JPH07118749A - 鉄損の低い方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

鉄損の低い方向性電磁鋼板の製造方法

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JPH07118749A
JPH07118749A JP5267546A JP26754693A JPH07118749A JP H07118749 A JPH07118749 A JP H07118749A JP 5267546 A JP5267546 A JP 5267546A JP 26754693 A JP26754693 A JP 26754693A JP H07118749 A JPH07118749 A JP H07118749A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、形状の良好で鉄損特性の良好な方
向性電磁鋼板を、低温・短時間の仕上げ焼鈍により製造
する方法を提示するものである。 【構成】 脱炭板の酸化層を、脱炭焼鈍時の雰囲気ガス
の酸化度もしくは後工程で除去することにより制御し、
かつ焼鈍分離剤としてアルミナを用いることにより、仕
上げ焼鈍時の純化を促進し仕上げ焼鈍を低温・短時間で
行わせ、かつ形状不良を低減させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は主として変圧器その他の
電気機器等の鉄心として利用される一方向性電磁鋼板の
製造方法に関するものである。特に、その表面を効果的
に仕上げることにより鉄損特性の向上と合わせて、仕上
げ焼鈍を低温・短時間で効率的に行い製造コストの低減
を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】一方向性珪素鋼板は磁気鉄心として多く
の電気機器に用いられている。一方向性珪素鋼板は、S
iを0.8〜4.8%含有し製品の結晶粒の方位を{1
10}〈001〉方位に高度に集積させた鋼板である。
その磁気特性として磁束密度が高く(B8 値で代表され
る)、鉄損が低い(W17/50 値で代表される)ことが要
求される。特に、最近では省エネルギーの見地から電力
損失の低減に対する要求が高まっている。この要求に応
え、一方向性珪素鋼板の鉄損を低減させる手段として、
磁区を細分化する技術が開発された。
【0003】積み鉄心の場合、仕上げ焼鈍後の鋼板にレ
ーザービームを照射して局部的な微少歪を与えることに
より磁区を細分化して鉄損を低減させる方法が、例えば
特開昭58−26405号公報に開示されている。ま
た、巻き鉄心の場合には、鉄心に加工した後、歪取り焼
鈍(Stress Release Annealing:応力除去焼鈍)を施し
ても磁区細分化効果の消失しない方法も、例えば特開昭
62−8617号公報に開示されている。これらの技術
的手段により磁区を細分化することにより鉄損は大きく
低減されるようになってきている。
【0004】しかしながら、これらの磁区の動きを観察
すると動かない磁区も存在していることが分かった。従
って、方向性電磁鋼板の鉄損値を更に低減させるために
は、磁区細分化と合わせて磁区の動きを阻害する(1)
鋼板表面のグラス皮膜からのピン止め効果をなくすこ
と、及び(2)二次再結晶時にインヒビターとして活用
した窒化物、硫化物等の不純物をなくす(純化)ことが
重要である。
【0005】第1課題である磁区の動きを阻害する鋼板
表面のグラス皮膜を形成させない手段として、焼鈍分離
剤として粗大高純アルミナを用いることによりグラス皮
膜を形成させない方法が、例えばU.S.Patent
3785882に開示されている。しかしながらこの方
法では表面直下の介在物をなくすことができず、鉄損の
向上代はW15/60 で高々2%に過ぎない。
【0006】この表面直下の介在物を制御し、かつ表面
の鏡面化を達成する方法として、仕上げ焼鈍後に化学研
磨或いは電解研磨を行う方法が、例えば特開昭64−8
3620号公報に開示されている。しかしながら、化学
研磨・電解研磨等の方法は、研究室レベルでの少試料の
材料を加工することは可能であるが、工業的規模で行う
には薬液の濃度管理、温度管理、公害設備の付与等の点
で大きな問題があり、いまだ実用化されるに至っていな
い。
【0007】この問題点を解消する方策として、本発明
者等は脱炭焼鈍板の酸化層を酸洗等により除去し、焼鈍
分離剤としてアルミナ等のシリカとの反応性の低い物質
を用いることが有効であることを開示している(例えば
特願平5−43810号)。また、この方法の改良とし
て、脱炭焼鈍の露点を制御し、脱炭焼鈍時に形成される
酸化層においてFe系酸化物(Fe2 SiO4 ,FeO
等)を形成させないことが有効であることを最近見出し
た。
【0008】第2の不純物の純化に関しては、従来、水
素雰囲気中で約1200℃の高温で20時間程度焼鈍す
