JPH08276590A - インクジェットヘッド及びその製造方法 - Google Patents

インクジェットヘッド及びその製造方法

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JPH08276590A
JPH08276590A JP8010595A JP8010595A JPH08276590A JP H08276590 A JPH08276590 A JP H08276590A JP 8010595 A JP8010595 A JP 8010595A JP 8010595 A JP8010595 A JP 8010595A JP H08276590 A JPH08276590 A JP H08276590A
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JP
Japan
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ink
thin film
conductive ink
polycrystalline
electric heating
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Application number
JP8010595A
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English (en)
Inventor
Shinichiro Kaneko
信一郎 金子
Kenji Tomita
健二 冨田
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Publication date
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 通電加熱電極上の絶縁層の溶解、剥離が起こ
ることのないインクジェットヘッド及びその製造方法を
提供することを目的とする。 【構成】 通電加熱用電極1A、1Bを、インク圧力室
6aに蓄えられた導電性インク2に電流を流す多結晶T
i薄膜から成る先端部25と、この先端部25に電流を
供給する陽極酸化された多結晶Ti酸化物薄膜から成る
リード部22とで構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、導電性インクに通電加
熱することによりインクを吐出させ、印刷用紙に文字等
を記録する方式のインクジェットヘッド及びその製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ノンインパクト記録方法は、記録時にお
ける騒音の発生が無視し得る程度に極めて小さいという
点において、最近関心を集めている。その中で、高速記
録が可能であり、しかも普通紙に特別な定着処理を必要
とせず記録を行えるインクジェット記録法は極めて有力
な記録法である。そして、近年実用化されているインク
ジェットヘッドプリンタには印字の高速化、カラー化、
低騒音化の要求が急速に高まってきている。
【0003】インクジェットヘッドのインク吐出原理に
は、ピエゾ素子(圧電素子)方式や静電方式等の数多く
の方式があるが、従来の技術として、ここでは通電加熱
型インクジェットヘッドについて説明を行う。
【0004】通電加熱型インクジェットヘッドは、一対
の対向した通電加熱用電極に導電性インクを介して電流
を流し、このとき発生するジュール熱により導電性イン
クを加熱沸騰させ、沸騰気泡の圧力により一定量の導電
性インクをノズル穴から印刷用紙等の記録媒体に付着さ
せるものである。
【0005】図8は従来の通電加熱型のインクジェット
ヘッドを示す構成図であり、図9は図8のB−B’線断
面図である。図8及び図9において、1a、1bは後述
の導電性インク2に電流を流すための通電加熱用電極で
ある。2は抵抗率が10〜100Ω・cmの導電性イン
ク、3a、3bは絶縁層、4a、4bはノズル板、5は
導電性インク2の通電沸騰による気泡の生成、消滅によ
る圧力変化を利用してインク滴を吐出させるノズル穴、
6aはインク圧力室、6bは共通インク流路7から導電
性インク2をインク圧力室6aに導くためのインク流
路、8は各々の通電加熱用電極を制御するプリンタ印字
制御回路より信号を伝達するための接続用端子、9はガ
ラス等の絶縁体基板、10は導電性インク2が吐出する
ノズル穴の5の前方1mm程度の位置に配置される印刷
用紙である。
【0006】図9において、絶縁層3a、3bは、隣接
