JPH078092Y2 - スローアウェイチップ及びスローアウェイ式カッタ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この考案は、多角形板状をなし、その角部にコーナー刃
が形成されると共に、該コーナー刃に連なる稜線部に主
切刃が形成されたスローアウエイチツプ、及び該スロー
アウエイチツプが装着されるスローアウエイ式カッタに
関する。

［従来の技術］ 従来、この種のスローアウエイチツプが装着されるスロ
ーアウエイ式カッタとしては、例えば第10図ないし第12
図に示すように、略円筒状をなす工具本体１の先端外周
部に、複数のサポータ２を楔部材３及びクランプねじ４
により着脱自在に装着し、これら各サポータ２に形成さ
れたチツプ取付座５に、略三角形平板状をなすスローア
ウエイチツプ（以下、チツプと略称する）６を楔部材７
とクランプねじ８により着脱自在に装着してなるものが
知られている。

ここで、上記チツプ６は、各角部にコーナー刃９が形成
されると共に、各コーナー刃９の形成された角部に連な
る上面稜線部に主切刃10が形成されてなるもので、その
下面及び１つのコーナー刃９を挟んで隣合う２うの側面
が上記チツプ取付座５に密着される一方で、残る主切刃
10及び該主切刃10の先端と連続する１つのコーナー刃９
を上記工具本体１の先端外周部から突出させて工具本体
１に装着され、これらコーナー刃９及び主切刃10が、工
具本体１の矢印YI方向の回転に伴って被削材を切削して
ゆくようになっている。

［考案が解決しようとする課題］ ところで、上述した従来のチツプ６が装着されたスロー
アウエイ式カッタ（以下カッタと略称する）において
は、第13図に示すように主切刃10と工具本体１との間の
クリアランスＴが小さいため、被削材Ｗに対して深切り
込みで使用する場合の切屑排出性が悪くて切屑噛みが生
じ易い欠点があり、場合によっては切刃欠損に至ること
さえあった。

他方、切屑の排出性を向上させるべく、工具本体１を小
径化するなどしてクリアランスＴを大きくとろうとする
と、チップ６の側面とサポータ２のチップ取付座５との
接触長さが減少してチツプ６の着座剛性が著しく低下
し、このようなものは到底実用に供することはできなか
った。

この考案は、このような背景の下になされたもので、深
切り込み時における切屑排出性が良好で切刃欠損も生じ
ることもなく、かつチツプの着座剛性の低下もないスロ
ーアウエイチツプ及びスローアウエイ式カツタを提供す
ることを目的とする。

［課題を解決するための手段］ 上記課題を解決するために、この考案のチツプは、隣接
する二つの角部間で、先端がコーナー刃と連続する主切
刃の後端側に、先端が主切刃と連続してかつ後端側に向
かうに従って漸次チツプ内方に傾斜する第１の逃げ刃を
形成し、この第１の逃げ刃の後端側に、該第１の逃げ刃
に対してチツプ外方に傾斜する第２の逃げ刃を形成して
なるものである。この場合、上記チツプを正多角形状に
形成すると共に、第２の逃げ刃の後端における主切刃延
長線からチツプ内方へ後退量ｔと、チツプ内接円の直径
Ａとの関係を次式に示すように定めることによって、良
好な切屑排出性及びチツプ着座剛性が確実に得られるも
のである。

A/8≦ｔ≦A/6 また、上記課題を解決するために、この考案のカッタ
は、工具本体の先端外周部に形成されたチツプ取付座
に、上記チツプを、そのコーナー刃が工具本体の先端側
に突出し、かつ主切刃、第１の逃げ刃及び第２の逃げ刃
が工具本体の外周側に突出する状態で取り付けたもので
ある。

［作用］ 上記構成によれば、被削材に切り込まれる主切刃に対し
て第１の逃げ刃が工具本体の半径方向内方へ傾斜するの
で、主切刃の後端側と被削材との間には隙間が生じる。
このため主切刃後端から排出される切屑は、上記の隙間
を介して工具本体の基端側へ導かれる。

また、上記構成によれば、第２の逃げ刃が、第１の逃げ
刃に対して工具本体の半径方向外方へ傾斜するため、上
記第１の逃げ刃の後端を、該第１の逃げ刃の形成された
稜線部に隣接してチツプ取付座に密着されるチツプ側面
まで延長した場合に比して上記チツプ側面の全長が長く
なる。従って、チツプの着座剛性の低下が防止される。

さらに、チツプを多角形平板状に形成すると共に、第２
の逃げ刃の後端における主切刃延長線からチツプ内方へ
の後退量をチツプ内接円の直径に対して1/8以上かつ1/6
以下の範囲に定めれば、主切刃の後端側と被削材との間
には切屑排出性を損なわない隙間が確実に確保されると
共に、チツプ取付座と密着されるチツプ側面の長さもチ
ツプの着座剛性確保に十分足りる量となる。

