JPH08157997A - チクソキャスティング用Al−Cu−Si系合金材料 - Google Patents

チクソキャスティング用Al−Cu−Si系合金材料

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JPH08157997A
JPH08157997A JP6275605A JP27560594A JPH08157997A JP H08157997 A JPH08157997 A JP H08157997A JP 6275605 A JP6275605 A JP 6275605A JP 27560594 A JP27560594 A JP 27560594A JP H08157997 A JPH08157997 A JP H08157997A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 チクソキャスティング法の実施において健全
なAl合金鋳物を得ることのできるAl−Cu−Si系
合金材料を提供する。 【構成】 チクソキャスティング用Al−Cu−Si系
合金材料は、示差走査熱量測定において、共晶CuAl
2 の溶解による第1山形吸熱部gと、初晶α−Alの溶
解による第2山形吸熱部hとを持つ示差熱分析曲線fを
現出する。この種材料において、Si含有量が0.01
重量%≦Si≦1.5重量%に設定される。これにより
第2山形吸熱部hの上昇線分kの傾斜が緩かとなって固
相のゲル状態が比較的長く維持されるので、固相相互間
ならびに固相および液相間の接合性が良好となる。また
第2山形吸熱部gにおいては、上昇線分oの傾斜が急峻
となって液相の最終凝固部分の粘度が低く保持されるの
で、固相の凝固収縮に応じてその固相周りに液相が十分
に供給される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はチクソキャスティング用
Al−Cu−Si系合金材料、特に、示差走査熱量測定
(DSC)において、共晶CuAl2 の溶解による第1
山形吸熱部と、初晶α−Alの溶解による第2山形吸熱
部とを持つ示差熱分析曲線が現出するチクソキャスティ
ング用Al−Cu−Si系合金材料に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種Al−Cu−Si系合金材
料としては、例えば、Cu含有量が9.5重量%≦Cu
≦10.5重量%であり、またSi含有量が3.5重量
%≦Si≦4.5重量%である、AA規格238合金材
料が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】チクソキャスティング
法の実施に当っては、Al合金材料に加熱処理を施して
初晶α−Alよりなる固相(略固体となっている相、以
下同じ)と、共晶CuAl2 よりなる液相とが共存する
半溶融Al合金材料を調製し、次いでその半溶融Al合
金材料を加圧下で鋳型のキャビティに充填し、その後前
記加圧下で半溶融Al合金材料を凝固させる、といった
方法が採用される。
【0004】しかしながら前記チクソキャスティング法
の実施において、従来の238合金材料を用いた場合に
は、Al合金鋳物の粒状固相の境界にミクロンオーダの
空孔部が発生し易い、という問題があった。これは、次
のような理由による。即ち、従来の238合金材料は、
そのSi含有量が多いことに起因して、示差熱分析曲線
の第1山形吸熱部において、その上昇開始点および頂点
間に存する上昇線分の傾斜が緩かとなり、その結果、液
相の最終凝固部分の粘度が高くなるため、固相の凝固収
縮に応じてその固相周りに液相が十分に供給されないか
らである。
【0005】本発明は前記に鑑み、チクソキャスティン
グ法の実施において、欠陥の無いAl合金鋳物を得るこ
とができる前記Al−Cu−Si系合金材料を提供する
ことを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、示差走査熱量
測定(DSC)において、共晶CuAl2 の溶解による
