JPH08291424A - ポリアミド異形断面繊維 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 柔らかな風合いを維持しながら、きめ細かい
光沢感および適度なシャリ感を有し、しかも、吸水性能
に優れたポリアミド異形断面繊維と、この異形断面繊維
を用いた良好な被覆状態を有する覆弾性糸およびきれい
な編面を有するストッキングを提供する。 【構成】 特定の断面形状を有するポリアミド異形断面
繊維と、この特殊異形断面繊維を用いた被覆状態の良い
被覆弾性糸およびストッキング。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ポリアミド異形断面繊
維に関する。さらに詳しくは、特にストッキングなどに
適した異形断面繊維と該異形断面繊維を用いた被覆弾性
糸およびストッキングに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】ストッキング分野において、弾性糸から
なる芯糸にポリアミド繊維を被覆した被覆弾性糸がスト
ッキング用素材として主流となり、フィット性に優れた
ものとなっている。しかし、最近の消費者要求として
は、柔軟性、吸汗性能、および適度なシャリ感等の着用
時の快適性が要求されている。さらにストッキングは、
脚を美しくかつ細く見せるなどのファッション衣料とし
て定着しつつあり、きめ細かい光沢感などのファッショ
ン性が要求されている。

【０００３】これら快適性およびファッション性を満た
すため、従来より繊維断面の異形化が検討されてきた。
しかしながら、従来の多葉断面ではシャリ感はあるがガ
サツキ感が強く快適とは言えず、さらに、きついギラツ
キ感（光沢感）があり好感度の低い物しか得られていな
い。また、曲げ応力が大きいためきれいな編面を有した
ストッキングが得られていない。一方、偏平断面では柔
らかい風合いは得られるが腰が無くヌメリ感があり、さ
らには、光沢感が少なくファッション性が低い物しか得
られていない。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
公知のポリアミド異形断面繊維が有する課題を克服し
て、柔らかな風合いを維持しながら、きめ細かい光沢感
および適度なシャリ感を有し、しかも、吸水性能に優れ
たポリアミド異形断面繊維と、この異形断面繊維を用い
た良好な被覆状態を有する覆弾性糸およびきれいな編面
を有するストッキングを提供することである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的を
達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリアミド繊維
の断面形状を特定の形状にすることにより、きめ細かい
光沢感、柔らかな風合い、適度なシャリ感および優れた
吸水性が得られることを見出した。さらに、ストッキン
グの素材として該異形断面繊維を用いると、上述した優
れた特徴を有するとともにきれいな編面が得られること
を見出し本発明に達した。

【０００６】即ち本発明は、単糸繊度が０.５〜７デニ
ールのポリアミド繊維からなり、その繊維の断面形状が
相反する方向に２箇所屈曲した中心軸を有する偏平型で
あって、屈曲角（Θ1およびΘ2）が９０〜１６０°であ
り、かつ偏平断面の屈曲した中心軸の長さ（Ｌ0）と偏
平断面の厚み（Ｗ）との比すなわち偏平率（Ｌ0／Ｗ）
が３〜６であり、さらには、中心軸の長さに対する両端
の各屈曲部の長さの比（Ｌ1／Ｌ0）が０.２〜０.４であ
ることを特徴とするポリアミド異形断面繊維（図１参
照）に関し、また、弾性糸からなる芯糸に被覆糸として
前記ポリアミド異形断面繊維を配した被覆弾性糸、前記
ポリアミド異形断面繊維および／または前記被覆弾性糸
を用いたストッキングに関するものである。

【０００７】本発明のポリアミド異形断面繊維は、偏平
型断面であることにより、繊維断面が丸断面に比べて、
断面の短軸方向への屈曲性が向上し柔らかな風合いと良
好な被覆状態、および、きれいな編面が得られる。ここ
でいう良好な被覆状態とは、弾性糸からなる芯糸にカバ
リングして被覆とした時に、比較的密な被覆状態と粗い
被覆状態が混在せず、弾性糸からの被覆糸の飛び出し
（ループ）が無く均一に被覆されている状態をいう。ま
た、きれいな編面とは、編成されている被覆弾性糸が良
好な被覆状態を保ちながら、編成された編目が均一な状
態を言う。

【０００８】本発明のポリアミド異形断面繊維は、図１
に示すような断面形状を有し、偏平率が３〜６である。
従来にない柔らかな風合いを得るためには、偏平率が３
以上あることが必要である。逆に、偏平率が６を越える
と製造技術の難度が高くなり、製糸性が悪化するととも
に柔らかくなりすぎてヘタリ感およびヌメリ感が強くな
る。柔らかく、かつ、適度なシャリ感のある風合いを得
るには、好ましくは４〜５の範囲である。

