JP2794540B2 - チクソキャスティング用Al−Cu−Si系合金材料 - Google Patents
チクソキャスティング用Al−Cu−Si系合金材料Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はチクソキャスティング用
Al−Cu−Si系合金材料、特に、示差走査熱量測定
(DSC)において、共晶CuAl2 の溶解による第1
山形吸熱部と、初晶α−Alの溶解による第2山形吸熱
部とを持つ示差熱分析曲線が現出するチクソキャスティ
ング用Al−Cu−Si系合金材料に関する。
Al−Cu−Si系合金材料、特に、示差走査熱量測定
(DSC)において、共晶CuAl2 の溶解による第1
山形吸熱部と、初晶α−Alの溶解による第2山形吸熱
部とを持つ示差熱分析曲線が現出するチクソキャスティ
ング用Al−Cu−Si系合金材料に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種Al−Cu−Si系合金材
料としては、例えば、Cu含有量が9.5重量%≦Cu
≦10.5重量%であり、またSi含有量が3.5重量
%≦Si≦4.5重量%である、AA規格238合金材
料が知られている。
料としては、例えば、Cu含有量が9.5重量%≦Cu
≦10.5重量%であり、またSi含有量が3.5重量
%≦Si≦4.5重量%である、AA規格238合金材
料が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】チクソキャスティング
法の実施に当っては、Al合金材料に加熱処理を施して
初晶α−Alよりなる固相(略固体となっている相、以
下同じ)と、共晶CuAl2 よりなる液相とが共存する
半溶融Al合金材料を調製し、次いでその半溶融Al合
金材料を加圧下で鋳型のキャビティに充填し、その後前
記加圧下で半溶融Al合金材料を凝固させる、といった
方法が採用される。
法の実施に当っては、Al合金材料に加熱処理を施して
初晶α−Alよりなる固相(略固体となっている相、以
下同じ)と、共晶CuAl2 よりなる液相とが共存する
半溶融Al合金材料を調製し、次いでその半溶融Al合
金材料を加圧下で鋳型のキャビティに充填し、その後前
記加圧下で半溶融Al合金材料を凝固させる、といった
方法が採用される。
【0004】しかしながら前記チクソキャスティング法
の実施において、従来の238合金材料を用いた場合に
は、Al合金鋳物の粒状固相の境界にミクロンオーダの
空孔部が発生し易い、という問題があった。これは、次
のような理由による。即ち、従来の238合金材料は、
そのSi含有量が多いことに起因して、示差熱分析曲線
の第1山形吸熱部において、その上昇開始点および頂点
間に存する上昇線分の傾斜が緩かとなり、その結果、液
相の最終凝固部分の粘度が高くなるため、固相の凝固収
縮に応じてその固相周りに液相が十分に供給されないか
らである。
の実施において、従来の238合金材料を用いた場合に
は、Al合金鋳物の粒状固相の境界にミクロンオーダの
空孔部が発生し易い、という問題があった。これは、次
のような理由による。即ち、従来の238合金材料は、
そのSi含有量が多いことに起因して、示差熱分析曲線
の第1山形吸熱部において、その上昇開始点および頂点
間に存する上昇線分の傾斜が緩かとなり、その結果、液
相の最終凝固部分の粘度が高くなるため、固相の凝固収
縮に応じてその固相周りに液相が十分に供給されないか
らである。
【0005】本発明は前記に鑑み、チクソキャスティン
グ法の実施において、欠陥の無いAl合金鋳物を得るこ
とができる前記Al−Cu−Si系合金材料を提供する
ことを目的とする。
グ法の実施において、欠陥の無いAl合金鋳物を得るこ
とができる前記Al−Cu−Si系合金材料を提供する
ことを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、示差走査熱量
測定(DSC)において、共晶CuAl2 の溶解による
第1山形吸熱部と、初晶α−Alの溶解による第2山形
吸熱部とを持つ示差熱分析曲線が現出するチクソキャス
ティング用Al−Cu−Si系合金材料であって、Si
含有量が0.01重量%≦Si≦1.5重量%であり、
またMg含有量がMg≦0.1重量%であることを特徴
とする。
測定(DSC)において、共晶CuAl2 の溶解による
第1山形吸熱部と、初晶α−Alの溶解による第2山形