第1山形吸熱部と、初晶α−Alの溶解による第2山形
吸熱部とを持つ示差熱分析曲線が現出するチクソキャス
ティング用Al−Cu−Si系合金材料であって、Si
含有量が0.01重量%≦Si≦1.5重量%であるこ
とを特徴とする。
【0007】
【作用】Si含有量を前記のように設定すると、第1山
形吸熱部の下降終了点および第2山形吸熱部の頂点間に
存するその第2山形吸熱部の上昇線分の傾斜が緩かとな
るため、固相のゲル状態が比較的長く維持され、これに
より固相相互間ならびに固相および液相間の接合性が良
好となる。
【0008】一方、第1山形吸熱部においては、その上
昇開始点および頂点間に存する上昇線分の傾斜が急峻と
なるので、液相の最終凝固部分の粘度が低く保持され、
これにより固相の凝固収縮に応じてその固相周りに液相
が十分に供給される。
【0009】このようにして、ミクロンオーダの空孔部
といった欠陥の無い健全なAl合金鋳物が得られる。
【0010】ただし、Si含有量がSi<0.01重量
%(ゼロを含む)では、第2山形吸熱部の上昇線分の傾
斜が急峻となるため固相のゲル状態維持時間が短くな
り、これにより固相相互間ならびに固相および液相間の
接合性が悪化する。
【0011】一方、Si含有量がSi>1.5重量%で
は、第1山形吸熱部の上昇線分の傾斜が緩かとなるた
め、液相の最終凝固部分の粘度が高くなり、固相の凝固
収縮に応じてその固相周りに液相が十分に供給されず、
その結果、Al合金鋳物にミクロンオーダの空孔部が発
生し易くなる。
【0012】
【実施例】チクソキャスティング用Al−Cu−Si系
合金材料は次のような組成を有する。
【0013】即ち、Cuを8重量%≦Cu≦12重量
%、Siを0.01重量%≦Si≦1.5重量%、Fe
をFe≦0.2重量%およびMgをMg≦0.1重量%
含有し、またMn、V、ZrおよびTiから選択される
少なくとも一種を、Mnについては0.2重量%≦Mn
≦0.4重量%、Vについては0.05重量%≦V≦
0.15重量%、Zrについては0.1重量%≦Zr≦
0.25重量%、Tiについては0.02重量%≦Ti
≦0.1重量%含有し、残部がAlよりなる。
【0014】この組成において、Siの含有量設定理由
は前記の通りである。
【0015】Cu含有量を前記のように設定すると、明
瞭な第1および第2山形吸熱部を持つ示差熱分析曲線を
現出するAl−Cu−Si系合金材料が得られ、これに
より、加熱処理において共晶CuAl2 から液相を確実
に発生させて鋳造性の良好な半溶融Al−Cu−Si系
合金材料を調製することができる。
【0016】また、Cu含有量を前記のように設定する
と、初晶α−Alよりなる固相にCuを最大量固溶させ
ることが可能となり、これにより、Al合金鋳物におい
てCuによる時効析出効果を最大限発揮させて、そのA
l合金鋳物の高温強度を向上させ、また高延性化および
高靱性化を達成することができる。
【0017】ただし、Cu含有量がCu<8重量%で
は、前記のような顕著な二山形タイプの示差熱分析曲線
を現出し得るAl−Cu−Si系合金材料を得ることが
できず、その結果、鋳造性が悪化する。一方、Cu>1
2重量%ではAl合金鋳物の高温強度は高くなるが、靱
性が低く、また高密度化に伴い重量増を招来する。
【0018】FeはAl合金鋳物の機械的特性に有害な
影響を与えるので、前記のように上限値が設定される。
【0019】Mgは、低融点の金属間化合物AlCuM
gを生成してAl合金鋳物の高温強度を低下させるの
で、前記のように上限値が設定される。
【0020】Mn、V、ZrおよびTiは、初晶α−A
lを微細化することの外に、初晶α−Alに微量固溶し
てAl合金鋳物の高温強度向上に寄与する。ただし、M
n<0.2重量%、V<0.05重量%、Zr<0.1
重量%またはTi<0.02重量%では前記効果を得る
ことができず、一方、Mn>0.4重量%、V>0.1
5重量%、Zr>0.25重量%またはTi>0.1重
量%では、Mn等とAlとが反応して金属間化合物が生
成されるためAl合金鋳物の伸びおよび靱性が低下す
