JPH069644Y2 - スロープ式入浴装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、重症患者、痴呆症老人、寝たきり老人等の入
浴者を寝かせた状態で入浴させる入浴装置に係り、医療
機関、老人ホーム等に利用できる。

〔従来の技術〕

従来より体が不自由で寝たきりの人等を入浴させる入浴
装置が知られている。この入浴装置の内、入浴者を垂直
上下方向に移動すると入浴者に恐怖感を与える点を考慮
して、浴槽にスロープを設け、このスロープに沿って入
浴者を寝かせた入浴台を移動することにより、入浴台を
斜め方向に徐々に移動して、入浴者に恐怖感を与えない
ようにした入浴装置が本願考案者によって提案されてい
る（実願昭６２−１３５６４５号）。

この入浴装置では、入浴台の一端にワイヤを係止し、こ
のワイヤをウインチにより巻き上げ、巻きほぐして入浴
台の移動を行っていたり、人手により入浴台を移動して
いた。

特にワイヤにより入浴台の移動を行う場合には、入浴台
がスロープの位置にあればワイヤをウインチにより巻き
ほぐすだけで、入浴台は浴槽内に自動的に移動し、ま
た、ワイヤを巻き上げることにより、入浴台を浴槽から
スロープに沿って案内部まで人手によらず移動すること
ができた。

〔考案が解決しようとする課題〕

しかし、入浴台を浴槽のスロープに案内する案内部は水
平に形成されていたため、入浴台の移動をワイヤで行う
場合であっても、入浴台をスロープに移動するには、ワ
イヤをウインチにより巻きほぐすだけでなく、入浴台を
人手により浴槽側に押す作業が必要であり、入浴者の世
話をする介護人に負担をかけていた。

本考案の目的は、入浴台の移動の際に、入浴者を介護す
る介護人の負担を軽減するスロープ式入浴装置を提供す
ることにある。

〔課題を解決するための手段〕

本考案は、浴槽に入浴者の足部側が深くなる湯溜りを形
成するスロープを設けるとともに、入浴者を載置可能な
入浴台を浴槽のスロープ内に挿入可能に設け、さらに、
前記入浴台を浴槽のスロープに案内する案内部に、新た
に浴槽の湯溜りに向かって低くなる傾斜を付けて、前記
入浴台を湯溜りに向かって自動的に移動することを特徴
とするスロープ式入浴装置である。

本考案において、入浴台は、移動を容易にする車輪を有
していてもよく、入浴者の臀部で折れ曲がるもの、ある
いは折れ曲がらないものでもよい。

〔作用〕

このような構成の本考案において、入浴者を入浴させる
には、入浴者を寝かせた入浴台を案内部に配置する。こ
の際、入浴台を案内部に配置してから入浴者を入浴台に
寝かしても、あるいは入浴台に入浴者を寝かしてから入
浴台を案内部に配置してもよい。

案内部に配置された入浴台は、案内部に新たに設けられ
た傾斜により、介護人等が入浴台を移動することなく自
動的にスロープに移動し、更にスロープに沿って浴槽に
侵入して、入浴者を入浴させる。

出浴は、入浴とは逆に入浴台を浴槽から案内部に移動さ
せて行う。

〔実施例〕

以下、本考案の一実施例を図面に基づいて説明する。

第１図および第２図には、本考案の一実施例の全体構成
が示され、入浴装置１、および、この入浴装置１にガイ
ドレール２を介して連設される洗浄台３が示されてい
る。

入浴装置１は、浴槽１０および入浴台２０を備えてい
る。浴槽１０には、第３図にも示すように、内部に一端
に向かって下降するスロープ１１が形成され、このスロ
ープ１１により入浴者９０（第７図参照）の足部９１側
が深くなる湯溜り１２が形成されている。

