 7324299A JP 32429995 A JP32429995 A JP 32429995A JP H08205859 A JPH08205859 A JP H08205859A
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tpa
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cell line
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 血清非依存的に増殖し得るヒトセルラインの
提供。 【解決手段】 血清非依存的に増殖し得るヒトセルライ
ン。 【効果】 使用する培地が安価であり、培地中に存在す
る蛋白質が少ないから、生成した目的生成物を容易に精
製することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、血清(seru
m)又は外来性巨大分子増殖因子(exogenous
macromolecular grouth fa
ctor)の非存在下で増殖し得るヒトセルラインに関
する。
【0002】
【従来の技術】最近における組換DNA技法及び細胞培
養技法の出現に伴って、有用で薬理学的に興味ある化合
物、特に蛋白質、例えばインターフェロン、インスリン
及び抗原の制御された生物学的製造が可能となった。生
物学的に、特に薬理学的に興味ある種々の蛋白質の大規
模製造を確実にする生物学的方式を開発する必要性が増
加している。
【0003】この明細書において使用する「蛋白質」な
る語は高分子量、例えば約34,000より大きな分子
量のポリペプチド、及び低分子量、例えば約34,00
0より小さい分子量のポリペプチド、並びにこれらの誘
導体、グリコシル化、燐酸化及び硫酸化された誘導体を
含める意味に用いる。組換DNA技法における利点は、
目的蛋白質をコードする遺伝子を微生物に導入し、そし
て次にこの微生物による蛋白質の合成を誘導することが
可能となることである。しかしながら、多くの生物学的
に重要な分子はこの技法によって合成することができな
い。構造がまだ知られていない分子の場合、特にそうで
ある。ほとんどの場合、遺伝的に変性された微生物によ
り分泌される蛋白質は真正な分子の正確な複製ではな
く、アミノ酸配列のN末端及びC末端に関し真正な分子
と異る。
【0004】この事実は、組換DNA技法における実験
的過程に由来する。さらに、グリコシル化蛋白質を微生
物、例えば細菌によって製造することはできず、酵母に
ついてもある程度そうである。これらは必要な細胞機構
を有しないからである。多くの場合、細胞培養技法及び
組織培養技法が有利に使用される。細胞培養物は手を加
えてない生物(intact organism)に由
来するから、この細胞培養物により生産される蛋白質は
すべての点において天然の蛋白質に相当する。
【0005】しかしながら、高等生物の細胞、例えば哺
乳動物細胞の培養には困難な問題が存在する。これらの
細胞の栄養要求は、人工培地中で増殖するほとんどの微
生物のそれに比べて厳格である。今まで記載されている
ほとんどの哺乳動物細胞の増殖培地は、非常に高価な血
清を含有しなければならない。血清の価格が細胞培養技
法の経済的実施可能性を大きく左右し、そして細胞培養
以外の方法によっては製造し得ない蛋白質の製造へのこ
の方法の適用を大きく限定するであろう。若干の細胞
は、ホルモン又は増殖因子、例えばトランスフェリン、
インスリン、表皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子又は神
経生長因子を補給した血清不含培地中で培養することが
できる。しかしながら、ほとんどの場合、細胞はこれら
の血清不含培地において無限に増殖することはないであ
ろう。
【0006】血清不含培地において増殖するセルライン
は、血清又は外から添加された増殖因子による分解又は
汚染に敏感な蛋白質の製造のために特に重要である。こ
のような蛋白質は、例えばプロ−組織プラスミノーゲン
活性化物質(プロ−TPA)である。いわゆるプラスミ
ノーゲン活性化物質は科学的研究の対象となり、この研
究により血液凝塊(凝血)の溶解においてこの物質が臨
床的に適用可能であることが明らかに示された。血液凝
塊はフィブリンから成り、このフィブリンは酵素スロビ
ンの作用のもとでその可溶性前駆体であるフィブリノー
ゲンから形成される。これらは、ヒトの疾病及び死亡の
主要な原因の1つであり、そして副作用を伴わないでこ
れを溶解することは困難である。
【0007】哺乳動物の血漿は、血液凝塊中のフィブリ
ンを溶解することができる酵素系を含む。フィブリン分
解系の1つの成分は酵素、プラスミノーゲン活性化物質
からなり、この物質はプラスミノーゲン(プラスミンの
不活性なプロ酵素形)を蛋白質分解性酵素プラスミンに
転換する。次に、プラスミンが凝塊中のフィブリンネッ
トワームを破壊して可溶性産物を生成する。体の血栓溶
解能が、形成される血管内血栓を除去するのに不十分な
場合、例えば血栓塞栓症又は手術後合併症の患者におい
て、血栓溶解剤を外部的に投与して使用することが絶対
に必要である。
【0008】血栓溶解治療のために商業的に入手し得る
ヒトプラスミノーゲン活性化物質が2種類存在する。ヒ
トの尿又は培養腎細胞から分離されるセリンプロテアー
ゼであるウロキナーゼ、及びストレプトコッカスから得
られる細菌蛋白質であるストレプトキナーゼである。い
ずれの酵素もフィブリンに対して特異的に親和性ではな
いから、これらの物質による血栓溶解にはプラスミノー
ゲンの全身的活性化が伴い、この活性化により凝固蛋白
質の無差別的消化が生ずる可能性があり、そして治療中
における内出血(ヘモラージ)の危険性が有意に上昇す
る。
【0009】ウロキナーゼのそのほかの欠点はヒトに注
射した後の有効半減期が非常に短いことである。このた
め、効果的なフィブリン分解を達成するためには多量の
ウロキナーゼを投与する必要があり、このためにその作
用を遮断する中和抗体の生産が起こり、そして有害で死
亡の可能性を伴うアレルギー反応が生ずる。組織プラス
ミノーゲン活性化物質(以後、「TPA」と称する)と
呼ばれるその他の種類のプラスミノーゲン活性化物質が
ヒトのほとんどの組織に存在することが知られている。
おそらく、異る組織に由来するTPAは、その分子的性
質においては相互に異るが免疫的には類似しているであ
ろう。
【0010】これらは、その化学的及び免疫的性質の観
点から、フィブリンの存在下でフィブリン分解作用が非
常に強化される点において、そしてスロンビンに対する
親和性が非常に高い〔S.Thorsen等、Thro
mb.Diath.Haemorrh.28,65〜7
4(1972);D.C.Rijken及びD.Col
len,J.Biol.Chem.256,7035〜
7041(1981)〕。これらの物質はフィブリンに
対する親和性が高いためにTPAの作用が凝血の存在場
所に限定され、このために制御されない出血の危険が有
意に低下する。
【0011】次の系統はプラスミノーゲン、プラスミ
ン、フィブリン及び種々のプラスミノーゲン活性化物質
の関係を示す。
【0012】
【表1】
【0013】最近、凝固異常に罹患した2人の患者が、
ヒト黒色腫セルラインの培養液から分離したTPAによ
り成功裏に治療された〔W.Weimar等、The
Loncet(1981),1018〜1020〕。T
PAには2種類の分子形、すなわち活性2−鎖形及び不
活性1−鎖形がある〔前駆体TPA又はプロ−TPA;
D.C.Rijken及びD.Collen、前記引用
文;D.C.Rijken等、J.Biol.Che
m.257,2920〜2925(1982);及び
P.Wallen等、Progr.Fibrin,5,
16〜23(1982)〕。プロ−TPAは、フィブリ
ンとのインキュベーションにより、又はプラスミンの影
響で活性TPAに転換される。このプラスミンはこのカ
スケード状反応により自らの合成を触発する。
【0014】ヒト−TPAの分離源には、種々のヒト組
織(これらは商業的利用のために入手することはできな
い)、及び種々の程度でTPAを遊離することが知られ
