JPH07316949A - 立毛布帛及びその製造方法 - Google Patents

立毛布帛及びその製造方法

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JPH07316949A
JPH07316949A JP6106670A JP10667094A JPH07316949A JP H07316949 A JPH07316949 A JP H07316949A JP 6106670 A JP6106670 A JP 6106670A JP 10667094 A JP10667094 A JP 10667094A JP H07316949 A JPH07316949 A JP H07316949A
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napped
hair
fibers
length
fiber
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JP6106670A
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English (en)
Inventor
Hidenobu Honda
秀信 本田
Koji Onishi
孝司 大西
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【構成】ポリエステル系繊維からなる立毛を有する立毛
布帛において、最長立毛繊維の長さを1とした場合、
0.8〜1の長さを有する繊維が立毛繊維本数の60%
以上を有し、かつ立毛繊維本数の50%以上が立毛繊維
の先端部から立毛長の15%以下の範囲で減量加工され
ていることを特徴とする立毛布帛。 【効果】従来不可能に近いと考えられていた毛皮の最高
級品であるシールやチンチラに非常に近似した人工毛皮
を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は立毛布帛及びその製造
方法に関するものである。さらに詳しくは、立毛構造や
触感が天然の高級毛皮の中でも特に最高級品と評価され
ているシ−ルやチンチラに非常に近似していて、また特
に、従来の類似のものに比べて立毛層の外観が良好であ
る特殊な立毛布帛及びその製造方法に関するものであ
る。
【0002】この発明による立毛布帛は、特に毛皮調に
限定されるものではないが、毛皮に近似していることか
ら、高級衣料やシート地として用いられるのが最適なも
のである。
【0003】
【従来の技術】天然毛皮は保温を目的に細くてケン縮を
有し、かつ密集し一定の長さにそろったわた毛と、体を
保護するための太くて長い尖端が尖ったさし毛からなっ
ている。特にシールはオットセイのさし毛を抜いたわた
毛のみの毛皮で、わた毛の密度が高くほぼ直立し毛並み
の方向性が少なく柔らかな触感である。またチンチラも
わた毛タイプで繊細で絹のような柔らかさで、光沢があ
り最高級毛皮として取り扱われている。ゆえに人工的に
それらを作ろうとしても近寄り難いものの一つである。
【0004】そのため、天然毛皮は依然として高価なも
のであり、ステータス・シンボルとして、あるいは超高
級ファション衣料素材としてゆるぎない地位にある。
【0005】一方、このような天然毛皮に対し、最近
は、とみに動物愛護や自然保護といった運動の機運が高
まり天然毛皮により近い人工毛皮の開発が期待されてい
る。
【0006】一方、以前から、単なる毛布様としか言い
ようのないものなどをはじめとして、「天然毛皮調」を
うたい文句にした立毛布帛は数多く提案されてきてい
る。近年も、上述動物愛護運動の高まりなどとともに、
より高級な天然毛皮調をねらった提案も古くから数多く
見られる。
