JPH0670638A - 椎茸栽培袋 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 椎茸の培養袋を用いた菌床栽培において、培
養基充填後、滅菌処理から菌糸蔓延までの間、培養基を
保持するに充分な強度を有し、しかも子実体発生直前に
容易に手指の力で破袋できる椎茸栽培用袋を提供する。 【構成】 無延伸ポリオレフィン系フィルムからなり、
タテ融着部と底融着部を有する袋の袋口を密封して培養
するに際して、密封部と培養基との間のフィルム部位に
欠落部を設け、該欠落部を、空気を通過させ雑菌を通過
させないフィルター部材で被覆すると共に、タテ融着部
内に１２５℃、５時間の加熱により劣化しないタテ方向
の強度が大なる細幅の紐状物を挟着し、開封にあたり、
タテ融着部を強く引張るとその際の破れが紐状物により
タテ融着部に沿って誘導される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、培養袋を用いた菌床栽
培により椎茸を栽培するにあたって、菌糸が充分に蔓延
した後、子実体を発生させるにあたって袋が容易に破る
ことができ、子実体が全方向から発生できるように加工
した椎茸栽培袋に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、椎茸の栽培は一定の太さに達した
広葉樹を切り揃えて榾木とし、この榾木に種菌を接種
し、半日陰で培養し、充分に菌糸が蔓延した時点で衝
撃、急冷などの刺激を与えて子実体を発生させていた。
近時、広葉樹の不足、生産性の向上などの見地から広葉
樹のおが粉に各種の糠類などの栄養源を配合して袋、ビ
ンなどに充填し、空気を通過させ、雑菌を通過させない
フィルター部材を介して通気しつつ培養する方法が普及
しつつある。

【０００３】椎茸の子実体は榾木の全面から発生し、菌
床栽培の場合も菌が蔓延した塊の全面から発生するもの
である。したがって、培養基を袋に充填して栽培した場
合には子実体を発生させる直前に袋から取出し、任意の
面から発生できるように処理する必要がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、袋素材
が強靱であると袋を手で破ることが困難で、大量の袋を
順次破るにあたり刃物を必要とし、手間を要するという
問題があった。袋素材として弱いフィルムを使用する
と、袋に培養基を充填後、１２５℃、５時間以上の滅菌
処理、及びその後の２〜３月にわたる菌糸培養期間に破
袋し、培養基を無菌かつ所定の形状に保持することが不
可能になる。そこで、培養基充填後、滅菌処理から菌糸
蔓延までの間、培養基を保持するに充分な強度を有し、
しかも子実体発生直前に効率よく破袋できる椎茸栽培用
袋が求められていた。

【０００５】

【課題解決の手段】本発明は上記課題を解決することを
目的とし、その構成は、無延伸ポリオレフィン系フィル
ムからなり、タテ融着部と底融着部を有する袋の袋口を
密封して培養するに際して、密封部と培養基との間のフ
ィルム部位に欠落部を設け、該欠落部を、空気を通過さ
せ雑菌を通過させないフィルター部材で被覆すると共
に、タテ融着部内に１２５℃、５時間の加熱により劣化
しないタテ方向の強度が大なる細幅の紐状物が挟着され
ていることを特徴とする。

【０００６】本発明における密封袋の素材は無延伸のポ
リオレフィンである。ポリオレフィンとしてはポリプロ
ピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、線
状低密度ポリエチレンなどが挙げられる。一般にインフ
レーション加工法によって得られたフィルムが使用され
る。これらフィルムは強靱ではあるが、１２５℃、３〜
５時間にわたる滅菌工程とこれに続くおが粉を充填して
湿度の高い雰囲気中に２カ月前後放置されることにより
劣化が進行する。この劣化は通常の取扱いにおいて破袋
を生じるおそれはないが、強く引張ることにより局部的
に破袋させることが可能な程度である。

【０００７】本発明の袋は、筒状の袋本体を得るために
少なくとも１本のタテ融着部を有する。更に、タテ融着
部と直交する底融着部を袋の一方の端部に設け、他方の
端部は開口した状態である。袋の一方の面の中央部にタ
テ融着部を設けたいわゆるピロー型の袋であっても、袋
の端部に縦融着部が存在する三方シール型或いは四方シ
ール型であってもよい。融着方法はフィルムの両端部の
同一面同士を融着するいわゆる合掌張りが好ましいが、
場合によってはフィルムの両端部の異なる面を重ね合わ
せて融着するいわゆる封筒張りであってもよい。また、
ガセット折り込みを有する袋も使用できる。