ている種々のヒト腫瘍細胞が含まれる〔E.L.Wil
son等、Cancer Research 40,9
33〜938(1980);E.L.Wilson等、
Blood 61,568〜574(1983)〕。
【0015】最近出願された特許出願(EP4176
6、発明者D.Collen,D.C.Rijken及
びO.Matsuo)において、分子量72,000の
TPAが開示されており、このTPAはヒト黒色腫セル
ライン〔ボウエス(Bowes)〕から分離され、おそ
らくE.L.Wilson等〔Cancer Rese
arch 40,933〜938(1980)〕により
すでに記載されているTPAと同一であろう。
【0016】今までに記載されている他のセルラインと
同様に、このヒト黒色腫セルライン、ボウエスは、増殖
のために血清、例えばウシ胎児血清の存在を必要とす
る。しかしながら、血清は非常に高価であり、そして生
産されたTPAを汚染しそしてプロ−TPAの分離を妨
げる多量の蛋白性成分を含有している。このためTPA
又はプロ−TPAを得るために退屈で面倒な精製工程を
必要とする。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】この発明は従来から知
られているセルラインの欠点を克服し、そして血清又は
外来性巨大分子増殖因子の非存在下で増殖する新規なヒ
トセルラインの製造を可能にする。このような血清非依
存性セルラインにより分泌される新規な薬理学的に活性
な蛋白質、例えばヒト組織プラスミノーゲン活性化物質
及び特にプロ−活性化物質を提供することも又この発明
の目的である。
【0018】
【課題を解決するための手段】血清非依存性ヒトセルラインの製造 この発明は、血清、又は外来性巨大分子増殖因子、例え
ばインスリン、トランスフェリン、上皮増殖因子等の非
存在下で増殖する新規なヒトセルラインを用いる。この
発明の細胞は、血清又はフィブロネクチンの非存在下に
おいても培養容器に付着することができる。
【0019】この新規なセルラインの大きな利点は、血
清、例えばウシ胎児血清は非常に高価であるが故にこれ
を使用しないことによりコストが大幅に低下すること;
培地に血清の汚染がなくそして生成物が血清不含培地か
ら容易に精製され得るのでこの新規なセルラインにより
生産される生成物の精製が非常に安価で且つ簡単である
こと;及び血清中にプロテアーゼが存在するために血清
依存性セルラインによっては得られない(又は低い収量
でしか得られない)蛋白質を製造することが可能である
こと;である。
【0020】この新規な血清非依存性ヒトセルラインの
製造方法は、次の段階すなわち、(a)血清依存性ヒト
セルラインの培養物から血清含有培地を除去し、そして
これを血清不含培地で置換し、(b)付着細胞又は非付
着細胞に血清不含培地を供給し、そして(c)血清非依
存性セルラインが確立されるまで細胞を増殖せしめる、
段階を含んで成る。
【0021】この明細書において「血清不含培地」なる
語は血清のみならずいかなる巨大分子増殖因子も含有し
ない培地を示称する。従って、血清及び外来性巨大分子
増殖因子の両者非存在下で増殖するセルラインを「血清
非依存性セルライン」と称する。前記の方法において
「出発材料」として使用する血清依存性ヒトセルライン
は特に連続セルラインであり、そしてヒト新生物、例え
ば黒色腫、悪性奇形腫、肉腫、膠芽、髄膜腫、神経芽細
胞腫、脂肪腫、腺腫、乳癌又は膀胱癌に由来するもので
ある。好ましいセルラインはTPA及び/又はプロ−T
PAを生産するものである。
【0022】この発明の好ましい態様においては、ヒト
黒色腫セルライン、特にボウエス黒色腫セルライン(以
後、「ボウエスI」セルラインと称する)が使用され
る。ヒトの正常組織から誘導されたセルラインを「出発
材料」として使用することもできるが、これらは試験管
内で限られた寿命を有し(例えば、約50回細胞分裂を
行った後増殖を停止する)、この発明の観点からは重要
ではない。
【0023】血清不含栄養培地は、例えば、商業的に入
手し得る培地、例えば最少イーグル培地(MEM)、M
EM−スピンナー培地、ドゥルベコ変形イーグル培地
(DMEM)、又はロスウェル・パーク・メモリアルイ
ンスティテュート(Roswell Park Mem
orial Institute)培地(RPMI)−
1640である。他の同等の培地を使用することもでき
る。
【0024】血清不含培地は安定pHを維持するために十
分量の緩衝剤、例えば炭酸水素ナトリウムを含有するこ
とができる。培養中の細胞は、手を加えてない生物の一
体部分である精巧な免疫防御系を有しないので、抗生物
質、例えばペニシリン、ストレプトマイシン、タイロシ
ン等を加えて培養物の汚染を防止するのが好ましい。ヒ
ト正常細胞は通常表面に付着した場合のみ増殖するが、
腫瘍細胞は、懸濁状態でもしばしば容易に増殖する。固
体依存細胞用の実験室容器は当業界においてよく知られ
ている。これらには、「ミクロウェル」プレート、平底
ペトリ皿、種々の大きさのフラスコ、又はローラーボル
トと称され連続回転する円筒ビンがある。非依存性細胞
は、機械的に攪拌される、又は均一懸濁液が気体流によ
る混合によって維持される培養容器中に増殖せしめるこ
とができる。
【0025】例えば、この発明の方法は、コンフルエン
トの又はコンフルエント近い単層のヒトセルライン、例
えばヒト黒色腫セルライン、特に血清含有培地中で増殖
する黒色腫ボウエスIを含有する組織培養フラスコ中で
実施することができる。その後の工程は、二酸化炭素を
含有する湿潤雰囲気中、例えば約95%の空気と約5%
のCO2 から成る湿潤雰囲気中で、約35℃〜約40
℃、特に約37℃において行う。
【0026】血清含有培地を除去し、そして血清不含培
地、例えばRPMI−1640又はDMEMにより置換
する。数日後、細胞がフラスコの表面から離脱し始め、
そして培地中に自由浮遊する。数週間後、細胞の大多数
が血清又はいかなる増殖因子も含有しない培地中で死滅
しているであろう。細胞の生存を維持するために、血清
不含培地への適応期間中、条件調節された培地を培養物
に加える。条件調節された培地は、例えば24時間血清
不含培地に保持された仲間細胞の培養物(compan
ion cell culture)から収集すること
ができる。
【0027】条件調節された培地を含有する血清不含培
地は、例えば3〜7日間隔で、細胞数が十分に増加する
まで、例えば容器表面の約3分の1が覆われるまで取り
替えなければならない。この段階において条件調節され
た培地はもはや必要ではなく、細胞に血清不含培地のみ
を供給する。コンフルエント単層が形成されたとき、容
器を激しくたたくことにより、又はエチレンジアミン四
酢酸(EDTA)を用いてほとんどの細胞を表面から離
脱させ、そして生存を保証するのに十分に高い細胞濃度
において新たな培養フラスコに再接種するように留意し
ながらパッセージ(passage)を行う。
【0028】細胞の増殖、及びコンフルエンスにおける
細胞のパッセージを、細胞が安定な付着性単層として増
殖するようになるまで継続する。このようにして、例え
ば1〜6箇月、特に1〜3箇月かかって血清非依存性セ
ルラインが確立される。前記の方法に代えて、細胞密度
が十分に高い場合には、仲間の血清依存性細胞培養物か
ら収集した条件調節された培地を加えることなく血清非
依存性セルラインを確立することができる。この場合に
は、細胞が自らの培地を条件調節する。非付着細胞を除
去しないことにより細胞密度を高く維持することができ
る。
【0029】例えば前記のごとく、数日後、血清不含培
地中で大多数の細胞が組織培養容器から離脱し、そして
培地中に自由浮遊する。離脱した細胞は、それらが十分
に高い密度に維持される限り生存し続ける。付着はして
いないが生存している細胞を含有する血清不含培地を遠
心分離し、そして細胞ペレットを新鮮な血清不含培地に
入れ、そしてまばらな付着細胞を含有するフラスコに返
却すれば付着細胞が増殖を開始するであろう。この場
合、懸濁細胞は付着細胞と一緒になってそれ自体の培地
を条件調節する。
【0030】2〜3週間後、すでに懸濁状態にある細胞
は培養容器表面への付着を開始し、やがてこれらの細胞
は付着状態となり、そして一旦コンフルエント状態にな
