JPH07706B2 - 被覆合成樹脂成形体およびその製造法 - Google Patents

被覆合成樹脂成形体およびその製造法

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JPH07706B2
JPH07706B2 JP1287139A JP28713989A JPH07706B2 JP H07706 B2 JPH07706 B2 JP H07706B2 JP 1287139 A JP1287139 A JP 1287139A JP 28713989 A JP28713989 A JP 28713989A JP H07706 B2 JPH07706 B2 JP H07706B2
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resin molded
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剛信 畠澤
比呂他 藤縄
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、酸化ケイ素被膜を形成した被覆合成樹脂成形
体に関し、さらに詳しくは、酸化ケイ素被膜の密着性に
優れ、耐摩耗性、耐候性、耐薬品性などの表面状態が改
善された被覆合成樹脂成形体およびその製造法に関す
る。
〔従来の技術〕
合成樹脂成形体の表面を改質するために、二酸化ケイ素
などの酸化物や金属窒化物等で被覆する技術は公知であ
る。
従来、酸化物膜等を被覆する方法としては、真空蒸着、
スパッタ、イオンプレーティング、プラズマCVDなど各
種の方法が知られているが、これらの被膜形成法では、
特別の設備を要したり、大型成形体や複雑な形状の成形
体表面に被膜を形成することが困難であるなどの難点を
有している。また、合成樹脂成形体と被膜との密着性が
不充分であるという問題がある。
最近、二酸化ケイ素被膜を直接合成樹脂成形体表面に被
覆するのではなく、予め合成樹脂成形体表面に付着性良
好なケイ素含有被膜を第1次被膜(プライマー)として
被覆し、さらにその上に該第1次被膜と付着性良好な二
酸化ケイ素被膜を作成する方法が提案されている(特開
昭61-12734号公報)。すなわち、この方法は、合成樹脂
成形体は、下記一般式で示されるケイ素化合物、それら
の加水分解物、およびコロイダルシリカからなる群より
選ばれた少なくとも1種のケイ素化合物を被覆・硬化さ
せて第1次被膜とした後、該第1次被膜つき合成樹脂成
形体と二酸化ケイ素の過飽和状態のケイフッ化水素酸溶
液とを接触させて第1次被膜上に二酸化ケイ素皮膜を形
成させることを特徴とする被覆合成樹脂成形体の製造方
法である。
R1 nSi(R2)4-n (式中R1は炭素数1〜6の炭化水素基、ビニル基、メタ
クリロキシ基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、
フッ素または塩素を有する有機基であり、R2はアルコキ
シ基、アルコキシアルコキシ基、アセトキシ基および塩
素元素から選ばれる1種もしくは、複数の結合基であ
り、nは0〜4である。) この方法によれば、前記従来法と比較して耐久性のよい
被膜を得ることができ、しかも塗布浸漬法を使用するこ
とができいるため、大型形状あるいは複雑な形状の合成
樹脂成形体にも適用可能である。しかしながら、この方
法では、二酸化ケイ素被膜とプライマーとの密着性は良
いけれど、合成樹脂成形体とプライマーとの密着性はな
お不充分である。その理由は、プライマーとして使用す
る前記ケイ素化合物と合成樹脂成形体との間に強固な化
学的結合がほとんど形成されないためであると推定され
る。そのために、前記方法では、二酸化ケイ素被膜の合
成樹脂成形体に対する密着性は未だ充分ではない。
また、上記のような析出法で得られた二酸化ケイ素被膜
には、数%程度の水が含まれており、未結合のSi-OHも
数%程度残存しているため、アセトン等の有機溶剤に対
する耐性が不充分な場合がある。
ところで、合成樹脂成形体中でも、ポリカーボネート樹
脂成形体は、透明で耐衝撃性に優れ、かつ耐熱性がよい
