JPH077039Y2 - 溶接組立ｈ形鋼の溶接接合に使用する裏当金 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、溶接組立Ｈ形鋼と柱
などの被接続部材とを溶接接合する際に使用する裏当金
の改良に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来より、溶接組立Ｈ形鋼により形成し
た梁材と柱などを突合せて溶接接合する方法として、Ｈ
形鋼のウェブに円弧状のスカラップを開設してこのスカ
ラップに裏当金を挿通したのち開先加工したフランジを
溶接接合するスカラップ接合法が知られている。

【０００３】しかるに、このスカラップ接合法は、ウェ
ブへのスカラップの加工が面倒であるばかりでなく、ス
カラップ加工の良否にかかわらずウェブの断面強度が減
少するためスカラップ部分に応力集中が起こることにな
り、フランジが比較的早期に破断してしまうなどの不都
合があった。

【０００４】このような事情から、裏当金の形状を工夫
するとともにウェブへのスカラップによる切欠を無くし
て部材耐力を損なうことなく溶接接合を行えるようにし
た、所謂、ノンスカラップ接合法が種々提案されてい
る。

【０００５】そして、出願人も、Ｈ形鋼の組立時に生じ
た寸法誤差の調整を行なえるだけでなく部材相互の完全
な溶け込みを達成できる改良されたノンスカラップ接合
法を開発し、平成２年９月２０日付けで特願平２−２４
８８３８号（特開平４−１３５０６５号「溶接組立Ｈ形
鋼の溶接接合方法」）として特許出願を行った。

【０００６】すなわち、この溶接接合方法は、溶接組立
Ｈ形鋼と被接続部材との溶接接合に際し、まず溶接組立
Ｈ形鋼のフランジに形成する開先の先端がウェブの隅肉
溶接の脚長よりも若干下方に位置するように加工し、次
にこの溶接組立Ｈ形鋼と被接続部材を組み付け、溶接組
立Ｈ形鋼のウェブ両側におけるフランジ内側に裏当金を
夫々仮付けし、次いで開先加工したフランジを被接続部
材に溶接し、さらに被接続部材とウェブおよびウェブと
各裏当金とを隅肉溶接して溶接組立Ｈ形鋼を被接続部材
に溶接接合するものである。

【０００７】

【考案が解決すべき課題】ところで、この先願に係る溶
接接合方法では、溶接組立Ｈ形鋼のウェブ両側における
フランジ内側に仮付けする各裏当金にウェブの隅肉溶接
の脚長より大きく設定した切欠を設けることにより、組
付けの容易化だけでなく、ガスシールド溶接などを行っ
た場合のガス抜きを確実に行えるようにしてある。

【０００８】しかしながら、ウェブを被接続部材に溶接
する際に、フランジに形成した開先と被接続部材とで形
成される溝部分が狭隘なため、熟練者でないとこの溝部
分に溶接棒を挿入するのが困難であり、その結果、ウェ
ブと被接続部材の溶接部分にブローなどの欠陥が生じや
すいなどさらに改善すべき点がみつかった。

【０００９】

【課題を解決するための手段】そこで、この考案では裏
当金におけるウェブの隅肉溶接と対向する面にこの隅肉
溶接の脚長より大きく設定した切欠傾斜面を形成すると
ともに被接続部材と対向しかつ前記切欠傾斜面と連続す
る稜部分を斜めに切欠いて逃部を設けることにより、溶
接棒の挿入を容易化して溶接欠陥の発生を阻止しようと
するものである。

【００１０】

【作 用】この考案では、フランジに形成した開先と被
接続部材とで形成される溝部分（漏斗状グルーブ）に溶
接棒を挿入するに際しては、裏当金の被接続部材と対向
しかつ切欠傾斜面と連続する稜部分を斜めに切欠いて形
成した逃部を介して溶接棒を挿入し溶接を行うものであ
る。

【００１１】

【実施例】次に、本考案に係る溶接組立Ｈ形鋼の溶接接
合に使用する裏当金の好適な実施例につき、溶接組立Ｈ
形鋼により形成した梁材と柱とを突合せて溶接接合する
場合を例示し、添付図面を参照しながら以下詳細に説明
する。

【００１２】すなわち、この溶接接合では、まずウェブ
１０に梁フランジ１２、１２を隅肉溶接して形成した梁
材１４における突合せ端部のフランジ１２、１２を、例
えば、３５度程度の角度に切欠いて開先１６を形成す
る。この場合、開先１６の先端１６ａがウェブ１０の前
記隅肉溶接Ａの脚長ａよりも若干下方に位置するように
開先加工する（図１参照）。

【００１３】次に、この梁材１４と被接続部材である柱
材１８とをスポット溶接などで仮付けして組付けた後、
梁材１４のウェブ１０両側におけるフランジ１２内側に
裏当金２０、２０を前述と同様にスポット溶接などで夫
々仮付けする（図２参照）。

