JPH0692975A - 新規なシラノール - Google Patents

新規なシラノール

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JPH0692975A
JPH0692975A JP26798492A JP26798492A JPH0692975A JP H0692975 A JPH0692975 A JP H0692975A JP 26798492 A JP26798492 A JP 26798492A JP 26798492 A JP26798492 A JP 26798492A JP H0692975 A JPH0692975 A JP H0692975A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
compound
group
silanol
peak
ppm
Prior art date
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Pending
Application number
JP26798492A
Other languages
English (en)
Inventor
Kyoji Yamamoto
經二 山本
Masahiro Miyazawa
眞宏 宮澤
Yukio Kawanami
由紀夫 川波
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tonen Chemical Corp
Original Assignee
Tonen Sekiyu Kagaku KK
Tonen Chemical Corp
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Filing date
Publication date
Application filed by Tonen Sekiyu Kagaku KK, Tonen Chemical Corp filed Critical Tonen Sekiyu Kagaku KK
Priority to JP26798492A priority Critical patent/JPH0692975A/ja
Publication of JPH0692975A publication Critical patent/JPH0692975A/ja
Pending legal-status Critical Current

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【構成】 (式中、Rは炭素数1〜8の置換または非置換のアルキ
ル基及び脂環式残基、並びに置換または非置換のアリー
ル基から選ばれ、R′は炭素数1〜4のアルキル基であ
り、RとR′とは同一でない)で示されるシラノール。 【効果】これらのシラノールは、シャープレス反応を利
用して分割することができる。分割の結果得られるシラ
ノールは高い光学純度を有し、種々の光学活性な化合物
の中間体等として使用し得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規なシラノールに関す
る。
【0002】
【従来の技術】単純な構造のシラノールはシロキサンを
合成する原料として知られている。シラノールはまた、
アルコールの炭素をケイ素に置き換えた化合物であるの
で、アルコールと類似の生理作用を示すことが期待され
る。複雑な構造のシラノールは、医薬品または工業上の
試薬等の原料として有用である。
【0003】生体における受容体や酵素の活性中心は、
通常鏡像異性体選択性を有し、片方の鏡像異性体とより
強く相互作用する。こうした理由から、薬剤もしくは他
の工業上の試薬またはその合成原料として、片方の鏡像
異性体から成るものが求められることがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は第一に、新規
なシラノールを提供することを目的とする。
【0005】本発明は第二に、一方の鏡像異性体を高率
にて含有する、すなわち光学純度の高いシラノールを提
供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は第一に、一般式
(I):
【0007】
【化2】 (式中、Rは炭素数1〜8の置換または非置換のアルキ
ル基及び脂環式残基、並びに置換または非置換のアリー
ル基から選ばれ、R' は炭素数1〜4のアルキル基であ
り、RとR' とは同一でない)で示されるシラノールを
提供する。
【0008】上記において、Rは炭素数1〜8の置換ま
たは非置換のアルキル基及び脂環式残基、並びに置換ま
たは非置換のアリール基から選ばれる。炭素数1〜8の
置換または非置換のアルキル基及び脂環式残基の例とし
て、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル
基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル
基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基、メチ
ルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基;及び低
級アルキル基、アリール基、アルコキシ基等により置換
された上記の基、例えばベンジル基等を挙げることがで
きる。置換または非置換のアリール基としては、フェニ
ル基、α‐ナフチル基、β‐ナフチル基;及び低級アル
キル基、アリール基、アルコキシ基等により置換された
上記の基、例えばトリル基、キシリル基等を挙げること
ができる。典型的なRは、フェニル基、α‐ナフチル
基、シクロヘキシル基またはt-ブチル基である。R' は
炭素数1〜4のアルキル基である。その例としては、メ
チル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブ
チル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基が挙げら
れる。好ましくは、R' はメチル基である。ここで、R
とR' とは同一の基ではない。すなわち、本発明のシラ
ノールは、不斉ケイ素原子を有する。
【0009】これらシラノールの構造は、 1H‐NM
R、13C‐NMR、赤外線吸収スペクトル(IR)等に
より確認することができる。
【0010】例えば、R=フェニル基、R' =メチル基
である上記シラノールの 1H‐NMRにおいては、δ=
0.43ppm 付近にSi−C3 に起因するピーク3H分
が、δ= 1.4〜2.2ppmにシクロヘキセニル基中の−C
2 −に起因するピーク8H分が、δ= 1.8〜2.0 ppm に
−Oに起因するピーク1H分が、δ= 6.1〜6.3ppmに
シクロヘキセニル基中の−C=に起因するピーク1H
分が、δ= 7.2〜7.8ppmにフェニル基中のプロトンに起
因するピーク5H分が夫々観察され、13C‐NMRにお
いては、δ=−2.4ppm、22.2ppm 、22.6ppm 、26.2ppm
、26.7ppm 、127.6ppm、129.4ppm、133.6ppm、136.1pp
m、137.5ppm、139.6ppmにピークが観察される。また、
当該化合物のIRにおいては、3286cm-1(νO-H )、16
14cm-1(νC=C )、1251cm-1(δSi-Me )、 853cm
-1(δSi-OH )にピークが観察される。
【0011】本発明のシラノールは、ヒドロキシル基及
び不飽和基を有するので、薬剤またはその合成原料とし
て有用である。
【0012】本発明のシラノールは、次のようにして調
製することができる。先ずR' SiX3 (この式及び以
下の式において、Xはハロゲンを、好ましくはClを示
す)とRMgXとを反応させてRR' SiX2 を合成し
(反応1a)、次いでこれをc-C6 9 M(この式及び
以下の式において、c-C6 9 は1-シクロヘキセン-1-
イル基を示し;Mはアルカリ金属、好ましくはリチウム
を示す)と反応させてRR'(c-C6 9 )SiXを合成
し(反応1b)、最後にこれを加水分解して、本発明の
シラノールとする(反応1c)。反応1aは、R' Si
3 :RMgXのモル比を1:1前後、特に1:0.9 と
し、乾燥エーテル等の溶媒中、0〜25℃、特に0〜20℃
の温度で、3〜8時間行うのが好ましい。ここで、原料
として使用するR' SiX3 は公知であり、例としてメ
チルトリクロロシラン等が挙げられる。RMgXもまた
公知であり、例としてフェニルマグネシウムクロリド、
α‐ナフチルマグネシウムクロリド、シクロヘキシルマ
グネシウムクロリド、t-ブチルマグネシウムクロリド等
を挙げることができる。これらの原料は自体公知の方法
によって調製しても良く、また、市販品を用いても良
い。尚、反応1aにおいてRSiX3 とR' MgXとを
使用することもできる。反応1bは、RR' SiX2
c-C6 9 Mのモル比を1:1前後、特に1:0.9 と
し、乾燥エーテル等の溶媒中、0〜40℃で、特に還流下
で、20〜24時間行うのが好ましい。ここで、c-C6 9
Mは公知である。反応1a及び1bは、乾燥空気下で行
うこともできるが、窒素または希ガス雰囲気下、特にア
ルゴン雰囲気下で行うのが好ましい。反応1cは、例え
ばNaOHまたはKOHとKH2 PO4 またはNaH2
PO4 との緩衝液を用い、pHを6〜8、特に 6.5〜7.
5 に保ちながら、0℃以下の温度で、5〜30分間行うの
が好ましい。反応1a〜1cの終了毎に生成物を精製し
ても良く、また、精製せずに次の反応に進んでも良い。
精製は、例えば蒸留またはカラムクロマトグラフィー等
によって行うことができる。
【0013】本発明のシラノールの内、Rが炭素数2以
上のアルキル基または脂環式残基であるか、またはR'
の炭素数が2以上である化合物は、次の方法によって調
