JPH0726886Y2

JPH0726886Y2 - 播種育苗用シート

Info

Publication number: JPH0726886Y2
Application number: JP2143191U
Authority: JP
Inventors: 寛佐久間; 裕司武田; 映章小林; 智美尾藤; 大司杉内; 範正亀澤
Original assignee: Sakata Seed Corp
Current assignee: Sakata Seed Corp
Priority date: 1991-04-03
Filing date: 1991-04-03
Publication date: 1995-06-21
Anticipated expiration: 2005-06-21
Also published as: JPH04117507U

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は圃場において用いる播種
育苗用シートに係り、特に、フィルムマルチ栽培法にお
ける播種育苗に好適な播種育苗用シートに関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、作物の早播き、生育可能期間の延
長、種々の原因による損傷の防止、品質の向上等を目的
として開発されたいわゆるフィルムマルチ栽培法が各地
で採用され、さらに拡大する傾向にある。この栽培法に
おいては、所定間隔で孔を設けたフィルムで圃場を覆
い、この孔の位置に種子を手播きすることにより、ある
いは、播種装置や播種器具を用いて播種を行っている。

【０００３】現在、圃場での播種作業は手播きで行われ
ることが多いが、一部で、機械による播種も行われてい
る。また、播種の省力化をさらに進めて、水溶性テープ
内に種子を封入したいわゆるシードテープを直接圃場に
敷いて発芽、生育させるようにしたものもある。さら
に、近年、予め特定の場所で播種と育苗とを行った後に
苗を定植する栽培法に適した播種育苗用シートも開発さ
れている(特開昭64‐20035号、特開平1‐296909号等)。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】上記のフィルムマルチ
栽培法において、手播きによりあるいは播種装置、播種
器具を用いて播種を行う場合、現時点の状態では、所定
粒数の種子を所定間隔を保って播くことは極めて困難で
ある。そのため、発芽、生育後間引き作業を行う必要が
あり、多くの時間と手間とを要している。

【０００５】また、上記のシードテープの利用も種々試
みられてきているが、テープの補強用に用いられている
繊維によって幼苗が損傷を受けることなどの問題がある
上、テープ内に包含された種子の位置をフィルムの開口
位置に合わせることが極めて難しく、さらに、種子間を
適切な間隔に保持することができないという問題もあ
る。

【０００６】さらに、近年開発された播種育苗用シート
をフィルムマルチ栽培法に適用しようとする試みもなさ
れているが、種子が所望の間隔で、かつ脱落しないよう
に強固に固定されたシートで、しかも種子の発芽を妨げ
ないようなシートは未だ開発されていない。

【０００７】本発明の目的は、上記従来技術の有してい
た幾つかの課題を解決して、フィルムマルチ栽培法に用
いるシートで、所定粒数の種子を所定間隔を保って播
種、かつ強固に固定し得、しかも発芽を妨げることのな
い播種育苗用シートを提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的は、孔を有する
フィルムを用いたフィルムマルチ栽培法に使用する、水
溶性または水分散性の紙またはフィルム状の支持体上に
接着剤により種子を固定してなる播種育苗用シートにお
いて、該シートの大きさが上記有孔フィルムの孔よりも
小さく、かつ上記接着剤が種子の直径または長径よりも
大きくない径の面積で点状に設けられた接着剤であり、
しかも種子が所定の間隔に分散して固定されている構成
からなる播種育苗用シートとすることによって達成する
ことができる。

【０００９】ここで、接着剤の径を搭載する種子の径よ
りも大きくない径とする理由は、種子発根時の根の成長
を妨げないようにするためである。また、支持体上の種
子の位置は、隣接する種子からの生育体が互いに生育を
損なわない距離だけ離れていることが望ましく、これは
接着剤をパターン塗工することによって実現することが
できる。また、接着剤の接着力は通常の取扱いで種子が
脱落しないような接着力とする必要がある。シートの形
状は、種子の発芽という点からはどのような形状のもの
であっても良いが、円形とすることによってシート製造
時および播種作業時の取扱いを容易にすることができ、
さらにシートが互いに絡まる等の問題を防止することが
できる。なお、シートの大きさは、フィルムマルチ栽培
法において、フィルムに設けられている孔の大きさより
も小さく、フィルム内の土壌上に孔を通して簡単に載置
できる大きさであることが必要である。従って、例え
ば、孔の大きさが直径 8cm であればシートの大きさは
直径 5cm 程度とする。

【００１０】上記構成の播種シートとすることによっ
て、従来技術の手作業による播種に代えて、簡単な載置
機あるいはシート載置具を使用して、マルチ栽培用有孔
フィルムの孔の位置に該シートを正しく載置することが
でき、所望間隔を保った播種作業を容易に行うことが可
能となる結果、播種作業の省力化を実現することができ
る。

