JPH07238098A - ヒト粥状硬化病巣関連抗原を認識するモノクローナル抗体 - Google Patents

ヒト粥状硬化病巣関連抗原を認識するモノクローナル抗体

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JPH07238098A
JPH07238098A JP6051209A JP5120994A JPH07238098A JP H07238098 A JPH07238098 A JP H07238098A JP 6051209 A JP6051209 A JP 6051209A JP 5120994 A JP5120994 A JP 5120994A JP H07238098 A JPH07238098 A JP H07238098A
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順治 木村
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仁美 岩崎
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ヒト粥状硬化病巣関連抗原を特異的に認識
し、動脈硬化症の診断、治療の上で有用なモノクローナ
ル抗体を提供する。 【構成】 ヒト粥状硬化病巣に出現する抗原FOH1を特異
認識するモノクローナル抗体である。該モノクローナル
抗体は、ヒト粥状硬化病巣のホモジネートで適当な哺乳
動物及び/または哺乳動物の抗体産生担当リンパ球を免
疫し、該動物の抗体産生リンパ球とミエローマ細胞を融
合させ、形成された抗ヒト粥腫抗体産生融合細胞群を単
離し、該細胞群のなかから酸化したヒトリポタンパク質
と特異的に反応するものとして選別された融合細胞によ
り産生される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ヒト動脈硬化病巣を特
異認識するモノクローナル抗体、特にそのうち粥状硬化
病巣に出現する抗原FOH1を特異認識する抗体に関する。
【0002】
【従来の技術】動脈硬化症は大動脈、冠状動脈、脳動脈
及び脈動脈などの筋型動脈に多く発生し、狭心症、心筋
梗塞、脳梗塞などの主因となる疾患である。その原因と
して血清コレステロールの上昇、血小板凝集、内皮傷害
などが提唱されているが、その成因はほとんど解析され
ていないのが現状である。
【0003】変性リポ蛋白の一つである酸化リポタンパ
ク質と粥状硬化病巣の進展との関連性が、スタインバー
グ(Steinberg) らにより指摘されて以来、動脈硬化の進
展におけるリポタンパク質の酸化の問題は脚光を浴びる
ようになっている(例えばSteinberg,D., Parthasarath
y,S., Carew,T.E., Khoo,J.C., and Witztum,J.L.,(198
9) N. Engl. J. Med. 320:915 )。
【0004】スカベンジャー受容体あるいは酸化LDL 受
容体などを介して酸化LDL が細胞内に取り込まれること
によって、泡沫細胞となり粥腫形成のイニシエーション
が起こるという仮説、また酸化LDL が内皮細胞を傷害す
ることで、血小板の粘着凝集や、白血球の集結、血漿成
分の血管内への浸潤がおこり、これらが引き金になっ
て、平滑筋細胞の遊走や増殖を引き起こすといった仮説
が提唱されている。
【0005】一方で、LDL 等の酸化により生成する物質
が病巣に確かに蓄積しているかどうかについては、例え
ば1988年にハーバーランド(Haberland) 等がマロンジア
ルデヒドで修飾したLDL に対する抗体;抗MDA-LDL 抗体
により動脈硬化病巣部が染色されることを示し(Herber
land, M. E., Fong ,D., and Cheng, L., (1988) Scien
ce 241:215)、また1989年にイラ−ハーテュアラ(YLa-H
erttuala) 等は、やはり抗MDA-apoB抗体によるイムノブ
ロッテイング法により、病巣部から抽出されたアポB(a
poB)を検索し、酸化変性を受けたLDL が確かに病巣部か
ら抽出されたと報告している(Yla-Herttuala ,S., Par
inski ,W., Rosenfeld, M. E., Parthasarathy, S., Ca
rew, T. E., Butler, S., Witztum, J. L., and Steinb
erg, D.,(1989) J. Clin. Invest. 84:1086)。しかし
ここで用いられた抗体はマロンジアルデヒドを用いて人
工的に修飾したLDL を抗原として得られたものである
が、LDL の酸化生成物だけでなく他のタンパク質たとえ
ばアルブミンなどの酸化されたものとも交叉反応を示す
という性質を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】LDL などの酸化による
変化が真に病巣形成に関与しているかを明らかにするこ
と、またその場合どのような経路で進展に関与している
かを明らかにすることは、病態の診断と治療のための方
法を確立する上で、現在最も重要な項目の一つといえる
が、病巣に蓄積している酸化リポタンパク質の実体は
何か、どのような酸化反応が病巣進展に関わっている
のか、酸化LDL 以外の酸化脂質または蛋白は存在する
のか否か等のことを明確にするためには、病巣内でLDL
などの酸化反応にともなって出現する特定の構造的変化
を特異的に認識する抗体が必要とされるのであり、前述