製することもできる。Rが炭素数2以上のアルキル基ま
たは脂環式残基である場合を例にとると、先ずアルケン
またはシクロアルケンとHSiR' X2 とを反応させて
RR' SiX2 を合成し(反応2a)、これにc-C6
9 Mを反応させてRR'(c-C6 9 )SiXを合成し
(反応2b)、最後にこれを加水分解して、本発明のシ
ラノールとする(反応2c)。ここで、アルケンまたは
シクロアルケンとしては、導入しようとするR基と比較
した場合、2-位の水素原子がなく1-位の炭素原子と2-位
の炭素原子との間に二重結合を有する構造の化合物を使
用する。例えば、Rとして1-シクロヘキシル基を導入す
る場合にはシクロヘキセンを、エチル基を導入する場合
にはエチレンを使用する。反応2aは、アルケンまたは
シクロアルケン:HSiR' X2 のモル比を1:1〜
1:3、特に1:2とし、白金触媒の存在下、20〜50℃
の温度で、48〜120 時間行うのが好ましい。この反応は
溶媒を必要としない。HSiR' X2 自体は公知であ
り、市販もされている。例としてジクロロメチルシラン
を挙げることができる。反応2aは、乾燥空気下で行う
こともできるが、窒素または希ガス雰囲気下、特にアル
ゴン雰囲気下で行うのが好ましい。反応2b及び2c
は、夫々上記の反応1b及び1cと同じであり、同じ条
件で行うことができる。これらの反応においても、各段
階(反応2a〜2c)の終了毎に生成物を精製しても良
く、また、精製せずに次の反応に進んでも良い。精製
は、上記の反応1a〜1cについて記載した方法によっ
て行うことができる。
【0014】本発明は第二に、光学活性である上記シラ
ノールを提供する。
【0015】光学活性であるシラノールは、ラセミ体で
ある上記シラノールを立体選択的にシャープレス酸化に
付してエポキシ化し、エポキシ化されずに残ったシラノ
ールを回収することによって得ることができる。
【0016】シャープレス(Sharpless)反応自体は公知
である。この反応は、アリルアルコールを、アルコキシ
チタンと酒石酸エステルまたは両者より得られるチタン
錯体の存在下で酸化してエポキシアルコールを生じる反
応であり、その詳細については、K.B.シャープレス(Sha
rpless) 他の論文〔ジャーナル・オブ・オーガニック・
ケミストリー(J.Org.Chem.),56巻(1991年), 6966-6968
頁;並びに、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル
・ソサエティー(J.Am.Chem.Soc.),102巻(1980年),5974
頁、及び 103巻(1981年),6237頁〕等を参照することが
できる。シャープレス酸化においては、特定の絶対配置
を有するエポキシアルコールを高い光学純度にて得るこ
とができ、その絶対配置は使用する酒石酸エステルの絶
対配置または量によって決定される。反応基質として第
二級アリルアルコールを用いた場合には、基質の鏡像体
間でエポキシ化の反応速度が大きく異なるため、不斉エ
ポキシ化と同時に、基質のdl体の速度論的分割が可能
になる。例えば、天然型の酒石酸を用いると、(S)体
が優先的にエポキシ化し、(R)体が基質のまま残る。
【0017】この速度論的分割方法は、類似の化合物総
てに適用できるものではない。例えば、通常の第三級ア
リルアルコールを用いてもエポキシ化は起こらない。ま
た、第三級アリルアルコールの類似体である第三級シラ
ノールについてシャープレス酸化を用いて速度論的分割
を行った例は知られていない。ジメチルスチリルシラノ
ールを用いての不斉エポキシ化は、T.H.チャン(Chan)ら
により報告されている〔ケミカル・コミュニケーション
(Chem.Commun.), 1988年, 1280頁〕が、ここで用いたシ
ラノールは不斉ケイ素原子を有しておらず、それ故分割
の対象にならない。本発明者らが研究したところによる
と、不斉ケイ素原子を有する類似の第三級シラノールで
あるスチリルシラノールをシャープレス酸化に付して
も、速度論的分割は起こらない。しかしながら、本発明
者らの今回の研究によって、1-シクロヘキセニル基を有
する本発明のシラノールは、速度論的分割が可能である
と言うことが見出された。一方、上記のように、シラノ
ールの速度論的分割は、従来知られていない。
【0018】シャープレス酸化では、アルコキシチタン
として、一般にTi(OEt)4 、Ti(Oi-Pr)4
等、特にTi(Oi-Pr)4 が用いられている。本発明
においてもアルコキシチタンとしてこれら化合物、特に
Ti(OEt)4 を使用することが好ましい。他に、T
i(OPr)4 、Ti(OBu)4 、Ti(Ot-Bu)
4 等も使用し得る。また、酒石酸エステルとしては、一
般に酒石酸ジエチル、酒石酸ジイソプロピル、酒石酸ジ
シクロドデシル等が用いられ、本発明においてもこれら
を使用することが好ましい。これらアルコキシチタン、
酒石酸エステル、またはそれらより得られる錯体は、基
