JP5244985B2 - オフセット印刷機用インキングローラ - Google Patents

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Description

本発明は、オフセット印刷機用インキングローラに関し、より詳細には耐摩耗性、耐薬品性、親油性、撥水性、および耐溶剤性に優れたオフセット印刷機用インキングローラに関する。
一般的なオフセット印刷機において、インキング装置は図2に示すように、インキ壷から呼び出されたインキを練り合わせ、適度な流動性を持たせると共に、湿し水との練り合わせで適度な乳化状態にしたインキを版面に供給する役割を持っている。そのために硬質ローラ(金属ローラ;銅、リルサン)と軟質ローラ(ゴムローラ;NBR)とを交互に数本〜20数本配列し装置となっている。
この硬質ローラの表面特性としては、特にインキ転移性の良いもの(表面エネルギーがインキのもつ表面エネルギーよりも高く、しかもそのエネルギー親油性比率が大きいもの)、その親油性が経時的に劣化しないものが必要である。それらに適合する材料として鉄ローラ表面に銅メッキ(または銅クラッド管挿入)したもの、または、リルサンライニングしたローラが一般的に使用されている。
このインキング装置の主たる目的は、版面の絵柄面積率に対応したインキ量を安定的に版面に供給することであるが、オフセット印刷技術の特性上、版面には必ず湿し水が供給される。なお、水なし平版印刷の場合は水を使用しない。この湿し水は、給水ローラ(図2;符号8〜11)を介して版面に供給されるが、それ以外に給水ローラとインキングローラ間にブリッジローラ((図2;符号12)を配置し、インキと水の最適乳化状態を短時間に形成するような装置になっている場合が多い。この湿し水の中には、水の表面張力を下げ、また、版の感脂化を防止するための化学薬品を配合したエッチ液が添加されている。
版面に供給された湿し水は、ブランケット胴(ゴム胴)2を介して印刷紙にも転移していく。印刷紙(特にコート紙、アート紙)の表面には、紙の表面を滑らかにし、光沢度を高めるために塗工剤(カオリン;SiO、Al、炭酸カルシウム;CaCO等)がコーティングされている。また、インキの中には、インキの乳化特性改善のため、微量な燐酸カルシウムCa(POが配合されている。
ブランケット胴を介して印刷紙に湿し水が供給されると、紙面上のコート材の一部が水に溶けて、ブランケットに付着し、これ等のコート材は、更にブランケットから版、インキングローラへと逆流してインキングローラ上のインキの中の乳化水に練りこまれる。
また、インキングローラでインキを練り合わせることにより、インキングローラ(インキ)の温度が上昇し、インキの印刷適正温度(35〜40℃)を超えると、様々な印刷障害が発生するため、金属ローラ(銅ローラ)の内面に水を循環してローラ冷却する方式が一般的に採用されている。
まず、インキングローラの中の硬質ローラとして銅メッキ(または銅クラッド)ローラを使用している場合は、新品の銅表面は親油性で、且つ、撥水性であるが、しばらく、操業を続けると湿し水中のエッチ液(湿し水のpH;は通常4〜6に調整されている)による酸化、または、紙の塗工材(CaCO、SiO、Al等)、インキ中のCa(POが銅ローラ表面に付着して、親水性に変化し易い。
特に、親水性になると版面の水がインキングローラに上がり易くなり、また、乳化したインキは銅ローラ表面上でインキよりも水が付着し易くなるため、銅ローラ面にインキが転移しにくくなる。よって、インキ壷から呼び出されたインキが版面に下りづらくなり、益々版面の水がインキングローラ上に逆流してローラストリッピング現象(オフセット印刷中に、インキローラにインキが着かなくなる現象)が発生する。
これ等のローラストリッピング現象は、フィルムや化学合成紙等非給水性の印刷材料に印刷するときに発生し易く、高級印刷物が求められる昨今特に、その対策が求められている。
一方、硬質ローラとして樹脂ライニングしたリルサンローラを使用する場合は、銅に比べて親油性はよく(大豆油との接触角が低く)、撥水性は低い(水との接触角は低い)。しかし、長期間操業によるリルサンローラ表面の酸化、紙の塗工材(CaCO、SiO、Al等)やCa(POの付着は、銅ローラにくらべて少ないため、親油性、撥水性の変化が少なく、長期間使用した場合は、銅ローラよりリルサンローラの方が、親油性、撥水性がよい状態を維持できる。すなわち、耐ローラストリッピング性に対しては、銅ローラより、リルサンローラの方が優れている。
また上記の従来例以外に、特許文献1には、版胴に印刷インキを供給するオフセット印刷用のインキングローラに関するものであって、少なくとも合成ゴムのローラ本体の表層をアルミニウム、真鍮などの金属粉が均一に混入されたウレタン樹脂を形成したローラの技術について開示されている。
さらに特許文献2には、オフセット輪転機のインキローラに関するものであり、金属製ローラ表面に銅とセラミックスとの複合材料を溶射し、その溶射層の銅含有率が60%以上であるインキングローラの技術について開示されている。銅は、ビッカース硬度が低く、ドクターブレードにてインキ掻き取りする際に摩耗し易いため、セラミックスと銅の混合粉末を溶射した被膜にすることにより、銅の親油性を維持しつつ耐摩耗性を向上させることを目的とした技術である。
特開昭61−14997号公報 特開昭62−167092号公報
