JPH0734036A - シリカ系被膜形成用塗布液および被膜付基材 - Google Patents

シリカ系被膜形成用塗布液および被膜付基材

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JPH0734036A
JPH0734036A JP18305293A JP18305293A JPH0734036A JP H0734036 A JPH0734036 A JP H0734036A JP 18305293 A JP18305293 A JP 18305293A JP 18305293 A JP18305293 A JP 18305293A JP H0734036 A JPH0734036 A JP H0734036A
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film
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島 昭 中
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松 通 郎 小
美 紀 ▲高▼橋
Yoshinori Takahashi
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 特定の繰り返し単位を少なくとも有する1種
または2種以上のポリシラザンと、特定のカルボン酸お
よび/またはカルボン酸エステルとを反応させて得られ
る改質ポリシラザンを含有するシリカ系被膜形成用塗布
液、および該塗布液を用いて形成されたシリカ系被膜を
有する被膜付基材。 【効果】 上記塗布液を基材上に塗布して得られた塗膜
を乾燥・焼成すると、被塗布面の凹凸が高度に平坦化さ
れた被膜付基材が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、シリカ系被膜形成用塗布
液に関し、さらに詳しくは、被塗布面との密着性、機械
的強度、耐アルカリ性などの耐薬品性に優れ、同時に緻
密で耐クラック性に優れ、しかも被塗布面の凹凸を高度
に平坦化し得るようなシリカ系被膜形成用塗布液および
このようなシリカ系被膜が形成された被膜付基材に関す
る。
【0002】
【発明の技術的背景】従来より、シリカ系被膜は、下記
のような分野において用いられている。 1)半導体装置 半導体装置では、半導体基板とアルミニウム配線層など
の金属配線層との間、あるいは金属配線層間を絶縁する
ために、これらの間に絶縁膜が設けられている。さらに
半導体基板上に設けられているPN接合半導体、および
コンデンサー素子、抵抗素子などの各種素子を保護する
ために、これらの素子が絶縁膜で被覆されている。
【0003】半導体基板上に金属配線層などを設ける
と、金属配線層などによって半導体基板上に凹凸が生じ
る。この凹凸面上にさらに金属配線層などを形成しよう
としても、凹凸段差で断線が生じることがある。このた
め、上記のような半導体基板と金属配線層との間、金属
配線層間に形成する絶縁膜、および各種素子を被覆する
絶縁膜には、上記のような金属配線層および各種素子に
よって生じた凹凸面を高度に平坦化することが必要であ
る。
【0004】このような半導体装置では、絶縁膜として
シリカ系被膜が用いられている。 2)液晶表示装置 液晶表示装置における液晶表示セルでは、ガラス基板上
にITO膜を有する透明電極板が多く用いられている。
このような透明電極板を用いた液晶表示セルでは、使用
中に、ガラス基板に含まれているNaなどのアルカリ成
分が、ITO膜中に移行したり、あるいはさらにITO
膜を通して液晶中に溶出することがある。このようなア
ルカリ成分のITO膜中への移行を防止するために、ガ
ラス基板とITO膜との間にアルカリパッシベーション
膜を設けた透明電極板も用いられている。
【0005】さらに液晶表示セル内部に封入された液晶
材料の配向性を向上させるために、透明電極板の透明電
極、例えばITO膜からなる透明電極上にさらに配向膜
を形成することが行なわれている。このような配向膜を
有する透明電極板では、この配向膜の寿命を高めるなど
のために、透明電極と配向膜との間に絶縁膜を設けるこ
ともある。
【0006】カラー液晶表示装置として、ガラス基板上
にTFT(薄膜トランジスタ)などで構成された画素電
極を有する電極板と、ガラス基板上にカラーフィルター
および透明電極が順次形成されている対向電極板とを有
し、電極板と対向電極板との間に液晶層が充填されてな
