JPH07316978A - 立毛布帛の製造方法 - Google Patents

立毛布帛の製造方法

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JPH07316978A
JPH07316978A JP6128041A JP12804194A JPH07316978A JP H07316978 A JPH07316978 A JP H07316978A JP 6128041 A JP6128041 A JP 6128041A JP 12804194 A JP12804194 A JP 12804194A JP H07316978 A JPH07316978 A JP H07316978A
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hair
fabric
fiber
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JP6128041A
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Inventor
Hidenobu Honda
秀信 本田
Masahito Shimada
雅人 島田
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Toray Industries Inc
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 立毛構造や触感が天然の高級毛皮に近似して
いて、また、従来の類似のものや天然のものなどに比べ
ても立毛層の外観が良好で、また従来の類似品に比較し
て非常に軽いものを得ることができる立毛布帛の製造方
法を提供する。 【構成】 ポリエステル系繊維よりなる先端が尖鋭化さ
れたさし毛調立毛用有限長繊維と、該さし毛調繊維より
も長くかつケン縮を有するわた毛調立毛用有限長繊維を
混紡してなるパイル糸を用いてパイル布帛物を形成後、
剪毛機でさし毛調立毛繊維を切断することなく、一定長
までわた毛調立毛繊維を刈り込み、次に立毛布帛の立毛
表面部にアルカリ処理剤を付与し、しかる後、熱処理に
供することにより該立毛繊維をほぼ均一長に短かくせし
めるとともに該立毛繊維の先端部の尖鋭化処理を行な
う、立毛布帛の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、特殊な立毛布帛の製
造方法に関する。さらに詳しくは、立毛構造や触感が天
然の高級毛皮に非常に近似していて、また、特に、従来
の類似のものや天然のものなどに比べて、立毛層の外観
が良好であって、かつ布帛としては従来の類似のものに
比較して軽いものを得ることができる新規な特殊立毛布
帛の製造方法に関するものである。
【0002】この発明による立毛布帛は、特に毛皮調に
限定されるものではないが、毛皮によく近似しているこ
とから、コート、ジャケット類などの高級衣料やカーシ
ート地として用いて最適なものである。
【0003】
【従来の技術】ミンク、キツネなどの天然の高級毛皮
は、そのすばらしい触感、光沢および立毛構造などのた
めに人工的にそれらを作ろうとしても近寄り難いものの
一つである。そのため、天然毛皮は依然として高価なも
のであり、ステータスシンボルとして、あるいは超高級
ファッション衣料用素材としてゆるぎない地位にある。
【0004】一方、このような天然毛皮に対し、最近は
とみに動物愛護や自然保護といった運動の機運が高ま
り、天然毛皮により近い人工毛皮の開発が期待されてい
る。
【0005】以前から、単なる毛布様としか言いようの
ないものなどをはじめとして「天然毛皮調」をうたい文
句にした立毛布帛は数多く提案されてきている。近年
も、上述の動物愛護運動の高まりなどとともに、より高
級な天然毛皮調をねらった提案が数多く見られる。
【0006】たとえば、人造の毛皮の製造に関して、特
開昭49−85361号公報や実公昭48−15816
号公報に記載の提案等が知られているが、いずれも総合
的には満足のいくものでないのが現状である。
【0007】また、米国特許第2737702号明細書
には、スライバー・ニッティングにおいて、両先端が尖