しかし、上記リルサンローラの場合については、リルサンが樹脂であり、金属の銅に比べて傷がつき易く、そこから腐食性液が浸透して鉄母材との界面で錆が発生し、被膜膨れのトラブルを引き起こし易いため、厚め(0.4mm程度)にライニングする必要がある(薄いと被膜が破れて錆の発生による被膜の膨れ等の問題がある)。
また、冷却用ローラの場合、熱伝導率の低い樹脂を厚めライニングしたリルサンローラは冷却効率が低下するため、冷却用ローラには不向きである。
さらに、リルサン樹脂のコーティング法としては、厚膜被膜を効率よくコーティングするためには流動浸漬法が一般的に用いられている。しかし、流動浸漬法のコーティングは、被膜厚みのバラツキが大きいため、仕上げ寸法よりかなり厚めにコーティングして、余肉を研磨にて削り落す必要がある。故に被膜のコーティングの効率は良いが、研磨に要する時間とコストが大幅に上昇し、製造コストも高くなるという問題がある。
一方、特許文献1に係る発明では、インキ着けローラ(ゴムローラ)の改善を目的にしており、合成ゴムローラ本体の表層をアルミニウム、真鍮などの金属分が均一に混入されたウレタン樹脂を形成したローラであり、印刷インキに含有されている溶剤の影響によって合成ゴムローラ本体が劣化するのを防ぎ、微小な凹凸が表面にできてインキ粒子の飛散をなくするというものであり、インキングローラの中の硬質ローラの改善に関する技術ではない。
また、特許文献2に係る発明では、ローラ最表層として、銅(60%)およびセラミックス(炭化クロム)の溶射被膜を使用しているため、当該溶射被膜は銅に比べてより親水性であり、さらに銅は、使用中に酸化してますます親水性化するため、硬質ローラと軟質ローラ(ゴムローラ)を多数組み合わせたインキ練ローラとしてはローラストリッピングの面から好ましくない。また、引用文献2のようなセラミックス溶射層は、通常多孔質で、特殊な処理をしないと溶射被膜の気孔中に腐食性の湿し水が浸透して、金属製ローラとの界面で腐食による溶射被膜膨れの問題がある。
これ等の欠点や問題を解消するため、ローラストリッピングを起こしにくく、ローラの傷が起こりにくく、防錆効果が高く、熱伝導率が良く、且つ、安価なローラを提供することを目的とする。
上記諸目的を達成するため、金属製ローラと、前記金属製ローラ表面に耐摩耗性、耐溶剤性、および耐薬品性の樹脂をコーティングすることにより形成された、表面粗度Rz1〜15μmの滑らかな表面を有する樹脂層と、を備えたオフセット印刷機用インキングローラ。およびその製造方法を提供する。
本発明のオフセット印刷機用インキングローラは、従来公知の銅メッキローラに比べて耐ローラストリッピング性に優れ、また、公知のリルサンローラより更に良好である。また、従来の鉄基材にリルサンを厚めライニングし、研磨加工にて径精度及び粗度を仕上げる方法に比べて、樹脂コーティング後の研磨工程を省略できることによるコスト低減効果もあり、非常に、実用性の高い発明である。
また、従来の厚膜リルサンライニングローラよりも熱伝導率の低い樹脂層が薄い分ローラの冷却効率が高いという効果を併せ持つ発明である。
さらに、本発明に係るオフセット印刷機用インキングローラは、ローラ表面にカルシウム固着物が沈着しにくく、かつカルシウム固形物の洗浄性が極めて優れている。
本発明に係るインキ練りローラ(硬質ローラ)の一実施態様における断面構造を模式的に示す図、 オフセット印刷機におけるインキ・給水ローラ配列の一例を示す図、 実施例1のローラ表面粗度チャート、 参考例2のローラ表面の粗度チャートである。
本発明の第一は、金属製ローラと、耐食性および耐摩耗性の金属材料を前記金属製ローラ表面に緻密溶射することにより形成された厚さ100〜250μm、かつ表面粗度Rz30〜60μmの凹凸を有する金属層と、前記金属層表面に静電塗装法により設けられた厚さ20〜150μm、かつ表面粗度Rz1〜15μmの滑らかな表面を有する樹脂層と、を有し、前記樹脂層は、大豆油との接触角が30°以下であり、かつ水との接触角が80°以上である、オフセット印刷機用インキングローラある。
金属性ローラと樹脂層との間に耐摩耗性耐腐食性の金属層を緻密溶射にて設けていることから、樹脂層は薄膜被膜を静電塗装法にて効率よくコーティングすることができ、かつ、高い耐腐食性を維持できる。また、樹脂層は金属層の凸部より深く傷が入り難いため樹脂被膜の長寿命化がはかれる。さらに、熱伝導率の低い樹脂層を薄くすることより、冷却ローラとしてのインキ冷却効率を高めることができる。
なお、図1に本発明に係るインキングローラの構造の模式図を示してある。すなわち、図1のAは、金属製ローラ(基材)13の表面に、金属(溶射)層14を形成させた後耐摩耗性、耐溶剤性、および耐薬品性の樹脂15を金属(溶射)層14表面に形成させたものである。
本発明に係る溶射は、緻密溶射が好ましく、緻密溶射を行う溶射方法としては、プラズマ溶射、フレーム溶射、アーク溶射等いずれの溶射方式でもよいが、特に薄い溶射膜厚で充分な防錆効果を上げるためには、無気孔に近い緻密な被膜を形成する必要があり、HVOF、HVAF、HVCW(線材溶射 高速フレームガン)等の溶射ガンを用いて溶射することが好ましい。また、溶射ガンの方式により、上記溶射材料も粉体、線材の中から溶射ガンに合ったものを選択することができる。
上記、緻密溶射はコスト的にも高価なため、溶射被膜の気孔の中に浸透性の高い封孔剤を封孔することによって無気孔化することにより、溶射被膜の膜厚を薄くしたり、より安価なプラズマ溶射等の溶射方式を採用することもできる。