質1モル当たり1〜4モル、特に2〜2.4 モルにて使用
するのが好ましい。また、シャープレス酸化はモレキュ
ラーシーブの添加により促進されることが知られてお
り、本発明においてもMA 4A 等、種々のモレキュラー
シーブを用いことができる。その場合、上記アルコキシ
チタン等の使用量を、基質1g 当たり 1.0〜1.7g、特に
1.0〜1.2gとすることができる。光学活性であるシラノ
ールを合成する際の好ましい条件を例示すると、t-ブチ
ルヒドロペルオキシドを基質1モルに対して 0.5〜2.0
モル、特に 0.7〜0.9モル用い、上記のアルコキシチタ
ンと酒石酸エステルまたはそれらより得られる錯体及び
任意的にモレキュラーシーブの存在下、ジクロロメタン
溶媒中、−40〜0℃、より好ましくは−30〜−10℃、特
に−25〜−15℃の温度で 0.5〜10日間、特に1〜8日間
反応させる。尚、反応の際、エポキシシラノールへの転
化率を高めると、未反応で回収されるシラノールの光学
純度が高くなり、しかし目的とする光学純度の高いシラ
ノールの量は少なくなる。好ましい転化率は、基R及び
R' の種類にもよるが、一般に30〜90%、特に70〜90%
である。こうして得られる反応混合物から、シラノール
を例えばカラムクロマトグラフィー等の方法によって単
離すると、目的物である、光学活性であるシラノール、
例えば光学純度が20〜98%程度のシラノールを製造する
ことができる。ここで得られるシラノールの絶対配置は
通常、シャープレス酸化において用いた酒石酸エステル
の絶対配置によって決定される。
【0019】このようにして得られる、光学活性である
シラノールは、ヒドロキシル基及び不飽和基を有するの
で、種々の光学活性な化合物の中間体等として使用し得
る。
【0020】以下、本発明を実施例によりさらに詳細に
説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもので
はない。
【0021】
【実施例】
【0022】
【実施例1】シクロヘキセニルメチルフェニルシラノールの合成 トリクロロメチルシラン 500mmolを含有する乾燥エーテ
ル溶液(200ml)に、アルゴン雰囲気下、20℃にて、フェ
ニルマグネシウムクロリド 450mmol (220 mlの乾燥エー
テルの溶液)を加え、20℃で8時間撹拌した後、シクロ
ヘキセニルリチウム 260mmol(375 mlの乾燥エーテルの
溶液)を加え、20℃で30分間撹拌した。該反応混合物
に、KH2 PO4 /NaOH緩衝液(pH 7.0)690 mlを
加え、5分間撹拌した後、カラムクロマトグラフィーに
よって分離したところ、無色油状の液体 24gが得られた
(収率30%)。
【0023】得られた生成物について、 1H‐NMR、
13C‐NMR及びIRを測定した。
【0024】1H‐NMR及びIRの結果を、夫々図1
及び図2に示す。尚、NMRは、測定溶媒としてCDC
3 を、標準物質としてTMS及びCHCl3 を用い、
共鳴周波数90MHzにて測定した。
【0025】図1において、δ=0.43ppm 付近にSi−
3 に起因するピーク3H分が、δ= 1.4〜2.2ppmに
シクロヘキセニル基中の−C2 −に起因するピーク8
H分が、δ= 1.8〜2.0ppmに−Oに起因するピーク1
H分が、δ= 6.1〜6.3ppmにシクロヘキセニル基中の−
=に起因するピーク1H分が、δ= 7.2〜7.8ppmに
フェニル基中のプロトンに起因するピーク5H分が夫々
観察されること;13C‐NMRにおいて、δ=−2.4pp
m、22.2ppm 、22.6ppm 、26.2ppm 、26.7ppm 、127.6pp
m、129.4ppm、133.6ppm、136.1ppm、137.5ppm、139.6pp
mにピークが観察されたこと;並びに、図2で、3286cm
-1(νO-H )、1614cm-1(νC=C )、1251cm-1(δ
Si-Me )、 853cm-1(δSi-OH )にピークが観察される
ことより、この生成物はシクロヘキセニルメチルフェニ
ルシラノールであることが確認された。
【0026】
【実施例2】シクロヘキセニルメチル(α‐ナフチルシラノール)の
合成 フェニルマグネシウムクロリドの代わりに、α‐ナフチ
ルマグネシウムクロリド90mmolを用いて、実施例1と同
じ操作を行った。無色の油状の液体 5.9g が得られた
(収率25%)。
【0027】この生成物について、実施例1と同じ条件
1H‐NMR、13C‐NMR及びIRを測定した。 1
H‐NMR及びIRの結果を、夫々図3及び図4に示
す。
【0028】図3において、δ=0.56ppm 付近にSi−
3 に起因するピーク3H分が、δ= 1.2〜2.4 ppm
にシクロヘキセニル基中の−C2 −に起因するピーク
8H分が、δ= 2.2〜2.5 ppm に−Oに起因するピー
ク1H分が、δ= 6.1〜6.4ppm にシクロヘキセニル基
中の−C=に起因するピーク1H分が、δ= 7.1〜8.