【０００９】本発明のポリアミド異形断面繊維の断面形
状は、相反する方向に２箇所屈曲した中心軸を有する。
偏平型断面繊維の中心軸を相反する方向に屈曲させるこ
とにより、同一方向に屈曲させたものに比べ、単糸間の
断面が同一方向に並びやすいので密着性が良くなり、吸
水性が向上する（図２参照）。さらに、屈曲部を２箇所
有することにより、繊維断面が丸断面のものおよび屈曲
箇所が１箇所のものにくらべて、毛細管現象が生じやす
く吸水性が向上する。また、繊維中心軸を３箇所以上屈
曲させると、製糸性が悪く、製造技術が難しくなる。

【００１０】本発明のポリアミド異形断面繊維は、中心
軸の屈曲角（Θ1およびΘ2）が９０〜１６０°である。
屈曲角（Θ1およびΘ2）が９０°未満では、屈曲性が低
下し良好な被覆状態が得られず、しかも、きれいな編面
を有するストッキングが得られない。屈曲角が１６０°
を越えると良好な吸水性能が得られない。しかも、ヌメ
リ感が生じシャリ感が得られない。好ましくは、１００
〜１４０°である。

【００１１】本発明のポリアミド異形断面繊維は、中心
軸の長さに対する屈曲部の長さの比が０.２〜０.４であ
る。長さが０.２未満または０.４を越えると、皮膚と繊
維の接触面積が増加するためシャリ感が低下し、ヌメリ
感が発生する。好ましくは、０.２５〜０.３５である。
さらに、本発明のポリアミド異形断面繊維は、単糸繊度
が０.５〜７である。０.５デニール未満では製糸性が悪
く、製造技術が難しくなる。一方、７デニールを越える
と風合いが堅くなる。好ましくは、ポリアミド異形断面
繊維を被覆糸としてストッキングに用いる場合は、単糸
繊度は０.９〜３デニールの範囲が、また、加工しない
でそのまま生糸としてストッキングに用いる場合は、好
ましくは、３〜６デニールである。

【００１２】本発明でいう被覆弾性糸とは、芯糸に弾性
糸として一般にポリウレタン系合成繊維、ポリエステル
系弾性糸などを用い、弾性糸を伸張した状態で、これに
被覆糸としてポリアミド異形断面繊維を１重に巻き付け
たもの（シングルカバリングヤーン）、被覆糸を２重に
巻き付けたもの（ダブルカバリングヤーン）、または、
被覆糸を空気によって交絡させたものなどをいう。被覆
弾性糸は、通常、３倍程度伸張して被覆加工されるが、
弾性糸の物性により特に限定されない。

【００１３】本発明のポリアミド異形断面繊維は、偏平
型断面のため、透過率が高く乱反射光自体が少なく、し
かも三葉および４葉に比べ反射面が多いのため反射光が
広い角度に拡散される。そのため、本発明のポリアミド
異形断面繊維は強い反射光がなく均一に反射し、編地に
した場合、きめ細かい光沢感が得られる。また、本発明
でいうポリアミド異形断面繊維とは、ナイロン６、ナイ
ロン６６などのポリマーあるいは、これらポリアミド系
ポリマーを共重合、ブレンドさせたポリマーから得られ
る繊維である。さらに、このポリアミド異形断面繊維
は、制電剤、安定剤、滑剤などの添加剤を含んでいても
よいが、その添加量は本発明における特性および製糸性
等を損なわない範囲とすることが必要である。

【００１４】なお、本発明でいうストッキングには、パ
ンティーストッキング、薄手のソックス等も含まれ、本
発明の被覆弾性糸及び／またはポリアミド繊維が用いら
れていれば良い。具体的には、本発明の被覆弾性糸や本
発明のポリアミド異形断面繊維のみで編成されたものは
もちろん、例えば、本発明のポリアミド異形断面繊維と
従来の被覆弾性糸とを交編させたもの、本発明の被覆弾
性糸と従来のポリアミド繊維を交編させたもの、本発明
のポリアミド異形断面繊維と従来のポリアミド繊維で編
成されたものなども含まれる。