上記封孔剤としては、使用する金属材料に最適な公知のものであれば利用することができる。具体的には、無機系では、珪酸ナトリウム、アルキルシリケート、オルガノシロキサンなどが挙げられ、有機質系では、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニール樹脂、ブチラール樹脂などがある。
例えば、HVOFの溶射ガンを用いて上記緻密溶射するためには、SUS316Lなどの平均粒子径20〜35μmの金属材料を、燃料であるプロピレンの圧力0.5〜0.8MPa、支燃性ガスである酸素の圧力0.5〜1.05MPa、エアー圧力0.3〜0.7MPa、溶射距離200〜400mmの条件で金属製ローラに溶射することが好ましい。
上記条件で、金属材料を金属製ローラに緻密溶射することにより、空孔率0.1〜0.5%の金属溶射層を形成することができる。
本発明に係る金属製ローラ表面に金属材料を溶射により形成される表面凹凸は、その上にコーティングする樹脂材料の密着性を高める目的と金属溶射被膜の凸部の面以下の樹脂材料が磨耗しないようにするのが目的である。前記表面凹凸の山の高さを粗度表示すると、Rz20〜60μmが好ましく、Rz30〜60μmがより好ましく、さらにRz30〜50μmがより好ましい。Rzが20μm未満では、樹脂材料の磨耗防止効果が低下するし、Rzが60μm超では、被膜の気孔率が大きくなり防錆効果が低下するため好ましくない。なお、表面粗度Rmax、Rzの規定は、JIS規格B0601−1982で定義されたものである。
本発明に係る金属層の溶射被膜の膜厚は、100〜250μmが好ましく、120〜230μmがより好ましく、150〜200μmがさらに好ましい。膜厚が100μm未満では、防錆効果が不十分で、250μm超では、コストアップとなるからである。
本発明に係る溶射用の耐摩耗性および耐食性の高い金属材料としては、公知の耐摩耗性および耐食性金属材料であれば特に制限されないが、例えばステンレス、Ni−Cr、Ni−Al、その他のNi基合金、Al基合金等が好ましく、その中から、耐食性能とコスト等を勘案の上選択できる。コスト的にはステンレス、耐食性能的にはNi基合金、特にSUS316L、80Ni20Crが優れており、溶射膜厚みを調整することにより、上記のいずれも適している。
本発明に係る耐食性金属製ローラの材質は、鉄、ステンレス、アルミ二ウム、ニッケル、クロム等様々な金属の材質が好ましく、本発明に係る耐食性金属製ローラの基材は、錆易い欠点があるものの、強度が強く、非常に安価な鉄パイプがより好ましい。
本発明に係る樹脂層の樹脂の材料としては、親油性、撥水性、耐摩耗性、耐溶剤性、耐薬品性の高い全ての条件を満たす必要があり、本発明に係る樹脂層が親油性である条件としては、大豆油との接触角が50°以下であり、好ましくは30°以下であり、より好ましくは28°未満である。
なお、本明細書で実際に使用した「大豆油」は、和光純薬工業社製のSoybean Oilであり、ケン化価188〜195、ヨウ素価123〜42を使用している。
一般的に銅ローラの新品時における銅ローラと大豆油との接触角は40〜50°であり、これでインキの転移性は充分確保できるが、より親油性の高い材料の方が好ましい。
また従来例のリルサン(11−ナイロン)ローラと大豆油との接触角は28°で、銅に比べてはるかに良好である。これを更に上回る親油性(大豆油との接触角が小さい)の材料にすることにより、更なるインキ転移性の改善を図る。
本発明に係る樹脂層が撥水性である条件としては、水との接触角が80°以上であり、好ましくは83°以上、より好ましくは85°以上である。これより更に撥水性の高いものが良い。リルサンローラの水との接触角が83°で、ゴムローラ(NBR)の水との接触角は80°であり、80°以上であれば問題ないが、撥水性が高いほど版面からインキングローラへの水の逆流は抑えられ、インキの過剰乳化を抑制できる。故に出来るだけ撥水性の高い(水との接触角の大きい)材料を選択することによりローラストリッピング防止効果が改善される。
なお、本明細書における接触角の測定方法は、JIS R 3257 (1999) 「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」を準用した。すなわち、下記式(1)に示すように、水あるいは大豆油の接触角の測定において、水平に設置した実機同等ローラの表面に1.5〜2mlの液滴を滴下し、胴長方向に直角の方向から、液滴を水平に見えるようにデジタルマイクロスコープ(キーエンス社デジタルマイクロスコープ VH−6300)を20〜50倍の倍率に調整して写真撮影し、接線法の中のθ/2法(θ;接触角)にて液滴の幅と高さから接触角を計算した。
上記の親水性の数値は、ローラ新品時の水との接触角であるが、更に大切なことは、この状態が、長期間使用しても性能劣化しないことである。一般的な銅ローラの場合、初期の撥水性(水との接触角)は、93〜99°で非常に良好であるが、銅は酸性(PH;4〜6)の湿し水に常時接触することにより酸化され易く、また、湿し水に溶け込んだ紙の塗工材(CaCO、SiO、Al等)やインキ中のCa(POが付着し易く且つ取れにくいため、短期間で撥水性能が低下(水との接触角が低くなる)する。
ローラ表面が親水性化すると、版面の水は益々インキングローラ側へ逆流し、更に乳化インキ中の水がローラ表面に濡れ易くなるため、ローラ表面の酸化、塗工材(CaCO、SiO、Al等)やインキ中のCa(POの付着が促進されるという悪循環を起こす。