る液晶表示セルを備えたマトリックス形カラー液晶表示
装置が知られている。
【0007】上記のような液晶表示セルは、電極板から
画素電極が突出し、対向電極板からカラーフィルターが
突出しており、それぞれの電極表面に段差がある。この
ように電極表面に段差があると、セルギャップが不均一
になり、セルギャップが均一である場合に比較して、液
晶表示セル内部に封入された液晶材料の配向が乱れた
り、表示画像に色むらなどの画素むらが生じやすいとい
った傾向がある。
【0008】このため、特開平2−242226号公報
には、電極板の画素電極上および対向電極板のカラーフ
ィルター上に、それぞれポリイミド樹脂被膜、アクリル
系樹脂被膜またはシリカ系被膜を塗布法で形成し、画素
電極またはカラーフィルターによって生じた凹凸面を平
坦化することが提案されている。
【0009】このような液晶表示装置では、上記のよう
な絶縁膜およびアルカリパッシベーション膜としてシリ
カ系被膜が用いられている。 3)位相シフタ付フォトマスク リソグラフ法で高解像度の凹凸パターンを基板上に形成
するため、フォトマスク上に照射光の位相をずらす位相
シフタを付設し、これにより基板上に形成される凹凸パ
ターンの解像度を向上させる方法がある(日経マイクロ
デバイスNo.71、52〜58、(5)、199
1)。
【0010】また、このような位相シフタとしては、シ
リカ系被膜が用いられている。上記のような分野で用い
られているシリカ系被膜は、一般にCVD法、スパッタ
リング法などの気相成長法またはシリカ系被膜形成用塗
布液を用いてシリカ系被膜を形成する塗布法によって基
板上に形成されている。
【0011】しかしながら、気相成長法によってシリカ
系被膜を形成する方法は、手間がかかるとともに大きな
設備が必要であり、また、凹凸面上にシリカ系被膜を形
成した場合には、シリカ系被膜によって該凹凸面を平坦
化することができない。
【0012】これに対し、塗布法によってシリカ系被膜
を形成すると上記のような問題点が解決できるため、近
年、塗布法によってシリカ系被膜を形成することが広く
行なわれている。
【0013】従来、このような塗布法でシリカ系被膜を
形成する際には、被膜形成成分がアルコキシシラン部分
加水分解物の縮重合物であるようなシリカ系被膜形成用
塗布液が用いられてきた。なお、アルコキシシラン部分
加水分解物の縮重合物は、アルコキシシランをアルコー
ル、ケトン、エステルなどの有機溶媒に溶解させ、次い
でこのアルコキシシラン溶液に水および触媒として酸あ
るいは塩基を加えてアルコキシシランを部分加水分解、
次いで縮重合させることによって得ることができる。
【0014】しかしながら、被膜形成成分がアルコキシ
シラン部分加水分解物の縮重合物であるようなシリカ系
被膜形成用塗布液を基板上に塗布・乾燥させると、得ら
れた被膜中にはアルコキシシランが残存している。従っ
て、この被膜を焼成すると、焼成時に被膜中で、アルコ
キシシラン分子に含まれているアルキル基、アルコキシ
基などのような有機基が分解し、この有機基の分解によ
って被膜にピンホールやボイドが発生し、緻密なシリカ
系被膜を得ることは難しい。さらにアルコキシシラン部
分加水分解物が縮合する過程で、縮合体の末端以外でシ
ラノール基同士が脱水反応を行なって縮合体の架橋が進
行する。このためシリカ系被膜が形成される過程で、縮
合体の架橋度に応じて被膜の収縮ストレスが大きくなっ
て被膜にクラックが生じる。すなわち、被膜形成成分が
アルコキシシラン部分加水分解物の縮重合物であるよう
なシリカ系被膜形成用塗布液を用いると、耐クラック性
に優れたシリカ系被膜を得ることは難しい。
【0015】これに対し、近年、シクロシラザン重合物
またはポリシラザンを含有してなるシリカ系被膜形成用
塗布液が提案され(特開昭62−88327号公報、特
開平1−203476号公報等参照)、これらの塗布液
を用いてシリカ系被膜を形成すると、シリカ系被膜の緻
密性および耐クラック性をある程度改良することができ
る。
【0016】しかしながら、上記のようなシクロシラザ
ン重合物またはポリシラザンを含有してなる塗布液から
形成されたシリカ系被膜には、次のような問題点があ
る。シクロシラザン重合物またはポリシラザンは、下記
〔I〕式で表わされるシラザン骨格
【0017】
【化2】
【0018】を有しており、これらの塗布液を基板上に
塗布し、得られた塗膜を加熱焼成してシリカ系被膜を得
る際に、このシラザン骨格が酸化されてシロキサン骨格
【0019】
【化3】
【0020】に変化する。しかしながら、上記酸化反応
