JPH07627Y2 - 自動車ドアガラスの昇降装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、自動車ドアガラスの昇降装置に関するもので
ある。

従来の技術 従来の自動車ガラスの昇降装置には複数のアームをＸ字
形に組み合せた構造のものやワイヤーを用いた構造のも
のがドア内部に設けられたものがあったが、何れの構造
の場合もドアガラスの重心位置に昇降装置を設定して、
レイアウト上の制約に対応していた。

考案が解決しようとする問題点 併し、最近の自動車に於いては側方視界の向上や車室内
の居住性の向上を計るため、ドアガラスの透視面を拡大
する傾向にあり、更に貨物車種の場合には斜め前側方或
いは斜め下側方の視界向上のためにドアの前寄下方にま
で窓枠を拡大してそれに対応した一枚ガラスを昇降自在
に嵌め込んで居る。このような扇形状のドアガラスの重
心は従来のドアガラスに比べ前方になる傾向があるた
め、昇降装置をドアガラス重心位置附近に設定しようと
すると、ドアの前方に片寄りすぎ、構造上・耐久性或い
は操作上の点から設置出来ないという問題があった。

本考案は、重心が前寄りのドアガラスに対して重心を支
える連動補助機構を昇降装置に併設することによって、
ドアガラスの重心が昇降装置に対して偏心している距離
のガラスの回転モーメントを吸収し、ドアガラスの昇降
操作性の向上並びに昇降装置の円滑作動性、耐久性を保
持することを目的とした考案である。

問題点を解決するための手段 本考案は、第１アーム（２）と第２アーム（３）を中央
に於いて廻動自在に軸支し、第１アーム（２）の下部
（2a）をドア（１）に対し廻動自在に軸支し、ドアガラ
ス（４）の後半部（4a）の下縁（4b）に併設した上レー
ル（５）に、第１アーム（２）及び第２アーム（３）の
夫々の上端部（2b）（3a）を摺動自在に連繋させると共
に第２アーム（３）の下端部（3b）をドア（１）に設け
た下レール（６）に摺動自在に連繋させ、ドア（１）の
内側に設けたハンドル（７）の正回転或いは逆回転を連
動機構を介して第１アーム（２）に伝達して上下方向に
廻動させてドアガラス（４）を昇降させ、更に第３アー
ム（８）を上方に廻動させようとする弾力を有するスプ
リング（９）を介してドア（１）に対して第３アーム
（８）を廻動自在に軸支し、該第３アーム（８）の先端
部（8a）をドアガラス（４）の前半部（4c）の下縁（4
d）に摺動自在に連繋させて成るものである。

作用 本考案は上述のように構成したので、ドアガラス（４）
をあける場合は、車室内に於いてドアハンドル（７）を
反時計方向に廻すと、その回転は連動機構を介して第１
アーム（２）に伝達され、第１アーム（２）はドア
（１）に対する軸支点を中心に時計方向に廻動しようと
するが、第１アーム（２）の上端部（2b）はドアガラス
（４）の下縁（4b）に併設した上レール（５）に案内さ
れてドア（１）の後方に向って摺動する。この際、第１
アーム（２）に対しＸ字形に交叉させて軸支してある第
２アーム（３）の下端部（3b）は下レール（６）に案内
されてドア（１）の後方に向って摺動するので、上端部
（3a）は上レール（５）に案内されてドア（１）の前方
に向って摺動する。このため、第１アーム（２）と第２
アーム（３）とのＸ字形の交叉角度（α）は次第に拡大
し、それに伴って両者の上端部（2b）（3a）は下降し、
上レール（５）と共にドアガラス（４）は上死点（イ）
から中間点（ハ）まで下降し始める。ドアガラス（４）
と共に下降する上レール（５）の中心線（Ｏ）が、第１
アーム（２）の軸支点と第２アーム（３）の下端部（3
b）とを結んだ直線上の中間点（ハ）を過ぎると、第１
アーム（２）の上端部（2b）は上レール（５）に案内さ
れドア（１）の前方に向い、また第２アーム（３）の上
端部（3a）はドア（１）の後方に向い、更に第２アーム
（３）の下端部（3b）は下レール（６）に案内されてド
ア（１）の前方に向って夫々摺動し、交叉角度（α）は
次第に縮少しつつドアガラス（４）は更に下降を続け
る。この間、第３アーム（８）を介してスプリング
（９）の弾力によって支えられているドアガラス（４）
の前半部（4c）も下降するため、第３アーム（８）の先
端部（8a）はドアガラス（４）の前半部（4c）の下縁
（4d）に案内されて、第１アーム（２）と第２アーム
（３）の上端部（2b）（3a）が中間点（ハ）に達するま
では、ドア（１）の前方に向い、中間点（ハ）を過ぎる
とドア（１）の後方に向い摺動する。そして、ドアガラ
ス（４）が下降して開き終った位置に於いて、第１アー
ム（２）・第２アーム（３）・第３アーム（８）・上レ
ール（５）の各部材は第２図の想像線で示す位置関係に
変位する。