する通電加熱用電極1a、1bが導電性インク2に接し
て電気的にショートすることを防ぎ、インク圧力室6a
の壁面の一部を構成し、導電性インク2の通電沸騰によ
る気泡の生成、消滅時の圧力変化に耐えられる感光性ポ
リイミド樹脂等からなる。
【0007】また、ノズル板4a、4bは、絶縁層3
a、3bと同じように、導電性インク2の通電沸騰によ
る気泡の生成、消滅時の圧力変化に耐えられる材料から
成り、インク圧力室6aの壁面の一部を構成する。
【0008】ここで、通電加熱用電極1a、1bは、一
般には適当な酸素過電圧を持ち耐腐食性に優れたAu、
Pt、Ni、Pd、Ti等の真空蒸着や細い線材で形成
されている。しかし、通電加熱用電極であるAu、P
t、Ni、Pd、Tiは、通電加熱型インクジェットヘ
ッドにおける1kA/cm2 以上の大電流密度では、電
気化学反応が容易に起こり酸化や溶解が生じる。その中
でもTiは電気化学的材料として安定であり、ヘッド電
極材料として最も良好で好適に使用されている。ここで
使用されているTiの形態は、真空蒸着またはスパッタ
リングにより形成される多結晶薄膜であり、導電性イン
ク2に接する部分の表面積を増し、通電沸騰特性を向上
させるため、その多結晶Ti薄膜の厚みは0.1〜5μ
m、結晶粒径は0.1〜2.0μm、表面粗さRaが
0.01μm以上に形成されている。
【0009】次に、このような構成の従来のインクジェ
ットヘッドの動作を、図10(a)〜(e)に基づいて
説明する。図10(a)〜(e)は、それぞれ従来のイ
ンクジェットヘッドの断面図である。図10において、
1a、1bは通電加熱用電極、2は導電性インク、3
a、3bは絶縁層、4a、4bはノズル板、5はノズル
穴、13はプリンタ印字制御回路であり、これらは図
8、図9の場合と同様のものなので、同一符号を付して
説明は省略する。11は沸騰気泡、12はインク滴であ
る。
【0010】まず、図10(a)に示すように、プリン
タ印字制御回路13は、印字信号に従って、通電加熱用
電極1a、1b間に100k〜10MHzの周波数で1
0〜50Vの、ほぼサイン波形の交流信号電圧をかけ、
導電性インク2中に電流を流す。即ち、通電加熱用電極
1a、1bを介して導電性インク2に交流電圧を印加す
ることにより、導電性インク2に交流電流が流れる。こ
の時の電流値は約10mAである。周期に関しては、例
えば、周波数を2MHzの交流駆動で行った場合、1周
期500ナノ秒で行われることになる。
【0011】ここで、通電時間t=5〜50μ秒、導電
性インク2の抵抗値をRとすると、導電性インク2はw
=V2 /R×tなるジュール熱を発生し、導電性インク
2の温度が150〜250°C程度に上昇する。このた
め、図10(b)に示すように、導電性インク2は加熱
沸騰して沸騰気泡11が生成する。そして、図10
(c)に示すように、沸騰気泡11は成長し、沸騰圧力
によりノズル穴5からインク滴12が吐出することにな
る。
【0012】一定量のインク滴12が吐出により消費さ
れると、まだ暖まってない導電性インク2がインク流路
6b(図8参照)から補給されるので、沸騰気泡11は
急激に冷却され、図10(d)に示すように縮小し、そ
して図10(e)に示すように消滅する。最後に、導電
性インク2が共通インク流路7(図8参照)より毛管現
象によりインク流路6bに供給され、導電性インク2は
充填され、インク吐出動作は完了する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
た従来のインクジェットヘッドでは、図10,図11の
断面図に示すように、絶縁層3a、3bは、樹脂材料に
よって形成されている上にインク圧力室6aに露出して
いるので、導電性インク2の毛細管力や沸騰による圧力
波により、通電加熱用電極1a、1bと絶縁層3a、3
bとの隙間(例えば、通電加熱用電極1a、1bが溶解
して生じた隙間)14a、14bから導電性インク2が
侵入し、導電性インク2のアルカリ成分により絶縁層3
a、3bの局部的な溶解(例えば局部15の溶解)が発
生したり、通電による電解気泡16の発生による絶縁層
3a、3bの通電加熱用電極1a、1bからの剥離が発
生するという問題点を有していた。
【0014】また、従来の通電加熱用電極1a、1b
は、真空蒸着により形成されるTi薄膜であるが、導電
性インク2に接する部分の表面積を増し、通電沸騰特性
を向上させるため、図13の断面図に示すように、多結
晶Ti薄膜の厚みが0.1〜5μmであり、且つ結晶粒
径が0.1〜2.0μmの範囲で、表面粗さRaが0.