吸熱部とを持つ示差熱分析曲線が現出するチクソキャス
ティング用Al−Cu−Si系合金材料であって、Si
含有量が0.01重量%≦Si≦1.5重量%であり、
またMg含有量がMg≦0.1重量%であることを特徴
とする。
【0007】
【作用】Si含有量を前記のように設定すると、第1山
形吸熱部の下降終了点および第2山形吸熱部の頂点間に
存するその第2山形吸熱部の上昇線分の傾斜が緩かとな
るため、固相のゲル状態が比較的長く維持され、これに
より固相相互間ならびに固相および液相間の接合性が良
好となる。
形吸熱部の下降終了点および第2山形吸熱部の頂点間に
存するその第2山形吸熱部の上昇線分の傾斜が緩かとな
るため、固相のゲル状態が比較的長く維持され、これに
より固相相互間ならびに固相および液相間の接合性が良
好となる。
【0008】一方、第1山形吸熱部においては、その上
昇開始点および頂点間に存する上昇線分の傾斜が急峻と
なるので、液相の最終凝固部分の粘度が低く保持され、
これにより固相の凝固収縮に応じてその固相周りに液相
が十分に供給される。またMgの上限値を前記のように
設定すると、Mgが低融点の金属間化合物AlCuMg
を生成してAl合金鋳物の高温強度を低下させるといっ
た不具合を回避し得る。
昇開始点および頂点間に存する上昇線分の傾斜が急峻と
なるので、液相の最終凝固部分の粘度が低く保持され、
これにより固相の凝固収縮に応じてその固相周りに液相
が十分に供給される。またMgの上限値を前記のように
設定すると、Mgが低融点の金属間化合物AlCuMg
を生成してAl合金鋳物の高温強度を低下させるといっ
た不具合を回避し得る。
【0009】このようにして、ミクロンオーダの空孔部
といった欠陥が無く健全で高温強度の高いAl合金鋳物
が得られる。
といった欠陥が無く健全で高温強度の高いAl合金鋳物
が得られる。
【0010】ただし、Si含有量がSi<0.01重量
%(ゼロを含む)では、第2山形吸熱部の上昇線分の傾
斜が急峻となるため固相のゲル状態維持時間が短くな
り、これにより固相相互間ならびに固相および液相間の
接合性が悪化する。
%(ゼロを含む)では、第2山形吸熱部の上昇線分の傾
斜が急峻となるため固相のゲル状態維持時間が短くな
り、これにより固相相互間ならびに固相および液相間の
接合性が悪化する。
【0011】一方、Si含有量がSi>1.5重量%で
は、第1山形吸熱部の上昇線分の傾斜が緩かとなるた
め、液相の最終凝固部分の粘度が高くなり、固相の凝固
収縮に応じてその固相周りに液相が十分に供給されず、
その結果、Al合金鋳物にミクロンオーダの空孔部が発
生し易くなる。
は、第1山形吸熱部の上昇線分の傾斜が緩かとなるた
め、液相の最終凝固部分の粘度が高くなり、固相の凝固
収縮に応じてその固相周りに液相が十分に供給されず、
その結果、Al合金鋳物にミクロンオーダの空孔部が発
生し易くなる。
【0012】
【実施例】チクソキャスティング用Al−Cu−Si系
合金材料は次のような組成を有する。
合金材料は次のような組成を有する。
【0013】即ち、Cuを8重量%≦Cu≦12重量
%、Siを0.01重量%≦Si≦1.5重量%、Fe
をFe≦0.2重量%およびMgをMg≦0.1重量%
含有し、またMn、V、ZrおよびTiから選択される
少なくとも一種を、Mnについては0.2重量%≦Mn
≦0.4重量%、Vについては0.05重量%≦V≦
0.15重量%、Zrについては0.1重量%≦Zr≦
0.25重量%、Tiについては0.02重量%≦Ti
≦0.1重量%含有し、残部がAlよりなる。
%、Siを0.01重量%≦Si≦1.5重量%、Fe
をFe≦0.2重量%およびMgをMg≦0.1重量%
含有し、またMn、V、ZrおよびTiから選択される
少なくとも一種を、Mnについては0.2重量%≦Mn
≦0.4重量%、Vについては0.05重量%≦V≦
0.15重量%、Zrについては0.1重量%≦Zr≦
0.25重量%、Tiについては0.02重量%≦Ti
≦0.1重量%含有し、残部がAlよりなる。
【0014】この組成において、SiおよびMgの含有
量設定理由は前記の通りである。
量設定理由は前記の通りである。
【0015】Cu含有量を前記のように設定すると、明
瞭な第1および第2山形吸熱部を持つ示差熱分析曲線を
現出するAl−Cu−Si系合金材料が得られ、これに
より、加熱処理において共晶CuAl2 から液相を確実