のような特異性が十分でない抗体では困難であり、ま
た、該抗体を診断や治療の手段として利用するためにも
特異性が充分でないといわざるを得ない。
【0007】この問題を解決し、特異性の高い抗体を取
得するための鍵は実際にヒト病巣においてLDL などの酸
化反応により生成したものを抗原として抗体を取得する
ことであるが、これまでにヒト病巣部からこのような抗
原だけを単離し、これに対する抗体を取得することは行
われてこなかった。
【0008】本発明は、新規なモノクローナル抗体を提
供することを目的とするものである。本発明はまた、ヒ
ト粥状硬化病巣関連抗原を特異的に認識する抗体を提供
することを目的とする。本発明はさらに、動脈硬化症の
診断、治療の上で有用なモノクローナル抗体を提供する
ことを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的は、ヒト粥状硬
化病巣に出現する抗原FOH1を特異認識するモノクローナ
ル抗体によって達成される。本発明はまた、ヒト粥状硬
化病巣のホモジネートで適当な哺乳動物及び/または哺
乳動物の抗体産生担当リンパ球を免疫し、該動物の抗体
産生リンパ球とミエローマ細胞を融合させ、形成された
抗ヒト粥腫抗体産生融合細胞群を単離し、該細胞群のな
かから酸化したヒトリポタンパク質と特異的に反応する
ものとして選別された融合細胞が産生するモノクローナ
ル抗体である。本発明はさらにハイブリドーマセルライ
ンFOH1a /DLH3(受託番号 FERM P-14153 )が産生する
モノクローナル抗体である。
【0010】上記目的はまた、例えばヒト粥状硬化病巣
等の試料を、FOH1抗原を認識する前記モノクローナル抗
体と接触させ、該抗体の該試料に対する反応性を測定す
ることによる試料中の粥状硬化病巣関連抗原の検出法に
よっても達成される。上記目的はさらに、前記モノクロ
ーナル抗体によりヒト血管部および/または血液中にお
ける抗原FOH1を検出することによる動脈硬化の診断法に
よっても達成される。上記諸目的はさらに、ヒト粥状硬
化病巣のホモジネートで適当な哺乳動物及び/または哺
乳動物の抗体産生担当リンパ球を免疫し、該動物の抗体
産生リンパ球とミエローマ細胞を融合させ、形成された
抗ヒト粥腫抗体産生融合細胞群を単離し、該細胞群のな
かから、酸化したヒトリポタンパク質と特異的に反応す
る抗体を産生している細胞を選別することを特徴とする
ヒト粥状硬化病巣関連抗原を認識する抗体を調製する方
法によっても達成される。
【0011】
【作用】本発明者らは、モノクローナル抗体法の取得技
術を活用することで本発明に示す抗体の取得に成功した
ものである。すなわち、ヒト粥状硬化病巣をホモジナイ
ズして得られる粥腫ホモジネートをそのまま抗原として
適当な哺乳動物を免疫し、該動物の抗体産生リンパ球と
ミエローマ細胞を融合させて抗ヒト粥腫抗体産生融合細
胞を単離し、該細胞のなかから、人工的に酸化させたヒ
トLDL と特異的に反応する抗体を産生している細胞を選
別する方法により、目的とする抗体を得ることに成功し
た。
【0012】粥状硬化病巣のホモジネートを用いて免疫
した動物のリンパ球からハイブリドーマを作製すれば、
大量に得られるハイブリドーマのなかに、粥状硬化病巣
に特異的に発現する抗原を認識する抗体を産生する細胞
が得られることは木村らによりすでに報告されている
(Kimura, J., Nakagami, K., Amanuma, K., Ohkuma,
S., Yosida, Y., and Takano, T.,(1986) Virchows Arc
h A 410:159)。従って、病巣部においてLDL が酸化変
性を受けているとすれば、得られるハイブリドーマのな
かに粥腫巣においてLDL などの酸化により生成する抗原
を認識する抗体を産生する細胞を含むことが期待され
る。
【0013】これらのハイブリドーマのなかから、粥腫
巣に実在するLDL などの酸化生成物を認識する抗体を産
生している細胞だけを分離するために、本発明の発明者
らは、粥状硬化病巣のホモジネートを用いて得られた大
量のハイブリドーマを人工的にLDL を酸化させて得られ
た物質群との反応性にもとづいて選別することを繰り返
したところ、そのなかに非常に希少な成功例として抗原
FOH1を認識する抗体を産生するハイブリドーマを得、本
発明に至った。
【0014】従来の技術では、動物を感作するときも、
得られたハイブリドーマをスクリーニングするときも、
人工的にLDL を修飾させたものを抗原性物質として用い
ていたが、本発明は、病巣部に実在する物質群で感作
し、一方でリポタンパクの人工的な酸化修飾により生成
した物質群でスクリーニングするという異種の抗原物質
群を組み合わせることにより、両物質群の共通項とし
て、病巣においてLDL などの酸化により生成する抗原に
特異性の高い抗体を取得できることを示したものであ
り、本方法が粥状硬化病巣関連抗原を認識する抗体を取
得する方法として有力なものであることが明らかとなっ
た。
【0015】以下、本発明を実施態様に基づきより詳細
に説明する。本発明は、ヒト動脈硬化病巣を特異認識す
るモノクローナル抗体、特にそのうち粥状硬化病巣に出
現する抗原FOH1を特異認識する抗体に関する。図2に示
したように、この抗原FOH1を認識するモノクローナル抗
体DLH3は、LDL を銅イオンを用いて人工的に酸化したLD
L に反応するが、未変性のLDL には反応せず、また図3
に示したように、他の方法(たとえばマロンジアルデヒ
ド化や、アセチル化など)でLDL を修飾したものにも反