ることが有効であることが知られている。しかしなが
ら、このような高温で長時間焼鈍することは、操業経
費、設備維持費等のコスト面、また、形状不良による歩
留まり低下をもたらし、製造コストを高めてしまってい
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、仕上
げ焼鈍の純化を促進することにより仕上げ焼鈍を低温・
短時間で行い効率を上げる方策を提示することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決するために種々の実験を行い、磁気特性を損なわ
ず、かつ効率的に仕上げ焼鈍を行う方策の検討を行っ
た。その結果、純化挙動に対して鋼板表面の状況が大き
な影響を及ぼしており先に開示した表面直下の介在物を
低減させる次の2つの方法が純化促進に有効であること
を見出した。(1)脱炭焼鈍をFe系酸化物の形成しな
い酸化度の雰囲気ガス中で行い、かつ脱炭板を積層する
際の焼鈍分離剤としてアルミナを用いること、(2)脱
炭焼鈍で形成された表面酸化層を除去し、かつ脱炭板を
積層する際の焼鈍分離剤としてアルミナを用いること。
【0011】以下、詳細にその知見を得た実験を説明す
る。重量で、Si:3.3%、Mn:0.1%、C:
0.05%、S:0.012%、酸可溶性Al:0.0
27%、N:0.008%の珪素鋼スラブを1150℃
で加熱した後、板厚2.3mmに熱延した。この熱延板を
1100℃で2分間焼鈍した後最終板厚0.3mmに冷延
した。この冷延板を湿潤ガス中で脱炭を兼ね830℃で
150秒焼鈍し一次再結晶させた後、アンモニアを含有
する雰囲気ガス中で焼鈍して窒素量を0.027%に増
加させた。
【0012】その後、一部の試料は酸洗により表面酸化
層を除去した後、焼鈍分離剤としてアルミナを塗布し
た。また、一部は従来のようにマグネシアを塗布した。
これらの試料を積層し、窒素雰囲気中で1100〜12
00℃の所定の温度に昇温した後、水素ガスに切り替え
各温度で純化挙動の調査を行った。その窒素及び硫黄の
純化挙動を図1に示す。
【0013】図1より、酸洗により表面酸化層を除去し
た後、焼鈍分離剤としてアルミナを塗布し表面の鏡面化
を行ったものは従来のものに比べて純化が促進されてい
ることが分かる。また、低温域(〜1100℃)での硫
黄の純化挙動が律速となっていることが分かる。磁気特
性に対して影響を及ぼす不純物の臨界値は約0.002
%であるので、上記結果をもとにすると少なくとも11
00℃で7時間、1150℃で4時間、1200℃で3
時間の焼鈍が純化に対して必要であると考えられる。こ
のような純化挙動と合わせて、鋼板の形状を考慮すると
以下の温度:T(℃)、時間:t(hr)の領域で仕上げ
焼鈍時の純化焼鈍を行うことがよい。 62−T/20≦t≦297−T/4,但し、T≧11
00
【0014】以下、実施形態ならびに各条件の限定理由
を説明する。基本的な製造法としては、小松等による
(Al,Si)Nを主インヒビターとして用いる製造法
(例えば特公昭62−45285号)を適用すればよ
い。Siは電気抵抗を高め、鉄損を下げる上で重要な元
素である。含有量が4.8%を超えると冷間圧延時に材
料が割れ易くなり、圧延不可能となる。一方、Si量を
下げると仕上げ焼鈍時にα→γ変態を生じ、結晶の方向
性が損なわれるので、実質的に結晶の方向性に影響を及
ぼさない0.8%を下限とする。酸可溶性AlはNと結
合してAlNまたは(Al,Si)Nとしてインヒビタ
ーとして機能するために必須の元素である。磁束密度が
高くなる0.012〜0.050%を限定範囲とする。
【0015】Nは製鋼時に0.01%以上添加するとブ
リスターとよばれる鋼板中の空孔を生じるので0.01
%を上限とする。Sは先述の結果より、低温域での純化
の律速になるので、0.012%を上限とする。他のイ
ンヒビター構成元素として純化を行う必要のないB,B
i,Pb,Sn等を添加することもできる。
【0016】上記成分の溶鋼は、通常の工程により熱延
板とされるか、もしくは溶鋼を連続鋳造して薄帯とす
る。前記熱延板または連続鋳造薄帯は直ちに、もしくは
短時間焼鈍を経て冷間圧延される。上記焼鈍は750〜
1200℃の温度域で30秒〜30分間行われ、この焼
鈍は製品の磁気特性を高めるために有効である。望む製
品の特性レベルとコストを勘案して採否を決めるとよ
い。
【0017】冷間圧延は、基本的には特公昭40−15
644号公報に開示されているように最終冷延圧下率8
0%以上とすればよい。冷間圧延後の材料は、鋼中に含
まれる炭素を除去するために湿水素雰囲気中で、750
〜900℃の温度域で脱炭焼鈍・窒化処理を行う。この
脱炭焼鈍の酸化層の制御を行うことが本発明の1つのポ
イントである。その制御法として、(1)脱炭焼鈍をF
e系酸化物の形成しない酸化度の雰囲気ガス中で行う方
法、具体的にはP H2 O /P H2 を0.01以上、0.