スロープ１１の上端は、スロープ１１側すなわち湯溜り
１２側に向かって僅かに下降する緩斜面とされた案内部
１３へと連なっている。

また、スロープ１１の両側には、スロープ１１の傾斜面
より一端側、すなわち湯溜り１２側のやや上方に向かっ
て略平行移動された傾斜面を有する車輪ガイド１４が形
成されている。この車輪ガイド１４の途中には、案内部
１３の緩斜面の傾斜と同じ傾斜を有し、案内部１３の緩
斜面の延長線上に位置する緩斜面部１４Ａが形成されて
いる。また、車輪ガイド１４の上端は、浴槽１０の上面
１０Ａへと連なっている。

浴槽１０の案内部１３上には、入浴台２０が載置されて
いる。この入浴台２０は、第４図〜第６図に詳細に示さ
れるように、入浴者９０を載置可能な大きさに形成され
た入浴担架３０と、この入浴担架３０を支持して移動す
るキャリヤー５０とで構成される。

入浴担架３０は、中央部でヒンジ３１を介して折れ曲が
り可能に連結された一対の板状体３２，３３を備えてい
る。この板状体３２，３３の上面には、複数の長孔が形
成されたウレタン板等からなる柔軟なシート３２Ａ，３
３Ａがそれぞれ取り付けられている。

スロープ１１側の板状体３２およびシート３２Ａには、
足止め係止孔３２Ｂが長手方向に渡って複数形成されて
おり、入浴者９０の足部９１を当てる足止め３４が、入
浴者９０の身長に合わせて位置調整可能に嵌合されてい
る。一方、板状体３３およびシート３３Ａには、枕係止
孔３３Ｂが長手方向に渡って複数形成されて、入浴者９
０の頭部９２を支える枕３５が位置調整可能に嵌合され
ている。

板状体３２の下面のヒンジ３１近傍には、入浴担架３０
の長手方向を回転軸方向とした一対の円柱状のローラ３
６が、入浴担架３０の幅方向に所定間隔離された場所に
それぞれ１組づつ回転自在に支持されている。また、こ
のローラ３６から長手方向の足止め３４が嵌合されてい
る方向に所定間隔離された場合にも、ローラ３６と同様
の一対のローラ３７が、それぞれ１組づつ回転自在に支
持されている。

一方、板状体３３の下面略中央には、ローラ３６，３７
に比べて回転軸方向の長さが長く形成された各一対のロ
ーラ３８が、ローラ３６，３７と同様に入浴担架３０の
幅方向に所定間隔離され、かつ、入浴担架３０の長手方
向を回転軸方向として回転自在に支持されている。

また、板状体３３の幅方向両側近傍に形成された係止孔
３３Ｃには、入浴者９０が手で掴むため、もしくは介護
人が入浴担架３０の移動等に使うためのロールバー３９
が嵌合されている。更に、板状体３２，３３の幅方向の
両側に固定された把手４０，４１には、入浴担架３０に
対して入浴者９０が移動しないように固定するベルト４
２，４３がそれぞれ取り付けられている。

入浴担架３０の下側に配置されたキャリヤー５０は、入
浴担架３０と同様に略中央部でヒンジ５１を介して折り
曲がり可能に連結された支持体５２，５３を備えてい
る。この支持体５２，５３は、第６図に詳細に示される
ように、角材をスケルトン状に骨組みして形成され、そ
の上面には、前記入浴担架３０のローラ３６，３７，３
８をそれぞれガイドするガイドレール５４，５５，５６
が固定されている。この際、各ローラ３６，３７，３８
は、その軸方向両端部にそれぞれフランジ部を有し、各
ガイドレール５４，５５，５６から外れないようにされ
ている。

また、このキャリヤー５０上に入浴担架３０が配置され
た際に、キャリヤー５０と入浴担架３０を固定するため
に、固定手段２１がそれぞれに設けられている。この固
定手段２１は、第８図に示すように、入浴担架３０下面
に回転自在に取り付けられたアーム２２と、このアーム
２２の回転中心の両側に、それぞれ入浴担架３０の長手
方向の異なる方向に伸ばされ、アーム２２に対して回動
自在に取り付けられたロッド２３Ａ，２３Ｂと、キャリ
ヤー５０のレール５４，５５に沿って取り付けられ、ロ
ッド２３Ａ，２３Ｂの先端が嵌挿される係止孔２４Ａ，
２４Ｂを有する固定部材２５Ａ，２５Ｂとを備えてい
る。

