JP2876929B2 - 光学活性1,3−ジオールの製法 - Google Patents

光学活性1,3−ジオールの製法

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JP2876929B2 JP5348293A JP5348293A JP2876929B2 JP 2876929 B2 JP2876929 B2 JP 2876929B2 JP 5348293 A JP5348293 A JP 5348293A JP 5348293 A JP5348293 A JP 5348293A JP 2876929 B2 JP2876929 B2 JP 2876929B2
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誠一 高野
国郎 小笠原
正記 瀬藤
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光学活性な医薬品等の製
造に有用な光学活性1,3−ジオールの製法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】高い光学
純度を有する光学活性1,3−ジオールについて現在の
ところ一般的な合成方法はまだ確立されていない。従っ
て、より汎用性のある入手方法が望まれている。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明はすなわち式Iで
示される光学活性グリシジルエーテルをジコバルトオク
タカルボニルの存在下、一酸化炭素及びトリアルキルシ
ランと反応させて式IIで示される光学活性ジシリルエー
テルに導き、次いで該光学活性ジシリルエーテルを脱シ
リル化することを特徴とする式III で示される光学活性
1,3−ジオールの製法である。
【0004】
【化2】
【0005】本発明の反応の第1段階は光学活性エポキ
シドに一酸化炭素を反応させ光学純度を損なうことなく
炭素鎖をひとつ伸ばすことにより光学活性ジシルエーテ
ルを製造するものである。同種の反応としては、トリア
ルキルシラン,一酸化炭素,ジコバルトオクタカルボニ
ルを用いたエポキシドのシロキシメチル化の反応(MU
RAI反応)がよく知られている(J.Am.Chem.Soc.,106,
6093(1984);J.Am.Chem.Soc.,117,7938(1989);Tetrahedr
on,48,2013(1992)) が、光学活性エポキシドとの反応に
ついてはまだ検討されていなかった。そこで本発明者ら
は、鋭意検討の結果、光学活性グリシジルエーテルを原
料に用いた光学純度の高い光学活性1,3−ジオールの
短段階製造方法を見出し本発明を完成したものである。
【0006】本発明をさらに詳しく説明する。本発明の
原料に用いる光学活性グリシジルエーテルは例えば、He
terocycles,31,1715(1990)及びHeterocycles,34,173(19
92) に記載された方法で入手できる。トリアルチルシラ
ンとしては、トリメチルシラン,エチルジメチルシラ
ン,ジエチルメチルシラン,トリエチルシラン,t−ブ
チルジメチルシラン等が使用できる。第1段階の反応は
常圧で達成されるが反応に用いる一酸化炭素の圧力は1
気圧から50気圧がよく、好ましくは1気圧から10気
圧である。また反応温度は0℃から80℃がよく好まし
くは10℃から50℃である。
【0007】この反応で用いられる触媒としてはジコバ
ルトオクタカルボニル錯体が不可欠である。使用量はグ
リシジル化合物1モルに対して0.005モル用いるこ
とにより反応は容易に進行するが、好ましくは0.01
モルから0.2モルである。溶媒はアプロチックな溶媒
であれば何れも使用できるが、例えばジエチルエーテ
ル,テトラヒドロフラン,塩化メチレン,クロロホル
ム,ジクロロエタン,ベンゼン,トルエン,n−ヘキサ
ン等が好ましい。第1段階の反応は一酸化炭素の圧力が
1気圧の場合、通常1時間から50時間で終了する。ま
た圧力をそれ以上にすれば、さらに短時間で反応が終了
する。
【0008】第2段階の反応は脱シリル化反応で、フッ
化物イオンを含む化合物,酸,塩基等で脱シリル化する
ことができる。フッ化物イオンを含む化合物としてはフ
ッ化テトラn−ブチルアンモニウム,フッ化カリウム,
フッ化ナトリウム,フッ化水素等を挙げられる。この場
合の溶媒はアプロチックな溶媒であれば何れも使用でき
るが、例えばジエチルエーテル,テトラヒドロフラン,
塩化メチレン,クロロホルム,ジクロロエタン及びそれ
らの混合物等が好ましい。酸としては、特に制限なく使
用することができるが、好ましくは塩酸,硫酸等の鉱
酸、酢酸,トリフルオロ酢酸等の有機酸及び酸残基を有
する樹脂等を使用することができる。この場合、プロチ