鋭化されたさし毛繊維を用いた人工毛皮の製造に関する
発明が記載されているが、このものは、さし毛立毛とわ
た毛立毛のなじみが悪い上に、それらのさし毛とわた毛
同士あるいはわた毛同士とがもつれ合うという欠点、さ
らに、それらの毛が倒れやすく立毛層に腰がないなどの
欠点があった。
【0008】また、特開昭57−61741号公報に
は、特殊な毛皮調立毛布帛とその製造方法に関する技術
が記載されている。この技術によるものは、わた毛立毛
の立毛の長さおよび均一長分布の点では配慮されておら
ず、天然ミンクと同様の2層構造のはっきりとしたもの
が得られず、かつ見ばえも悪く、また、立毛部分が筆先
状集合体となっているため立毛がもつれ合いやすいもの
であった。さらに、カットパイル布帛化により切断され
たパイル繊維先端部はブツ切り状となり、表面タッチが
ザラザラとなり見ばえも白ボケ状になるという欠点があ
った。また、紡績性からみた場合、わた毛のステープル
長さは短い方に限界があり、所望の立毛長さを得るのが
困難であって、いまだ改良を望まれる点も多くあった。
【0009】また、特開昭57−95342号公報に
は、多重パイル布帛のパイル糸構成繊維の滑脱を生ぜし
めることにより多重パイル布帛を分離せしめる方法が記
載されている。この技術によるものは、上記特開昭57
−61741号公報に記載の方法を更に改良した有効な
ものであるが、同特開昭57−61741号公報に記載
の技術と同様に、2層構造のはっきりとしたものが得ら
れず、かつ見ばえも悪く、また、立毛部分が筆先状集合
体となっているため立毛がもつれやすいという問題があ
った。
【0010】また、特公昭63−64536号公報に
は、わた毛調立毛が地組織からの立毛長さにおいて均一
長の部分を有している立毛繊維長分布を呈しているパイ
ル布帛が記載されている。この技術は上述の特開昭57
−61741号公報に記載の方法を更に改良した有効な
ものであるが、該特開昭57−61741号公報に記載
の技術と同様にカットパイル布帛化により分離させる方
式のため、わた毛繊維の先端切断部がくぎの頭状となる
「ブツ切り状態」となり、該状態では、先端部同士がひ
っかかり合って立毛がもつれ合いやすく、また、表面タ
ッチ、見ばえともに満足のいくものが得られないという
問題点が存在するものであった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、前
述したような点に鑑み、立毛構造や触感が天然の高級毛
皮に非常に近似していて、また、特に従来の類似のもの
や天然のものなどに比べても立毛層の外観が特に良好で
ハイレベルのものであるとともに、布帛としては、従
来、立毛層外観等の見かけ上の良さを追求すると、どう
しても立毛数を多くしたりしなければならず、そうする
と立毛布帛という構造上非常に重いものにならざるを得
ないという問題があったのを解消して、従来の類似品に
比較して非常に軽いものを得ることもできるという、新
規な特殊立毛布帛の製造方法を提供することにある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上記した目的を達成す
るこの発明の特殊な立毛布帛の製造方法は、以下の如き
構成からなる。すなわち、本発明の立毛布帛の製造方法
は、パイル布帛の製造方法において、ポリエステル系繊
維からなる相対的に太い繊維でかつ平均立毛長が相対的
に短く、かつ先端部が尖鋭化しているさし毛調繊維と、
ポリエステル系繊維からなる相対的に細い繊維でかつ平
均立毛長が相対的に長く、かつケン縮を有しているわた
毛調繊維からなるパイル布帛を形成した後、さし毛調繊
維を切断することなくわた毛調繊維を一定長さまで刈り
込み、しかる後、立毛表面部にアルカリ処理剤を付与し
た後、熱処理を施すことによりわた毛調繊維を短くする
とともに該わた毛調繊維の先端部の尖鋭化処理を行なう
ことを特徴とする方法からなる。
【0013】本発明において用いられるポリエステル系
繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチ
レンテレフタレートやこれらを主成分とした共重合体が
挙げられる。
【0014】本発明において、立毛布帛としては、基布
