JPH0711102B2 - 空気噴射式織機の補助ノズル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は、空気噴射式織機において、緯糸の飛走を補
助するために緯糸飛走径路に沿って配設される空気噴射
式織機の補助ノズルに関する。

従来技術 空気噴射式織機においては、織布の給糸側端に配設され
た主ノズルから空気ジェットを噴射するとともに、この
主ノズルによって、緯糸は、経糸開口中の緯糸飛走径路
に沿って飛走せしめられる。而して、主ノズルから噴射
される空気ジェットのみでは、緯糸を織布の全幅にわた
って、充分なる高速度を以って飛走せしめることは困難
であるから、これを補助するために、緯糸飛走径路に沿
って、いくつかの補助ノズルを配設し、この補助ノズル
からも空気ジェットを噴射せしめ、以って、緯糸の確実
なる飛走を達成することが行なわれる。

かかる補助ノズルの性能としては、得られる空気ジェッ
トの到達距離が充分であることのみならず、その噴射方
向の安定性と再現性も、また、重要であって、これらの
諸特性の向上を図るために、従来から、種々の工夫が提
案されている所である。

たとえば、特開昭57-47950号公報に示すものは、空気噴
射孔の長さを特に長くすることによって、空気ジェット
の噴射方向の再現性を高めようとするものであり、特開
昭60-134048号公報に示すものは、空気噴射孔を設けた
部位の内側に、空気の偏向流の方向を規制するためのリ
ブを設けて、空気ジェットの拡散を抑制し、以って、空
気ジェットの到達距離の増大を図らんとするものであ
る。さらに、特公昭55-36735号公報に示すものは、空気
噴射孔を多数の小孔の集合によって形成することによ
り、空気ジェットの噴射方向の安定性の改善を主目的と
するものである。

発明が解決しようとする問題点 しかしながら、これらの従来技術は、すべからく一長一
短であって、それぞれ、次のような欠点を伴なうもので
ある。すなわち、前記第１のものにあっては、空気噴射
孔の長さを充分大きくとるためには、少なくとも、空気
噴射孔が穿設されている部分の部材の肉厚を大きくする
必要があり、そのために、空気噴射孔に連接する圧縮空
気の導入径路の断面積を充分に確保することができず、
したがって、空気ジェットの速度を充分に高くすること
が到難である。また、第２のものにあっては、空気噴射
孔を設けた部位の内側にリブを形成すること自体、構造
が複雑で製造が困難であるのみならず、リブで仕切られ
た両側の圧縮空気の導入径路の左右の容積バランスがと
り難いので、空気ジェットの噴射方向に振動を生じ、し
たがって、その安定性を極端に悪くするおそれがあるも
のである。さらに、第３のものにおいては、小孔の集合
からなる空気噴射孔における圧力損失が大きいため、空
気ジェットの到達距離が不足しがちであり、これを補う
とすれば、過大な圧力の圧縮空気を大量に供給しなけれ
ばならないのが実情である。

そこでこの発明の目的は、かかる従来技術の実情に鑑
み、軸心が空気噴射孔の穿設方向にほぼ一致し、空気噴
射孔の背面側に開口する内部ノズルを導入することによ
って、この内部ノズルの周囲を流れる空気流には、コア
ンダ効果（Coanda effect）による収束性が得られる
上、内部ノズルの先端部の領域に生じる負圧によって、
内部ノズルには、エジェクタ効果による大気の吸引が行
なわれるので、単純な構成でありながら、少量の圧縮空
気消費量にも拘らず、空気ジェットの到達距離が充分に
長くとれ、しかも、その噴射方向の安定性と再現性も優
れている空気噴射式織機の補助ノズルを提供することに
ある。

問題点を解決するための手段 かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、偏平中
空体の先端を閉塞するとともに、その先端部の一方の側
壁に空気噴射孔を設け、空気噴射孔に対向する側壁に、
一端が該側壁に開口し、少なくとも先端部の外径が前記
空気噴射孔より小径であるとともに、軸心が空気噴射孔
の穿設方向にほぼ一致しており、しかも、先端が偏平中
空体の外方に突出しないように長さを定めた管状の内部
ノズルを立設したことをその要旨とする。

作用 而して、前記構成によるときは、偏平中空体の後端側か
ら圧縮空気を供給し、空気噴射孔から空気ジェットとし
て噴射せしめるとき、空気は、コアンダ効果によって内
部ノズルの周囲に収束されて流れる傾向が生じる一方、
この空気の流れは、内部ノズルの先端部の領域に負圧を
形成するため、エジェクタ効果によって大気が内部ノズ
ルに吸引され、これが空気ジェットの空気量の増大に貢
献するため、空気噴射孔から噴射される空気ジェットの
噴射方向を、再現性よく、安定に制御することができる
とともに、空気ジェットの到達距離特性の向上と圧縮空
気消費量の低減とを実現することができるものである。