る。
【0021】図1は、チクソキャスティング法によりA
l合金鋳物を鋳造するために用いられる加圧鋳造装置1
を示す。その加圧鋳造装置1は、鉛直な合せ面2a,3
aを有する固定金型2および可動金型3を備え、両合せ
面2a,3a間にAl合金鋳物成形用キャビティ4が形
成される。固定金型2に半溶融Al−Cu−Si系合金
材料5を設置するチャンバ6が形成され、そのチャンバ
6はゲート7を介してキャビティ4下部に連通する。ま
た固定金型2に、チャンバ6に連通するスリーブ8が水
平に付設され、そのスリーブ8にチャンバ6に挿脱され
る加圧プランジャ9が摺動自在に嵌合される。スリーブ
8は、その周壁上部に材料用挿入口10を有する。
【0022】表1は、実施例A〜Cおよび比較例a〜e
の組成を示す。これら実施例A等は、連続鋳造法の適用
下で鋳造された高品質な長尺連続鋳造材より切出された
ものであって、その鋳造に当っては初晶α−Alの球状
化処理が行われている。実施例A等の寸法は直径76m
m、長さ85mmである。
【0023】
【表1】 表1において、比較例bはAA規格222合金に、比較
例cはAA規格238合金(従来例)に、比較例dはA
A規格2219合金にそれぞれ相当する。
【0024】実施例Aについて示差走査熱量測定を行っ
たところ、図2の結果を得た。図2の二山形示差熱分析
曲線fにおいて、第1山形吸熱部gは共晶CuAl2
溶解によるものであり、一方、第2山形吸熱部hは初晶
α−Alの溶解によるものである。
【0025】次に、実施例Aを誘導加熱装置の加熱コイ
ル内に設置し、次いで周波数 1kHz、最大出力 3
7kWの条件で加熱して、固相と液相とが共存する半溶
融状態の実施例Aを調製した。この場合、固相率は50
%以上、60%以下に設定される。実施例Aにおいて
は、Cu含有量が10.2重量%、即ち、8重量%≦C
u≦12重量%の範囲に収められているので、図2に示
すように明瞭な第1および第2山形吸熱部g,hを持つ
示差熱分析曲線fが現出し、これにより、加熱処理にお
いて共晶CuAl2 から液相を確実に発生させて、鋳造
性の良好な半溶融状態の実施例Aを調製することができ
る。
【0026】その後、図1に示すように、半溶融状態の
実施例A(符号5)をチャンバ6に設置し、加圧プラン
ジャ9の移動速度 0.07m/sec 、金型温度 35
0℃の条件で実施例Aを加圧しつつゲート7を通過させ
てキャビティ4内に充填した。そして、加圧プランジャ
9をストローク終端に保持することによってキャビティ
4内に充填された実施例Aに加圧力を付与し、その加圧
下で実施例Aを凝固させてAl合金鋳物Aを得た。
【0027】図3はAl合金鋳物Aの金属組織を示す顕
微鏡写真である。図3より、Al合金鋳物Aにおいては
ミクロンオーダの空孔部等の欠陥が生じていないことが
判る。
【0028】このように健全なAl合金鋳物Aが得られ
るのは次のような理由による。即ち、実施例Aにおいて
は、Si含有量が0.8重量%、したがって0.01重
量%≦Si≦1.5重量%に収められているので、図2
に示すように、第1山形吸熱部gの下降終了点iおよび
第2山形吸熱部hの頂点j間に存するその第2山形吸熱
部hの上昇線分kの傾斜が緩かとなって、固相のゲル状
態が比較的長く維持される。これにより固相相互間なら
びに固相および液相間の接合性が良好になるからであ
る。
【0029】一方、第1山形吸熱部gにおいては、その
上昇開始点mおよび頂点n間に存する上昇線分oの傾斜
が急峻となるので、液相の最終凝固部分の粘度が低く保
持される。これにより、固相の凝固収縮に応じてその固
相周りに液相が十分に供給されるので、ミクロンオーダ
の空孔部の発生が回避されるからである。
【0030】実施例B,Cにおいても、実施例A同様の
示差熱分析曲線fが現出し、また実施例B,Cを用いた
前記と同一条件による鋳造作業によって、前記Al合金
鋳物A同様に健全なAl合金鋳物B,C(実施例B,C
にそれぞれ対応)が得られた。
【0031】比較例aはSi含有量がゼロ、したがって
Si<0.01重量%であることから、図2、一点鎖線
