JPH08164609A - インクジェットヘッド - Google Patents

インクジェットヘッド

Info

Publication number
JPH08164609A
JPH08164609A JP31036894A JP31036894A JPH08164609A JP H08164609 A JPH08164609 A JP H08164609A JP 31036894 A JP31036894 A JP 31036894A JP 31036894 A JP31036894 A JP 31036894A JP H08164609 A JPH08164609 A JP H08164609A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thin film
ink
conductive ink
electrodes
electric heating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP31036894A
Other languages
English (en)
Inventor
Shinichiro Kaneko
信一郎 金子
Hiroshi Okayama
博 岡山
Hiroshi Shibata
寛 柴田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority to JP31036894A priority Critical patent/JPH08164609A/ja
Publication of JPH08164609A publication Critical patent/JPH08164609A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 通電加熱用電極上の絶縁層の溶解、剥離が起
こることのないインクジェットヘッドを提供することを
目的とする。 【構成】 通電加熱用電極1A、1Bが、インク圧力室
6aに蓄えられた導電性インク2に電流を流す多結晶T
i薄膜から成る先端部25と、先端部25に電流を供給
するTa薄膜から成るリード部22とから成る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、導電性インクを吐出し
て印刷用紙に文字等を記録するインクジェットヘッドに
関し、特に通電加熱型インクジェットヘッドの通電加熱
用電極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ノンインパクト記録法は、記録時におけ
る騒音の発生が無視し得る程度に少ないという点におい
て、最近関心を集めている。その中にあって、高速記録
が可能で、しかも普通紙に特別な定着処理を必要とせず
に記録できるインクジェット記録法は極めて有力な記録
法である。近年実用化されているインクジェットヘッド
プリンタには、印字の高速化、カラー化、低騒音化の要
求が急速に高まってきている。インクジェットヘッドの
インク吐出方式としてはピエゾ素子(圧電素子)方式や
静電方式など数多くあるが、ここでは通電加熱型インク
ジェットヘッドについて説明を行う。通電加熱型インク
ジェットヘッドは一対の通電加熱用電極により導電性イ
ンクに電流を流し、このとき発生するジュール熱により
導電性インクを加熱沸騰させ、沸騰気泡の圧力により一
定量の導電性インクをノズル穴から印刷用紙等の記録媒
体に付着させるものである。
【0003】図7は従来の通電加熱型のインクジェット
ヘッドを示す構成図、図8は図7のB−B´線断面図で
ある。
【0004】図7、図8において、1a、1bは後述の
導電性インク2に電流を流す通電加熱用電極、2は抵抗
率が10〜100Ωcmの導電性インク、3a、3bは
絶縁層、4a、4bはノズル、5は導電性インク2の通
電沸騰による気泡の生成、消滅による圧力変化を利用し
てインク滴を吐出させるノズル穴、6aはインク圧力
室、6bは共通インク流路7から導電性インク2をイン
ク圧力室6aに導くためのインク流路、8は各々の通電
加熱用電極を制御するプリンタ印字制御回路13より信
号を伝達するための接続用端子、9はガラス等の絶縁体
基板、10は導電性インク2が吐出するノズル穴5の前
方1mm程度の位置に配置される印刷用紙である。
【0005】図8において、絶縁層3a、3bは、隣接