が編織物であるパイル編織物、あるいは基布が不織布等
であるパイル布のパイル(立毛)繊維を有するパイル布
や起毛布等を用いることができる。
【0015】一般的には、パイル編織物を用いるのが製
造のしやすさなどの点で良く、以下の説明ではパイル編
織物を使用する場合を主体にして説明する。
【0016】ここでパイル編織物とは、さし毛調立毛と
わた毛調立毛の複数立毛からなるパイル編織物のことで
ある。たとえば、さし毛調立毛用の繊維としては、3デ
ニール以上100デニール以下で耐アルカリ性の高いポ
リエステル系繊維を用いるのがよく、また、わた毛調立
毛用の繊維としては5デニール以下で耐アルカリ性の低
いポリエステル系繊維を用いるのがよく、特に、さし毛
調立毛用有限長繊維としては、ポリブチレンテレフタレ
ートや、またはこれらを主成分とした共重合体よりなる
ポリエステル系繊維、わた毛調立毛用有限長繊維として
はポリエチレンテレフタレートや、またはこれらを主成
分とした共重合体よりなるポリエステル系繊維を用いる
ことが好ましい。
【0017】本発明の方法は、そのようなポリエステル
系繊維よりなる先端が尖鋭化されたさし毛調立毛用有限
長繊維と、該さし毛調立毛用繊維よりも長く、かつ該さ
し毛調立毛用有限長繊維を構成するポリエステル系繊維
よりはアルカリ処理により侵されやすいポリエステル系
繊維よりなるわた毛調立毛用有限長繊維を混紡してなる
パイル糸を用いて、まず、パイル編織物を製編織してパ
イル編織物を得た後、該編織物のパイル裏面側にバッキ
ング加工を施し、さらに適宜にパイル面に対して毛さば
き処理を施して遊び毛などを適宜に除去する。
【0018】次に、剪毛機でさし毛調立毛繊維を切断す
ることなく、わた毛調繊維を一定長まで刈り込む。刈り
込み長さは、さし毛調立毛繊維より1mm以内のわずか
に長い程度まで数回に分けて均一に刈り込むことが好ま
しい。さらに適宜ポリシャー機でわた毛のケン縮を適度
に伸ばす。剪毛工程とポリシャー工程はどちらが先にな
っても良く、また数回組み合わせて加工する事もでき
る。紡績性から見た場合ケン縮数が多い方が良いが、製
品上りではケン縮数が多いと光の乱反射による白びかり
でモヤモヤした見栄えの悪い物が得られるので、紡績工
程以降の布帛形成後ポリシャー機でわた毛のケン縮を伸
ばすことが好ましい。
【0019】そして、さらに、該パイル編織物の立毛表
面部に特定粘度の増粘アルカリ処理剤を付与した後、ニ
ップロールにて加圧することで立毛繊維密度が上がると
同時に増粘アルカリ処理剤が均一な深さまで浸透する。
ニップのクリアランスの大小と該処理剤の付与量、粘度
により該処理剤の浸透深さをコントロールする。その
後、乾熱処理または湿熱処理に供することによって、該
わた毛調立毛を最大さし毛調立毛長さに対して一定レベ
ル以下に短くせしめるとともに、該わた毛調立毛の先端
部を尖鋭化せしめる。さし毛とわた毛の立毛長差を少な
くし、シール調布帛を製造するときは、ニップロールに
て加圧しなくても良い。増粘アルカリ処理剤としては、
経済的、作用効果の面から水酸化ナトリウムを用いるの
がよく、増粘剤としては一般に糊剤と呼ばれるものを各
種使用できるが、これ以外にも水溶性のポリマーなども
使用できる。
【0020】以下、図面等に基づき更に詳しく本発明に
ついて説明する。本発明にかかる立毛布帛の構造例をモ
デル図により説明すると、図1の(a)は、本発明によ
り得られるさし毛調立毛およびわた毛調立毛を有するパ
イル布帛1の構造例を示した概略モデル側面図であり、
さし毛調立毛2は、ほぼ原料繊維長(さし毛調立毛用有
限長繊維(原料繊維)の繊維長)の長さを最大とし、そ
れ以下の立毛長さ分布を呈してさし毛調立毛を形成し、
わた毛調立毛3は地組織4からの立毛長さがほぼ均一長
の部分を有している立毛長さ分布を呈している。全体的
にみてさし毛層、わた毛層の明瞭な2層構造である本発
明の立毛布帛1を呈している。
【0021】地組織4には、ポリウレタン、ポリアクリ
ルなどの接着性重合体が含浸されているか、バッキング
層5が形成せしめられているか、あるいはそれら両者が
形成されていてもよく、バッキングをせしめる場合に
は、パイル立毛の固定、さらに疑革化など所望の目的に
応じて適切なバッキングを行なえばよい。連続フィラメ