が充分に行なわれずに得られたシリカ系被膜にシラザン
骨格が残存していると、このシラザン骨格の残存量に応
じてシリカ系被膜の緻密性が低下したり、シリカ系被膜
が吸湿したりすることがある。また、シラザン骨格が残
存するシリカ系被膜を焼成するとシラザン骨格が分解
し、アンモニアガスが放出されることがある。
【0021】このようにシクロシラザン重合物またはポ
リシラザンを含有する塗布液から形成されたシリカ系被
膜は、緻密性が不充分であったり、また、シリカ系被膜
から放出されたアンモニアガスによって、上記のような
半導体装置では金属配線層が腐食されることがあり、さ
らに、液晶表示装置では液晶表示セル中の液晶材料が変
質することがある。さらにまた、シリカ系被膜にシラザ
ン骨格が残存していると、露光光によって位相シフタが
徐々に変質することがある。
【0022】このため、シクロシラザン重合物またはポ
リシラザンを含有する塗布液からシリカ系被膜を形成す
る際には、得られるシリカ系被膜中にシラザン骨格が残
存しないように、塗膜の加熱を酸素プラズマ照射下ある
いは水蒸気雰囲気中で行なったり、次いで塗膜の焼成を
空気中で500℃以上の温度で行なっていた。また、シ
クロシラザンを含有する塗布液からシリカ系被膜を形成
する場合には、塗膜の焼成を900℃以上の温度で行な
わければシラザン骨格をほとんど含まないシリカ系被膜
を得ることができなかった。
【0023】このような苛酷な酸化条件下でシリカ系被
膜を形成しようとすると、半導体装置、透明電極なども
高温に晒されることになり、好ましくない。これに対
し、本出願人は、上記〔I〕式でR1 〜R3 がそれぞれ
独立して水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基
である特定のポリシラザンを被膜形成成分として用いた
シリカ系被膜形成用塗布液を被塗布面上に塗布し、得ら
れた塗膜を空気中で150℃程度の低温で乾燥し、次い
で800℃以下の温度で焼成することにより、低窒素含
有率のシリカ系被膜が得られることを見出した。特に前
記R1 〜R3 の全てが水素原子である場合、塗膜の焼成
を450℃程度の温度で焼成することにより低窒素含有
率のシリカ系被膜を得ている。
【0024】本発明者らは、上記のような知見に基づい
てさらに研究を重ねた結果、 a)このような特定のポリシラザンを、特定のカルボン
酸および/またはカルボン酸エステルで改質した改質ポ
リシラザンを含有する塗布液を被塗布面上に塗布し、得
られた塗膜を乾燥し、次いで焼成してシリカ系被膜を形
成すると、被膜形成成分としてポリシラザンのみを含む
塗布液からシリカ系被膜を同様にして形成した場合と比
較してより低い焼成温度で窒素含量の少ないシリカ系被
膜が得られること、 b)この窒素原子をほとんど含まないシリカ系被膜は、
被塗布面との密着性、機械的強度、耐アルカリ性などの
耐薬品性、耐湿性および耐クラック性に優れ、同時に緻
密な絶縁膜であってボイド、ピンホールなどがほとんど
ないこと、 c)凹凸面上に上記のような改質ポリシラザンを含有す
る塗布液を塗布して被膜を形成すると、被膜形成成分が
従来のポリシラザンである場合と同様、該凹凸面が高度
に平坦化されること、 d)したがって、上記のような改質ポリシラザンを含有
する塗布液を用いて、上記のような被膜付基材を製造す
ると、従来に比べてより一層性能に優れた製品が得られ
ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
【発明の目的】本発明は、上記のような従来技術におけ
る問題点を解決しようとするものであって、被塗布面と
の密着性、機械的強度、耐アルカリ性などの耐薬品性に
優れ、同時に緻密で耐クラック性に優れた絶縁膜を35
0℃以下の焼成温度で形成でき、しかも被塗布面の凹凸
を高度に平坦化し得るようなシリカ系被膜形成用塗布
液、およびこのように優れた性質を有する被膜付基材を
提供することを目的としている。
【0026】
【発明の概要】本発明に係るシリカ系被膜形成用塗布液
は、下記一般式[I]
【0027】
【化4】
【0028】(式中、R1 、R2 およびR3 は、それぞ
れ独立して水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル
基である。)で表される繰り返し単位を少なくとも有す
るポリシラザンの1種または2種以上と、下記一般式
[II] RCOOR’ …[II] (式中、Rは、炭素原子数1〜30の炭化水素基であ
