JPH08169063A - コーター用のセラミックス被覆ロール - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】間断的に使用されたり、連続使用ではあって
も、腐食性の高い塗料を利用しているゲートロールコー
ターのインナーゲートロールに発生する腐食を防止する
と同時に、耐磨耗性・濡れ性・耐傷性に優れ、尚且つア
プリケーターロールやアウターゲートロール等に損傷を
与えないインナーゲートロールを提供する。 【構成】略水平に並設され、互いに圧接されながら回転
する一対のゲートロール２，３と、一方のゲートロール
２に圧接されて両ゲートロール２，３の間をロールの回
転により下方向に通過した塗料４を長尺の連続紙５に塗
布するアプリケーターロール１を備えるゲートロールコ
ーターおける前記一方のゲートロール２の表面を、耐久
性と耐蝕性及び濡れ性と摩擦係数に優れたセラミックス
で被覆した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、製紙機械、特に紙を
製造する抄紙機に組み込まれて各種填料を紙の表面に塗
布するロールコーターの一種で主として中質紙や多色刷
りに使用する微塗工紙の製造や上質紙の下塗り用として
利用されるゲートロールコーターのインナーゲートロー
ルに適した新規なセラミックス被覆ロールに関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】図１はゲートロールコーター（別名発明
者の名前を取ってハミルトンコーターとも言うが、以後
単にゲートロールコーターと呼ぶ）の構造を示してい
る。図示されたように、ゲートロールコーターは、略水
平に並設され、互いに圧接されながら回転する一対のゲ
ートロール２，３を略水平に並設し、両ゲートロール
１，２の間に塗料溜まりを設けると共に、両ゲートロー
ル２，３の間をロールの回転により下方向に通過した塗
料４を長尺の連続紙５に塗布するためのアプリケーター
ロール１を一方のゲートロール２に圧接させたものであ
る。アプリケーターロール１に近い側をインナーゲート
ロール、遠い側をアウターゲートロールと呼ぶ。インナ
ーゲートロール２は、アプリケータロール１とアウター
ゲートロール３に挟まれて配置されており、鉄鋼製ロー
ルの防錆と耐磨耗性付与のために、当初からクロムめっ
き被覆するのが一般的であった。そして、コーターによ
って、同じクロムめっきではあっても、めっき表面が平
坦（プレーン）なものや粗面化して微細な凹凸を付けた
ものがある。

【０００３】ゲートロールコーターは、元々填料等を紙
表面に塗布するためのプレコーターの一種として開発さ
れ発展してきたが、近年、市場の要求から新聞用紙を抄
く抄紙機に新たに組み込んでオンマシンコーターとして
紙質の改善が図られるようになり、急速に普及してき
た。上質紙や中質紙の下塗りのために、当初から抄紙機
に組み込まれているようなゲートロールコーターでは、
クロムめっき被覆してあるインナーゲートロールに、腐
食等の問題を生じた事例は無いが、近年、新聞の多色刷
りの要求から現用の新聞用紙を抄造する抄紙機を改造し
てグレードアップし、新聞用紙を中質紙や、より高級な
新聞用紙とするために、ゲートロールコーターが新設さ
れるようになってから、インナーゲートロールのクロム
めっき面の腐食が多発するようになってきた。その原因
の一つに、現用の新聞用紙を抄造する抄紙機を改造した
ものの、必ずしも連続使用するためではなく、必要に応
じて間断的に使用することが挙げられる。つまり、休転
時に塗料や水分が付着したままで放置されることも多
く、この放置期間中にクロムめっきが腐食されたり、ク
ロムめっきのクラックを通して下地が腐食され、クロム
めっきに膨れを生じたり、錆が出たりする。また、別の
原因として、連続使用ではあっても、使用される塗料成
分の変更によってクロムめっきが腐食されてしまうこと
もある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した如
く間断的に使用されたり、連続使用ではあっても、腐食
性の高い塗料を利用しているゲートロールコーターのイ
ンナーゲートロールに発生するクロムめっきの腐食を防
止出来ると同時に、耐磨耗性・濡れ性・耐傷性に優れ、
尚且つアプリケーターロールやアウターゲートロール等
に損傷を与えないインナーゲートロールを提供しようと
するものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】クロムめっきに代わる耐
磨耗性（耐久性）や耐傷性を得るためには、従来からの
めっき金属では、到底使用に耐え得ない。そこで、溶射
によるセラミックスやサーメット被覆について、耐磨
耗性、硬度、動摩擦係数、濡れ性、耐蝕性（下
地防食性）に関する検討を行った。