【0007】たとえば、人造の毛皮の製造に関して、特
開昭49−85361号公報や実公昭48−15816
号公報に記載の提案等が知られているが、いずれも総合
的には満足のいくものでないのが現状である。
【0008】また、米国特許第2737702号明細書
には、スライバー・ニッティングにおいて、両先端が尖
鋭化されたさし毛繊維を用いた人工毛皮の製造に関する
発明が記載されているが、このものは、さし毛立毛とわ
た毛立毛のなじみが悪い上に、さらに、それらのさし毛
とわた毛どうしあるいはわた毛どうしとがもつれ合う、
さらに、それらの毛が倒れやすく立毛層に腰がないなど
の欠点があった。
【0009】また、特開昭57−61741号公報に
は、特殊な毛皮調立毛布帛とその製造方法に関する技術
が記載されているが、この技術によるものは、わた毛立
毛の立毛の長さおよび均一長分布の点では配慮されてお
らず、天然ミンクと同様の2層構造のはっきりとしたも
のが得られず見ばえが悪く、また、立毛部分が筆先状集
合体となっているため立毛がもつれ合いやすいものであ
った。さらに、カットパイル布帛化により切断されたパ
イル繊維先端部はブツ切り状となり、表面タッチがザラ
ザラとなり見ばえも白ボケ状となるという欠点があっ
た。また、紡績性からみた場合、わた毛のステープル長
さは短い方に限界があり、所望の立毛長さを得るのが困
難であって、いまだ改良を望まれる点も多くあった。
【0010】また、特公昭63−64536号公報に
は、わた毛調立毛が地組織からの立毛長さにおいて均一
長の部分を有している立毛繊維長分布を呈しているパイ
ル布帛が記載されており、この技術は上述の特開昭57
−61741号公報に記載の方法を更に改良した有効な
ものであるが、該特開昭57−61741号公報に記載
の技術と同様にカットパイル布帛化により分離させる方
式のため、わた毛繊維の先端切断部がくぎの頭状となる
「ブツ切り状態」となり、該状態では、先端部どうしが
ひっかかり合って立毛がもつれ合いやすく、また、表面
タッチ、見ばえともに満足のいくものが得られないとい
う問題が存在するものであった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】この発明の課題は、前
述したような点に鑑み、立毛構造や触感が天然の高級毛
皮のシールやチンチラに非常に近似していて、また、特
に従来の類似のものに比べても立毛層の柔らかいタッチ
や色の深みによる外観が特に良好でハイレベルの立毛布
帛を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記した課題を達成する
ため、この発明の立毛布帛は、次の構成を有する。すな
わち、ポリエステル系繊維からなる立毛を有する立毛布
帛において、最長立毛繊維の長さを1とした場合、0.
8〜1の長さを有する繊維が立毛繊維本数の60%以上
を有し、かつ立毛繊維本数の50%以上が立毛繊維の先
端部から立毛長の15%以下の範囲で減量加工されてい
ることを特徴とする立毛布帛である。
【0013】また、本発明の製造方法は、次の構成を有
する。すなわち、カットパイル立毛布帛の立毛表面部に
粘度が150〜700ポイズのアルカリ処理剤を付与
し、しかる後、加熱処理することを特徴とする立毛布帛
の製造方法である。
【0014】以下、さらに詳しく本発明について説明す
る。
【0015】本発明において用いられるポリエステル系
繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチ
レンテレフタレートやこれらを主成分とした共重合体が
あげられる。
【0016】本発明において、立毛布帛は、基布が編織
物である二重パイル編織物で、タテパイル糸をナイフ等
で切断することにより2枚に分離し得られたものであ
る。