った後、前記のごとく激しくたたくか又はEDTAを用
いてパッセージすることができるであろう。付着細胞の
存在下で「条件調節された培地」を調製する他の方法
は、血清不含培地の一部分、その約半分を新鮮な血清不
含培地により置換し、そしてこの操作を24〜72時間
毎に、十分に高い細胞密度が得られる(約3週間後)ま
で反復することから成る。次にこの細胞を、例えばED
TAを用いて、パッセージする。
【0031】第1パッセージにおいて、新鮮な血清不含
培地に、EDTA処理に先立って培養物から取り出した
約40%の条件調節された培地を補給する。この後、細
胞は条件調節された培地の非存在下で分裂を続けるであ
ろう。細胞密度は十分に高く、約30%、好ましくは約
60〜70%のコンフルエンシーであるべきである。細
胞密度が低い場合、例えば約20%のコンフルエンシー
の場合、又は懸濁培養の場合には約1×105 細胞/ml
の場合、細胞は増殖のために条件調節された培地を必要
とする。細胞密度が高い場合、例えば約60〜約70%
のコンフルエンシーの場合、又は懸濁培養の場合には約
2×105 〜5×105 細胞/ml又はこれ以上の場合、
条件調節された培地を添加しないで血清不含培地中で成
育しそして増殖するであろう。
【0032】血清非依存性セルラインは、例えば実験室
容器の内壁において付着培養物として、又は懸濁培養物
として増殖することができる。この発明はさらに、血清
不含培地において、特にこの発明の方法によって調製さ
れた場合に、増殖が可能である新規なヒトセルライン、
特にヒト黒色腫セルラインに関する。
【0033】この発明はさらに、この発明のセルライン
から得られ、そして血清不含培地において増殖すること
が可能な変異セルラインに関する。変異体は自然に形成
され、又はそれ自体公知の方法によって製造することが
できる。例えば、変異体は化学的な手段、例えば変異
剤、例えばN−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグ
アニジンもしくはマスタード油により、又は照射、例え
ば紫外線もしくはX線の照射により得られる。
【0034】この発明の好ましい血清非依存性セルライ
ン及び変異セルラインは、TPA及び/又はプロ−TP
Aを生産するセルラインである。この発明の新規なヒト
セルライン及び該セルラインから得られる変異セルライ
ンは、無限の寿命を有し、そしてもとの血清依存性セル
ラインと同様にして、例えば、生物学的に活性な化合
物、例えば蛋白質、例えばインターフェロン、抗原、脈
管形成因子(angiogenic factor)そ
して特にプラスミノーゲン活性化物質の商業的製造のた
めに、血清不含条件下で、あるいはハイブリドーマセル
ラインの製造のために使用することができる。
【0035】すでに述べたように、組織プラスミノーゲ
ン活性化物質を高レベルで分泌することが知られている
黒色腫セルライン・ボウエスI(EP41766参照)
を、この発明の方法の「出発材料」として使用するのが
好ましい。得られる血清非依存性の新規なセルライン
(以後、「ボウエスII」と称する)、特にその実質的に
純粋な培養物、及びこれらの製造方法も又この発明の対
象である。
【0036】この発明はさらに、ボウエスIIセルライン
から得られそして組織プラスミノーゲン活性化物質を分
泌することができる血清非依存性変異セルライン、及び
その製造方法にも関する。この新規な血清非依存性セル
ラインは、血清に依存性である対応する親セルラインと
多くの点で異る。例えば、ボウエスII細胞は、親細胞で
あるボウエスI黒色腫細胞とその形態学的外観において
異る。異相差顕微鏡で観察した場合、ボウエスII細胞に
おいては血清を奪われたボウエスI細胞における場合に
比べて有糸分裂が顕著に頻繁である。ボウエスII細胞に
血清を加えることにより顕著な形態学的変化が生ずる。
【0037】この発明の好ましい血清非依存性セルライ
ン、特にボウエスIIセルラインは、組織プラスミノーゲ
ン活性化物質を高レベルで分泌し、この物質は、親であ
る血清依存性セルライン、例えばボウエスIセルライン
に比べてプロ−活性化物質として多く存在する。TPA
及びプロ−TPAのほかに、この新規なセルラインは他
の薬理学的に価値ある物質を生産する。
【0038】例えばボウエスIIセルラインはそれ自体の
増殖因子及び腫瘍壊死因子を生産する。これらの蛋白質
及びその製造、並びに新規な血清非依存性セルライン、
特にボウエスIIセルラインから得られる収得液も又この
発明の対象である。血清非依存性ヒト細胞の培養及び培養液の収得 血清非依存性ヒト細胞は本質上上記のようにして増殖せ
しめることができる。例えば、ボウエスII細胞を、生存
を保証するのに十分な細胞密度において組織培養フラス
コに接種し、そして抗生物質を補給した血清不含培地、
例えばRPMI−1640中で、約35℃〜約40℃、
特に約37℃の温度において、約5%のCO2 を含有す
る空気の湿潤雰囲気下で増殖せしめる。収得液の回収
を、細胞が付着するとすぐに開始し、そして例えば24
時間の間隔で反復する。毎日の収得液の回収を、単層が
コンフルエンスとなり新鮮な培養容器へのパッセージが
必要となるまで継続することができる。
【0039】血清不含培地に培養されたボウエスII細胞
の増殖速度が非常に低く(親細胞であるボウエスI黒色
腫細胞の倍化時間が約1日であるのに対してボウエスII
細胞の倍化時間は6日である)、そして1本のフラスコ
から収得液を約3〜6箇月間にわたって収集することが
でき、このため相当な時間と努力が節約でき、そして液
の収集作業が容易になる。場合によっては、増殖因子、
例えばインスリンを培地に加えることによりボウエスII
細胞の増殖速度を上昇せしめることもできる。
【0040】ペトリ皿、組織培養フラスコ及び実験室的
研究に有用な他の容器は、表面に付着した血清非依存性
細胞の実際的な大規模培養のために十分大きな表面積対
容積の比率をもたらさない。大規模製造のために、当業
界において知られている種々の手段により面積対容積の
比率を増加せしめることができる。例えば、細胞をスポ
ンジ状ポリマー、薄層重層体、小粒ビーズ等の上で増殖
せしめることができる。
【0041】上記の方法に代えて、新規な血清非依存性
セルライン、例えばボウエスIIは懸濁して増殖せしめる
こともできる。懸濁培養に適する大型発酵槽は当業界に
おいてよく知られており、そして単細胞微生物用の発酵
槽に変更を加えることによって開発された。細胞を培地
中に均一に懸濁保持し、そして溶存ガス(例えば酸素)
を均等に分布せしめるために攪拌が必要である。この攪
拌は、常用のタービン攪拌機、海中プロペラ型攪拌機、
垂直に移動する振動ミキサー等を用いて行うことができ
る。細胞が損傷を受けるのを防止するために低速で攪拌
するのが好ましい。気体流を培養液に通すことによって
も均一攪拌を維持することができる。
【0042】血清非依存性ヒト細胞、例えばボウエスII
細胞から得られた収得液は、離脱した細胞及び細胞破片
を除去するために、遠心分離しなければならないだろ
う。細胞により分泌されたTPA、プロ−TPA及びそ
のほかの価値ある物質が容器の表面に吸着するのを防止
し、そして酵素活性を保存するために培地に非イオン性
洗剤を加えるのが好ましい。
【0043】好ましくは、非イオン性洗剤、例えばトリ
トン(Triton)X−100(商標)又はトゥイー
ン(Tween)80(商標)を、最終濃度が約0.0
1〜0.1%になるように加える。pH5.5〜6.0に
おいて最も高い活性が維持されるので、収得液を弱酸、
例えば低級アルカン酸、例えば酢酸により前記のpHに酸
性化し、その後で低温、例えば約4℃において48時間
貯蔵し、又は−20℃において長時間貯蔵することがで
きる。
【0044】収得液中のTPA、プロ−TPA及びその
他の価値ある物質の含量は、常用の技法を用いて測定す
ることができる。例えばTPA含量は 125I−フィブリ
ン測定、又は螢光測定により測定することができる。第
1に、プラスチックウェルの表面上の不溶性被覆物とし
て付着せしめた 125I−標識フィブリンからの放射線フ
ィブリン分解ペプチドのプラスミノーゲンに依存する放
出を経時的に測定する〔E.L.Wilson及びE.