4ppmにナフチル基中のプロトンに起因するピーク7H分
が夫々観察されること;13C‐NMRにおいて、δ=−
1.2ppm、22.1ppm 、22.6ppm 、26.1ppm 、26.6ppm 、12
4.8ppm、125.1ppm、125.5ppm、128.2ppm、128.6ppm、13
0.0ppm、133.1ppm、134.0ppm、135.2ppm、136.8ppm、13
7.0ppm、139.5ppmにピークが観察されたこと;並びに、
図4において、3306cm-1(νO-H )、1614cm
-1(νC=C )、1254cm-1(δSi-Me )、 839cm-1(δ
Si-OH )にピークが観察されることより、この生成物は
シクロヘキセニルメチル(α‐ナフチル)シラノールで
あることが確認された。
【0029】
【実施例3】シクロヘキセニルシクロヘキシルメチルシラノールの合
シクロヘキセン 190mmolとジクロロメチルシラン 330mm
olとを、白金の存在下、アルゴン雰囲気中、溶媒を用い
ずに、50℃で 120時間反応させた。次いで、シクロヘキ
セニルリチウム 120mmol(900ml の乾燥エーテルの溶
液)を加え、0℃で60分間撹拌した。該反応混合物に、
KH2 PO4 /NaOH緩衝液(pH 7.0)100 mlを加
え、30分間撹拌した後、カラムクロマトグラフィーによ
って分離したところ、無色油状の液体 17gが得られた
(収率41%)。
【0030】この生成物について、測定溶媒としてCD
Cl3 を、標準物質としてCHCl3 を用い、共鳴周波
数 500MHzにて 1H‐NMR及び13C‐NMRを測定
した。 1H‐NMRの結果及びその拡大図を、夫々図5
及び図6に示す。
【0031】図5及び図6において、δ=0.109ppm付近
にSi−C3 に起因するピーク3H分が、δ= 0.7〜
2.1 ppm にシクロヘキシル基及びシクロヘキセニル基中
の−C2 −に起因するピーク19H分が、δ= 1.4〜1.
6 ppm に−Oに起因するピーク1H分が、δ= 6.1〜
6.2 ppm にシクロヘキセニル基中の−C=に起因する
ピーク1H分が夫々観察されること;13C‐NMRにお
いて、δ=−4.6ppm、22.4ppm 、22.8ppm 、26.0ppm 、
26.7ppm 、26.8ppm 、26.9ppm 、27.0ppm 、28.0ppm 、
136.5ppm、138.2ppmにピークが観察されたことより、こ
の生成物はシクロヘキセニルシクロヘキシルメチルシラ
ノールであることが確認された。
【0032】
【実施例4】t-ブチルシクロヘキセニルメチルシラノールの合成 フェニルマグネシウムクロリドの代わりに、t-ブチルマ
グネシウムクロリド 500mmolを用いて、実施例1と同じ
操作を行った。無色油状の液体 5.9g が得られた(収率
6%)。
【0033】この生成物について、実施例3と同じ条件
1H‐NMR及び13C‐NMRを測定した。また、I
Rを測定した。 1H‐NMRの結果、その拡大図、及び
IRの結果を、夫々図7、図8及び図9に示す。
【0034】図7及び8において、δ=0.138ppm付近に
Si−C3 に起因するピーク3H分が、δ=0.918ppm
にt-ブチル基中の−C3 に起因するピーク9H分が、
δ=1.5〜2.2 ppm にシクロヘキセニル基中の−C2
−に起因するピーク8H分が、δ= 1.4〜1.5 ppm に−
に起因するピーク1H分が、δ= 6.1〜6.2 ppmに
シクロヘキセニル基中の−C=に起因するピーク1H
分が夫々観察されること;13C‐NMRにおいて、δ=
−5.2ppm、18.6ppm 、22.4ppm 、22.9ppm 、26.3ppm 、
26.8ppm 、27.7ppm 、136.0ppm、138.9ppmにピークが観
察されたこと;並びに、図9において、3336cm-1(ν
O-H )、1612cm-1(νC=C )、1251cm-1(δSi-Me )、
826cm-1(δSi-OH )にピークが観察されることより、
この生成物はt-ブチルシクロヘキセニルメチルシラノー
