JPH0591807A - 種子シート並びにその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 シートに植物成長成分含有水溶性高分子化合
物からなる保護層で被覆された植物種子が間隔をおいて
接着されている、種子シートである。これは、種子を間
隔をおいてシートに付着させ、水溶性高分子化合物、植
物成長成分を水に分散溶解させてなるスラリーを上記種
子上に適用し、そして上記スラリーを乾燥させて保護層
を形成させることによって製造される。 【効果】 保護層により、種子の露出を防ぎ、発芽まで
の環境を最適に保つことができ、種子が発芽した後も種
子の密生を防ぐことができる。更に、適用する土壌に見
合った形態であることができ、かつ運搬並びに携帯に便
利である。かゝる種子シートを簡単な方法で得ることが
できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、種子シート並びにその
製造方法に関する。より詳しくは、保護層で被覆された
植物種子が接着されている種子シート並びにその製造方
法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、農業の近代化に伴って、種々の種
苗シートが開発されている。例えば、特公昭49-9686 号
明細書、特開昭48-18007号明細書、特開昭50-75807号明
細書、特開昭51-33007号明細書、特開昭52-93511号明細
書、特開昭53-122508 号明細書、特開昭53-149506 号明
細書、特開昭53-149507 号明細書、特開昭54-4703 号明
細書および特公昭64-7730 号明細書には数多くの種苗マ
ットが記載されている。これらの種苗マットは、短時間
での灌水が容易であり、根の伸長を妨げない、種々の繊
維から構成されるマット自体に関するものであり、発芽
を促進する思想は示唆されていない。

【０００３】そのため、種子の発芽を促進する手段が設
けられた種苗シート等を含む種子シートを開発するとい
う要求がある。

【０００４】

【発明の解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、保水性を維持しつつ、発芽を促進することのできる
種苗シートを提供することである。

【０００５】本発明の別の目的は、種苗に限らず、多く
の植物種子に適用できる種子シートを提供することであ
る。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記の課題は、シートに
植物成長成分含有水溶性高分子化合物からなる保護層で
被覆された植物種子が間隔をおいて、好ましくは規則的
間隔をおいて、接着されている、種子シートによって達
成される。本発明の好ましい実施態様において、上記種
子シートは、上記シートの上に更に、間隔をおいて穴が
設けられた支持シートが付着され、上記穴とシートとで
形成された凹部に植物成長成分含有水溶性高分子化合物
からなる保護層で被覆された植物種子が接着されている
（以下、支持シートとの混同をさけるために、シートを
裏面層と呼ぶことがある）。

【０００７】かゝる種子シートは、種子を間隔をおいて
シートに付着させ、水溶性高分子化合物、植物成長成分
を水に分散溶解させてなるスラリーを上記種子上に適用
し、そして上記スラリーを乾燥させて保護層を形成させ
ることによって製造される。

【０００８】また、支持シートが設けられている種子シ
ートは、（ａ）支持シートに穴を設け、（ｂ）接着剤に
より該支持シートの裏面に裏面層を貼り合わせ、（ｃ）
上記支持シートと穴とで形成された凹部底面に接着剤を
施し、（ｄ）種子を凹部底面に付着させ、（ｅ）水溶性
高分子化合物、植物成長成分を水に分散溶解させてなる
スラリーを上記凹部に適用し、そして（ｆ）上記スラリ
ーを乾燥させて保護層を形成させることによって製造さ
れる。また、裏面層に種子を接着した後に支持シートと
裏面層とを貼り合わせてもよい。