実施例 以下、図面を以って実施例を説明する。

空気噴射式織機の補助ノズルＮは、偏平中空体１の先端
を閉塞するとともに、その一方の側壁1aに空気噴射孔２
を設け、他方の側壁1bに、偏平中空体１の背面側に開口
する管状の内部ノズル３を立設してなる（第１図、第２
図）。

偏平中空体１は、たとえば板厚ｔが0.5mm程度のステン
レススチール板を深絞り加工することによって得られる
ものであり、全体としては、先細の偏平管状であって、
先端部は、互いに傾斜する平坦な側壁1a、1bを有すると
ともに、後端部は、平行な側壁1d、1eを有するように形
成されている。また、その図示しない後端側は、適当な
コネクタを介して、圧縮空気源に接続し得るようになっ
ている。さらに、先端部の両側壁1a、1bには、経糸との
捌きをよくするために、平面状の凹部1c、1cが形成して
ある。

空気噴射孔２は、偏平中空体１の先端部の一方の側壁1a
に穿設された丸孔であるが、その穿設方向Ｘは、得られ
る空気ジェットＪに所定の噴射角θ１と噴向角θ２とを
付与するべく、側壁1aに対して若干傾けた方向としてあ
るものである。ここに、噴射角θ１と噴向角θ２とは、
それぞれ、空気ジェットＪの主要ローブの、水平面Ｈに
対する上向き角と、後端部の側壁1dに立てた垂直面Ｖに
対する偏向角とをいうものとする。

内部ノズル３は、基部から先端部にかけて、外径を滑ら
かに漸減し、空気噴射孔２の直径Ｄより小さい外径ｄの
先端を有する略漏斗状のパイプであって、その基部は、
空気噴射孔２に対向する側の側壁1bに穿設した取付孔1f
に固着され、また、その先端部は、偏平中空体１の内側
において、空気噴射孔２に向けて立設されている。ま
た、その立設方向は、内部ノズル３の軸心が、前記空気
噴射孔２の穿設方向Ｘとほぼ一致する方向としてある。
すなわち、内部ノズル３の一端は、偏平中空体１の背面
側の側壁1bに開口している一方、その先端は、空気噴射
孔２と同心状に配置され（第３図）、その両端は、とも
に、偏平中空体１に形成した平面状の凹部1c、1cと同一
平面となるように仕上げられている（第１図、第２
図）。

いま、内部ノズル３を空気噴射式織機の補助ノズルＮに
設けないものとすれば、偏平中空体１の後端側から圧縮
空気を供給したとき、空気噴射孔２から噴射する空気ジ
ェットＪの噴射方向は、必らずしも、空気噴射孔２の穿
設方向Ｘに一致するものではない。この原因は、偏平中
空体１の肉厚ｔが空気噴射孔２の直径Ｄに比して小さい
ため、空気噴射孔２を流れる空気の方向を規制するため
の拘束距離を十分にとることができず、空気噴射孔２を
通過する際に、空気ジェットＪの正確な方向規制ができ
ないこと、したがって、空気ジェットＪの噴射方向が、
供給される圧縮空気の圧力変動に対して敏感に変化する
こと、側壁1aの内面における空気噴射孔２の端面の形状
は、その全周にわたって均一にすることが困難であり、
その端面の部分における空気の流れの形態が均一となら
ず、その結果として、空気ジェットＪの周上で、その噴
射の拡散角が異り、空気ジェットＪの噴射方向が安定し
なくなってしまうこと、肉厚ｔが薄いため、空気噴射孔
２の穿設方向Ｘを常に一定に加工すること自体、困難で
あること等に起因するものと考えられている。

而して、内部ノズル３を設けるときは、偏平中空体２に
供給され、空気噴射孔２に導かれる圧縮空気の流れは、
コアンダ効果によって、内部ノズル３の外周に沿って流
れる傾向を示し、したがって、内部ノズル３のまわりに
強く収束される傾向にあるから（第１図、第２図の矢印
P1、P1…）、空気噴射孔２から噴射される空気ジェット
Ｊの噴射方向は、供給される圧縮空気の圧力に多少の変
動があるときでも、空気噴射孔２の穿設方向Ｘや、空気
噴射孔２の端面の形状より、むしろ、内部ノズル３の立
設方向によって強く規制されるに至るものである。そこ
で、内部ノズル３の軸心の方向を、空気噴射孔２の穿設
方向Ｘにほぼ一致した、所定の噴射角θ１、噴向角θ２
の方向にとることによって、空気ジェットＪの噴射方向
を、再現性よく、しかも、安定に、所定方向に規制する
ことができるものである。

加えて、内部ノズル３の外周に沿って流れ、空気噴射孔
２から空気ジェットＪとして噴射する圧縮空気の流れ
は、エジェクタ効果によって、内部ノズル３の先端部の
領域を負圧にするから、偏平中空体１の背面側の側壁1b
に開口した内部ノズル３の開口部からは、大気が吸引さ
れ（第１図、第２図における矢印P0、P0…）、空気ジェ
ットＪの空気量を大きく増大させる。したがって、空気
ジェットＪは、内部ノズル３がないときに比較すると、
その到達距離特性に大幅な改善が見られるものである。

