JPH072660Y2 - 落石雪崩等防護構造体 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は山間部の道路や線路等を雪崩、落石、地辷等か
ら保護するための落石雪崩等防護構造体に関する。

［従来の技術］ 従来のこの種の落石雪崩等防護構造体は、山の壁部に沿
って構築された支持壁に柱を立設し、この支持壁および
柱上に防護壁体を一体化して構成されており、これは柱
を設置する領域分道路や線路等の幅員が狭められるとと
もに、山間部においては柱設置領域の確保が難しいとい
う問題を有するものであった。

そこで、柱を省略した構造によって、道路等に張り出し
た防護壁体を片持状態で安定支持することを可能にした
ものが特開平1-244004号公報で提案されている。これは
第８図に示すように、山の壁部に沿って構築された支持
壁１と、プレキャストコンクリート製の防護壁体２と、
この防護壁体２を前記支持壁１上に片持状態で一体化す
るために防護壁体２の基端部を支持壁１上に定着する縦
締用PC鋼材３と、前記防護壁体２内の全長にわたり防護
壁体２の勾配に合わせて配設されたPC鋼材４と、地山に
前記PC鋼材４と同軸方向に向って定着されたPCアンカー
５と、前記PC鋼材４を前記PCアンカー５に連結する連結
具６とを有し、現場にて前記支持壁１を場所打コンクリ
ートにより構築するとともにPCアンカー５を地山に定着
し、この後防護壁体２の基端部を支持壁１上に当接させ
て縦締用PC鋼材３によりPC定着し、次に防護壁体２内に
PC鋼材４を配設し、かつ防護壁体２の基端面と地山との
間に裏込コンクリートを打設し、固化後この後防護壁体
２の先端から前記PC鋼材４を緊張してプレストレスを付
与するものであり、さらにまた複数の防護壁体２を横締
用PC鋼材８により一体化するものである。

［考案が解決しようとする課題］ 上記従来技術においては、柱を省略して防護壁体を片持
状態で安定支持することが可能であるものの、防護壁体
２内にこの勾配を合わせて配設されたPC鋼材４と、この
PC鋼材４と同軸上にして地山に定着されたPCアンカー５
とを連結具６によって連結しているため、防護壁体２内
に配設されるPC鋼材４の数が少なくなり、これに伴い強
度を高めるために防護壁体２を厚肉で大型にしなければ
ならず、山間部におけるこの種構造体の小型化傾向に即
さない。また、地山の地層が緩んでPCアンカー５の定着
効果が低下すると、このPCアンカー５に連結されたPC鋼
材４による防護壁体２のプレストレスも弱められ安定性
に欠ける。また、構築作業において、防護壁体２の架設
前にPCアンカー５を地山に定着し、この後防護壁体２の
架設時に防護壁体２に配設されたPC鋼材４をPCアンカー
５に連結しなければならず、これらの連結作業が難しい
うえ、PC鋼材４とPCアンカー５を防護壁体２の勾配に合
わせて同軸上に配設しなければならず高精度の施工が要
求され、施工が困難である。

さらにまた、複数の防護壁体２を地山に定着するための
各PCアンカー５は高さおよび勾配が等しくなるように特
定され自由度が全くないため、第９図に示すような曲線
を有する道路等に防護構造体を施工しようとしても各PC
アンカー５が相互に干渉し合うため施工が不可能であっ
た。

そこで本考案は小型で安定性があり、曲線を有する道路
等にも施工可能であり、施工も簡単な落石雪崩等防護構
造体を提供することを目的とする。

［課題を解決するための手段］ 本考案は、山の壁部に沿って構築された支持壁と、この
支持壁の上端山側にこの支持壁と一体形成された定着用
受壁と、この定着用受壁の道路等側に形成された載置部
と、PC鋼材により道路等の幅員方向にプレストレスが付
与されたプレキャストコンクリート製の防護壁体と、こ
の防護壁体の基端側に形成された定着用壁部と、前記載
置部に載置された前記定着用壁部を前記定着用受壁に定
着して前記防護壁体を前記支持壁上に片持状態で一体化
させる定着用鋼材と、前記支持壁を地山に定着するPCア
ンカーとを備えたものである。

［作用］ 上記構成によって、防護壁体がPC鋼材により道路等の幅
員方向にプレストレスが付与されたプレキャストコンク
リート製であるため、従来に比べ薄肉で小型化が図られ
る。また、防護壁体内のPC鋼材とPCアンカーとが分離独
立しているため、地山の地層が緩んでPCアンカーの定着
力が低下してもこれがPC鋼材のプレストレスに影響せ
ず、安定性に優れている。また施工に際し従来における
防護壁体内のPC鋼材とPCアンカーとを連結する作業を省
略でき、しかもPCアンカーによる支持壁の定着を防護壁
体の架設後に行うことができるため施工が簡単である。
さらにまた、PCアンカーは防護壁体内のPC鋼材と分離独
立するため、各PCアンカーの高さや勾配に自由度があ
り、高精度の施工は要求されず、しかも曲線を有する道
路にも容易に施工することができる。