ルであることが確認された。
【0035】以下の実施例では、上記の実施例で得られ
た化合物の速度論的分割について記載する。以下では、
反応前の本発明のシラノールを化合物Iと言い、反応に
より生じたエポキシ化合物の一方のジアステレオマーを
化合物IIと、もう一方のジアステレオマーを化合物III
と、反応後に回収された未反応のシラノールを化合物I
* と言うことがある。その際、置換基Rが異なる化合物
を区別するため、上記ローマ数字の右側に、Rがフェニ
ル基である化合物にはa を、ナフチル基である化合物に
はb を、シクロヘキシル基である化合物にはc を、t-ブ
チル基である化合物にはd を付す。例えば、シクロヘキ
セニルメチルフェニルシラノールを化合物Ia と言うこ
とがある。
【0036】
【実施例5】シクロヘキセニルメチルフェニルシラノールの速度論的
分割 Ti(Oi-Pr)4 1.0mmol、(+)-酒石酸ジイソプロピ
ル 1.2mmol、及びt-ブチルヒドロペルオキシド 0.6mmol
(2.9Mイソオクタン溶液)を乾燥CH2 Cl210mlに溶
解した溶液と、実施例1で得られたシクロヘキセニルメ
チルフェニルシラノール1mmolとを、−20℃にて合わ
せ、−20℃で2日間反応させた。得られた反応混合物を
エーテル(1ml)及び飽和硫酸ナトリウム水溶液(0.5m
l)と合わせ、2時間激しく撹拌した後、セライトを用
いて濾過し、濾液を真空中で固化して、粗生成物を得
た。
【0037】得られた粗生成物の 1H‐NMRを、シフ
ト剤としてトリス(3-ヘプタフロロプロピルヒドロキシ
メチレン-(+)- カンホラート)ユウロピウム(III) を用
いて測定したところ、エポキシ化合物への転化率は57%
であり、そのジアステレオマー比は75:25である(各ジ
アステレオマーの光学純度は、夫々8%、15%であっ
た)ことが確認された。
【0038】上記反応混合物をシリカゲルのカラムクロ
マトグラフィー(ヘキサン/エーテル=7:1)により
分離すると、シクロヘキセニルメチルフェニルシラノー
ルが32%の収率で回収され(化合物Ia* )、1,2-エポキ
シシクロヘキシルメチルフェニルシラノールの二種のジ
アステレオマー(化合物IIa 、化合物IIIa)の混合物が
合計43%の収率で得られた。尚、1,2-エポキシシクロヘ
キシルメチルフェニルシラノールの同定は、 1H‐NM
R、13C‐NMR及びIRにより行った。 1H‐NMR
及び13C‐NMRの測定条件は実施例3と同じである。
1H‐NMR及びIRの結果は、夫々図10及び図11
の通りであり、13C‐NMRにおいては、δ=−4.3pp
m、19.3ppm 、19.9ppm 、24.9ppm 、25.2ppm 、53.9ppm
、55.5ppm 、128.1ppm、130.2ppm、133.9ppm、135.3pp
mにピークが観察された。
【0039】化合物Ia* について、シフト剤としてトリ
ス(3-ヘプタフロロプロピルヒドロキシメチレン-(+)-
カンホラート)ユウロピウム(III) を用いて 1H‐NM
Rを測定したところ、各鏡像体の夫々に起因する二種の
ピークの強度比は54:46であり、その光学純度は8%で
あることが確認された。速度比は 1.2と計算された。エ
ポキシ化合物への転化率を95%程度にすれば、シラノー
ルの光学純度は30%程度になると計算される。尚、化合
物IIa の純粋な結晶を作ってX‐線結晶解析を行った結
果、化合物IIa はエリトロ形であることが判明した。
【0040】
【実施例6】シクロヘキセニルシクロヘキシルメチルシラノールの速
度論的分割 (1) (-)-酒石酸ジシクロドデシル0.555g(1.15mmol)及びT
i(OEt)4 0.20ml(0.96mmol) を、乾燥CH2 Cl
2 3ml中に溶解する−20℃の溶液を調製した。実施例3
で得られたシクロヘキセニルシクロヘキシルメチルシラ
ノール 109mg(0.48mmol)を乾燥CH2 Cl2 2ml中に
溶解する−20℃の溶液を上記溶液に加え、5分間撹拌し