アーム２２の一端側および入浴担架３０間には、アーム
２２を一方向に付勢するばね２６が設けられて、通常は
ロッド２３Ａ，２３Ｂの先端が係止孔２４Ａ，２４Ｂに
嵌挿するようにされている。

さらに、入浴担架３０の下面両側には、アーム２２を支
持するアームガイド２７Ａ，２７Ｂが、下面長手方向に
は、ロッド２３Ａ，２３Ｂを支持するロッドガイド２８
Ａ，２８Ｂがそれぞれ固定されている。

スロープ１１側の支持体５２の一端両側には、支持体５
２の外縁から突出された支持部５７Ａにより一対の大径
の車輪５７が、一方、他端側の内側には、一対の小径の
車輪５８がそれぞれ回転自在に支持されている。また、
支持体５３の反スロープ１１側の一端内側にも、一対の
小径の車輪５９が回転自在に支持されている。

これらの車輪５７，５８，５９は、車輪５７が車輪ガイ
ド１４の緩斜面部１４Ａの位置にあって、車輪５８，５
９が案内部１４の位置にあるとき、つまり、車輪５７，
５８，５９が同一斜面上にあるときに、キャリヤー５０
が水平になるように、支持体５２，５３からの取り付け
位置や車輪の径が設定されている。

また、大径の車輪５７はスロープ１１の両側に沿った車
輪ガイド１４上を転動可能にされ、一方、小径の車輪５
８，５９はスロープ１１上を転動可能にされているの
で、この転動に伴う車輪ガイド１４とスロープ１１との
段差により、支持体５２，５３、および、入浴台３０の
板状体３２，３３は、第７図に示されるように、入浴者
９０の臀部近傍で折曲され、かつ、臀部が支持される側
の支持体５２および板状体３２は、常時ほぼ水平を維持
しながら移動されるようになっている。

また、一対の車輪５７の支持部５７Ａの外側には、樹脂
板等からなる半円板状の横揺れ防止部材６０がそれぞれ
取り付けられ、浴槽１０の内側部１０Ｂに接触してキャ
リヤー５０の横振れを防いでいる。

支持体５３の反スロープ１１側の一端には、一対のワイ
ヤ係止用フック６１が螺合されており、第１図および第
３図に示すように、キャリヤー５０をスロープ１１に沿
って移動させるためのチェーン、ロープ、又はワイヤ６
２の一端が係止されている。このワイヤ６２の他端は、
案内部１３の端部に回転自在に取り付けられたプーリ６
３を介して、ウインチ６４に巻き上げられるようになっ
ている。

また、浴槽１０の湯溜り１２の前壁１０Ｃには、気泡ス
イッチ、ウインチ発停スイッチ、殺菌スイッチ等が設け
られたスイッチパネル７１、給湯バルブ７２、給湯ミキ
シング７３、シャワーミキシング７４、気泡バルブ７５
等が設けられて、湯溜り１２への注湯、注水や温度調節
ができるようになっている。

一方、浴槽１０の内側部１０Ｂには、複数のオーバーフ
ロー７６が形成されて、温湯等が浴槽１０により溢れな
いようにされている。

入浴装置１の横側には、ガイドレール２が設置されてい
る。このガイドレール２は、キャリヤー５０が案内部１
３上の所定位置にあるとき、キャリヤー５０上に固定さ
れたガイドレール５４，５５，５６に、一端がそれぞれ
接続されるように設けられた３本のガイドレール８２，
８３，８４により構成されている。

一方、ガイドレール８２，８３，８４の他端は、入浴装
置１に平行して置かれている洗浄台３の上まで延長され
ており、このガイドレール８２，８３，８４により、入
浴担架３０を洗浄台３から入浴装置１のキャリヤー５０
上まで移動することができる。

