JPH08170221A - 特殊異形断面繊維 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 柔らかい風合いを有した特殊異形断面繊維
と、この特殊異形断面繊維を用いた被覆状態の良好な被
覆弾性糸、さらに、柔らかな風合いときれいな編面およ
び透明感を同時に有したストッキングの提供。 【構成】 ポリアミドからなる湾曲した長軸を有する偏
平型断面繊維において、該断面繊維の単糸繊度が０.５
〜７デニールであり、湾曲した長軸の長さＬと厚みＷと
の比の偏平率（Ｌ／Ｗ）が２〜５であり、偏平断面の弧
の長さに対応する角度が７０゜〜１８０゜であることを
特徴とする特殊異形断面繊維、この特殊異形断面繊維を
用いた被覆状態の良い被覆弾性糸。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は特殊異形断面繊維に関す
る。 さらに詳しくは、特にストッキングなどに適した
特殊異形断面繊維とこの特殊異形断面繊維を用いた被覆
弾性糸に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、ストッキング分野において、弾性
糸からなる芯糸にポリアミド繊維を被覆した被覆弾性糸
がストッキング用素材として主流となり、フィット性に
優れたものとなっている。さらに最近の消費者要求とし
て、より柔らかな風合いおよびきれいな編面を有するパ
ンティストッキングが要求されている。

【０００３】柔らかい風合いを得るためには、単糸繊度
を小さくする方法が一般的である。しかしながら、繊度
が細くなると製糸性が悪くなり、また乱反射を生じ透明
感が低下する。さらには、ストッキング着用時にピリン
グ（単糸フィラメントのひきつれ）が誘発し易く、耐久
性に問題がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、かか
る製糸性、透明感、着用時のピリングなどの従来の問題
点を克服し、柔らかな風合いを有した特殊異形断面繊維
と、この特殊異形断面繊維を用いた被覆状態の良好な被
覆弾性糸、さらには、柔らかい風合い、きれいな編面お
よび透明感を同時に有したストッキングを提供しようと
することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリアミド繊
維の断面形状を特定の形状にすることにより極めて柔軟
性が高くなること、また、この異形断面繊維を被覆糸と
して用いることにより良好な被覆状態となることを見出
した。さらには、ストッキングの素材として異形断面繊
維を用いることにより、風合いが柔らかく、編面がきれ
いになり、かつ透明感が向上することを見出し本発明に
達した。

【０００６】即ち、本発明は、ポリアミドからなる湾曲
した長軸を有する偏平型断面繊維において、該偏平型断
面繊維の単糸繊度が０.５〜７デニールであり、かつ偏
平率が２〜５であり、しかも偏平断面の弧の長さに対応
する角度（θ）が７０゜〜１８０゜であることを特徴と
する特殊異形断面繊維維、である。また、弾性糸からな
る芯糸に被覆糸として請求項１記載の特殊異形断面繊維
を配した被覆弾性糸、であり、請求項１記載の特殊異形
断面繊維および請求項２記載の被覆弾性糸を用いたスト
ッキング、である。

【０００７】本発明で偏平率とは、偏平で湾曲した断面
をもつ特殊異形断面繊維の湾曲した長軸の長さＬと厚み
Ｗとの比（Ｌ／Ｗ）をいう（図１参照）。本発明の特殊
異形断面繊維は、偏平型断面で、かつ偏平断面の長軸が
湾曲したものであることにより、繊維断面が丸断面のも
のに比べて、断面の短軸方向への屈曲性が向上し柔らか
な風合いが得られる。

【０００８】本発明の特殊異形断面繊維は、偏平率が２
〜５であり、従来にない柔らかな風合いを得るために
は、偏平率が２以上あることが必要である。逆に、偏平
率が５を越えると製造技術の難度が高くなり、製糸性が
悪化するとともに柔らかくなりすぎてヘタリ感およびヌ
メリ感が強くなる。良好な柔らかい風合いが得るには、
好ましくは偏平率が３〜４の範囲である。

【０００９】また、本発明の特殊異形断面繊維は、偏平
断面の湾曲した長軸上の３点から定義される、円弧の長
さに対応する湾曲した角度（θ）が７０゜〜１８０゜で
ある。 本発明の偏平断面の弧の長さに対応する角度
（θ）とは、偏平断面の湾曲した長軸上の３点、ａ点、
ｂ点、ｃ点での湾曲した長軸に対する接線への垂線の交
点ｏの角度∠ａｏｃをいう。ただし、線ｏｂで断面は線
対象である（図２、図３参照）。

【００１０】偏平断面の弧の長さに対応する角度（θ）
が７０゜以上あると良好な被覆状態およびきれいな編面
状態が得られる。湾曲していない偏平型断面繊維の場
合、丸断面である芯糸と被覆糸の接触面積が少なく、芯
糸に対して被覆状態を保ちにくく、被覆糸がズレやすく
なる。角度が１８０゜を越えると逆に芯糸との接触面積
が少なくなるとともに、短軸方向への屈曲性が低下し被
覆状態が悪くなる。さらに好ましくは、９０゜〜１６０
゜である。