［実施例］ 以下、本考案の実施例を添付図面を参照して説明する。

第１図乃至第５図は本考案の第１実施例を示し、同図に
示すように山の壁部に沿って支持壁11を構築し、この支
持壁11の上端山側に定着用受壁12を形成すると共に、こ
の道路等側に載置部13を形成し、プレストレスが付与さ
れたプレキャストコンクリート製の防護壁体14を設け、
この防護壁体14の基端に形成された定着用壁部15を前記
載置部13に載置しかつボルト等の定着用鋼材16により前
記定着用受壁12に定着して前記防護壁体14を片持状態で
前記支持壁11上に一体化し、前記支持壁11をPCアンカー
17により地山に定着し、複数の防護壁体14を横締用PC鋼
材18により一体化して構成される。

前記支持壁11は前記PCアンカー17に被装するシース19を
介して現場打コンクリートにより構築され、この支持壁
11の上端山側には厚肉の前記定着用受壁12が一体に形成
されていると共に、上端道路等側には段差状の前記載置
部13が形成されている。また、前記定着用受壁12の上部
には前記定着用鋼材16の挿通孔20が水平に形成されてい
る。

前記防護壁体14は勾配を有して構成されており、道路等
の幅員方向に向かうウェブ21と、このウェブ21の上端左
右方向つまり道路等の長さ方向に形成されたフランジ部
22と、前記ウェブ21の先端左右方向に形成された小梁部
23と、ウェブ21の基端左右方向に形成され比較的大きな
縦幅寸法を有する前記定着用壁部15とを有している。前
記ウェブ21にはこの長さ方向に向かって多数のPC鋼材24
が配設され、このPC鋼材24によって防護壁体14に幅員方
向のプレストレスを付与している。また、前記定着用壁
部15にはウェブ21の両側に位置して前記定着用鋼材16の
挿通孔25が前記挿通孔20と連通して水平に形成されてお
り、これらの挿通孔20,25に挿通された定着用鋼材16に
よって防護壁体14の定着用壁部15を支持壁11に定着して
いる。また、前記小梁部23の上部および前記定着用壁部
15の上部には前記横締用PC鋼材18の挿通孔18Aが形成さ
れており、この挿通孔18Aに挿通された横締用PC鋼材18
によって複数の防護壁体14を一体化している。

前記PCアンカー17はロックアンカーまたはアースアンカ
ー等からなるPC鋼材製のアンカーであり地山の地中深く
削孔したアンカー孔17Aにセメントミルクからなるグラ
ウト17Bを注入固化して固設されている。図中26はプレ
キャストコンクリート製の囲いブロック、27は防護壁体
14の上面に敷かれた衝撃緩和用の土砂、28は裏込コンク
リート部、29は道路である。

施工に際し、PC鋼材24によって幅員方向にプレストレス
が付与された防護壁体14を工場にて製造して現場に運搬
すると共に、現場にて支持壁11の上部に対応する箇所に
所定間隔でアンカー孔17Aを削孔し、このアンカー孔17A
にPCアンカー17を挿入しかつグラウト17Bを注入固化さ
せる。次にPCアンカー17の地山から突出した部分にシー
ス19を被装して現場打コンクリートにより支持壁11を構
築する。この後支持壁11の上端の段差状の載置部13に前
記防護壁体14の定着用壁部15を載置し、この定着用壁部
15と支持壁11上端の定着用受壁12の挿通孔20,25にボル
トからなる定着用鋼材16を挿通し、ナット16Aにより定
着し、これによって支持壁11上に防護壁体14を片持状態
で一体化させる。この後、前記定着用受壁12と山の壁面
との間に裏込コンクリート部28を形成し、横締用PC鋼材
18によって複数の防護壁体14を一体化する。さらに、PC
アンカー17にプレストレスを付与し支持壁11を地山に定
着する。このPCアンカー17による支持壁11の定着を行う
時期は支持壁11の構築後直ちに行ってもよく任意に選定
することができる。

このように上記実施例においては、防護壁体14に配設さ
れるPC鋼材24とPCアンカー17並びに定着用鋼材16とが分
離独立しているものであるため、防護壁体14を多数のPC
鋼材24で幅員方向にプレストレスを付与したプレキャス
トコンクリート製として製造することができ、しかも防
護壁体14基端部の定着用壁部15を薄肉に形成でき、これ
によって防護壁体14で薄肉で軽量かつ小型になり、山間
部におけるこの種構造体の小型化傾向に即したものにな
る。また、地山の地層が緩んで１本のPCアンカー17の定
着効果が低下しても他のPCアンカー17によって支持壁11
は地山に安定して定着され、しかも防護壁体14内のPC鋼
材24による緊張力は保持されるため強度の安定性に優れ
たものになる。また、防護壁体14内のPC鋼材24とPCアン
カー17とは分離独立しているため、そのPC鋼材24とPCア
ンカー17とを連結する作業を省略できるとともに、PCア
ンカー17をPC鋼材24と同軸上に配設する必要もないため
高精度の施工も要求されず、施工が容易である。さらに
また、PCアンカー17は第５図に示すように高さおよび勾
配を自由に選定することができるため、第４図に示すよ
うな曲線を有する道路等に防護構造体を施工する場合PC
アンカー17が相互に干渉し合うことがなく、各PCアンカ
ー17を上下にずらしたり、また勾配を変えてずらしたり
することができるため道路等の曲線等に十分適応でき
る。