する通電加熱用電極1a、1bが導電性インク2に接し
て電気的にショートすることを防ぎ、インク圧力室6a
の壁面の一部を構成し、導電性インク2の通電沸騰によ
る気泡の生成、消滅時の圧力変化に耐えられる感光性の
ポリイミド樹脂等からなる。また、ノズル4a、4b
は、絶縁層3a、3bと同じように、導電性インク2の
通電沸騰による気泡の生成、消滅時の圧力変化に耐えら
れる材料から成り、インク圧力室6aの壁面の一部を構
成する。
【0006】ここで、通電加熱用電極1a、1bは一般
には適当な酸素過電圧を持ち、耐腐食性に優れたAu、
Pt、Ni、Pd、Ti等の真空蒸着や細い線材で形成
される。しかし、通電加熱用電極材料であるAu、P
t、Ni、Pdにおいては、通電加熱型インクジェット
ヘッドの1kA/cm2 以上の大電流密度では電気化学
反応が容易に起こり、酸化や溶解が生じる。一方Tiは
電気化学材料として安定であり、ヘッド電極材料として
最も良好で好適に使用されている。ヘッド電極材料とし
て使用されるTiの形態は真空蒸着により形成される多
結晶薄膜であり、導電性インク2に接する部分の表面積
を増し、通電沸騰特性を向上させるため、その多結晶T
i薄膜の厚みは0.1〜5μm、結晶粒径は0.1〜
2.0μm、表面粗さは0.01μm以上に形成され
る。
【0007】次に、このような構成の従来のインクジェ
ットヘッドの動作について図9(a)〜(e)を用いて
説明する。図9(a)〜(e)はそれぞれ従来のインク
ジェットヘッドの動作説明図であり、同図で、1a、1
bは通電加熱用電極、2は導電性インク、3a、3bは
絶縁層、4a、4bはノズル、5はノズル穴、13はプ
リンタ印字制御回路であり、これらは図7、図8の場合
と同様なものなので、同一符号を付して説明は省略す
る。11は気泡、12はインク滴である。
【0008】まず図9(a)に示すように、プリンタ印
字制御回路13は、印字信号に従って、通電加熱用電極
1a、1b間に、周波数100kHz〜10MHzで電
圧10〜50Vのほぼサイン波形の交流電圧Vを印加
し、導電性インク2中に電流を流す。すなわち、通電加
熱用電極1a、1bを介して導電性インク2に交流電圧
を印加することにより、導電性インク2に交流電流が流
れる。このときの電流値は約10mAである。周期につ
いて言うと、例えば周波数2MHzの交流駆動の場合、
1周期500ナノ秒となる。ここで、通電時間t=5〜
50μ秒、導電性インク2の抵抗値をRとすると、導電
性インク2はw=(V2 /R)×tなるジュール熱を発
生し、導電性インク2の温度は150〜200℃程度ま
で上昇する。すると、図9(b)に示すように、導線性
インク2は加熱沸騰し、気泡11が生成される。さら
に、図9(c)に示すように、気泡11は成長し、沸騰
圧力によりノズル穴5から一定量のインク滴12が吐出
する。一定量のインク滴12が吐出により消費される
と、まだ暖まっていない新たな導電性インク2がインク
流路6b(図7参照)から補給されるので、気泡11は
急激に冷却され、図9(d)に示すように縮小し、そし
て図9(e)に示すように消滅する。最後に、導電性イ
ンク2が共通インク流路7(図7参照)より毛管現象に
よりインク流路6bに供給され、導電性インク2は充填
され、インク吐出動作は完了する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のインクジェットヘッドでは、図10の断面図、図1
1(a)の平面図に示すように、絶縁層3a、3bは樹
脂材料によって形成されている上にインク圧力室6aに
露出しているので、導線性インク2の毛細管力や沸騰に
よる圧力波により通電加熱用電極1a、1bと絶縁層3
a、3bとの隙間(例えば通電加熱用電極1a、1bが
溶解して生じた隙間)14a、14bから導電性インク
2が侵入し、導電性インク2のアルカリ成分により絶縁
層3a、3bの局部的な溶解(例えば局部15の溶解)
が起きたり、通電による電解気泡16の発生による絶縁
層3a、3bの通電加熱用電極1a、1bからの剥離が
起きたりするという問題点があった。
【0010】また、通電加熱用電極1a、1bは真空蒸
着により形成されるTi薄膜であり、導電性インク2に
接する部分の表面積を増し、通電沸騰特性を向上させる
ため、図11(b)の断面図に示すように、多結晶Ti
薄膜の厚みが0.1〜5μm、結晶粒径が0.1〜2.