ック,アプロチック何れの溶媒も使用することができ、
好ましくは水,メタノール,エタノール,アセトニトリ
ル,テトラヒドロフラン及びそれらの混合物が使用でき
る。塩基としてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の
水酸化物,炭酸塩等が使用でき、好ましくは水酸化ナト
リウム,水酸化カリウム,水酸化カルシウム,炭酸ナト
リウム,炭酸カリウム等が使用できる。この場合、プロ
チック,アプロチック何れの溶媒も使用することがで
き、好ましくは水,メタノール,エタノール,アセトニ
トリル,テトラヒドロフラン及びこれらの混合物が使用
できる。何れの場合も反応温度は0℃から100℃で、
好ましくは0℃から50℃で、24時間以内に終了す
る。
【0009】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的
に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0010】実施例1(光学活性ジシリルエーテルの製
造) 一酸化炭素雰囲気下でジコバルトオクタカルボニル錯体
68mg(0.2mmol)にジエチルメチルシラン
2.2ml(15mmol)を加え、室温で30分攪拌
した後、(S)−ベンジルグリシドール820mg
(5.0mmol)のベンゼン5ml溶液を加え、20
時間攪拌した。反応溶液中にピリジン5滴を加え、窒素
を15分吹き込み、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減
圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマ
トグラフィー(エーテル−n−ヘキサン系)で精製し無
色油状のジシリルエーテル((2R)−1−ベンジルオ
キシ−2,4−ビス(ジエチルメチルシロキシ)ブタ
ン)1.4g(70.7%)を得た。 [α]D 28 +11.7°(c=1.01,CHC
3 ) IR(film)νmax:2956,1455cm-1 1 H−NMR(CDCl3 )δ:7.32(s,5H,a
romatic),4.53(s,2H,ArO−CH2 ),
4.2−3.8(m,1H,C(2)−H),3.67
(t,2H,J=6.6Hz,C(4)−H),3.4
0(d,2H,J=5.4Hz,C(1)−H),1.
9−1.6(m,2H,C(3)−H),1.1−0.
6(m,20H,Si−(C2 5 2 ×2),0.2
−0.0(m,6H,Si−CH3 ×2) MS m/z:367(M−29),91(100%) HRMS C19353 Si2 calcd : 367.2125 found : 367.2133
【0011】実施例2(光学活性ジシリルエーテルの製
造) 一酸化炭素雰囲気下でジコバルトオクタカルボニル錯体
68mg(0.2mmol)にジエチルメチルシラン
2.2ml(15mmol)を加え、室温で30分攪拌
した後、(R)−(4−メトキシフェニル)グリシドー
ル900mg(5.0mmol)のベンゼン5ml溶液
を加え、20時間攪拌した。反応溶液中にピリジン5滴
を加え、窒素を15分吹き込み、無水硫酸マグネシウム
で乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲル
カラムクロマトグラフィー(エーテル−n−ヘキサン
系)で精製し無色油状のジシリルエーテル((2R)−
1−(4−メトキシフェニルオキシ)−2,4−ビス
(ジエチルメチルシロキシ)ブタン)1.29g(収率
62.9%)を得た。 [α]D 30 +4.95°(c=1.01,CHC
3 ) IR(film)νmax:2954,1508cm-1 1 H−NMR(CDCl3 )δ:6.82(s,4H,a
romatic),4.12−4.05(m,1H,C(2)
−H),3.83(d,2H,J=5.8Hz,C
(1)−H),3.77(s,3H,O−CH3 ),
3.73(t,2H,J=6.6Hz,C(4)−
H),1.93−1.82(m,2H,C(3)−
H),1.0−0.6(m,20H,Si−(C
2 5 2 ×2),0.2−0.0(m,6H,Si−
CH3 ×2) MS m/z:412(M+),103(100%) HRMS C21404 Si2 calcd : 412.2465 found : 412.2445
【0012】実施例3(光学活性1,3−ジオールの製
造) 実施例1で得たジシリルエーテル400mg(1.0m
mol)のテトラヒドロフラン3ml溶液に、室温でフ
ッ化テトラブチルアンモニウム溶液(濃度1.0M)
2.4ml(2.4mmol)を加え、同温で10mi
n攪拌した。酢酸エチル,10重量%塩酸,食塩を加