けれども、表面が傷つき摩耗し安く、また、アルカリに
侵されやすいという欠点を有している。従来、各種の表
面硬化コーティング法が提案されているが、表面に強力
な極性基をもつ官能基がないため接着性が不充分であ
り、酸化ケイ素系膜との密着性が強固な被覆ポリカーボ
ネート樹脂成形体は得られていない。
さらに、エンジニアリングプラスチックとして、例え
ば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエ
ーテルエーテルケトン、ポリイミドなどの多くのポリマ
ーが開発され、実用化されているが、それらのポリマー
からなる合成樹脂成形体を酸化ケイ素被膜して、表面を
改質するための改善された方法は提案されていない。
[発明が解決しようとする課題] 本発明の目的は、密着性に優れた酸化ケイ素被膜を有す
る被覆合成樹脂成形体を提供することにある。
また、本発明の目的は、耐摩耗性、耐候性、耐薬品性な
どの表面状態が改善された酸化ケイ素被覆合成樹脂成形
体を提供することにある。
本発明者からは、前記従来技術の有する問題点を克服す
るために鋭意研究した結果、シラン系カップリング剤に
よる通常のプライマー処理では、合成樹脂成形体と有機
シラン化合物との間に、せいぜい極性基間の静電気的引
力が働いているだけであって、強力な結合が生じていな
いため、両者間の密着性が悪いことを見出した。
そこで、さらに研究を進めた結果、合成樹脂成形体表面
にシラン系カップリング剤またはチタン系カップリング
剤による薄膜を形成した後、酸化ケイ素被覆を形成し、
これらの被覆層の上から電子線を照射すると、合成樹脂
成形体との間に化学合成が効率よく形成されたプライマ
ー層とすることができ、かつ、カップリング剤が加水分
解等の特別の処理をしなくても、酸化ケイ素被膜との密
着性が充分なプライマー層を形成することを見出した。
しかも、電子線照射により残存水分がSi-OH結合のない
酸化ケイ素被膜が得られ、耐溶剤性も向上することを見
出した。
本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったも
のである。
〔課題を解決するための手段〕
すなわち、本発明の要旨は、次のとおりである。
(1) (A)合成樹脂成形体の表面に、(B)シラン
系カップリング剤およびチタン系カップリング剤から選
ばれる少なくとも1種のカップリング剤の薄膜からなる
プライマー層、および(C)酸化ケイ素被膜をこの順に
形成し、かつ、酸化ケイ素被膜の上から電子線を照射し
てなることを特徴とする被覆合成樹脂成形体。
(2) 合成樹脂成形体の表面にシラン系カップリング
剤およびチタン系カップリング剤から選ばれる少なくと
も1種のカップリング剤の薄膜からなるプライマー層を
形成した後、該プライマー層上に酸化ケイ素皮膜を形成
させ、次いで、電子線を照射することを特徴とする被覆
合成樹脂成形体の製造法。
以下、本発明の各構成要素について説明する。
(合成樹脂成形体) 本発明では使用する合成樹脂成形体としては、例えば、
ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポ
リメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリアセター
ル、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエチレンテ
レフタレート、ポリブチルテレフタレート、全芳香族ポ
リエステル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテ
ルケトン、ポリフェニレンスルフィドケトンなどの熱可
塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリジエチレングリコールビ
スアリルカーボネート、フェノール樹脂、ポリウレタン
などを挙げることができる。
これらの中でも特に、繰り返し単位中にカルボニル結合
を有するポリマーを主体とする成形体が好適に使用でき
る。カルボニル結合を有するポリマーと、ケトン基のみ