り、R’は、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化
水素基である。)で表わされるカルボン酸および/また
はカルボン酸エステルとを反応させて得られる改質ポリ
シラザンを含有することを特徴としている。
【0029】また、本発明に係る被膜付基材は、上記塗
布液を用いて形成されたシリカ系被膜を有することを特
徴としている。
【0030】
【発明の具体的説明】以下、本発明に係るシリカ系被膜
形成用塗布液について具体的に説明する。シリカ系被膜形成用塗布液 本発明に係るシリカ系被膜形成用塗布液は、上記のよう
な一般式[I]で表わされる繰り返し単位を少なくとも
有する1種または2種以上のポリシラザンを、上記一般
式[II]で表わされるカルボン酸および/またはカルボ
ン酸エステルで改質した改質ポリシラザンを含有してい
る。
【0031】このうち、本発明で用いられるポリシラザ
ンは、上記式[I]でR1 、R2 およびR3 が、それぞ
れ水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基であ
り、アルキル基の中でもメチル基、エチル基またはプロ
ピル基が好ましい。
【0032】本発明で用いられるポリシラザンとして
は、上記式[I]でR1 、R2 およびR3 がすべて水素
原子であり、1分子中にケイ素原子が55〜65重量
%、窒素原子が20〜30重量%、水素原子が10〜1
5重量%であるような量で存在している無機ポリシラザ
ンが特に好ましい。このような無機ポリシラザンは、た
とえば特公昭63−16325号公報および米国特許第
4397828号明細書に開示された方法に従って製造
することができる。
【0033】上記式[I]で表される繰り返し単位を有
するポリシラザンは、直鎖状であっても、環状であって
もよく、直鎖状のポリシラザンと環状のポリシラザンと
が混合して含まれていてもよい。
【0034】本発明で用いられるポリシラザンの重量平
均分子量は、500〜10,000、好ましくは1,0
00〜4,000の範囲にあることが望ましい。重量平
均分子量が500未満である場合には、塗布液からシリ
カ系被膜を形成する際の乾燥工程で低分子量の化合物が
揮発し、その後の焼成工程で被膜が大きく収縮するよう
になる。これに対し、分子量が10,000を越える場
合には、塗布液の流動性が低下する。従って上記いずれ
の場合においても凹凸面を被膜で被覆した際に、該凹凸
面が被膜で充分に平坦化することは難しい。また、この
ポリシラザンのSi/N比(原子比)は、1.0〜1.
3の範囲にあることが望ましい。
【0035】さらに、本発明に係るシリカ系被膜形成用
塗布液には、ポリシラザン全体の10〜40重量%、好
ましくは15〜40重量%が分子量1,000以下の低
分子量ポリシラザンであるようなポリシラザンを用いる
ことが望ましい。低分子量ポリシラザンが10重量%未
満であると、塗布液の流動性が低下し、塗布液から得ら
れたシリカ系絶縁膜の表面平滑性が低下することがあ
る。一方、低分子量ポリシラザンが40重量%を越える
と、塗布液からシリカ系被膜を形成する際の乾燥工程で
揮発する低分子量化合物が多くなり、その後の焼成工程
で被膜が大きく収縮するようになり、塗布液から得られ
たシリカ系被膜の表面平滑性が低下することがある。
【0036】本発明で用いられるカルボン酸およびカル
ボン酸エステルは、上記一般式〔II〕で表わされる。上
記式〔II〕中、Rは、炭素原子数1〜30の炭化水素基
である。
【0037】上記式〔II〕で表わされるカルボン酸また
はカルボン酸エステルとしては、具体的には、蟻酸、酢
酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ピバル酸、吉草
酸、イソ吉草酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、カプリ
ル酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、リノール
酸、ステアリン酸、安息香酸、シュウ酸、マロン酸、マ
レイン酸、酒石酸、クエン酸、フタル酸、無水酢酸、無
水プロピオン酸、無水酪酸、蟻酸エステル、酢酸エステ
ル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、イソ酪酸エ
ステル、イソ吉草酸エステル、ステアリン酸エステル、
安息香酸エステル、シュウ酸エステル、マロン酸エステ
ル、マレイン酸エステル、酒石酸エステル、クエン酸エ
ステル、フタル酸エステルなどが挙げられる。