01μm以上であるものを使用している。
【0015】このため、図11、図12に示すように、
電極1a、1bの表面からだけでなく、インク圧力室6
aに露出している部分(例えば、図12における部分1
7等)全体から、導電性インク2が毛細管力によりしみ
込み易くなっており、通電による電解気泡16が発生し
易く、特に、絶縁材料3a、3bで覆われている部分の
通電加熱用電極1a、1bから電解気泡16が発生し
て、絶縁材料3a、3bと通電加熱用電極1a、1bの
間に溜まっていき、ついには絶縁材料3a、3bの剥離
が起こってしまうという問題点を有していた。
【0016】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決す
るため、請求項1記載のインクジェットヘッドは、導電
性インクが蓄えられるインク圧力室と、蓄えられた導電
性インクの一部を吐出するノズル穴と、インク圧力室に
導電性インクを供給するインク流路と、インク流路に連
通する共通インク流路とを有し、蓄えられた導電性イン
クを加熱沸騰させたときに生じる沸騰の圧力エネルギー
により蓄えられた導電性インクの一部をノズル穴から吐
出するインクジェットヘッドであって、通電加熱用電極
は、蓄えられた導電性インクに電流を流す多結晶Ti薄
膜から成る先端部と、先端部に電流を供給する陽極酸化
された多結晶Ti薄膜から成るリード部とからなる構成
を有している。
【0017】請求項2記載のインクジェットヘッドは、
請求項1において、蓄えられた導電性インクに電流を流
す多結晶Ti薄膜から成る先端部が、前記先端部に電流
を供給する多結晶Ti薄膜から成る表面がTi酸化物薄
膜で形成されているリード部上に形成された絶縁層から
所定間隔をおいて離隔している構成を有している。
【0018】請求項3記載のインクジェットヘッドの製
造方法では、前記先端部に電流を供給するリード部の表
面の多結晶Ti酸化物薄膜は、陽極酸化法により形成さ
れるが、このとき酸化領域をフェノール樹脂等から成る
感光性樹脂により高精度に規制する方法で形成される。
【0019】
【作用】多結晶Ti薄膜表面を精度良く陽極酸化して、
多結晶Ti酸化物薄膜を形成すると、その表面が平坦化
されるとともに酸化膜が厚く形成される。従って、多結
晶Ti酸化物薄膜の部分を感光性ポリイミド等の絶縁材
料から成る絶縁層で覆って通電加熱用電極のリード部と
して使用した場合、多結晶Ti酸化物薄膜の部分と絶縁
層との隙間は小さくなるので、毛細管力による通電加熱
用電極への導電性インクの浸入を防ぐだけでなく、また
導電性インクが浸入したとしても電極と導電性インクと
の電気化学反応を防ぐことができる。このため、感光性
ポリイミド等の絶縁材料からなる絶縁層に覆われたリー
ド部からの電解気泡の発生を押さえることができ、絶縁
層の局部的な溶解あるいは絶縁層の通電加熱用電極から
の剥離等がなくなる。
【0020】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1〜図7に基づい
て説明する。図1は本実施例におけるインクジェットヘ
ッドを示す平面図であり、図2(a)はノズル流路基板
を示す斜視図、図2(b)は図2(a)のA−A’線断
面図、図2(c)、図3(a)、(b)、(c)、図4
(a)、(c)はそれぞれ電極配線基板を示す斜視図を
示す。また、図4(b)はTi酸化物薄膜の形成を説明
するための模式図、図4(d)は中途半端に酸化形成さ
れたTi酸化物薄膜を示す模式図、図5(a)は絶縁層
の形成を説明するための平面図、図5(b)はノズル流
路基板と電極配線基板とを一体化した構成を示す斜視
図、図6は絶縁層と先端部との不適切な位置関係を示す
断面図、図7は絶縁層と先端部との適切な位置関係を示
す断面図である。
【0021】図1において、5はノズル穴、6aはイン
ク圧力室、6bはインク流路、7は共通インク流路、8