【0017】パイル編織物は、一種類のパイルからなる
ものであってもよく、すなわち、さし毛調立毛あるいは
わた毛調立毛のいずれかからなるパイル編織物であって
よく、あるいは、さし毛調立毛とわた毛調立毛の複数立
毛からなるパイル編織物であってもよい。また、複数立
毛からなるものを用いるにしても、さし毛調あるいはわ
た毛調であることに限定はされない。
【0018】たとえば、さし毛調立毛用の繊維として
は、3デニール以上50デニール以下で耐アルカリ性の
高いポリエステル系繊維を用いるのがよく、また、わた
毛調立毛用の繊維としては10デニール以下で耐アルカ
リ性の低いポリエステル系繊維を用いるのがよく、特
に、さし毛調立毛用の繊維としては、ポリブチレンテレ
フタレートや、またはこれらを主成分とした共重合体よ
りなるポリエステル系繊維、わた毛調立毛用繊維として
はポリエチレンテレフタレートや、または、これらを主
成分とした共重合体よりなるポリエステル系繊維を用い
ることなどが好ましい。
【0019】本発明の方法は、そのようなポリエステル
系繊維よりなるさし毛調立毛用繊維と、該さし毛調立毛
用繊維を構成するポリエステル系繊維よりはアルカリ処
理により侵されやすいポリエステル系繊維よりなるわた
毛調立毛用繊維を用いて、紡績糸又は連続フィラメント
加工糸としてなるパイル糸を用いるか、又はポリエステ
ル系繊維よりなるわた毛のみのあるいはさし毛のみの立
毛繊維を用いて、まず、パイル編織物を二重に製編織し
てタテパイル糸をナイフで切ってパイル編織物を2枚得
て後、該編織物のパイル裏面側にバッキング加工を施
し、さらに適宜にパイル面に対して毛さばき処理を施し
て遊び毛などを適宜に除去する。
【0020】そして、さらに、該パイル編織物の立毛表
面部に特定アルカリ濃度で特定粘度の増粘アルカリ処理
剤を付与して後、乾熱処理または湿熱処理に供すること
によって、該さし毛調立毛繊維および該わた毛調立毛繊
維の先端部を減量加工せしめる。
【0021】増粘アルカリ処理剤としては、経済的、作
用効果の面から水酸化ナトリウムを用いるのがよく、増
粘剤としては一般に糊剤と呼ばれるものを各種使用でき
るが、これ以外にも水溶性のポリマーなども使用でき
る。
【0022】以下、図面等に基づき更に詳しく本発明に
ついて説明する。
【0023】本発明にかかる立毛布帛の構造例をモデル
図により説明すると、図1は、本発明により得られるさ
し毛調立毛およびわた毛調立毛を有するパイル布帛の構
造例を示した概略モデル側面図であり、さし毛調立毛2
とわた毛調立毛3は地組織4からの立毛長さがほぼ均一
長の部分を有している立毛長さ分布を呈している。全体
的にみてさし毛層、わた毛層の明瞭な長さ分布差が見受
けられないが、若干わた毛層が短くなった本発明の立毛
布帛1を呈している。
【0024】なおまた、紡績糸あるいは連続フィラメン
ト糸をパイル糸に使用してのわた毛のみの立毛繊維を有
するパイル編織物の場合は、さし毛調立毛2がなく、わ
た毛調立毛3の一層だけの構造となる。また、さし毛調
立毛のみの場合には、わた毛調立毛のないさし毛調立毛
だけのものとなる。
【0025】地組織4には、ポリウレタン、ポリアクリ
ルなどの接着性重合体が含浸されているか、バッキング
層5が形成せしめられているか、あるいはそれら両者が
形成されていてもよく、バッキングをせしめる場合に
は、パイル立毛の固定、さらに疑革化など所望の目的に
応じて適切なバッキングを行なえばよい。連続フィラメ
ント糸をパイル糸に使用したパイル布では、特に場合に
よっては、バッキングを省略することが可能な場合もあ
る。
【0026】個々のパイル立毛根元は、その根元部横断
面構造においてさし毛立毛をなす繊維とわた毛立毛をな
す繊維とが複数本混在している混紡糸構造、すなわち、
複数本の立毛繊維が混紡糸状に集団で寄り集まって1つ