応しない。また他の血清蛋白質たとえばアルブミンやグ
ロブリンを酸化させたものにも反応しない。しかし、LD
L とは異なるリポ蛋白質である高比重リポ蛋白質(HDL
)を酸化したものには反応する。
【0016】図4には、この抗原FOH1の発現には、リポ
タンパク質の構成成分のうち、特にリン脂質が酸化され
ることが必須であることが示されている。また図5には
本抗原の発現には何らかの蛋白質の共存が必要であるこ
とも示されている。ただし、この結果は、少なくとも抗
原の発現を後述する実施例1の方法によるELISA 活性に
より検出する場合にはという限定の基で理解されるべき
である。なぜなら本抗原の特異性は共存する蛋白の種類
によらないことから、蛋白成分の共存はこの抗原が単に
プラスチックウェルへの抗原の吸着に必要なだけである
可能性が残されているためである。以上に示された抗原
FOH1の特性は、この抗原がリン脂質をその必須構成要素
として含む生体成分および/または組織が酸化されたと
きに生成しうるものであることを示しておりLDL などの
リポタンパク質はそのような生体成分の一つであるがす
べてであることはいうまでもない。
【0017】本抗原が粥状硬化病巣の中に特異的に生成
したものであることは、病巣部ホモジネートを出発物質
として検索されたことからも明らかであるが、図6、7
に示すように免疫組織化学的検定によっても病巣内に実
在することが証明された。しかも該検定により、本抗原
は、粥状硬化病巣に存在する泡沫細胞内に特異的に存在
していることが示されており、細胞の酸化LDL の取り込
みと泡沫化という粥状硬化症の最も特徴的な病態の進展
ときわめて強い関連を持っていることが期待され、単な
る診断用のツールとしてだけでなく泡沫細胞の生成とそ
の防止法の開発のための評価系として、治療薬の開発の
面でもきわめて有効なツールとなることが期待される。
【0018】なお、この前記抗原FOH1を人工的に生成さ
せるためのLDL の処理条件としては、次のようなものが
考えられる。すなわち、ヒト正常血清から、例えば遠心
沈降法などによりLDL 分画を得、この分画を必要により
透析、脱塩によって精製処理した後、蛋白濃度0.1〜
1mg/ml、より好ましくは0.2mg/ml、Cu
SO4 濃度2.5〜25μM、より好ましくは5μMの
割合で、LDL 分画にCuSO4 を添加し、約37℃の下
に、3〜24時間反応させるものである。
【0019】本発明に係る抗原FOH1を特異認識するモノ
クローナル抗体は、一般的な細胞融合法に基づき次のよ
うな手法により得られるハイブリドーマセルラインによ
り産生される。ハイブリドーマ作成に用いられる動物種
としては、特に限定されるものではなく、従来使用され
ているマウス、ラット、ハムスター等が使用可能である
が、特に入手および取扱いの容易性からBalb/cマ
ウスが好ましく、主にこれらの動物の脾細胞が用いられ
る。また、ヒトのリンパ節細胞や末梢リンパ球を用いる
こともできる。
【0020】本発明において、これらの動物に対する免
疫用の抗原は、ヒト粥状硬化病巣より調製される。例え
ば、動脈硬化症患者の死亡直後における剖検あるいはバ
イパス手術等において取出された病変血管を入手し、こ
の病変血管から粥状硬化病巣を含む血管部を切出し、緩
衝液中で血管外膜部を剥離除去した後、病巣の内膜と中
膜部(intima and media) をホモジナイザーを用いて冷
却下、好ましくは氷冷下にホモジナイズし、静置後得ら
れる上清を抗原液とする。さらに必要に応じて、静置後
に遠心処理を行ない、得られたペレットに緩衝液を加え
て同様の操作を行ない、得られる上清を前の上清と合せ
て抗原液とすることもできる。このようにして調製され
た抗原液は、例えばアルゴン等の不活性ガスで置換の
後、使用直前まで凍結保存することが望ましい。
【0021】次いで、このようにして調製されたヒト粥
状硬化病巣のホモジェネートからなる抗原を、所定蛋白
(抗原)濃度として、前記したような動物種に免疫す
る。なおこの際、必要に応じて、フロイント完全アジュ
バント、フロイント不完全アジュバント等のアジュバン
トを添加してもよい。投与量は、動物種によって左右さ
れるが、マウスの場合、初回免疫で2.0〜60μg
(蛋白)/匹、より好ましくは40μg(蛋白)/匹程
度である。さらに、初回免疫の後、例えば、2週間およ
び4週間程度の間隔で、初回免疫と同量ないしそれ以下
の蛋白量で、追加免疫を行なうことが望ましい。
【0022】最終免疫の後、2〜3日後に免疫動物から
採血し、ELISA(enzyme-linkedimmunosorbent assa
y) 法、イムノブロット法等の検定法により、血清抗体
価上昇の確認を行ない、抗体価上昇の認められた免疫動
物をスクリーニングする。スクリーニングされた免疫動
物から脾細胞、あるいはリンパ節などから抗体産生細胞
を採取し、約37℃に加温したRPMI培地、DMEM
培地等の維持培地で洗浄、懸濁し、生細胞数を計測す
る。
【0023】一方、HGPRT(hypoxanthine-guanine
phosphoribosyl transferase) 欠損株の腫瘍細胞を、胎
児ウシ血清(FCS)添加RPMI培地、FCS添加DME
M培地等の増殖培地において増殖させ、対数増殖期にな
るように培養しておく。なお、HGPRT 欠損株の腫瘍細胞
としては、例えば、P3/X63-Ag8(X63) (カッコ内は略名
以下同じ)、P3/NSI-1-Ag4-1(NS-1)、P3/X63-Ag8.U1
(P3/U1)、Sp2/O-Ag14(Sp2/O) 、FO、210.RCY3.Ag 1.2.