は接続用端子、13はプリンタ印字制御回路であり、こ
れらは従来の技術を示す図8、図9と同様なものなの
で、同一符号を付して説明は省略する。図1において、
1A、1Bは、先端部25に電流を供給する陽極酸化さ
れた多結晶Ti薄膜から成るリード部22と、蓄えられ
た導電性インクに電流を流す多結晶Ti薄膜から成る先
端部25とから成る通電用加熱電極である。
【0022】また、図2(a)〜(c)、図3(a)〜
(c)、図4(a)、(c)において、3a、3bは絶
縁層、5はノズル穴、6bはインク流路、8は接続用端
子、9は絶縁体基板であり、これらは従来の技術を示す
図8、図9と同様なものなので同一符号を付して説明は
省略する。さらに図2(a)で20はエポキシ系接着
剤、21は片面にエポキシ系接着剤20を塗布したポリ
イミド樹脂からなるノズル流路基板、図2(c)、図3
(a)において、22aはパターニング前の多結晶Ti
薄膜、図3(a)で23はリード形成用フォトレジスト
パターン、図3(c)で8aはAu、パーマロイの2層
構造の膜である。
【0023】図4において、8bは直流電源との接続部
分、24は陽極酸化用のマスクとなるフォトレジスト、
26は基板全体、27は陽極酸化用の硝酸電解質溶液、
28は陰極側のカーボン電極、8は接続用端子、22は
陽極酸化したリード部、29は中途半端に酸化形成され
たリード、x1,x2は中途半端に酸化形成された領域
の幅である。
【0024】さらに、図6において、2は導電性イン
ク、3a、3bは絶縁層、4a、4bはノズル板、5は
ノズル穴、6aはインク圧力室、9は絶縁体基板である
が、これらは従来の技術を示す図9と同様なものなの
で、同一符号を付して説明は省略する。また、14a、
14bは隙間、15は溶解する局部、16は電解気泡で
あるが、これらは従来の技術を示す図11と同様のもの
であり、さらに、1A、1Bは通電加熱用電極、22は
リード部(陽極酸化された多結晶Ti薄膜)、25は先
端部であるが、これらは図1と同様なものなので、同一
符号を付して説明は省略する。
【0025】次に、実施例1のインクジェットヘッドの
製造方法を図2(a)〜(c)、図3(a)〜(c)、
図4(a)、(b)に基づいて説明する。まず、図2
(a)に示すように、インク流路6b及びノズル穴5と
なるべき溝部にエキシマレーザー加工を行い、ノズル流
路基板21を形成する。
【0026】そして、図2(c)に示すように、表面酸
化を施した単結晶シリコンやガラス基板等の鏡面を有す
る基板を絶縁体基板9として使用し、通電加熱用電極1
A、1Bとなる多結晶Ti薄膜22aを絶縁体基板9上
に形成する。通電加熱用電極となる多結晶Ti薄膜22
aは、スパッタリング法にて形成する。Tiターゲット
は純度99.9%以上のものを使用した。Ti薄膜形成
時の条件として、真空圧力5〜100mtorr、基板
温度100〜400°C、電力密度0.5〜15w/c
2 の範囲で電極膜を形成した。Ti薄膜が、0.1μ
m以下の膜厚では、ガラス基板上を十分にTi薄膜で被
覆することができないため、導電性インクに電流を流す
ことができず、結果的に、液滴をノズルより吐出させる
ことができない。したがって、Ti薄膜で十分被覆でき
るような膜厚としては0.1μm以上が必要である。
【0027】また、Ti薄膜の厚さが5μm以上になる
と電極形状が寸法精度良く形成できず、液滴吐出がノズ
ル毎に異なるようになるためインクジェットヘッドとし
て使用することができなくなる。この条件で成膜したT
i薄膜は、図13に示すように、緻密な構造ではなく、
ひとつひとつの結晶粒がスパッタ粒子の入射方向に長く
成長しており、結晶粒間にはすき間があるのが特徴であ
る。
【0028】次に絶縁体基板9上にフェノール樹脂を主
成分とする感光性レレジスト材料をスピンコーターによ
って約6μmの厚さに塗付し、90℃で30分のベーク
を行う。この絶縁体基板9上にフォトマスクを重ねてマ