のパイル株を構成しているパイル根株構造を有してい
て、図2は、図1に示したさし毛調立毛2、わた毛調立
毛3を根元部近くまでカットした1株のパイルを上面か
ら観察した外観状態を示す概要図であり、1株のパイル
が多数本のわた毛調立毛3と比較的少数本のさし毛調立
毛2から形成されている混紡糸構造のモデルを示したも
のである。
【0027】このように、本発明のかかる例のパイル布
帛では、紡績糸および連続フィラメント糸使いの特殊加
工糸を用いパイルが形成されたものであることから、個
々のパイル根元部では、さし毛立毛とわた毛立毛とが、
非常にうまくこなれ、良くミックスされて混在している
糸束構造になっている。このようなパイル根元構造を有
することにより、後述するように、さし毛・わた毛調の
両立毛のなじみの良さがもたらされる。
【0028】また、さし毛調立毛をなす原料繊維は、ケ
ン縮のないほぼストレートな繊維で、該わた毛立毛をな
す繊維はケン縮を有している。粘度が特に150〜70
0ポイズであるようにされた増粘アルカリ処理剤によ
り、該さし毛調立毛繊維および該わた毛調立毛繊維の先
端部を減量加工せしめる。
【0029】減量加工とは加水分解剤であるアルカリ処
理剤で立毛繊維の先端部をモデル図、図5に示す処理前
のくぎの頭状のようなブツ切り状の物を図6〜図9に示
す様な、ある程度滑らかな形態やテーパー状態に加工す
ることである。その程度の形態の変化があっても、外
観、タッチ、風合いなどの改善効果は十分に認められる
からである。立毛繊維の減量加工は先端部から立毛長の
15%以内の範囲で実施されている。本発明において、
減量加工されているとは、アルカリ処理前の立毛繊維の
横断面積よりも10%以上横断面積が減少していること
とする。
【0030】次に、本発明方法における好ましい製造方
法を説明する。
【0031】まず、図3に示すように、さし毛調立毛繊
維とほぼ同じ長さのわた毛調立毛繊維からなるパイル布
帛を製造する。このようなパイル布帛は従来技術の二重
パイル編織物により製造することができる。パイル糸の
製造において紡績糸を用いる場合、さし毛調立毛用の有
限長繊維の繊維長とわた毛調立毛用の有限長繊維の繊維
長とは、後者を短くする、あるいは長くするなどの差異
を設けてもよい。また繊維長は二重パイル編織物のカッ
ト長の2倍以上が好ましい。さし毛調立毛およびわた毛
調立毛の立毛長さ分布は、紡績糸使いの場合図3に示し
たステープルダイアグラムの通りであり、ほぼ0近くか
らパイルカット長までの分布状態を示すものである。連
続フィラメント糸使いの場合、図4に示した通りほぼ全
立毛繊維がパイルカット長の分布状態を示すものであ
る。
【0032】そしてさらに、該パイル布帛の立毛に対し
て、特に増粘された粘度が150〜700ポイズである
アルカリ処理剤(以下、増粘アルカリ処理剤という)を
コーターで付与し、さらに乾熱処理または湿熱処理に該
布帛を供することによってさし毛調立毛およびわた毛調
立毛を減量加工させると、図1に示したように、さし毛
調立毛およびわた毛調立毛の地組織からの立毛長さ分布
において最長立毛繊維の長さを1とした場合、0.8〜
1の長さを有する立毛繊維が繊維本数の60%以上を有
しているとともに、該部分において先端が減量加工され
ているパイル布帛が得られる。さし毛調立毛およびわた
毛調立毛の地組織からの立毛長さ分布は図3又は図4に
示すように均一な立毛を有する部分が60%以上の分布
となっている。
【0033】本発明の方法において特に重要なことは、
増粘アルカリ処理剤および該処理剤の付与方法である。
アルカリ処理剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カ
リウム、炭酸ソーダなどのアルカリ金属化合物を使用で
きる。
【0034】立毛を構成する繊維がポリエステル系繊維