ならず、酸アミド結合、エステル結合など分子構造中に
(>C=0)結合を有するポリマーを意味する。その中
でも、ジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反
応させるホスゲン法、あるいはジヒドロキシジアリール
化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルと
を反応させるエステル交換法によって得られるポリカー
ボネート樹脂が好ましく用いることができる。
これらのポリマーは、それぞれ単独または2種以上をブ
レンドして用いる。
また、合成樹脂成形体の形状は特に限定されず、大型品
から複雑な形状を有するものまで任意の形状の成形体が
使用できる。
(カップリング剤) シラン系カップリング剤としては、ビニル基、メタクリ
ロキシ基、エポキシ基、アミノ基またはイソシアネート
基を含有する汎用のシラン系カップリング剤がある。
その中でも、下記一般式〔I〕および〔II〕で示される
有機シラン化合物が好適に使用できる。
XnSiY4-n 〔1〕 〔ただし、Xはビニル基、メアクリロキシ基、エポキシ
基、アミノ基またはイソシアネート基を有する炭素数1
〜10の炭化水素基、Yはアルコキシ基、アルコキシアル
コキシ基、アセトキシ基または水酸基を有する炭素数1
〜10の炭化水素基、nは1〜3の整数である。〕 具体的には、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシア
ネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネー
トプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプ
ロピルメチルジメトキシシラン、グリシドキシプロピル
トリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキ
シシラン、グリシドキシプロピルトリプロポキシシラ
ン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、グ
リシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシド
キシプロピルエチルジメトキシシラン、グリシドキシプ
ロピルエチルジエトキシシラン、グリシドキシプロピル
ブチルジメトキシシラン、グリシドキシプロピルブチル
ジエトキシシラン、2−(2,3−エポキシシクロヘキシ
ル)エチルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチ
ル)アミノプロピルメトキシシラン、γ−(2−アミノ
エチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−
アニリノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルア
ミノメチルトリメトキシシラン、N−(トリエトキシシ
リルプロピル)尿素、アミノメチルトリエトキシシラ
ン、N−(β−アミノエチル)アミノメチルトリメトキ
シシラン、アミノメチルジエトキシシラン、ビニルトリ
エトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキ
シ)シラン、ビニルアセトキシシラン、γ−メタクリロ
キシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロ
ピルトリメトキシシラン、等が挙げられる。
R4-nSi(OOR′)n 〔II〕 〔式中、Rは炭素数1〜6の炭化水素基、ビニル基、メ
タクリロキシ基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト
基、フッ素または塩素を有する有機基である。R′はア
ルキル基、アシル基、アリールアルキル基から選ばれる
1種もしくは複数の結合基であり、nは1〜4の整数で
ある。) 具体的には、例えば、ビニルトリス(t−ブチルパーオ