Bowdle,Int.J.Cancer 22,39
0〜399(1978)参照〕。
【0045】第2に、適当な合成基質、例えばCbz-Gly-
Gly-Arg-AMC(AMCはアミノメチルクマリン残基で
ある)又はBoc-Val-Gly-Arg-AMCのアミド分解により
生ずる螢光の増加を測定する〔M.Zimmerman
等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
75,750〜753(1978)参照〕。125I−フ
ィブリン測定によりTPA及びプロ−TPAの両者の総
酵素活性が得られるのに対して、螢光測定によりTPA
活性のみを測定することができ、あるいはこれとは異
り、収得液をプラスミンで処理してプロ−TPAをTP
Aに転換した後TPA及びプロ−TPAの両者を測定す
ることができる。
【0046】上記のTPA測定を用いて、この発明に従
って得られる収得液はプロ−TPAを高い比率で含有す
ることを示すことができる。これはおそらく、使用した
培地にプロ−TPAをTPAに転換するプラスミン又は
他のプロテアーゼが欠けているためであろう。例えばボ
ウエスIIの培養により得られた収得液中にプロ−TPA
が多いことは、ボウエスI黒色腫細胞から得られる収得
液にプロ−TPAが少量含まれていることと対照的であ
る。
【0047】血清非依存性細胞から分泌された蛋白質の
分離と精製 血清非依存性細胞、例えばボウエスII細胞から得られた
培養液からの所望の蛋白質の分離、及びその精製は、原
則として蛋白質化学において共通な任意の適当な方法に
より、例えば、無機塩等を用いる分別沈澱、ゲル濾過、
例えば架橋デキストランもしくはアガロース上でのゲル
濾過、ゲル電気泳動又はクロマトグラフ的手段、例えば
吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィ
ーもしくはアフィニティークロマトグラフィーにより行
うことができる。TPA及びプロ−TPAの分離及び精
製のために、例えば次のような方法が用いられる。
【0048】◎ 亜鉛−キレート−アガロース、コンカ
ナバリンA−アガロース及びセファデックスG−150
(商標)によるクロマトグラフィー〔D.C.Rijk
en及びD.Collen,J.Biol.Chem.
256,7035〜7041(1981)参照〕。収得
液を亜鉛−キレート−アガロースカラムに通す。吸着さ
れた酵素をイミダゾール含有緩衝液により溶出する。得
られた溶液をコンカナバリンA−アガロースカラムに適
用する。溶出をメチルマンノシド及びKSCNで行うこ
とができる。最後の段階において、酵素をセファデック
スG−150(商標)カラムによりゲル濾過する。
【0049】◎ アフィ−ゲル・ブルー(Affi−G
el Blue)(商標)及びアミノベンズアミジン−
セファロース(商標)によるクロマトグラフィー〔L.
C.Gilbert及びJ.T.Wachsman,B
iochim.Biophys.Acta 704,4
50〜460(1982)参照〕。酵素を、アフィ−ゲ
ル・ブルー(商標)及びアミノベンズアミジン−セファ
ロース(商標)に次々と吸着せしめる。アルギニンを含
有する緩衝液により脱着を行う。
【0050】◎ 不溶性マトリクス、例えばデキストラ
ンに共有結合的に固体された可溶性フィブリン断片から
なる支持体上での、TPA及びプロ−TPAの特異的親
和性に基く選択吸着〔ヨーロッパ特許出願No. 2386
0参照〕。吸着された酵素はpH4.2の酢酸塩緩衝液に
より溶出することができる。 ◎ 不溶性マトリクス、例えばアフィ−ゲル(商標)又
はセファデックス(商標)に結合した抗−TPA抗体、
モノクローナル抗−TPA抗体のイムノアフィニティー
カラムによるクロマトグラフィー。
【0051】◎ DE−3セファロース(商標)により
アフィニティークロマトグラフィー。豆科植物エリスリ
ナ・ラティシマ(Erythrina latissi
ma)の種子はDE−3と称されるトリプシン阻害物質
を含有する〔F.J.Toubert等、Hoppe−
Seyler’s Ziitshr.Physiol.
Chem.302,531〜538(1981)〕。D
E−3も又TPA活性を阻害することができることが見
出されている。
【0052】精製したDE−3阻害物質を、標準的方法
を用いて不溶性マトリクスに結合せしめることができ
る。媒体中のTPA及びプロ−TPAを吸着せしめそし
てチャオトロピック・エーゼント(chaotropi
c agent)例えばKSCNを含有する緩衝液によ
り溶出することができる。 ◎ SDSを含有するポリアクリルアミドゲル(SDS
−PAGE)による電気泳動。この方法は特に分析目的
に、又は分子量の測定のために使用される。
【0053】十分に純粋な生成物を得るために、単一の
方法又幾つかの逐次精製段階を選択することができる。
さらに、追加の精製段階、例えば適当な緩衝液合物中で
の透析、逆相HPLC等を必要とする場合があろう。例
えば、第1段階として、収得液を亜鉛−キレート−アガ
ロース、コンカナバリンA−アガロース及びセファデッ
クスG−150(商標)を用いるクロマトグラフィーで
処理し(この段階は大容量の収得液中に存在する目的蛋
白質を濃縮するためにも役立つ)、そして最後に、得ら
れた濃縮蛋白質をアフィニティ−クロマトグラフィーに
より精製することができる。
【0054】この発明の好ましい態様においては、血清
非依存性ヒト細胞、例えばボウエスII細胞から得られ
た、TPA及びプロ−TPAを含有する収得液を遠心分
離して完全細胞及び細胞破片を除去し、そして次に室温
において、TPA及びプロ−TPAに対して選択的なア
フィニティ試薬が結合している不溶性マトリクス、例え
ばDE−3阻害物質が結合しているBrCN活性化セフ
ァロース(商標)から成るカラムに通す。
【0055】このカラムを洗浄した後、約5.5〜6.
