JPH07118720A - 溶銑予備処理用浸漬フリーボードのスラグ付着抑制方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 上方への火炎吹き出しがなく、排気ダクト入
口部への付着を抑制できる溶銑処理中のスラグ付着を抑
制する方法を提供する。 【構成】 溶銑中に外気遮断した浸漬フリーボードの下
部を浸漬し、その浸漬フリーボード中央部よりランスを
溶銑浴中に装入し少なくとも酸素もしくは酸化物および
所定の処理剤を注入して溶銑予備処理を行うにあたり、
該ランスによる処理中に浸漬フリーボードの上側壁に連
通接続した排気ダクトの入口部内にノズルをフリーボー
ド側に向けて配設し、このノズルから酸素を含むガスを
吹込み、処理溶銑から発生しフリーボードから排気ダク
トへ排気されてくるガスを排気ダクトの入口部内で燃焼
させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、溶銑予備処理を行う際
に浸漬フリーボード内側に付着するスラグ（地金を含有
する場合も含めて「スラグ」と総称する）の付着抑制方
法に関する。

【０００２】

【従来の技術】溶銑予備処理は、溶銑浴中に酸素もしく
は酸化物および所定の処理剤を溶銑中の珪素、燐、硫黄
等と反応させて除去する処理である。その際に、この処
理反応と併行して、酸素もしくは酸化物の一部が溶銑中
の炭素と反応して、一酸化炭素ガスが発生する。この一
酸化炭素ガス、および吸い込み処理剤のキャリアガスと
しての窒素ガスが、溶銑浴から大気中へ抜ける際に、ス
ロッピングあるいはスピッティングを生じて溶銑やスラ
グが処理容器からあふれる。これを防止するために図１
に示すように下部を溶銑浴１に浸漬させた浸漬フリーボ
ード３が用いられる。このようにすると、浸漬ランス４
による処理中に溶銑浴表面５が上昇し、更に処理開始直
後の発生スラグ表面６ａが６ｂのレベルまで上昇して
も、処理容器（溶銑鍋）２からあふれることがない。

【０００３】ところが図２に符号７で示すように、浸漬
フリーボード３の上部にスラグが付着して、浸漬フリー
ボード３の内容積が小さくなり溶銑やスラグが浸漬フリ
ーボード３上部の排気孔１０からあふれたり、あるいは
浸漬フリーボード３内のガスの流れが悪くなりガス漏洩
したりする現象が起きる。そのため、このような現象の
起きないうちに新しい浸漬フリーボードに早期に交換し
なくてはならない。また、新しい浸漬フリーボードへの
交換には長時間を要するため、設備の稼働率が著しく低
下する。

【０００４】スラグが付着する原因は、外部への放熱や
待機中の冷却により浸漬フリーボードの内壁がスラグ溶
融温度より低温になっており、浸漬フリーボードの内壁
に接触したスラグの一部が凝固するためである。そし
て、溶銑処理を繰り返すにしたがって凝固付着スラグの
量が徐々に堆積増加するのである。このように浸漬フリ
ーボード内壁に付着したスラグを除去する方法が特開昭
５８−１９７２１２号公報に提案されている。この方法
は真空脱ガス槽内に付着した地金を除去するために、非
処理期間中に槽内に酸素を送り込み、付着している地金
を燃焼させ、この燃焼熱で地金を溶融除去するものであ
る。

【０００５】またその他一般的な方法として、非処理期
間中に電気あるいはガスバーナにより、付着している地
金の溶融温度以上に加熱して溶融除去することも考えら
れる。これらの方法は、いずれも非処理期間中に行われ
るため、長時間にわたり生産を休止するか、あるいは設
備を２基設置して交互に地金除去作業を行う必要があ
る。したがって稼働率および生産性が低下し、あるいは
設備費が増大するという問題があった。また、付着した
地金中の鉄（Ｆｅ）分が少ない場合や、待機時間が長く
低温となった場合には、着火しないために除去ができな
いという問題もあった。

【０００６】そこで、これらの問題点を改善した方法と
して特公平４−４３６７号公報に、図３に示すように処
理中に浸漬フリーボード３内の溶銑浴１の上方で酸素を
含むガス９を吹込み、処理溶銑から発生・排気されるガ
スを燃焼させてスラグ付着を抑制する方法が提案されて
いる。しかしこの方法は、浸漬フリーボードの上端に接
続してあるランス昇降ガイド孔用シール装置や合金添加
口からの火炎１５の吹き出しが激しく、その上方にある
送酸ホースや粉体吹込み用ホース等の焼損が著しくなる
という問題があった。更に、依然として、フリーボード
上側壁に連通接続した排気ダクト１８の入口部へのスラ
グ付着１４が多く、堆積固着した場合には人手による除
去作業が必要になり、稼働率の低下が避けられなかっ
た。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、上方
への火炎吹き出しがなく、排気ダクト入口部への付着を
抑制できる溶銑処理中のスラグ付着を抑制する方法を提
供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の溶銑予備処理用浸漬フリーボードのスラ
グ付着抑制方法は、溶銑中に外気遮断した浸漬フリーボ
ードの下部を浸漬し、その浸漬フリーボード中央部より
ランスを溶銑浴中に装入し少なくとも酸素もしくは酸化
物および所定の処理剤を注入して溶銑予備処理を行うに
あたり、浸漬フリーボードの上側壁に連通接続した排気
ダクトの入口部内にノズルをフリーボード側に向けて配
設し、該ランスによる処理中に上記ノズルから酸素を含
むガスを吹込み、処理溶銑から発生しフリーボードから
排気ダクトへ排気されてくるガスを排気ダクトの入口部
内で燃焼させることを特徴とする。