キシ)シラン、ビニルトリス(キュメンパーオキシ)シ
ラン、ビニルトリス(アセチルパーオキシ)シラン、ビ
ニルトリス(ベンゾイルパーオキシ)シラン、ビニルト
リス(ラウロイルパーオキシ)シラン、γ−グリシドキ
シプロピルトリス(t−ブチルパーオキシ)シラン、γ
−グリシドキシプロピルトリス(キュメンパーオキシ)
シラン、γ−グリシドキシプロピルトリス(アセチルパ
ーオキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリス
(ベンゾイルパーオキシ)シラン、γ−グリシドキシプ
ロピルトリス(ラウロイルパーオキシ)シラン、γ−メ
タクリロキシプロピルトリス(t−ブチルパーオキシ)
シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリス(キュメン
パーオキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリ
ス(アセチルパーオキシ)シラン、γ−メタクリロキシ
プロピルトリス(ベンゾイルパーオキシ)シラン、γ−
メタクリロキシプロピルトリス(ラウロイルパーオキ
シ)シランなどが挙げることができる。
チタン系カップリング剤としては、例えば、イソプロピ
ルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ
オキタノイルチタネート、イソプロピルイソステアロイ
ルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミ
ノエチル−エミノエチル)チタネート、テトラオクチル
ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプ
ロピルトリクミルフェニルチタネート、トリエタノール
アミンチタネート、チタニウムアセチルアセトネート、
チタニウムエチルエセテート、チタニウムラクテードな
どが挙げられる。
これらのカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは
複数種組み合わせて用いることができる。
(プライマー層の形成方法) カップリング剤からなる薄膜 合成樹脂成形体の表面にカップリング剤からなる薄膜を
形成するには、カップリング剤をメタクリレート、エタ
ノール、イソプロパノール、イソブタノールなどのアル
コール類に溶解させ、その溶液を合成樹脂成形体にスピ
ンコート法、浸漬法、吹付け法等により塗布した後、乾
燥させて溶剤を除去すればよい。大型または複雑な形状
の合成樹脂成形体の場合には、浸漬法が好ましい。
溶液中のカップリング剤の濃度は、適宜定め得るが塗布
効率から見て、通常、0.1〜5重量%の溶液とすること
が好ましい。また、塗布後の乾燥は、室温または乾燥機
中で行なう。室温の場合は、約1〜2時間、風乾させ、
また、加熱する場合には、熱風乾燥機中などで昇温条件
下、例えば、90℃程度では約1〜5分間程度乾燥させ
る。これらの乾燥条件は、当業者であれば適宜選択する
ことができる。
酸化ケイ素被膜の形成方法 プライマー処理の後、カップリング剤の薄膜上に酸化ケ
イ素被膜を形成させる。
酸化ケイ素被膜としては、SiO2やSiOなどのSiOx(2≧
x≧1),SiAlONなどのSi系酸化被膜であれば従来公知
のものが適用可能である。被膜の形成方法としては、蒸
着、スパッタ、プラズマCVD法、液相成長など通常の手
段が採用できる。
酸化ケイ素被膜の中でも、二酸化ケイ素の被膜が好まし
い。前記プライマー処理を行ったプライマー層上に二酸
化ケイ素の被膜を形成する方法としては、シランガスを
用いたCVD法、石英板をターゲットとしたスパッタ法、
有機ケイ素化合物の有機溶媒を用いたディッピング法、
または二酸化ケイ素の過飽和状態のケイフッ化水素酸溶
液中に浸漬し、二酸化ケイ素被膜を析出させる析出法な
どがある。この中では析出法が作業が簡単で、しかも均
一な被膜を形成することができるため好ましい。
この析出法については、特開昭61-12734号に詳細に開示
されている公知の方法が適用できる。二酸化ケイ素の過