示のように、第2山形吸熱部hの上昇線分k1 の傾斜が
急峻となるため固相のゲル状態維持時間が短くなり、こ
れにより固相相互間ならびに固相および液相間の接合性
が悪化する。
【0032】図4は比較例aを用い、前記と同一条件に
よる鋳造作業によって得られたAl合金鋳物aの金属組
織を示す顕微鏡写真であり、図4より空孔部が発生して
いることが判る。
【0033】一方、比較例b,cはSi含有量がそれぞ
れ2,4重量%、したがってSi>1.5重量%である
ことから、図2、二点鎖線示のように第1山形吸熱部g
の上昇線分o1 の傾斜が緩かとなるため、液相の最終凝
固部分の粘度が高くなり、固相の凝固収縮に応じてその
固相周りに液相が十分に供給されない。
【0034】図5は比較例cを用い、前記と同一条件に
よる鋳造作業によって得られたAl合金鋳物cの金属組
織を示す顕微鏡写真であり、図5より空孔部が発生して
いることが判る。
【0035】比較例dは、Cu含有量が6.8重量%、
したがってCu<8重量%であることから、図2のよう
な顕著な二山形タイプの示差熱分析曲線が現出せず、し
たがって鋳造性が悪化する。
【0036】比較例eはCu含有量が13重量%、した
がってCu>12重量%であることからAl合金鋳物e
の高温強度は高くなるが、靱性が低く、また高密度化に
伴い重量増を招来する。
【0037】次に、実施例A〜Cおよび比較例a〜eに
対応するAl合金鋳物A〜C,a〜eよりテストピース
を作製し、各テストピースについて、300℃における
引張強さσB および伸びδを測定し、また常温における
シャルピー衝撃値および密度を測定したところ、表2の
結果を得た。
【0038】
【表2】 表2から、実施例A〜Cを用いて得られたAl合金鋳物
A〜Cは、優れた高温強度と延性を有し、また靱性も高
く、軽量であることが判る。
【0039】比較例a〜cを用いて得られたAl合金鋳
物a〜cは、空孔部の発生に伴い高温強度、延性および
靱性がAl合金鋳物A〜Cに比べて低くなる。
【0040】比較例dを用いて得られたAl合金鋳物d
は鋳造性の悪化に伴い機械的特性が最低となる。
【0041】比較例eを用いて得られたAl合金鋳物e
は、Cu含有量が高いことから高温強度は高くなるが、
靱性が低く、また重量が最大となる。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、前記のように構成する
ことによって、チクソキャスティング法の実施におい
て、健全で、機械的特性の優れたAl合金鋳物を得るこ
とが可能なAl−Cu−Si系合金材料を提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加圧鋳造装置の縦断面図である。
【図2】Al−Cu−Si系合金材料の示差熱分析曲線
である。
【図3】Al合金鋳物の金属組織の第1例を示す顕微鏡
写真である。
【図4】(a)はAl合金鋳物の金属組織の第2例を示
す顕微鏡写真、(b)は(a)の要部写図である。
【図5】(a)はAl合金鋳物の金属組織の第3例を示
す顕微鏡写真、(b)は(a)の要部写図である。
【符号の説明】
f 示差熱分析曲線 g 第1山形吸熱部 h 第2山形吸熱部

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 示差走査熱量測定において、共晶CuA
    2 の溶解による第1山形吸熱部(g)と、初晶α−A
    lの溶解による第2山形吸熱部(h)とを持つ示差熱分
    析曲線(f)が現出するチクソキャスティング用Al−
    Cu−Si系合金材料であって、Si含有量が0.01
    重量%≦Si≦1.5重量%であることを特徴とするチ
    クソキャスティング用Al−Cu−Si系合金材料。
  2. 【請求項2】 Cu含有量が8重量%≦Cu≦12重量
    %である、請求項1記載のチクソキャスティング用Al
    −Cu−Si系合金材料。
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