JPH0783712B2 - 新規なプロリンアシラーゼ及びその製造法 - Google Patents

新規なプロリンアシラーゼ及びその製造法

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JPH0783712B2
JPH0783712B2 JP62232381A JP23238187A JPH0783712B2 JP H0783712 B2 JPH0783712 B2 JP H0783712B2 JP 62232381 A JP62232381 A JP 62232381A JP 23238187 A JP23238187 A JP 23238187A JP H0783712 B2 JPH0783712 B2 JP H0783712B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、ロドトルラ属に属する菌株により生産される
プロリンアシラーゼ及びその製造方法に関するものであ
る。
(従来技術及び発明が解決しようとする問題点) 従来、N‐アシル‐L-プロリンに作用するプロリンアシ
ラーゼとしては、アルカリゲネス(Alcaligenes)属に
属する微生物が生産するプロリンアシラーゼ(特開昭55
-7015)及びシュードモナス(Pseudomonas)属に属する
微生物が生産するプロリンアシラーゼ(特開昭55-7149
1)が知られているのみである。プロリンアシラーゼ
は、N‐アシル‐DL-プロリンをN‐アシル‐D-プロリン
とL-プロリンに不斉加水分解し、L-プロリンを効率よく
製造する方法に用いられる酵素であり、有用性が高い。
そこで、本発明者らは、上記の属以外の微生物につい
て、種々検索を行った結果、ロドトルラ属に属する菌株
がプロリンアシラーゼを生産することを発見し、本発明
に至った。
(問題点を解決するための手段) すなわち本発明は、新規なプロリンアシラーゼ及びその
製造方法である。
本発明者らは、プロリンアシラーゼ生産菌をスクリーン
グするために、ベンジルオキシカルボニルグリシル‐L-
プロリン(以下、Z-Gly-L-Proと略す)を窒素源として
資化できる微生物を検索したところ、ロドトルラ・ルブ
ラAHU3243がプロリンアシラーゼを生産することを発見
し、本発明に至った。
次に、ロドトルラ・ルブラAHU3243により生産されるプ
ロリンアシラーゼの理化学的性質及び酵素学的性質につ
いて記述する。
作用;N ‐アシル‐L-プロリンに作用してL-プロリンと有機酸
を生じる。
基質特異性; L-プロリンなどイミノ酸のN‐アシル体にのみ作用し、
他のL-アミノ酸やD-アミノ酸には作用しない。アシル基
としてはベンジルオキシカルボニルグリシル基(Z-Gly
-)に最もよく作用し、アセチル基,Z基にも作用する。
至適pH; リン酸カリウム緩衝液でpH6.0 最適温度; 50℃ 熱安定性; 60℃,10分間の熱処理で約12%の残存活性を有する。
pH安定性; pH6〜10の範囲で安定である。
阻害剤; Cu2+イオン,PCMBによりほぼ完全に阻害される。
分子量; 560,000(ゲルろ過法による) 活性測定法; リン酸カリウム緩衝液pH6.0 25μmol,Z-Gly-L-Pro 5μm
ol及び酵素を含む500μlの反応液中で30℃,30分間反応
させ、生成したL-プロリンをアミノ酸分析計により、測
定した。
尚、1Uは上記条件1分間に1μmolのL-プロリンの生成
を触媒する酵素量とした。
本発明のプロリンアシラーゼは、ロドトルラ属に属する
プロリンアシラーゼ生産能を有する微生物をZ-Gly-L-Pr
o,アセチル‐L-プロリン(以下Ac-L-Proと略す),ポリ
ペプトンなどの誘導物質を含む培地中で培養し、培養物
からプロリンアシラーゼを取得することを特徴とする方
法によって製造することが出来る。
本発明において使用するプロリンアシラーゼを生産する
ことのできる微生物としては、ロドトルラ属に属するす
べての菌株,突然変異株,変種を含む。それらのうち好
ましい菌株は北海道大学農学部から購入する事ができる
ロドトルラ・ルブラ(Phodotorula rubra)AHU3243であ