次にドアガラス（４）をしめる場合は、ドアハンドル
（７）を時計方向に廻すと、第１アーム（２）は反時計
方向に廻動しようとし、第１アーム（２）の上端部（2
b）は上レール（５）に案内され、第１アーム（２）及
び第２アーム（３）の上端部（2b）（3a）が中間点
（ハ）に達するまではドア（１）の後方に向い、中間点
（ハ）を過ぎるとドア（１）の前方に向って摺動する。
この際、第２アーム（３）の上端部（3a）は上レール
（５）に案内され、上端部（3a）が中間点（ハ）に達す
るまでドア（１）の前方に向い、中間点（ハ）を過ぎる
とドア（１）の後方に向って摺動し、第２アーム（３）
の下端部（3b）は下レール（６）に案内され、上端部
（3a）が中間点（ハ）に達するまでドア（１）の後方に
向い、中間点（ハ）を過ぎるとドア（１）の前方に向っ
て摺動する。このため第１アーム（２）と第２アーム
（３）との交叉角度（α）は次第に拡大してから再び縮
少し、両者の上端部（2b）（3a）は上昇し、上レール
（５）と共にドアガラス（４）は下死点（ロ）から中間
点（ハ）を経て上死点（イ）まで上昇する。この間、第
３アーム（８）にはスプリング（９）の弾力が働き、第
３アーム（８）の先端部（8a）がドアガラス（４）の前
半部（4c）を持ち上げるように支えつつ、下縁（4d）に
沿って前記上端部（2b）（3a）が下死点（ロ）から中間
点（ハ）に達するまではドア（１）の前方に向い、中間
点（ハ）から上死点（イ）に達するまではドア（１）の
後方に向い夫々摺動する。そして、ドアガラス（４）が
上昇し閉じ終った位置に於いて各部材は第２図の実線で
示した旧位に復する。

実施例 本考案の実施の一例を図面について説明すると（１）は
自動車のドア、（４）は該ドア（１）の窓枠（1a）内を
昇降するドアガラスである。（２）は第１アーム、
（３）は第２アームで、第１アーム（２）は第２アーム
（３）に比べてやゝ長く、これらの第１アーム（２）及
び第２アーム（３）はほゞ中央に於いて軸（10）によっ
て廻動自在に連結し、Ｘ字形に展開可能に形成する。前
記第１アーム（２）の下部（2a）はドア（１）のインナ
ーパネル（1a）に固定したブラケット（11）に対して軸
（12）によって廻動自在に支承し、更に下端部（2c）に
は外側に噛合歯（13a）を列設した弧状の廻動板（13）
の中間を固着する。前記廻動板（13）の噛合歯（13a）
に噛合させたギャー（14）をブラケット（11）に軸（1
5）によって廻動自在に支承し、該ギャー（14）を廻動
させるハンドル（７）はドア（１）のインナーパネル
（1a）の外側即ち車室内側に臨ませる。前記第１アーム
（２）及び第２アーム（３）の夫々の上端部（2b）（3
a）はドアガラス（４）の後半部（4a）の下縁（4b）に
設けた上レール（５）に沿って摺動するようにローラ
（16）（17）によって上レール（５）に連繋させ、また
第２アーム（３）の下端部（3b）はアウターパネル（1
b）に水平に設けた下レール（６）に沿って摺動するよ
うにローラ（18）によって下レール（６）に連繋する。