【００１１】ここでいう良好な被覆状態とは、比較的密
な被覆状態と粗い被覆状態が混在せず、弾性糸からの被
覆糸の飛び出し（ループ）がなく均一に被覆されている
状態をいう。また、きれいな編面とは、編成されている
被覆弾性糸が良好な被覆状態を保ちながら、編成された
編目が均一な状態をいう。さらに、特殊異形断面繊維の
単糸繊度が０.５デニール未満では製糸性が悪く、製造
技術が難しくなる。７デニールを越えると風合いが堅く
なる。特殊異形断面繊維を被覆糸としてストッキングに
用いる場合は、好ましくは、０．９〜２デニール、ま
た、加工しないでそのまま生糸としてストッキングに用
いる場合は、好ましくは、４〜６デニールである。

【００１２】本発明でいう被覆弾性糸とは、芯糸に弾性
糸として一般にポリウレタン系合成繊維、ポリエステル
系弾性糸などを用い、弾性糸を伸張した状態で、これに
被覆糸として特殊異形断面繊維を１重に巻き付けたもの
（シングルカバリングヤーン）、被覆糸を２重に巻き付
けたもの（ダブルカバリングヤーン）、または、被覆糸
を空気によって交絡させたものなどをいう。被覆弾性糸
は、通常、３倍程度伸張して被覆加工されるが、弾性糸
の物性により特に限定されない。

【００１３】また、本発明でいうポリアミド繊維とは、
ナイロン６、ナイロン６６などのポリマーあるいは、こ
れらポリアミド系ポリマーを共重合、ブレンドさせた繊
維である。さらに、このポリアミド繊維は、制電剤、安
定剤、滑剤などの添加剤を含んでいてもよいが、本発明
の特性および製糸性を損なわない範囲に添加量を抑える
ことが必要である。

【００１４】なお、本発明でいうストッキングには、パ
ンティーストッキング、薄手のソックス等も含まれ、本
発明の被覆弾性糸のみで編成されたもの、本発明の特殊
異形断面繊維と被覆弾性糸とを交編したもの、および本
発明の被覆弾性糸とポリアミド繊維とを交編したものを
含む。

【００１５】

【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。なお、実施例における特殊異形断面繊維、被
覆弾性糸およびストッキングの各性能は、下記の方法に
よって測定した。 （１）繊維の曲げ応力 全繊度を９９６デニールに合糸し、連続ベンディング測
定器によって、測定した。曲げ応力値（ｇ）が小さいほ
ど柔らかい。 （２）被覆弾性糸の被覆状態 ２０デニールのポリウレタン弾性糸を３倍に伸張しつ
つ、異形断面繊維を１重に巻き付け被覆弾性糸を得た。
得られた被覆弾性糸に荷重０.１ｇを加え、光学顕微鏡
にて糸長２０cm内での粗の被覆部（ループ）数を観測し
た。 （３）ストッキングの透明感 パネラーにストッキングを着用させ、官能検査にて、透
明感がある［５］〜ない［１］の５段階評価した。 （４）ストッキングの編面 基準のストッキングと比較して、図４の編面をきれい
［５］、図５の編面を悪い［１］、と官能検査で５段階
に評価した。 （５）ストッキングの風合い パネラーにストッキングを着用させ、官能検査にて、柔
らかい［５］〜堅い［１］の５段階評価した。

【００１６】

【実施例１〜４】ナイロン６６ポリマー（９８％硫酸相
対粘度［η］２．７）を溶融紡糸し、引き続き、伸度が
４０％になるように延伸比を調整し、巻取速度４０００
ｍ／分で巻取り、表１に示した断面を有する１２デニー
ル／７フィラメントの特殊異形断面繊維を製糸した。

【００１７】２０デニールのポリウレタン弾性糸を３倍
に伸張しつつ、製糸した繊維を１重に巻き付け被覆弾性
糸（シングルカバリングヤーン）を得た。得られた被覆
弾性糸のみを用い、針数３６０本、口径３.４インチの
パンスト編機で編成し、染色、柔軟処理、ファイナルセ
ットを経てストッキング製品（フルサポーティタイプ）
を得た。

【００１８】

【比較例１〜５】表１に示した１２デニール／７フィラ
メント（比較例１）、１２デニール／５フィラメント
（比較例３）および１２デニール／１４フィラメント
（比較例２）の丸形断面繊維および１２デニール／７フ
ィラメントの湾曲した異形断面繊維（比較例４）、湾曲
しない異形断面繊維（比較例５）とした他は実施例１〜
４と同様にして製糸した。次いで実施例１と同様に、被
覆弾性糸（シングルカバリングヤーン）およびストッキ
ング製品を得た。