であるから、薬剤のコスト、取扱い性、排水処理の容易
さなどの点から、特に水酸化ナトリウムが好ましく用い
られる。これらの加水分解剤のアルカリ使用濃度は15
〜45%の範囲内とするものである。濃度が15%に満
たない場合には繊維の減量を効率良く行なうことができ
ず、一方、濃度が45%を越える場合には減量速度が早
すぎて調節が困難となる。
【0035】なお、用いられている合成繊維の種類、太
さ、断面形状、処理方法などに応じて上記範囲内で最適
濃度を決定すればよい。
【0036】また、加水分解促進剤を併用することも好
ましく、かかる促進剤としては、セチルトリメチルアン
モニウムクロライド、セチルトリエチルクロライド、ラ
ウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの
第4アンモニウム塩などを使用することができる。
【0037】本発明でいう増粘剤とは、処理液に付与す
ることによって該液の粘度が添加前に比べて粘性が生じ
る物質をいう。この粘性の程度は、通常、粘度としてポ
イズ単位で表示されるものである。このような粘性を表
わす増粘剤とは、一般に、繊維加工業界で、糊料と呼ば
れるものを使用できるが、これ以外にも水溶性のポリマ
ーなども使用できる。
【0038】該増粘剤としては、上述した加水分解剤に
分解または/および凝固しないものであって、安価で減
量加工後、繊維束から容易に除去できるものを用いるこ
とが望ましい。このような性状を示すものとしては、澱
粉、米ぬか、トラガントゴム、アルギン酸ソーダ、ロー
カストビーンガム、メチルセルロース、カルボキシメチ
ルセルロース、ナフカクリスタルガム、ポリビニルアル
コール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸ソーダなどの
天然糊料、半合成糊料、合成糊料と呼ばれるものや水溶
性のポリマーなどが挙げられる。
【0039】処理液中に増粘剤を付与しておくことによ
る本発明方法の効果は、立毛布帛立毛面に図4の6で示
した如く均一な増粘アルカリ処理剤層を保持させる点に
ある。したがって、処理剤粘度として150〜700ポ
イズの範囲とするものであり、好ましくは200〜50
0ポイズの範囲である。150ポイズ以下の粘度では布
帛を水平にて加熱処理した場合、熱によるアルカリ処理
剤の急激な粘度低下が起り、立毛密度の粗な所へアルカ
リ処理剤が落ち込んでしまい、また、立毛密度が密な所
へは浸透が不足し、結局、不均一な加工を行なわしめ立
毛繊維のスポット状不ぞろいによる見栄えの悪いものが
得られる。一方、粘度が700ポイズをこえる場合には
均一塗布が困難となる。
【0040】なお、本発明でいう粘度は、処理液を調合
したときの粘度であり、後述する処理条件時の粘度を示
すものではない。また、本発明でいう粘度値は、いずれ
も20±5℃においてB型粘度計を用い、測定条件とし
てロータNo. 4を使用し、12 rpmにて測定される値で
ある。
【0041】増粘アルカリ処理剤の付与方法として、フ
ラットスクリーン、ロータリースクリーン、ナイフコー
ター、リバースロールコーター、カーテンコーター等公
知の高粘度用コーティングマシンのいずれかを使用すれ
ばよい。付与量として目標の地組織から立毛調の長さに
応じて変更すればよい。おおむね50〜500g/m2
とするのが好ましい。
【0042】増粘アルカリ剤を付与した立毛繊維の先端
部を溶解、分解除去させる過熱処理方法としては、特
に、限定されるものではないが、乾熱、常圧湿熱、高圧
湿熱、過熱湿熱、高周波、マイクロ波等のいずれかを使
用あるいはそれらを併用すればよい。立毛繊維の溶解、
分解が終了したら、湯水洗と乾燥をする。このようにし
て得られた立毛布帛は、立毛繊維の先端部が減量加工さ
れ図6〜図9の状態を有している。