0μm、表面粗さが0.01μm以上であるものを使用
しているので、図10、図11(a)に示すように電極
1a、1bの表面からだけでなく、インク圧力室6aに
露出している部分(たとえば図11(a)の部分17)
の全体から導電性インク2が毛細管力によりしみこみ易
くなっているので、通電による電解気泡16が発生しや
すく、その上部を絶縁層3a、3bで覆われている部分
の通電加熱用電極1a、1bからの電解気泡16の発生
が絶縁層3a、3bと通電加熱用電極1a、1bとの間
に溜まっていき、ついには絶縁層3a、3bの剥離が起
こってしまうという問題点があった。
【0011】本発明は上記従来の問題点を解決するもの
で、通電加熱用電極上の絶縁層の溶解、剥離が起こるこ
とのないインクジェットヘッドを提供することを目的と
する。
【0012】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に本発明の請求項1記載のインクジェットヘッドは、導
電性インクが蓄えられるインク圧力室と、蓄えられた導
電性インクの一部を吐出するノズル穴と、インク圧力室
に導電性インクを供給するインク流路と、インク流路に
連通する共通インク流路と、蓄えられた導電性インクに
電流を流して加熱沸騰させる通電加熱用電極とを有し、
蓄えられた導電性インクを加熱沸騰させたときに生じる
沸騰の圧力エネルギーにより蓄えられた導電性インクの
一部をノズル穴から吐出するインクジェットヘッドであ
って、通電加熱用電極は、蓄えられた導電性インクに電
流を流す多結晶Ti薄膜から成る先端部と、先端部に電
流を供給するTa薄膜から成るリード部とから成る構成
を有している。
【0013】請求項2記載のインクジェットヘッドは、
請求項1において、多結晶Ti薄膜から成る先端部は、
Ta薄膜から成るリード部上に形成された絶縁層から所
定間隔をおいて離隔している構成を有している。
【0014】
【作用】上記構成によって、感光性ポリイミド等の絶縁
材料から成る絶縁層に覆われた通電加熱用電極のリード
部の材料として、通電沸騰動作においても溶解すること
のない弁金属(弁等に使用される金属)のTaを使用す
るようにしたので、導電性インクの毛細管力による通電
加熱用電極への侵入を防止し、また侵入したとしても電
極とインクとの化学反応を防ぐことができ、感光性ポリ
イミド等の絶縁材料から成る絶縁層に覆われたリード部
からの電解気泡の発生を抑えることができる。
【0015】
【実施例】
(実施例1)以下本発明の一実施例について、図1〜図
6を用いて説明する。図1は本発明の一実施例における
インクジェットヘッドを示す平面図であり、図2(a)
はノズル流路基板を示す斜視図、図2(b)は図2
(a)のA−A´線断面を示す断面図、図2(c)、図
3(a)、(b)、(c)はそれぞれ電極配線基板を示
す斜視図、図4(a)は絶縁層の形成を説明するための
平面図、図4(b)はノズル流路基板と電極配線基板と
を一体化した構成を示す斜視図、図5は絶縁層と先端部
との良くない位置関係を示す断面図、図6は絶縁層と先
端部との良好な位置関係を示す断面図である。
【0016】図1において、5はノズル穴、6aはイン
ク圧力室、6bはインク流路、7は共通インク流路、8
は接続用端子、13はプリンタ印字制御回路であり、こ
れらは従来例を示す図7、図8と同様のものなので、同
一符号を付して説明は省略する。同図で1A、1Bは上
述したようにTa薄膜から成るリード部(Ta薄膜)2
2とTi薄膜から成る先端部25とを有する通電加熱用
電極である。
【0017】また図2(a)〜(c)、図3(a)〜
(c)、図4(a)、(b)において、3a、3bは絶
縁層、5はノズル穴、6bはインク流路、8は接続用端