【０００９】本発明の種子シートにおける基礎となるシ
ート（裏面層）は、透水性、吸水性および／または保水
性、水溶性であるいかなる材料からも構成することがで
きるが、例えば、発芽後の根の成長を阻害しないよう
に、植物の中期または末期成長期には既に分解または溶
解しているごとき少なくとも部分的生分解性プラスチッ
クスおよび／または少なくとも部分的水溶性プラスチッ
クスからなる不織布が好ましい。上記シート（裏面層）
は、いかなる寸法であってもよく、支持シートに設けら
れた場合は、支持シートに設けられた穴を完全に覆うよ
うな寸法であればよい。例えば裏面層を、各穴の多きさ
に見合った小片として、上記支持シートの各穴に接着す
ることもでき、上記シート（裏面層）をテープ状として
上記支持シートの穴の縦横のいずれかの列を覆うように
接着してもよく、あるいは好ましくは上記支持シートの
裏面全体を覆うように接着してもよい。また、シート
（裏面層）の厚さおよび構造は、本発明の種子シートを
使用し、灌水した後に、十分な保水性を持ち、種子の発
芽後、植物成長成分を種子の発芽時および植物の少なく
とも一部の成長期に保持・供給し得るように該成分の保
持力を有する程度であるのが好ましい。また、シートの
形状は特に限定されるものではなく、例えば図１に示す
ようにシート状または図２に示すようにテープ等の帯状
構造であることができる。本発明においては、これらを
総括してシートと呼ぶ。

【００１０】本発明の種子シートにおいて支持シートが
設けられている場合は、、支持シートは、本発明の種子
シートを支持するいかなる材料からも作成することがで
き、例えばプラスチックス、特に生分解性プラスチック
スが挙げられる。

【００１１】かゝる支持シートの厚さは、栽培する種子
の大きさに依存し、例えば稲を栽培する場合1 〜 2.5mm
の範囲が好ましい。また、支持シートの寸法についても
なんら制限されるものではない。

【００１２】本発明の種子シートの上記支持シートには
複数の穴が設けられている。穴の形状、寸法並びに穴の
配列については、栽培しようとする植物の育成に問題の
ない限りは特に制限されるものではない。シートの形状
がシート状である場合、各穴を長手方向および横方向各
々等間隔に複数列配置するのが好ましく、シートの形状
が帯状物である場合、長手方向に等間隔に比較的に多数
配置し、横方向に１〜２個配置するのが好ましい。

【００１３】本発明において使用される種子は、特に制
限されるものではないが、稲等の食用植物の他に、アサ
ガオ、ユウガオ、ケイトウ、サルビア、マリーゴール
ド、パンジー、ヤグルマソウ、カルセオラリア、ストッ
ク、デージー、ポピー、アゲラタム、カスミソウ、カー
ネーション、スイトピー、スターチス、インパチエン
ス、オシロイバナ、コスモス、ジリア、ヒマワリ、ペチ
ュニア、ホウセンカ、マツバボタン、シネラリア、ハゲ
イトウ、ハボタン等が挙げられる。各穴当たりの種子の
適用数は、栽培する種子により異なるが、間引き等の手
間を考えると一般には１〜数個が好ましく、より好まし
くは１〜２個、更に好ましくは１個である。

【００１４】保護層は、形成された種子の表面を保護
し、運搬並びに携帯時の剥離を防ぎ、そして植物成長に
好適な条件を与えるものである。水溶性高分子化合物と
植物の発芽・成長に必要とされる成分とを含む水性スラ
リーを種子上に適用し、乾燥して形成されたものであ
る。本発明に使用することのできる水溶性高分子化合物
とは、水に分散または懸濁させてスラリーを形成し、か
つ成長する植物に対して悪影響を及ぼさないものであれ
ば特に制限されるものではなく、例えばデンプン等が挙
げられる。水溶性高分子化合物と一緒に保護層に封入さ
れる植物成長成分としては、植物の発芽・成長に必要と
されるものであって、例えば窒素、燐酸およびカリウム
系の肥料、発芽促進剤、殺菌剤、および適用される発芽
促進剤、および適用される土壌がはっきりしている場合
（例えば酸性土壌）pH調整剤等が挙げられ、植物の発
芽、成長を妨げない濃度範囲で選択される。これらの植
物成長成分は、単独若しくは組み合わせて用いることが
できる。保護層は、種子の発芽期になおも種子表面に付
着・密閉し、種子に対する通気性を阻害しないような厚
さおよび水溶性高分子化合物の物性を考慮して設定され
る必要がある。