た。この溶液に、t-ブチルヒドロペルオキシドのCH2
Cl2 溶液(3.83M)0.087ml を、撹拌下添加し、約−
20℃に81時間保った。得られた反応混合物をエーテル
(1ml)及び飽和硫酸ナトリウム水溶液(0.5ml)と合わ
せ、2時間激しく撹拌した後、セライトを用いて濾過
し、濾液を真空中で固化すると、粗生成物 626mgが得ら
れた。
【0041】得られた粗生成物の 1H‐NMRを、シフ
ト剤としてトリス(3-ヘプタフロロプロピルヒドロキシ
メチレン-(+)- カンホラート)ユウロピウム(III) を用
いて測定したところ、エポキシ化合物への転化率は63%
であり、そのジアステレオマー比は92:8である(各ジ
アステレオマーの光学純度は、夫々61%、31%であっ
た)ことが確認された。
【0042】上記反応混合物をシリカゲルのカラムクロ
マトグラフィーにより分離すると、シクロヘキセニルシ
クロヘキシルメチルシラノールが37%の収率で回収され
(化合物Ic* )、エポキシ化合物の二種のジアステレオ
マーの混合物が合計47%の収率で得られた。
【0043】化合物Ic* 1H‐NMRを図12に示
す。 1H‐NMRの測定は、溶媒としてCDCl3 を、
標準物質としてCHCl3 を用い、共鳴周波数 300MH
zにて行った。尚、測定時の機器の調製が悪く、CHC
3 のピークが、本来の一本線ではなく二本線となって
しまっており、他にも、そのようになっている部分があ
る。
【0044】次に、化合物Ic* 1H‐NMRを、シフ
ト剤として(+)-トリス[ジ(ペルフロロ-2- プロポキシ
プロピオニル)メタネート]ユウロピウム(III) を用
い、他は上記と同じ条件にて測定した。その結果を図1
3に示す。この結果より、化合物Ic* の光学純度は、75
%であることが判明した。速度比は 5.5と計算された。
エポキシ化合物への転化率を82%程度にすれば、シラノ
ールの光学純度は98%程度になると計算される。
【0045】
【実施例7】シクロヘキセニルシクロヘキシルメチルシラノールの速
度論的分割 (2) 実施例3で得られたシクロヘキセニルシクロヘキシルメ
チルシラノール0.15g(0.65mmol) 、(+)-酒石酸ジイソ
プロピル 0.37g(1.6mmol)及び 300mgの粉末MS 4A を
含有する乾燥CH2 Cl2 溶液(7ml)を−20℃に冷却
し、アルゴン雰囲気下、Ti(OEt)4 0.27ml(1.3m
mol)を加え、 0.5時間撹拌した。次に、t-ブチルヒドロ
ペルオキシドのCH2 Cl2 溶液(3.4M)0.15mlを加
え、混合物を約−20℃に39時間保った。この反応混合物
から実施例6におけるようにして粗生成物を得、その 1
H‐NMRを、シフト剤としてトリス(6,6,7,7,8,8,8-
ヘプタフロロ-2,2- ジメチル-3,5- オクタンジオネー
ト)ユウロピウム(III) を用いて測定した。その結果よ
り、エポキシ化合物への転化率は64%であり、エポキシ
化合物のジアステレオマー比は94:6である(各ジアス
テレオマーの光学純度は、夫々30%、52%であった)こ
とが確認された。
【0046】上記で得られた反応混合物をシリカゲルの
カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/エーテル=7:
1)により分離すると、シクロヘキセニルシクロヘキシ
ルメチルシラノールが58mg(収率39%)回収され(化合
物Ic* )、化合物IIc と化合物IIIcとの混合物95mg(収
率60%)が白色結晶として得られた。
【0047】化合物Ic* の光学純度を、実施例6におけ
るのと同じ方法で測定したところ、62%であり、速度比
は 3.6と計算された。また、化合物Ic* のヘキサン中で
の比旋光度を測定したところ、[α]25 D =+4.9 °で
あった。
【0048】
【実施例8】シクロヘキセニルシクロヘキシルメチルシラノールの速
度論的分割 (3) 化合物Ic に対して4当量のメチルイソプロペニルエー
テルをアルコールトラッピング剤として用い、かつ反応