【０００６】耐磨耗性の検討 耐磨耗性の検討のために、各種セラミックスやサーメッ
トを外径１００ｍｍの円盤状ＳＳ４００の表面に設
け、”ＪＩＳ−Ｈ−８５０３；めっきの耐磨耗性試験方
法”に準拠して磨耗減量から耐磨耗性を求めた。その結
果を表１に示した。比較用として従来からのクロムめっ
きを挟んだ。磨耗輪はＨ−１０（シリコンカーバイト）
とし、磨耗輪に付与する荷重は１ｋｇとした。表中、Ｗ
Ｃ−ＮｉＣｒ２５％（タングステンカーバイト・ニッケ
ルクロム）の磨耗体積を１としたときの他のサーメット
やセラミックスの磨耗度合いを、比率として示した。な
お、セラミックスやサーメットは、それぞれ密度が異な
るために、磨耗減量は、全て磨耗体積に換算した。この
結果によれば、耐磨耗性は、タングステンカーバイト系
のサーメットが最も優れ、酸化クロム、クロムめっきと
続くことが判明した。

【０００７】

【表１】

【０００８】硬度の比較 表１に示した各材料の硬度は表２のようになり、従来の
クロムめっきと比べて高硬度を示すものは、タングステ
ンカーバイト系の材料や酸化クロムである。

【０００９】

【表２】

【００１０】動摩擦係数の検討 インナーゲートロールは、図１に示したようにアプリケ
ーターロールとアウターゲートロールの両方から挟ま
れ、且つ擦られながら加圧を受ける。この様な理由か
ら、従来のインナーゲートロールには、高硬度で磨耗し
難しいクロムめっきが採用されてきたのである。一方、
アプリケーターロールはウレタン樹脂で被覆され、アウ
ターゲートロールの場合では、ニトリルゴムで被覆され
るのが一般的である。従って、アウターゲートロールや
アプリケーターロールに磨耗損傷を与えないためには、
インナーゲートロールに被覆する材料にはウレタン樹脂
やニトリルゴムに対して動摩擦係数が低いことも重要な
性質であるので、動摩擦係数を測定比較したところ、ウ
レタン樹脂に対しては、酸化クロムや酸化クロム・チタ
ニア等、クロム系のセラミックスがクロムめっきよりも
動摩擦係数が低く、また、ニトリルゴムに対しては酸化
クロムの動摩擦係数が低いことを発見した。

【００１１】

【表３】

【００１２】濡れ性の検討 現在のインナーゲートロールの被覆材であるクロムめっ
きの表面仕様として、研摩して平滑（表面粗さ０．８ｓ
以下）にしたものと表面を意図的に粗面化したものとが
ある。いずれもクロムめっきの担う役割りは、図１に示
したようにアウターゲートロールとインナゲートロール
との間に溜められた塗料をアプリケーターロールに転写
することにある。従って、インナーゲートロールの表面
が塗料で均一に濡れるということも重要であるので、純
水に対する濡れ性を表面接触角で評価して見た。

【００１３】

【表４】

【００１４】一般に溶射法で形成したセラミックス被覆
は多孔質で水漏れ性が良いとも言われているが、表４の
結果を見る限り材料によって随分違いがあってセラミッ
クスであれば水漏れ性が良いとも言えない結果を示して
いる。この結果から酸化クロムは、最も漏れ性の良いこ
とを発見した。

【００１５】耐蝕性（下地防食性）の検討 以上迄の結果からすると耐磨耗性は、タンズステンカー
バイト系のサーメットよりは劣るものの、従来のクロム
めっきと比べて全ての面で酸化クロムの特性は極めて優
れたものであることが分かる。しかし、被覆の性能だけ
で優劣を論じても実際には、鉄鋼製のロールを完全に被
覆し、下地を保護出来てこそ意味をなすために、ＳＳ４
００の表面に被膜の厚みを２００μｍに統一してＪＩＳ
−Ｈ−８５０２に規定する中性塩水噴霧試験を連続して
１０００時間実施した。その結果、表５に示したように
酸化クロムの下地金属に対する防食性は極めて優れたも
のであった。

【００１６】

【表５】

【００１７】また、酸化クロムやアルミナ等のセラミッ
クスも良好な下地防食性を呈したが、耐磨耗性や摩擦係
数、濡れ性等に一長一短があってインナーゲートロール
の被覆には、不適性であることが分かった。さらに詳細
に調査して見ると、タンズスステンカーバイト系材料の
発錆機構は、被覆中に含有する鉄によるもので、この意
味では、この意味では、被膜の耐蝕性が充分でないこと
になる。

