JPH08120326A - 極低炭アルミキルド鋼の溶製方法 - Google Patents

極低炭アルミキルド鋼の溶製方法

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JPH08120326A JP6252087A JP25208794A JPH08120326A JP H08120326 A JPH08120326 A JP H08120326A JP 6252087 A JP6252087 A JP 6252087A JP 25208794 A JP25208794 A JP 25208794A JP H08120326 A JPH08120326 A JP H08120326A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 いかなる操業条件下の連続鋳造においても、
浸漬ノズル詰まりが発生せず、しかも製品鋳片における
発錆や Al2O3系介在物に起因した線状表面欠陥の発生が
ない極低炭アルミキルド鋼を得る。 【構成】 転炉から出鋼したリムド状態の溶鋼を、RH
真空脱ガス装置を用いて所定の炭素濃度まで脱炭したの
ち、該装置内でAlによる脱酸処理を施し、ついで溶鋼成
分が、Ca:0.0005〜0.005 wt%でかつ〔%Ca〕×〔%
S〕≦2×10-5となる量の金属Ca含有物質を添加し、そ
の後さらに脱ガス処理を行って固溶Caを蒸発除去する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、冷延鋼板等の素材で
ある極低炭素アルミキルド鋼の溶製方法に関し、とくに
溶製後の溶鋼を浸漬ノズルを介してタンディッシュから
モ−ルドへ注湯する際に懸念される Al2O3系介在物によ
る浸漬ノズルの詰まりや、製品鋳片における発錆および
Al2O3系介在物に起因した表面線状欠陥の発生等の有利
な解決を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】極低炭素アルミキルド鋼を連続鋳造によ
って製造する場合、一般には、転炉製鋼、取鍋での
真空脱炭処理、取鍋溶鋼のタンディッシュへの移注、
連続鋳造の4工程を経て製造されるが、その際、通常
は上記の真空脱炭処理時にAlを添加して溶鋼の脱酸を
図っている。従って、この脱酸工程では微細な高融点 A
l2O3系介在物が生成するが、この高融点 Al2O3系介在物
を上記の取鍋での真空脱炭処理工程では完全には浮上
分離することはできない。
【0003】そのため、上記の取鍋溶鋼をタンディッ
シュへ移注する際に、残留 Al2O3系介在物が浸漬ノズル
の内壁に付着してノズルが閉塞するという問題が生じて
いた。かようなノズル閉塞の解決策として、ノズル内に
不活性ガスを吹き込む方法やCaの添加により Al2O3系介
在物を CaOとAl2O3 からなる低融点の酸化物複合体とす
る方法等が知られている。
【0004】しかしながら、不活性ガスの吹き込み法は
抜本的な閉塞防止方法とはいえず、また吹き込み条件に
よってはかえって不活性ガスがモ−ルド内に取り込まれ
て鋳片表面に種々の表面欠陥を発生させるという問題が
あった。また、Ca添加により浸漬ノズル内のアルミナ系
介在物の付着を防止する技術においても、その操業条件
如何では製品鋳片が発錆するという問題があった。
【0005】上記の問題を解決するものとしては、例え
ば特開昭61−276756号公報や特開平6-599号公報に開示
された方法がある。特開昭61−276756号公報に開示され
た方法は、C濃度が 0.015wt%以下のアルミキルド鋼を
対象とし、CaまたはCa合金を溶鋼中に添加して、鋼中に
2〜40 ppmの金属Caを残留させることにより、浸漬ノズ
ル詰まりと発錆とを併せて防止しようとするものであ
る。また特開平6-599号公報の方法は、極低炭素アルミ
キルド溶鋼中に、5ppm 以上 10ppm未満の濃度を維持す
るようにCaを添加すると共に、浸漬ノズルの内壁をCaO
含有量が15wt%以上の耐火物とすることにより、浸漬ノ