0のpHを有しそして約1.4〜約20モル、好ましくは
1.6モルのチャオトロピック・エーゼント(chao
tropic agent)、例えばKSCNを含有す
る緩衝液、例えば燐酸緩衝塩溶液によりカラムを処理す
ることにより、吸着されたTPA及びプロ−TPAを溶
解する。この方法に代えて、ベンズアミジン又はアルギ
ニンを脱着剤として選択することもできる。
【0056】他の方法においては、モノクローナル抗T
PA抗体を例えばアフィ−ゲル(商標)に結合せしめる
ことによって調製したモノクローナル抗体カラムを用い
てクロマトグラフ処理することによりTPA及びプロ−
TPAを分離する。得られた精製溶液はTPA及びプロ
−TPAを含有する。プロ−TPAを全く含有しないT
PAを製造するために、プロ−TPAを酵素的に、例え
ばプラスミン又はプロ−TPAに対してこれと同等の作
用をする酵素の作用により、TPAに転換する。
【0057】この発明の好ましい態様においては、プロ
−TPAを、TPAを含有しない実質上純粋な形で分離
する。プロ−TPAは真のプロ−酵素である。すなわち
このものはTPAの酵素的に不活性な形である。プロ−
TPAはTPAよりよくフィブリンに吸着し、そしてそ
のために、フィブリン分解を行う場合にTPAより選択
的である。なぜならプロ−TPAはまずフィブリンに結
合し、そしてそのあとでのみTPAに転換されるのに対
して、TPAは、局在した作用が望まれるフィブリンに
おいてではなく血流中で若干のプラスミノーゲンを活性
化する可能性が多少存在するからである。
【0058】実質上TPAを含有しないプロ−TPAを
製造するためには、精製過程において、プロテアーゼ阻
害物質、例えばアプロチニン又は塩基性膵臓トリプシン
阻害物質を存在せしめることにより、存在しそしてプロ
−TPAを(部分的に)TPAに転換するであろう少量
のプロテアーゼを阻害するのが好ましい。次に、選択的
アフィニティー試薬、例えばDE−3を含有するカラム
上で、TPAのみに選択的に結合しそしてプロ−TPA
には結合しない阻害剤、例えばジイソプロピルフルオロ
ホスフェート又はニトロフェニルグアニジノベンゾエー
トの存在下で最終精製を行う。これらの試薬は、TPA
がアフィニティーカラムに吸着するのを防止する。従っ
て、結合TPAはDE−3カラムを通過し、他方プロ−
TPAはカラムに吸着し、そして前記のようにして溶出
され得る。従って、TPA、プロ−TPA又はこれらの
混合物を生産することができる血清非依存性ヒト細胞、
又はその変異体、例えばボウエスII細胞を血清不含培地
中で培養し、そして所望の蛋白質を収得液から分離し、
そして所望により、蛋白質の混合物を個々の化合物に分
離し、又は個々の化合物に転換することを特徴とする、
TPA、プロ−TPA又はこれらの混合物を製造する方
法を提供することもこの発明の目的である。
【0059】特にこの発明は、得られた混合物中に存在
するプロ−TPAを酵素的にTPAに転換することを特
徴とする、プロ−TPAを含有しないTPAの製造方法
を提供する。特にこの発明は、分離及び精製過程にプロ
テアーゼ阻害物質を存在せしめ、そして最終精製をTP
Aを選択的に阻害する阻害物質の存在下で行うことを特
徴とする、TPAを含有しないプロ−TPAの製造方法
を提供する。
【0060】例えば前記の方法に従って、血清非依存性
ヒト細胞、特にボウエスII細胞から得られるTPAとプ
ロ−TPAとの混合物、並びに実質上純粋な形のTPA
及びプロ−TPAは、新規でありそしてこの発明の対象
である。医薬製剤 この発明に従って、例えば培養したボウエスII細胞から
得られる新規な蛋白質、特にTPA及びプロ−TPA
は、価値ある薬理学的性質を示す。すなわち、ボウエス
II細胞からのTPA及びプロ−TPAは、公知のプラス
ミノーゲン活性化物質と同様に、ヒトにおいて、血栓
症、又はプラスミノーゲンの活性化を介して局所的フィ
ブリン分解活性又は蛋白質分解活性を得ることが好まし
い他の状態、例えば動脈硬化、心筋梗塞及び脳梗塞、静
脈血栓症、血栓塞栓症、手術後血栓症、血栓性静脈炎、
及び糖尿病性血管疾患の予防及び治療に使用することが
できる。
【0061】この発明はさらに、医薬として有効な量の
活性成分(特にTPA、プロ−TPA又はこれらの混合
物)を、非経口的、例えば筋肉内、皮下又は腹腔内投与
に適し、そして活性成分と有害な相互作用を行わない無
機又は有機の固体又は液体の医薬として許容される担体
と共に含んで成る医薬に関する。これらは特に注入溶
液、好ましくは水性溶液又は懸濁液であり、使用前に、
例えば、活性成分のみを、又は担体、例えばマンニトー
ル、ラクトース、グルコース、アルブミン等と共に含有
する凍結乾燥品から調製することができる。この医薬は
無菌化することができ、そして所望により、助剤、例え
ば防腐剤、安定剤、乳化剤、溶解剤、緩衝剤及び/又は
浸透圧調整塩を含有することができる。無菌化は小孔サ
イズ(0.45μm以下の直径)の濾材を通す無菌濾過
により行い、所望によりこの後で凍結乾燥することがで
きる。無菌貯蔵を助けるために抗生物質を加えることも
できる。
【0062】この発明の医薬は単位投与型、例えば単位
投与量当り、1〜2000mgの医薬として許容される担
体及び単位投与当り約1〜20mg、好ましくは約3〜1
5mgの活性成分(TPA、プロ−TPA、又はこれらの
混合物)を含んで成る単位投与型に配合する。病気のタ
イプ並びに患者の年齢及び状態に依存して、約70kgの
患者の治療のための日用量は、24時間当り3〜15m
g、好ましくは5〜10mgである。
【0063】この発明はさらに、この発明の生物学的に
活性な蛋白質を医薬として許容される担体と混合するこ
とを特徴とする医薬の製造方法に関する。ヒトの予防的
及び治療的処置のための新規な蛋白質の使用もこの発明
の対象である。凝血をこの発明に従って得られたTP
A、プロ−TPA、又はこれらの混合物に暴露すること
から成る、ヒトにおける凝血溶解方法もこの発明の対象
である。
【0064】この発明のTPAは又、試験管内において
もその活性を表わす。従ってこれらは、例えば洗浄剤又
は浄化剤において、プラスミノーゲンと共にフィブリン
分解剤として使用することができる。この発明は又、こ
の発明の方法によって製造されるすべての蛋白質に関す
る。この発明はまた、この明細書に記載した方法に従っ
て製造されるすべての血清非依存性ヒトセルライン、例
えば黒色腫セルラインに関する。
【0065】この発明はさらに、この明細書に記載した
血清非依存性ヒトセルライン、例えば黒色腫セルライン
から得られたすべての生物学的に活性な化合物に関す
る。この発明はさらに、この明細書に記載した血清非依
存性ヒトセルラインの、血清不含条件下での生物学的に
活性な化合物の製造のための使用に関する。この発明は
又、血清不含条件下で生物学的に活性な化合物を製造す
るためのボウエスII培養物の使用に関する。
【0066】この発明は特に、例に記載した蛋白質及び
その製造方法に関する。次に例によりこの発明をさらに
詳細に説明するが、これによりこの発明の範囲を限定す
るものではない。実験の部 実験の部で使用する略号は次の意味を有する。
【0067】
【表2】
【0068】例1血清非依存性セルラインボウエス
(Bowes)IIの確立 (a)ボウエスI細胞から収集した条件調節された培地
を用いるボウエスIIセルラインの確立 ヒト黒色腫セルライン〔Bowes−RPMI727
2;D.C.Rijken及びD.Collen,J.