洗浄台３は、側面にシャワーユニット８５を、上面に排
出口８７を有する流し８８等を備えて、入浴者９０の体
を洗うことができる。

次に、本実施例の作用につき、第７図をも参照して説明
する。

浴槽１０の湯溜り１２に適宜温度の温湯を所定深さまで
注入しておき、入浴担架３０上に入浴者９０を載せる。
この際、必要に応じて入浴者９０をベルト４２，４３を
用いて入浴担架３０上に固定する。

入浴に先立ち、入浴者９０の体に掛け湯や素洗い等を行
う場合には、洗浄台３上に、入浴者９０を寝かせた入浴
担架３０を配置して、入浴者９０の体に掛け湯や素洗い
等を行う。

次いで、入浴者９０を載せたまま入浴担架３０をガイド
レール８２，８３，８４上を移動させて、入浴装置１の
所定位置に設置されているキャリヤー５０上に配置す
る。この際、固定手段２１のアーム２２をばね２６の付
勢方向に反する方向に移動して入浴担架３０を配置し、
その後アーム２２をばね２６の付勢方向に移動し、ロッ
ド２３Ａ，２３Ｂの先端を係止孔２４Ａ，２４Ｂに嵌挿
して入浴担架３０とキャリヤー５０とを固定する。

その後、ウインチ６４を作動させてワイヤ６２を巻きほ
ぐしていくと、入浴担架３０およびキャリヤー５０によ
り構成される入浴台２０は、第７図に示されるように、
緩斜面とされた案内部１４により、自動的にスロープ１
１側に移動し、更にスロープ１１および車輪ガイド１４
に沿って下降して、入浴者９０を温湯内に入れる。この
入浴台２０の下降に伴い、スロープ１１と車輪ガイド１
４との段差により、入浴担架３０およびキャリヤー５０
は、それぞれヒンジ３１，５１の部分から折れ曲がり、
入浴者９０の臀部、腹部を温湯中に沈めて入浴者９０を
温める。この際、必要に応じて気泡スイッチおよび気泡
バルブ７５により、気泡を発生させる。

入浴者９０を十分に温めた後、入浴台２０をウインチ６
４により案内部１３上に引き上げ、入浴担架３０とキャ
リヤー５０との固定手段２１を外す。その後、必要に応
じて洗浄台３における入浴者９０の洗浄や、入浴装置１
における入浴を繰り返した後、入浴担架３０ごと入浴者
９０を移動して、入浴を完了する。

このような本実施例によれば、入浴台２０を浴槽１０の
スロープ１１に案内する案内部１４に傾斜を付けたの
で、ウインチ６４を巻きほぐすだけで案内部１４上の入
浴台２０は、自動的にスロープ１１に移動し、介護人が
入浴台２０を移動させる必要がないので、介護人の負担
を軽減することができる。しかも、ウインチ６４を停止
させることで、入浴台２０を任意の位置に停止でき、ま
た、ウインチ６４によりワイヤ６２を巻き上げることに
より、入浴台２０を湯溜り１２から引き上げることもで
きるので、介護人の負担をより軽減することができる。

入浴台２０を、入浴担架３０およびキャリヤー５０の２
つの部材からなるセパレート式にしたので、入浴者９０
を入浴担架３０のみで洗浄台３等に移動することができ
る。従って、キャリヤー５０を常に入浴装置１上に配置
して、ワイヤ６２を常時接続しておくことができるの
で、ワイヤ６２の掛け外し作業を不要にでき、作業効率
が向上する。

また、入浴担架３０への入浴者９０の乗降も、入浴装置
１とは別の場所で行えるので、入浴装置１の入浴者９０
一人あたりの使用時間を少なくでき、入浴装置１の使用
頻度を高くすることができる。