3.(Y3)、U-266AR1(SKO-007) 、LICR-LON-HMy2(HMy2) 、
8226AR/NIP4-1(NP41)などの公知の腫瘍細胞を、使用す
る動物種に応じて用いることができる。対数増殖期にあ
る腫瘍細胞を、前記抗体産生細胞の細胞数に対して腫瘍
細胞の細胞数が1:1〜1:10となるように調整し、
約37℃に加温したRPMI培地、DEME培地等の維持培地で
洗浄して細胞融合を阻害するFCS 成分を除去する。
【0024】そして、細胞数を調整された抗体産生細胞
と腫瘍細胞を、例えばガラスチューブ等の容器内で混和
し、遠心してペレットを得、上清をなるべく除去する。
なお、この操作を含めて以下の操作は、20〜37℃、
より好ましくは約37℃の温度条件下で行なうことが望
ましい。
【0025】次いで、得られたペレットに対して、0〜
37℃、より好ましくは約37℃に加温された細胞凝集
性媒体を、ペレットをほぐしながら、ゆっくりと添加す
る。細胞凝集性媒体としては、ポリエチレングリコール
(PEG)、リゾレシチン、グリセロールオレイン酸エ
ステルなどの化合物、あるいは不活化されたセンダイウ
ィルス(HVJ)、麻疹ウィルス、ニューカッスル病ウ
ィルス等のパラミクソウィルスなどが使用可能である
が、このうち特にPEG が好ましい。PEG を使用する場合
には、例えば、RPMI培地、DMEM培地等で、その平均分子
量にもよるがPEG4000 の場合は45〜50重量%程度の
濃度に希釈して用いることが望ましい。
【0026】細胞凝集性媒体の添加後、さらに1〜2分
間程度攪拌した後、RPMI培地等の維持培地を、2〜3回
に別けてゆっくりと添加する。その後、PEG 等の細胞凝
集性媒体を除去するため、例えば800〜1200×
g、3〜5分間という弱い条件で遠心し、上清を除去す
る。
【0027】続いて、得られたペレットをほぐしなが
ら、FCS 添加HAT 培地等の選択培地を、脾臓細胞濃度が
1×106 〜1×107 細胞/mlとなるように、ゆっ
くりと添加し、96穴プレートのような多穴プレートの
各ウェルに分注し、温度約37℃、CO2 濃度約7%、
湿度100%の条件下で培養する。なお、培養期間中、
細胞の状態にもよるが、2〜3日程度の間隔で、液替え
を行なう。なお、培地条件としては、上記に例示したよ
うなものに限定されるものではなく、これ以外にも、例
えば、最初にFCS 添加RPMI培地等の増殖培地をペレット
に添加し、培養開始後、選択培地を各ウェルに添加する
といった態様とすること等も可能である。
【0028】融合しなかった細胞は、3日目あたりから
急速に死滅しはじめ、7日程度で完全に死滅する。一
方、融合に成功した細胞、すなわち、ハイブリドーマは
このころよりコロニーを形成しはじめる。ハイブリドー
マコロニーの形成が認められたウェルより次に述べるよ
うなスクリーンニングを開始し、必要に応じて24穴プ
レート等のより大きなプレートに継代していく。
【0029】スクリーニングは、RIA法、ELISA
法、イムノブロット法等によって行なうことができる
が、このうち好ましくはELISA法である。抗原とし
ては、上記したようにCuSO4 と3時間以上反応させ
ることにより得られた酸化LDLを使用する。必要に応じ
て、未変性のLDL を併用してもよい。各アッセイ法に基
づき、ハイブリドーマコロニーの形成が認められたウェ
ルから採取した培養上清を、スクリーニングし、酸化LD
L との反応で陽性(かつ未変性LDL との反応で陰性)と
なる細胞株を選択する。
【0030】そして、スクリーニングで陽性となったウ
ェルから直ちにクローニングを行なう。クローニング
は、限界希釈法(limiting dilution) 、単個細胞マニピ
ュレーション法(single cell manipulation)などを用い
て行なうことができるが、限界希釈法の方が技術的に容
易であるため好ましい。クローニングした細胞が再び増
殖してきたら、上記と同様にしてスクリーニングを行な
い、再度クローニングを繰り返し、未変性LDL とは反応
せず、酸化LDLとのみ反応する高産生細胞株を同定す
る。
【0031】なお、得られたハイブリドーマの保存法と
しては、特に限定されるものではないが、例えば、凍結
保存用のバイアルになるべく多くの細胞、例えば1×1
7〜2×107 個程度を、90%FCS 、10%ジメチ
ルスルフォキシド(DMSO)1〜2ml程度に懸濁して、液
体窒素中に凍結保存する方法が適当である。
【0032】本発明者らは、Balb/cマウスを用いて上記
したような細胞融合操作により、未変性のLDL とは反応
せず、酸化LDL とのみ反応する6株種の抗体(DLH1 〜DL
H6)を得た。これらのうち、DLH1,2,4,5,6は、酸化LDL
の他、マロンジアルデヒド修飾LDL(MDA-LDL)、アセチル
化LDL(AcLDL)とも反応するが、DLH3は、酸化LDL の他は
酸化HDL とのみ反応するのみであり、特に好ましいモノ
クローナル抗体である。このDLH3を産生するマウス−マ
ウス ハイブリドーマセルライン FOH1a/DLH3は、工業
技術院生命工学工業技術研究所に寄託し、受託番号FERM
P-14153を付与されている。
【0033】前記したように、粥状硬化病巣関連抗原FO