【００１８】

【作用】以上のように、従来のクロムめっきの代わり
に、セラミックスである酸化クロムを被覆した本発明の
インナーゲートロールは、硬度・耐磨耗性・動摩擦係数
・濡れ性・下地防食性共に、従来のクロムめっきと比べ
て格段に優れたもので、被膜自体の耐蝕性もセラミック
スであるところから金属のように腐食されない。なお、
酸化クロム被覆方法は、既在のプラズマ溶射や線材溶射
等が利用できるが、被膜の緻密さの点では、プラズマ溶
射法が好ましい。好ましい被膜厚みは、５０〜５００μ
ｍであり、５０μｍ以下では、十分な耐蝕性が得られな
い。また、５００μｍ以上では、不経済であると同時
に、無意味である。次に、本発明のインナーゲートロー
ルを実際にゲートロールコーターに組み込んで運転した
実施例を示す。

【００１９】

【実施例】後付けの形でゲートロールコーターのみを新
たに設置した新聞用抄紙機の直径５６０ｍｍ、面長３７
００ｍｍ、全長５５５０ｍｍのインナーゲートロールに
プラズマ溶射法により、粒度分布４４〜２２μｍの酸化
クロム粉末を２５０μｍ厚に溶射し、グラインダ研磨、
研石研磨を経て仕上り膜厚２００μｍの酸化クロムを被
覆したロール２本を作製した。このロールをそれぞれト
ップとボトムとに組み込み、約１年間使用したが腐食、
膨れの発生は全く見られず、また、磨耗の進行も見られ
ず継続使用が可能な状態であった。なお、このゲートロ
ールコーターでは、従来から表面粗さ６ｓ程度の梨地仕
様のクロムめっきインナーゲートロールを使用してお
り、若干の期間の長短はあるのの、短い場合で５ヶ月、
長い場合でも１箇月程度でクロムめっきの腐食を生じ、
交換を余儀なくされていた。

【００２０】また、濡れ性が良く、下地防食性の良いこ
とを利用して、例えば図２及び図３に示すように、塗料
の代わりに水を塗布し、紙の光沢を改善する目的の水塗
工用コーターのアプリケーターロールに適用することも
可能である。図中、１はアプリケーターロール、２はイ
ンナーゲートロール、６はバックアップロール（ゴ
ム）、７はピックアップロール（ゴムまたはクロムめっ
き）、８は水である。すなわち、ゲートロールコーター
では、インナーゲートロールと呼ばれているものが、水
塗工の場合では、直接紙に接触するためにアプリーター
ロールと称され、従ってウレタン樹脂ではなくクロムめ
っき被覆であるが、この場合でも濡れ性の欠如と下地防
食性の問題がしばしば生じている。従って、水塗工用の
クロムめっきアプリケーターロールに代えて、本発明の
酸化クロム被覆アプリケーターロールとすれば極めて有
用である。

【００２１】

【発明の効果】上述のように、ゲートロールコーターの
インナーゲートロールあるいは水塗工用コーターのアプ
リケーターロールの表面にセラミックスである酸化クロ
ムを被覆すると、クロムめっき被覆したロールに見られ
た被膜の腐食や下地の発錆による膨れが全く発生せず、
しかも濡れ性が良好で塗りむらの無い塗工が可能な長寿
命のロールが提供できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のロールを用いたゲートロールコーター
の概略構成図である。

【図２】本発明のロールを用いた水塗工用コントラコー
ターの概略構成図である。

【図３】本発明のロールを用いた水塗工用コーターの概
略構成図である。

【符号の説明】

１ アプリケーターロール ２ インナーゲートロール ３ アウターゲートロール ４ 塗料 ５ 紙

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 略水平に並設され、互いに圧接されな
   がら回転する一対のゲートロールと、一方のゲートロー
   ルに圧接されて両ゲートロールの間をロールの回転によ
   り下方向に通過した塗料を長尺の連続紙に塗布するアプ
   リケーターロールを備えるゲートロールコーターおける
   前記一方のゲートロールの表面を、耐久性と耐蝕性及び
   濡れ性と摩擦係数に優れたセラミックスで被覆したこと
   を特徴とするコーター用のセラミックス被覆ロール。
2. 【請求項２】 一部を水中に浸漬されながら水平方向
   を軸として回転するピックアップロールと、回転しなが
   ら長尺の連続紙の裏面側を支えるバックアップロール
   と、連続紙を介して前記バックアップロールに圧接され
   ると共に、前記ピックアップロールの表面にも圧接され
   て、ピックアップロールの表面から転写された水を連続
   紙の表面に塗布するアプリケーターロールを備える水塗
   工用コーターにおける前記アプリケーターロールの表面
   を、耐久性と耐蝕性及び濡れ性と摩擦係数に優れたセラ
   ミックスで被覆したことを特徴とするコーター用のセラ
   ミックス被覆ロール。
3. 【請求項３】 セラミックスはクロム系酸化物である
   ことを特徴とする請求項１又は２に記載のコーター用の
   セラミックス被覆ロール。