飽和状態のケイフッ化水素酸溶液とは、ケイフッ化水素
酸溶液に二酸化ケイ素(シリカゲル、エアロジル、シリ
カガラス、その他二酸化ケイ素含有物など)を溶解させ
た後、水または試薬(ホウ酸、塩化アルミニウムなど)
を添加し、二酸化ケイ素の過飽和状態としたものであ
る。この処理液にプライマー処理した合成樹脂成形体を
接触させればよい。接触は、合成樹脂成形体を処理液中
に浸漬するか成形体表面に処理液を流下させるなどの方
法があるが、均一な被膜を形成するためには浸漬法が好
ましい。
処理液中のケイフッ化水素酸の濃度は、1〜2モル/lが
好ましく、特に2モル/lより濃いケイフッ化水素酸水溶
液に二酸化ケイ素を飽和させた後、水で希釈して1〜2
モル/lの濃度としたものが、被膜形成速度が早く、効率
よく被覆が行なえるので望ましい。過飽和状態とするた
めにホウ酸を添加する場合の添加量は、処理液中のケイ
フッ化水素酸1モルに対して1×10-2〜40×10-2モル、
好ましくは1.2×10-2〜10×10-2モルの範囲であること
が、速く均質な被膜を形成する上で望ましい。
合成樹脂成形体を処理液に浸漬中、連続的にホウ酸水溶
液を添加混合し、また、処理液を循環させ、フィルター
で濾過することが、均質な被膜を効率よく得るために好
ましい。二酸化ケイ素の供給源としてシリカゲルを使用
する場合には、孔径1.5μm以下のフィルターが、その
他シリカガラスなどを用いた場合には、孔径10μm以下
のフィルターが好ましい。
また、処理液を浸漬槽に入れて、合成樹脂成形体と接
触させる場合には、浸漬中の成形体表面において、処理
液が層流となって流れるようにすることが、むらのない
均質な皮膜を形成するために好ましい。
二酸化ケイ素などの酸化ケイ素被膜の膜厚は、使用目的
に応じて適宜定めることができるが、通常、数100Å〜
数1.000Å程度で表面改質の目的を達成することができ
る。
電子線の照射 本発明では、合成樹脂成形体の表面にカップリング剤か
らなる薄膜および酸化ケイ素被膜を順次形成し、次いで
電子線を照射する。電子線照射により、合成樹脂成形体
とカップリング剤薄膜との間に化学結合が形成されるも
のと推定される。
電子線照射は、通常、0.05〜10Mrad/S程度の線量率で、
アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で、照射する。
線量は、合成樹脂の種類によって変化するが、0.5〜数
+Mradの範囲で、合成樹脂表面層を分解ないしは劣化さ
せない範囲とし、ポリカーボネートでは、通常、10Mrad
以下が好ましい。なお、予め電子線照射および被覆試験
を行なうことにより、当業者であれば、樹脂の種類に応
じて線量の好ましい範囲を適宜選択することができる。
電子線を照射することにより、カップリング剤と合成樹
脂成形体との間に化学結合が生じて、カップリング剤の
薄膜と合成樹脂成形体表面との間に強固な結合が生じ
る。また、カップリング剤薄膜と酸化ケイ素被膜との間
の密着性は良好である。
作用 従来のシラン系カップリング剤などのケイ素化合物によ
るプライマー処理では、プライマー(第1次被覆層)と
合成樹脂成形体表面との間に強固な化学結合は生じてい
ない。
シラン系カップリング剤で処理した後、熱処理を行なっ
ても、合成樹脂成形体との間に化学結合が形成されるの
はごく一部であって、密着性が不充分であり、しかも熱
処理法では熱伝導効率が悪く、かつ、合成樹脂成形体に
熱による応力が発生するという問題がある。
また、通常のシラン系カップリング剤によるプライマー
処理では、酸化ケイ素被膜との密着性を向上させるため
に、基材に塗布する前に、アルコキシ基などを加水分解
して水酸基に変える必要があった。そして、プライマー
分子同士の結合性も悪いのであった。
これに対し、合成樹脂成形体の表面にカップリング剤の
薄膜(プライマー層)および酸化ケイ素被膜を形成した
後、電子線を照射すると、合成樹脂成形体とプライマー
のカップリング剤との間に化学結合が生じて、両者が強
固に結合する。合成樹脂成形体としては、カルボニル結
合(>C=0)を有するポリマーを主体とする成形体が
特に効果的である。