【００１４】この場合、各裏当金２０は、図３に示すよ
うに、矩形状に形成された平板部材２２におけるウェブ
の隅肉溶接と対向する面をこの隅肉溶接Ａの脚長ａより
大きく設定した切欠傾斜面２４として形成するとともに
柱材１８と対向しかつ前記切欠傾斜面２４と連続する稜
部分２５を斜めに切欠くことにより逃部２６を形成する
ことにより構成する。

【００１５】次いで、柱材１８の突合わせ面１８ａとフ
ランジ１２の開先１６先端および裏当金２０の逃部２６
を含む切欠傾斜面２４によって囲まれた漏斗状グルーブ
ｂに溶接棒ｃを挿入してウェブ１０と柱材１８とを溶接
するが、この際、裏当金２０は逃部２６によってその稜
部分が斜めに切除されているので溶接棒ｃの挿入を容易
に行うことができ、従って、溶接棒ｃを挿入をうまくで
きないことによって発生する溶接欠陥の発生を確実に阻
止することが可能となる。

【００１６】そして、漏斗状グルーブｂを溶接によって
埋めて溶着したら、フランジ１２の開先１６と柱材１８
の突合わせ面１８ａとを溶着することによりフランジ１
２と柱材１８との溶接を行う（図４参照）。この場合、
開先先端１６ａがウェブ１０の隅肉溶接Ａの脚長ａより
も若干下方に位置しているので部材相互の溶け込みを完
全に行うことができ、しかも、裏当金２０の切欠２４を
ウェブ１０の隅肉溶接の脚長ａより大きく設定したので
ウェブ１０の開先部分との間に間隙が形成されることに
なってガスシールド溶接の場合はガス抜きを好適に行う
ことができ、従って、ブローホールなどの溶接欠陥の発
生も確実に阻止することができる。

【００１７】このようにしてフランジ１２と柱材１８と
の溶接が終了したら、柱材１８とウェブ１０およびウェ
ブ１０と各裏当金２０とを順次隅肉溶接することによ
り、溶接組立Ｈ形鋼としての梁材と被接続部材としての
柱との溶接接合が完了する（図５参照）。

【００１８】

【考案の効果】先に述べたように、本考案に係る裏当金
によれば、柱材の突合わせ面とフランジの開先先端およ
び各裏当金に形成した切欠傾斜面によって囲まれた溝部
分（漏斗状グルーブ）に溶接棒を挿入する際、裏当金に
は稜部分を斜めに切除して逃部を形成してあるので溶接
棒の挿入を容易に行うことができ、従って、溶接欠陥の
発生を可及的に阻止することができる。

【００１９】また、裏当金の切欠をウェブの隅肉溶接の
脚長より大きく設定してウェブの開先部分との間に間隙
ができるようにしたので、ガスシールド溶接などの場合
でもガス抜きを確実行うことができ、この点においても
溶接欠陥の発生を阻止することができる等種々の利点を
有するものである。

【００２０】以上、本考案に係る溶接組立Ｈ形鋼の溶接
接合に使用する裏当金の好適な実施例につき説明した
が、本考案はこの実施例に限定されるものではなく、例
えば、稜部分に形成する逃部の傾斜や大きさを所望に応
じて変更する等、本考案の精神を逸脱しない範囲内にお
いて種々の改変をなし得ることは勿論である。

【図面の簡単な説明】

【図１】溶接組立Ｈ形鋼としての梁材と被接続部材とし
ての柱とを突合せて溶接接合する場合の梁材における突
合せ端部のフランジに設けた開先の側面説明図である。

【図２】図１に示す梁材に柱材を仮付けして組付けた
後、梁材のウェブ両側におけるフランジ内側に本考案に
係る裏当金を仮付けした状態の側面説明図である。

【図３】図２に示す裏当金と梁材および柱との関係を示
す一部省略斜視図である。

【図４】梁材におけるフランジの開先と柱材の突合わせ
面とを溶着した状態の側面説明図である。

【図５】梁材と柱との溶接接合が完了した状態の側面説
明図である。

【符号の説明】

１０ ウェブ、 １２ 梁フランジ、 １４ 梁材、
１６ 開先、 １８ 柱材、 ２０ 裏当
金、２２ 平板部材、 ２４ 切欠傾斜面、 ２５ 稜
部分、２６ 逃部、

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 フランジに形成する開先の先端がウェブ
   の隅肉溶接の脚長よりも若干下方に位置するように加工
   した溶接組立Ｈ形鋼と被接続部材とを突合せた後この溶
   接組立Ｈ形鋼のウェブ両側におけるフランジ内側に夫々
   仮付けして溶接接合をするための裏当金であって、前記
   裏当金にはウェブの隅肉溶接と対向する面に該隅肉溶接
   の脚長より大きく設定した切欠傾斜面を形成するととも
   に被接続部材と対向しかつ切欠傾斜面と連続する稜部分
   に切欠逃部を設けることを特徴とする溶接組立Ｈ形鋼の
   溶接接合に使用する裏当金。