Biol.Chem.256,7035〜7041(1
981)に記載〕を、ニューヨーク、ロックフェラー大
学Dr.E.Reichより得た。
【0069】このセルラインを、組織培養フラスコ(1
50cm2 、コスタール)中で、37℃において、空気9
5%及びCO2 5%の湿潤雰囲気下で培養する。炭酸水
素ナトリウム(2g/l)、抗生物質(ペニシリン30
0μg/ml、ストレプトマイシン200μg/ml、タイ
ロシン10μg/ml)、及び10%熱不活性化(56
℃、30分)ウシ胎児血清(FCS)を補給したRos
well Park Memorial Instit
ute(RPMI)培地−1640(ギブコ)中で付着
単層として増殖せしめる。
【0070】細胞の付着単層を有する組織培養フラスコ
1個を選択する。コンフルエンスにおいて、血清含有培
地を除去し、そして抗生物質(前記参照)を補給したR
PMI−1640培地50mlにより置換する。この培地
にはそのほかの添加物は含めない。細胞を、37℃にお
いて、5%のCO2 を補給した湿潤空気中に保持する。
培地を24時間毎に取り代える。最初細胞は健全であり
そして付着したままである。
【0071】12日後、細胞は培養容器から離脱しそし
て自由浮遊を始める。14日後、大多数の細胞が離脱
し、そして生存細胞の小部分のみがなおフラスコに付着
し続ける。離脱細胞を含有する培地を除去する。長時間
にわたって血清を奪われた黒色腫細胞のまばらな付着培
養物を、同量のRPMI−1640により稀釈した「条
件調節された培地」から成る新鮮培地50mlにより覆
う。「条件調節された培地」は次のようにして調製す
る。
【0072】コンフルエントな、血清依存性黒色腫細胞
Bowes−RPMI7272から血清含有培地を除去
し、そしてRPMI−1640培地のみにより置換す
る。24時間後、この培地を回収し、そして2000rp
m で5分間遠心分離し、そして0.45μmのミリポア
フィルターを通す。こうして得られた溶液を「条件調節
された培地」と称し、そしてただちに同量のRPMI−
1640により稀釈する。
【0073】新鮮なRPMI−1640により稀釈した
「条件調節された培地を、4〜5日の間隔で3箇月にわ
たり培養物に加える。この時以後、細胞数が相当に増加
し、そして血清不含培地はもはや「条件調節された培
地」を必要としない。そして培養物にRPMI−164
0培地のみを供給する。こうして得られた血清非依存性
細胞を組織培養フラスコ(150cm2 、コスター)中で
培養し、そして生存を保証するため約106 細胞/ml培
地の密度で接種しなければならない。細胞は典型的に
は、5×107 細胞/50ml RPMI−1640/1
50cm2 フラスコの密度で接種する。細胞は、血清不含
培地中で非常にゆっくり増殖し、そして約6日の世代時
間を有する(血清依存性セルラインBowes−RPM
I7272の世代時間約24時間と比較)。
【0074】コンフルエンスにおいて、フラスコを激し
くたたいて付着細胞を培地中に離脱せしめることにより
パッセージを行う。この機械的方法により離脱した細胞
を約106 細胞/mlの濃度でRPMI−1640に懸濁
し、そして新たな組織培養フラスコに再接種するのに使
用する。たたいても離脱しない細胞には新鮮なRPMI
−1640培地を供給する。このようにして、合計5箇
月間かけて、血清非依存性セルラインボウエスIIの培養
を確立する。
【0075】(b)ボウエスI細胞から収集した条件調
節された培地の非存在下でのボウエスIIセルラインの確
15%のウシ胎児血清及び10%のDMSOを含有する
血清依存性黒色腫セルラインボウエス(Bowes)−
RPMI7272(2.5×106 細胞/mlDMEM
中)の凍結ストック4mlを解凍し、そしてこれを、75
cm2 の組織培養フラスコ中15mlのあらかじめ加温した
血清不含DMEMに加える。この細胞を、5%のCO2
を補給した湿潤空気中で37℃にて一夜インキュベート
する。
【0076】この期間の後、非付着細胞を含有する培地
全体を除去し、そして、15mlの血清不含培地で置換す
る。顕微鏡下で細胞が粒状化するまで(24〜72時
間)インキュベーションを続け、この時点で50%の培
地を除去し、そして新鮮な血清不含DMEMで置換す
る。この操作を2〜3日に1回繰り返し、必要であれば
(細胞の顕微鏡的形状、培地のpHの変化)培地の合計容
積を徐々に30mlまで増加する。
【0077】60〜70%のコンフルエンスに達したと
き(約3週間)、血の表面から細胞を離脱せしめるため
に0.02%のEDTAを用いながら同じ大きさの2個
の新たなフラスコに細胞をパッセージする。最初のパッ
セージにおいて、血清不含培地に、EDTA処理に先立
って培養物から取り出した培地を40%補給する。この
時点で血清非依存性セルラインが確立され、そして細胞
は、十分に高い細胞密度、すなわち少なくとも30%の
コンフルエンシーに維持されれば、条件調節された培地
の非存在下で分裂を続けるであろう。例2ボウエスII細胞の液中培養 組織培養フラスコ中の血清不含培地RPMI−1640
中で増殖したボウエスII細胞を、フラスコを手で激しく
たたくことによって離脱せしめ、一緒にして2×105
細胞/mlを含有する0.6lの懸濁液を得、そして蒸気
殺菌した3lのガラス容器に入れる。細胞懸濁物を機械
的攪拌機によりゆっくり(40r.p.m.)攪拌する。温度
を37±0.1℃に調節し、そして5%のCO2 を含有
する空気を0.2l/分の速度で表面通気することによ
り酸素を供給する。
【0078】純粋な空気に戻すことによりpHが6.9よ
り低くならないようにする。約1週間の最初の適応期間
中、新鮮な血清不含培地を加えることによりグルコース
の涸渇を防止する。最終培養容積を1lとする。細胞密
度が3〜4×105 細胞/mlに達した時、培養液の定期
的取出しを開始する。2〜4日ごとに三時間攪拌を停止
して生存細胞のほとんどを沈澱せしめ、そして上方50
%のスペント培地を取り出し、そして新鮮な血清不含培
地で置換する。収得液を2000rpm (〜300G)で
5分間遠心分離して完全細胞及び細胞破片を除去する。
この溶液を、トリトンX−100(商標)を最終濃度
0.1%まで加えることによって安定化し、そして酢酸
でpH5.5〜6.0として後−20℃にて貯蔵する。例3組織培養フラスコ中でのボウエスII細胞の培養及
び収得溶液の回収 血清非依存性セルラインボウエスIIを、抗生物質(例1
参照)を補給した50mlのRPMI−1640に、37
℃,95%の空気と5%のCO2 とから成る湿潤雰囲気
中で、5×107 細胞/150cm2 組織培養フラスコ
(コスター)の密度で接種する。
【0079】細胞が付着したとき、細胞から培地を回収
し、そして抗生物質補充した新鮮なRPMI−1640
により置換する。血清不含収得液の回収を24時間の間
隔で、単層のコンフルエンスがパッセージを必要とする
まで反復する。約5週間後にコンフルエンスに達する。
パッセージは例1に記載したのと同様にして行う。収得
液は例2に記載したのと同様にして処理する。例4収得溶液中のTPA及びプロ−TPAの含量の測
TPA及びプロ−TPAを含有する収得液を既知比活性
3H−DFP(ジイソプロピルフルオロホスフェー
ト)で処理する。インキュベーションの後、ラベルされ
た酵素を回収し、そして沈澱によって未反応の放射性D
FPを除去し、そしてセリンプロテアーゼに関して文献
中に推奨されている方法〔J.A.Cohen等、Me
thods in Enzymology,Vol.X
I,868頁(1967)〕によりトリフルオロ酢酸を
用いて洗浄する。
【0080】活性化物質のこの活性部位力価測定によ
り、血清非依存性ボウエスIIから集めた収得液は、1l
当り約10〜20nモルの合計TPAを含有しているこ
とが確定される。ボウエスI細胞及びボウエスII細胞に
よる連続する4日間にわたる合計TPA(TPA及びプ
ロ−TPA)の放出は次のようにして測定することがで
きる。
【0081】75cm2 の組織培養フラスコ(1.3×1
5 細胞/cm2 ;20ml/フラスコ)中に増殖したボウ
エスI黒色腫細胞からの収得液、又は150cm2 フラス
コ(4×105 細胞/cm2 ;50ml/フラスコ)中に増
殖したボウエスII細胞からの収得液を、24時間ごとに