【００１１】

【作用】支持体として水溶性または水分散性の紙または
シートを用いることによって幼苗の根の伸長を妨げるこ
とがなく、また、これらの支持体は大部分が生物分解性
であるため、土壌の汚染をひき起こすことも少ない。ま
た、支持体上に設ける接着剤の径を搭載種子の径よりも
小さくすることは重要で、これによって種子の発根が接
着剤によって妨害される恐れが減少する。たとえ接着剤
が水溶性であっても、圃場では水分の供給に限界がある
ため、種子の発根を妨げない程度に溶解するには長時間
を必要とするので、接着剤径を種子径よりも小さくする
ことの効果は大きい。また、搭載種子間の間隔を開ける
ことは幼苗の発育や生育途中の間引き作業の軽減という
点で極めて重要である。本考案構成のシートにおいて
は、支持体上に所望の間隔で接着剤を塗工しこれに搭載
すべき種子を振りかけることによって、支持体上の所望
の場所に所望の間隔で種子を付着させることができる。

【００１２】以下、本考案に係る支持体、接着剤、接着
剤の塗工方法、接着剤塗工シートに種子を搭載する方法
等について若干の説明を加える。

【００１３】まず支持体について言えば、支持体として
は水溶性フィルム、水溶紙等が適切である。具体的に
は、水溶性フィルムとしてはポリビニルアルコールを素
材とするもの、水溶紙としては繊維状カルボキシメチル
セルロースのような繊維状水溶性樹脂と木材パルプとの
混合物を素材とするもの、その他の材料を層状に組合せ
たものなどがある。また、支持体は土壌中に残る可能性
が大きいので、生物分解性のものが好適である。

【００１４】接着剤については、種々の接着剤を使用す
ることができる。例えば、ニカワ、デンプン糊などの水
溶性天然接着剤、ポリビニルアルコールのような水溶性
合成接着剤、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル
共重合体など有機溶剤可溶の各種接着剤が使用可能であ
る。これらの接着剤は溶剤が揮散すると固化してしまう
ので、溶剤を含み粘稠な状態である間に種子を付着させ
る必要がある。これに対し、接着剤として粘着剤(常態
で長期間粘性を保持する接着剤)を用いれば、支持体上
に粘着剤を塗工した後望む時期に種子を付着させること
が可能であり、種子を付着させた後に粘着剤を硬化させ
て種子を固定することができる。粘着剤にはゴム系粘着
剤、シリコーン系粘着剤等があり、これらを有機溶剤溶
液あるいは水エマルジョンの状態で塗工し、乾燥して粘
着剤層を形成するか、あるいは、加熱溶融状態で塗工し
て粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤には
熱、紫外線、電子線等により架橋して特性を変えるもの
があり、本考案ではこのような架橋型粘着剤を有効に利
用することができる。特に、紫外線により架橋硬化して
被接触物に対する接着性を増す性質を有する粘着剤が有
効である。なお、本考案シートの場合、支持体上に接着
剤を小径の点状に塗工して使用することが多いため、接
着剤に対しては、一般の接着特性の外に、微細塗工をす
るための好ましい特性として印刷適性が求められる。通
常の接着剤あるいは粘着剤においても印刷適性を有する
ものが多数市販されており、これらを適宜選択して使用
することができる。

【００１５】次に、接着剤の塗工方法について説明す
る。支持体上に所望の大きさ、間隔で接着剤を印刷塗工
する。粘着剤を使用する場合には、溶剤系粘着剤では塗
工後溶剤を乾燥除去して種子搭載に供し、無溶剤系粘着
剤では塗工後そのまま種子搭載に供するか、あるいは、
予備的に熱、紫外線等により粘着剤を部分架橋させた後
種子搭載に供する。塗工接着剤の大きさ(即ち、支持体
上で占める粘着剤の面積)は搭載する種子の大きさに比
して小さくする必要がある。種子の大きさは同一種類の
ものでもバラツキが大きく、著しく小さい種子が含まれ
ていることがある。従って、各品種毎に、大多数の種子
の大きさに比べて接着剤面積が小さくなるように、接着
剤塗工面積を定める必要がある。

【００１６】接着剤塗工シートに種子を搭載する方法に
ついて説明すれば、例えば、ポリビニルアルコールなど
の溶剤系接着剤を使用する場合には、溶剤が蒸発して接
着剤が固化する前に種子を一粒ずつ接着剤上に落してか
ら溶剤を除去する。また、粘着剤を使用する場合には、
種子を振りかけるなどの簡単な操作で粘着剤上に種子を
付着させ、次いで、搭載した種子の脱落を防ぐために、
粘着剤を硬化させて種子を強固に固定する。使用する粘
着剤が紫外線照射により架橋して硬化する性質のもので
ある場合には種子搭載面から、あるいは場合によっては
支持体の裏面から、紫外線を照射して粘着剤を固化させ
る。