子、9は絶縁体基板であり、これらは従来例を示す図
7、図8と同様のものなので、同一符号を付して説明は
省略する。また、1A、1Bは通電加熱用電極、22は
リード部、25は先端部であり、これらは図1と同様の
ものなので、同一符号を付して説明は省略する。さら
に、図2(a)で20はエポキシ系接着剤、21は片面
にエポキシ系接着剤20を塗布したポリイミド樹脂から
成るノズル流路基板、図2(c)、図3(a)で22a
はパターンニング前のTa薄膜、図3(a)で23はリ
ード部形成用フォトレジストパターン、図3(b)で2
4は先端部形成用フォトレジストパターンである。
【0018】さらに図5において、2は導電性インク、
3a、3bは絶縁層、4a、4bはノズル、5はノズル
穴、6aはインク圧力室、9は絶縁体基板、これらは従
来例を示す図8と同様のものなので、同一符号を付して
説明は省略する。また、14a、14bは隙間、15は
溶解する局部、16は電解気泡であり、これらは従来例
を示す図10と同様のもの、さらに、1A、1Bは通電
加熱用電極、22はリード部(Ta薄膜)、25は先端
部であり、これらは図1と同様のものなので、同一符号
を付して説明は省略する。
【0019】さらに図6において、2は導電性インク、
3a、3bは絶縁層、4a、4bはノズル、5はノズル
穴、6aはインク圧力室、9は絶縁体基板、14a、1
4bは隙間、16は電解気泡、1A、1Bは通電加熱用
電極、22はリード部(Ta薄膜)、25は先端部であ
り、これらは図3と同様のものなので、同一符号を付し
て説明は省略する。
【0020】次に、本実施例に係るインクジェットヘッ
ドの製造方法について図2(a)、(c)、図3(a)
〜(c)、図4(a)、(b)を用いて説明する。
【0021】まず、図2(a)に示すように、インク流
路6bおよびノズル穴5となるべき溝部にエキシマレー
ザー加工を行い、ノズル流路基板21を形成する。
【0022】次に、図2(c)に示すように、表面酸化
を施した単結晶シリコンやガラス基板等の鏡面を有する
基板を絶縁体基板9として使用し、通電加熱用電極1
A、1Bのリード部の機能を有するパターンニング前の
Ta薄膜22aを絶縁体基板9上に形成する。パターン
ニング前のTa薄膜22aは蒸着法で成膜する。蒸着条
件は、蒸着源である99.99%のTaのバルク材料を
水冷機構をもつCuのるつぼに入れ、蒸着源と絶縁体基
板9との距離30cm、パワー500W、基板温度25
℃、蒸着時間約10分で、0.5μmのパターンニング
前のTa薄膜22aを形成する。
【0023】次に、パターンニング前のTa薄膜22a
の上にAu薄膜を蒸着し、次いで、Au薄膜上にフェノ
ール樹脂を主成分とする感光性レジスト材料をスピンコ
ーターによって約6μmの厚さに塗布し、90℃で30
分のベークを行う。この絶縁体基板9上にフォトマスク
を重ねてマスクアライナーにより20秒間露光した後に
現像を行い、図3(a)の斜視図に示すようなリード部
形成用フォトレジストパターン23を得る。
【0024】次に、10%水酸化ナトリウム水溶液と3
0%過酸化水素水との混合液を70〜90℃程度に加熱
したものをエッチャントとして使用して、リード部形成
用フォトレジストパターン23によりAu薄膜をパター
ンニングする。その後、パターンニングされたAu薄膜
をマスクとしてパターンニング前のTa薄膜22aをエ
ッチングして、図3(b)に示すようなリード部(Ta
薄膜)22を得る。この場合、例えばガラスから成る絶
縁体基板9は強アルカリに冒されにくい種類を選ぶ。
【0025】パターンニング前のTa薄膜22aの上に
Au薄膜を蒸着したのは次のような理由による。