ズル詰まりと発錆とを同時に防止しようとするものであ
る。
【0006】しかしながら、上記の方法ではいずれも、
浸漬ノズル詰まりは防止できるものの、発錆防止という
点については、操業条件の幅広い変化に適切に対応する
ことができないために、十分な成果をあげることはでき
なかった。すなわち、上記のような方法では、後述する
ように、発錆において重要な因子である CaSの生成、ま
たその原因となるS濃度のレベル制御について何ら考慮
が払われていなかったために、ノズル詰まりの防止と発
錆の防止とを同時に達成することはできなかったのであ
る。なお、これら極低炭素アルミキルド鋼を溶製する場
合においては、Alによる脱酸の後でCa添加処理を行うの
で、 Al2O3系介在物による線状表面欠陥が発生を抑制す
ることも同時に必要となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上記の問
題を有利に解決するもので、いかなる操業条件下におい
ても製品鋳片が発錆することなく、また同時に浸漬ノズ
ル詰まりを効果的に防止でき、さらには Al2O3系介在物
による線状表面欠陥も併せて防止し得る極低炭アルミキ
ルド鋼の溶製方法を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち、この発明は、
転炉から出鋼したリムド状態の溶鋼を、RH真空脱ガス
装置を用いて所定の炭素濃度まで脱炭したのち、該真空
脱ガス装置内でAlを添加して脱酸処理し、ついで金属Ca
含有物質を、溶鋼成分が、Ca:0.0005〜0.005wt%でか
つ、〔%Ca〕×〔%S〕≦2×10-5を満足する範囲にお
いて添加し、その後さらに脱ガス処理を行うことを特徴
とする極低炭アルミキルド鋼の溶製方法である。
【0009】この発明を適用して冷延鋼板用の極低炭素
アルミキルド鋼を溶製する場合、溶製対象とする溶鋼の
Al,SおよびO濃度はそれぞれ、Al:0.01〜0.06wt%,
S:0.003 〜0.015 wt%, O:0.0080wt%以下とす
ることが望ましい。
【0010】またこの発明において、金属Ca含有物質と
しては、鉄被覆の金属CaやCa−Al合金、Ca−Si合金等が
好適である。
【0011】以下、この発明を具体的に説明する。この
発明では、従来と同様、Caの添加により Al2O3介在物の
形態制御を行ってAl2O3 介在物を低融点化できるので、
ノズル内での付着を防止することができる。この場合、
ノズル内での付着を防止するのに好ましいCa濃度は5〜
50ppm である。というのは、Ca濃度が5ppm に満たない
と、 Al2O3 + 3Ca → 3CaO + 2Al ---(1) の反応によって生成する CaO量が少なくなり、 CaO−Al
2O3 系形態制御が不十分となり、一方、Ca濃度で50ppm
を超えると形態制御に必要な量以上のCaを添加すること
になり、不経済だからである。そして、このような条件
下においては、ノズル内でのガス吹きを行わなくとも正
常な鋳造が可能となる。
【0012】さて、溶鋼中へCaを供給するには、RH真
空槽内の溶鋼中へ直接Caを供給するか、またはRH浸漬
管(上昇管)内をCa粉またはCa蒸気が通過するように耐
火物で被覆したランスからCaを取鍋内溶鋼へ吹き込むこ
とで行う。上記の方法によれば、周囲へのガスおよびヒ
ュ−ムの発生が無くなるので環境上好ましいだけでな
く、真空槽、取鍋を通して溶鋼が循環するので攪拌効率
が向上し、ひいてはCaと Al2O3との形態制御反応効率も
上昇する。
【0013】ついで、発明者らは、Ca添加極低炭素アル
ミキルド鋼の発錆現象について広範な実験を行い、その
原因および発錆条件について検討した。その結果、Ca添
加極低炭素アルミキルド鋼の発錆は CaS介在物の生成と
強い相関があることが判明した。すなわち、Caを過剰に
添加した場合、Caは Al2O3の形態制御に使われる以上の
溶存量となるため、鋼中のSと反応して微細なCaS を主
とする硫化物系介在物を形成する。このCaS を主とする
