JPWO2004000470A1 - 均一塗工性、耐食性、耐摩耗性に優れ、濡れ性の高い塗工液転写ロール - Google Patents
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Abstract
抄紙機もしくは板紙抄紙機の塗工パートで用いるメタリングロールである。アンダーコート(2)として金属皮膜層のサーメットを、その上にセラミックス層(3)をトップコートとして気孔率1〜20%程度で溶射し、その後コーティング層の表面を有機系または無機系封孔剤により封孔処理し、最終的には研磨によりロール外面の粗さがRa0.2〜0.4μmの表面精度に仕上げることにより形成する。非常に硬く表面も滑らかなセラミックス溶射皮膜であるため、耐摩耗性能に優れ、塗工液中に含まれる微小硬質粒子による摩耗を防ぐ。封孔処理により皮膜を環境遮断するので耐食性に優れ塗工液による腐食を防ぐ。適切な表面粗さ、気孔率また塗工液との優れた濡れ性により、塗工液を紙へ均一に塗工することができる。
Description
本発明は抄紙機もしくは板紙抄紙機の塗工パートで用いるメタリングロールに関するものである。
新聞紙の一般的な塗工ラインを第1図に示す。塗工ラインは紙の表面・裏面にそれぞれ各3本のロールを使って塗工する合計6本のロールによって構成されている。紙は矢印方向に送られてくる。ドライヤパート7で乾燥された紙が塗工パート8に送られ、両面に塗工液が塗られる。塗液はファウンテンロール6からメタリングロール(塗工液転写ロール5)を経て、アプリケータロール4にて紙に塗工される。塗布量は各4、5ロール間の加圧力及び各ロールの速度比により調整されている。メタリングロール表面処理材質としては、数種類の材料が挙げられ、それぞれ異なる表面処理が行われている。
ファウンテンロール6、アプリケータロール4はゴムまたは樹脂製であるが、メタリングロール5は古くは低炭素鋼等で作製され、またその表面にハードクロムメッキを施し、ブラストで表面を細かく荒らして使用に供していたが、塗工成分の変化により塗工液中に塩素イオンを含むようになり、炭素鋼基材に孔食を発生し使用に耐えなかった。そのため、オーステナイトステンレス鋼で製作し対応を図ったが、ハードクロムメッキ層は元来チャンネルポーラス、ピンポーラス層であり、塗液が基材に達し塩素イオンによる孔食が発生して1、2ヶ月の寿命であった。
ファウンテンロール6、アプリケータロール4はゴムまたは樹脂製であるが、メタリングロール5は古くは低炭素鋼等で作製され、またその表面にハードクロムメッキを施し、ブラストで表面を細かく荒らして使用に供していたが、塗工成分の変化により塗工液中に塩素イオンを含むようになり、炭素鋼基材に孔食を発生し使用に耐えなかった。そのため、オーステナイトステンレス鋼で製作し対応を図ったが、ハードクロムメッキ層は元来チャンネルポーラス、ピンポーラス層であり、塗液が基材に達し塩素イオンによる孔食が発生して1、2ヶ月の寿命であった。
製紙工程の塗工液転写プロセスにおいて従来使用されてきた金属ロールでは、耐食性のほかにも、均一性及び耐摩耗性に難点があった。また、より少量のサイズ液で均一なコーティング処理することが、製造コスト低減のためにも求められていた。これらの諸要件を満たすべく、金属ロール表面の溶射処理に関し鋭意検討した結果、本発明を完遂するに到った。
本発明である、抄紙機もしくは板紙抄紙機の塗工パートで用いる塗工液転写ロールに関し、更に詳細な説明を加えるが、この塗工液転写ロールは、ロールのシェル胴周面上に、アンダーコート層および/またはトップコート層を形成したものである。
本発明のアンダーコート層のHVOF溶射処理に用いることのできる金属としてはニッケルがあり、合金としてはニッケルクロム合金、ニッケルアルミニウム合金、ニッケルクロム鉄モリブデン合金(ハステロイ等)、ニッケルクロムシリコンボロン等の自溶合金等がある。合金とセラミックスとの混合物としてニッケルクロムシリコンボロンにタングステンカーバイドを含むもの、タングステンカーバイドニッケルクロム、タングステンカーバイドコバルトクロム、炭化タングステンニッケルクロム等がある。セラミックスとしては、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物が利用できる。