【0043】本発明の方法で得られるパイル布帛は図1
および図3、図4のごとく立毛繊維が最長繊維の長さを
1とした場合、0.8〜1の長さを有する立毛繊維が立
毛繊維本数の60%以上を有する均一な長さの部分があ
るため、天然シールやチンチラに非常に近似した構造と
なっている。
【0044】従来法では、カットのみで減量加工なしの
ため立毛繊維の先端部は図5のくぎの頭状になっている
ため、表面タッチがザラザラとなり見ばえも光反射によ
る白ボケ状となり、わた毛調立毛どうしやわた毛調立毛
とさし毛調立毛どうしが寄り合いもつれ合いやすいもの
であって、該もつれが、外観の美しさや立毛のなびき、
たなびき性を著しく悪化させて、製品品位、品質を悪化
させる一因となるものである。
【0045】これに対して本発明では、従来法と同じに
わた毛調立毛としてケン縮をもつ繊維を用いたとして
も、増粘アルカリ処理剤により、さし毛調立毛およびわ
た毛調立毛が立毛繊維の先端部から立毛長の15%以下
の範囲で減量加工されるため、図6〜図9に示す様にし
っかりした形態となっている。15%以上の範囲で減量
加工されれば先端部が細くなり過ぎたり、また偏平糸の
場合ペラペラ状となり折れ曲がり白ボケ状の見栄えの悪
いものとなる。本発明品はさし毛調立毛層と若干短くな
ったわた毛調立毛層が得られることから、立毛部のもつ
れが少なく、外観の美しさや立毛のなびき、たなびき性
を著しく向上させ、さらに加えて特に濃色系のものであ
るときにわた毛調立毛がさし毛調立毛層より若干内層で
あるため立毛が短く1本1本解繊されているため、視覚
上白っぽく見えるなどという欠点がなく、一段と濃く見
えることになる。そして、これらの効果により立毛の色
の深み感、それに基づく立毛層の高級感や立体感、落ち
ついた光沢感などの外観・色沢特性が非常に良好な高級
感に富んだものとなるのである。
【0046】本発明の特殊な立毛布帛の製造方法は、立
毛布の全面領域に施すことが基本であるが、それのみに
とらわれず、原料立毛布の一部領域にのみ本発明の方法
を施すようにしてもよい。たとえば、タテ方向のストラ
イプ状や斑模様状やランダム模様状になるように一部領
域にのみ施してもよい。
【0047】なおまた、この発明は、毛皮調立毛布帛の
みならず、ベロア、ベルベット、モケット、毛布、カー
ペット等のいわゆる立毛布帛に有効に応用できる。
【0048】
【実施例】以下、実施例に基づいて、より具体的に本発
明の立毛布帛及びその製造方法について説明をする。
【0049】(実施例1)地糸のタテ、ヨコにポリエス
テル・ステープル繊維1.2d×51mmからなる紡績糸
(60s/2)を使用し、さし毛調立毛用有限長繊維に
ポリブチレンテレフタレート・ステープル10d×76
mmの繊維40重量%と、わた毛調立毛用有限長繊維にポ
リエチレンテレフタレート・ケン縮ステープル2d×7
6mm、60重量%とからなる混紡糸15sをパイル糸と
して用いて、二重パイル織機にてタテパイル糸をナイフ
で切りながらタテパイル織物を2枚織成した。紡績性、
製織性ともに良好であった。
【0050】地織密度はタテ×ヨコ:96本×43本/
2.54cm、パイル密度はタテ96本/2.54cmで1
6越ファーストパイルである。カット高さ(長さ)は1
4mmに設定した。得られた生機をアクリル樹脂30%水
溶液でバッキングして乾燥し、その後、レイシング機で
地組織から離脱するさし毛調の繊維、わた毛調の繊維の
除去と毛さばきをした。次に、シャーリングマシンにて
一定の長さの13mmまで苅り込み均一繊維長とした。次
に、水酸化ナトリウム35%、澱粉系増粘剤4%、第4
アンモニウム系分解促進剤2%を含む水溶性アルカリ処
理剤を作成した。この処理剤の粘度は、B型粘度計で3
00ポイズ(20℃)であった。この処理剤を用い、リ