硫化物系介在物が鋼板表面に露出して存在していると、
例えば60℃、90%湿度の恒温恒湿槽内にサンプルを装入
し10時間保持する発錆テストを行った場合、これらの介
在物が分解・溶出して孔があき、新しい鋼表面が露出
し、この表面が錆びることになるのである。従って、発
錆の主因は水溶性介在物とくに CaSを主とする硫化物介
在物であると言える。
【0014】このような発錆を防止するには Al2O3の形
態制御後、速やかに溶鋼中に残存するCaを除去して、 C
aSの発生を抑えればよい。そこで、この発明では、上記
のCa添加による Al2O3の形態制御後、引き続き脱ガス処
理を行うことにより、余分のCaを除去することにしたの
である。すなわち、RH真空脱ガス処理工程でCaを添加
する方法では、Caの添加を止めれば高い蒸気圧を有する
Caは真空槽の自由表面から迅速に除去されるので、Caの
供給量をコントロ−ルしてやればRH処理終了時に溶存
Caはほとんど存在せず、従って連続鋳造時にCaS が生成
することもないのである。
【0015】図1に、RH処理時における〔Ca〕t ,
〔O〕t の推移について調べた結果を示す。同図に示し
たとおり、キルド処理初期のAl添加により〔O〕t は急
激に低下する。この〔O〕t が十分低下した時点でCaを
吹き込む。このCaの所定時間吹き込み中はCa:0.0005〜
0.005 wt%を維持して、 Al2O3の形態制御速度の低下を
抑制する。そして吹き込み終了後、引き続き脱ガス処理
を継続しておくと、溶存Caは蒸発除去されるので、鋼中
の〔Ca〕は次第に低下する。
【0016】次に、発錆に及ぼす鋼中CaとSとの関係に
ついて調べた結果を図2に示す。なお、この実験は、A
l:0.01〜0.06wt%、O:0.008 wt%以下の冷延鋼板用
の極低炭素鋼について行ったものである。同図より明ら
かなように、〔%Ca〕×〔%S〕が2×10-5よりも大き
くなると凝固段階でCaS が析出することが判明した。実
際、製品板の発錆テスト(60℃、90%湿度の恒温恒湿槽
内にて10時間保持)を行ったところ、錆の発生が見られ
た。
【0017】また、〔%Ca〕<5×10-4では Al2O3の形
態制御が不完全であった。従って、Al2O3 の形態制御を
十分に行うには0.0005wt%以上のCaを必要とするが、0.
0050wt%を超える添加は、S濃度を 0.004%以下としな
ければならず、このためには脱硫処理に多大なコストが
かかると共に、とくに 0.003%未満では後述するように
スケールの剥離性が悪化する。そこで、この発明では、
極低炭素鋼のCa処理に際しては、Ca:0.0005〜0.005wt
%、〔%Ca〕×〔%S〕≦2×10-5を満足する量のCaを
添加することにしたのである。
【0018】なお、鋼中S量が 0.003wt%未満ではスラ
ブやホットコイル表面のスケ−ル剥離性が悪化し、一方
0.015wt%を超えた場合には表面および内部欠陥率が増
加するので、S量は 0.003〜0.015 wt%程度とするのが
好ましい。また、鋼中O量が 0.008wt%を超えると介在
物の形態制御が不十分となり、表面および内部欠陥が増
加するので、O含有量は 0.008wt%以下とするのが好ま
しい。
【0019】
【作用】この発明の特徴は、Alによる脱酸後、Ca処理を
行う場合に過剰なCa濃度の下でAl2O3 介在物の CaO−Al
2O3 系への形態制御を効率良く起こさせることにより、
鋳造時におけるノズル詰まりを防止すると共に、過剰な
Caを真空処理で蒸発除去し凝固時における CaSの析出を
妨げることにより、錆の発生を防止するところにある。
なお、Ca濃度が低いと、CaSの生成は無いものの、 CaO
−Al2O3 系への形態制御が不十分となり、ノズル詰まり
が生じる。
【0020】
【実施例】C:0.02〜0.04wt%、S:0.003 〜0.015 wt
%、O:0.05〜0.07wt%に溶製した転炉出鋼後の溶鋼 :
280〜300 tを、RH真空脱ガス装置を用いて、15分間
の真空脱炭処理を施した。脱炭処理後のCは0.0012〜0.