アンダーコート材中に異種の材料を二層以上で溶射しても良い。この一層の厚さは0.1から0.2mm程度で、合計した層の厚みを0.4mmまたはそれ以上にする。これらにより耐食性の高いアンダーコート層を溶射形成することができる。
トップコート層に利用できるセラミックスとしては、Cr2O350〜95%とTiO2もしくはAl2O3を2〜40%とSiO2を1〜50%混合したセラミックス混合物が好適である。また、Al2O3に対しTiO2を2〜60%混合したセラミックス混合物、またはAl2O3に対しZrO2を20〜50%混合したセラミックス混合物も適する。TiO2の他に、カルシウム、ジルコニウム、マグネシウム、イットリウム、コバルト、マンガンもしくはスズの酸化物またはそれらの混合物を含んでもよい。
このトップコート層は、膜厚500〜600μmまたはそれ以上にプラズマ溶射する。気孔率は1〜20%程度とし、その後コーティング層の表面をビニール、フェノール、エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、シリコンなどの樹脂、ナトリウムケイ酸塩、エチルケイ酸塩、嫌気性メタクリル酸塩及びリン酸塩などの封孔剤により封孔処理する。さらに、研磨によりロール外面の粗さがRa0.2〜0.4μmの表面精度に仕上げる。
また本発明では、HVOFガンは燃焼ガスとしてプロパン、プロピレン、水素または灯油等を用い、通常の大気溶射の場合、また、ノズルにさらに雰囲気制御用のシュラウドノズルを付け、アルゴン、窒素ガスを流す場合も含み、形成することを特徴とする。
本発明である、抄紙機もしくは板紙抄紙機の塗工パートで用いる塗工液転写ロールに関し、更に詳細な説明を加えるが、この塗工液転写ロールは、ロールのシェル胴周面上に、アンダーコート層および/またはトップコート層を形成したものである。
本発明のアンダーコート層のHVOF溶射処理に用いることのできる金属としてはニッケルがあり、合金としてはニッケルクロム合金、ニッケルアルミニウム合金、ニッケルクロム鉄モリブデン合金(ハステロイ等)、ニッケルクロムシリコンボロン等の自溶合金等がある。合金とセラミックスとの混合物としてニッケルクロムシリコンボロンにタングステンカーバイドを含むもの、タングステンカーバイドニッケルクロム、タングステンカーバイドコバルトクロム、炭化タングステンニッケルクロム等がある。セラミックスとしては、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物が利用できる。
アンダーコート材中に異種の材料を二層以上で溶射しても良い。この一層の厚さは0.1から0.2mm程度で、合計した層の厚みを0.4mmまたはそれ以上にする。これらにより耐食性の高いアンダーコート層を溶射形成することができる。
トップコート層に利用できるセラミックスとしては、Cr2O350〜95%とTiO2もしくはAl2O3を2〜40%とSiO2を1〜50%混合したセラミックス混合物が好適である。また、Al2O3に対しTiO2を2〜60%混合したセラミックス混合物、またはAl2O3に対しZrO2を20〜50%混合したセラミックス混合物も適する。TiO2の他に、カルシウム、ジルコニウム、マグネシウム、イットリウム、コバルト、マンガンもしくはスズの酸化物またはそれらの混合物を含んでもよい。
このトップコート層は、膜厚500〜600μmまたはそれ以上にプラズマ溶射する。気孔率は1〜20%程度とし、その後コーティング層の表面をビニール、フェノール、エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、シリコンなどの樹脂、ナトリウムケイ酸塩、エチルケイ酸塩、嫌気性メタクリル酸塩及びリン酸塩などの封孔剤により封孔処理する。さらに、研磨によりロール外面の粗さがRa0.2〜0.4μmの表面精度に仕上げる。
また本発明では、HVOFガンは燃焼ガスとしてプロパン、プロピレン、水素または灯油等を用い、通常の大気溶射の場合、また、ノズルにさらに雰囲気制御用のシュラウドノズルを付け、アルゴン、窒素ガスを流す場合も含み、形成することを特徴とする。