［実施例］ 以下、第１図ないし第７図を参照して、本考案の実施例
を説明する。

第１図ないし第３図に示すように、本実施例のカッタ
は、円筒状をなす工具本体11の先端外周部に、複数のサ
ポータ12を楔部材13及びクランプねじ14によって着脱自
在に装着し、これらサポータ12に形成されたチツプ取付
座15に、略三角形平板状をなすスローアウエイチツプ
（以下、チップと略称する）16を楔部材17及びクランプ
ねじ18により着脱自在に装着した概略構成とされてい
る。

第４図ないし第５図（ａ）に示すように、上記チツプ16
の各角部は円弧状をなし、各々の稜線部にはコーナー刃
19が形成されている。そして、これらコーナー刃19の一
方の側に連なる上面稜線部には、その先端がコーナー刃
19と連続する主切刃20が形成されており、該主切刃20の
後端側には、その先端が主切刃20と連続する第１の逃げ
刃21と、その先端が第１の逃げ刃21の後端と連続する第
２の逃げ刃22がそれぞれ形成されている。

上記第１の逃げ刃21は、その後端側に向かうに従って漸
次チップ内方に傾斜して形成されており、その主切刃20
に対する傾斜角αは鈍角に設定されている。

また、上記第２の逃げ刃22は、上記主切刃20と平行に形
成され、その後端は対向するコーナー刃19まで延長され
ている。そして、第６図に示すように、上記第２の逃げ
刃22の主切刃20の延長線l₁からチツプ内方への後退量ｔ
は、第７図に示すようにチツプ内接円の直径をＡとした
ときに、後述する理由より下式を満たす範囲に設定さ
れている。

A/8≦ｔ≦A/6 … そして、上記のように構成されたチツプ16は、第７図に
示すように、その下面と、１つのコーナー刃19を挟んで
隣合う２側面とがそれぞれサポータ12のチツプ取付座15
に密着される一方で、残る主切刃20及び該主切刃20後端
と連続する第１、第２の逃げ刃21、22が工具本体11の外
周側へ、また上記主切刃20の先端と連続するコーナー刃
19が工具本体11の先端に突出した状態で工具本体11に装
着され、使用に供される。

以上のように構成されたチツプ６の装着されたカッタに
あっては、工具本体11をその軸線を中心として第３図に
示す矢印Y1方向に回転させると共に、工具本体11を軸線
と直交する方向に送ることにより、第７図に示すよう
に、工具本体11の先端外周部から突出したチツプ16のコ
ーナー刃19と主切刃20とで被削材Ｗに段差部を加工して
ゆく。

この際、チツプ16の主切刃20の後端側にはチツプ内方に
傾斜する第１の逃げ刃21が形成されているため、主切刃
20の後方（図において上方）と被削材Ｗとの間には主切
刃20に対する第２の逃げ刃22の後退量ｔだけ隙間が生じ
る。従って、切削により生成される切屑はスムーズに主
切刃20の後方へと排出され、さらには被削材Ｗと工具本
体11との間のクリアランスＴから被削材Ｗの上面へと排
出されるので主切刃20と被削材Ｗとの間に切屑が噛み込
むこともなく、切刃欠損も生じ得ない。

そして、チツプ16の第１の逃げ刃21の後方には、該第１
の逃げ刃21に対してチツプ外方へ傾斜する第２の逃げ刃
22が形成されているため、チツプ取付座15と密着する主
切刃20の全長が、第１の逃げ刃21の後端をチツプ取付座
15と密着するチツプ側面まで延長する場合に比して十分
に長くなり、チツプ16の着座剛性も十分確保される。

ここで、本実施例で特に第２の逃げ刃22の後退量ｔを上
式に定める範囲とした理由を記せば、第２の逃げ刃22
の後退量ｔがチツプ内接円の直径Ａの1/8より小さい範
囲では、主切刃20の後端側と被削材Ｗとの間に生じる隙
間量が小さくて切屑排出性が損なわれ、逆にチツプ内接
円の直径Ａの1/6より大きい範囲では主切刃20とチツプ
取付座15との接触長さが短くなってチツプの着座剛性が
損なわれるおそれがあるためである。

なお、以上の実施例では、スローアウエイチツプ16を各
コーナー刃19の一方の側が主切刃20の先端と連続し、他
方の側が第２の逃げ刃22の後端と連続する形状とした
が、切削面の面粗度を改善するために、第８図ないし第
９図に示すように各コーナー刃19の他方の側と第２の逃
げ刃22の後端との間に副切刃23を形成しても良い。ま
た、第５図（ｂ）に示すように、コーナー刃19の形成さ
れた各角部を面取り形状としてもよく、さらに、第１の
逃げ刃21と第２の逃げ刃22との連続する部分を円弧状に
形成してこれらを滑らかに連続させる変形も任意に行っ
て良い。

また、本実施例では特に第２の逃げ刃22を主切刃20と平
行に設けたが、本考案のスローアウエイチツプ及びスロ
ーアウエイ式カッタはこれに限るものではない。すなわ
ち主切刃20とチツプ取付座15との接触長さの確保の観点
からみて、第２の逃げ刃22は第１の逃げ刃21に対してチ
ツプ外方に傾斜するものであれば良く、好ましくは第２
の逃げ刃22後端における主切刃20の延長線l₁からチツプ
内方への後退量ｔを上式を満たす範囲に定めればよい
のである。さらに、チツプ16も略三角形平板状に限ら
ず、平行四辺形、菱形等の多角形平板状をなすチツプで
あれば当然に適用しうるものである。