に発生させて鋳造性の良好な半溶融Al−Cu−Si系
合金材料を調製することができる。
瞭な第1および第2山形吸熱部を持つ示差熱分析曲線を
現出するAl−Cu−Si系合金材料が得られ、これに
より、加熱処理において共晶CuAl2 から液相を確実
に発生させて鋳造性の良好な半溶融Al−Cu−Si系
合金材料を調製することができる。
【0016】また、Cu含有量を前記のように設定する
と、初晶α−Alよりなる固相にCuを最大量固溶させ
ることが可能となり、これにより、Al合金鋳物におい
てCuによる時効析出効果を最大限発揮させて、そのA
l合金鋳物の高温強度を向上させ、また高延性化および
高靱性化を達成することができる。
と、初晶α−Alよりなる固相にCuを最大量固溶させ
ることが可能となり、これにより、Al合金鋳物におい
てCuによる時効析出効果を最大限発揮させて、そのA
l合金鋳物の高温強度を向上させ、また高延性化および
高靱性化を達成することができる。
【0017】ただし、Cu含有量がCu<8重量%で
は、前記のような顕著な二山形タイプの示差熱分析曲線
を現出し得るAl−Cu−Si系合金材料を得ることが
できず、その結果、鋳造性が悪化する。一方、Cu>1
2重量%ではAl合金鋳物の高温強度は高くなるが、靱
性が低く、また高密度化に伴い重量増を招来する。
は、前記のような顕著な二山形タイプの示差熱分析曲線
を現出し得るAl−Cu−Si系合金材料を得ることが
できず、その結果、鋳造性が悪化する。一方、Cu>1
2重量%ではAl合金鋳物の高温強度は高くなるが、靱
性が低く、また高密度化に伴い重量増を招来する。
【0018】FeはAl合金鋳物の機械的特性に有害な
影響を与えるので、前記のように上限値が設定される。
影響を与えるので、前記のように上限値が設定される。
【0019】
【0020】Mn、V、ZrおよびTiは、初晶α−A
lを微細化することの外に、初晶α−Alに微量固溶し
てAl合金鋳物の高温強度向上に寄与する。ただし、M
n<0.2重量%、V<0.05重量%、Zr<0.1
重量%またはTi<0.02重量%では前記効果を得る
ことができず、一方、Mn>0.4重量%、V>0.1
5重量%、Zr>0.25重量%またはTi>0.1重
量%では、Mn等とAlとが反応して金属間化合物が生
成されるためAl合金鋳物の伸びおよび靱性が低下す
る。
lを微細化することの外に、初晶α−Alに微量固溶し
てAl合金鋳物の高温強度向上に寄与する。ただし、M
n<0.2重量%、V<0.05重量%、Zr<0.1
重量%またはTi<0.02重量%では前記効果を得る
ことができず、一方、Mn>0.4重量%、V>0.1
5重量%、Zr>0.25重量%またはTi>0.1重
量%では、Mn等とAlとが反応して金属間化合物が生
成されるためAl合金鋳物の伸びおよび靱性が低下す
る。
【0021】図1は、チクソキャスティング法によりA
l合金鋳物を鋳造するために用いられる加圧鋳造装置1
を示す。その加圧鋳造装置1は、鉛直な合せ面2a,3
aを有する固定金型2および可動金型3を備え、両合せ
面2a,3a間にAl合金鋳物成形用キャビティ4が形
成される。固定金型2に半溶融Al−Cu−Si系合金
材料5を設置するチャンバ6が形成され、そのチャンバ
6はゲート7を介してキャビティ4下部に連通する。ま
た固定金型2に、チャンバ6に連通するスリーブ8が水
平に付設され、そのスリーブ8にチャンバ6に挿脱され
る加圧プランジャ9が摺動自在に嵌合される。スリーブ
8は、その周壁上部に材料用挿入口10を有する。
l合金鋳物を鋳造するために用いられる加圧鋳造装置1
を示す。その加圧鋳造装置1は、鉛直な合せ面2a,3
aを有する固定金型2および可動金型3を備え、両合せ
面2a,3a間にAl合金鋳物成形用キャビティ4が形
成される。固定金型2に半溶融Al−Cu−Si系合金
材料5を設置するチャンバ6が形成され、そのチャンバ
6はゲート7を介してキャビティ4下部に連通する。ま
た固定金型2に、チャンバ6に連通するスリーブ8が水
平に付設され、そのスリーブ8にチャンバ6に挿脱され
る加圧プランジャ9が摺動自在に嵌合される。スリーブ
8は、その周壁上部に材料用挿入口10を有する。
【0022】表1は、実施例A〜Cおよび比較例a〜e
の組成を示す。これら実施例A等は、連続鋳造法の適用
下で鋳造された高品質な長尺連続鋳造材より切出された
ものであって、その鋳造に当っては初晶α−Alの球状