【００１５】

【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的
に説明する。なお、実施例におけるポリアミド異形断面
繊維、被覆弾性糸およびストッキングの各性能は、下記
の方法によって測定した。 （１）繊維の偏平率 異形断面写真から、偏平断面の屈曲した中心軸の長さ
（Ｌ0）と偏平断面の厚み（Ｗ）との比すなわち偏平率
（Ｌ0／Ｗ）を算出した。 （２）繊維の曲げ応力 全繊度を９９６デニールに合糸し、連続ベンディング測
定器によって、測定した。曲げ応力値（ｇ）が小さいほ
ど柔らかい。 （３）被覆弾性糸の被覆状態 ２０デニールのポリウレタン弾性糸を３倍に伸張しつ
つ、ポリアミド異形断面繊維を１重に巻き付け被覆弾性
糸を得た。得られた被覆弾性糸に荷重０.１ｇを加え、
光学顕微鏡にて糸長２０cm内での粗の被覆部（ループ）
数を観測した。 （４）ストッキングの吸水性 ストッキングの吸水性は、ＪＩＳＬ１０１８−７７、
６，２７、１Ｂ（バイレック法）によって測定した。 （５）ストッキングの光沢 パネラーにストッキングを着用させ、官能検査にて、光
沢がありすぎる［５］〜適度な光沢［３］〜光沢無し
［１］の５段階評価した。

【００１６】また、分光光度計によりストッキングの拡
散反射率を測定した。反射率が大きいほど光沢がある。 （６）ストッキングの風合い パネラーにストッキングを着用させ、官能検査にて、シ
ャリ感がありすぎる［５］〜適度なシャリ感［３］〜ヌ
メリ感がある［１］、および、柔らかい［５］〜堅い
［１］の５段階評価した。 （７）ストッキングの編面 基準のストッキングと比較して、図３の編面をきれい
［５］、図４の編面を悪い［１］とし、官能検査で５段
階評価した。

【００１７】

【実施例１〜６】ナイロン６６ポリマー（９８％硫酸相
対粘度：［η］＝２.７）を溶融紡糸し、引き続き伸度
が約４０％になるよう延伸比を調整し、巻取り速度４０
００ｍ／分で巻取りながら、表１に示した断面を有する
１０デニール／５フィラメントおよび１０デニール／１
０フィラメント（実施例４）のポリアミド異形断面繊維
を製糸した。

【００１８】２０デニールのポリウレタン弾性糸を３倍
に伸張しつつ、製糸した繊維を１重に巻き付け被覆弾性
糸（シングルカバリングヤーン：撚数＝1800T/M）を得
た。得られた被覆弾性糸のみを用い、針数３６０本、口
径３.４インチのパンスト編機で編成し、染色、柔軟処
理、ファイナルセットを経てストッキング製品（フルサ
ポーティタイプ）を得た。

【００１９】

【比較例１〜８】実施例１〜６に示した方法により、表
１に示した１０デニール／５フィラメントの偏平断面繊
維、三葉断面繊維、丸形断面繊維および屈曲したポリア
ミド異形断面繊維とした他は実施例１〜６と同様にして
製糸した。次いで実施例１と同様に、被覆弾性糸（シン
グルカバリングヤーン）およびストッキング製品を得
た。

【００２０】以上、実施例１〜６および比較例１〜８に
て得られた繊維、被覆弾性糸およびストッキング製品の
評価結果を表１に示した。

【００２１】

【表１】

【００２２】表１に示す結果から明らかなように、１０
デニール／５フィラメントでは偏平率３.３、４.５、
５.５、屈曲長０.３２、０.２５および屈曲角１１０
゜、１３０゜の場合（実施例１〜６）、偏平断面繊維
（比較例１）および丸断面繊維（比較例３）に比べ、反
射率が高く適度な光沢感となる。さらにストッキングの
シャリ感および吸水性も高いという結果が得られた。ま
た、三葉断面繊維（比較例２）に比べ、曲げ応力が小さ
く柔らかい。その結果、被覆弾性糸の被覆状態が良好で
あるという結果が得られ、また、適度な光沢感およびシ
ャリ感を有しているいう結果が得られた。

【００２３】なお、屈曲角が本発明の範囲外（比較例
４、５）にある場合は、本発明のポリアミド異形断面繊
維（実施例１〜６）に比べ、比較例４は、屈曲角が８０
°（本発明の範囲より小さい）であるため、皮膚との接
触面積が小さくシャリ感が強くガサツキ感が生じ、ま
た、光沢感が強くなりすぎてファッション性が低下し、
さらには、繊維の屈曲性が低下するために良好な被覆性
およびきれいな編面が得られない。比較例５は、屈曲角
が１７０°（本発明の範囲より大きい）であるため偏平
断面糸に近づく、そのため、皮膚との接触面積が大きく
なりヌメリ感が生じ、また、毛管現象が低下し吸水性能
が低下する。さらには、反射光が少なくなり、きめ細か
い光沢感が得られない。

【００２４】また、屈曲長が本発明の範囲外（比較例
６、７）にある場合は、本発明のポリアミド異形断面繊
維（実施例１〜６）に比べ、比較例６は、屈曲長が０.
１８（本発明の範囲より小さい）であるため偏平断面糸
に近づき、そのため、皮膚との接触面積が大きくなりヌ
メリ感が生じる。また、毛管現象が低下し吸水性能が低
下する。さらには、反射光が少なくなり、きめ細かい光
沢感が得られない。比較例７は、比較例６同様、ヌメリ
感が生じ、吸水性能が低く、きめ細かい光沢感が得られ
ない。