時間を42時間とした以外は、実施例7と同じ操作を行っ
た。エポキシ化合物への転化率は44%であり、48%のシ
クロヘキセニルシクロヘキシルメチルシラノールが回収
された(化合物Ic* )。
【0049】実施例6及び7と同じ方法により、化合物
Ic* の光学純度は27%であることが確認された。速度比
は 2.6と計算された。エポキシ化合物への転化率を95%
程度にすれば、シラノールの光学純度は95%程度になる
と計算される。尚、生じたエポキシ化合物のジアステレ
オマー比は89:11であった。
【0050】
【実施例9】t-ブチルシクロヘキセニルメチルシラノールの速度論的
分割 シクロヘキセニルシクロヘキシルメチルシラノールの代
わりにt-ブチルシクロヘキセニルメチルシラノール1mm
olを用い、Ti(OEt)4 の代わりにTi(Oi-P
r)4 4mmolを用い、(-)-酒石酸ジシクロドデシルの使
用量を 4.8mmolとし、かつ反応時間を21時間とした以外
は、実施例6と同じ操作を行った。t-ブチルシクロヘキ
セニルメチルシラノールの回収率は15%、エポキシ化合
物への転化率は52%であった。
【0051】回収されたt-ブチルシクロヘキセニルメチ
ルシラノールの光学純度は44%であった。速度比は 3.6
と計算された。エポキシ化合物への転化率を95%程度に
すれば、シラノールの光学純度は99.5%程度になると計
算される。尚、生じたエポキシ化合物のジアステレオマ
ー比は82:18であり、各ジアステレオマーの光学純度
は、夫々39%、57%であった。
【0052】
【発明の効果】本発明により、新規なシラノールが提供
された。本発明のシラノールは、シャープレス反応を利
用して分割することができる。分割の結果得られるシラ
ノールは高い光学純度を有し、種々の光学活性な化合物
の中間体等として使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた生成物についての 1H‐N
MRチャート。ピーク上方に重なった曲線は、各ピーク
の面積強度を示す。
【図2】実施例1で得られた生成物についてのIRチャ
ート。
【図3】実施例2で得られた生成物についての 1H‐N
MRチャート。ピーク上方に重なった曲線は、各ピーク
の面積強度を示す。
【図4】実施例2で得られた生成物についてのIRチャ
ート。
【図5】実施例3で得られた生成物についての 1H‐N
MRチャート。ピーク上方に重なった曲線は、各ピーク
の面積強度を示す。
【図6】図5の各ピーク部分の拡大図。
【図7】実施例4で得られた生成物についての 1H‐N
MRチャート。ピーク上方に重なった曲線は、各ピーク
の面積強度を示す。
【図8】図7の各ピーク部分の拡大図。
【図9】実施例4で得られた生成物についてのIRチャ
ート。
【図10】実施例5で得られたエポキシ化合物について
1H‐NMRチャート。ピーク上方に重なった曲線
は、各ピークの面積強度を示す。
【図11】実施例5で得られたエポキシ化合物について
のIRチャート。
【図12】実施例6で回収されたシラノールについての
1H‐NMRチャート。ピーク上方に重なった曲線は、
各ピークの面積強度を示す。
【図13】実施例6で回収されたシラノールについて、
シフト剤を使用して測定した 1H‐NMRチャート。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I): 【化1】 (式中、Rは炭素数1〜8の置換または非置換のアルキ
    ル基及び脂環式残基、並びに置換または非置換のアリー
    ル基から選ばれ、R' は炭素数1〜4のアルキル基であ
    り、RとR' とは同一でない)で示されるシラノール。
  2. 【請求項2】 Rがフェニル基、α‐ナフチル基、シク
    ロヘキシル基またはt-ブチル基であり、R' がメチル基
    である、請求項1記載のシラノール。
  3. 【請求項3】 光学活性である、請求項1または2記載
    のシラノール。
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