ント糸をパイル糸に使用したパイル布では、場合によっ
ては、特にバッキングを省略することが可能な場合もあ
る。
【0022】個々のパイル立毛根元は、その根元部横断
面構造においてさし毛立毛をなす繊維とわた毛立毛をな
す繊維とが複数本混在している混紡糸構造、すなわち、
複数本の立毛繊維が混紡糸状に集団で寄り集まって1つ
のパイル株を構成しているパイル根株構造を有してい
て、図1の(b)は、図1の(a)に示したさし毛調立
毛2、わた毛調立毛3を根元部近くまでカットした1株
にパイルを上面から観察した外観状態を示す概要図であ
り、1株のパイルが多数本のわた毛調立毛3と比較的少
数本のさし毛調立毛2から形成されている混紡糸構造の
モデルを示したものである。
【0023】このように、本発明のかかる例のパイル布
帛では、紡績糸によりパイルが形成されたものであるこ
とから、個々のパイル根元部では、さし毛立毛とわた毛
立毛とが、非常にうまくこなれ良くミックスされて混在
している糸束構造になっている。このようなパイル根元
構造を有することにより、後述するように、さし毛・わ
た毛調の両立毛のなじみの良さがもたらされる。
【0024】また、さし毛調立毛をなす原料繊維は、も
ともと両端の尖鋭化された有限長繊維である。わた毛立
毛をなす繊維はケン縮を有していて、粘度が特に100
〜500ポイズであるようにされた増粘アルカリ処理剤
により、立毛長さがより短くされるとともに先端が尖鋭
化されてなる有限長繊維であり、かつ、それら両繊維
が、両端側を立毛させた状態と、一方端側を立毛させ他
端側は実質的に基布側に埋もれた状態の2種の状態を呈
して立毛されている。このような構造であることから、
全てのさし毛調立毛先端部が尖鋭化されたものからなる
さし毛調立毛と、ケン縮を有しているとともに先端部が
尖鋭化加工されたものからなるわた毛調立毛で覆われて
いる構造となるのである。ここで、もともと両端の尖鋭
化もしくは尖鋭化加工されたさし毛調立毛用の有限長繊
維とは、混紡糸を製造する際の混紡原綿の状態下にある
とき、既に両端が尖鋭化もしくは尖鋭化加工を施されて
なる有限長繊維であることをいう。
【0025】次に、本発明における好ましい製造方法を
説明する。まず、図2の(a)に示すように、両端部の
尖鋭化されたさし毛調立毛繊維2と、該さし毛調繊維よ
りも長いわた毛調非先端尖鋭化繊維3からなるパイル布
帛を製造する。このようなパイル布帛は、前述した特開
昭57−61741号公報や特開昭57−95342号
公報にて記載されている従来技術により製造することが
できる。この図2の(a)に示した状態におけるわた毛
調立毛3の立毛長さ分布は、図4に示した通りであり、
ほぼ0近くからわた毛調立毛用の有限長繊維の繊維長近
くまでの分布状態を示すものである。わた毛調立毛用の
有限長繊維の繊維長を、さし毛調立毛用の有限長繊維の
繊維長よりも長くする事により、紡績性が非常に良いも
のとなり、紡績のスピードアップ等が図れる。例えば、
さし毛調立毛用の有限長繊維の繊維長を15〜20mm
などの20mm未満、わた毛調立毛用の有限長繊維の繊
維長を20〜30mm等に設定すれば、紡績性は非常に
良好なものである。
【0026】次に、剪毛機で先端尖鋭化されたさし毛調
繊維2を切断することなく、わた毛調繊維3を一定長さ
まで刈り込むと、図5に示した通り、わた毛調立長さが
均一長の部分ができる。これは刈り込む前は図2の
(a)および図4に示した筆先状の立毛束であったの
が、刈り込む事により図5に示したように、わた毛調立
毛の地組織からの立毛長さがほぼ均一長の部分を有して
いて、図2の(b)に示した立毛構造のパイル布帛が得
られる。これは次工程のアルカリ処理でわた毛調立毛を
溶解し、短毛で均一な立毛長にするために前処理として
より良い方法である。
【0027】そしてさらに、図2の(c)に示すよう
に、該パイル布帛の立毛に対して、特に増粘された粘度
が100〜500ポイズであるアルカリ処理剤(以下、
増粘アルカリ処理剤という)層6をコーター7(図2
(f))で付与し、一定クリアランスに調整されたニッ
プロール8で加圧すると、図2の(d)に示したように
一定方向にパイルが倒れて立毛繊維密度が上ると同時に
増粘アルカリ処理剤が均一な深さにまで浸透する。さら