【0038】本発明に係るシリカ系被膜形成用塗布液
は、次のようにして調製される。 i)上記のようなポリシラザンとカルボン酸および/ま
たはカルボン酸エステルとを有機溶媒中で混合する。
【0039】このような有機溶媒としては、ポリシラザ
ンとカルボン酸および/またはカルボン酸エステルとの
混合物を溶解するものであれば特に制限はなく、具体的
には、メチルエチルケトン等のケトン類、メチルセロソ
ルブ等のグリコールエーテル類、ヘキサン、オクタン等
の炭化水素類、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等
の環状炭化水素類、エチルエーテル、エチルブチルエー
テル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類
が挙げられる。これらの有機溶媒は単独でもしくは2種
以上を混合して用いられる。
【0040】上記のようにポリシラザンとカルボン酸お
よび/またはカルボン酸エステルとを有機溶媒中で混合
すると、ポリシラザンのSi−N結合部がカルボキシル
基と反応し、ポリシラザンのSi−N結合部が開裂した
ポリシラザン改質物が生成する。
【0041】このポリシラザンとカルボキシル基との反
応は、溶媒の沸点以下の任意の温度で行われる。また、
この反応で用いられるポリシラザンのカルボン酸および
/またはカルボン酸エステルに対する配合比は、モル比
で99.9/0.1〜1/2の範囲に調整することが望
ましい。この配合モル比が99.9/0.1を越えると
ポリシラザンの改質効果がほとんどなくなり、逆に1/
2未満では、ポリシラザンの好ましい性質が損なわれる
傾向がある。 ii)上記のようなポリシラザンの改質反応が終了した
後、得られた改質ポリシラザンの重量平均分子量が10
00未満の場合には、反応液中の有機溶媒を塩基性溶媒
で置換した後、改質ポリシラザンの重合反応を行ない、
改質ポリシラザンの分子量を好ましい範囲に調製する。
この際に用いられる塩基性溶媒としては、塩基性溶媒で
あれば特に制限はないが、ピリジン、ピコリン、トリメ
チルフォスフィン、トリエチルフォスフィン、フラン、
ジオキサンが好ましく、ピリジンが特に好ましい。前記
改質ポリシラザンの重合反応は、塩基性溶媒の沸点以下
の任意の温度で、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲
気下において、塩基性溶媒に窒素ガスを吹き込みながら
行なわれる。
【0042】以上のようにして得られたポリシラザン改
質物を含む液から減圧蒸留等の方法で溶媒を除去するこ
とによって樹脂状物質を得る。 iii )得られた樹脂状物質を固形分濃度が3〜40重量
%になるように、有機溶媒に溶解することによって本発
明に係るシリカ系被膜形成用塗布液が基本的に得られ
る。
【0043】この際に用いられる有機溶媒としては、上
記の樹脂状物質を分散または溶解し、塗布液に流動性を
付与するものであれば特に制限はないが、具体的には、
ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシ
レン等の炭化水素類、エチルエーテル、エチルブチルエ
ーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロ
フラン等のエーテル類が挙げられる。これらの有機溶媒
は単独でもしくは2種以上を混合して用いられる。
【0044】また、本発明に係る塗布液に用いられる上
記有機溶媒としては、水の溶解度が0.5重量%以下で
あるような有機溶媒が好ましい。このような有機溶媒を
塗布液に用いると、塗布液が吸湿して塗布液中のポリシ
ラザンなどが加水分解を起こすのが防止され、これによ
りポットライフの長い塗布液が得られる。
【0045】上記のような方法で得られた樹脂状改質ポ
リシラザンの重量平均分子量は、500〜10,00
0、好ましくは1,000〜4,000の範囲にあるこ
とが望ましい。重量平均分子量が500未満である場合
には、塗布液からシリカ系被膜を形成する際の乾燥工程
で低分子量の化合物が揮発し、その後の焼成工程で被膜
が大きく収縮するようになる。また、分子量が10,0
00を越える場合には、塗布液の流動性が低下する。従
って、いずれの場合においても凹凸面を被膜で被覆した
際に、該凹凸面を被膜で充分に平坦化することは難し
い。また、この樹脂状物質のSi/N比(原子比)は、
ポリシラザンと同様、1.0〜1.3の範囲にあるこ
とが望ましい。
【0046】上記のような本発明に係るシリカ系被膜形