【0026】Taは腐食に非常に強く化学的に最も安定
な金属であるためエッチング可能な溶液は限られてい
る。弗酸と硝酸との1:1の混合液が強力なエッチヤン
トとして知られているが、弗酸はガラス基板や酸化シリ
コンを容易に冒してしまうので使用困難である。弗酸
0.5体積%、硝酸0.5体積%の水溶液でエッチング
してみても、パターンニング前のTa薄膜22aよりも
ガラスのエッチングレートが速いため、パターンニング
前のTa薄膜22aがエッチングされる前にガラスが浸
食されてしまう。試薬やキレート剤には適当なものが見
当たらない。そこで、10%水酸化ナトリウム水溶液と
30%過酸化水素水との混合液を70〜90℃程度に加
熱したものをエッチャントとして使うことにした。しか
し、このエッチャントは、酸化Taや窒化Taも100
0〜2000オングストローム/分でエッチングし、強
アルカリなので半導体のパターンニング技術であるレジ
ストをマスクとしてパターンニング前のTa薄膜22a
をエッチングするとレジストが溶けてしまい、うまくエ
ッチングできない。そこで、パターンニング前のTa薄
膜22aの上にAu薄膜を蒸着してパターンニングした
後、Auをマスクとしてパターンニング前のTa薄膜2
2aをエッチングするようにした。
【0027】さらにエッチングについて説明する。Ta
薄膜は金属やガラスとの密着性は非常に良いので、剥離
防止用の下地層として良く使用されるが、形状を加工す
るための微細なエッチングは非常に難しい。レジストマ
スクを使用して行う反応性イオンエッチングやイオンミ
リング等によるドライエッチングでもエッチングは可能
である。しかし、CF4 やC26 等のガスでの反応性
イオンエッチングの場合、ガラス基板とのエッチングの
選択性が小さいので、エッチングの終点検出が微妙であ
り、使いにくい。また、レジストをマスクにしてイオン
ミリングする場合は、Arガス圧2×10-4Torr、
ビームパワー300W、ステージ傾斜角45度、ミリン
グ時間25分で行い、レジストを施した箇所以外のTa
薄膜を取り除く。ミリングとともにマスクに使用したレ
ジストパターンもイオンミリングされるが、Ta薄膜上
のレジストが残るように膜厚を厚く設定しておく。Ta
薄膜上のレジストは有機溶剤で除去する。
【0028】その他のエッチング法としてリフトオフ法
も考えられる。しかし、本実施例に係る通電加熱用電極
1A、1Bにはリード部(Ta薄膜)22の機能をもた
せる必要があり、抵抗率がTi薄膜より高いとインピー
ダンスが増加して通電沸騰しにくくなるので、膜厚は厚
いほうが望ましい反面、通電加熱用Ti薄膜電極(つま
り通電加熱用電極1A、1Bの先端部25)との結合部
分の重なりの領域にはパターン精度もある程度必要であ
り、このことを考慮すると膜厚は薄いほうが良く、形成
条件には慎重を要する。たとえば通電加熱用電極1A、
1BのTi薄膜の抵抗率は1.5μmの膜厚で300〜
400μΩ・cmであった。一方Ta薄膜は0.5μm
の膜厚で350〜450μΩ・cmであり、熱処理後に
400〜500μΩ・cmに増加した程度である。リー
ド部(Ta薄膜)22としてのインピーダンスはできる
だけ低いほうが良いが、むやみにTa薄膜を厚くするこ
とは好ましくない。むしろTa薄膜の膜厚は通電加熱用
電極1A、1BのTi薄膜の1/2程度とするほうがス
テップカバレッジの面からは良い。
【0029】次に、通電加熱用Ti薄膜すなわち通電加
熱用電極1A、1Bの先端部25の成膜について説明す
る。Ti薄膜はスパッタリング法により形成する。Ti
材料としては、純度99.9%以上の純度を持つものを
使用する。Ti薄膜形成時の真空圧力、基板温度、電力
密度を5〜100mTorr、100〜400℃、0.