スクアライナーにより20秒間露光した後、現像を行
い、図3(a)に示すようなリード形成用フォトレジス
トパターン23を得る。
【0029】そして、Ti薄膜用のエッチャントとし
て、キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸13gと
アンモニア水25cc,過酸化水素300cc、純水5
00ccから成る水溶液を作り、この水溶液に約40分
浸漬エッチングを行い、通電加熱用電極1A、1Bを形
成する。
【0030】その後、フォトレジストを有機溶剤で除去
すれば図3(b)の状態となり、更に、絶縁体基板9全
面にパーマロイ、Auの順に金属薄膜を蒸着する。そし
て、各々の電極を制御するプリンタ印字制御回路の信号
伝達用の接続用端子8を形成するためにフォトレジスト
でパターン形成し、Au、パーマロイの順にエッチング
すれば、図3(c)の状態となる。
【0031】ここで、プリンタ印字制御回路の信号伝達
用の接続用端子8を形成するためにAu、パーマロイの
薄膜を使用した理由について説明する。まず、接続用端
子はワイヤーまたはフレキシブルなプリント配線基板と
接続するので、それらの材料との良好な接着性、良好な
オーミックコンタクト、また耐食性を有しなければなら
ない。これらの要求を満たす材料としてAuやAlが、
その表面を樹脂でコーティングして使用される。プリン
ト配線基板との接続には一般にAuが使われている。A
uは、鏡面を有するシリコン基板にはシリサイドを形成
することができるので密着性は比較的良好であるが、鏡
面を有するガラス基板には密着性がよくないためパーマ
ロイやTiなどの金属を使用する。これらの金属薄膜
は、成膜法の違いにもよるがAuとガラスとの密着性を
向上するための中間膜としては非常に有効である。
【0032】また、本実施例のインクジェットヘッドに
使用する、数千オングストロームの厚さの酸化膜をもつ
多結晶Ti薄膜22を形成するために、多結晶Ti薄膜
22aを陽極酸化する。ここで、陽極酸化とは電気分解
の際、陽極で起こる反応で、一般には、イオンのイオン
価が変化するもの、陰イオンの重合、イオンの持つ酸素
原子の増加、非電解質の酸化等を指して言われている。
本実施例では、多結晶Ti薄膜22の先端部に電流を供
給するリード部を陽極酸化により酸化形成するために、
溶液中に浸し、電界をかけなければならない。そこで電
流を流すための電極として前述のAu、パーマロイを兼
用する。
【0033】次に、図4(a)に示すようにフェノール
樹脂を主成分とする感光性レジスト材料をスピンコータ
ーによって約25μmの厚さに塗布し、170°C下で
60分間の大気中ベークを行う。そして、フォトマスク
を重ねてマスクアライナーにより約40秒間露光した後
に現像を行い、選択的に陽極酸化する箇所を露出させる
とともに、陽極酸化時の電流を流す電極と直流電源との
接続部分8bを露出させる。このあと、図4(b)に示
すように陽極酸化用の電解質溶液27(例えばリン酸1
体積%もしくは硝酸0.3体積%等)を用いて、接続部
分8bより電流を流す端子をとり、基板全体26を陽極
側に、カーボン電極28を陰極側にして直流電圧をかけ
て陽極酸化を行う。
【0034】Tiは、Ta、Zr等と同じようにバルブ
金属であり、これらの金属上の酸化物が一方向のみに電
流を通し、逆方向にはほとんど電流を通さない、いわゆ
る弁作用を持つ金属として知られている。酸化皮膜の厚
みは、流した電気量にほぼ比例することがわかってい
る。従って、同じ浴組成と電解質濃度なら酸化皮膜の厚
みは、印加電圧と印加時間でほぼきまる。1モルの金属
の容積と1モルの金属が酸化物になった時の容積との比
率を容積分率と呼ぶが、この値は1を中心として1より
小さくなる場合と大きくなる場合とがあり、1より小さ
くなる場合には金属が酸化物に変化した際に元の金属の
表面を完全に覆う事ができず、隙間だらけの酸化物薄膜