成用塗布液を用いてシリカ系被膜を形成すると、被膜形
成成分として従来のポリシラザン系塗布液を用いてシリ
カ系被膜を形成した場合に比べて、塗布液から得られた
塗膜を乾燥し、次いで従来のポリシラザン系塗布液の場
合よりも低温で焼成しても緻密性に優れ、かつ収縮スト
レス、ボイド等の少ない平坦性に優れた被膜が得られ
る。
【0047】特に本発明に係るシリカ系被膜形成用塗布
液が、上記式〔I〕で表わされ、式〔I〕中のR1 、R
2 およびR3 の全てが水素原子である無機ポリシラザン
を上記カルボン酸および/またはカルボン酸エステルで
改質した改質ポリシラザンを含む塗布液である場合、さ
らに緻密で、しかも耐クラック性に優れた被膜を得るこ
とができる。
【0048】すなわち、被膜形成成分の大部分が上記の
ような改質無機ポリシラザンからなる塗布液からシリカ
系被膜を形成した場合には、シリカ系被膜を形成する際
の乾燥・焼成工程で生じる被膜の収縮は、改質ポリシラ
ザン中のSi−H結合がSi−O結合に変化するときの
体積膨張により抑制される。このため、被膜形成成分の
大部分が上記のような改質無機ポリシラザンからなる塗
布液から被膜を形成すると、被膜形成時の収縮ストレス
が少なくなり、クラックの発生が抑制される。従って、
被膜形成成分の大部分が上記のような改質無機ポリシラ
ザンからなる塗布液は、特に厚膜のシリカ系絶縁膜を形
成する際に用いることが好ましい。
【0049】被膜付基材 本発明に係る被膜付基材としては、具体的には、上記の
ような半導体装置、液晶表示装置、位相シフタ付フォト
マスク、さらには多層配線構造を有するLSI素子およ
びプリント回路基板、ハイブリッドIC、アルミナ基板
などの電子部品、三層レジストなどが挙げられる。
【0050】すなわち、上記のような半導体装置では、
半導体基板と金属配線層との間、金属配線層間にシリカ
系被膜が形成され、半導体基板上に設けられたPN接合
半導体、およびコンデンサー素子、抵抗素子などの各種
素子がシリカ系被膜で被覆され、これらの素子によって
形成された凹凸面が平坦化されている。
【0051】また、液晶表示装置における液晶表示セル
では、透明電極板の透明基板と透明電極との間に、さら
に透明電極上に配向膜を有する透明電極板の透明電極と
配向膜の間に、シリカ系被膜が形成され、カラー液晶表
示装置における液晶表示セルでは、電極板の画素電極上
および対向電極板のカラーフィルター上にシリカ系被膜
が形成され、画素電極およびカラーフィルターによって
形成された凹凸面が該シリカ系被膜によって平坦化され
ている。
【0052】さらに位相シフタ付フォトマスクの位相シ
フタおよび三層レジストの中間層がシリカ系被膜で構成
され、上記電子部品においても半導体装置と同様にシリ
カ系被膜が設けられ、シリカ系絶縁膜の被塗布面が該シ
リカ系被膜によって平坦化されている。
【0053】本発明に係る被膜付基材は、ポリシラザン
の1種または2種以上を上記カルボン酸および/または
カルボン酸エステルと反応させて得られた改質ポリシラ
ザンを含む塗布液を用いて形成されたシリカ系被膜を有
している。このシリカ系被膜の膜厚は、通常、0.05
〜2μ、好ましくは0.1〜1μ程度である。
【0054】このようなシリカ系被膜は、例えば上記の
ような本発明に係るシリカ系被膜形成用塗布液を、基材
の被塗布面、例えば液晶表示表示装置を製造する場合に
は透明電極板の透明電極面にスプレー法、スピンコート
法、ディッピング法、ロールコート法、スクリーン印刷
法、転写印刷法などの各種方法で塗布し、次いで得られ
た塗膜を乾燥・焼成することにより得ることができる。
【0055】なお、塗膜の加熱硬化処理に際して、紫外
線照射または電子線照射による塗膜の硬化処理を併用し
てもよい。
【0056】
【発明の効果】本発明に係る被膜形成用塗布液によれ
ば、ボイド、ピンホールなどがほとんどなく、緻密であ
って、被塗布面との密着性、機械的強度、耐アルカリ性
などの耐薬品性、耐湿性、絶縁性などに優れたシリカ系
絶縁膜を350℃以下の焼成温度で形成でき、しかも被
塗布面の凹凸を高度に平坦化することができる。
【0057】すなわち、被膜形成成分として従来のポリ
シラザン系塗布液からシリカ系被膜を形成すると、Si
−N−Si結合の熱分解温度が高く、500℃以下の温
度で乾燥・焼成した場合には、得られたシリカ系被膜中
に窒素原子が残存しているが、本発明に係る被膜形成用
塗布液から同様の乾燥・焼成温度でシリカ系被膜を形成
すると、得られたシリカ系被膜中には窒素原子がほとん