5〜2W/cm2 としてTi薄膜を形成する。Ti薄膜
が0.1μm以下の膜厚では、ガラス基板上に十分にT
i薄膜を被覆することができず、導電性インク2に電流
を流すことができず、液滴をノズル4a、4bより吐出
させることができないので、Ti薄膜を十分に被覆でき
るような膜厚として0.1μm以上が必要である。ま
た、Ti薄膜の厚さが5μm以上になると電極の先端部
形状を寸法精度良く形成できず、液滴吐出がノズル4
a、4b毎に異なるためインクジェットヘッドとして使
用することができなくなる。この条件で成膜したTi薄
膜は図11(b)に示すような緻密な構造ではなく、ひ
とつひとつの結晶粒がスパッタ粒子の入射方向に長く成
長しており、結晶粒間には隙間がある。
【0030】次に、通電加熱用Ti薄膜の形成法につい
て説明する。まず絶縁体基板9上にフェノール樹脂を主
成分とする感光性レジスト材料をスピンコーターによっ
て約4μmの厚さに塗布し、90℃で30分のベークを
行う。この絶縁体基板9上にフォトマスクを重ねてマス
クアライナーにより15秒間露光した後現像を行い、図
2(d)の斜視図に示すような通電加熱用電極1A、1
Bの先端部25形成用フォトレジストパターン24を得
る。
【0031】次に、Ti薄膜用エッチャントとしてキレ
ート剤であるエチレンジアミン四酢酸13gとアンモニ
ア水25cc、過酸化水素300cc、純水500cc
との水溶液をつくり、約40分の浸漬エッチングを行
い、通電加熱用電極1A、1Bの先端部25(図3
(c)参照)を形成する。このエッチャントはTa薄膜
を全く冒さない。
【0032】次に、レジストを有機溶剤で除去し、絶縁
体基板9全面にパーマロイ、Auの順に蒸着する。そし
て、各々の電極を制御するプリンタ印字制御回路13の
信号を伝達するための接続用端子8を形成するためにレ
ジストでパターンを形成し、Au、パーマロイの順にエ
ッチングして図3(c)の斜視図に示すようなパターン
を得る。図3(c)において、1A、1Bはリード部
(Ta薄膜)22と先端部25とから成る通電加熱用電
極である。
【0033】次に、絶縁層3a、3bを形成するが、こ
の形成法について説明する。まず絶縁体基板9全面に感
光性ポリイミド樹脂をスピンコーターによって約3μm
の厚さに塗布した後、90℃で30分のベークを行う。
この絶縁体基板9上にフォトマスクを重ねてマスクアラ
イナーにより95秒間露光した後に現像を行い、図4
(a)の平面図に示すような絶縁層3a、3bを得る。
このとき通電加熱用電極1A、1Bの先端部25と絶縁
層3a、3bとの間隔S1、S2は1〜2μm程度とす
る。間隔S1、S2の値がマイナスの場合は、感光性ポ
リイミド樹脂から成る絶縁層3a、3bの下部に通電加
熱用電極1A、1Bの先端部25であるTi薄膜の一部
が存在することとなり、図5の断面図に示すように、導
電性インク2の毛細管力や沸騰による圧力波により通電
加熱用電極1A、1Bの先端部25と絶縁層3a、3b
との隙間14a、14bから導電性インク2が浸入し、
導電性インク2のアルカリ成分により絶縁層3a、3b
の局部的な溶解たとえば局部15の溶解が起きたり、通
電による電解気泡16が通電加熱用電極1A、1Bの先
端部25から発生して絶縁層3a、3bの通電加熱用電
極1A、1Bからの剥離が起きたりする。間隔S1、S
2の値がプラスの場合は、図6の断面図に示すように、
通電加熱用電極1A、1Bの先端部25から生じる電解
気泡16が絶縁層3a、3bには全く関係しないので、
絶縁層3a、3bの通電加熱用電極1A、1Bからの剥
離が起きることはない。また、Ta薄膜は通電加熱用電
極1A、1Bの先端部25つまりTi薄膜と比べると表
面は緻密であり凹凸がなく、図5に示すような隙間14
a、14bはきわめて生じにくいので、導電性インク2
の毛細管力や沸騰による圧力波により通電加熱用電極1
A、1Bの先端部25と絶縁層3a、3bとの隙間14
a、14bから導電性インク2が浸入し、導電性インク
2のアルカリ成分により絶縁層3a、3bの局部的な溶
解や剥離が起きることはほとんど無い。また、Ta薄膜
は弁金属であり、その表面は非常に酸化し易く不導体を
つくるので、電解気泡16の発生が通電加熱用電極1
A、1Bの先端部25のTi薄膜と比べて非常に少な
い。
【0034】最後に、図4(b)に示すように、ノズル
流路基板21と絶縁体基板9との両基板は接着剤等によ
り一体化された後、共通インク流路7を介してインクタ
ンク(図示せず)に結合され、導電性インク2が供給さ
れることになる。
【0035】図2(a)、(c)、図3(a)〜
(c)、図4(a)、(b)の工程で製造された本実施
例に係るインクジェットヘッドによれば、通電加熱用電
極1A、1Bのそれぞれに、インク圧力室6aに蓄えら
れた導電性インク2に電流を流す多結晶Ti薄膜から成
る先端部25と、先端部25に電流を供給するTa薄膜
から成るリード部(Ta薄膜)22とを設けることによ