さらにまた、PCアンカー17を地山に定着するアンカー工
と、支持壁11を構築する下部工と、この支持壁11上に防
護壁体14を一体化するために支持壁11の定着用受壁12と
防護壁体14の定着用壁部15とを定着用鋼材16によって連
結する上部工とをそれぞれ単独で行うことができるた
め、工期が短い。

第６図は本考案の第２実施例を示し、第１実施例と同一
部分に同一符号を付し同一箇所の説明を省略して詳述す
ると、この例では支持壁11の構築時にPCアンカー17およ
び定着用鋼材16を避けた位置に縦締用PC鋼材30の下部を
埋設し、この縦締用PC鋼材30の上部を防護壁体14の定着
用壁部15に縦設された挿通孔31に挿通させて防護壁体14
を支持壁11上にセットし、この後縦締用PC鋼材30により
プレストレスを付与して定着用壁部15を支持壁11に定着
し、この後定着用壁部15と定着用受壁12とを定着用鋼材
16によって連結したものであり、縦締用PC鋼材30による
定着用壁部15の定着によって第１実施例に比べ強度が高
められる。

第７図は本考案の第３実施例を示し、第1,第２実施例と
同一部分に同一符号を付し同一箇所の説明を省略して詳
述すると、この例では支持壁11の構築時に定着用受壁12
内の補強筋32に定着用鋼材16を溶接等により固設し、か
つ支持壁11の上部に縦締用PC鋼材30Aを埋設しており、
前記定着用鋼材16を挿通孔25に挿通させた状態で支持壁
11の載置部13に防護壁体14の定着用壁部15を載置し、か
つ定着用鋼材16によって定着用壁部15を支持壁11に定着
させ、この定着用壁部15に縦設された挿通孔31に縦締用
PC鋼材30Bを挿通させ、両縦締用PC鋼材30A,30Bを連結具
34により連結し、縦締用PC鋼材30Bによりプレストレス
を付与した状態で定着用壁部15を支持壁11に定着させた
ものであり、第２実施例と同様な効果を有する。

本考案は上記実施例に限定されるものではなく、本考案
の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。
例えば防護壁，支持壁，定着用鋼材，アンカーの形状、
寸法並びに種類は適宜選定すればよく、また第３実施例
の縦締用PC鋼材は省略することもできる。

［考案の効果］ 本考案は山の壁部に沿って構築された支持壁と、この支
持壁の上端山側にこの支持壁と一体形成された定着用受
壁と、この定着用受壁の道路等側に形成された載置部
と、PC鋼材により道路等の幅員方向にプレストレスが付
与されたプレキャストコンクリート製の防護壁体と、こ
の防護壁体の基端側に形成された定着用壁部と、前記載
置部に載置された前記定着用壁部を前記定着用受壁に定
着して前記防護壁体を前記支持壁上に片持状態で一体化
させる定着用鋼材と、前記支持壁を地山に定着するPCア
ンカーとを備えたものであり、小型で安定性があり、曲
線を有する道路等にも施工可能であり、施工も簡単な落
石雪崩等防護構造体を提供できる。

【図面の簡単な説明】

第１図乃至第５図は本考案の第１実施例を示し、第１図
は断面図、第２図は斜視図、第３図は第１図のＡ−Ａ線
断面図、第４図は第１図のＢ−Ｂ線断面図、第５図はPC
アンカーの配置の自由性を示す説明図、第６図は本考案
の第２実施例を示す断面図、第７図は本考案の第３実施
例を示す断面図、第８図および第９図は従来例を示し、
第８図は断面図、第９図は概略説明図である。 11……支持壁 12……定着用受壁 13……載置部 14……防護壁体 15……定着用壁部 16……定着用鋼材 17……PCアンカー

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 中村 佐智夫 新潟県新潟市弁天橋通１丁目８番23号 日 本サミコン株式会社内 (72)考案者 大澤 廣 新潟県新潟市弁天橋通１丁目８番23号 日 本サミコン株式会社内 (56)参考文献 特開 平１−244003（ＪＰ，Ａ)

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】山の壁部に沿って構築された支持壁と、こ
   の支持壁の上端山側にこの支持壁と一体形成された定着
   用受壁と、この定着用受壁の道路等側に形成された載置
   部と、PC鋼材により道路等の幅員方向にプレストレスが
   付与されたプレキャストコンクリート製の防護壁体と、
   この防護壁体の基端側に形成された定着用壁部と、前記
   載置部に載置された前記定着用壁部を前記定着用受壁に
   定着して前記防護壁体を前記支持壁上に片持状態で一体
   化させる定着用鋼材と、前記支持壁を地山に定着するPC
   アンカーとを備えたことを特徴とする落石雪崩等防護構
   造体。