ど残存していない。また、このようにして本発明に係る
被膜形成用塗布液から得られたシリカ系被膜は、従来の
ポリシラザン系塗布液から得られたシリカ系被膜と比較
して緻密性および耐アルカリ性などの耐薬品性に優れて
いる。
【0058】このように本発明に係る被膜形成用塗布液
を塗布面に塗布し、得られた塗膜を350℃以下の比較
的低温で乾燥・焼成しても窒素原子がほとんど残存して
いないシリカ系被膜が得られる理由は、次のように推定
される。
【0059】すなわち、上記のようにポリシラザンを上
記カルボン酸および/またはカルボン酸エステルで改質
すると、ポリシラザン分子中のケイ素原子と強固に結合
している窒素原子部分がカルボキシル基で置換され、前
記窒素原子と2つの隣接ケイ素原子との間に形成されて
いた結合が開裂する。これにより結合エネルギーが比較
的大きいSi−N−Si結合部がほとんど消失すること
によるものであろう。
【0060】また、本発明によれば、半導体基板と金属
配線層との間、金属配線層間にシリカ系被膜が形成さ
れ、半導体基板上に設けられたPN接合半導体、および
コンデンサー素子、抵抗素子などの各種素子がシリカ系
被膜で被覆され、これらの素子によって形成された凹凸
面が平坦化されている半導体装置、ガラス基板と透明電
極との間に、ガラス基板中に含まれているNaなどのア
ルカリ成分が透明電極中に移行したり、この透明電極を
通して透明電極間に封入された液晶中へ溶出したりする
ことが防止できるような、いわゆるアルカリパッシベー
ション膜としてのシリカ系被膜が形成された液晶表示装
置、およびさらに透明電極上に配向膜を有する透明電極
板の透明電極と配向膜の間にシリカ系被膜が形成された
透明電極板を有する液晶表示セルを備えた液晶表示装
置、画素電極上にシリカ系被膜が形成された電極板およ
びカラーフィルター上にシリカ系被膜が形成された対向
電極板を有し、画素電極およびカラーフィルターによっ
て形成された凹凸面が該シリカ系被膜によって平坦化さ
れている液晶表示セルを備えたカラー液晶表示装置、位
相シフタがシリカ系被膜であるような位相シフタ付フォ
トマスク、中間層がシリカ系被膜であるような三層レジ
スト、および半導体装置と同様にシリカ系被膜が設けら
れ、シリカ系絶縁膜の被塗布面が該シリカ系被膜によっ
て平坦化されている電子部品、たとえば多層配線構造を
有するLSI素子およびプリント回路基板、ハイブリッ
ドIC、アルミナ基板などのような被膜付基材が歩留り
良く提供できる。
【0061】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0062】
【製造実施例】
1)ポリシラザンAの合成 特公昭63−16325号公報記載の製造法に準じて次
のような製造法でポリシラザンAを合成した。
【0063】温度が0℃の恒温槽内に設置した反応器内
にピリジン600mlを入れ、攪拌しながらジクロロシラ
ン28.3gを加えて錯体(ピリジンアダクツ)を形成
させた。次いでこのピリジンアダクツを含む液中にアン
モニアを2時間吹き込んで反応生成物を含む液を得た。
この液中に含まれている沈澱を濾過して除去した後、濾
液を80℃で10時間加熱し、次いで減圧して濾液から
ピリジンを除去することにより、反応器内に樹脂状のポ
リシラザンAを得た。 2)ポリシラザンBの合成 1リットルの四つ口フラスコに塩化メチレン300mlを
入れ、−5℃に冷却した。次いでこのフラスコ内にメチ
ルジクロロシラン34.2gを加え、攪拌しながらさら
にアンモニアを2時間吹き込んで反応生成物を含む液を
得た。この液中に含まれている沈澱を濾過して除去した
後、濾液を減圧して濾液から塩化メチレンを除去するこ
とにより、樹脂状のポリシラザンBを得た。
【0064】上記のポリシラザンA、Bの元素分析結
果、Si/N比および重量平均分子量を表1に示す。な
おこれらの重量平均分子量は、ゲルクロマトグラフ法で
測定したポリスチレン換算値である。
【0065】
【実施例1】ポリシラザンAの10重量%キシレン溶液
とリノール酸とを、ポリシラザンA/リノール酸がモル
比で1/1となるように混合し、80℃の温度で2時間
反応させた。次いで溶媒を減圧によって除去することに
より樹脂状の改質ポリシラザンを得た。得られた改質ポ
リシラザンの元素分析結果、Si/N比および重量平均
分子量を表1に示す。なお得られた改質ポリシラザンの
重量平均分子量は、上記ポリシラザンA、Bの重量平均
分子量と同様にして測定した。
【0066】上記のようにして得られた改質ポリシラザ
ンをキシレンに溶解し、固形分濃度が20重量%である