H1を認識するモノクローナル抗体産生細胞 FOH1a/DLH3
が産生する抗体DLH3は、酸化LDL 及び酸化HDL を認識す
る。また本抗体は粥状硬化病巣内の泡沫細胞を特異認識
する。この抗体が粥状硬化症の診断用のツールとして、
また治療薬開発のためのツールとしてもきわめて有用な
ものとなることが期待されることは、本抗体の認識する
抗原の性格から明らかである。
【0034】本発明の粥状硬化病巣関連抗原の検出法
は、試料を上記したようなFOH1抗原を認識する抗体と接
触させ、該抗体の該試料に対する反応性を測定すること
を特徴とするものである。この検出法は、in vitro(生
体外)において行なうことができるのは当然のことなが
ら、in vivo (生体内)において診断的に用いることも
可能である。すなわち、FOH1抗原は粥状硬化病巣部にの
み特異発現しているため、本抗原を認識する抗体、例え
ば、モノクローナル抗体産生細胞 FOH1a/DLH3が産生す
る抗体DLH3を放射性同位元素等で標識したものを、静脈
内に投与することにより、病巣の部位や大きさ、またそ
の中での泡沫細胞の出現頻度などを検出することができ
る。このため、本検定法の生体内的適用は、有効な動脈
硬化の診断法として期待できるものである。
【0035】
【実施例】次に、実施例および試験例を示して本発明を
より具体的に説明する。 実施例1 (1)抗原の調製 死後4時間以内に剖検して入手したヒト胸部大動脈を用
いて免疫用の抗原を調製した。同血管には、径約2cm の
こぶ状に盛り上がったアテロームが観察され、黄色の脂
質の沈着も認められたので、このアテロームの部分を含
む血管を切り出し、0.25M ショ糖、 1mM エチレンジア
ミン四酢酸 (EDTA) 、0.1 %エタノール、2 %グリセロ
ール及び1 μg/ml ペプスタチンA/アンチパインを含
む20mMリン酸緩衝液(pH7.4 )中にて血管の外膜部を剥
離し、病巣の内膜と中膜部(intima and media) をと
り、眼科用ハサミで5 mm角に細断後、ポリトロンホモジ
ナイザーを用いて氷冷下ホモジナイズした。0 ℃にて10
分放置後2000rpm にて5 分遠心した。このペレットにア
ルゴン置換した150mM NaCl、2 %グリセロール、1 μg/
ml ペプスタチンA/ロイペプチン/アンチパイン、1m
M フェニルメタンスルフォニルフルオリド(PMSF)を含む
20mMリン酸緩衝液(pH7.4 )を加え再度同様に操作し、
前の上清とあわせて抗原液とした。得られた抗原液は、
バイオラッド、プロテインアッセイキットによるタンパ
ク定量で、2.3 μg/μl のタンパク濃度であった。抗原
液はアルゴン置換して凍結保存した。
【0036】(2)モノクローナル抗体の作製 8 週齢Balb/c雌のマウス1 匹あたり40μg の抗原を300
μl のエマルジョンにして皮下注射した。エマルジョン
は、抗原液にフロイント完全アジュバントとリン酸緩衝
生理食塩水(PBS )を加え、超音波ホモジナイザー1 分
処理して調製し使用した。14日後20μg 抗原/150 μl
エマルジョン、さらに14日後10μg 抗原/150 μエマル
ジョンを調製し皮下注射した。最終免疫7 日後に眼底採
血を行ないELISA で抗体価を調べ抗体価の上昇している
マウスを選択し、脾臓を取り出し細胞融合を行なった。
【0037】2 匹のマウスをエーテル麻酔し、心臓採血
を行ないその血清を保存した。採血後頚椎剥離し、全身
を70%エタノールで滅菌後クリーンベンチ内へ運び開腹
し、非働化FCS 38.5ml、10% NCTC109培地(FLOW) 50ml
、×200 グルタミン 2.5ml,抗生物質(ベンジルペニシ
リンカリウム700mg とストレプトマイシン1gを100mlに
溶解)5ml を含むRPMI1640培地(RPMI1640(+) )を満た
したシャーレに脾臓を取り出した。余分の結合組織を眼
科用ハサミで取り除いたのち、別のやはりRPMI1640(+)
を満たしたシャーレに移し、眼科用ハサミで3 〜4 個に
切断し、ピンセットで脾臓を押しながら脾臓細胞を分散
させた。細胞浮遊液をステンレスメッシュで瀘過し、10
00rpm 5 分遠心し、ペレットを得た。再度RPMI1640(+)
の20mlに懸濁し生細胞数を計測した。脾臓細胞に対しマ
ウスミエローマ細胞株P3/U1 が5:1 になるように細胞数
を合わせて、50mlの遠心管に入れ、1000rpm 5 分遠心し
ペレットを得た。上清をなるべく除去した後、細胞塊を
ほぐし、50%のポリエチレングリコールを含むRPMI1640
培地1ml を1 分間かけてピペットで撹拌しながら加え
た。
【0038】さらにピペットで1 分撹拌したのち、RPMI
1640培地 2mlを2 分、7 mlを2 〜3分かけて加え、800rp
mで5 分遠心した後、上清を除去し、10%のハイブリド
ーマクローニングファクター(HCF)を含むHAT 培地(ヒ
ポキサンチン100 μM 、チミジン16μM 、アメトプテリ
ン 4μM )及び、抗生物質溶液 5ml、オキザロ酢酸 3.3
mg、インスリン 25 Units 、非働化FCS 75ml、NCTC109
45ml、×10 非必須アミノ酸(NEAA)5ml 、100mM ピルビ