［考案の効果］ 以上説明したように、この考案は、隣接する二つの角部
間でスローアウエイチツプのコーナー刃と連続する主切
刃の後端側に、先端が主切刃と連続してかつ後端側に向
かうに従って漸次チツプ内方に傾斜する第１の逃げ刃
と、先端が第１の逃げ刃の後端と連続しかつ後端に向か
うに従って漸次第１の逃げ刃に対してチツプ外方に傾斜
する第２の逃げ刃を形成し、このスローアウエイチツプ
を、工具本体の先端外周部に設けられたチツプ取付座
に、そのコーナー刃が工具本体の先端側に、また主切刃
及び第１、第２の逃げ刃が工具本体の外周側に向くよう
にして装着したものであるから、次のような効果を奏す
る。

すなわち、被削材に切り込まれる主切刃に対して第１の
逃げ刃が工具本体の半径方向内方に傾斜するので主切刃
の後端側と被削材との間には切屑排出に十分な隙間が生
じ、切削により生成される切屑はスムーズに主切刃の後
方へと排出される。このため主切刃と被削材との間には
切屑が噛み込むこともなく、切刃欠損も防止される。

さらに、第２の逃げ刃が第１の逃げ刃に対して工具本体
の半径方向外周側へ傾斜するため、第１の逃げ刃の後端
を、該第１の逃げ刃が形成されたチツプ稜線部と隣接し
かつチツプ取付座に密着されるチツプ側面まで延長する
場合に比して上記チツプ側面の全長が長くなり、このた
めスローアウエイチツプの側面とチツプ取付座との接触
長さが十分に確保され、スローアウエイチツプの着座剛
性の低下も防止されるのである。

そして、スローアウエイチツプを正多角形平板状に形成
すると共に、その第２の逃げ刃の後端における主切刃延
長線からチツプ内方への後退量を、チツプ内接円直径の
1/8以上かつ1/6以下の範囲に定めれば、スローアウエイ
チツプの主切刃の後端側と被削材との間には切屑排出性
を損なわない量の隙間が確実に確保されると共に、スロ
ーアウエイチツプの側面とチツプ取付座との密着長さが
チツプの着座剛性を確保するに足りる十分な量となり、
上記の効果がより一層有効に発揮されるのである。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第７図は本考案の一実施例を示すもので、
第１図はスローアウエイ式カッタの軸方向断面図、第２
図はその側面図、第３図はその底面図、第４図はスロー
アウエイチツプの平面図、第５図（ａ）は第４図におけ
るＩ部の拡大図、第５図（ｂ）はその変形を示す図、第
６図はスローアウエイチツプの角部近傍の拡大図、第７
図は切削時の状態を示す図、第８図ないし第９図は本考
案に係る一実施例の変形例を示す図で、第８図はスロー
アウエイチツプの平面図、第９図は第８図におけるII部
の拡大図、そして第10図ないし第13図は従来例を示す図
で、第10図はスローアウエイ式カッタの軸方向断面図、
第11図はその側面図、第12図はその底面図、第13図は切
削時の状態を示す図である。 11……工具本体、15……チツプ取付座、16……スローア
ウエイチツプ、19……コーナー刃、20……主切刃、21…
…第１の逃げ刃、22……第２の逃げ刃。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−217011（ＪＰ，Ａ) 特開 昭52−101786（ＪＰ，Ａ) 実開 昭62−100815（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭62−61412（ＪＰ，Ｕ)

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】多角形板状をなし、隣接する二つの角部間
   で、少なくとも一の角部にコーナー刃が形成されると共
   に、このコーナー刃の形成された一の角部に連なる少な
   くとも一の稜線部に、先端が上記コーナー刃と連続する
   主切刃が形成されてなるスローアウェイチップにおい
   て、 上記主切刃の後端に、先端が上記主切刃と連続しかつ後
   端側に向かうに従って漸次チップ内方に傾斜する第１の
   逃げ刃を形成し、この第１の逃げ刃の後端側に、該第１
   の逃げ刃に対してチップ外方に傾斜する第２の逃げ刃を
   形成して、上記隣接する他の角部に接続されるようにし
   たことを特徴とするスローアウェイチップ。
2. 【請求項２】正多角形状をなし、第２の逃げ刃の後端側
   における主切刃延長線からチップ内方への後退量ｔが、
   チップ内接円の直径Ａに対して次式に示す範囲に定めら
   れていることを特徴とする請求項１記載のスローアウェ
   イチップ。 A/8≦ｔ≦A/6
3. 【請求項３】工具本体の先端外周部に形成されたチップ
   取付座に、請求項１または請求項２記載のスローアウェ
   イチップを、上記コーナー刃が工具本体の先端側に突出
   し、かつ主切刃、第１の逃げ刃及び第２の逃げ刃が工具
   本体の外周側に突出した状態で取り付けたことを特徴と
   するスローアウェイ式カッタ。