故に、湿し水による酸化、塗工材(CaCO、SiO、Al等)やインキ中のCa(PO等の付着しにくい材料を選択することが極めて重要である。その点、銅ローラに比べてリルサンローラは、好ましいが、更に親油性が良く(大豆油との接触角が小さい)、撥水性の高い(水との接触角が大きい)材料にすることにより、耐ローラストリッピング性、インキ転移性を改善できる材料を追究した。
上記、親油性、撥水性の性能を備えながら、更に耐摩耗性、耐溶剤性、耐薬品性の高く且つ、安価で施工性の容易な材料でなければ、実用的に使用できない。
なお、本明細書で使用する「耐摩耗性」とは、軟質ローラと硬質ローラとの接触回転(異同速)による摩擦作用で、硬質ローラ表面がインキ中の顔料等の微細固形物により傷つく現象をいい、本明細書で使用する「耐溶剤性」とは、一般に極性の樹脂は吸水率も大きく、水や溶剤を含むと強度の低下、透明性の低下、膨張などを起こすが、印刷機周辺で使用される代表的な溶剤(洗い油、トルエン、ブランケット洗剤、UVローラ洗浄剤、給水ローラ洗浄剤など)に対して、吸収率が低い、または溶剤を含んでも強度が低下しない、もしくは膨張などを起こしにくい性質をいい、本明細書で使用する「耐薬品性」とは、塩類、酸類、またはアルカリ類などに変質されにくい性質をいう。
上記の親油性、撥水性の性能を備えながら、更に耐摩耗性、耐溶剤性、耐薬品性の高い樹脂、すなわち、本発明に係る樹脂は、ポリアミド樹脂が好ましく、当該ポリアミド樹脂としては例えば、以下のようなものが挙げられる。
本発明に係る樹脂は、ポリアミド樹脂が好ましく、当該ポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミド樹脂のことである。本発明で使用するポリアミド樹脂は、ナイロン6、ナイロン12、またはナイロン11を挙げることができ、さらにこれらポリアミド樹脂の耐熱性、振動溶着性などの特性向上を目的に、2種以上のポリアミド樹脂の混合物として用いることも実用上好適である。
本発明者は、上記のような総合的な特性をもつ材料を数多くのコーティング材の中から調査、テストを繰り返し、中でも、12−ナイロンが極めて優れていることを見出した。
本発明に係るインキングローラにおいて、金属製ローラの表面に形成された金属層に樹脂層を設ける場合の樹脂層の厚みは、20〜200μmであり、50〜150μmがより好ましく、50〜100μmがさらに好ましい。20μm未満では磨耗による寿命が短くなり、また、200μm超になるとコーティングしたままでは、ローラの径精度のバラツキが大きくなり、径精度を出すための研磨工程が必要になり、コストアップとなる。さらに、樹脂層が厚いほど、伝熱抵抗が大きくなり冷却ローラとしての性能が低下し、当て傷の深さが深くなる(本特許の場合の当て傷は、金属溶射層の凸部で止まる)。すなわち、樹脂層を厚くしても深い傷が入るとローラ交換が必要となるため結果として寿命延長効果が低い。
本発明に係るインキングローラにおいて、金属製ローラの表面に形成された金属層に樹脂層を設ける方法としては、静電塗装により樹脂層を形成させるものであるが、粉体状の樹脂を金属層にコーティングする粉体塗装、流動浸漬法、電着塗装法、またはフレーム溶射法でも利用できると考えられる。
当該静電塗装にて樹脂層をコーティングすることにより、非常に径精度の高く、かつ、表面粗度プロフィルが、研磨面と異なり、非常に滑らかな凹凸を形成することができる。すなわち、また、このような滑らかな表面粗度プロフィルの場合は、研磨や後述するSF研磨無しで径精度±0.1mmの範囲内に制御することができ、Rzは10μm前後で大きいが研磨面と異なり、プラスチックの溶融による滑らかな表面のためローラ洗浄時のインキ残りが少ない作用・効果をもたらす。
なお、本発明に係る静電塗装法とは、アースした被塗物を正極、塗料噴霧装置を負極とし、直流高電圧をかけて両極間に静電界をつくり、塗料微粒子を負に帯電させて、塗装する方法をいう。また、本発明に係る静電塗装法に用いる機器は、アネスト岩田株式会社製コロナ荷電方式の粉体塗装ユニットEP−MU10−D1、静電塗装ガンEP−MG10Lである。
これにより、ローラ表面に薄い均一な膜厚を形成することができ、かつ加熱溶融することによりローラの表面粗度が滑らかな粗度プロフィールを形成することができる。また、後述する実施例でも説明するが、本願発明の第一および第二に係るインキングローラの表面は、図3(実施例1のローラ表面)のように、うねり(長周期的な凹凸)と、細かいピッチで生ずるあらさ(短周期的な凹凸)とを有する構造である。そのため、静電塗装法により得られた本願発明の樹脂層の滑らかな表面は、うねり(長周期的な凹凸)と、細かいピッチで生ずるあらさ(短周期的な凹凸)とを有する構造であり、例えば、当該図3に示す実施例1のローラ表面のうねり(長周期的な凹凸)は2mmピッチ(いわゆる1波長)に対して12μmの高さを有し、かつ細かいピッチで生ずるあらさ(短周期的な凹凸)は、当該うねりを直線補正し、Rmax値が3μmの高さである。
上記静電塗装するためには、例えば、平均粒子径30〜50μmの樹脂を、荷電圧―70〜−75KV、吐出圧0.10〜0.20MPa、焼成温度予熱150℃〜170℃で80〜120分、溶融温度185〜195℃で20〜30分の条件で金属層を形成した金属製ローラに塗装することが好ましい。