【００１５】本発明の種子シートは、水溶性高分子化合
物、植物成長成分を水に分散溶解させてなるスラリーを
上記種子上に適用し、そして上記スラリーを乾燥させて
保護層を形成させることによって製造される。

【００１６】シートに、種子を固定するために接着剤を
施すが、この接着剤は凹部の底部の露出部と種子が接着
するものであれば特に制限されるものではないが、水溶
性の接着剤が使用される。適用法としては、定量ポンプ
による圧入法、捺染、スクリーン印刷またはパッド印刷
等が挙げられる。

【００１７】次に、このようにして接着された種子に、
保護層を設けるが、かゝる保護層は、上記の水溶性高分
子化合物を所望とされる成分とともに水に溶解してなる
スラリーを定量ポンプによる圧入法、捺染、スクリーン
印刷またはパッド印刷、刷毛塗り等の方法により凹部に
適用し、乾燥することによって達成される。乾燥手段
は、風乾、オーブン等による乾燥等いずれの方法でも良
い。上記水性スラリーの固形分濃度についても、特に制
限されるものではなく、凹部に適用し易い濃度範囲内で
適宜決定される。

【００１８】水溶性スラリーは、上記の通り水溶性高分
子化合物の他に目的とする植物を好適に発芽・生長させ
るのに有効な植物成長成分を含むことができるが、これ
らの薬剤の添加順序は特に制限されるものではない。

【００１９】また、支持シートを設ける場合には、以下
の（ａ）〜（ｆ）の６段階からなる製造方法によって製
造される。

【００２０】（ａ）支持シートに穴を設ける段階； （ｂ）接着剤により該支持シートの裏面に裏面層を貼り
合わせる段階； （ｃ）上記支持シートと穴とで形成された凹部底面に糊
を施す段階； （ｄ）種子を凹部底面に付着させる段階； （ｅ）水溶性高分子化合物、植物成長成分を水に分散溶
解させてなるスラリーを上記凹部に適用する段階；およ
び （ｆ）上記スラリーを乾燥させて保護層を形成させる段
階である。

【００２１】段階（ａ）において、支持シートに穴を設
けるが、穴の作り方については特に制限はない、例えば
所望とされる寸法の穴を所望とされる間隔で配置した刃
によって打ち抜くことによって作成される。段階（ｂ）
で上記支持シートの裏面に裏面層を貼り合わせるが、こ
の貼り合わせ方法には接着剤が使用される。上記の貼り
合わせに使用される接着剤としては、デンプン系、ポリ
ビニルアルコール系、等の水溶性接着剤、酢酸ビニル
系、トルエンを溶剤としたエマルジョン系並びにホット
メルト接着剤の接着剤が挙げられる。

【００２２】次いで、このようにして形成された凹部の
中心に、前述の通り種子を固定するまた、上記支持シー
トと裏面層とを貼り合わせる前に、裏面層に種子を適用
してもよい。

【００２３】次に、このようにして凹部に接着された種
子に、前述の通り保護層を設ける。

【００２４】

【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて更に詳しく
説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもの
ではない。

【００２５】製造例1 この実施態様は、幅広のシート状物であり、かつ支持シ
ートが設けられた本発明による種子シートを製造する例
を示すものである。

【００２６】図１は、本発明の種子シートの一実施態様
を示す斜視図であり、図４は、図１の種子シートのＡ−
Ａ”直線に沿った断面図である。

【００２７】縦×横×厚さ＝４２０ｍｍ×５６０ｍｍ×
１．２ｍｍの寸法を有する生分解性の支持シート１に、
パンチングにより長手方向および横方向に各々１００ｍ
ｍの間隔で直径１０ｍｍの穴２を開ける。

【００２８】上記シートに縦および横が同一寸法の厚さ
１．２ｍｍの吸水性、生分解性の樹脂から構成された不
織布からなる裏面層（シート）３を、トルエン系の接着
剤で接着する。上記穴と裏面層とで形成される凹部４の
底部中央に水溶性接着剤を塗布し、各穴に１個つづの表
１に記載された種子５を付着させる。