0020wt%、Oは0.04〜0.06wt%であった。脱炭処理後、
400〜600 kgのAlをRH真空槽内に添加した。この結
果、鋼中O量は 0.001〜0.008 wt%まで低減した。
【0021】ついで、Al添加から3〜4分経過後にCa処
理を行った。このCa処理は、ランス先端をRHの上昇管
の直下で取鍋の底に達するように配置し、 0.5〜2 Nm3
/minのArガスにより、、Ca−Si(Ca:30wt%、Si:70wt
%)粉を80〜150 kg吹き込んだ。また、別の方法とし
て、Ca−Siワイヤ−をRH上昇管直下で溶解するように
80〜150 kg投入した。さらに別の方法として、真空槽内
に直接Ca−Si粉を80〜150 kg添加した。上記のCa処理
後、さらに2〜10分間の脱ガス処理を施した。
【0022】Ca添加時における鋼中Ca量および〔%Ca〕
×〔%S〕値ならびに連鋳時におけるノズル詰まり状況
および製品鋳片における発錆状況について調べた結果
を、表1にまとめて示す。
【0023】
【表1】
【0024】同表から明らかなように、Ca:0.0005〜0.
005 wt%、〔%Ca〕×〔%S〕≦2×10-5を維持しつつ
Ca処理を行い、引き続き脱ガス処理を継続して固溶Caを
蒸発除去することによって、ノズル詰まりや発錆のない
冷延鋼板用極低炭素Alキルド鋼を溶製することができ
た。また、この発明に従い溶製した場合には、 Al2O3
介在物に起因した線状表面欠陥の発生も皆無であった。
【0025】
【発明の効果】かくしてこの発明に従い、RH真空脱ガ
ス装置でのAl脱酸によるキルド処理の途中でCaを連続的
に添加し、しかるのち余分の固溶Caを蒸発除去すること
により、連続鋳造時におけるノズル詰まりを効果的に防
止できるだけでなく、製品板において、Ca処理に伴う発
錆や Al2O3系介在物に起因した線状表面欠陥の発生を併
せて防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】RH真空脱ガス処理時における〔Ca〕t
〔O〕t の推移を示したグラフである。
【図2】鋼中〔%Ca〕,〔%S〕が、ノズル詰まりや、
CaSの析出、スケール剥離性、表面欠陥などに及ぼす影
響を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 陽一 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社鉄鋼研究所内 (72)発明者 反町 健一 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社鉄鋼研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 転炉から出鋼したリムド状態の溶鋼を、
    RH真空脱ガス装置を用いて所定の炭素濃度まで脱炭し
    たのち、該真空脱ガス装置内でAlを添加して脱酸処理
    し、ついで金属Ca含有物質を、溶鋼成分が、Ca:0.0005
    〜0.005 wt%でかつ、〔%Ca〕×〔%S〕≦2×10-5
    満足する範囲において添加し、その後さらに脱ガス処理
    を行うことを特徴とする極低炭アルミキルド鋼の溶製方
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、溶製対象とする極低
    炭素アルミキルド鋼のAl,SおよびO濃度がそれぞれ、
    Al:0.01〜0.06wt%, S:0.003 〜0.015 wt%,
    O:0.0080wt%以下である冷延鋼板用の極低炭素アルミ
    キルド鋼の溶製方法。
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