り、感光性ポリイミド等の絶縁材料から成る絶縁層3
a、3bに覆われた通電加熱用電極1A、1Bのリード
部(Ta薄膜)22の材料として通電沸騰動作において
も溶解することのない弁金属Taを使用するようにした
ので、導電性インク2の毛細管力による通電加熱用電極
1A、1Bへの侵入を防ぐことができ、感光性ポリイミ
ド等の絶縁材料から成る絶縁層3a、3bに覆われたリ
ード部(Ta薄膜)22からの電解気泡の発生を抑える
ことができると共に、先端部25に電気化学的に安定な
Tiを使用しているので、導電性インク2への電流供給
を安定的に、たとえば電流値の変動無く行うことができ
る。
【0036】詳述すると、Ta薄膜は通電加熱用電極1
A、1Bの先端部25つまりTi薄膜と比べると表面は
緻密であり凹凸がなく、その表面上に絶縁層3a、3b
が配置されても、Ta薄膜と絶縁層3a、3bとの間に
隙間が生じることはほとんど無く、導電性インク2の毛
細管力や沸騰による圧力波により通電加熱用電極1A、
1Bと絶縁層3a、3bとの隙間から導電性インク2が
浸入することも無く、導電性インク2のアルカリ成分に
よる絶縁層3a、3bの局部的な溶解や絶縁層3a、3
bの電極1A、1Bからの剥離が起きることも無い。ま
た、Ta薄膜は弁金属であり、その表面は非常に酸化し
易く不導体をつくるので、電解気泡16の発生が非常に
少なく、従って絶縁層3a、3bの剥離が起きることは
考えられない。
【0037】
【発明の効果】以上のように本発明は、通電加熱用電極
が、インク圧力室に蓄えられた導電性インクに電流を流
す多結晶Ti薄膜から成る先端部と、先端部に電流を供
給するTa薄膜から成るリード部とから成るようにした
ことにより、絶縁層を先端部上ではなくリード部上に形
成するようにできるので、通電加熱用電極と絶縁層との
間に隙間が生じることがなくなり、絶縁層の局部的な溶
解や通電加熱用電極からの剥離が生じることがなくなる
インクジェットヘッドを実現することができる。
【0038】また、多結晶Ti薄膜から成る先端部とT
a薄膜から成るリード部上に形成された絶縁層とを所定
間隔をおいて離隔することにより、絶縁層の局部的な溶
解や通電加熱用電極からの剥離が確実に起きることのな
いインクジェットヘッドを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるインクジェットヘッ
ドを示す平面図
【図2】(a)ノズル流路基板を示す斜視図 (b)図2(a)のA−A´線断面を示す断面図 (c)電極配線基板を示す斜視図
【図3】(a)電極配線基板を示す斜視図 (b)電極配線基板を示す斜視図 (c)電極配線基板を示す斜視図
【図4】(a)絶縁層の形成を説明するための平面図 (b)ノズル流路基板と電極配線基板とを一体化した構
成を示す斜視図
【図5】絶縁層と先端部との良くない位置関係を示す断
面図
【図6】絶縁層と先端部との良好な位置関係を示す断面
【図7】従来の通電加熱型のインクジェットヘッドを示
す構成図
【図8】図7のB−B´線断面を示す断面図
【図9】(a)従来のインクジェットヘッドの動作説明
図 (b)従来のインクジェットヘッドの動作説明図 (c)従来のインクジェットヘッドの動作説明図 (d)従来のインクジェットヘッドの動作説明図 (e)従来のインクジェットヘッドの動作説明図
【図10】従来のインクジェットヘッドの不具合を示す
断面図
【図11】(a)従来のインクジェットヘッドの不具合
を示す平面図 (b)従来のインクジェットヘッドの通電加熱用電極を
示す断面図
【符号の説明】
1A、1B、1a、1b 通電加熱用電極 2 導電性インク 3a、3b 絶縁層 4a、4b ノズル 5 ノズル穴 6a インク圧力室 6b インク流路 7 共通インク流路 8 接続用端子 9 絶縁体基板 10 印刷用紙 11 気泡 12 インク滴 13 プリンタ印字制御回路 14a、14b 隙間 15 局部 16 電解気泡 20 エポキシ系接着剤 21 ノズル流路基板 22 リード部(Ta薄膜) 22a パターンニング前のTa薄膜 23 リード部形成用フォトレジストパターン 24 先端部形成用フォトレジストパターン 25 先端部

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】導電性インクが蓄えられるインク圧力室
    と、前記蓄えられた導電性インクの一部を吐出するノズ
    ル穴と、前記インク圧力室に導電性インクを供給するイ
    ンク流路と、前記インク流路に連通する共通インク流路
    と、前記蓄えられた導電性インクに電流を流して加熱沸
    騰させる通電加熱用電極とを有し、前記蓄えられた導電
    性インクを加熱沸騰させたときに生じる沸騰の圧力エネ
    ルギーにより前記蓄えられた導電性インクの一部を前記
    ノズル穴から吐出するインクジェットヘッドであって、
    前記通電加熱用電極は、蓄えられた導電性インクに電流