化処理が行われている。実施例A等の寸法は直径76m
m、長さ85mmである。
の組成を示す。これら実施例A等は、連続鋳造法の適用
下で鋳造された高品質な長尺連続鋳造材より切出された
ものであって、その鋳造に当っては初晶α−Alの球状
化処理が行われている。実施例A等の寸法は直径76m
m、長さ85mmである。
【0023】
【表1】 表1において、比較例bはAA規格222合金に、比較
例cはAA規格238合金(従来例)に、比較例dはA
A規格2219合金にそれぞれ相当する。
例cはAA規格238合金(従来例)に、比較例dはA
A規格2219合金にそれぞれ相当する。
【0024】実施例Aについて示差走査熱量測定を行っ
たところ、図2の結果を得た。図2の二山形示差熱分析
曲線fにおいて、第1山形吸熱部gは共晶CuAl2 の
溶解によるものであり、一方、第2山形吸熱部hは初晶
α−Alの溶解によるものである。
たところ、図2の結果を得た。図2の二山形示差熱分析
曲線fにおいて、第1山形吸熱部gは共晶CuAl2 の
溶解によるものであり、一方、第2山形吸熱部hは初晶
α−Alの溶解によるものである。
【0025】次に、実施例Aを誘導加熱装置の加熱コイ
ル内に設置し、次いで周波数 1kHz、最大出力 3
7kWの条件で加熱して、固相と液相とが共存する半溶
融状態の実施例Aを調製した。この場合、固相率は50
%以上、60%以下に設定される。実施例Aにおいて
は、Cu含有量が10.2重量%、即ち、8重量%≦C
u≦12重量%の範囲に収められているので、図2に示
すように明瞭な第1および第2山形吸熱部g,hを持つ
示差熱分析曲線fが現出し、これにより、加熱処理にお
いて共晶CuAl2 から液相を確実に発生させて、鋳造
性の良好な半溶融状態の実施例Aを調製することができ
る。
ル内に設置し、次いで周波数 1kHz、最大出力 3
7kWの条件で加熱して、固相と液相とが共存する半溶
融状態の実施例Aを調製した。この場合、固相率は50
%以上、60%以下に設定される。実施例Aにおいて
は、Cu含有量が10.2重量%、即ち、8重量%≦C
u≦12重量%の範囲に収められているので、図2に示
すように明瞭な第1および第2山形吸熱部g,hを持つ
示差熱分析曲線fが現出し、これにより、加熱処理にお
いて共晶CuAl2 から液相を確実に発生させて、鋳造
性の良好な半溶融状態の実施例Aを調製することができ
る。
【0026】その後、図1に示すように、半溶融状態の
実施例A(符号5)をチャンバ6に設置し、加圧プラン
ジャ9の移動速度 0.07m/sec 、金型温度 35
0℃の条件で実施例Aを加圧しつつゲート7を通過させ
てキャビティ4内に充填した。そして、加圧プランジャ
9をストローク終端に保持することによってキャビティ
4内に充填された実施例Aに加圧力を付与し、その加圧
下で実施例Aを凝固させてAl合金鋳物Aを得た。
実施例A(符号5)をチャンバ6に設置し、加圧プラン
ジャ9の移動速度 0.07m/sec 、金型温度 35
0℃の条件で実施例Aを加圧しつつゲート7を通過させ
てキャビティ4内に充填した。そして、加圧プランジャ
9をストローク終端に保持することによってキャビティ
4内に充填された実施例Aに加圧力を付与し、その加圧
下で実施例Aを凝固させてAl合金鋳物Aを得た。
【0027】図3はAl合金鋳物Aの金属組織を示す顕
微鏡写真である。図3より、Al合金鋳物Aにおいては
ミクロンオーダの空孔部等の欠陥が生じていないことが
判る。
微鏡写真である。図3より、Al合金鋳物Aにおいては
ミクロンオーダの空孔部等の欠陥が生じていないことが
判る。
【0028】このように健全なAl合金鋳物Aが得られ
るのは次のような理由による。即ち、実施例Aにおいて
は、Si含有量が0.8重量%、したがって0.01重
量%≦Si≦1.5重量%に収められているので、図2
に示すように、第1山形吸熱部gの下降終了点iおよび
第2山形吸熱部hの頂点j間に存するその第2山形吸熱
部hの上昇線分kの傾斜が緩かとなって、固相のゲル状
態が比較的長く維持される。これにより固相相互間なら
びに固相および液相間の接合性が良好になるからであ
る。
るのは次のような理由による。即ち、実施例Aにおいて
は、Si含有量が0.8重量%、したがって0.01重
量%≦Si≦1.5重量%に収められているので、図2
に示すように、第1山形吸熱部gの下降終了点iおよび
第2山形吸熱部hの頂点j間に存するその第2山形吸熱
