JP4338252B2 - 高伸縮性ダブル丸編地の製造方法 - Google Patents

高伸縮性ダブル丸編地の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ソフトな風合いと優れた伸長回復性を有する高伸縮性のダブル丸編地の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来ポリエチレンテレフタレート長繊維糸の捲縮糸からなる編地は、染色性とくに耐光性、染色堅牢度に優れ衣料用途に広範に用いられているが、一方風合いが硬い、伸縮性が不十分であるなどポリエチレンテレフタレートであるがための問題点があり、スポーツ用途等、一部の商品分野では風合いの改良、伸縮特性とくに伸長回復率の向上が望まれていた。このようなポリエチレンテレフタレート長繊維糸の捲縮糸を用いてダブル丸編地を得た場合も同様に風合いが硬く、また伸縮性が不十分で、優れた伸長回復率が得られないという問題があった。
これに対応すべくナイロン長繊維糸の捲縮糸を用いてダブルジャージィにした場合、伸縮性やソフト風合いは優れているが耐光性や染色堅牢度が悪くまた白色編地の黄変問題などがあり、充分に活用されるものではなかった。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたものであり、ソフトで染色堅牢性等に問題なく、高伸縮で高い伸長回復性を有するポリエステル系捲縮糸からなるダブル丸編地の製造方法を提供することを課題とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、ポリトリメチレンテレフタレートを2600〜3500m/分の紡速で紡糸し、高配向未延伸糸として巻き取った後、仮撚数Tを下記数2の範囲とすると共にヒーター温度を140〜180℃、延伸倍率を1.4〜1.6倍とする条件で前記高配向末延伸糸を同時延伸仮撚加工して、130%以上の伸縮伸長率を有するポリトリメチレンテレフタレート長繊維糸の捲縮糸となし、次にこれを編地の60%以上に用い、しかも下記数1で示すカバーファクター値(CF)が0.3以上となるように編立てることを特徴とする、コース方向(経)及びウェール方向(緯)において1.5kg荷重時の伸長率が共に25%以上であると同時に伸長回復率が共に97%以上であるダブル丸編地の製造方法を要旨とするものである。
【0005】
【数1】
【0006】
ここで、Dは、捲縮糸の繊度(デニール)、Cは、1cm当たりのコース数、Wは、1cm当たりのウェール数である。
【数2】
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明においては、ダブル丸編地の製造に際して、130%以上の伸縮伸長率を有するポリトリメチレンテレフタレート長繊維糸の捲縮糸を少なくとも60%以上用いる。ポリトリメチレンテレフタレートは、1,3-プロパンジオールとテレフタール酸とを構成成分とするものであって、これを主体とし、その特性を変えない範囲でエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、5-スルホイソフタル酸、ビスフェノールA等から選ばれる1種以上の成分を共重合した共重合体であってもよい。このポリトリメチレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートに比べて柔らかく、しかも本発明に用いられるその捲縮糸は130%以上の伸縮伸長率を有し、編地の60%以上に用いられているために、得られた編地は、伸長性が良く、通常手で引っ張って伸びる量即ち1.5kg荷重時の伸長率は、コース方向(経)、ウェール方向(緯)ともに25%以上を示し、しかもその時の伸長回復率はともに97%以上を示す。
【0008】
本発明に用いるポリトリメチレンテレフタレート長繊維糸の捲縮糸の伸縮伸長率が130%未満の時は、編地の伸長率とくにコース方向(経方向)の伸長率が25%未満となるか又は経方向、緯方向のいずれか一方又は両方の伸縮回復率が97%未満となり伸縮特性が不十分となってしまう。
【0009】
本発明にいう伸縮伸長率は次のようにして求めたものである。まず、試料をガラス棒にかけて輪にしたものを5個作り、それぞれ表示デニール(仮撚加工後の繊度)の1デニール当たり1/10gの荷重をかける。この5個の試料を一まとめにする。このようにして作った10本1束の試料に約40cm間隔で綿糸でしっかり結んだのち直ちに除重する。この試料を約90℃の熱水中で20分間処理し、24時間から48時間自然乾燥した後、温度20℃±2℃、相対湿度65%±2℃の標準状態で24時間放置する。次に試料の上部をクランプに固定し、表示デニールの1デニール当たり2/1000gの初荷重をかけて垂下し、30秒後上部クランプから20cmのところに印をつけ試料の長さaとする。次に表示デニールの1デニール当たり1/10gの荷重をかけて30秒後の試料の長さbを測定する。これにより次式から伸縮伸長率を求める。測定回数は20回とし、その平均値で表す。
伸縮伸長率(%)=((b−a)/a)×100
【0010】
次に本発明に用いる伸縮伸長率が130%以上の捲縮糸を得る好ましい方法について述べる。
すなわちポリトリメチレンテレフタレートを2600〜3500m/分の紡速で紡糸し、捲き取った高配向末延伸糸(POY)を仮撚数Tを下記数2の範囲内に設定し、ヒーター温度140〜180℃、延伸倍率1.4〜1.6倍で同時延伸仮撚加工を施すことにより得られる。即ち高伸縮伸長率の捲縮糸を得るためには高配向末延伸糸を用い延伸糸では得にくい高い仮撚数を実現することにより達成できる。
【0011】
【数2】
【0012】
なお、仮撚加工に際しては1ヒーターのみで加工しても、2ヒーターで加工をしても良い。
【0013】