る。ロドトルラ・ルブラAHU3243の培養は、プロリンア
シラーゼの誘導物質を含む培地中で行われる。
プロリンアシラーゼの誘導物質としては、Z-Gly-L-Pro
又はAc-L-Proが特に好ましく、0.1〜1.0%の濃度で加え
るのが好ましい。誘導物質以外の培地成分としては、グ
リセリン,酵母エキス,リン酸塩,金属類,ビタミン類
などがもちいられ、培地のpHは5〜8程度が好ましい。
培養は、通常振とう又は通気攪はん下に20〜40℃で15〜
40時間行うことによってプロリンアシラーゼが菌体中に
生産される。
生産されたプロリンアシラーゼの精製は、通常の方法を
組み合わせることによって行われる。例えば、培養物を
遠心分離することにより菌体を回収し、アルミナを加え
て乳鉢中で磨りつぶして無細胞抽出液を得、DEAE-トヨ
パールイオン交換クロマトグラフィー,セルロファイン
GCL-2000ゲルろ過,MonoQイオン交換クロマトグラフィ
ー,スーパーロース6ゲルろ過によって約104倍生成さ
れる。
以下、実施例によって詳しく説明するが本発明がこれに
限定されるものではない。
(発明の効果) 本発明により既知の酵素に比較し、プロリダーゼ活性が
なく、Z-Gly-アミノ酸のうちZ-Gly-Proにしか作用しな
い等、より特異性が高く、又、pH安定性の高い酵素を得
ることができた。
実施例1 プロリンアシラーゼ生産に及ぼす窒素源の影響 後に記載の培地Aに窒素源を添加したpH5.0の培地5ml中
でロドトルラ・ルブラAHU3243を30時間培養し、その無
細胞抽出液のプロリンアシラーゼ活性を前記の測定法で
測定し、Z-Gly-Proを0.3%添加した場合の総活性を100
とした相対活性で表したところ、第1表の結果となっ
た。
実施例2 プロリンアシラーゼのロドトルラ・ルブラAHU3243から
の精製 ロドトルラ・ルブラAHU3243をZ-Gly-L-Pro0.3%を含むp
H5の培地A2lで培養し、遠心分離により菌体を回収し
た。回収した菌体40g(湿重量)にアルミナ40g海砂20g
を加え、乳鉢中で菌体をよくすりつぶした後、後記の緩
衝液I160mlを加えて懸濁し、遠心分離した。遠心分離の
上清を緩衝液Iに透析して、無細胞抽出液を得た。無細
胞抽出液を緩衝液Iで平衡化したDEAE-トヨパールに吸
着させ、塩化カリウムの濃度勾配で溶出させ活性画分を
分取した。プロリンアシラーゼの活性画分を限外ろ過に
より濃縮後、セルロファインGCL-2000でゲルろ過した。
溶出した活性画分を濃縮後、緩衝液IIで平衡化したMono
Qに吸着させ、塩化ナトリウムの濃度勾配で溶出させ
た。分取した活性画分を濃縮後、さらに緩衝液Iで平衡
化したスーパーロース6でゲルろ過した。これらの操作
により、プロリンアシラーゼの比活性は、約104倍増加
した。精製の要約を第2表に示した。
実施例3 プロリンアシラーゼの基質特異性 実施例2により得た精製酵素を用いて、L-プロリン含有
ペプチド及びプロリン誘導体に対する活性を測定した。
基質濃度は10mMとし、その他の反応条件は前記活性測定
方法に従った。その結果をZ-Gly-Proに対する活性を100
とした相対活性で第3表に示した。
実施例4 プロリンアシラーゼ活性に及ぼす酵素阻害剤の影響 実施例3で精製した酵素のプロリンアシラーゼ活性に及
ぼす阻害剤の影響を調べた。活性の測定は、基質を除く
前記の反応液に各種阻害剤を添加し、30℃で30分間処理
した後に、基質Z-Gly-L-Proを5μmol加え、30分間反応
させて行った。阻害剤を添加しなかった場合の活性を10
0とした相対活性で第4表に示した。
実施例5 プロリンアシラーゼ活性に及ぼす金属イオンの影響 実施例3で精製した酵素のプロリンアシラーゼ活性に及
ぼす金属イオンの影響を調べた。活性の測定は、基質を
除く前記の反応液に各種金属イオン2mMの濃度で添加
し、実施例4と同様にして活性を測定し、金属イオンを
添加しなかった場合の活性を100とした相対活性で第5
表に示した。
実施例6 プロリンアシラーゼ活性に及ぼすpHの影響 実施例3で精製した酵素のプロリンアシラーゼ活性に及
ぼすpHの影響を調べた。前記した活性測定のうち、緩衝