本発明の第二は、金属製ローラと、前記金属製ローラ表面に耐摩耗性、耐溶剤性、および耐薬品性の樹脂をフレーム溶射法によりコーティングすることにより形成された、厚さ200〜300μmで、表面粗度Rz1〜15μmの滑らかな表面を有する樹脂層と、を有し、前記樹脂層は、大豆油との接触角が30°以下であり、かつ水との接触角が80°以上である、オフセット印刷機用インキングローラである。
上記本発明の第一に示したインキングローラのように、金属ローラ表面に耐食性・耐摩耗性の金属材料を緻密溶射後、静電塗装法にて樹脂材料をコーティングする場合は、最終の研磨工程省略によるコスト低減は可能であるが、金属材料緻密溶射の工程分は、コストアップの要因となる。それを回避する方法として、本発明の第二の金属ローラ表面にフレーム溶射法にて、樹脂(12−ナイロン)を直接厚めコーティングする技術を確立した。耐腐食性金属溶射被膜がない分、静電塗装によるプラスチック薄膜被膜のみでは、耐腐食性を維持できない。樹脂(12−ナイロン)を200〜300μmの厚みに、かつ、膜厚みを平均値±10μmに均一にコーティングする方法として、フレーム溶射法による施工技術を確立した。これにより、ピンホールのない厚膜被膜が形成出来、しかも、厚みが均一で、かつ、非常に滑らかな表面が形成できるため、樹脂表面を研磨することなく、最終製品に仕上げることが可能となり、上記本発明の第一に示したインキングローラより更に大幅なコスト低減が可能である。
すなわち、直接金属ローラ表面に耐摩耗性、耐溶剤性、および耐薬品性の樹脂をコーティングすることに起因して、金属ローラ表面に耐食性・耐摩耗性の金属材料を溶射後、例えば静電塗装法にてプラスチック材料をコーティングしたローラと比較した際に、簡略にインキングローラを製造することができ、金属材料溶射の工程の分のコストアップを回避することができる。
なお、図1に本発明に係るインキングローラの構造を示してある。すなわち、図1のBは、金属製ローラ(基材)13の表面に、耐摩耗性、耐溶剤性、および耐薬品性の樹脂15を直接形成させたものである。
本発明に係るインキングローラにおいて、金属製ローラに直接樹脂層をコーティングする場合の樹脂層の厚みは、200〜300μmであり、220〜280μmが好ましい。また、本発明に係る樹脂層を上記のように、ローラ表面にフレーム溶射法などで樹脂層を薄く形成すると、耐腐食性が不十分であり、また樹脂層を厚くするとコストが嵩む。そこで、上記樹脂層の厚みは、200〜300μmの範囲に制御することで、従来の厚膜リルサンローラ(リルサン厚み;0.4〜0.5mm)より、12−ナイロン被膜の膜厚は、0.2〜0.3mmと薄いため、冷却ローラとして使用する場合でも、熱伝導がよく、冷却効率を良くすることができる。200μm未満では磨耗による寿命が短くなり、樹脂のピンホールによる鉄ローラ界面での耐腐食性が問題となり、300μm超になるとコーティングしたままでは、ローラの径精度のバラツキが大きくなり、径精度を出すための研磨工程が必要になり、コストアップとなる。さらに、樹脂層が厚いほど、伝熱抵抗が大きくなり冷却ローラとしての性能が低下する。樹脂層を厚くしても当て傷や深い傷が入るとローラ交換が必要となるため結果として寿命延長効果が低い。さらに、これにより、ピンホールのない厚膜被膜が形成でき、しかも、厚みが均一で、かつ、非常に滑らかな表面が形成できるため、プラスチック表面を研磨することなく、最終製品に仕上げることが可能となり、大幅なコスト低減が可能である。勿論、最終表面は、非常に親油性が高く(大豆油との接触角が小さい)、撥水性が高い(水との接触角が大きい)プラスチック(12−ナイロン)であるため、耐ローラストリッピングは、銅ローラはもとより、リルサンローラよりも優れている。
当該フレーム溶射法では、熱源としてプロパンガス、アセチレンガス等の可燃性ガスを酸素等の支燃性ガスと混合燃焼させ、その燃焼フレームを利用するが、樹脂は融点・軟化点・分解点が低いため、温度を上げすぎず入熱を抑制し樹脂の変質を防ぐために、前記燃焼フレームの外側に冷却用エアー層を設けている。本発明に係る樹脂を、この冷却用エアー層の外側から供給し金属製ロールにコーティングするため、フレームガス溶射法においては、可燃性ガス、酸素、冷却エアー量、粉末供給量、溶射距離、溶射ピッチ、溶射ガン移動速度を適正に制御することが、樹脂溶射被膜の形成に重要になる。
前記フレームガス溶射の条件としては、例えば、プロパンガス、アセチレンガス等の可燃性ガス4〜8L/分、酸素等の支燃性ガスを前記可燃性ガスとの流量比率を2.7〜3.4にして混合燃焼させ、冷却用エアー量を圧力0.12〜0.22MPaの範囲として、粉末供給範囲を18〜72g/分、溶射距離範囲を180〜300mmであることが好ましい。
これにより、膜厚みを平均値±10μmの範囲内に均一にコーティングすることができる。また、当該フレーム溶射法にて樹脂層をコーティングすることにより、研磨や後述するSF研磨無しで径精度±0.1mmの範囲内に制御することができ、Rzは10μm前後で大きいが研磨面と異なり、プラスチックの溶融による滑らかな表面のためローラ洗浄時のインキ残りが少ない作用・効果をもたらす。
本発明に係る樹脂層の全体の表面粗度としては、Rz1〜15μmであり、1〜10μmが好ましく、1〜3μmがより好ましいが、当該表面粗度のRzでは、本発明に係る樹脂層の表面におけるうねり(長周期的な凹凸)と、細かいピッチで生ずるあらさ(短周期的な凹凸)とを規定できないため、当該うねり(長周期的な凹凸)と、細かいピッチで生ずるあらさ(短周期的な凹凸)との別途独立の好ましい範囲は、15μm以下の高さで1.5〜2.5mmピッチのうねり(長周期的な凹凸)を伴うものが好ましく、当該うねりを直線補正した粗さRmax(短周期的凹凸)が1〜3μm相当であることが好ましい。