え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄
し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去
し、残留物をシリカゲル15gを用いてカラムクロマト
グラフィー(酢酸エチル)に付し、無色油状のジオール
体((2R)−1−ベンジルオキシ−2,4−ジヒドロ
キシブタン)171mg(87.2%)を得た。 [α]D 30 +8.06°(c=1.07,CHC
3 ) 光学純度:93.4%e.e.(CHIRALCEL
OD,i−プロパノール−n−ヘキサン−ジエチルアミ
ン(20:80:0.1(v/v/v)) IR(film)νmax:3390cm-1 1 H−NMR(CDCl3 )δ:7.32(s,5H,a
romatic),4.53(s,2H,ArO−CH2 ),
4.2−3.8(m,1H,C(2)−H),3.77
(t,2H,J=5.6Hz,C(4)−H),3.6
−3.2(m,2H,C(1)−H),3.11(br
s,2H,OH×2),1.66(dd,2H,J=
9.5,6.2Hz,C(3)−H) MS m/z:196(M+),91(100%) HRMS C11163 calcd : 196.1099 found : 196.1079
【0013】実施例4(光学活性1,3−ジオールの製
造) 実施例2で得たジシリルエーテル380mg(0.92
mmol)のテトラヒドロフラン4ml溶液に室温でフ
ッ化テトラブチルアンモニウム溶液(濃度1.0M)
2.0ml(2.0mmol)を加え、同温で10mi
n攪拌した。酢酸エチル,10重量%塩酸,食塩を加
え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄
し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去
し、残留物をシリカゲル20gを用いてカラムクロマト
グラフィー(酢酸エチル)に付し、無色結晶のジオール
体((2R)−1−(4−メトキシフェニルオキシ)−
2,4−ジヒドロキシブタン)171mg(収率87.
7%)を得た。光学純度は対応するジアセテート体より
83.4%e.e.(CHIRALCEL OD,i−
プロパノール−n−ヘキサン(5:95(v/v))と
決定した。さらに、この結晶を塩化メチレンより再結晶
することにより次のデータを有するジオール体を得た。 m.p.108℃ [α]D 31 +2.44°(c=0.65,MeOH) 光学純度:100%e.e. IR(film)νmax:3302cm-1 1 H−NMR(CDCl3 )δ:6.86(s,4H,a
romatic),4.4−4.1(m,1H,C(2)−
H),4.1−3.8(m,4H,C(1)−H,C
(4)−H),3.78(s,3H,O−CH3 ),
3.2−2.8(m,1H,OH),2.6−2.0
(m,1H,OH),2.0−1.6(m,2H,C
(3)−H) MS m/z:212(M+),124(100%) HRMS C11164 calcd : 212.1049 found : 212.1011
【0014】
【発明の効果】本発明によれば光学活性な医薬品,農薬
品等の製造に必要な光学純度の高い光学活性な1,3−
ジオールを、反応経路中でラセミ化を起こすことなく少
ない工程数で容易に製造することができる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−25436(JP,A) 特開 平5−117186(JP,A) 特開 平6−157373(JP,A) 特開 昭58−85845(JP,A) 特開 平3−128338(JP,A) 特開 平4−110040(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07C 41/26 C07C 41/30 C07C 43/178 C07C 43/23

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式Iで示される光学活性グリシジルエー
    テルをジコバルトオクタカルボニルの存在下、一酸化炭
    素及びトリアルキルシランと反応させて式IIで示され
    る光学活性ジシリルエーテルに導き、次いで該光学活性
    ジシルエーテルを脱シリル化することを特徴とする
    IIIで示される光学活性1,3−ジオールの製法。 【化1】
  2. 【請求項2】 式中R1 がフェニル基又は4−メトキシ
    フェニル基である請求項1に記載の光学活性1,3−ジ
    オールの製法。
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