【０００８】本発明の特徴はタテ融着部の融着部内にタ
テ方向の強度が大なる紐状物が、長さ方向に挿入された
状態で融着されていることである。紐状物が存在する部
位は融着が不完全になるため、融着強度を維持する必要
上当然に縦融着部の幅よりはるかに細幅であると共に薄
い素材である。

【０００９】また、１２５℃、３〜５時間の滅菌工程及
びその後の湿度の高い雰囲気において劣化しない素材で
あることを要する。このような素材として、綿等の天然
繊維、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維であり、
撚糸、或いはテープ状に織ったものなど、細く薄くタテ
方向に強靱なものが好ましい。紐状物はタテ融着部の外
方或いは内方に多少はみ出していてもよい。

【００１０】本発明は培養袋であるため、内部に一定量
のおが粉などの培養基を充填し、袋口を密封して培養す
る。袋の上部の培養基が接触せず、且つ袋口を密封した
場合に密封部に接触しない部位に穿孔などの袋部材の欠
落部を設け、この欠落部を空気の流通が自由であって、
雑菌の通過を遮断するフィルター部材で気密に被覆した
通気孔を設ける。

【００１１】フィルター部材としては一定範囲の大きさ
の穿孔を設けた単層フィルム、一定の厚みの連続気泡性
の発泡体、一定の層をなす繊維集合体などが用いられ
る。単層フィルム以外は孔径自体は大きくとも積層され
た厚みがあれば雑菌は迂回路を曲折して通過することが
できず実質的に遮断され、迂回が可能な空気のみが通過
する。

【００１２】このような通気孔は１箇所或いはそれ以上
設けることができる。タテ融着部が１本、通気孔が１箇
所の場合には通気孔はタテ融着部と最も離れた反対側に
設けることが好ましい。通気孔が２箇所でタテ融着部が
１本の場合にはタテ融着部からある程度離れ、且つ通気
孔同士は等間隔に設けることが好ましい。

【００１３】使用するにあたっては、所定の部位に通気
孔を設けたフィルムを巻出し、常法に従ってタテ融着す
る。この際、別に巻回した紐状物を巻出し、タテ融着す
べきフィルムとフィルムとの間に挟みながら融着してい
く。次いでホッパーから一定量の培養基を落下充填し、
底融着すると同時にこの底融着部の下方を切断する。以
上の操作を連続的に行い、得られた充填袋を滅菌器にお
いて１２０〜１２５℃で３〜５時間滅菌する。

【００１４】滅菌するに際し、培養基から大量の蒸気が
発生するので、この蒸気を逃がすために袋口を密封せ
ず、冷却して植菌後に密封する方法もある。或いは、内
部からの蒸気圧が減少した場合には閉じるような蒸気流
通部を残して袋口を融着して滅菌工程を行う方法もあ
る。この場合には滅菌冷却後、外部から注射針のような
細い注入部を有する注入器を用いて植菌を行う。また、
蒸気流通部は滅菌中に破袋しないように充分な蒸気の排
出機能を確保すると共に、内部が減圧になった場合には
密着して外部から空気が侵入しないように融着部の外に
長いフィルム素材を残したり、蒸気排出口を迂回させる
などの方法を採用する。

【００１５】植菌した培養袋を椎茸の菌糸発育に適した
温度及び湿度の室内に放置し、菌糸が充分に蔓延したと
き、タテ縦融着をつまんで引張る。この際、ポリオレフ
ィン系フィルムはその強度がある程度劣化していると共
に、タテ融着部はフィルムが二重になっており、更に劣
化しない紐状物が挟着されているため、フィルムはタテ
融着部と非融着部との境界から破れ、この破れは紐状物
に誘導されて袋底に至る。この破れた部位からフィルム
素材を剥がし、培養基を露出させて塊状の培養基の周囲
から子実体を発生させる。フィルム口を融着した場合に
はタテ融着部の脇にノッチを設けておくと容易に破り始
めることができる。