【０００９】

【作用】前述のように溶銑予備処理中には溶銑から一酸
化炭素ガスが発生しており、これがフリーボード上側壁
に連通した排気ダクトを通って排気されてくる。本発明
においては、この排気ダクトの入口部内にノズルをフリ
ーボード側に向けて配設し、排気ガス流に対抗させてこ
のノズルから酸素を含むガスを吹き込み、一酸化炭素ガ
スを含む排気ガスを排気ダクト入口部内で燃焼させるこ
とにより、上方への火炎吹き出しがなく、排気ダクト入
口部への付着を抑制できる。

【００１０】

【実施例】図４に、本発明による浸漬フリーボードの一
例を示す。溶銑鍋２に収容された溶銑１中に外気遮断し
た浸漬フリーボード３の下部を浸漬し、その浸漬フリー
ボード３中央部よりランス４を溶銑浴１中に装入し、少
なくとも酸素もしくは酸化物および所定の処理剤８を注
入して溶銑予備処理を行うようになっている。浸漬フリ
ーボード３の上側壁に連通接続した排気ダクト１８の入
口部内にノズル１９をフリーボード３側に向けて配設
し、該ランス４による処理中にノズル１９から酸素を含
むガス２０を吹込み、処理溶銑から発生しフリーボード
から排気ダクト１８へ排気されてくるガスを排気ダクト
１８の入口部内で燃焼させる。

【００１１】酸素を含有するガス２０としては、空気を
用いることが望ましい。空気は純酸素に比べて窒素で希
釈されているため燃焼温度が低くかつ燃焼面積が広いた
め、付着スラグの除去範囲が十分に確保できると共にダ
クト１８やフリーボード３の耐火物に対する影響が少な
いという利点がある。また吹込み方式は、発生ガスの排
気流に対して対向噴流方式とする。これにより、火炎部
が短く安定であるため、操業のばらつきに対しても固定
ノズル、固定流量にて安定した処理が可能になる。

【００１２】なお、本実施例においては、前出の特公平
４−４３６７号の方式も併せて採用し、浸漬フリーボー
ド３の側壁から上部空間内へ空気９を吹き込み、図２に
示したスラグ付着７を発生ガスの燃焼により防止してい
る。上記の装置を用いて以下の条件で処理を行った。 〔処理条件〕 吹込ガス Ａｉｒ 吹込速度 ３００ Nm³/hr （Ｏ₂ 換算 １５ Nm³/hr) 吹込方向 浸漬フリーボードに対し４５度下向き 吹込時間（処理時間） １８分／ch その結果、側壁からの空気吹込み９のみを行っていた従
来の方法ではダクト入口部内の付着スラグ除去に月平均
８６時間を要していたのに対して、側壁からの空気吹込
み９に加えてダクト入口部での空気吹込み２０を行った
本発明の方法では月平均７時間と、付着スラグ除去作業
時間を著しく短縮することができた。これに伴い設備稼
働率も従来の３８％に対して、本発明では６６％とほぼ
２倍に向上することができた。また本発明の方法によれ
ば、排気ダクト入口部内でのスラグ付着が極めて少ない
ので、排気不良によるフリーボード上方への火炎噴出も
全く起きることがなくなった。

【００１３】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
上方への火炎吹き出しがなく、排気ダクト入口部への付
着を抑制して溶銑処理中のスラグ付着を抑制することが
できる。そしてこれにより付着スラグ除去作業時間を著
しく短縮でき、設備稼働率を大幅に向上させることがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】従来の浸漬フリーボードを示す断面図である。

【図２】従来の浸漬フリーボードの側壁へのスラグ付着
を示す断面図である。

【図３】従来の浸漬フリーボード側壁へのスラグ付着抑
制方法を示す断面図である。

【図４】本発明による浸漬フリーボード側壁へのスラグ
付着抑制方法を示す断面図である。

【符号の説明】

１…溶銑浴 ２…溶銑処理容器（溶銑鍋） ３…浸漬フリーボード ４…処理剤吹込み用ランス ５…溶銑浴表面 ６ａ，６ｂ…発生スラグ表面 ７…浸漬フリーボード上部内壁の付着スラグ ９…浸漬フリーボードの溶銑浴１上方に吹き込む酸素含
有ガス（空気等） １０…排気孔 １４…排気ダクト入口部内に付着したスラグ １５…浸漬フリーボード上方に噴出する火炎 １８…フリーボード３の上側壁に連通接続した排気ダク
ト １９…フリーボード３側に向けて排気ダクト１８の入口
部内に設けたノズル ２０…ノズル１９から吹き込む酸素含有ガス（空気等）

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 溶銑中に外気遮断した浸漬フリーボード
   の下部を浸漬し、その浸漬フリーボード中央部よりラン
   スを溶銑浴中に装入し少なくとも酸素もしくは酸化物お
   よび所定の処理剤を注入して溶銑予備処理を行うにあた
   り、該ランスによる処理中に浸漬フリーボードの上側壁
   に連通接続した排気ダクトの入口部内にノズルをフリー
   ボード側に向けて配設し、このノズルから酸素を含むガ
   スを吹込み、処理溶銑から発生しフリーボードから排気
   ダクトへ排気されてくるガスを排気ダクトの入口部内で
   燃焼させることを特徴とする溶銑予備処理用浸漬フリー
   ボードのスラグ付着抑制方法。