ン酸ナトリウム5ml をDMEM Gln(+)500mlに加えて調製す
る)に懸濁した。
【0039】脾臓細胞の濃度が4〜5×105 細胞/ml
になるように培地を加え、96穴プレート(Falcon #3072)
に100 μl ずつ分注し、CO2 インキュベーター(37
℃、CO2 7 %)培養した。3 日毎に、50μl のHAT 培
地を合計3 回添加した。ハイブリドーマコロニーの形成
が認められたウェル(well)よりスクリーニングを開始
し、必要に応じて24穴プレートに継代していった。
【0040】(3)特異抗体産生ハイブリドーマのスク
リーニング <酸化LDLの調製>正常人血清20〜30mlに、エチレン
ジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA-2Na)を加え、最終濃度
を1 mMとした。これに、NaBrを加え、比重1.000 に合わ
せる。遠心チューブに分注し、そのうえにNaBrで、比重
1.15、1.063 、1.019 及び1.006 にあわせた緩衝液を順
に重層し、これを4 ℃で 120,000×G 24時間遠心した。
上端から順に分画し、各画分の比重を屈折計で測定し、
比重1.019 〜1.063 の画分をLDL 分画として採取した。
LDL 分画は、採取後直ちに、0.25mM EDTA を含む PBSに
透析した。
【0041】透析後のLDL 分画をセファデックスG25
(Sephadex G25) を用いて脱塩し、蛋白濃度200 μg/m
l、5 μM のCuSO4 の条件下で、37℃で0 〜24時間
反応させた。反応を250 μM のEDTAを添加して止め、ア
ガロースゲル電気泳動、SDS ポリアクリルアミド電気泳
動、TBA 値により評価した。反応時間の増大と共に、ア
ガロース電気泳動上では陽極側へ泳動され、SDS-PAGE上
ではアポBのバンドが消失し低分子側に広がり酸化反応
によるアポBの分解を認めた。また、TBA 価は3時間迄
は急激に増大し、最大50nmol/mg (蛋白)を越える値を
示したがその後緩やかに減少し、2次分解の進行を示唆
した。結果を図1に示す。
【0042】<抗酸化LDL 抗体のスクリーニング>3 ま
たは24時間反応させた酸化LDL 、及び未変性 LDLをそれ
ぞれ抗原とし、10μg/mlの濃度でPBS で希釈し、 ELISA
用マイクロプレート(FALCON #3912)に4 ℃で1晩放置し
コーティングした。トリス緩衝生理食塩水(TBS )+0.
05%トゥイーン20(Tween20)で1回洗浄後、TBS +2
%スキムミルクで室温2 時間ブロッキングを行ない、ハ
イブリドーマ培養上清をかけ4 ℃で1晩放置した。TBS
+0.05%Tween20 で3回洗浄後、TBS +2 %スキムミル
クで5000倍に希釈した2次抗体( アルカリフォスファタ
ーゼ標識ヤギ抗マウス IgG+M;TAGO Cat.No.6550)を室温
2 時間反応させた。TBS +0.05%Tween20 で3回洗浄
後、50mMTris-HCl pH8.8で1回洗浄し、基質液( 1mg/m
l p−ニトロフェニルリン酸(PNPP)/基質緩衝液(ジエ
タノールアミン緩衝液 pH9.8 ))を加え、37℃で反応
させた。OD405nmをELISA リーダーにて測定した。3回
の融合実験で得られたコロニー約2000個についてスクリ
ーニングを行った。1次スクリーニングで、82個の陽性
株を得た。
【0043】(4)ハイブリドーマのクローニングと抗
酸化LDL 抗体産生株の確立 さらにこれらの株についてクローニングを行った。ハイ
ブリドーマの生細胞数を計測し、5 % HCF入りのHY培地
(抗生物質溶液 5ml、オキザロ酢酸3.3mg 、インスリン
25 Units、非働化FCS 75ml、10% NCTC109培地 45ml 、
×10 NEAA 5ml、 100mMピルビン酸ナトリウム 5mlをDME
M Gln(+)(FLOW)500mlに加えて調製する)で10個/ml 程
度の濃度まで希釈し、96穴プレートに1 ウェルあたり1
個、3 個、5 個となるように分注した。1 週間から10日
後、形成してくるコロニーを数え、1 ウェルあたり1 個
ないしは2 〜3 個のウェルの培養上清の抗体活性をELIS
Aにてスクリーニングした。その結果、未変性 LDL(Nat
ive LDL)とは反応せず、酸化LDL(OxLDL)とのみ反応す
る株6種(DLH1 〜DLH6) を得た。これらの株は、いずれ
もCu2+で3 時間以上反応させた酸化LDL を強く認識し
た。(図2) 実施例2 実施例1で得られた抗酸化LDL 抗体DLH1〜DLH7につい
て、酸化HDL 、HDL 、VLDL、マロンジアルデヒド修飾ウ
シ血清アルブミン(MDA-BSA)、ウシ血清アルブミン(BS
A) 、アセチル化LDL(AcLDL)、MDA-LDL 、及び酸化時間
を変えた酸化LDL (酸化時間0.5 、3 および24時間、Ox
LDL0.5、OxLDL3、OxLDL24 と略す。)との反応性をELIS
A 法により比較した(ここでマロンジアルデヒド修飾及
びアセチル化はそれぞれ以下のような方法により行っ
た。マロンジアルデヒド修飾:LDL あるいはBSA の約0.