に乾熱処理または湿熱処理に該布帛を供することによっ
てわた毛調立毛を溶解、分解除去させると、図2の
(e)に示したように、該部分において先端が尖鋭化さ
れているわた毛立毛を有してなるパイル布帛が得られ
る。わた毛調立毛の地組織からの立毛長さ分布は、図6
に示すように一部がほぼ均一な立毛長を有する分布とな
っていて、該均一立毛長よりも長いわた毛調立毛は実質
的に存在しない分布となっている。
【0028】なお、上述の加工プロセスにおいて、増粘
アルカリ処理剤の付与と同時にニップロールで加圧する
ようにしてもよい。すなわち、ニップロールの一方を増
粘アルカリ処理剤のコーティングロールと兼用等するよ
うにしても差支えない。
【0029】本発明において特に重要なことは、アルカ
リ処理剤の塗布前に剪毛機でわた毛毛を均一長さまで刈
り込むことである。アルカリ処理剤としては、水酸化ナ
トリウム、水酸化カリウム、炭酸ソーダなどのアルカリ
金属化合物を使用できる。これらの処理剤(加水分解
剤)の使用濃度は、特に限定されず、用いられている合
成繊維の種類、太さ、断面形状、処理方法などに応じて
適宜選定されればよいものである。
【0030】ただし、あまり高濃度にすれば、たとえ
ば、本来細くて処理されやすい素材で構成したわた毛繊
維だけを処理したいというような場合でも、さし毛繊維
までもが加水分解を受け、元の形状をなくすことがある
ので最適濃度の選択が必要である。また、加水分解促進
剤を併用することが望ましく、かかる促進剤としては、
セチルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリ
エチルクロライド、ウラリルジメチルベンジルアンモニ
ウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩などを使用
することができる。
【0031】本発明でいう増粘剤とは、処理液に付与す
ることによって該液の粘度が添加前に比べて粘性が高ま
る物資をいう。この粘性の程度は、通常、粘度としてポ
イズ単位で表示されるものである。このような粘性を表
す増粘剤とは、一般に、繊維加工業界で「糊料」と呼ば
れるものを使用できるが、これ以外にも水溶性のポリマ
ーなども使用できる。
【0032】この増粘剤としては、上述した加水分解剤
に分解または/および凝固しないものであって、安価で
尖鋭加工後、繊維束から容易に除去できるものを用いる
ことが望ましい。このような性状を示すものとしては、
澱粉、米ぬか、トラガントゴム、アルギン酸ソーダ、ロ
ーカストビーンガム、メチルセルロース、カルボキシメ
チルセルロース、ナフカクリスタルガム、ポリビニルア
ルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸ソーダなど
の天然糊料、半合成糊料、合成糊料と呼ばれるものや水
溶性のポリマーなどが挙げられる。
【0033】処理液中に増粘剤を付与しておくことによ
る本発明方法の効果は、立毛布帛立毛面に図2の(c)
に示した如く均一な増粘アルカリ処理剤層6を保持させ
る点にある。したがって、処理剤粘度として100ポイ
ズ以上は必要であり、好ましくは150ポイズ以上であ
る。
【0034】なお、本発明でいう粘度は、処理液を調合
したときの粘度であり、後述する処理条件時の粘度を示
すものではない。また、本発明でいう粘度値は、いずれ
も20±5℃においてB型粘度計を用い、測定条件とし
てローターNO.4を使用し、12rpmにて測定され
る値である。
【0035】増粘アルカリ処理剤の付与方法として、フ
ラットスクリーン、ロータリースクリーン、ナイフコー
ター、リバースロールコーター、カーテンコーター等公
知の高粘度用コーティングマシンのいずれかを使用すれ
ばよい。付与量として目標の地組織からのわた毛立毛調
の長さに応じて変更すればよい。おおむね100〜10
00g/m2 である。
【0036】増粘アルカリ処理剤を付与したわた毛調立
毛の先端部を溶解、分解除去させる加熱処理方法として
は、特に限定されるものではないが、乾熱、常圧湿熱、
高圧湿熱、過熱湿熱、高周波、マイクロ波等のいずれか
を使用、あるいはそれらを併用すればよい。わた毛繊維
の溶解、分解が終了したら、湯水洗と乾燥をする。この