本発明では、カバーファクター値(CF)が0.3以上となる条件でダブル丸編地を編成する。編機としては、通常のシリンダーとダイヤルを備えた両面丸編機を用いればよい。
カバーファクター値は、編地の密度に関係し、理論的には編組織の1ループが占める全面積の中で1ループの糸自身が占める面積の割合であり、実験式的に前記数1で示す数式で求められるものである。
また、130%以上の伸縮伸長率を有するポリテトラメチレンテレフタレートの捲縮糸を編地の60%以上に用いる必要がある。60%未満の場合は編地の伸長率とくにコース方向(経方向)の伸長率が25%未満となるか又は経方向、緯方向のいずれか一方又は両方の伸長回復率が97%未満となり伸縮特性が不十分となり、着用により膝や肘が飛び出し伸長回復に良好な編地とはいえない。
本発明における編地の仕上げ加工は、通常の編地と同様に行えばよい。
【0014】
【作用】
本発明の編地は、高伸縮性を示すポリトリメチレンテレフタレート長繊維糸の高捲縮糸と編地の応力に対する反発性、伸長回復率が適度な編密度の時に初めて伸長回復に効果的に寄与することを見出したものである。
【0015】
【実施例】
次に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は何ら制限されるものではない。なお、実施例における編地の評価は次の方法によって行った。
(1)編地の伸縮率
幅5cm×長さ30cmに編地を裁断し、自記記録装置付定速伸長型引張試験機を用い、つかみ間隔20cmで初荷重3gをかけ引張速度100%/minで荷重伸長曲線を描き、この曲線により1.5kg応力時の伸長率を読み取る。
(2)編地の伸長回復率
幅5cm×長さ3cmに編地を裁断した試験片を用い、試験片の一端を固定し、他端に初荷重3gをかけ、次いで20cm間隔(L0 )に印をつけ、静かに1.5kg荷重を追加して、3分間放置した後印間長の長さ(L1 )を測り全ての荷重を取り除き3分間放置する。次いで初荷重をかけて印間長の長さ(L2 )を測り次式で伸長回復率を算出する。
伸長回復率(%)=((L1−L2)/(L1−L0)) ×100
【0016】
実施例1
ポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメントの高配向末延伸糸115d/24fを三菱重工業製仮撚機LS−6型にてスピンドル回転数40×104rpm、延伸倍率1.552倍、仮撚数4000t/m、ヒーター温度170℃の条件で仮撚加工を行った。得られた捲縮糸の繊度は74dで、伸縮伸長率は170%であった。株式会社福原精機製作所製LPJW型丸編機を用い、この捲縮糸を図1に示すモックミラノリブの編組織図のF1,2,4のコースに供給し、F3のコースに75d /36f のポリエチレンテレフタレート長繊維捲縮糸(伸縮伸長率110%)を供給して、コース数16本/cm、ウェール数17本/cm、カバーファクター値0.35で編立て、100℃リラックス精練−160℃プレセット、130℃高圧染色、160℃ファイナルセットを経てポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメントの捲縮糸の使用比率が79%の本発明による伸縮性の丸編地を得た。
【0017】
実施例2
実施例1において、コース数18本/cm、ウェール数19本/cm、カバーファクター値0.39で編立てること以外は実施例1と同様にしてポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメントの捲縮糸の使用比率が80%の本発明による伸縮性の丸編地を得た。
【0018】
比較例1
実施例1において、コース数13本/cm、ウェール数14本/cm、カバーファクター値0.28で編立てること以外は実施例1と同様にしてポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメントの捲縮糸の使用比率が77%の比較例の丸編地を得た。
実施例1〜2及び比較例1の編地の評価結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1から明らかなように実施例1,2の編地は、ソフトな風合いでしかも伸長率、伸長回復率が優れ好ましい編地であったが、比較例1の丸編地は、肉厚感がなく、伸長回復率は94%と回復が悪い編地であった。
【0021】
【発明の効果】
本発明によると、ナイロンのように柔らかくしかも編地の伸長率に優れ、良好な伸長回復率を有しているとともにナイロンの欠点である黄変や染色堅牢度の問題がないという、スポーツ衣料等伸長率、伸長回復率が特に問題とされる衣料に最適の編地を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の編地の一例を示す給糸順序による組織図である。

Claims (1)

  1. ポリトリメチレンテレフタレートを2600〜3500m/分の紡速で紡糸し、高配向未延伸糸として巻き取った後、仮撚数Tを下記数2の範囲とすると共にヒーター温度を140〜180℃、延伸倍率を1.4〜1.6倍とする条件で前記高配向末延伸糸を同時延伸仮撚加工して、130%以上の伸縮伸長率を有するポリトリメチレンテレフタレート長繊維糸の捲縮糸となし、次にこれを編地の60%以上に用い、しかも下記数1で示すカバーファクター値(CF)が0.3以上となるように編立てることを特徴とする、コース方向(経)及びウェール方向(緯)において1.5kg荷重時の伸長率が共に25%以上であると同時に伸長回復率が共に97%以上であるダブル丸編地の製造方法。
    ここで、Dは、捲縮糸の繊度(デニール)、Cは、1cm当たりのコース数、Wは1cm当たりのウェール数である。
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