【００１７】接着剤の塗工、種子の搭載等は、できる限
り大きな面積の支持体上に多数の所望パターンを形成す
るように行い、種子を固着させるまでの操作が完全に終
了してから、最後に、所定の形状、大きさに切断する。
先に述べたように、シートの形状は円形とすることが望
ましく、大きさは適用するマルチ栽培法のシートの孔よ
りも十分小さくする必要がある。

【００１８】なお、上記の説明は本考案説明のために例
示として述べたもので、本考案適用の範囲をこれらの内
容に限定するものではない。

【００１９】

【実施例】以下、本考案播種育苗用シートについて実施
例によって具体的に説明する。

【００２０】

【実施例１】図１(a)は本考案播種育苗用シートの構成
の概要を示した上面図で、水溶性あるいは水分散性の円
形の支持体１の上に種子３が固定されていることを示
す。また、図１(b)は図１(a)を A‐B 線で切断した場合
の断面図で、種子３が接着剤２によって支持体１に固定
されていることを示した図である。ここで、支持体の大
きさ、搭載種子数、種子相互間の距離などは、本考案を
適用するフィルムマルチ栽培システムならびに作物種子
の種類によって適宜定める必要がある。

【００２１】

【実施例２】市販のスチレン・イソプレン・スチレン共
重合体からなる合成エラストマー50重量部と、C5石油樹
脂50重量部及び2,2‐ジエトキシアセトフェノン0.5重量
部とからなる混合物をキシレンに溶解して50％の粘着剤
溶液を調製し、この溶液を300mm×600mmの水溶紙からな
る支持体上に直径2mmの点状に塗工した。このとき、粘
着剤3点が１組のブロックを形成し、かつ、各ブロック
内の粘着剤3点が一辺が30mmの正三角形の頂点を占める
ように構成した。次に、105℃の熱風乾燥機で乾燥して
溶剤を蒸発除去し、得られた粘着剤塗工シートにホウレ
ン草の種子を振りかけて、粘着剤塗工部に各１粒ずつ種
子を搭載した。次いで、種子を搭載したシートのシート
面を冷却しつつ、高圧水銀灯を用いて、400mJ/cm²の紫
外線を照射して粘着剤を硬化させた。最後に、粘着剤塗
工各ブロックを円形に切断して、直径50mmで種子３個を
搭載したホウレン草播種育苗用シートを作成した。

【００２２】このシートを土壌中に置き、潅水して、種
子の発芽状況および苗の発育状況を観察した結果、良好
な成績が得られた。

【００２３】

【実施例３】市販の紫外線硬化型アクリル系粘着剤(50
％溶液)を、300mm×600mmの水溶紙上に直径1mmの点状に
各点が35mmの間隔に配置するように塗工した。溶剤を乾
燥除去した後、大根の種子を振りかけて各粘着剤塗工部
に１粒ずつ種子を搭載した。次に、このシートに350mJ/
cm²の紫外線を照射して種子を固定し、最後に、シート
１枚に種子１粒が載るようにシートを円形に切断して、
直径30mmの大根種子搭載播種育苗用シートを作成した。

【００２４】このシートを、実施例２の場合と同様にし
て、土壌中に置き、潅水して、種子の発芽状況および苗
の発育状況を観察した結果、実施例２の場合と同様に、
良好な成績が得られた。

【００２５】

【考案の効果】以上述べてきたように、播種育苗用シー
トを本考案構成のシートとすることによって、従来技術
の有していた課題を解決して、フィルムマルチ栽培法に
用いるシートで、所定粒数の種子を所定間隔を保って播
種、かつ強固に固定し得、しかも発芽を妨げることのな
い播種育苗用シートを提供することができた。

【００２６】これによって、野菜等のフィルムマルチ栽
培に適した高性能の播種育苗用シートを農業経営者等に
提供することができ、播種作業の省力化、能率向上に貢
献し得るとともに、高品質の野菜を需要者に供給するこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案播種育苗用シートの一実施例の構成を示
す図で、(a)は上面図、(b)は(a)のA‐B線における断面
図。

【符号の説明】

１…支持体、２…接着剤、３…種子

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者小林映章神奈川県川崎市多摩区登戸3819番地株式会社スリオンテック内 (72)考案者尾藤智美神奈川県川崎市多摩区登戸3819番地株式会社スリオンテック内 (72)考案者杉内大司神奈川県川崎市多摩区登戸3819番地株式会社スリオンテック内 (72)考案者亀澤範正神奈川県川崎市多摩区登戸3819番地株式会社スリオンテック内

Claims

【実用新案登録請求の範囲】

【請求項１】孔を有するフィルムを用いたフィルムマル
チ栽培法に使用する、水溶性または水分散性の紙または
フィルム状の支持体上に接着剤により種子を固定してな
る播種育苗用シートにおいて、該シートの大きさが上記
有孔フィルムの孔よりも小さく、かつ上記接着剤が種子
の直径または長径よりも大きくない径の面積で点状に設
けられた接着剤であり、しかも種子が所定の間隔に分散
して固定されていることを特徴とする播種育苗用シー
ト。