【００１９】実施例１〜４および比較例１〜５にて得ら
れた繊維、被覆弾性糸およびストッキング製品の評価結
果を表１に示した。

【００２０】

【表１】

【００２１】表１に示す結果から明らかなように、１２
デニール／７フィラメントでは偏平率２〜５および角度
１０５゜、１３５゜の場合（実施例１〜４）、丸形断面
繊維（比較例１）に比べ、曲げ応力が小さく柔らかい繊
維となっており、その結果、被覆弾性糸の被覆状態が良
好であるという結果が得られた。また、ストッキングの
高透明感、きれいな編面および柔らかい風合いであると
いう結果が得られた。

【００２２】なお、角度が１８０゜を超えた場合（比較
例４）および湾曲していない場合（比較例５）は、本発
明の特殊異形断面繊維（実施例１〜４）に比べ、被覆弾
性糸の被覆状態が悪く、編面が悪くなるという結果が得
られた。これは、芯糸と被覆糸との接触面積が少ない
く、被覆糸がズレやすいためと推察される。また、比較
例４の場合は、屈曲性の低下も原因と推察される。

【００２３】さらに、単に単糸繊度を小さくすることに
より（比較例２）、柔らかな風合いは得られるが、透明
感は著しく低下することが分る。

【００２４】

【実施例５、６】表２に示した断面を有する１５デニー
ル／３フィラメントの特殊異形断面繊維とした他は実施
例１〜４と同様にして製糸した。ポリアミド繊維（１２
デニール／７フィラメント）を１重に巻き付けた被覆弾
性糸（シングルカバリングヤーン）と特殊異形断面繊維
とを用いて、針数３６０本、口径３.４インチのパンス
ト編機で編成し、染色、柔軟処理、ファイナルセットを
経て、ストッキング製品（交編タイプ）を得た。

【００２５】

【比較例６】表２に示した１５デニール／３フィラメン
ト丸形断面繊維とした他は実施例５、６と同様にして製
糸した。ついで実施例５と同様にストッキング製品（交
編タイプ）を得た。以上、実施例５、６および比較例６
にて得られた繊維およびストッキング製品の評価結果を
表２に示した。

【００２６】

【表２】

【００２７】表２に示す結果から明らかなように、交編
タイプのストッキングに湾曲した偏平形断面繊維を用い
ることにより（実施例５、６）、丸形断面繊維（比較例
６）に比べ、透明感が向上し編面がきれいになり、さら
に柔らかい風合いとなるという結果が得られた。

【００２８】

【発明の効果】本発明の特殊異形断面繊維は、繊維断面
が湾曲した長軸を有する偏平のものであるため、柔らか
な風合いのものである。また、本発明の特殊異形断面繊
維を用いた被覆弾性糸は、従来のものに比べて、良好な
被覆状態を示す。

【００２９】本発明の被覆弾性糸を用いたストッキング
は、きれいな編面状態を示し、さらに、従来のものに比
べて、着用する女性に、ソフト感、および快適感を与
え、ファッション性を満足させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の特殊異形断面繊維の断面形状を模式的
に示す説明図。

【図２】特殊異形断面繊維の偏平断面の弧の長さに対応
する角度（θ）を示す説明図。

【図３】特殊異形断面繊維の偏平断面の弧の長さに対応
する角度（θ）を示す説明図。

【図４】２０デニールのポリウレタン弾性糸を３倍に伸
張しつつ、本発明の特殊異形断面繊維を１重に巻き付け
被覆弾性糸（シングルカバリングヤーン）を用いたスト
ッキングの着用時の編面状態を示す拡大写真（×４０
０）。

【図５】２０デニールのポリウレタン弾性糸を３倍に伸
張しつつ、丸型断面繊維を１重に巻き付け被覆弾性糸
（シングルカバリングヤーン）を用いたストッキングの
着用時の編面状態を示す拡大写真（×４００）。

【符号の説明】

Ｌ：特殊異形断面繊維の偏平断面の湾曲した長軸の長さ Ｗ：特殊異形断面繊維の偏平断面の厚み θ：特殊異形断面繊維の偏平断面の弧の長さに対応する
角度 ａ：特殊異形断面繊維の偏平断面の湾曲した長軸の末端 ｂ：特殊異形断面繊維の偏平断面の湾曲した長軸の中心 ｃ：特殊異形断面繊維の偏平断面の湾曲した長軸の末端 ｏ：ａ点、ｂ点、ｃ点での湾曲した長軸の接線に対する
垂線の交点

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ポリアミドからなる湾曲した長軸を有する
   偏平型断面繊維であって、該偏平型断面繊維の単糸繊度
   が０.５〜７デニールであり、かつ偏平率が２〜５であ
   り、しかも偏平断面の弧の長さに対応する角度が７０゜
   〜１８０゜であることを特徴とする特殊異形断面繊維。
2. 【請求項２】弾性糸からなる芯糸に被覆糸として請求項
   １記載の特殊異形断面繊維を配した被覆弾性糸。
3. 【請求項３】請求項１記載の特殊異形断面繊維および請
   求項２記載の被覆弾性糸を用いたストッキング。