更にアウターパネル（1b）側には上記の昇降部材の設置
位置よりやゝ前方寄りに基板（19）を固定すると共に該
基板（19）に第３アーム（８）の下端（8b）を廻動自在
に軸（20）によって支承する。（９）は第３アーム
（８）を常に上方に向って廻動させようとする弾力を有
するスプリングで、始端（9a）は基板（19）に係止し、
終端（9b）は第３アーム（８）の下端（8b）に係止す
る。また第３アーム（８）の先端部（8a）は、ドアガラ
ス（４）の前方寄りの重心（Ｗ）の下方の水平な下縁
（4d）に設けた前レール（21）に沿って往復摺動するよ
うにローラ（22）によって連繋する。

尚、本実施例では、ハンドル（７）の廻動を第１アーム
（２）に伝達する機構としてギャー（14）と該ギャー
（14）と噛合する噛合歯（13a）を列設した廻動板（1
3）を使用しているが、ハンドル（７）と第１アーム
（２）とをワイヤーによって連繋させ、ハンドル（７）
の正逆回転をワイヤーを介して第１アーム（２）に伝達
することも可能である。

効果 依って本考案によれば、ドアガラスの後半部は、ハンド
ルの回転に連動して交叉状態を変化する第１アームと第
２アームによって支えられ、同時にドアガラスの前半部
には、第３アームを介してスプリングの弾力が上方向に
作用し且つ第１アームと第２アームの作動と併行して廻
動する第３アームによって支えられつつ昇降するので、
ドアガラスの重心負荷が主たる昇降機構に対して片寄っ
てかかることなく、ドアガラスは平均的に支持され、窓
枠に対して昇降作動は円滑に行われ、昇降操作性が向上
し、それに伴って装置の耐久性も保持出来る。そしてこ
れらの効果はドアガラスが広面積で下縁が水平直線形状
のものであっても同様に期待出来るものである。

【図面の簡単な説明】

図は本考案の実施例を示すもので、第１図は本装置を内
装した自動車ドアの一部破裁内側面図、第２図は本装置
の要部の拡大側面図で、想像線は作動状態を示してい
る。第３図は要部の分解図である。 符号： １……ドア、７……ハンドル 1a……窓枠、８……第３アーム 1b……インナーパネル、8a……先端部 1c……アウターパネル、8b……下端 ２……第１アーム、９……スプリング 2a……下部、9a……始端 2b……上端部、9b……終端 2c……下端部、10……軸 ３……第２アーム、11……ブラケット 3a……上端部、12……軸 3b……下端部、13……廻動板 ４……ドアガラス、13a……噛合歯 4a……後半部、14……ギャー 4b……下縁、15……軸 4c……前半部、16・17・18……ローラ 4d……下縁、19……基板 ５……上レール、20……軸 ６……下レール、21……前レール 22……ローラ イ……上死点、α……交叉角度 ロ……下死点、Ｏ……中心線 ハ……中間点、Ｗ……重心

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】第１アーム（２）と第２アーム（３）を中
   央に於いて廻動自在に軸支し、第１アーム（２）の下部
   （2a）をドア（１）に対し廻動自在に軸支し、ドアガラ
   ス（４）の後半部（4a）の下縁（4b）に併設した上レー
   ル（５）に、第１アーム（２）及び第２アーム（３）の
   夫々の上端部（2b）（3a）を摺動自在に連繋させると共
   に第２アーム（３）の下端部（3b）をドア（１）に設け
   た下レール（６）に摺動自在に連繋させ、ドア（１）の
   内側に設けたハンドル（７）の正回転或いは逆回転を連
   動機構を介して第１アーム（２）に伝達して上下方向に
   廻動させてドアガラス（４）を昇降させ、更に第３アー
   ム（８）を上方に廻動させようとする弾力を有するスプ
   リング（９）を介してドア（１）に対して第３アーム
   （８）を廻動自在に軸支し、該第３アーム（８）の先端
   部（8a）をドアガラス（４）の前半部（4c）の下縁（4
   d）に摺動自在に連繋させたことを特徴とする自動車ド
   アガラスの昇降装置。