JPH0765254B2 - 毛羽加工糸 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は，マルチフイラメント糸からなる毛羽加工糸に
関するものであり，詳しくは糸条表面に太さや形状の異
なる多数の毛羽が形成されていてスパン調の外観と風合
を有し，しかも，抗ピリング性が優れた毛羽加工糸に関
するものである。

（従来の技術） 従来，フイラメント糸から羊毛のような風合と性能を有
する加工糸を得ることを目的として，糸条にループや毛
羽を形成した加工糸が数多く知られている。しかしなが
ら，これらの従来の加工糸は，張り，腰，反発性等の風
合，抗ピリング性等が羊毛の優れた特性の域に未だ達し
得ず，これらを改良した加工糸が要望されている。

（発明が解決しようとする問題点） 本発明者等は，上記従来の問題点を解決すべく鋭意研究
の結果，上記従来の問題点は繊維間の空隙が少ないこと
及び糸条に形成される毛羽が太さ，形状，強力等，形態
的にも物性的にも均斉すぎる点にあることが判明し，中
空断面のフイラメントを使用することによって，糸条の
実質的な空間度を高めるとともに糸条表面に太さや形状
が種々異なる多数の毛羽を有する糸条によって，上記従
来の問題点が解消されることを見出し，本発明に到達し
た。

本発明は，上記従来の糸条の問題点を解決するものであ
って，その目的は，羊毛のような張り，腰のある風合を
得ることができ，高い抗ピリング性を付与することがで
きる毛羽加工糸を提供することにある。

（問題点を解決するための手段） すなわち，本発明は，単一成分のポリマーで構成され，
中空率が40％以上の中空断面マルチフイラメントに流体
噴射加工を施して得られた糸条であって，長手方向に部
分的に不規則な横断面形状に細分化されて形成されたフ
イブリルを有する中空断面のフイラメント（以下，中空
フイラメント）が相互に絡み合うとともに，上記フイブ
リルが絡み合い，糸条表面にフイブリルが破断されて形
成された太さや形状の異なる多数の毛羽を有することを
特徴とする毛羽加工糸を要旨とするものである。

以下，本発明を詳細に説明する。

まず，本発明加工糸は,1本もしくは複数本のマルチフイ
ラメント糸からなり，糸条を構成するフイラメントに中
空フイラメントが含まれている。そして，中空断面フイ
ラメントは，その長手方向に部分的に不規則な横断面形
状に細分化されて形成されたフイブリルを有するもので
ある。すなわち，中空断面フイラメントがその長手方向
に適宜の太さに細分化されて，太さや形状の異なるフイ
ブリルが混在している。

本発明加工糸においては，中空断面もしくはそれに近い
断面形状から前記中空断面が極めて細かく細分化された
フイブリルに到るできるだけ多種多様の形状のフイラメ
ントが混在していることが好ましい。また，糸条を構成
する全部の中空フイラメントが細分化されていても，一
部の中空フイラメントが細分化されていてもよい。

次に，本発明加工糸は，糸条を構成する上記の長手方向
に部分的に不規則な横断面形状に細分化されて形成され
たフイブリルを有する中空断面フイラメントが相互に絡
み合っているものである。さらに，少なくともフイブリ
ル同士が絡み合っている部分が存在することが必要であ
る。

さらにまた，糸条表面に多数の毛羽（切れ毛羽）が形成
されている。この毛羽は上記のフイブリルの一部が切断
されて形成されたものであって，不規則な断面形状を有
している。すなわち，本発明加工糸の表面には太さや形
状の異なる毛羽が混在している。

本発明に用いる中空フイラメントの横断面の形状は，円
形断面や異形断面等いかなる形状のものであってもよ
く，中空フイラメントの横断面の形状と中空部の形状と
の関係は，相似形もしくは非相似形の何れであってもよ
い。また，中空フイラメントの中空部の数についても，
何等限定されない。さらに，中空フイラメントは同一形
状のもののみを使用してもよく，また，異なる形状のも
のを混繊して使用してもよい。

第１図は，本発明加工糸の一例を示す概略側面図であ
る。第１図に示す本発明加工糸は，第２図に示すような
長手方向に中空部１と細分化されて形成されたフイブリ
ル２を有し，かつフイルブリルが破断されて形成された
毛羽３を有する中空フイラメントから構成され，糸条を
構成する中空フイラメント同士が絡み合っているととも
に，フイブリル２が絡み合った部分が存在し，また，中
空断面フイラメントが破断されないままの中空部１同士
が絡み合った部分及び中空部１とフイブリル２とが絡み
合った部分が存在している。さらに，糸条表面にはフイ
ブリルの一部が破断されて形成された多数の切れ毛羽３
が存在している。

第３図は，本発明加工糸を構成する中空フイラメントの
一例の横断面，第４図は第３図に示した中空フイラメン
トを含む糸条を使用して得られた本発明加工糸の毛羽の
横断面の一例を示す模式図である。図中,aは中空フイラ
メントが約1/3に細分化されたもの,bは約1/6,cは約1/10
にそれぞれ細分化されたものである。第５図は，本発明
加工糸の毛羽側面の例を示す模式図であって,aは毛羽の
先端が尖ったもの,bは偏平なものである。本発明加工糸
は，糸条表面に第４図，第５図に示したように太さや形
状が異なる種々の毛羽が多数形成されている。第６図と
第７図は，本発明に使用する他の中空フイラメントの例
の横断面を示すものであって，第６図は第３図と同様に
中空フイラメントの横断面と中空部の横断面との形状が
ほぼ相似形のもの，第７図は非相似形のものである。