部hの上昇線分kの傾斜が緩かとなって、固相のゲル状
態が比較的長く維持される。これにより固相相互間なら
びに固相および液相間の接合性が良好になるからであ
る。
【0029】一方、第1山形吸熱部gにおいては、その
上昇開始点mおよび頂点n間に存する上昇線分oの傾斜
が急峻となるので、液相の最終凝固部分の粘度が低く保
持される。これにより、固相の凝固収縮に応じてその固
相周りに液相が十分に供給されるので、ミクロンオーダ
の空孔部の発生が回避されるからである。
上昇開始点mおよび頂点n間に存する上昇線分oの傾斜
が急峻となるので、液相の最終凝固部分の粘度が低く保
持される。これにより、固相の凝固収縮に応じてその固
相周りに液相が十分に供給されるので、ミクロンオーダ
の空孔部の発生が回避されるからである。
【0030】実施例B,Cにおいても、実施例A同様の
示差熱分析曲線fが現出し、また実施例B,Cを用いた
前記と同一条件による鋳造作業によって、前記Al合金
鋳物A同様に健全なAl合金鋳物B,C(実施例B,C
にそれぞれ対応)が得られた。
示差熱分析曲線fが現出し、また実施例B,Cを用いた
前記と同一条件による鋳造作業によって、前記Al合金
鋳物A同様に健全なAl合金鋳物B,C(実施例B,C
にそれぞれ対応)が得られた。
【0031】比較例aはSi含有量がゼロ、したがって
Si<0.01重量%であることから、図2、一点鎖線
示のように、第2山形吸熱部hの上昇線分k1 の傾斜が
急峻となるため固相のゲル状態維持時間が短くなり、こ
れにより固相相互間ならびに固相および液相間の接合性
が悪化する。
Si<0.01重量%であることから、図2、一点鎖線
示のように、第2山形吸熱部hの上昇線分k1 の傾斜が
急峻となるため固相のゲル状態維持時間が短くなり、こ
れにより固相相互間ならびに固相および液相間の接合性
が悪化する。
【0032】図4は比較例aを用い、前記と同一条件に
よる鋳造作業によって得られたAl合金鋳物aの金属組
織を示す顕微鏡写真であり、図4より空孔部が発生して
いることが判る。
よる鋳造作業によって得られたAl合金鋳物aの金属組
織を示す顕微鏡写真であり、図4より空孔部が発生して
いることが判る。
【0033】一方、比較例b,cはSi含有量がそれぞ
れ2,4重量%、したがってSi>1.5重量%である
ことから、図2、二点鎖線示のように第1山形吸熱部g
の上昇線分o1 の傾斜が緩かとなるため、液相の最終凝
固部分の粘度が高くなり、固相の凝固収縮に応じてその
固相周りに液相が十分に供給されない。
れ2,4重量%、したがってSi>1.5重量%である
ことから、図2、二点鎖線示のように第1山形吸熱部g
の上昇線分o1 の傾斜が緩かとなるため、液相の最終凝
固部分の粘度が高くなり、固相の凝固収縮に応じてその
固相周りに液相が十分に供給されない。
【0034】図5は比較例cを用い、前記と同一条件に
よる鋳造作業によって得られたAl合金鋳物cの金属組
織を示す顕微鏡写真であり、図5より空孔部が発生して
いることが判る。
よる鋳造作業によって得られたAl合金鋳物cの金属組
織を示す顕微鏡写真であり、図5より空孔部が発生して
いることが判る。
【0035】比較例dは、Cu含有量が6.8重量%、
したがってCu<8重量%であることから、図2のよう
な顕著な二山形タイプの示差熱分析曲線が現出せず、し
たがって鋳造性が悪化する。
したがってCu<8重量%であることから、図2のよう
な顕著な二山形タイプの示差熱分析曲線が現出せず、し
たがって鋳造性が悪化する。
【0036】比較例eはCu含有量が13重量%、した
がってCu>12重量%であることからAl合金鋳物e
の高温強度は高くなるが、靱性が低く、また高密度化に
伴い重量増を招来する。
がってCu>12重量%であることからAl合金鋳物e
の高温強度は高くなるが、靱性が低く、また高密度化に
伴い重量増を招来する。
【0037】次に、実施例A〜Cおよび比較例a〜eに
対応するAl合金鋳物A〜C,a〜eよりテストピース
を作製し、各テストピースについて、300℃における
引張強さσB および伸びδを測定し、また常温における
シャルピー衝撃値および密度を測定したところ、表2の
結果を得た。
対応するAl合金鋳物A〜C,a〜eよりテストピース
を作製し、各テストピースについて、300℃における
引張強さσB および伸びδを測定し、また常温における
シャルピー衝撃値および密度を測定したところ、表2の