第1図は本発明の塗工パート及びその前後のパートであるドライヤパートを示す図である。
第2図は本発明の好ましい実施例を示す図である。
第3図はカラー液を滴下した際の液滴に対する各種皮膜の接触角値を示す図である。
第2図は本発明の好ましい実施例を示す図である。
第3図はカラー液を滴下した際の液滴に対する各種皮膜の接触角値を示す図である。
抄紙機、特に新聞紙及び上質紙の製紙過程における金属製の塗工液転写ロールのシェル胴周面に、本発明に基づくアンダーコート層及び/またはトップコート層を溶射処理し、封孔処理、研磨加工等を行ったものを当該用途に使用する。
以下実施例により、具体的な形成膜とその形成方法を示すが、本発明の内容がこの例に限定されないことは当然である。
金属性塗工液転写ロールのシェル胴周面に、ニッケルアルミ合金をHVOFにて溶射する。次に、Cr2O3(90%)、TiO2(5%)及びSiO2(5%)からなるセラミックス層を溶射して形成する。これに、有機系または無機系封孔剤で封孔処理したのち、ロール外面の粗さがRa0.2〜0.4μmに仕上げる。
このロールは、第1図に示した5の箇所で使用される。従来品WC溶射皮膜ロール、ハードクロムメッキロール、SUS製ロールと本発明品であるセラミックスロールを使用し、各ロールの表面特性並びに10時間以上経過後の塗工性、腐食性、摩耗性を比較評価した。その結果を表1に示す。本発明の極めて良好な使用結果が明らかとなった。
以下の検討により、本発明の処理膜層の優れた耐食性を確認した。ガラスT字管の左右に試験片を取り付け、中質微塗工液にPVAと3%の塩分を加えた液を中に入れ、そのT字管を200時間、一定温度45℃の液中に浸漬した。コバルトを含むサーメットでは浸漬後8時間で気相部の腐食、NiCrを含むサーメットでは浸漬後24時間で浸漬部の腐食が見られたことに対し、セラミックス層Cr2O3を溶射し封孔処理したもの及びTiO2ベースのセラミックス層を溶射し封孔処理した本発明品では、200時間浸漬後でも腐食がみられなかった。サーメットサンプルを浸漬後、EPMAによる面分析した結果、腐食部には多量のFeが確認された。本発明品は、腐食に対して優れた耐性を持つことが分かった。
さらに第3図に示すように、50×50×5(mm)に切断したSS400片にWC溶射皮膜、ハードクロムメッキ、セラミックスを施工し、その皮膜上にカラー液滴を約3.0μl滴下し、協和界面株式会社製の自動接触角計でカラー液に対する濡れ性を測定した。カラー液に対しては、セラミックスロールの接触角が最も小さく(48.4°)、最も濡れ性に優れた製品であることが分かった。
同様の溶射処理と封孔処理を行った実機塗工液転写ロール(φ810×5,500mmL)を作製し実用試験を行った結果、さらに以下のことが明らかとなった。(1)封孔処理により皮膜を環境遮断しているため、塗工液による腐食を防ぐことができた。(2)セラミックス溶射皮膜は非常に硬いため、塗工液中に含まれる微小硬質粒子による摩耗を防ぐことができた。(3)セラミックス溶射皮膜は非常に硬く表面も滑らかなため、ロール胴周面に付着している塗工液を除去するために使用するワイパーと呼ばれるドクターブレードによる摩耗、また隣り合うロール(アプリケータロール、ファウンテンロール)との接触による摩耗を防ぐことができた。(4)セラミックス溶射皮膜は塗工液との濡れ性に優れているため、塗工液を紙へ均一に施工できた。
以下実施例により、具体的な形成膜とその形成方法を示すが、本発明の内容がこの例に限定されないことは当然である。
金属性塗工液転写ロールのシェル胴周面に、ニッケルアルミ合金をHVOFにて溶射する。次に、Cr2O3(90%)、TiO2(5%)及びSiO2(5%)からなるセラミックス層を溶射して形成する。これに、有機系または無機系封孔剤で封孔処理したのち、ロール外面の粗さがRa0.2〜0.4μmに仕上げる。
このロールは、第1図に示した5の箇所で使用される。従来品WC溶射皮膜ロール、ハードクロムメッキロール、SUS製ロールと本発明品であるセラミックスロールを使用し、各ロールの表面特性並びに10時間以上経過後の塗工性、腐食性、摩耗性を比較評価した。その結果を表1に示す。本発明の極めて良好な使用結果が明らかとなった。