次に，本発明加工糸の製造法を説明する。

第８図は，本発明加工糸を製造する工程の一例を示す概
略説明図であって，中空フイラメントを含む糸条Ｙを，
フイードローラ４から流体噴射ノズル５へ供給し，圧縮
空気を噴射して流体噴射加工を行った後，デリベリロー
ラ６を経て本発明加工糸として巻取ローラ８によりパツ
ケージ７に巻き取る。

ここで，流体噴射処理時に，中空フイラメントの側面に
高速流体を噴射させることによって，この中空フイラメ
ントを長手方向に部分的に細分化させるのであるが，こ
の場合に中空率の高い中空フイラメントを用い，圧縮流
体の噴射圧力を高くして，流体噴射処理を行うことによ
って上記中空フイラメントの細分化を効率的に実施し得
る。

本発明加工糸の製造条件は，一概には規定できないが，
中空断面フイラメントの中空率等に応じて，噴射流体の
圧力，糸条のオーバーフイード率等を選定することによ
って得られる。

中空断面フイラメントの中空率の好ましい範囲は40〜90
％である。また，噴射圧力は比較的高圧力の5kg/cm²以
上とすることが好ましく，特に好ましくは６〜9kg/cm²
である。さらに，オーバーフイード率は１〜10％の範囲
が好ましく，特に好ましくは１〜５％である。

なお，流体噴射ノズルとしては，インターレースノズ
ル，タスランノズル等交絡作用を有するものであればい
かなるものでも使用できる。

ここで，中空率とは，中空フイラメントの横断面におい
て，中空部の面積が横断面の全面積に占める面積率のこ
とをいい，具体的には糸条の断面を撮影又は投影して，
面積測定装置，例えばサンエンジニアリング株式会社製
のデイジタイザを使用して，フイラメント全体の面積S₀
と中空部の面積S₁をそれぞれ測定して，次の式によって
算出したものである。

（S₀/S₁）×100 （作用） 本発明加工糸は，糸条を構成するフイラメントの形態及
び糸条表面に形成される毛羽に，太さや形状が種々異な
るフイラメントを混在させることによって，糸条に羊毛
様の風合と外観を得るに必要な実質的に空間度を高める
とともに複雑な糸斑を形成させることになる。

すなわち，本発明加工糸は，糸条の内層から外層の毛羽
に至るまで，上記のような太さや横断面形状が異なるフ
イブリルの混繊効果によって，ソフトタツチで，かつ腰
のある風合を付与することができる。また，毛羽は比較
的細くかつ強力が弱いフイブリルが優先して切断されて
ものであり，しかも，糸条の外層部に形成されているの
で，布帛にした場合，柔軟性に富み，また，高い抗ピリ
ング性を有する。

さらに，本発明加工糸は，上記のような太さや形状の異
なるフイブリル等の絡み合いによつて，フイラメントの
素抜けを防止し，糸条の強度を保証し得る。

（実施例） 以下，本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。

実施例 第８図に示す工程に従って第３図の横断面形状を有する
中空率58％のフィラメントからなるポリエステルマルチ
フイラメント糸（セミダル）150g/48fをインターレース
ノズルを用いて，圧縮空気6kg/cm²,オーバーフイード率
３％で流体交絡処理し，本発明加工糸を得た。

得られた加工糸は，第１図に示すような糸条形態を有
し，糸条表面には，太さや形状の異なる毛羽が多数形成
されているものであった。得られた加工糸につき，敷島
紡績株式会社製のＦ−インデツクステスタ（光学式毛羽
カウンタ）により，毛羽長1mm以上の毛羽数を測定した
ところ,200個/mであった。

この加工糸を経糸及び緯糸に使用して，経糸密度65本/
2.54cm,緯糸密度60本/2.54cmで平織物に製織し，染色仕
上げ加工を行ったところ，ソフトタツチであって曖味が
あり，張り，腰に優れ，あたかも梳毛羊毛のような風合
の織物が得られた。この織物のピリング防止性能は５級
であり，織物は多数の毛羽を有しているにもかかわらず
優れたピリング防止性能を有するものであった。

（発明の効果） 本発明加工糸は，以上述べたように，中空フイラメント
が多種の形状に細分化されたフイブリルの存在と糸条表
面に多数形成された太さや形状が異なる毛羽とが相俟っ
て，ソフトタツチで，かつ張り，腰のある風合を織編物
に付与することができる。また，糸条表面に多数の毛羽
が形成されているにもかかわらず，高度のピリング性能
が得られるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明加工糸の一例を示す概略側面図，第２図
は本発明加工糸を構成するフイラメントの一例を示す形
態模式図，第３図，第６図及び第７図は本発明加工糸を
構成する中空フィラメントの例を示す横断面図，第４図
は本発明加工糸の毛羽の横断面の例を示す模式図，第５
図は本発明加工糸の毛羽側面の例を示す模式図，第８図
は本発明加工糸を製造する工程の一例を示す概略説明図
である。 １……中空部 ２……フイブリル ３……毛羽

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】単一成分のポリマーで構成され，中空率が
   40％以上の中空断面マルチフイラメントに流体噴射加工
   を施して得られた糸条であって，長手方向に部分的に不
   規則な横断面形状に細分化されて形成されたフイブリル
   を有する中空断面のフイラメントが相互に絡み合うとと
   もに，上記フイブリルが絡み合い，糸条表面にフイブリ
   ルが破断されて形成された太さや形状の異なる多数の毛
   羽を有することを特徴とする毛羽加工糸。