当該樹脂層の全体の表面粗度Rzが1μm未満だと、研磨コストがかかり実用的でなく、樹脂層の表面粗度Rzが15μm超だと、インキ洗浄性に難がある。
当該樹脂層のうねりが15μm超だと、インキ転移性にバラツキが生じる。
また、本発明に係る樹脂層を金属製ローラ表面にコーティングした後、研磨により表面粗度をRz1〜15μmにしてもよく、1〜10μmが好ましく、1〜3μmがよりに好ましい。
本発明に係る樹脂層の表面は、SF研磨により表面粗度がRmax1〜3μmにすることが好ましい。
既存のインキ練りローラ(銅メッキローラ、リルサンローラ)は、研磨、スーパーフィニッシュ研磨(本明細書中SF研磨とも称する。)等により、ローラ表面粗度は、Rmax1.6〜3.2Sに仕上げている。Rmaxが3.2Sを超えると、インキングローラ洗浄時に凹凸面の凹部のインキが落ちにくく、洗浄作業時間が延びて、作業効率の低下につながる。
それに対し本発明においては、上記の静電塗装にて樹脂層を薄めコーティングすることにより、非常に径精度の高く、かつ、表面粗度プロフィルが、研磨面と異なり、非常に滑らかな凹凸を形成することができ、このような滑らかな表面粗度プロフィルの場合は、Rmax値が10μm前後の大きさでもインキングローラ洗浄時に凹凸面の凹部のインキが落ちにくくなるという問題が発生せず、従来の銅メッキローラまたはリルサンローラと同等のローラ洗浄性を維持できることを見出した。すなわち、径精度を確保するための仕上げ研磨、表面粗度(Rmax;1.6〜3.2S)を確保するためのスーパーフィニッシュ研磨等の加工工程を省略でき、大幅なコスト低減を可能にした。
本発明に係るSF(スーパーフィッシュ)研磨とは、野口工機株式会社 SM−1W−300×1300型円筒鏡面研磨機を用いて、樹脂用砥石を用い、ロール回転数、砥石回転数、送り速度、砥石圧力を適正に調整し表面粗度が目標値になるまで研磨する。
以下、本発明に係る実施態様の一例について製造方法を説明する。なお、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されることは言うまでもない。
本発明に係る実施態様の一つは、例えば鉄製のローラ基材を脱脂、ブラスト後、上記のHVOF、HVAF、HVCW等の溶射ガンを用いた溶射法により平均粒子径20〜35μmのステンレス粉などの金属材料を所定の条件で溶射して所望の厚さに金属層を形成させる。また必要により、溶射被膜の気孔の中に浸透性の高い封孔剤を封孔することによって無気孔化することにより、溶射被膜の膜厚を薄くしてもよい。次いで、12−ナイロンなどの上記ポリアミド樹脂を静電塗装法で厚さを調整し、コーティングしてオフセット印刷機用インキングローラを得る。また、上記ポリアミド樹脂をコーティング後、必要により、ウォーター・ベルトサンダー、SF研磨などによりにより軽く研磨仕上げしてインキングローラを製造することが好ましい。
本発明に係る他の実施態様の一つは、金属製のローラ基材を脱脂、ブラストして、予め150〜250℃、より好ましくは、200℃前後で予熱を行った後、樹脂層の材料である親油性・撥水性の樹脂をフレーム溶射法にて、所定の厚さコーティングし樹脂層を形成させる。また、必要により樹脂層を形成させた後、表面のうねりを制御するため、例えばウォーター・ベルトサンダーにて軽く研磨仕上げしてインキングローラを製造することが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例のみに限定されることはない。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
1.「インキングローラの製造」
(参考例1)
鉄製のローラ基材に厚さ0.2mmの銅メッキを施し、研磨後の銅メッキ厚さは、0.15mm、表面粗さをRmax;3.2S以下に仕上げしたローラを作成した。このローラ表面の親油性は、大豆油との接触角;47°、撥水性は、水との接触角;94°であった。これを印刷機のインキ転移性試験に供した。
(参考例2)
鉄製のローラ基材に厚さ0.5mmの市場で一般的に使用されているリルサンライニングを施し、研磨後のリルサン厚さ;0.4mm、表面粗度Rmax;3.2S以下に仕上げしたローラを作成した。このローラ表面の親油性は、大豆油との接触角;28°、撥水性は、水との接触角;83°であった。
(実施例1)
上記参考例1および2と同一の鉄製のローラ基材を脱脂、ブラスト後、緻密溶射システム(HVOF)の溶射ガンを用いて、燃料であるプロピレンの圧力(0.7MPa)、支燃性ガスである酸素の圧力(1.0MPa)、エアー圧力(0.7MPa)、溶射距離300mmの条件で耐食性溶射材料である粒度範囲10〜53μmのステンレス粉(SUS316L)を溶射膜厚200μm溶射した。そのときの表面粗度は、Rmax;60μmであった。その後さらに、樹脂層の材料である親油性・撥水性のプラスチック(ダイセル・エポニックス(株)製;VESTOSINT:X7182(白色)/12−ナイロン、平均粒子径d50:35μm)を静電塗装法にて、荷電圧―70KV、吐出圧0.15MPa、焼成温度予熱160℃で100分、溶融温度190℃で20分の条件で厚さ100μmコーティングしてインキングローラを製造した。そのときの表面粗度は、Rmax;13μm、Rz;9μmであった。このローラ表面の親油性は、大豆油との接触角;16°、撥水性は、水との接触角;90°であった。そして、これを参考例1と同じ印刷機のインキ転移性試験に供した。