15未満とする方法また、(2)脱炭焼鈍で形成された
表面酸化層を除去する方法がある。
【0018】これらの脱炭焼鈍板を積層する際の焼鈍分
離剤としてアルミナを使用することが本発明の1つのポ
イントである。この塗布方法としては、水スラリーもし
くは静電塗布法等によりドライ・コート等で行えばよ
い。この積層した板を仕上げ焼鈍して、二次再結晶と純
化を行う。二次再結晶を特開平2−258929号公報
に開示されるように一定の温度で保持する等の手段によ
り所定の温度域で行うことは磁束密度を上げるうえで有
効である。二次再結晶完了後、純化を所定の温度・時間
域で効率的に行う。仕上げ焼鈍後、表面は既に平滑化さ
れているので、張力コーティング処理を行い、必要に応
じてレーザー照射等の磁区細分化処理を施せばよい。
【0019】
【実施例】
実施例1 重量で、Si:3.3%、Mn:0.1%、C:0.0
5%、S:0.007%、酸可溶性Al:0.03%、
N:0.008%、Sn:0.05%の板厚1.8mm珪
素鋼熱延板を酸洗後1.4mmに冷延した。次いで、11
00℃で2分間焼鈍した後最終板厚0.14mmに冷延し
た。この冷延板を窒素と水素の混合ガス中において酸化
度(1)0.06、(2)0.44で830℃の温度で
70秒焼鈍し一次再結晶させた。次いでアンモニア雰囲
気中で焼鈍することにより、窒素量を0.025%に増
加して、インヒビターの強化を行った。
【0020】これらの鋼板をその後、一部は(1)アル
ミナ(Al2 3 )を、一部は(2)従来のようにマグ
ネシア(MgO)を水スラリーで塗布した後、仕上げ焼
鈍を施した。仕上げ焼鈍は1150℃まではN2 :10
0%の雰囲気ガス中で行い、1150℃でH2 :100
%に切り替え5時間焼鈍を行った。これらの試料を張力
コーティング処理を施した後、レーザー照射して磁区細
分化した。得られた製品の磁気特性を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】実施例2 実施例1と同一の窒化処理後の試料を、酸洗により表面
酸化層を除去した後、アルミナを静電塗布し積層し、仕
上げ焼鈍を施した。仕上げ焼鈍は1100℃までは
2 :100%の雰囲気ガス中で行い、1100℃でH
2 :100%に切り替え20時間焼鈍を行った。これら
の試料を張力コーティング処理を施した後、レーザー照
射して磁区細分化した。得られた製品の磁気特性を表2
に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】本発明により、低鉄損の方向性電磁鋼板
を仕上げ焼鈍時に形状を損なうことなく効率的に製造す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】仕上げ焼鈍時の純化挙動を示す図表である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量で、 Si:0.8〜4.8%、 酸可溶性Al:0.012〜0.05%、 N ≦0.01%、 S ≦0.012% 残部実質的にFe及び不可避的不純物からなる珪素鋼帯
    を、一回もしくは中間焼鈍をはさむ二回以上の冷間圧延
    により最終板厚とし、次いで脱炭焼鈍・増窒素処理を行
    った後、板間の焼鈍分離剤としてアルミナを用いること
    により仕上げ焼鈍後に表面を鏡面にすることを特徴とす
    る鏡面方向性電磁鋼板の製造方法において、上記脱炭焼
    鈍をFe系酸化物の形成しない酸化度の雰囲気ガス中で
    行い、かつ脱炭板を積層する際の焼鈍分離剤としてアル
    ミナを用いることにより、仕上げ焼鈍時に鋼板の純化を
    促進させ、仕上げ焼鈍の純化を下記の温度;T(℃)、
    時間;t(hr)の領域で行うことを特徴とする鉄損の低
    い方向性電磁鋼板の製造方法。 62−T/20≦t≦297−T/4, T≧1100
  2. 【請求項2】 窒化処理後に表面酸化層を除去し、かつ
    脱炭板を積層する際の焼鈍分離剤としてアルミナを用い
    ることにより、仕上げ焼鈍時に鋼板の純化を促進させ、
    仕上げ焼鈍の純化を行うことを特徴とする請求項1記載
    の鉄損の低い方向性電磁鋼板の製造方法。
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