4日間にわたって回収する。プラスミノーゲン活性化物
質の活性を 125I−フィブリン測定(下記)により測定
する。
【0082】TPAの放出は、ボウエスII細胞の場合4
日間にわたって一定であり、他方、ボウエスI黒色腫細
胞の場合、TPA活性は最初の3日間にわずかに上昇す
るが4日目には低下する。この時点までに細胞の多くは
表面から離脱し、そして付着を回復するために10%の
FCSを補充したRPMIを加えなければならなかった
(第1表参照)。
【0083】125I−フィブリン測定〔E.L.Wil
son及びE.Dowdle,Int.J.Cance
r 22,390〜399(1978)〕において、プ
ラスチック製組織培養ウェルの内部底表面上の薄層とし
て放射性 125I−フィブリノーゲン/フィブリンを付着
せしめることにより固相支持体を得る。測定すべき収得
液の試料をこのウェルに加え、そしてプラスミノーゲン
に依存する放射能の可溶化を時間の関数として測定しT
PA活性を求める。 125I−フィブリン測定によってT
PA及びプロ−TPAの両者の活性が測定されるから、
第1表においてTPA活性と称するのは全酵素の活性を
示す。
【0084】
【表3】
【0085】さらに、血清依存性ボウエス黒色腫細胞及
び血清非依存性ボウエスII細胞のそれぞれの培養液のT
PA及びプロ−TPAの個々の含有量を測定する。ボウ
エスI黒色腫細胞を10%のFCSを含有する2mlのR
PMI中にレプリケート35mm皿当り5×105 細胞で
プレートする。24時間後、培地を血清不含RPMIで
置換し、そして連続3日間にわたって24時間収得液を
回収する。各24時間の終点においてプレート当りの細
胞数を計測する。
【0086】ボウエスII細胞は、2mlのRPMI中に3
5mmの皿当り3×106 細胞でプレートする。プラスミ
ノーゲン活性化物質の活性を、基質としてCbz-Gly-Gly-
Arg-AMCを用いる螢光測定により測定する。TPAの
直接アミド分解作用を、螢光源性物質からのアミノメチ
ルクマリン(AMC)のアミド分解による放出の結果で
ある455nmにおける螢光の増加を追跡することによっ
て螢光法的に測定する〔M.Zimmerman等、P
roc Natl.Acad.Sci.USA 75
750〜753(1978)〕。IFUはアミド分解測
定において1分間に10pモルの基質を加水分解する酵
素の量を表わす。結果を第2表に示す。
【0087】
【表4】
【0088】注(a)全TPA活性は、295μlの収
得溶液を5μlのプラスミン(0.1mg/ml)と共に室
温にて60分間インキュベートした後に測定する。測定
のためにプラスミンをトラシロール(Trosylo
l)(商標)により阻害する。 (b)プロ−活性化物質(プロ−TPA)の量は全活性
からプラスミンを用いないで測定した活性を差引くこと
により算定する。
【0089】第2表からわかるように、血清非依存性ボ
ウエスII細胞により分泌されたTPAの約10%が活性
酵素形であり約90%がプロ−酵素(プロ−TPA)の
形である。これに対して、血清依存性ボウエスI黒色腫
細胞から収集した培地は90%のTPAと約10%のプ
ロ−TPAを含有する。例5TPA及びプロ−TPAの回収及び精製 (a) DE−3セファロース(商標)カラムの調製エ
リスリナラティシマErythrina lati
ssima)から得られた精製DE−3阻害物質〔F.
J.Joubert等、Hoppe−Seyler s
Zeischr.Physiol.Chem.30
,531〜538(1981)〕26mgを、製造者の
指示に従ってシアノゲンブロミド活性化セファロース4
b(商標)(ファルマシア社)5mlに結合せしめる。こ
のマトリクスを、0.4M HCl0.1%のトリトン
X−100(商標)及び0.02%のナトリウムアジド
を含有する燐酸緩衝塩(PBS)pH7.4により平衡化
する。次にこのマトリクスを5mlのカラムに充填する。
【0090】(b) DE−3セファロース4bによる
TPA及びプロ−TPAを含有する収得液のクロマトグ
ラフ的精製 血清非依存性ボウエスII細胞から得られた収得液(例3
参照)2lに、0.4MのNaCl及び0.1%のトリ
トンX−100を加え、そして0.45μmの膜(ミリ
ポア)を通して濾過する。次に収得液をDE−3セファ
ロースカラム(上記参照)に、45ml/時の流速で室温
において適用し、そして流出液を廃棄する。収得液の全
量を通した後、カラムを、0.4M NaCl及び0.
1%のトリトンX−100を含有するPBS約50mlに
より洗浄する。
【0091】次に、吸着した蛋白質を1.6M KSC
N,0.4M NaCl及び0.1%のトリトンX−1
00を含有するPBSを用いて溶出し、そして4℃にて
2mlの分画を集める。各分画の蛋白質含量を、280nm
におけるUV吸収を測定することにより決定する。吸着
した蛋白質がするどいピークとして溶出するのが観察さ
れる。最大UV吸収及び 125I−フィブリン測定におけ
る最大フィブリン分解活性を有する分画を集めて8mlの
溶液を得、これを−20℃にて貯蔵する。この溶液はカ
ラムに適用した全活性の約70〜80%を含む。低い活
性を含む分画は別に集める。両溶液の合計回収活性は通
常90〜100%である。
【0092】前記の溶液から試料を採取する。トリクロ
ロ酢酸を最終濃度10%になるように加えることにより
蛋白質を沈澱せしめ、そしてSDS−ポリアクリルアミ
ドゲル電気泳動にかける。電気泳動図は、既知分子量を
有する同時電気泳動標識蛋白質を用いるWeber及び
Osborneの方法〔J.Biol.Chem.24
,4406〜4412(1969)〕に従って測定し
た場合、約73,000ダルトンの分子量を有する蛋白
質の単一バンドを示す。
【0093】一緒にした溶液のTPA及びプロ−TPA
含量を、基質としてCbz-Gly-Gly-Arg-AMCを用いる螢
光測定(例4参照)により測定する。プラスミンと共に
インキュベートし、プラスミンをトラシロールにより阻
害した後に全TPA活性を測定する。全活性からプラス
ミン活性化を行わないで測定した活性を差引くことによ
りプロ−TPAの量を算定する。ボウエスII細胞からの
プラスミノーゲン活性化物質を精製することにより、お
よそ同量ずつのTPA及びプロ−TPAの混合物が得ら
れることが確認される。ボウエスII細胞からの未処理収
得液においてはTPAが10%、プロ−TPAが90%
の比率であり(例4、第2表参照)、プロ−TPAは分
離の過程で部分的に活性酵素に転換される。
【0094】血清非依存性ボウエス(II)セルラインか
ら得られた収得液を低濃度のウシ胎児血清(0.01
%)で処理することによりプロ−TPAがTPAへ転換
する。これはおそらく、FCS中にプラスミンが存在す
るためであろう。(c) TPA及びプロ−TPAを含有する収得液の、
DE−3セファロース4bによる、蛋白質分解酵素阻害
物質の存在下でのクロマトグラフ的精製 血清非依存性ボウエスII細胞から得られた収得液のクロ
マトグラフィーを例5bに記載したのと同様にして行
う。但し、この方法において、0.1KIU /mlの塩基性
膵臓トリプシン阻害剤を存在せしめる。
【0095】基質としてCbz-Gly-Gly-Arg-AMCを用い
る螢光測定により、精製溶液中のTPA及びプロ−TP
A含量を測定する。TPAの90%がプロ−酵素形であ
り、そして10%が活性形である。従って、精製過程に
おけるプロ−TPAからTPAへの転換がBPTIによ
り阻害される。例6精製したTPA標品中における1鎖プロ−TPA
の存在の証明 血清非依存性セルラインボウエスIIから得られた収得液
を、例5cに記載したのと同様にしてDE−3セファロ
ースを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより
精製する。得られた精製溶液中、TPAの約90%がプ
ロ−酵素形であり、そして約10%が活性酵素形であ
る。このことはプラスミン処理の前後におけるアミド分
解測定により判断される。溶液をT−T(0.1)中に
透析する。
【0096】この溶液の試料を同量のPBS、又は5μ
g/mlのプラスミン含有PBSと混合する。20℃にて
16時間インキュベートした後、SDSを最終濃度0.