    を流す多結晶Ti薄膜から成る先端部と、前記先端部に
    電流を供給するTa薄膜から成るリード部とから成るこ
    とを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 【請求項2】前記多結晶Ti薄膜から成る先端部は、前
    記Ta薄膜から成るリード部上に形成された絶縁層から
    所定間隔をおいて離隔していることを特徴とする請求項
    1記載のインクジェットヘッド。
JP31036894A 1994-12-14 1994-12-14 インクジェットヘッド Pending JPH08164609A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31036894A JPH08164609A (ja) 1994-12-14 1994-12-14 インクジェットヘッド

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31036894A JPH08164609A (ja) 1994-12-14 1994-12-14 インクジェットヘッド

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH08164609A true JPH08164609A (ja) 1996-06-25

Family

ID=18004409

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP31036894A Pending JPH08164609A (ja) 1994-12-14 1994-12-14 インクジェットヘッド

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH08164609A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPH062416B2 (ja) 液体噴射記録ヘッドの製造方法
JPS59194859A (ja) インクジェットヘッド
US8191998B2 (en) Liquid ejecting head
US8721050B2 (en) Liquid discharge head with protective layer and liquid discharge device
JP4979793B2 (ja) 液体吐出ヘッド用基板の製造方法
US7244370B2 (en) Method for producing circuit substrate
US20100149280A1 (en) Substrate for ink ejection heads, ink ejection head, method ofmanufacturing substrate, and method of manufacturing ink ejection head
JPH08164609A (ja) インクジェットヘッド
JP2008265164A (ja) インクジェット記録ヘッド用の基板およびその製造方法
JP4489649B2 (ja) インクジェットヘッドの製造方法
JP2711091B2 (ja) インクジェット記録ヘッド用基板の作製方法
JPH08276590A (ja) インクジェットヘッド及びその製造方法
US8092700B2 (en) Method for manufacturing liquid discharge head
JPS6131263A (ja) 液体噴射記録ヘツド
JPH11277755A (ja) 凹部を有するシリコン基板とインクジェットヘッドの製造方法およびそのシリコン基板とインクジェットヘッド
JP2001270120A (ja) サーマルインクジェットプリンタヘッド
JPH0781062A (ja) インクジェットヘッド装置
JPH08169113A (ja) インクジェットヘッド
JP2002172777A (ja) インクジェットヘッド及びその製造方法
JP2010000634A (ja) インクジェット記録ヘッド用基板、インクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録ヘッドの製造方法
JPH08295018A (ja) インクジェットヘッド
JP2019155712A (ja) インクジェット記録ヘッド、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
JP2001260364A (ja) インクジェットプリンタヘッド及びその製造方法
JP2006225745A (ja) 薄膜素子の構造および製造方法
JP2017109389A (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの製造方法および回復方法