また、プライマー層および酸化ケイ素被膜を順次形成し
た後、電子線を照射するため、酸化ケイ素被膜とプライ
マー層との間の結合も同時に強固なものとして形成する
ことが可能である。さらに、前記析出法などによる酸化
ケイ素被膜の形成において残存する水分を電子線照射エ
ネルギーで除去することができるため、酸化ケイ素被膜
の表面を強固なSiO2膜とし、耐溶剤性を向上させること
ができる。
電子線照射法によると、エネルギーは、個々の電子が
もっているので、加速電圧を操作することにより、容易
にエネルギー量を制御することができ、また、高エネ
ルギー体であるため、合成樹脂成形体とプライマー間の
反応部所への到達が容易であるため、短時間で、確実に
両者間に化学結合が形成される。
〔実施例〕
以下、本発明について実施例および比較例を挙げて具体
的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定され
るものではない。
[実施例1] ポリカーボネート樹脂からなる平板(縦100mm、横100m
m、厚さ2mm)の全面に、γ−グリドキシプロピルトリメ
トキシシランのイソブタノール溶液(1重量%)をスピ
ンコーターで塗布し、90℃の熱風にて5分間の加熱乾燥
を行った。膜厚は、約40Åであった。
上記処理を行なったポリカーボネート平板上に、特開昭
61-12734号公報に示されているのと同様の二酸化ケイ素
被膜製造装置を用いて、二酸化ケイ素被膜を析出させ
た。
すなわち、二酸化ケイ素被膜製造装置は、外槽と内槽か
ら成る浸漬槽を有し、内槽と外槽の間には水が満してあ
る。かつ、温度分布均一化のため攪拌機で攪拌されてい
る。内槽は前部、中部、後部から成り各部には工業用シ
リカゲル粉末を二酸化ケイ素の供給源として、二酸化ケ
イ素を溶解、飽和させた2.0モル/lの濃度のケイフッ化
水素酸水溶液を水を用いて倍に希釈した3lの反応液が満
たしてある。ここで、循環ポンプを作動させ内槽後部の
反応液を一定量ずつ放出してフィルターで濾過し、内槽
前部へ戻す処理液循環を開始した。
その後、0.5モル/lのホウ酸水溶液を連続的に内槽後部
に滴下し10時間保持した。この状態で反応液は適度な二
酸化ケイ素過飽和度を有する処理液となった。
ここでフィルターの絶対除去率を1.5μmおよび処理液
循環量を240ml/分(処理液全量が約3lであるので、循環
量は8%/分である)に調製した。
そして、上記処理を行なったポリカーボネート平板を内
槽中部に垂直に浸漬し、前記条件(0.5モル/lのホウ酸
水溶液を0.2ml/分で添加し、8%/分の循環を行ない、
1.5μmのフィルターで濾過する)で16時間保持した。
得られた被覆ポリカーボネート平板の二酸化ケイ素被覆
槽の膜厚は約5000Åであった。
次に、被覆ポリカーボネート平板の全面に電子線を照射
した。電子線は、1.6Mrad/Sの線量率、線量8.0Mradで、
アルゴンガス雰囲気中で照射した。
[実施例2] ポリカーボネート樹脂平板(縦100mm、横100mm、厚さ2m
m)の全面に、イソプロピルイソステアロイルアクリル
チタネートのイソプロピルアルコール溶液(1重量%)
をスピンコーターで塗布し、70℃の熱風にて5分間の加
熱乾燥を行なった。膜厚は、約30Åであった。
プライマー処理したポリカーボネート樹脂平板の全面
に、実施例1と同様にして二酸化ケイ素被膜を形成し
た。膜厚は、約5500Åであった。
そして、この被覆処理をした平板の全面に実施例1と同
様にして電子線を照射した。
[実施例3] シラン系カップリング剤として、γ−アミノプロピルト
リエトキシシランを用いた以外は実施例1と同様にして
二酸化ケイ素被覆ポリカーボネート樹脂平板を作成し
た。
[実施例4] チタン系カップリング剤として、チタニウムエチルアセ
トアセテートを用いた以外は実施例2と同様にして二酸
化ケイ素被覆ポリカーボネート樹脂平板を作成した。
[比較例1] 電子線照射を行なわなかったこと以外は、実施例1と同
様に処理して、二酸化ケイ素被覆ポリカーボネート樹脂
平板を得た。
物性の測定 〈冷熱サイクルテスト〉 実施例1〜4および比較例1で得られた二酸化ケイ素被