【００２９】別に、アミ有機エキスとして網中産業より
市販されているアミノ系の成長促進剤を1000倍に希釈し
た水溶液１重量部にデンプン１重量部を加えてスラリー
を調製する。

【００３０】このスラリーを定量ポンプによる圧入法に
より各孔に塗布し乾燥して保護層６を形成し、本発明の
種子シート（１）が得られる。

【００３１】製造例２ この実施態様は、細長いテープ状物であり、そして支持
シートが設けられていない本発明による種子シートを製
造する例を示すものである。

【００３２】図２は、本発明の別の実施態様による種子
シートを示す斜視図である。２０ｍｍ×５６０ｍｍ×
１．２ｍｍの寸法を有している吸水性、生分解性の樹脂
から構成された不織布を使用する。縦方向中央に２０ｍ
ｍ間隔で接着剤を施し、その上に種子５を付着させる。
製造例１と同様にして調製されたスラリーを上記種子５
上に適用し、乾燥して保護層６を形成して、本発明の種
子シート（２）が得られる。

【００３３】使用例１ 下記の表に示す植物種子を使用して製造例１に従って作
成した一シート当たり６個の穴を有する種子シートＡお
よび比較のため発芽促進剤を使用しない以外は同様にし
て製造した種子シートＢおよび裏面層に直接種子を適用
した種子シートＣを土壌に配置し、その上を土で覆い発
芽状況を５日目、10日目、15日目、20日目に観察した。
結果を下記の表に示す。

【００３４】

【表１】

【００３５】

【表２】

【００３６】

【表３】

【００３７】

【表４】 ^* ：20日後に６個の種子のうち０〜３個発芽したものを
×、４〜５個発芽したものを○そして全て発芽したもの
を◎とした。^** ：20日経過時点で未発芽。

【００３８】上記の結果から、本発明による種子シート
が本発明の範囲外種子シートより高い発芽率を有してい
ることがわかる。また、保護層を設けた種子シート( 種
子シートＢ) の方が保護層を設けず単に裏面層に種子を
接着した例 (種子シートＣ）よりも概して発芽結果が良
好であった。

【００３９】

【発明の効果】本発明による種子シートは、種子表面に
水溶性高分子化合物からなる保護層を設けることによ
り、種子の露出を防ぎ、発芽までの環境を最適に保つこ
とができ、種子が発芽した後も一定の間隔で穴が設けら
れているので種子の密生を防ぐことができる。更に、本
発明の種子シートは必要に応じてシート状またはテープ
状に加工されてなるものであるので、適用する土壌に見
合った形態であることができ、かつ運搬並びに携帯に便
利である。また、本発明の種子シートに支持シートを設
けると運搬時の種子の剥離が防げる。

【００４０】本発明の種子シートの製造方法によるとか
かる種子シートが簡単な方法で得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の種子シートの一実施態様（シート状）
を示す斜視図である。

【図２】本発明の種子シートの別の実施態様（テープ
状）を示す斜視図である。

【図３】本発明の種子シートの更に別の実施態様（円
形）を示す斜視図である。

【図４】ａ図は、図１および図３のＡ−Ａ" 直線に沿っ
た断面図である。 ｂ図は、図２のＡ−Ａ" 直線に沿った断面図である。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シートに植物成長成分含有水溶性高分子
   化合物からなる保護層で被覆された植物種子が間隔をお
   いて接着されている種子シート。
2. 【請求項２】 上記シートの上に更に、間隔をおいて穴
   が設けられた支持シートが付着され、上記穴とシートと
   で形成された凹部に植物成長成分含有水溶性高分子化合
   物からなる保護層で被覆された植物種子が接着されてい
   る、請求項１の種子シート。
3. 【請求項３】 種子を間隔をおいてシートに付着させ、 水溶性高分子化合物、植物成長成分を水に分散溶解させ
   てなるスラリーを上記種子上に適用し、そして上記スラ
   リーを乾燥させて保護層を形成させる、段階からなる、
   請求項１の種子シートの製造方法。