バースロールコーターで250g/m2 の付着量となる
ように立毛面にコーティングを行ない、その後、常圧湿
熱処理装置で水平に原反を置き、100℃×8分間のス
チーミングを施し、湯水洗、酸洗い乾燥した。
【0051】得られたパイル布帛は、立毛繊維の先端が
立毛長の3〜10%以下の範囲で減量加工され、地組織
からの立毛長さがさし毛調立毛繊維が12mmの均一長さ
の部分を有し、わた毛調立毛繊維が約11mmの均一長の
部分を有するもので図3に示した立毛分布を示し、減量
加工されている立毛繊維は全立毛繊維の80%で、立毛
繊維の減量は60g/m2 であった。最長立毛繊維の長
さを1とした場合、0.8〜1の長さを有する繊維は全
立毛繊維本数の85%であった。
【0052】次に、液流染色機にて染色後、仕上げ剤付
与し、レイジィング機で立毛の毛さばきを実施した。
【0053】得られたものは、図1に示されるような天
然毛皮によく似た形態を有し、外観、柔軟な触感、光沢
や色の深み感および毛のそよぎ性、逆なで回復性、立毛
層の腰、ボリューム感などにおいて、総合的にシールに
極めてよく優れた高級毛皮調パイル織物であった。
【0054】さらに、この毛皮調パイル織物を、抗ピル
試験器を用いて強制立毛もつれ試験に供してみたとこ
ろ、立毛繊維どうしのもつれが少ない好ましい製品特性
を有しているものであることが確認できた。
【0055】(比較例)実施例1で用いたパイル布帛を
用い、増粘アルカリ処理剤による減量加工のみを行なわ
ず、その他の工程はほぼ同一条件で実施し布帛を得た。
【0056】地組織からの立毛長さがさし毛調、わた毛
調立毛繊維ともにシャーリングマシンにて刈り込まれ1
3mmの均一長さの部分を有し、これは最長立毛繊維の長
さを1とした場合、0.8〜1の長さが全立毛繊維の8
3%であった。
【0057】得られたパイル布帛は実施例1に比較し立
毛繊維の先端部のカット部分が象年アルカリ材による原
料加工を行なっていないためカットしたままのくぎの頭
状となってるため白ボケ状となり見栄えが悪く、表面タ
ッチもザラザラした感じで天然シールにほど遠い物とな
った。また、もつれ試験に供してみたところ、立毛繊維
どうしのもつれが強く悪い結果であった。
【0058】(実施例2)地糸のタテ、ヨコにポリエス
テル・スループル繊維1.2d×51mmからなる紡績糸
(60s/2)を使用し、さし毛調立毛用フィラメント
繊維にポリブチレンテレフタレート120D−48F1
本とわた毛調立毛用フィラメント繊維にポリエチレンテ
レフタレート100D−48F3本のエアー交絡からな
るタスラン加工糸450Dをパイル糸として用いて、二
重パイル織機にてタテパイル糸をナイフで切りながらタ
テパイル織物を2枚織成した。タスラン加工性、製織性
ともに良好であった。
【0059】地密度はタテ×ヨコ:96本×36本/
2.45cm、パイル密度はタテ96本/2.54cmで1
6越ファーストパイルである。カット高さ(長さ)は1
3mmに設定した。得られた生機をアクリル樹脂30%水
溶液でバッキングして乾燥し、その後、レイジング機で
毛さばきをした。次に、シャーリングマシンにて一定長
さの12mmまで苅り込み均一繊維長とした。次に実施例
1と同じ条件でアルカリ増粘剤による減量加工を実施し
た。得られたパイル布帛は、立毛繊維の先端が立毛長の
3〜12%の範囲で減量加工され、地組織からの立毛長
さが図4に示した約11mmの立毛分布を示した。減量加
工されている立毛繊維は全立毛繊維の90%で、最長立
毛繊維の長さを1とした場合、0.8〜1の長さを有す
る繊維は全立毛繊維本数の99%であった。
【0060】次に、液流染色機にて染色後、仕上げ剤付
与し、レイジング機で立毛のさばきを実施した。得られ
たものは、図2に示されるような天然毛皮によく似た形
態を有し、外観、柔軟な触感、光沢や色の深み感および