となる。例えば、マグネシウムが良い例であり、酸化物
は下地の金属を保護しない。一方、Tiはこの値が1よ
り大きいため、生成する酸化物層は下地の金属の表面を
緻密に覆い優れた保護作用を示す。
【0035】リン酸1体積%の水溶液を浴として、18
0〜220V程度の電圧で陽極酸化を行う。陽極酸化し
たい多結晶Ti薄膜22aの表面粗さRaは0.01μ
m以上であるので、その表面を完全に覆ってしまう為に
は、少なくとも150V以上の印加電圧が必要である。
また、この浴種であれば、リン酸の破壊電圧が高いの
で、100V以上もの高電圧を印加できる。ただし、リ
ン酸の濃度が2体積%を超えるくらいから破壊電圧は下
がってしまうので、それ以内に抑えることが望ましい。
また、0.5体積%以下の薄い濃度では、破壊電圧近い
電圧を印加しても酸化膜が正常に形成されず、多結晶T
i薄膜22a表面を完全に覆うことができなくなる。な
お、リン酸浴にデキストリン酸等の破壊電圧を上昇させ
る添加剤を加えても良い。
【0036】Tiの陽極酸化の場合、酸化中に陽極から
酸素が発生するため、局部的に酸化膜厚がばらついた
り、変色したりすることがある。このようなときは陽極
材料(本実施例では基板全体26)を浴に浸せきする前
に前処理をしておくと良い。例えば、エタノールで洗浄
したり、酸素プラズマで軽くアッシングしたり、キレー
ト剤を主成分としたTiのエッチャントで多結晶Ti表
面を微小にエッチングしたりする方法が有効である。
【0037】このように、比較的高電圧で多結晶Ti薄
膜22aを陽極酸化することによって、表面の面粗さR
aを0.005μmより小さくし、平坦化することがで
きるので、その上部に形成する絶縁層3a、3bとの密
着性を向上させると共に、インクと多結晶Ti薄膜22
aとの電気化学反応を起こさせないようにすることがで
きる。また、このとき、多結晶Ti薄膜22aの表面を
完全に覆うことにより、図13に示すような形状をして
いる多結晶Ti薄膜22aの結晶粒の隙間にインクが毛
細管力により入り込むことがなくなる。この結果を(表
1)に示す。
【0038】
【表1】
【0039】陽極酸化電圧が150V以上(好ましくは
200V以上)もの高電圧であるため、選択的に酸化す
るための電気的な絶縁材料であるフォトレジスト24は
絶縁耐圧が高ければ高いほど良いのであるが、高精度に
パターニングできることが優先されるので、現在使用で
きる市販のフォトレジスト材料は、ほとんど決まってい
るといえる。実施例1では、ヘキスト社のAZ4000
シリーズをベースに使っている。この種類のフォトレジ
スト24を使用して、200Vもの高電圧を印加して
も、フォトレジスト24が絶縁破壊を起こさないために
は、電圧をかける電極の面積にもよるが、約25μm以
上の膜厚が必要である。
【0040】また、酸化電圧が高電圧であるので、図4
(d)に示すように選択的に陽極酸化する領域とそうで
ない領域との境界に、中途半端に酸化される領域29を
生じる。即ち、多結晶Ti薄膜22a表面を酸化膜で完
全に覆っていない領域が存在してしまうことになる。こ
の領域は印加電圧が高い陽極酸化には必ず生じてしま
う。しかしこの中途半端に酸化された領域29は、フォ
トレジスト24のポストベーク条件が高温で時間が長い
ほど、その幅x1,x2が短く、多結晶Ti薄膜22a
との密着性が良いことがわかった。その結果を(表2)
に示す。
【0041】
【表2】
【0042】また、フォトレジスト24の絶縁破壊電圧
をできるだけ高くするには、大気中のポストベーク温度
が高いほど、時間が長いほど有利であるが、陽極酸化後
にフォトレジスト24を専用の剥離剤で除去するときの
ことを考慮すると、ポストベーク温度はあまり高くない
方がよい。なお、実験を行ったところ、170°Cで1
時間というポストベーク条件により良好な結果が得られ
た。
【0043】以上のように、陽極酸化工程を終了して、