液の種類及びpHをかえて活性を測定し、pH6.0の場合の
活性を100とした相対活性で表し、第1図に示した。但
し、pH3〜5.5は100mM酢酸‐酢酸ナトリウム緩衝液,pH6
〜8.5は50mMリン酸カリウム緩衝液,pH9は100mMトリス‐
塩酸緩衝液,pH11は100mMリン酸二ナトリウム‐水酸化ナ
トリウム緩衝液を使用した。
実施例7 プロリンアシラーゼの安定性に対するpHの影響 プロリンアシラーゼのpHに対する安定性を調べた。酵素
を各種pHの緩衝液III(ブリトンとロビンソン(Britton
and Robinson)の緩衝液)中、30℃,30分間処理した
後、pH6.0の200mMリン酸カリウム緩衝液と10mM Z-Gly-L
-Proを含む反応液を加えて、30℃,30分間反応を行っ
た。pH6.0の場合の活性を100とした相対活性で表し、第
2図に示した。
実施例8 プロリンアシラーゼ活性に及ぼす温度の影響 プロリンアシラーゼ活性を各種温度で測定し、50℃の活
性を100とした相対活性で表し、第3図に示した。
実施例9 プロリンアシラーゼの安定性に及ぼす温度の影響 プロリンアシラーゼの温度に対する安定性を調べた。酵
素を各種温度で10分間熱処理した後、30℃,30分間反応
させ、活性を測定し、熱処理しなかった場合の活性を10
0とした相対活性で表し、第4図に示した。
培地A グリセリン 1 (%W/V) 酵母エキス 0.1 KH2PO4 0.1 NaHPO4・12H2O 0.1 MgSO4・7H2O 0.05 CaCl2 1×10-3 FeCl2 1×10-3 MnCl2 1×10-3 ピリドキシン塩酸塩 2×10-4 ニコチン酸 2×10-4 ビオチン4×10-6 緩衝液I 10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.2) 0.02%2-メルカプトエタノール 緩衝液II 50mMトリス‐塩酸緩衝液(pH7.6) 0.02%2-メルカプトエタノール 緩衝液III
【図面の簡単な説明】
第1図は、プロリンアシラーゼ活性のpH依存性をpH6.0
における活性を100とした相対活性で表したものであ
る。 第2図は、プロリンアシラーゼのpH安定性を表したもの
であり、ブリトン・ロビンソン緩衝液中において、30
℃,30分間の処理後の活性をpH6.0における活性を100と
した相対活性で表したものである。 第3図は、プロリンアシラーゼ活性の温度依存性を表し
たものであり、50℃における活性を100とした相対活性
で表した。 第4図は、プロリンアシラーゼの温度安定性を表したも
のであり、未処理の活性を100とし、各温度で10分間処
理後の活性を相対活性で表した。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の理化学的性質を有する新規なプロリン
    アシラーゼ 作用;N ‐アシル‐L-プロリンに作用してL-プロリンと有機酸
    を生じる。 基質特異性; L-プロリンなどイミノ酸のアシル体にのみ作用し、他の
    L-アミノ酸やD-アミノ酸には作用しない。アシル基とし
    てはベンジルオキシカルボニルグリシル基(Z-Gly-)に
    最もよく作用し、アセチル基,Z基にも作用する。 至適pH; リン酸カリウム緩衝液でpH6.0 最適温度; 50℃ 熱安定性; 60℃,10分間の熱処理で約12%の残存活性 pH安定性; pH6〜10の範囲で安定である。 阻害剤; Cu2+イオン,p‐クロロ安息香酸第二水銀(以下PCMBと
    略す)によりほぼ完全に阻害される。 分子量; 560,000(ゲルろ過法による)
  2. 【請求項2】ロドトルラ(Rhodotorula)属に属する菌
    株を培養し、培養物からプロリンアシラーゼを取得する
    ことを特徴とするプロリンアシラーゼの製造方法。
  3. 【請求項3】ロドトルラ属に属する菌株がロドトルラ・
    ルブラ(Rhodotorula rubra)AHU3243である特許請求の
    範囲第二項記載のプロリンアシラーゼの製造方法。
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