ようにして得られた立毛布帛は、わた毛調繊維が短毛化
され先端部が尖鋭化され図2の(e)および図6に示す
ように地組織からの立毛長さが均一長の部分を有してい
る。
【0037】前述した特開昭57−61741号公報や
特開昭57−95342号公報にて記載されている従来
技術により得られる従来の毛皮調パイル布帛10は、通
常、両端部尖鋭化されたさし毛調立毛と、さし毛調立毛
繊維より短い両端部尖鋭化されたわた毛調立毛からなる
パイル布帛であって、図3および図7に示すように、わ
た毛調立毛の地組織の長さがさし毛調立毛と同じく0近
くから有限長繊維の繊維長近くまで分布していて、パイ
ル1株をみた場合、筆先状の繊維集合体となっている。
また、紡績性からみた場合、わた毛調立毛用有限長繊維
のステープル長さは短い方に限界があり、本発明の図2
の(e)および図6に示した如きわた毛立毛長さまで短
くすることが不可能である。
【0038】本発明の方法で得られるパイル布帛は、図
2の(e)および図6の如く、わた毛調立毛が最大さし
毛調立毛長さの70%以下に短毛化され、かつ、先端部
が尖鋭化され、地組織からの立毛長さとして均一部分が
あるため、天然ミンクと同様のはっきりした2層構造か
らなっている。
【0039】従来法では、わた毛調立毛としてケン縮を
もつ繊維を用いるものが知られているが、この場合には
どうしても立毛がケン縮により相互にもつれやすいもの
となり、ましてや、パイル根元部が上述のように混紡糸
構造という非常にコンパクトな集束構造状態になってい
るものであるため、立毛部分が筆先状集合体となってい
るためわた毛調立毛同士やわた毛調立毛とさし毛調立毛
同士が寄合いやすく、その点からも立毛がもつれ合いや
すいものであって、該もつれが、外観の美しさや立毛の
なびき、たなびき性を著しく悪化させて、製品品位、品
質を悪化させる一因となるものである。
【0040】これに対して本発明では、従来法と同様に
わた毛調立毛としてケン縮をもつ繊維を用いたとして
も、剪毛機で先端尖鋭化されたさし毛調繊維を切断する
ことなく、わた毛調繊維を一定長さまで均一に刈り込
み、さらに増粘アルカリ処理剤により、わた毛調立毛が
最大さし毛調立毛長さの70%以下に短毛尖鋭化される
ため、さし毛調立毛層とわた毛調立毛層の二層構造がは
っきりし、さし毛感のあるものが得られることから、立
毛部のもつれが少なく、外観の美しさや立毛のなびき、
たなびき性を著しく向上させ、さらに加えて特に濃色系
のものであるときにわた毛調立毛が長いため全体が白っ
ぽく見えるなどの不都合がなく、特に立毛層ではより内
層であるわた毛調立毛が短く1本1本解繊されているた
め、視覚上白っぽく見えるなどという欠点がなく、一段
と濃く見えることになる。そして、これらの効果により
立毛の内深層での色の深み感や全体としての色の深み
感、それに基づく立毛層の高級感や立体感、落ちついた
光沢感などの外観、色沢特性が非常に良好な高級感に富
んだものとなるのである。
【0041】また、わた毛調立毛層が短いため、目付重
量が従来処方より小さくなり軽い立毛布帛が得られる。
したがって、コートにした場合、軽いため着用感が向上
する。
【0042】本発明の方法において、立毛繊維の先端部
の尖鋭化処理とは、縫針のような完全に尖った尖鋭化を
達成するまでの処理だけでなく、くぎの頭状のような先
端形態や凹凸のある形態をある程度滑らかな形態に変化
させる程度の処理をも含むものである。その程度の形態
の変化であっても、外観、タッチ、風合などの改善効果
は十分に認められるからである。
【0043】本発明の立毛布帛の製造方法における特殊
な処理は、立毛布の全面領域に施すことが基本である
が、それのみにとらわれず、原料立毛布の一部領域にの
み本発明の方法を施すようにしてもよい。たとえば、タ
テ方向のストライプ状や斑模様状やランダム模様状にな
るように一部領域にのみ施してもよい。
【0044】なおまた、この発明は、毛皮調立毛布帛の
みならず、ベルベット、モケット、毛布、カーペット等
のいわゆる立毛布帛に有効に応用できる。
【0045】
【実施例】以下、実施例に基づいて、より具体的に本発
明の特殊な立毛布帛の製造方法について説明する。
【0046】実施例1 地糸のタテ、ヨコにポリエステル・ステープル繊維1.