【００２５】さらに、同一方向に屈曲している場合（比
較例８）は、本発明のポリアミド異形断面繊維（実施例
１〜６）に比べ、単糸間の密着性が少ないため毛細管現
象が発生しにくく吸水性が低い。

【００２６】

【実施例７、８】表２に示した断面を有する１５デニー
ル／３フィラメントのポリアミド異形断面繊維とした他
は実施例１〜６と同様にして製糸した。ポリアミド繊維
（１２デニール／７フィラメント）を１重に巻き付けた
被覆弾性糸（シングルカバリングヤーン）とポリアミド
異形断面繊維を用いて、針数３６０本、口径３.４イン
チのパンスト編機で編成し、染色、柔軟処理、ファイナ
ルセットを経て、ストッキング製品（交編タイプ）を得
た。

【００２７】

【比較例９】表２に示した１５デニール／３フィラメン
ト丸型断面繊維とした他は実施例５、６と同様にして製
糸した。ついで実施例７、８と同様にストッキング製品
（交編タイプ）を得た。以上、実施例７、８および比較
例９にて得られた繊維およびストッキング製品の評価結
果を表２に示した。

【００２８】

【表２】

【００２９】表２に示す結果から明らかなように、交編
タイプのストッキングに屈曲した偏平形断面繊維を用い
ることにより（実施例７、８）、丸形断面繊維（比較例
９）に比べ、光沢感およびシャリ感が向上し、柔らかい
風合いとなるという結果が得られた。

【００３０】

【発明の効果】本発明のポリアミド異形断面繊維は、屈
曲した中心軸を有する偏平型断面であるため、きめ細か
い光沢感、柔らかな風合い、適度なシャリ感および優れ
た吸水性を示すものである。本発明のポリアミド異形断
面繊維を用いた被覆弾性糸は、従来のものに比べて、良
好な被覆状態を示す。

【００３１】本発明の被覆弾性糸を用いたストッキング
は、きれいな編面状態を示し、さらに、従来のものに比
べ、着用する女性に快適感を与え、ファッション性を満
足させることができる。

【００３２】

【図面の簡単な説明】

【００３３】

【図１】本発明のポリアミド異形断面繊維の断面形状を
模式的に示す説明図。

【００３４】

【図２】本発明のポリアミド異形断面繊維の断面形状を
示す模写図。

【００３５】

【図３】２０デニールのポリウレタン弾性糸を３倍に伸
張しつつ、本発明のポリアミド異形断面繊維を１重に巻
き付けた被覆弾性糸（シングルカバリングヤーン）を用
いたストッキングの着用時の編面状態を示す拡大模写図
（×４００）。

【００３６】

【図４】２０デニールのポリウレタン弾性糸を３倍に伸
張しつつ、三葉断面繊維を１重に巻き付けた被覆弾性糸
（シングルカバリングヤーン）を用いたストッキングの
着用時の編面状態を示す拡大模写図（×４００）。

【００３７】

【符号の説明】

Ｌ0：ポリアミド異形断面繊維の偏平断面の屈曲した中
心軸の長さ Ｌ1：ポリアミド異形断面繊維の偏平断面の屈曲部の長
さ Ｗ：ポリアミド異形断面繊維の偏平断面の厚み Θ1,Θ2：ポリアミド異形断面繊維の偏平断面の屈曲角
度

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｄ０２Ｇ 3/36 Ｄ０２Ｇ 3/36

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 単糸繊度が０.５〜７デニールのポリア
   ミド繊維からなり、その繊維の断面形状が相反する方向
   に２箇所屈曲した中心軸を有する偏平型であって、屈曲
   角（Θ1およびΘ2）が９０〜１６０°であり、かつ、偏
   平断面の屈曲した中心軸の長さ（Ｌ0）と偏平断面の厚
   み（Ｗ）との比すなわち偏平率（Ｌ0／Ｗ）が３〜６で
   あり、さらには、中心軸の長さに対する両端の各屈曲部
   の長さの比（Ｌ1／Ｌ0）が０.２〜０.４であることを特
   徴とするポリアミド異形断面繊維。
2. 【請求項２】 弾性糸からなる芯糸に被覆糸として請求
   項１記載のポリアミド異形断面繊維を配した被覆弾性
   糸。
3. 【請求項３】 請求項１記載のポリアミド異形断面繊維
   及び／または請求項２記載の被覆弾性糸を用いたストッ
   キング。