結果を得た。
【0038】
【表2】 表2から、実施例A〜Cを用いて得られたAl合金鋳物
A〜Cは、優れた高温強度と延性を有し、また靱性も高
く、軽量であることが判る。
A〜Cは、優れた高温強度と延性を有し、また靱性も高
く、軽量であることが判る。
【0039】比較例a〜cを用いて得られたAl合金鋳
物a〜cは、空孔部の発生に伴い高温強度、延性および
靱性がAl合金鋳物A〜Cに比べて低くなる。
物a〜cは、空孔部の発生に伴い高温強度、延性および
靱性がAl合金鋳物A〜Cに比べて低くなる。
【0040】比較例dを用いて得られたAl合金鋳物d
は鋳造性の悪化に伴い機械的特性が最低となる。
は鋳造性の悪化に伴い機械的特性が最低となる。
【0041】比較例eを用いて得られたAl合金鋳物e
は、Cu含有量が高いことから高温強度は高くなるが、
靱性が低く、また重量が最大となる。
は、Cu含有量が高いことから高温強度は高くなるが、
靱性が低く、また重量が最大となる。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、前記のように構成する
ことによって、チクソキャスティング法の実施におい
て、健全で、機械的特性の優れたAl合金鋳物を得るこ
とが可能なAl−Cu−Si系合金材料を提供すること
ができる。
ことによって、チクソキャスティング法の実施におい
て、健全で、機械的特性の優れたAl合金鋳物を得るこ
とが可能なAl−Cu−Si系合金材料を提供すること
ができる。
【図1】加圧鋳造装置の縦断面図である。
【図2】Al−Cu−Si系合金材料の示差熱分析曲線
である。
である。
【図3】Al合金鋳物の金属組織の第1例を示す顕微鏡
写真である。
写真である。
【図4】(a)はAl合金鋳物の金属組織の第2例を示
す顕微鏡写真、(b)は(a)の要部写図である。
す顕微鏡写真、(b)は(a)の要部写図である。
【図5】(a)はAl合金鋳物の金属組織の第3例を示
す顕微鏡写真、(b)は(a)の要部写図である。
す顕微鏡写真、(b)は(a)の要部写図である。
f 示差熱分析曲線 g 第1山形吸熱部 h 第2山形吸熱部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22C 1/02 503 C22C 1/02 503J (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 21/00 - 21/18 C22C 1/02 B22D 17/00 B22D 21/04
Claims (2)
- 【請求項1】 示差走査熱量測定において、共晶CuA
l2 の溶解による第1山形吸熱部(g)と、初晶α−A
lの溶解による第2山形吸熱部(h)とを持つ示差熱分
析曲線(f)が現出するチクソキャスティング用Al−
Cu−Si系合金材料であって、Si含有量が0.01
重量%≦Si≦1.5重量%であり、またMg含有量が
Mg≦0.1重量%であることを特徴とするチクソキャ
スティング用Al−Cu−Si系合金材料。 - 【請求項2】 Cu含有量が8重量%≦Cu≦12重量
%である、請求項1記載のチクソキャスティング用Al
−Cu−Si系合金材料。
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DE19538242A DE19538242C2 (de) | 1994-10-14 | 1995-10-13 | Thixo-Giessverfahren und Verwendung eines Thixo-Giesslegierungsmaterials |
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GB9521164A GB2294000B (en) | 1994-10-14 | 1995-10-16 | Thixocasting process and thixocasting alloy material |
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-
1994
- 1994-10-14 JP JP6275605A patent/JP2794540B2/ja not_active Expired - Fee Related
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