(実施例2)
上記実施例1と同一の鉄製のローラ基材を脱脂、ブラスト後、溶射前に温度200℃予熱を行い、親油性・撥水性のプラスチック(ダイセル・エポニックス株式会社製;WS−Gray:DC46772(グレー色)/12−ナイロン、平均粒径d50:110μm)をフレーム溶射法にて、溶射条件(溶射機条件:燃料であるプロピレンの圧力(0.1MPa)、支燃性ガスである酸素の圧力(0.3MPa)、エアー圧力(0.12MPa)、材料供給機条件:エアー圧力(0.10MPa)、材料供給量40g/min、ロボット条件:移動速度300mm/min,ピッチ3mm、回転数100rpm、パス回転2、溶射距離370mm、目標膜厚:250μm)で厚さ260μmコーティングし、その後、表面のうねりを取るため、ウォーター・ベルトサンダーにて軽く研磨仕上げしてインキングローラを製造した。そのときの表面粗度は、Rmax;18μm、Rz;13μmであった。このローラ表面の親油性は、大豆油との接触角;11°、撥水性は、水との接触角;89°であった。そして、これを参考例1と同じ印刷機のインキ転移性試験に供した。
2.「インキ転移性試験およびローラ洗浄性試験」
上記参考例1、および実施例1および実施例2のローラをオフセット印刷機((株式会社小森コーポレーション製、リスロン440)のインキングユニット(図2)のインキ練りローラ(4b1、4b2、4b3)の箇所に搭載し、インキ転移性、インキ洗浄性、ローラストリッピング性、カルシウム固形物洗浄性、耐溶剤性、耐摩耗性の比較評価試験を行った。参考例1が全色全硬質ローラとして使用されている機械において、最もローラストリッピングの出やすい4色目(黄色)のインキングユニットに実施例1を3本、1色目(黒)に実施例2を3本装着し、実機における長期テストを行った。
(1)インキ転移性
ローラが新品の段階では、3ケースとも全く問題なく、インキ転移が良好であった。
(2)インキ洗浄性
参考例1のローラの表面粗度がRmax;3.2S以下であるのに対して、実施例1の表面粗度は、Rz;9μm、実施例2の表面粗度は、Rz;13μmであるにもかかわらず、インキ洗浄性は参考例1と全く遜色のないものであった。
実施例1、2は、参考例1と比較して、粗度が粗い分洗浄性が悪くなることが懸念されるが、実施例1、2は図3の粗度チャートで分るように、表面のうねりがある分Rzの値は大きくなるが、うねりを補正すると参考例2の粗度波形(図4)とほとんど変わらず、インキ洗浄性にはあまり影響しない。
すなわち、静電塗装法、あるいは、フレーム溶射法にて表面粗度Rz1〜15μmの滑らかな表面で均一なコーティング膜厚みが形成出来れば、後工程の研磨作業を省略でき、大幅なコスト低減が図れることを確認できた。
ローラストリッピング性
参考例1の銅メッキローラは、新品時は水との接触角94°で非常に撥水性が高く、インキ転移性も良好であったが、3〜6か月後(印刷ユニットによって期間は異なる)にはローラ表面が酸化し黒味がかった色に変色し、特に変色部は、ローラストリッピングが発生した。ひどいときには、インキ元ローラ近くまで水が上がってしまう。
ローラを取り外して、水との接触角を測定すると、変色の少ない箇所(ストリッピング無)では87°、変色部(ローラストリッピング箇所)は、75°であった。
すなわち、水との接触角が75°前後まで低下するとローラストリッピングが起こり易くなることが判明した。新品時の大豆油との接触角は47°に対して、上記取り外し時の変色の少ない箇所の接触角は10°、変色部の接触角は16°で、いずれも親油性に変化していた。
以上のことから考えると、銅ローラのストリッピング発生の主な要因は、ローラ表面の酸化による親水性化であるとことが分かった。(新品時より親油性は良くなっている) このローラは、通常のカルシウムリムーバーをローラ上に撒いて10分間ぐらい洗浄する方法では、変色部はほとんど改善されない。
ローラを外して、エッチ液の原液をウェスに浸し、さらに磨き粉(微細セラミックス粉末)を付けて物理的(化学的に)に変色部を磨くことにより、銅本来の色に復元する。上記磨き洗浄後の水との接触角は、変色の少なかったところ、変色していたところのいずれも85〜87°レベルで、大豆油との接触角はいずれも15〜16°であり、新品時の状態までには戻らないが、この状態であればローラストリッピングは起こらない。
しかし、ローラ磨き後3〜6か月でまたローラストリッピング発生に至るため、ローラを機械から取り外してローラ磨きをするのは、ローラメンテナンスのための作業負荷、稼働率低下のロスが非常に大きい。それに対して、実施例1、2の場合は、テスト開始後9か月経過しても、全くローラストリッピング現象は、発生していない。
実施例1,2のローラ装着のインキングユニットもインキ練りローラ(4b、4b、4b)以外は、参考例1のローラのままでテストしたため、これらのローラ洗浄のため1週間に1回の定期的なカルシウムリムーバーによる洗浄を行ったが、実施例1、2のローラはいずれもカルシウムの付着はほとんどなく、カルシウムリムーバーにて簡単に除去されており、か月後でも、親油性、撥水性はほとんど変わらなかった。
(4)カルシウム固形物洗浄性