1まで加え、そして6%のTCAにより蛋白質を沈澱せ
しめる。もとの酵素溶液の試料200μlからの沈澱を
アセトンで洗浄し、そして1%のSDS及び10%のグ
リセリンを含有する0.06M Tris−HCl pH
6.8溶液20μlに溶解する。必要であればこの段階
において、これらの試料を、2μlの1MのDTTを添
加しそして37℃にて30分間インキュベートすること
により還元する。
【0097】次にすべての試料を1分間煮沸し、そして
各々の20μlを、0.1%のSDSを含有する5〜1
5%のポリアクリルアミド平板ゲル中で電気泳動する。
電気泳動した後、クーマシー・ブリリアントブルー(C
oomassie brilliant blue)
(商標)によりゲルを染色し、そして通常通り脱色す
る。電気泳動トラックには(a)分子量標識、(b)未
処理未還元TPA溶液、(c)未処理還元TPA溶液、
及び(d)プラスミン処理未還元TPA溶液を含める。
【0098】トラック(b)は分子量約73,000の
唯一の蛋白質バンドを示す。還元条件下(トラックc)
においてもほとんどのTPAが7300ダルトン領域に
移行する。しかしながら、これ以外の弱いバンドが3
5,000ダルトン領域に観察される。プラスミン処理
及びDTTを用いる還元により73,000ダルトンの
蛋白質が、それぞれ見かけ上35,000ダルトン及び
38,000ダルトンの分子量を有する2つのサブユニ
ットに転換される。
【0099】これらの実験により、73,000ダルト
ンの分子量を有する単鎖プロ−TPAが、プラスミン処
理によりS−S連結された2鎖形(TPA)に転換され
ることが証明される。次に、TPAが還元条件下で2つ
のサブユニットに開裂する。 例7プロ−TPAの酵素活性の測定 T−T(0.1)中全活性(TPA及びプロ−TPA)
約20FU/mlを含有するTPA標品の試料(500μ
l)を、5mM DFPの存在下(a及びb)又は非存在
下(c及びd)で、20℃にて60分間インキュベート
する。H.S.Penefsky〔J.Biol.Ch
em.252,2891〜2899(1977)〕の方
法に従って、反応混合物の試料100μlを、T−T
(0.1)で平衡化したセファテックスG25を充填し
た1mlのカラムを通して遠心分離することにより遊離の
DFPを除去する。
【0100】これらの試料に3μlの0.5mg/mlプラ
スミン(b及びd)又は3μlのPBS(a及びc)を
加える。次にこれらの溶液から50μlずつの試料を採
取し、10μlのBPTI(1000KIU /ml)に加え
てプラスミン活性を阻害する。各試料のアミド分解活性
を螢光測定により決定する。結果を第3表に示す。
【0101】
【表5】
【0102】試料は17.48FU/mlの全TPA含量を
有し(d)、この内6.25FU/mlが活性酵素形(c)
として存在する。活性酵素はDFPによる処理によって
検出できないレベルまで阻害される(a)。DFPによ
り処理した後プラスミンと共にインキュベートすること
により活性酵素が再生成し、このことはプロ−TPAが
DFP処理に対して耐性であり、そして測定しうる酵素
活性を有しないことを示している。例8TPAからのプロ−TPAの分離 例5cに記載した方法により得られたTPA(10%)
及びプロ−TPA(90%)から成る溶液を、0.1%
のトリトンX−100を含有する0.1M Tris・
HClによりpH8.0に調整し、そしてDFP濃度を1
mMとする。37℃にて4時間インキュベートした後、こ
の混合物を5mlのDE−3セファロースカラム(例5a
参照)に通す。不可逆的に阻害されたTPA含有する溶
出液を廃棄する。
【0103】カラムを、0.4M NaCl及び0.1
%のトリトンX−100を含有する6カラム容量のPB
Sにより洗浄し、そして次に例5bに記載したようにし
て、1.6M KSCN,0.4M NaCl及び0.
1%のトリトンX−100を含有するPBSにより溶出
する。溶出液は実質上純粋な形でプロ−TPAを含有
し、基質としてCbz-Gly-Gly-Arg-AMCを用いる螢光測
定においてアミド分解活性は検出されない。プロ−TP
Aを活性酵素に転換するプラスミンで処理することによ
り、アミド分解活性及びフィブリン分解活性を再度生成
せしめることができる。例9不溶化されたフィブリンへのTPA及びプロ−T
PAの結合 異なる比率でTPA及びプロ−TPAを含有する5種類
の試料を、例5cに記載した方法により、又はこの方法
により得た溶液中のプロ−TPAを部分的にTPAに転
換することにより得る。これらの試料の活性TPA及び
プロ−TPAの含有量を、例4に記載したように、プラ
スミン処理の前後における螢光測定の結果から決定す
る。
【0104】次にこれらの試料をT−T(0.1)中に
稀釈して、その0.2mlが2μgのプラスミノーゲンの
存在下で、リンブロウェルの底に被覆された 125I−フ
ィブリンの約30〜50%を1時間で遊離せしめるよう
にする。次に、これらの試料のアリコート(0.2ml)
を、 125I−フィブリン(30μg;100,000cp
m )を被覆したリンブロウェル4個に加える。0℃にて
1時間インキュベートした後、4個の内の2個のウェル
をT−T(0.1)により3回洗浄することにより未結
合TPA蛋白質を除去する。
【0105】2μgのプラスミノーゲン及び80μgの
BSAを含有するTris・HClpH8.0溶液0.3
mlを加えた後、1時間で可溶化する 125I−フィブリン
の量として結合した活性を測定する。ウェルに加えた全
TPA活性は、2μgのプラスミノーゲン及び80μg
のBSA(0.3mlの同じ緩衝液)を洗浄してないウェ
ルに加えた後、1時間で可溶化された 125I−フィブリ
ンの量として測定する。
【0106】結果を第4表に示す。
【0107】
【表6】
【0108】第4表は、TPA標品がプロ−活性化物質
形である場合に、全TPA酵素のより多くの部分が不溶
化フィブリンに結合することを示す。例10非経口的投与のための医薬 例5b,5c又は8に記載した方法により得られたTP
A及び/又はプロ−TPA含有溶液を、0.01%のト
ウイーン80を含有する0.3モル塩化ナトリウム溶液
に対して透析し、そして−80℃において貯蔵する。
【0109】投与に先立って、濃度を75μg/mlの全
TPA(すなわち、TPA、プロ−TPA、又はTPA
+プロ−TPA)、及び0.3M NaClに調整す
る。この溶液を、0.22μmのメンブランフィルター
を通して濾過することにより無菌化する。この方法は、
非経口投与、例えば静脈内投与のためのTPA溶液、プ
ロ−TPA溶液、又はTPA+プロ−TPA溶液を調製
するのに適当である。例11血清非依存性セルラインボウエスIIの上昇した
レベルでTPAを生産することができる変異体の分離 血清非依存性ボウエスIIセルラインのペトリ皿培養物に
5%のウシ胎児血清を加えることにより、細胞の増殖速
度を上昇せしめ、そしてより多くの細胞がある特定の時
間にs相にあることを保証する。細胞が急速に分裂しつ
つあり、指数増殖期にあり、そしておよそ70%のコン
フルエンスにあるときに、培養物に0.1mMのN−メチ
ル−N−ニトロ−N′−ニトロソグアニジン(MNN
G)を加える。
【0110】この濃度により約70〜80%の細胞が死
滅する。36時間後、残っている生存細胞をトリプシン
処理することによりペトリ皿から取り出す。細胞を、1
×105 細胞/60mmペトリ皿の密度で再接種する。2
週間後、細胞のコロニーを皿の底において観察する。各
コロニーは変異処理に対して生き残った単一細胞の子孫
である。次にこれらのコロニーを1mlの上層溶液で覆
う。この溶液は次の組成を有する。
【0111】 プラスミノーゲン(1mg/ml) 50μl 等張塩溶液中8%カゼイン 300μl 等張塩溶液中2.5%寒天 600μl RPMI−1640培地 800μl TPAを生産するコロニーの周囲に溶解領域が生じ、最
も大きな溶解領域が最も多くのTPAを生産するコロニ
ーの周囲に見られる。最も高いレベルでTPAを生産す
る変異コロニーを分離し、そしてペトリ皿に拡げる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 9/64 Z (C12N 5/06 C12R 1:91) (C12N 9/64 C12R 1:91) (C12N 5/00 E C12R 1:91)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 血清非依存的に増殖し得るヒトセルライ
    ン又は該セルラインから誘導された血清非依存的に増殖
    し得る変異ヒトセルライン。
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