入浴台２０は、車輪ガイド１４とスロープ１１との段差
により折れ曲がるので、入浴者９０を十分に温湯中に浸
すことができる。

入浴担架３０の洗浄台３から入浴装置１への移動には、
入浴担架３０に設けられたローラ３６，３７，３８を、
ガイドレール８２，８３，８４上を転動させて移動して
いるので、介護人が入浴担架３０を持って移動するのに
比べて介護人に負担を掛けず、また、入浴者９０には、
入浴担架３０が上下に揺れることがないので恐怖感を与
えない。

なお、本考案は、前記実施例の構成等に限定されるもの
ではなく、本考案の目的を達成できる範囲の変形は、本
考案に含まれるものである。

例えば、入浴台２０は、入浴担架３０とキャリヤー５０
とのセパレート式でなく、一体式のものでもよい。但
し、一体式の場合に入浴者９０を移動するには、入浴装
置１の上で入浴者９０を他の担架等に移し変えるか、ま
たは、入浴台２０からワイヤ６２を外して入浴台２０ご
と移動しなければならないのに対し、セパレート式の場
合には、入浴担架３０のみ移動すればよいので、介護人
の負担を軽減できるとともに、入浴装置１を効率良く使
用できる。

入浴台２０には、必ずしも車輪５７，５８，５９を設け
なくてもよいが、設ければ入浴台２０の移動を円滑にで
きるという利点がある。

入浴装置１と洗浄台３とを、別体にせず例えば案内部１
４で入浴者９０の体を洗うようにしてもよい。但し、別
体にしたほうが、入浴装置１の設置スペースが極端に長
くならず、スペースの有効利用が図れる。また、入浴装
置１で入浴者９０が入浴している時に、他の入浴者９０
を洗浄台３で洗うことができるので、入浴装置１の使用
を効率良くできる。

洗浄台３から入浴装置１への入浴担架３０の移動は、ガ
イドレール８２，８３，８４上をローラ３６，３７，３
８を転動させて行っていたが、介護人が持って運ぶ等他
の方法で移動してもよい。

また、入浴装置１の洗浄台３に対向する側にガイドレー
ルを設け、入浴後の入浴者９０を移動して体を拭いた
り、入浴担架３０から入浴者９０を降ろしたりする台を
設けてもよい。このようにすれば、入浴者の体の洗浄、
入浴、乾燥を順序よくできる順送式にでき、入浴装置１
等の使用を効率良くでき、入浴者９０の待ち時間を少な
くできる。同様に、入浴装置１の洗浄台３に対向する側
に、洗浄台３をもう１台設け、２名の入浴者９０を交互
に洗浄、入浴させるようにしてもよい。

浴槽１０、入浴担架３０、キャリヤー５０等の形状等
や、スイッチパネル７１、シャワーユニット８５等の配
置場所等は、前記実施例のものに限定されず、他の形
状、場所等でもよい。

〔考案の効果〕

本考案によれば、入浴台の移動の際に、入浴者を介護す
る介護人の負担を軽減できるという効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第８図は、本考案の一実施例を示し、第１図は
入浴装置および洗浄台の平面図、第２図は第１図のII−
II線に沿う断面図、第３図は第１図のIII−III線に沿う
断面図、第４図は入浴台の側面図、第５図はその平面
図、第６図はキャリヤーの平面図、第７図は動作説明
図、第８図は固定手段を示す平面図である。 １……入浴装置、１０……浴槽、１１……スロープ、１
２……湯溜り、１３……案内部、２０……入浴台、２１
……固定手段、３０……入浴担架、５０……キャリヤ
ー、９０……入浴者、９１……足部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】入浴者の足部側が深くなる湯溜りを形成す
   るようにスロープを形成された浴槽と、この浴槽のスロ
   ープ内に挿入可能にされるとともに入浴者を載置可能な
   入浴台とを備え、前記浴槽には湯溜りに向かって低くな
   る傾斜を付けられて前記入浴台をスロープへ案内する案
   内部を設けたことを特徴とするスロープ式入浴装置。