以下の検討により、本発明の処理膜層の優れた耐食性を確認した。ガラスT字管の左右に試験片を取り付け、中質微塗工液にPVAと3%の塩分を加えた液を中に入れ、そのT字管を200時間、一定温度45℃の液中に浸漬した。コバルトを含むサーメットでは浸漬後8時間で気相部の腐食、NiCrを含むサーメットでは浸漬後24時間で浸漬部の腐食が見られたことに対し、セラミックス層Cr2O3を溶射し封孔処理したもの及びTiO2ベースのセラミックス層を溶射し封孔処理した本発明品では、200時間浸漬後でも腐食がみられなかった。サーメットサンプルを浸漬後、EPMAによる面分析した結果、腐食部には多量のFeが確認された。本発明品は、腐食に対して優れた耐性を持つことが分かった。
さらに第3図に示すように、50×50×5(mm)に切断したSS400片にWC溶射皮膜、ハードクロムメッキ、セラミックスを施工し、その皮膜上にカラー液滴を約3.0μl滴下し、協和界面株式会社製の自動接触角計でカラー液に対する濡れ性を測定した。カラー液に対しては、セラミックスロールの接触角が最も小さく(48.4°)、最も濡れ性に優れた製品であることが分かった。
同様の溶射処理と封孔処理を行った実機塗工液転写ロール(φ810×5,500mmL)を作製し実用試験を行った結果、さらに以下のことが明らかとなった。(1)封孔処理により皮膜を環境遮断しているため、塗工液による腐食を防ぐことができた。(2)セラミックス溶射皮膜は非常に硬いため、塗工液中に含まれる微小硬質粒子による摩耗を防ぐことができた。(3)セラミックス溶射皮膜は非常に硬く表面も滑らかなため、ロール胴周面に付着している塗工液を除去するために使用するワイパーと呼ばれるドクターブレードによる摩耗、また隣り合うロール(アプリケータロール、ファウンテンロール)との接触による摩耗を防ぐことができた。(4)セラミックス溶射皮膜は塗工液との濡れ性に優れているため、塗工液を紙へ均一に施工できた。
アンダーコートとして金属皮膜層のサーメットを溶射し、その上にセラミックス層をトップコートとして気孔率1〜20%程度で溶射し、その後コーティング層の表面を有機系または無機系封孔剤により封孔処理し、最終的には研磨によりロール外面の粗さがRa0.2〜0.4μmの表面精度に仕上げることにより形成された実機用ロールは、適切な表面粗さ、気孔率また塗工液との優れた濡れ性により、塗工液を紙へ均一に塗工することができた。その上、優れた耐摩耗性能と環境遮断による耐食性の飛躍的改善により、均一塗工性を長期間維持できることが明らかとなった。
Claims (7)
- 製紙用塗工液転写ロールのシェル胴周面上に、金属、合金、炭化物またはこれらの混合物を、厚さ0.1から0.2mm程度でHVOF溶射により形成したアンダーコート金属皮膜層。
- 請求項1記載の金属皮膜層が、異種の材料で二層以上形成した層からなり、一層の厚さは0.1から0.2mm程度であって、合計0.4mmまたはそれ以上であるアンダーコート金属皮膜層。
- 請求項1又は請求項2記載のアンダーコート金属皮膜層上に、セラミックスを膜厚500〜600μmまたはそれ以上でプラズマ溶射したトップコートセラミックス層を含む表面処理層。
- 請求項3記載の表面処理層をビニール、フェノール、エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、シリコンなどの樹脂、ナトリウムケイ酸塩、エチルケイ酸塩、嫌気性メタクリル酸塩及びリン酸塩などの封孔剤で封孔処理した表面処理層。
- 請求項4記載の表面処理層を研磨しロール外面の粗さがRa0.2〜0.4μmである表面処理層。
- 金属、合金、炭化物またはこれらの混合物をHVOFガンで溶射するに際し、燃焼ガスとしてプロパン、プロピレン、水素または灯油を用い、大気中で行うか、またはアルゴンまたは窒素の雰囲気制御下で行う請求項1、2又は3記載の表面処理層。
- 請求項5記載の研磨表面処理層を有し、その気孔率が1〜20%程度であり、外面の粗さRaが0.2〜0.4μmである製紙用塗工液転写ロール。
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