フォトレジスト24を除去し、接続端子の形状を得るた
めに再度フォトレジストコーティング、露光、現像のフ
ォトリソグラフィの工程を経て、Au、パーマロイの順
にエッチングすることにより、図4(c)の状態を得
る。
【0044】次に、絶縁層3a、3bを形成するが、こ
の形成方法について説明する。まず絶縁体基板9全面
に、感光性ポリイミド樹脂をスピンコーターによって約
3μmの厚さに塗布した後、90°Cで30分のベーク
を行う。この絶縁体基板9上に、フォトマスクを重ねて
マスクアライナーにより95秒間露光した後に、現像を
行い、図5(a)に示すような絶縁層3a、3bを得
る。このとき通電加熱用電極1A、1Bの先端部25と
絶縁層3a、3bとの間隔s1,s2は5μm以上とす
る。その理由は、図4(d)に示すように、中途半端に
酸化された領域の幅x1,x2は3〜5μmであるから
である。
【0045】従って、間隔s1,s2が5μmより小さ
い場合は、感光性ポリイミド樹脂からなる絶縁層3a、
3bの下部に、通電加熱用電極1A、1Bの先端部25
である、陽極酸化処理をしていないTi薄膜と、中途半
端に陽極酸化された部分とが存在することとなり、図6
の断面図に示すように、導電性インク2の毛細管力や沸
騰による圧力波により通電加熱用電極1A、1Bの先端
部25と絶縁層3a、3bとの隙間14a、14bから
導電性インク2が浸入し、導電性インク2のアルカリ成
分により絶縁層3a、3bの局部的な溶解、例えば、局
部15の溶解がおきたり、通電による電解気泡16が通
電加熱用電極1A、1Bの先端部25から発生すること
により、絶縁層3a、3bの通電加熱用電極1A、1B
からの剥離が起きたりする。
【0046】間隔s1,s2の値が5μmより大きい場
合は、図7の断面図に示すように、通電加熱用電極1
A、1Bの先端部から生じる電解気泡16が、絶縁層3
a、3bには全く関係しないので、絶縁層3a、3bの
通電加熱用電極1A、1Bからの剥離が起きることはな
い。また、表面を陽極酸化された多結晶Ti薄膜22は
通電加熱用電極1A、1Bの先端部25つまりTi薄膜
と比べると表面は緻密であり凹凸がなく、図6に示すよ
うな隙間14a、14bはきわめて生じにくい。したが
って、導電性インク2の毛細管力や沸騰による圧力波に
より、通電加熱用電極1A、1Bの先端部25と絶縁層
3a、3bとの隙間14a、14bから導電性インク2
が浸入し、導電性インク2のアルカリ成分により絶縁層
3a、3bの局部的な溶解や剥離が起きることはほとん
どない。
【0047】最後に、図4(b)に示すように、ノズル
流路基板21と絶縁体基板9との両基板は接着剤等によ
り一体化された後、共通インク流路7を介してインクタ
ンク(図示せず)に結合され、導電性インク2が供給さ
れることになる。
【0048】
【発明の効果】以上のように、本発明のインクジェット
ヘッドは、通電用加熱電極が、インク圧力室に蓄えられ
た導電性インクに電流を流す多結晶Ti薄膜からなる先
端部と、先端部に電流を供給する陽極酸化した多結晶T
i薄膜からなるリード部から成るようにしたことによ
り、絶縁層を先端部上ではなくリード上に形成するよう
にできるので、厚い酸化層に覆われたリード部と絶縁層
は電気化学的な反応を起こすことが無く、また平坦化さ
れているのでインクが入り込むような隙間を生じること
がなくなる。即ち、絶縁層の局部的な溶解あるいは絶縁
層の通電加熱用電極からの剥離等が生じることのない、
耐久性に優れたインクジェットヘッドを提供することが
できる。
【0049】また、多結晶Ti薄膜からなる先端部と、
先端部に電流を供給する酸化陽極された多結晶Ti薄膜
からなるリード部上に形成された絶縁層とを所定間隔を
おいて離隔することにより、絶縁層の局部的な溶解ある
いは絶縁層の通電加熱用電極からの剥離等が発生するこ
とのない、耐久性に優れたインクジェットヘッドを提供