2d×51mmからなる紡績糸(60s/2)を使用
し、さし毛調立毛用有限長繊維に特開昭54−3892
2号公報記載の方法により両端テーパー化したポリブチ
レンテレフタレート・ステープル18d×20mmの繊
維40重量%と、わた毛調立毛用有限長繊維にポリエチ
レンテレフタレート・ケン縮ステープル2d×24m
m、ケン縮数9山/インチ、60重量%とからなる混紡
糸15sをパイル糸として用いて、タテパイル織物を織
成した。紡績性、製織性ともに良好であった。
【0047】地織密度はタテ×ヨコ:96本×43本/
2.54cm、パイル密度はタテ96本/2.54cm
で16越ファーストパイルである。パイル高さ(長さ)
は22mmに設定した。得られた生機をアクリル樹脂3
0%水溶性でバッキングして乾燥し、その後、レイジン
グ機で地組織から離脱するさし毛調の繊維、わた毛調の
繊維の除去と毛さばきをした。次にシャーリングマシン
にて立毛の順方向、逆方向、順方向、逆方向の計4回通
しを行ない、少しづつ剪毛を行ってパイル高さ16.5
mmまで調整した。剪毛後のさし毛調繊維の尖鋭化され
た先端部を観察した結果、切断されていない事を確認し
た。
【0048】次に、水酸化ナトリウム20%、澱粉系増
粘剤5%、第4級アンモニウム系分解促進剤2%を含む
水溶性アルカリ処理剤を作成した。この処理剤の粘度
は、B型粘度計で230ポイズ(20℃)であった。こ
の処理剤を用い、図2の(f)の装置を用い、リバース
ロールコーター7で500g/m2 の付着量となるよう
に立毛面にコーティングを行ない、その後1.5mmの
クリアランスのニップロール8で加圧し、その後、常圧
湿熱処理装置で水平に原反を置き、100℃×5分間の
スチーミングを施し、湯水洗、酸洗い乾燥した。
【0049】得られたパイル布帛は、わた毛調立毛の先
端が尖鋭化され、地組織からの立毛長さが7mmの均一
長の部分を有するもので、わた毛の減量は180g/m
2 であった。次に液流染色機にて染色後、仕上げ剤付与
し、レイジング機で立毛の毛さばきを実施した。
【0050】得られたものは、図1の(a)、図2の
(e)に示されるような天然毛皮によく似た形態を有
し、外観、柔軟な触感、光沢や色の深み感および毛のそ
よぎ性、逆なで回復性、立毛層の腰、ボリューム感など
において、総合的にミンクに極めてよく似た優れた高級
毛調パイル織物であった。
【0051】さらに、この毛皮調パイル織物を、抗ピル
試験器を用いて強制立毛もつれ試験に供してみたとこ
ろ、わた毛立毛どうし、また、さし毛とわた毛立毛どう
しのもつれが少ない好ましい製品特性を有しているもの
であることが確認できた。
【0052】得られたパイル布帛の目付は、従来法に比
較して約120g/m2 と少ないため、コート縫製品と
して着用してみたところ、従来法によるものよりも軽く
また見ばえの良いものであり、従来法品に対し有意差を
感じた。
【0053】比較例1 実施例1で用いたパイル布帛を用い、シャーリングマシ
ンによる剪毛工程のみを行なわず、その他の工程はほぼ
同一条件で実施し布帛を得た。得られたパイル布帛は、
実施例1に比較しわた毛長さ斑によるモヤモヤ感があ
り、特に淡色に染色された布帛はホコリが付着した様に
見え、見栄えが悪い物であった。
【0054】実施例2 地糸のタテ、ヨコにポリエステル・ステープル繊維1.