【００１６】

【作用】本発明は、椎茸の菌床栽培において菌糸が蔓延
した後、袋を簡単に手で破れるようにし、作業性の向上
を図るものである。そのため、袋素材として無延伸のポ
リオレフィンフィルムが１２５℃、３〜５時間の滅菌条
件とこれに続く湿度の高い室内において培養基及び茸菌
と接触する間に劣化して強い力で引張ると破れ易くなっ
ている事実を見出した。しかも、袋自体にタテ融着部を
設け、このタテ融着部内に強度が劣化しない長さ方向に
強靱な扁平で細幅の紐状物を挟着し、袋素材の劣化とタ
テ融着部と紐状物との共働作用により、最初に破れを手
指の力で設け、この破れを紐状物によりタテ融着部に沿
って長さ方向に誘導することができる。

【００１７】

【実施例】図１は本発明の１実施例の斜視図、図２はタ
テ融着部の端面図、図３は子実体発生に先立ち、袋を破
いている状態を示す斜視図である。

【００１８】１は周囲３０cm、長さ６０cmの培養袋、２
は無延伸ポリプロピレンフィルム、３はタテ融着部であ
り、本実施例においてはタテ融着は１５mm幅で合掌張り
を行った。４は幅４mmの扁平な綿テープであり、可及的
にタテ融着部の袋本体寄りに挟着した。５は最初に破り
易くするために袋口のタテ融着部３の脇に設けたノッチ
である。６は底融着部である。７はフィルムに設けた穿
孔であり、この穿孔７を覆ってフィルター部材８を貼着
し通気孔を形成した。本実施例においては現実には通気
孔はタテ融着部３の裏面に設けたが、図面においては理
解を容易にするためタテ融着部に近い位置に移動させて
表現した。

【００１９】また、本実施例においては袋口を排気孔９
を残して融着した。10はシール部である。シール部１０
の排気孔９の上に雑菌の侵入を防ぐために短いシール部
10’をもう１本設けた。培養中に排気孔９から雑菌が侵
入するのを防ぐために、シール部１０は袋口より５０mm
内部に設け、袋口に雑菌侵入防止部１１を設けた。滅菌
中は排気孔９が円形に開き内部から発生する蒸気を排出
した。加熱中止後は次第に内圧が低下し、雑菌侵入防止
部１１は水分とフィルム２の有する粘着性とにより密着
し、培養期間中には醗酵による内圧の高まりとの相乗作
用によりこの部位からの雑菌の侵入はなかった。

【００２０】滅菌後注射器状の器具を用いて培養基の中
央部に植菌した。２３℃、湿度６０％の室内で１００日
間培養した。充分に菌糸が蔓延した状態で図３に示すよ
うにタテ融着部３の袋口を手で破り始めると、この破れ
はタテ融着部が２枚重ねと、挟着した綿テープ４により
誘導され、タテ融着部の脇からフィルムが千切れて破れ
がフィルム底まで達した。その後フィルムを培養基から
剥がし、寒冷刺激を与えて常法により子実体を発生させ
た。１２は培養基である。

【００２１】

【発明の効果】本発明により、培養基充填後、滅菌処理
から菌糸蔓延までの間、培養基を保持するに充分な強度
を有し、しかも子実体発生直前に効率よく容易に手指の
力で破袋できる椎茸栽培用袋を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本発明の１実施例の斜視図である。

【図２】図２はタテ融着部の端面図である。

【図３】図３は子実体発生に先立ち、袋を破いている状
態を示す斜視図である。

【符号の説明】 １ 培養袋 ２ フィルム ３ タテ融着部 ４ 綿テープ ５ ノッチ ６ 底融着部 ７ 穿孔 ８ フィルター部材 ９ 排気孔 10 シール部 11 雑菌侵入防止部 12 培養基

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 無延伸ポリオレフィン系フィルムからな
   り、タテ融着部と底融着部を有する袋の袋口を密封して
   培養するに際して、密封部と培養基との間のフィルム部
   位に欠落部を設け、該欠落部を、空気を通過させ雑菌を
   通過させないフィルター部材で被覆すると共に、タテ融
   着部内に１２５℃、５時間の加熱により劣化しないタテ
   方向の強度が大なる細幅の紐状物が挟着されていること
   を特徴とする椎茸栽培袋。