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例におけるインクジェットヘッド
を示す平面図
【図2】(a)ノズル流路基板を示す斜視図 (b)図2(a)のA−A’線断面を示す断面図 (c)電極配線基板を示す斜視図
【図3】(a)電極配線基板を示す斜視図 (b)電極配線基板を示す斜視図 (c)電極配線基板を示す斜視図
【図4】(a)電極配線基板を示す斜視図 (b)Ti酸化物薄膜の形成を説明するための模式図 (c)電極配線基板を示す斜視図 (d)中途半端に酸化形成されたTi酸化物薄膜を示す
模式図
【図5】(a)絶縁層の形成を説明するための平面図 (b)ノズル流路基板と電極配線基板とを一体化した構
成を示す斜視図
【図6】絶縁層と先端部との不適切な位置関係を示す断
面図
【図7】絶縁層と先端部との適切な位置関係を示す断面
【図8】従来の通電加熱型のインクジェットヘッドを示
す構成図
【図9】図8のB−B’線断面を示す断面図
【図10】(a)従来の通電加熱型のインクジェットヘ
ッドの断面図 (b)従来の通電加熱型のインクジェットヘッドの断面
図 (c)従来の通電加熱型のインクジェットヘッドの断面
図 (d)従来の通電加熱型のインクジェットヘッドの断面
図 (e)従来の通電加熱型のインクジェットヘッドの断面
【図11】従来のインクジェットヘッドの不具合を示す
断面図
【図12】従来のインクジェットヘッドの不具合を示す
断面図
【図13】従来のインクジェットヘッドの通電用加熱電
極を示す断面図
【符号の説明】
1A,1B,1a,1b 通電加熱用電極 2 導電性インク 3a,3b 絶縁層 4a,4b ノズル板 5 ノズル穴 6a インク圧力室 6b インク流路 7 共通インク流路 8 接続用端子 9 絶縁体基板 10 印刷用紙 11 沸騰気泡 12 インク滴 13 プリンタ印字制御回路 14a,14b 隙間 15 局部 16 電解気泡 20 エポキシ系接着剤 21 ノズル流路基板 22 リード部(陽極酸化された多結晶Ti薄膜) 23 リード形成用フォトレジストパターン 24 フォトレジスト 25 先端部 26 基板全体 27 陽極酸化用の浴(硝酸電解質溶液) 28 陰極側のカーボン電極 29 領域 x1,x2 酸化形成された領域の幅 s1,s2 間隔

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】導電性インクを蓄えるインク圧力室と、蓄
    えられた導電性インクの一部を吐出するノズル穴と、前
    記インク圧力室に導電性インクを供給するインク流路
    と、前記インク流路に連通する共通インク流路と、蓄え
    られた導電性インクに電流を流して加熱沸騰させる通電
    加熱用電極とを有し、蓄えられた導電性インクを加熱沸
    騰させて導電性インクの一部を、前記ノズル穴から吐出
    させるインクジェットヘッドにおいて、 前記通電用加熱電極は、蓄えられた導電性インクに電流
    を流す多結晶Ti薄膜から成る先端部と、同先端部に電
    流を供給する陽極酸化された多結晶Ti酸化物薄膜から
    成るリード部とで構成されたことを特徴とするインクジ
    ェットヘッド。
  2. 【請求項2】通電加熱用電極の先端部が、リード部上に
    形成された絶縁層から所定間隔をおいて離間しているこ
    とを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  3. 【請求項3】多結晶Ti薄膜から成る通電加熱用電極の
    酸化領域をフェノール樹脂等から成る感光性樹脂で高精
    度に規制し、同多結晶Ti薄膜を陽極酸化させて多結晶
    Ti酸化物薄膜を形成することを特徴とするインクジェ
    ットヘッドの製造方法。
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