覆ポリカーボネート樹脂平板を、冷熱サイクルテストに
かけて、ポリカーボネート樹脂平板と二酸化ケイ素被膜
との間の剥離の発生状況を目視により観察した。
冷熱サイクルテストは、80℃、90%RHに2時間放置し、
次いで、1時間かけて温度を下げて、−25℃、40%RHに
2時間放置する操作を繰り返して行なった。
結果を第1表に一括して示す。
〈耐溶剤性テスト〉 二酸化ケイ素被覆ポリカーボネート樹脂平板をアセトン
中に10分間浸漬し、室温で風乾した後の状態を観察し、
次の3段階で評価した。
○:全く変化なし、 △:局部的に白化、 ×:全面的に白化または変形 なお、試料としては、実施例1〜4において、電子線の
照射量を0、0.5、4.0、8.0Mradに変化させて作成した
二酸化ケイ素被覆ポリカーボネート樹脂平板を用いた。
結果を第2表に示す。
[実施例5〜8] シラン系カップリング剤として、次の各種シリルパーオ
キサイド化合物のヘキサン溶液(1重量%)を塗布した
こと以外は、実施例1と同様にして電子線照射処理を行
なった二酸化ケイ素被覆ポリカーボネート樹脂平板を得
た。
実施例5:ビニルトリス(t−ブチルパーオキシ)シラン 実施例6:ビニルトリス(キュメンパーオキシ)シラン 実施例7:ビニルトリス(ベンゾイルパーオキシ)シラン 実施例8:γ−メタクリロキシプロピルトリス(t−ブチ
ルパーオキシ)シラン 得られた試料について、冷熱サイクルテストを行なった
結果を第3表に示す。
また、実施例5〜8において、電子線照射量を変化させ
て、耐溶剤性テストを行なった結果を第4表に示す。
〔発明の効果〕 本発明によれば、電子線を照射するだけで、基材の合成
樹脂および酸化ケイ素被膜の両者と強固に結合したプラ
イマー層を形成することができる。そして、本発明によ
れば、酸化ケイ素被膜との密着性、表面硬度、耐候性、
耐薬品性、透湿性、吸湿性などが大幅に改善された成形
体を得ることができる。特に、ポリカーボネート樹脂の
透明性、軽量性、易加工性、耐衝撃性を生かし、上記諸
物性の改善された酸化ケイ素被覆ポリカーボネート樹脂
成形体を得ることができるので、従来、上記物性が不充
分であるために使用できなかった分野を含め広範な分野
で使用できるようになった。
本発明の被覆合成樹脂成形体は、例えば、光磁気ディス
ク用基板や磁気ディスク用基板、車や電車の窓ガラスの
代用としての合成樹脂基板をはじめ広範囲な分野におい
て用いることができる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)合成樹脂成形体の表面に、(B)シ
    ラン系カップリング剤およびチタン系カップリング剤か
    ら選ばれる少なくとも1種のカップリング剤の薄膜から
    なるプライマー層、および(C)酸化ケイ素被覆をこの
    順に形成し、かつ、酸化ケイ素被覆の上から電子線を照
    射してなることを特徴とする被覆合成樹脂成形体。
  2. 【請求項2】合成樹脂成形体がポリカーボネート樹脂成
    形体である請求項1記載の被覆合成樹脂成形体。
  3. 【請求項3】合成樹脂成形体の表面にシラン系カップリ
    ング剤およびチタン系カップリング剤から選ばれる少な
    くとも1種のカップリング剤の薄膜からなるプライマー
    層を形成した後、該プライマー層上に酸化ケイ素被膜を
    形成させ、次いで、電子線を照射することを特徴とする
    被覆合成樹脂成形体の製造法。
  4. 【請求項4】合成樹脂成形体がポリカーボネート樹脂成
    形体である請求項3記載の被覆合成樹脂成形体の製造
    法。
  5. 【請求項5】前記酸化ケイ素被膜が二酸化ケイ素被膜で
    あって、かつ、前記プライマー層を形成した合成樹脂成
    形体を二酸化ケイ素の過飽和状態のケイフッ化水素酸溶
    液と接触させることにより、該プライマー層上に二酸化
    ケイ素被膜を析出させる請求項3または4記載の被覆合
    成樹脂成形体の製造法。
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