ローラ表面に付着したカルシウム固形物を除去するため、カルシウムリムーバーにて洗浄を行ったら、参考例1の銅メッキローラは、洗浄後も銅ローラ表面の黒味がかった変色部は除去され難く、ローラを取り外してエッチ液の原液をウェスに浸し、さらに磨き粉(微細セラミックス粉末)を付けて物理的(化学的に)に変色部を磨く等非常に苦労したが、実施例1、2のローラ表面はわずかに付着した固形物は週1回のカルシウムムリムーバーによる洗浄でも簡単に洗浄され、非常に洗浄性が良好であった。
(5)耐溶剤性・(6)耐薬品性
通常のインキングローラ洗浄には洗い油等が使用されるが、たまには、インキ溶解性の高いシンナー(トルエン)等が使用されるケースもある。そのようなレアケースでも問題がないように、シンナーによる浸漬テストを行った結果、実施例1、2のローラも全く問題のないものであった。
印刷機周辺で使用される代表的な薬品(洗い油、ブランケット洗浄剤、UVローラ洗浄剤、給水ローラ洗浄剤等)についての耐薬品性についても問題のないものであった。
以下、本発明に係るインキングローラの耐溶剤性および耐薬品性の実験結果を示す。
尚、本発明に係るインキングローラの耐溶剤性および耐薬品性の実験方法は、実施例1および2で作成したインキングローラの表面に、下記表1で示す溶剤をそれぞれ染込ませたウェスで擦り、当該ローラ表面の脱落性を目視で観測する方法(I)、および実施例1および2で作成したインキングローラの表面に下記表1で示す溶剤をそれぞれ滴下して24時間後のインキングローラの表面を目視で観測する方法(II)である。
耐薬品性については、5%塩酸の滴下24時間後の表面が黄色く変色していたが、ローラ表面の樹脂層の劣化はみられず特に使用上問題となることはないと思われる。その他の溶剤に関しては、使用上全然問題ないと思われる。
(7)耐摩耗性
約9ヶ月の昼夜運転で、版胴の回転数約2100万回転のテストを続けたが、全くローラ摩耗の現象は見られなかった。
一般的に、銅ローラに比べて、リルサンローラはローラストリッピングが起こり難いといわれている。そこで、全胴全硬質ローラとして参考例2(リルサンローラ)が使用されているハイデルベルグ社製CD102−4Pで、特にローラストリッピングし易い機械(通常のプロセスインキではあまりローラストリッピングで問題ないが、UVインキではローラストリッピングし易い)を選択して、実施例1のローラを2色目(シアン)、3色目(マゼンタ)の硬質ローラ全てと交換して比較試験を行った。既設のローラ(参考例2:リルサンローラ)では、1回/週カルウムムリムーバーで洗浄を行わないと、ローラストリッピングによる印刷物の色ムラが発生していたが、実施例1に交換してからは、1年間同様な洗浄でも全く印刷物のローラストリッピングトラブルは発生していない。参考例2(リルサン樹脂)と実施例1(12−ナイロン樹脂)との物理特性の違いは、参考例2の大豆油との接触角28°、水との接触角83°に対して、実施例1の大豆油との接触角16°、水との接触角90°である。すなわち、同じポリアミド系樹脂でも、実施例1の方がさらに親油性であり、撥水性であることが、耐ローラストリッピング性に優れていることが判明した。
1・・・版銅
2・・・ゴム胴(ブランケット胴)
3・・・インキ着けローラ(ゴムローラ)
4a・・インキ練りローラ(銅クラッドローラ;水冷)
4b・・インキ練りローラ(銅メッキローラ)
4b・・インキ練りローラ(12−ナイロンローラ)
4b・・インキ練りローラ(12−ナイロンローラ)
4b・・インキ練りローラ(12−ナイロンローラ)
5・・・インキ練りローラ(ゴムローラ)
6・・・インキ呼び出しローラ(ゴムローラ)
7・・・インキ元ローラ(クロムメッキローラ)
8・・・水着けローラ(ゴムローラ)
9・・・逆スリップローラ(クロムメッキローラ)
10・・・調量ローラ(ゴムローラ)
11・・・水元ローラ(クロムメッキローラ)
12・・・振りライダーローラ(銅メッキローラ)
13・・・金属製ローラ(基材)
14・・・金属層(溶射層)
15・・・樹脂層

Claims (5)

  1. 金属製ローラと、
    耐食性および耐摩耗性の金属材料を前記金属製ローラ表面に緻密溶射することにより形成された厚さ100〜250μm、かつ表面粗度Rz20〜60μmの凹凸を有する金属層と、
    前記金属層表面にフレーム溶射法により設けられた厚さ20〜200μm、かつ表面粗度Rz1〜15μmの滑らかな表面を有する樹脂層と、を有し、
    前記樹脂層は、大豆油との接触角が30°以下であり、かつ水との接触角が80°以上である、オフセット印刷機用インキングローラ。
  2. 前記金属材料は、ステンレス、Ni基合金、Al基合金である、請求項1に記載のオフセット印刷機用インキングローラ。
  3. 前記樹脂は、ポリアミド系樹脂である、請求項1または2に記載のオフセット印刷機用インキングローラ。
  4. 前記樹脂は、12−ナイロンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のオフセット印刷機用インキングローラ。
  5. 前記樹脂層の表面は、ウォーター・ベルトサンダー、SF研磨により表面粗度がRmax1〜3μmになるように研磨される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のオフセット印刷機用インキングローラ。
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