5mg/mlの0.1Mのリン酸緩衝液pH6.5 溶液1ml にMDA 溶液
(マロンジアルデヒドビスジメチルアセタール1Mを0.1N
塩酸存在下に100 ℃で5 分加熱し加水分解したもの)10
μl を加え、37℃で3 時間反応させ反応後0.25mM EDTA
を含むPBS に0 ℃で透析する。アセチル化:LDL あるい
はBSA の約1mg/ml溶液1mlに飽和酢酸ナトリウム1ml を
加え0 ℃で攪拌する。無水酢酸2 μl を加えさらに0 ℃
で50分間攪拌後0.25mM EDTA を含むPBS に0 ℃で透析す
る。)。DLH1,2,4,5,6は、酸化LDL の他、AcLDL,MDA-LD
L とも反応することが確認されたが、DLH3は酸化LDL の
他は酸化HDL とのみ反応することがわかり、これら抗体
の認識するエピトープが異なっていることが示唆され
た。得られた結果を図3(a)〜(f)に示す。
【0044】実施例3 実施例2に示されたように抗体DLH3はLDL 、HDL の両リ
ポタンパクの酸化生成物と特異的に反応する。したがっ
てその認識する抗原FOH1は両リポタンパク質に共通の成
分に由来することが期待される。そこで両リポタンパク
に共通する成分である脂質の酸化反応により本抗原が発
現するかを確認するため以下の実験を行った。
【0045】LDL から、ブライとダイヤーの方法(Blig
h, E. A. and Dyer, W. J. (1959) Can. J. Biochem. P
hysiol. 37, 911-917) で抽出した脂質画分 (LDL Lipid
s) 、コレステロールエステル(CholE) 、トリグリセリ
ド(TG)、リン脂質としてフォスファチジルコリン(PC)と
フォスファチジルエタノールアミン(PE)、特にそのうち
卵黄由来のリン脂質(egg PC 、egg PE) に加えて、PCに
ついては脂肪酸組成が飽和型の16:0、または18:0をその
1位に不飽和型の18:1、18:2、及び20:4をその2位に持
つ合成リン脂質(16:0-18:1 PC 、16:0-18:2 PC、及び1
8:0-20:4 PC) 、及び生体膜の構成成分であるスフィン
ゴミエリン(brain SM)について、その各々をリン酸緩衝
生理食塩水(PBS) に2mM の濃度で分散させ、これに硫酸
第1鉄、アスコルビン酸、及び牛血清アルブミン(BSA)
を含む水溶液を加えて、最終濃度として脂質0.4mM 、第
1鉄イオン40μM 、アスコルビン酸0.4mM 、BSA 1 μg/
nmol lipidの反応溶液を調整した。対照として同じ溶液
から硫酸第1鉄だけを除いた液を調整した。両溶液を37
℃で3 時間反応させた後96穴のマイクロタイタープレー
トに加え、以下実施例1に記載の方法によりDLH3抗体を
用いて抗原の生成を試験した。この結果を図4に示し
た。抗原は全て脂質としてフォスファチジルコリンを含
む場合にのみ生成することが確認された。
【0046】またこの反応溶液からBSA を除いた液につ
いて同じく37℃で3 時間反応させたもの、これにさらに
BSA を添加し30分経過後のものをそれぞれ同様の方法で
抗原の生成を試験した。図5にこの結果を示したが、本
試験によれば、少なくともFOH1抗原の発現を実施例1に
記載のELISA 法により検定する場合、リン脂質の他に何
らかの蛋白成分の共存が必要なことを示している。
【0047】実施例4 実施例1で得られた抗体DLH3を用いて抗原FOH1の粥状硬
化病巣内での局在性を検討した。ヒト脳動脈、冠状動
脈、胸部大動脈、腹部大動脈(下腸間膜動脈分岐部)、
腎動脈をとり、ホルマリンあるいはメタノール・カルノ
ア液(メタノール・クロロホルム・酢酸=6・3・1)
で固定を行った。常法に従いパラフィン包埋後、薄切し
た。薄切した切片を脱パラフィンし水洗後、PBS で洗浄
し、0.3 %過酸化水素メタノール溶液に室温で30分処理
し、内在性のペルオキシダーゼをブロックした。PBS で
5 分ずつ2 回洗浄後、PBS で10倍に希釈した正常ウサギ
血清で室温1 時間湿潤箱で非特異的吸着をブロッキング
した後、PBS で希釈したDLH3抗体をかけ、室温2 時間反
応させた。PBS で5 分ずつ3 回洗浄後、PBS で500 倍に
希釈したビオチン化抗マウス抗体(DAKO;E354) をかけ、
室温1 時間反応させた。PBS で5 分ずつ3 回洗浄後、PB
S で700 倍に希釈したパーオキシダーゼ標識ストレプト
アビジン(DAKO;p397)をかけ、室温1 時間反応させた。
PBS で5 分ずつ2 回洗浄後、0.2 % ジアミノベンジジ
ン(DAB) 溶液中で発色させた。顕微鏡観察下反応を流水
中にて停止させ、ヘマトキシリン溶液に数秒入れ、流水
中で色出し、脱水、透徹、封入した。隣接切片を定法に
よりヘマトキシリンエオジン(HE)染色して、その特
異性を比較した。