シリカ系被膜形成用塗布液を得た。この塗布液を4イン
チシリコンウェハー上にスピンコート法で塗布し、得ら
れた塗膜を150℃で2分間加熱して乾燥させた後、空
気中で350℃で1時間焼成してシリカ系被膜を形成し
た。形成されたシリカ系被膜のESCA分析結果およ
び、耐クラック性、緻密性、耐アルカリ性の測定結果を
表2に示す。なお、耐クラック性、緻密性および耐アル
カリ性の測定は次のようにして行なった。 a)耐クラック性 2μのシリカ系被膜を形成し、このシリカ系被膜のクラ
ックの有無を顕微鏡で観察した。 b)緻密性 HFとHNO3 との混合溶液(HF/HNO3 =1/1
00重量比)からなるエッチング液に上記のようにして
形成されたシリカ系被膜を2分間浸漬した前後の膜厚変
化量から算出した。なお、単位時間当りの膜厚変化量が
小さい程、緻密性に優れていると評価される。 c)耐アルカリ性 40℃の5重量%NaOH水溶液に上記のようにして形
成されたシリカ系被膜を20分間浸漬した前後の膜厚変
化量から算出した。なお、この膜厚変化量が小さい程、
耐アルカリ性に優れていると評価される。
【0067】
【実施例2】ポリシラザンAの5重量%メチルイソブチ
ルケトン溶液とオレイン酸とを、ポリシラザンA/オレ
イン酸がモル比で9/1となるように混合し、次いで、
この混合溶液を80℃で5時間加熱してポリシラザンA
とオレイン酸とを反応させた後、液中の溶媒を減圧によ
って除去することにより樹脂状の改質ポリシラザンを得
た。得られた改質ポリシラザンの元素分析結果、Si/
N比および重量平均分子量を表1に示す。なお得られた
改質ポリシラザンの重量平均分子量は、上記ポリシラザ
ンA、Bの重量平均分子量と同様にして測定した。
【0068】このようにして得られた改質ポリシラザン
を用いて実施例1と同様にしてシリカ系被膜形成用塗布
液およびシリカ系被膜を得、実施例1と同様にして得ら
れたシリカ系被膜のESCA分析、および、耐クラック
性、緻密性、耐アルカリ性の測定を行なった。
【0069】以上の分析および測定結果を表2に示す。
【0070】
【実施例3】ポリシラザンBの3重量%ブチルエーテル
溶液とマレイン酸ジメチルとを、ポリシラザンB/マレ
イン酸ジメチルがモル比で96/4となるように混合
し、50℃の温度で2時間反応させて、樹脂状の改質ポ
リシラザンを得た。得られた改質ポリシラザンの元素分
析結果、Si/N比および重量平均分子量を表1に示
す。なお得られた改質ポリシラザンの重量平均分子量
は、上記ポリシラザンA、Bの重量平均分子量と同様に
して測定した。
【0071】このようにして得られた改質ポリシラザン
を用いて実施例1と同様にしてシリカ系被膜形成用塗布
液およびシリカ系被膜を得、実施例1と同様にして得ら
れたシリカ系被膜のESCA分析、および、耐クラック
性、緻密性、耐アルカリ性の測定を行なった。
【0072】以上の分析および測定結果を表2に示す。
【0073】
【比較例1】ポリシラザンAの20重量%のキシレン溶
液をシリカ系被膜形成用塗布液として、実施例1と同様
にしてシリカ系被膜を得、実施例1と同様にして得られ
たシリカ系被膜のESCA分析、および、耐クラック
性、緻密性、耐アルカリ性の測定を行なった。
【0074】以上の分析および測定結果を表2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式[I] 【化1】 (式中、R1 、R2 およびR3 は、それぞれ独立して水
    素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基である。)
    で表わされる繰り返し単位を少なくとも有する1種また
    は2種以上のポリシラザンと、 下記一般式[II] RCOOR’ …[II] (式中、Rは、炭素原子数1〜30の炭化水素基であ
    り、R’は、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化
    水素基である。)で表わされるカルボン酸および/また
    はカルボン酸エステルとを反応させて得られる改質ポリ
    シラザンを含有することを特徴とするシリカ系被膜形成
    用塗布液。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の塗布液を用いて形成され
    たシリカ系被膜を有することを特徴とする被膜付基材。
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