なお、この実施例においては、空気噴射孔２と内部ノズ
ル３とは、それぞれ、側壁1a、1bに設けた平面状の凹部
1c、1cに位置せしめてあり、その部分は、偏平中空体１
の他の部分に対して低くなっているから、仮に、内部ノ
ズル３の両端部が、若干、凹部1c、1cの外方に突出した
としても、その突出長さが前記凹部1c、1cの凹み量を越
えない限り、すなわち、側壁1a、1bの外面を越えない限
り、偏平中空体１の外周に沿って移動する経糸の捌きに
悪影響を及ぼすおそれがない。

他の実施例 偏平中空体１の側壁1a、1bに形成する平面状の凹部1c、
1cは、これを省略することもできる（第４図、第５
図）。このときは、前記経糸に対する悪影響のおそれを
排するために、内部ノズル３の基部は、厳密に側壁1bの
外面と同一平面に仕上げるとともに、先端部は、偏平中
空体１の外方に突出しないように、側壁1aの外面よりい
くぶん低くしておくのがよい。

内部ノズル３は、少なくともその先端部に、凹溝3a、3a
…を長手方向に形成することによって、異形断面として
もよい（第６図（Ａ）ないし（Ｄ））。凹溝3a、3a…
は、内部ノズル３の周方向の空気の流れに対して、空気
ジェットＪに捻れが生じることを抑制することができる
ので、空気ジェットＪの拡散角を小さくし、したがっ
て、空気ジェットＪの安定性と到達距離性能を一層向上
することができる。

さらに、以上の各実施例における内部ノズル３は、その
外径を漸減することなく、均一太さに形成することもで
きる（第７図）。内部ノズル３の形状が単純であるの
で、製造が容易である。

なお、内部ノズル３の最大長さは、その先端が、空気噴
射孔２を形成した側壁1aの外面から突出しない限度に抑
えられることは前述のとおりであるが、その最小長さに
ついては、必らずしも、その先端が側壁1aの内面に到達
しなくても、よく、その機能を発揮することができるも
のである。すなわち、内部ノズル３の最小長さは、内部
ノズル３の外周に沿って流れて、空気噴射孔２から噴射
する圧縮空気の流れが、内部ノズル３内に逆流を起さな
い限度にまで短くしてもよいものである。

発明の効果 以上説明したように、この発明によれば、偏平中空体の
先端部に設けた空気噴射孔に対向する側壁に、偏平中空
体の背面側に開口する内部ノズルを立設し、この内部ノ
ズルの軸心は、空気噴射孔の穿設方向にほぼ一致せしめ
るとともに、その長さは、先端が、偏平中空体の外方に
突出しないように定めることによって、空気噴射孔から
噴射する圧縮空気は、偏平中空体の内部において、コア
ンダ効果によって内部ノズルの外周に強く収束する傾向
を呈するから、安定性と再現性とに優れた空気ジェット
が得られるばかりでなく、内部ノズルには、先端部の領
域に負圧が形成されることによるエジェクタ効果によっ
て大気が吸引され、この空気が空気ジェットの空気量を
増大せしめるのに貢献するから、到達距離特性も改善す
ることができるとともに、圧縮空気消費量の低減が可能
となり、加えて、構造が簡単であるから製造も容易であ
るという優れた効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図は実施例を示し、第１図は縦断面説
明図、第２図は横断面説明図、第３図は空気噴射孔側か
らの拡大側面図である。 第４図と第５図は、別の実施例を示す第１図相当図と第
２図相当図である。 第６図（Ａ）ないし（Ｄ）は、それぞれ、さらに別の実
施例による内部ノズルの先端部横断面図である。 第７図は、さらに別の実施例を示す第１図相当図であ
る。 Ｎ……空気噴射式織機の補助ノズル Ｘ……空気噴射孔の穿設方向 １……偏平中空体、1a、1b……側壁 ２……空気噴射孔 ３……内部ノズル、3a……凹溝

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】先端が閉塞され、後端側から圧縮空気を供
   給される偏平中空体の先端部の一方の側壁に空気噴射孔
   を設けてなる空気噴射式織機の補助ノズルにおいて、前
   記空気噴射孔に対向する側壁に、一端が該側壁に開口
   し、少なくとも先端部の外径が前記空気噴射孔より小径
   の管状の内部ノズルを、前記空気噴射孔に向けて立設す
   るとともに、前記内部ノズルの軸心は、前記空気噴射孔
   の穿設方向にほぼ一致せしめる一方、前記内部ノズルの
   長さは、該内部ノズルの先端が前記偏平中空体の外方に
   突出しないように選定したことを特徴とする空気噴射式
   織機の補助ノズル。