毛のそよぎ性、逆なで回復性、立毛層の腰、ボリューム
感などにおいて、総合的にシールに極めてよく似た優れ
た高級毛皮調パイル織物であった。
【0061】(実施例3)パイル糸が100D−48F
ポリエステルフィラメント糸、地糸が75D−36Fの
ポリエステルフィラメント糸からなる立毛シングル編を
編成した。
【0062】次にシャーリングマシンにてパイル長さを
1.3mmにカットし針布起毛を行ない生機熱セットを実
施した。次に水酸化ナトリウム20%、澱粉系増粘剤5
%、第4アンモニウム系分解促進剤2%を含む水溶性ア
ルカリ処理剤を作成した。この処理剤の粘度は、B型粘
度計で230ポイズ(20℃)であった。この処理剤を
用いリバースロールコーターで130g/m2 の付着量
となるように立毛面にコーティングを行ない、その後常
圧湿熱処理装置で100℃×5分間のスチーミングを施
し、水洗、酸洗、乾燥した。次に液流染色機にて黒色に
染色後、レイジング機で立毛の毛さばきを実施した。得
られたパイル布帛は、立毛繊維の先端が立毛長の3〜1
3%の範囲で減量加工され、減量加工されている立毛繊
維は全立毛繊維の90%で、最長立毛繊維の長さを1と
した場合、0.8〜1の長さを有する繊維は全立毛繊維
本数の95%であった。
【0063】得られたものは図4に示されるような立毛
長さ分布を有し、柔軟な触感、白ボケのない光沢および
色の深み感があり、優れた高級ベロア調布帛であった。
【0064】
【発明の効果】本発明によれば、立毛布帛の長さ分布お
よび立毛尖端部のアルカリによる減量加工範囲を制限す
ることにより、従来不可能に近いと考えられていた毛皮
の最高級品であるシールやチンチラに非常に近似した人
工毛皮を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の立毛布帛の立毛状態を示す概略モデル
側面図。
【図2】図1に示したさし毛調立毛、わた毛調立毛を根
本部近くまでカットした1株のパイルを上面から観察し
た外観状態を示す概要図。
【図3】立毛繊維に紡績糸を用いた場合のパイル布帛に
おける立毛長さ分布を示す図。
【図4】立毛繊維に連続フィラメント糸を用いた場合の
パイル布帛における立毛長さ分布を示す図。
【図5】減量加工前の立毛繊維の先端部の概略モデル
図。
【図6】減量加工後の立毛繊維の先端部の概略モデル
図。
【図7】減量加工後の立毛繊維の先端部の概略モデル
図。
【図8】減量加工後の立毛繊維の先端部の概略モデル
図。
【図9】減量加工後の立毛繊維の先端部の概略モデル
図。
【図10】本発明の立毛布帛の製造方法を説明する概略
モデル側面図。
【符号の説明】
1:パイル布帛(立毛布帛) 2:さし毛調立毛 3:わた毛調立毛 4:地組織 5:バッキング層 6:増粘アルカリ処理剤層

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリエステル系繊維からなる立毛を有する
    立毛布帛において、最長立毛繊維の長さを1とした場
    合、0.8〜1の長さを有する繊維が立毛繊維本数の6
    0%以上を有し、かつ立毛繊維本数の50%以上が立毛
    繊維の先端部から立毛長の15%以下の範囲で減量加工
    されていることを特徴とする立毛布帛。
  2. 【請求項2】カットパイル立毛布帛の立毛表面部に粘度
    が150〜700ポイズのアルカリ処理剤を付与し、し
    かる後、加熱処理することを特徴とする立毛布帛の製造
    方法。
  3. 【請求項3】アルカリ処理剤が濃度15〜45%の水酸
    化ナトリウムを含む水溶液であることを特徴とする請求
    項2記載の立毛布帛の製造方法。
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