2d×51mmからなる紡績糸(40s/2)を使用
し、さし毛調立毛用有限長繊維に特開昭54−3892
2号公報記載の方法により両端テーパー化したポリブチ
レンテレフタレート・ステープル10d×20mmの繊
維40重量%と、わた毛調立毛用有限長繊維にポリエチ
レンテレフタレート・ケン縮ステープル2d×24m
m、ケン縮数13山/インチ、60重量%とからなる混
紡糸10sをパイル糸として用いて、タテパイル織物を
織成した。この紡績、製織に際しては、実施例1のもの
よりも更に紡績性、製織性ともに良好であった。
【0055】地織密度はタテ×ヨコ:60本46本/
2.54cm、パイル密度はタテ60本/2.54cm
で16越ファーストパイルとした。パイル高さ(長さ)
は22mmに設定した。得られた生機に実施例1と同様
のバッキング処理、レイジング処理を施し、実施例1で
用いたと同様のシャーリングマシンによる剪毛を行な
い、次にポリシャー機にて160℃設定で4m/分の速
度で立毛の順方向、逆方向、順方向の計3回通しを行っ
た。その結果、わた毛のケン縮が適度に伸びて光沢感が
増し見栄えが向上した。実施例1で用いたと同様のアル
カリ処理剤を用い、図2の(f)の装置を用い、リバー
スロールコーター7で550g/m2 の付着量となるよ
うに立毛面にコーティングを行ない、その後1.3mm
のクリアランスのニップロール8で加圧し、その後、常
圧湿熱処理装置で水平に原反を置き、100℃×5分間
のスチーミングを施し、湯水洗、酸洗い乾燥した。
【0056】得られたパイル布帛は、わた毛調立毛の先
端が尖鋭化され、地組織からの立毛長さが7mmの均一
長の部分を有するもので、わた毛の減量は175g/m
2 であった。次に、実施例1と同様の染色、仕上げを実
施した。
【0057】得られたものは、図1の(a)、図2の
(e)に示されるような天然毛皮によく似た形態を有
し、実施例1と同様な外観、色の深み感が得られ、ミン
クよりも更に柔軟な触感の高級毛皮調パイル織物であっ
た。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の立毛布帛
の製造方法によるときは、立毛形態を天然毛皮によく似
た形態とすることができ、外観、触感、光沢や色調等に
極めて優れた高級毛皮調パイル織物を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる立毛布帛の構造例を示すもので
あり、図1の(a)は立毛状態を説明するための概略モ
デル側面図であり、(b)は、(a)に示したさし毛調
立毛、わた毛調立毛を根元部近くまでカットした1株の
パイルを上面から観察した外観状態を示す概要図であ
る。
【図2】図2の(a)、(b)、(c)、(d)、
(e)は、本発明の特殊な立毛布帛の製造方法を説明す
る概略モデル側面図であり、(f)は製造装置の概略構
成図である。
【図3】従来方法により得られるパイル布帛の概略モデ
ル側面図である。
【図4】図2の(a)に示した状態のパイル布帛におけ
る立毛長さ分布を示した分布図である。
【図5】図2の(b)に示した状態のパイル布帛におけ
る立毛長さ分布を示した分布図である。
【図6】図2の(e)に示した状態のパイル布帛におけ
る立毛長さ分布を示した分布図である。
【図7】従来方法により得られる図3に示したパイル布
帛における立毛長さ分布を示した分布図である。
【符号の説明】
1 パイル布帛(立毛布帛) 2 さし毛調立毛 3 わた毛調立毛 4 地組織 5 バッキング層 6 増粘アルカリ処理剤層 7 リバースロールコーター 8 ニップロール 10 従来のパイル布帛

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パイル布帛の製造方法において、ポリエ
    ステル系繊維からなる相対的に太い繊維でかつ平均立毛
    長が相対的に短く、かつ先端部が尖鋭化しているさし毛
    調繊維と、ポリエステル系繊維からなる相対的に細い繊
    維でかつ平均立毛長が相対的に長く、かつケン縮を有し
    ているわた毛調繊維からなるパイル布帛を形成した後、
    さし毛調繊維を切断することなくわた毛調繊維を一定長
    さまで刈り込み、しかる後、立毛表面部にアルカリ処理
    剤を付与した後、熱処理を施すことによりわた毛調繊維
    を短くするとともに該わた毛調繊維の先端部の尖鋭化処
    理を行なうことを特徴とする、立毛布帛の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記パイル布帛を形成した後、前記わた
    毛調繊維の刈り込み前に、パイル布帛裏面側にバッキン
    グ加工を施す、請求項1の立毛布帛の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記わた毛調繊維が最大さし毛調繊維立
    毛長さの70%以下に短毛化される、請求項1又は2の
    立毛布帛の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記さし毛調繊維が3デニール以上10
    0デニール以下のポリエステル系繊維であり、前記わた
    毛調繊維が5デニール以下のポリエステル系繊維であ
    る、請求項1ないし3のいずれかに記載の立毛布帛の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 前記わた毛調繊維の耐アルカリ性が前記
    さし毛調繊維のそれよりも低い、請求項1ないし4のい
    ずれかに記載の立毛布帛の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記アルカリ処理剤の粘度が100ポイ
    ズ以上である、請求項1ないし5のいずれかに記載の立
    毛布帛の製造方法。
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