【0048】図6〜図7に、抗体DLH3の染色性を示し
た。剖検により得られた80才男性の左冠状動脈回旋枝
に形成された粥状硬化病巣であり、図6はそのHE染色
像である。中央部に脂質を蓄積した跡が空胞化して観察
される細胞群いわゆる泡沫細胞の集積が認められる。図
7は、その隣接切片に対するDLH3抗体による染色像で、
DLH3の認識するエピトープが、この泡沫細胞の中に特異
的に存在することが明らかである。また血管腔に接触し
ている内皮細胞の一部とその直下の細胞にも染色性が認
められ、これらの細胞が酸化LDL を取り込んでいる可能
性を示唆している。
【0049】
【発明の効果】以上述べたように本発明は、ヒト粥状硬
化病巣に出現する抗原FOH1を特異認識するモノクローナ
ル抗体であり、粥状硬化症の診断用手段として、また治
療薬開発のための手段としてもきわめて有用なものとな
ることが期待されるものである。さらに、前記モノクロ
ナール抗体が、ヒト粥状硬化病巣のホモジネートで適当
な哺乳動物及び/または哺乳動物の抗体産生担当リンパ
球を免疫し、該動物の抗体産生リンパ球とミエローマ細
胞を融合させ、形成された抗ヒト粥腫抗体産生融合細胞
群を単離し、該細胞群のなかから酸化したヒトリポタン
パク質と特異的に反応するものとして選別された融合細
胞が産生するものである、さらには、ハイブリドーマセ
ルライン FOH1a/DLH3が産生するものであると、より有
効でかつ信頼性の高い手段となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ヒトLDL の銅イオンによる酸化における経過
時間とTBA値との関係を示すグラフ、
【図2】 本発明の実施例において得られたモノクロー
ナル抗体(DLH1〜DLH6) の酸化LDL および未変性LDL と
の反応性を示すグラフ、
【図3】 (a)〜(f)はそれぞれ、実施例において
得られたモノクローナル抗体(DLH1〜DLH6) の各種蛋白
ないしその誘導体との反応性を示すグラフ、
【図4】 各種脂質を酸化させたものに対する抗体DLH3
の反応性を示す図、
【図5】 リン脂質の酸化による抗原FOH1の生成を実施
例1記載のELISA 法により評価するときの共存蛋白質の
必要性を示す図、
【図6】 粥状硬化病巣部のHE染色像(組織写真)、
【図7】 図6における病巣部の隣接切片に対する抗体
DLH3の染色性を示す免疫染色像(組織写真)。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G01N 33/577 B // C12N 15/02 (C12P 21/08 C12R 1:91) (72)発明者 高野 達哉 東京都八王子市寺田町432番地 グリーン ヒル寺田44−3

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒト粥状硬化病巣に出現する抗原FOH1を
    特異認識するモノクローナル抗体。
  2. 【請求項2】 ヒト粥状硬化病巣のホモジネートで適当
    な哺乳動物及び/または哺乳動物の抗体産生担当リンパ
    球を免疫し、該動物の抗体産生リンパ球とミエローマ細
    胞を融合させ、形成された抗ヒト粥腫抗体産生融合細胞
    群を単離し、該細胞群のなかから酸化したヒトリポタン
    パク質と特異的に反応するものとして選別された融合細
    胞が産生するものである請求項1に記載のモノクローナ
    ル抗体。
  3. 【請求項3】 ハイブリドーマセルラインFOH1a /DLH3
    (受託番号 FERM P-14153 )が産生する請求項1または
    2に記載のモノクローナル抗体。
  4. 【請求項4】 試料をFOH1抗原を認識する請求項1〜3
    のいずれかに記載の抗体と接触させ、該抗体の該試料に
    対する反応性を測定することを特徴とする試料中の粥状
    硬化病巣関連抗原の検出法。
  5. 【請求項5】 該試料がヒト粥状硬化病巣である請求項
    4に記載の検出法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜3のいずれかに記載の抗体に
    よりヒト血管部における抗原FOH1を検出することによる
    動脈硬化の診断法。
  7. 【請求項7】 ヒト粥状硬化病巣のホモジネートで適当
    な哺乳動物及び/または哺乳動物の抗体産生担当リンパ
    球を免疫し、該動物の抗体産生リンパ球とミエローマ細
    胞を融合させて抗ヒト粥腫抗体産生融合細胞を単離し、
    該細胞のなかから、酸化したヒトリポタンパク質と特異
    的に反応する抗体を産生している細胞を選別することを
    特徴とするヒト粥状硬化病巣関連抗原を認識する抗体を
    調製する方法。
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